説明

スパッタリングターゲットおよびその製造方法

【課題】 高い導電性を有し、WO膜をDCスパッタにより成膜可能なスパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 スパッタリングターゲットが、WO相とW1849相との2相以上からなる組織を有した酸化タングステンの焼結体であり、WO相の組織中の割合が、5%以上である。このスパッタリングターゲットの製造方法は、WOと、W1849及びWOの少なくとも一方とを含有した酸化タングステン粉を作製する工程と、該酸化タングステン粉を真空中でホットプレスにて焼結し、酸化タングステンの焼結体とする工程とを有し、前記酸化タングステン粉中の前記WOの含有量を、5〜95mol%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCスパッタが可能な酸化タングステン(WO)のスパッタリングターゲットおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロクロミック表示素子用や遮光部材用としてWO膜が用いられており、このWO膜を成膜するためにスパッタリングターゲットが使用されている。例えば、特許文献1には、エレクトロクロミック表示素子用のWO膜を成膜するスパッタリングターゲットとして、WO粉末を大気中でホットプレスにより焼結体とし、WO(X=2.0〜3.0)の均一組成からなるターゲットを作製する技術が記載されている。このスパッタリングターゲットを用いて、RFマグネトロンスパッタによりスパッタすることでWO膜を成膜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2693599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、従来のWOスパッタリングターゲットは、高抵抗で導電性が無いためRFスパッタにより成膜しており、生産性の高いDCスパッタができないという問題があった。なお、WOのスパッタリングターゲットは、導電性があるためDCスパッタが可能であるのに対し、WOのスパッタリングターゲットは、導電性がなくDCスパッタが困難である。また、WOのスパッタリングターゲットを用いて、透明性の高いWO膜(2.0<x≦3.0)を成膜するには、雰囲気中の含有酸素量を多くした反応性スパッタを行う必要があり、成膜レートが低く不安定なため、高い生産性が得られなかった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、高い導電性を有し、WO膜をDCスパッタにより成膜可能なスパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、WOのスパッタリングターゲットについて研究を進めたところ、WOとマグネリ相の化合物であるW1849とを含有する酸化タングステン粉(WO粉)あるいはWOを真空中でホットプレスすることにより、高い導電性を有したスパッタリングターゲットが得られ、このスパッタリングターゲットを用いてDCスパッタすることにより、WO膜が得られることを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明のスパッタリングターゲットは、WO相とW1849相との2相以上からなる組織を有した酸化タングステンの焼結体であり、前記WO相の組織中の割合が、5%以上であることを特徴とする。
このスパッタリングターゲットでは、WO相とW1849相との2相以上からなる組織を有した酸化タングステンの焼結体であり、WO相の組織中の割合が、5%以上であるので、半導体であるWO相と金属伝導性を示すW1849相とが混在して高い導電性を得ることができる。
【0008】
第2の発明のスパッタリングターゲットは、第1の発明において、前記焼結体の密度が、5.0g/cm以上であり、前記焼結体の比抵抗が、300Kで1×10−3Ω・cm以下であることを特徴とする。
すなわち、このスパッタリングターゲットでは、焼結体の密度が、5.0g/cm以上であり、焼結体の比抵抗が、300Kで1×10−3Ω・cm以下であるので、高密度および高強度であり、機械加工性が向上すると共に高い導電性も有するため良好なDCスパッタが可能になる。
【0009】
第3の発明のスパッタリングターゲットは、第1又は第2の発明において、前記WO相の組織中の割合が、60%以下であることを特徴とする。
すなわち、このスパッタリングターゲットでは、WO相の組織中の割合が60%以下であるので、比抵抗の増大を抑制することができる。
【0010】
第3の発明のスパッタリングターゲットは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記WO相と前記W1849相との組織中の最大粒径が、50μm未満であることを特徴とする。
すなわち、このスパッタリングターゲットでは、WO相とW1849相との組織中の最大粒径が50μm未満であるので、比抵抗の増大を抑制することができる。
【0011】
第3の発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、WOと、W1849及びWOの少なくとも一方とを含有した酸化タングステン粉を真空中でホットプレスにて焼結し、酸化タングステンの焼結体とする工程を有し、前記酸化タングステン粉中の前記WOの含有量を、5〜95mol%とすることを特徴とする。
すなわち、このスパッタリングターゲットの製造方法では、WOと、W1849及びWOの少なくとも一方とを含有した酸化タングステン粉を真空中でホットプレスにて焼結し、酸化タングステンの焼結体とする工程を有しているので、半導体であるWO相と金属伝導性を示すW1849相とが混在して高い導電性を得ることができる。
なお、WOの含有量を、5〜95mol%とした理由は、5mol%未満である場合又は95mol%を超える場合、比抵抗が1×10−3Ω・cmを超えて大きくなってしまうためである。
【0012】
第4の発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、第3の発明において、前記ホットプレス時の保持温度を、850〜1400℃とすることを特徴とする。
すなわち、このスパッタリングターゲットの製造方法では、ホットプレス時の保持温度を、850〜1400℃とすることで、比抵抗が低く高強度のターゲットを得ることができる。なお、ホットプレス時の保持温度を上記範囲に設定した理由は、850℃未満であると、十分な密度が得られず高強度が得られないためであり、1400℃を超えると、融点が1473℃であるWOが溶け出すおそれがあるためである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法によれば、WOと、W1849及びWOの少なくとも一方とを含有した酸化タングステン粉を真空中でホットプレスにて焼結し、酸化タングステンの焼結体とする工程を有しているので、半導体であるWO相と金属伝導性を示すW1849相とが混在して高い導電性を得ることができる。したがって、この製法で得られた本発明のスパッタリングターゲットは、WO相とW1849相との2相以上からなる組織を有した酸化タングステンの焼結体であり、WO相の組織中の割合が、5%以上であるので、このターゲットを用いることで、高い導電性により生産性の高いDCスパッタができ、良好にWO膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るスパッタリングターゲットおよびその製造方法の実施例3において、作製したスパッタリングターゲットの断面組織を電子線マイクロアナライザ(EPMA)により測定した組成像(COMP像)に模式的な説明図を追加した図である。
【図2】本発明に係るスパッタリングターゲットおよびその製造方法の実施例9において、作製したスパッタリングターゲットの断面組織をEPMAにより測定した組成像(COMP像)に模式的な説明図を追加した図である。
【図3】本発明に係る実施例1〜3において、ホットプレスの保持温度に対する焼結体の密度を示すグラフである。
【図4】本発明に係る実施例1〜3において、ホットプレスの保持温度に対する焼結体の比抵抗を示すグラフである。
【図5】本発明に係る実施例1〜3及び9において、EPMAによる組成像(CP)、タングステン(W)の元素マッピング像および酸素(O)の元素マッピング像を示す写真である。
【図6】本発明に係る実施例3において、作製したスパッタリングターゲットのX線回折(XRD)結果を示すグラフである。
【図7】本発明に係る実施例9において、作製したスパッタリングターゲットのXRD結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のスパッタリングターゲットおよびその製造方法の一実施形態を、図1を参照して説明する。
【0016】
本実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法は、WOと、W1849及びWOの少なくとも一方とを含有した酸化タングステン粉を作製する工程と、該酸化タングステン粉を真空中でホットプレスにて焼結し、酸化タングステンの焼結体とする工程とを有している。
また、酸化タングステン粉を作製する工程において、酸化タングステン粉中のWOの含有量を、5〜95mol%としている。
【0017】
すなわち、まずWO粉を、還元処理して半導体のWO粉と金属伝導性のW1849粉との混合粉とし、全体としてWOの含有量が5〜95mol%となるWO粉(酸化タングステン粉:X=2〜3)とする。
上記還元処理としては、例えばWO粉を水素雰囲気中で所定時間、所定温度で加熱して水素化還元を行う。この水素化還元では、WOからWO2.9、WO2.72(W1849)、WO、Wの順に還元が進行し、その過程でWO及びW1849も得られる。
【0018】
なお、このWO粉のxの定量方法は、まずWO粉のサンプリングを行い、重量測定をした後、大気中において800℃で1時間焼成し、再び重量測定を行う。そして、全てWO粉となっていることをX線回折法(XRD)で確認し、W(タングステン)量を以下の式により計算する。そして、求めたW量から酸素(O)の割合をxとして算出する。
Wの重量=上記焼成後の重量×Mw/MwWO3
W(wt%)=(Wの重量/焼成前のWOの重量)×100
(Mw:Wの原子量(183.85)、MwWO3:WOの原子量(231.85))
【0019】
また、WO粉をXRDにて観察することで、WO相に帰属する回折ピークとW1849相に帰属する回折ピークとを確認し、WOとW1849との含有を確認する。なお、WOに帰属する回折ピークが観察されないことが好ましい。
【0020】
次に、得られたWO粉とジルコニアボールとをポリ容器(ポリエチレン製ポット)に入れ、例えば乾式ボールミル装置にて混合する。この後、得られた粉末を、所定の目開きの篩にかけて分級し、850℃〜1400℃にて2時間、100〜350kgf/cmの圧力にて真空中でホットプレスし、スパッタリングターゲットとする。
この製造方法により作製されたWOのスパッタリングターゲットは、焼結体の密度が、5.0g/cm以上となり、焼結体の比抵抗が、300Kで1×10−3Ω・cm以下となる。
【0021】
このように、本実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法では、WOと、W1849及びWOの少なくとも一方とを含有した酸化タングステン粉を真空中でホットプレスにて焼結し、酸化タングステンの焼結体とする工程を有しているので、半導体であるWO相と金属伝導性を示すW1849相とが混在して高い導電性を得ることができる。
また、ホットプレス時の保持温度を、850〜1400℃とすることで、比抵抗が低く高強度のターゲットを得ることができる。
【0022】
このように作製された本実施形態のスパッタリングターゲットでは、上述したように、WO相とW1849相との2相以上からなる組織を有した酸化タングステンの焼結体であり、WO相の組織中の割合が、5%以上であるので、高い導電性により生産性の高いDCスパッタができ、良好にWO膜を成膜することができる。
特に、焼結体の密度が、5.0g/cm以上であり、焼結体の比抵抗が、300Kで1×10−3Ω・cm以下であるので、高密度および高強度であり、機械加工性が向上すると共に高い導電性も有するため良好なDCスパッタが可能になる。
【0023】
また、WO相の組織中の割合を60%以下とすることで、比抵抗の増大を抑制することができる。
さらに、WO相とW1849相との組織中の最大粒径を50μm未満とすることでも、比抵抗の増大を抑制することができる。
【実施例】
【0024】
上記本実施形態に基づいて実際に作製したスパッタリングターゲットおよびその製造方法の実施例について、評価を行った結果を説明する。
まず、上述したWO粉の還元処理によりWO粉とW1849粉とからなるWO粉を作製した。本実施例では、還元の度合いを調整することにより、表1に示すように、x=2.62のWO粉(平均粒径2.4μm)と、x=2.57のWO粉(平均粒径19.0μm)とした。また、WO粉とWO粉との乾式混合によりWO粉も作製した。混合の度合いを調整することによりx=2.50のWO粉(平均粒径3.2μm)を得た。これら3種類を、それぞれホットプレス時の保持温度:850,900,1200℃で作製した。
【0025】
このWO粉を、表1に示すように、ホットプレス時の保持温度を変えた条件において真空中でホットプレスを2時間行い、本発明の実施例1〜9のスパッタリングターゲットを得た。
なお、比較例として、WO粉のみ(x=3.00)又はWO粉のみ(x=2.00)の原料粉を用いて、表1に示す条件において真空中でホットプレスを2時間行い、本発明の比較例3〜5のスパッタリングターゲットを得た。
【0026】
<評価>
これらの実施例および比較例について、スパッタリングターゲット(焼結体)の密度および比抵抗について測定した結果を表1に示す。また、本発明の実施例1〜3において、ホットプレスの保持温度と得られたターゲットの密度との関係を図3に示すと共に、ホットプレスの保持温度と得られたターゲットの比抵抗との関係を図4に示す。
なお、比抵抗は、温度300Kにおいて三菱ガス化学製四探針抵抗測定計ロレスターで測定することによって求めた。
【0027】
また、組織中のWO相の割合及び最大粒径については、以下のように測定した。
まず、組織観察をEPMA(フィールドエミッション型電子線プローブマイクロアナライザー)を用い、元素の組成分布を示す元素分布像を観察した。また、EPMAでの観察において、0.005mmの観察視野の写真(500倍)を5枚撮影し、その中で観察可能なWO相の面積を測定し、観察領域全体に対する面積比を計算した。
【0028】
なお、WO相の面積比は、例えば、以下(a)〜(d)の手順により測定することができる。
(a)EPMAにより500倍のCOMPO像(60μm×80μm)10枚を撮影する。
(b)市販の画像解析ソフトにより、撮影した画像をモノクロ画像に変換すると共に、単一しきい値を使用して二値化する。二値化とは、画像の各画素の輝度(明るさ)に対してある“しきい値”を設け、しきい値以下ならば“0”、しきい値より大きければ“1”として、領域を区別化することである。なお、画像解析ソフトとしては、例えば、WinRoof Ver5.6.2(三谷商事社製)などが利用できる。二値化とは、画像の各画素の輝度(明るさ)に対してある“しきい値”を設け、しきい値以下ならば“0”、しきい値より大きければ“1”として、領域を区別化することである。
(c)この画像すべてを選択しない最大のしきい値を100%とし、30〜60%のしきい値を使用しWO相の領域を選択する。この操作によりWO相の面積から観察領域全体に対する面積比を算出した。
(d)WO相の最大粒径は、撮影した5枚の写真のうち最も面積の大きいWO相を選び、そのWO相の最大幅を最大粒径として計測した。
【0029】
【表1】

【0030】
これらの結果からわかるように、WO粉のみで作製された比較例3,4では、導電性が無く比抵抗の測定ができなかった。また、WO粉のみで作製された比較例5では、比抵抗が300Kで3.10×10−3Ω・cmと高かった。これらに対し、本発明の実施例1〜9では、いずれも密度が5.0g/cm以上であると共に比抵抗が300Kで1×10−3Ω・cm以下となっている。また、ホットプレスの保持温度が高いほど、密度が高くなると共に、比抵抗が低下している。
【0031】
なお、組織中のWO相の最大粒径が50μm以上である実施例11と、WO相の組織中の割合が60%を超えている実施例12とは、どちらも比較例1,2,5よりも比抵抗が低いが、1×10−3Ω・cmを超えてしまっている。また、組織中のWO相の割合が5%未満である比較例1,2では、いずれも比抵抗が3×10−3Ω・cmを超えている。
【0032】
次に、実施例1〜3及び9について、電子線マイクロアナライザ(EPMA)による組成像(CP)、タングステン(W)の元素マッピング像および酸素(O)の元素マッピング像を図5示す。ここで、EPMAによる元素マッピング像は、本来カラー像であるが、白黒像に変換して記載しているため、濃淡の淡い部分(比較的白い部分)が所定元素の濃度が高い部分となっている。
【0033】
図5からわかるように、本発明の実施例1〜3及び9では、ホットプレスの保持温度が高いほど空洞が少なくなっており、これにより密度が向上すると共に、比抵抗も低下していると思われる。特に、ホットプレスの保持温度が1200℃の実施例3では、W1849相が粒状のWO相の周囲を覆うようにマトリックスとなっている。
なお、実施例3と実施例9とについては、拡大した組成像を、図1および図2に示す。
【0034】
これら図1および図2からわかるように、本発明の実施例3では、金属伝導性を示すマグネリ相のW1849相の素地中に、半導体特性を示す粒状(島状)のWO相が分散分布している組織となっている。また、本発明の実施例9では、WO相とW1849相との間に半導体のWO相(X=2〜2.72)が介在した組織となっている。すなわち、実施例3及び実施例9では、共にWO相間に介在するW1849相によって良好な導電性が得られており、特に実施例9では、WO相間により多く介在するW1849相によって十分な電気伝導パスが確保されることで、さらに高い導電性が得られ、比抵抗が大幅に低減されていると考えられる。
【0035】
なお、文献によれば、WOの比抵抗は300Kで2.0×10−3Ω・cm(化学大辞典3巻)、WOの比抵抗は300Kで2.9×10−3Ω・cm(理化学事典第5版)、W1849の比抵抗は300Kで2.75×10−3Ω・cm(理化学事典第5版)とされているのに対し、本発明の各実施例では比抵抗が300Kで1×10−3Ω・cm以下と低くなるのは、金属−半導体接合による効果が生じていると考えられる。すなわち、WOは半導体特性を示し、W1849は金属伝導性を示すが、図1に示すように、焼結体の組織がWO相とW1849相との接合により金属−半導体接合のようになっており、半導体側のエネルギー準位に変化が生じて金属側への電子移動が起こった結果、金属での自由電子が増加して比抵抗が劇的に低下していると考えられる。
【0036】
次に、実施例3および実施例9について、作製したスパッタリングターゲットのX線回折(XRD)結果を図6および図7に示す。
なお、このX線回折の測定条件は、以下のとおりである。
試料の準備:試料はSiC−Paper(grit 180)にて湿式研磨、乾燥の後、乳鉢で粉砕後250μm以下の粉を測定試料とした。
装置:理学電気社製(RINT−Ultima/PC)
管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:50mA
走査範囲(2θ):5°〜80°
スリットサイズ:発散(DS)2/3度、散乱(SS)2/3度、受光(RS)0.8mm
測定ステップ幅:2θで0.02度
スキャンスピード:毎分2度
試料台回転スピード:30rpm
【0037】
これらX線回折の結果からわかるように、いずれも2θ=25.9°の(110)面のピークをメインピークとするWO相に帰属する回折ピークと、2θ=23.5°の(010)面のピークをメインピークとするW1849相に帰属する回折ピークとがあり、WOとW1849とが確認された。
なお、いずれの実施例のスパッタリングターゲットにおいても、WO相とW1849相との2相以上からなる組織を有していることが確認された。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態および上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
WO相とW1849相との2相以上からなる組織を有した酸化タングステンの焼結体であり、
前記WO相の組織中の割合が、5%以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項2】
請求項1に記載のスパッタリングターゲットにおいて、
前記焼結体の密度が、5.0g/cm以上であり、
前記焼結体の比抵抗が、300Kで1×10−3Ω・cm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲットにおいて、
前記WO相の組織中の割合が、60%以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットにおいて、
前記WO相と前記W1849相との組織中の最大粒径が、50μm未満であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項5】
WOと、W1849及びWOの少なくとも一方とを含有した酸化タングステン粉を作製する工程と、
該酸化タングステン粉を真空中でホットプレスにて焼結し、酸化タングステンの焼結体とする工程とを有し、
前記酸化タングステン粉中の前記WOの含有量を、5〜95mol%とすることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のスパッタリングターゲットの製造方法において、
前記ホットプレス時の保持温度を、850〜1400℃とすることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−76163(P2013−76163A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195715(P2012−195715)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】