説明

ナノインプリント用モールドの製造方法

【課題】レジストパターンへのスパッタ法を用いることなしに電流シード層を形成し、それによって高品質なモールドが得られる、ナノインプリント用モールドの製造方法の提供。
【解決手段】(1)導電性表面を有する基板を準備する工程と;(2)導電性表面を有する基板上に凹凸パターンを有するレジスト層を形成し、レジスト層のパターンの凹部において、導電性表面を露出させる工程と;(3)レジスト層のパターンの凹部に露出した導電性表面上に電鋳を行って、レジスト層の膜厚よりも大きい膜厚を有する電鋳膜を形成する工程と;(4)導電性表面を有する基板およびレジスト層を除去する工程とを有することを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用モールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CDおよびDVDなどの光ディスクの表面には、400nmから700nm程度のパターン精細度(ライン/ドットの繰り返し間隔)を有するデータを記録するライン/ドットが形成されている。それら光ディスクはポリカーボネートの射出圧縮成形法を用いて製造される。すなわち、データに相当する凹凸パターンを持つモールド(金型あるいはスタンパとも呼ばれる)に樹脂を射出し、圧縮成型して樹脂にパターンを転写する。図1に、光ディスク用スタンパの製造方法の一例の概略を示す。研磨・洗浄を施したガラス原盤に対して、レジストを塗布し、パターン状のカッティング(露光)および現像を行って、凹凸パターンを形成する。次いで、スパッタまたは無電解メッキなどの方法によって、電流シード層となる電極膜を付着する。そして、電鋳法によってニッケルを堆積させ、最後にガラス原盤およびレジストを剥離することによって、モールド(スタンパ)が得られる。剥離されたガラス原盤は、レジスト剥離の後にリサイクルして、ガラス原盤として再使用することができる。
【0003】
ニッケル電鋳法は、微細構造を精密に複製するための優れた手法であることが知られている。光ディスク用スタンパは数十万回のインプリント耐久性を有するが、メディアの生産効率を向上させるために、通常、スタンパの複製が行われる。すなわち、前述の方法で得られた凸型スタンパ(Fatherスタンパ)を電鋳のマスタとして再使用し、凹型のスタンパ(Motherスタンパ)を得る。さらに、Motherスタンパを電鋳のマスタとして使用し,実際にメディアの製造に使用する量産用凸型スタンパを得ている。FatherスタンパからMotherスタンパを得る段階およびMotherスタンパから量用凸型スタンパを得る段階のそれぞれにおいて各10枚の複製を行った場合、1枚のFatherスタンパから1000枚の量産用凸型スタンパを得ることができる。
【0004】
ナノインプリントに用いるモールドも、基本的には光ディスク製造に使用するモールドと同様の方法で製造することができるが、インプリントする材料およびパターン精細度などの諸条件が異なる。特に、数十nmのパターン精細度を有する微細な構造体を転写するためのモールドを作製するためには、ステッパまたは電子線描画装置などの高い描画性能を有するリソグラフィ装置を用いて、シリコン基板上にレジストのパターンを形成することが必要である。このレジストパターンを用いて電鋳を行うためには、レジストパターンの上に電流シード層を形成する必要がある。
【0005】
しかしながら、パターン精細度が100nm以下になると、スパッタによって凹凸パターン上に形成される電流シード層の被覆性(特に膜厚の均一性)が低下する。すなわち、レジストパターンの上部、側壁および底部(パターン凹部の基板露出部、すなわちトレンチ)で、得られる電流シード層の膜厚が異なるものとなる。特にレジストパターン上部において、優先的に電流シード層の形成が進行し、トレンチ開口部(隣接するレジストパターン凸部の間隙)が狭窄するという問題が発生する。従来のスパッタ法を用いた場合の凹凸パターン上における膜の断面形状の例として、半導体基板に形成された窒化チタンの形状が説明されている(特許文献1参照)。すなわち、スパッタ法では、高真空にされたチャンバー内に、半導体基板とターゲットとを互いに対向して配置する。そして、チャンバー内にアルゴン等の不活性ガスを導入し、半導体基板とターゲットとの間に電圧を印加するとグロー放電が発生し、アルゴンガスが電離する。このアルゴンイオンがターゲットの表面に衝突して、ターゲットからチタンを弾き出す。弾き出されたチタンは、アルゴンイオンにより十分なエネルギーを得て、半導体基板に向かって飛行する。ここで、弾き出されたチタンはすべて一様に半導体基板に対して垂直方向に飛行するのではなく、ある程度ランダムな方向性を持っている。このため,図2に示すように,基板210上にレジスト層220を用いてホールまたは溝(トレンチ)である凹部およびリッジである凸部が形成されている場合、チタンはホールまたはトレンチの底部には堆積しにくく、レジスト層220のリッジ上部においてオーバーハングを有する形状を有するチタン堆積膜230が得られる。このように、従来の方法ではホールまたはトレンチの底部に被覆性良くスパッタ膜を形成することができないという問題点があった。
【0006】
この問題点に対して、基板とターゲットとの間に、多数の貫通穴が形成されたコリメータを配置して被覆性を向上させる方法が記されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、コリメータにターゲット金属が付着し、その付着した金属が基板上にごみとして落ちてしまうという、いわゆるパーティクルの問題、ならびにスパッタされた金属のうち基板に垂直に入射するものだけが成膜に関与するため、成膜速度がコリメータを用いないスパッタ法を適用した場合に比べて1/5程度と遅くなるという問題が生じる。さらに、チタンターゲットに対して熱電子を衝突させてチタンイオンを発生させ、そのチタンイオンに電界勾配を作用させて飛行方向を制御することによって、被覆性を向上させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、スパッタ膜を使用しないスタンパの作製方法として、ニッケル板表面にレジストパターンを形成し、レジストパターン底部において露出したニッケル板を電流シード層として用いる電鋳を行い、レジストパターンを除去してスタンパを得る方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法において、スタンパのパターン凸部の高さは電鋳時間によって制御される。そのため、レジスト厚さによってパターン凸部の高さを規定する手法と比較して、パターン凸部の高さを精密に制御することができないという問題点を有する。さらに、一般的に電鋳膜の成長表面は梨地状であり、大きな表面粗さを有する。特許文献2の方法で得られるスタンパは電鋳膜の成長表面を押圧面となるため、小さい表面粗さを要求されるナノインプリント用モールドとしては適さない。
【0008】
【特許文献1】特開平8−186108号公報
【特許文献2】特開2001−33634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のスパッタ法で形成される電流シード層を用いるナノインプリント用モールドの製造方法の例を図3に示す。最初に、図3(a)に示すように基板310の上にレジスト層320を塗布し、次いでレジスト層320をパターニングして図3(b)に示すようなリッジ(凸部)およびトレンチ(凹部)のパターンを得る。次に、レジスト層320上に、スパッタ法を用いて電流シード層330を堆積させる。このとき、電流シード層330の堆積はレジスト層320のリッジ上部において優先的に進行し、オーバーハング形状を有する電流シード層330が得られる。
【0010】
次に、この積層体を電鋳液に浸漬して、電流シード層330に電流を印加すると、図3(d)に示すように、電流シード層330の全表面上で電鋳膜340の堆積が開始される。電鋳膜340の堆積は等方的に進行する。さらに電鋳を継続すると、電流シード層330のオーバーハング形状のために、ホールまたはトレンチの上方において電鋳膜340が接合し、図3(e)に示すようにトレンチ内部に空隙350が取り残される。最後に、基板310およびレジスト層320を剥離して、電流シード層330および電鋳膜340からなるモールド300が得られる。
【0011】
しかしながら、得られるモールド300は、その凸部に残留する空隙350のために、低い機械的強度を有する。また、残留する空隙350は、モールド300の変形およびパターン欠損などの欠陥の発生原因となり得る。
【0012】
したがって、本発明の目的は、レジストパターンへのスパッタ法を用いることなしに電流シード層を形成し、それによって高品質なモールドが得られる、ナノインプリント用モールドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のナノインプリント用モールドの製造方法は:(1)導電性表面を有する基板を準備する工程と;(2)導電性表面を有する基板上に凹凸パターンを有するレジスト層を形成し、レジスト層のパターンの凹部において、導電性表面を露出させる工程と;(3)レジスト層のパターンの凹部に露出した導電性表面上に電鋳を行って、レジスト層の膜厚よりも大きい膜厚を有する電鋳膜を形成する工程と;(4)導電性表面を有する基板およびレジスト層を除去する工程とを有することを特徴とする。ここで、導電性表面を有する基板は、金属基板、または絶縁性または半導体性支持体上に電流シード層を形成した積層体であってもよい。電流シード層は、金、プラチナ、チタンまたはアルミニウムを用いて形成することができ、10nm〜100nmの膜厚を有することが望ましい。また、レジストパターンの凹部を:(a)10〜100nmの線幅を有し、10〜100nmの間隔で配置されるトレンチ;(b)一辺が10〜200nmの矩形状底面または直径が10〜200nmの円形状底面を有し、10〜200nmの間隔で配置されるホール;または(c)それらの組み合わせから構成してもよい。ここで、前記トレンチおよびホールを同心円状またはスパイラル状に配列することが望ましい。さらに、工程(2)は、レジスト層を導電性表面上に塗布する工程と、レジスト層を電子線描画法によってパターニングする工程とを含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記のような構成をとることによって、電鋳膜がレジスト層のパターン底部の導電性表面から上方に向かって一方向的に成長するので、内部に空隙が存在しないナノインプリント用モールドを得ることができる。得られたモールドは、十分な機械的強度を有し、かつモールドの変形およびパターン欠損などの欠陥は存在せず、高い品質を有する。また、得られるモールドの凸部の高さは、レジスト層の膜厚によって規定されるため、高い精度で制御することが可能である。得られるモールドの凸部の上面は、導電性表面に接触していた面であるために、その表面粗さを小さくすることができる。この点からも、本発明の方法によって得られるモールドは、ナノインプリント用として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図4に本発明のナノインプリント用モールドの製造方法の概略を示す。最初に、導電性表面を有する基板10を準備する。本発明における導電性表面を有する基板10は、金属基板(不図示)であってもよいし、絶縁性または半導体性の支持体11の上に、電流シード層30を形成した積層体であってもよい。
【0016】
導電性表面を有する基板10として金属基板を用いる場合、金属基板は、金、プラチナ、チタンまたはアルミニウムを用いて製造することができる。絶縁性または半導体性の支持体11としては、ガラス支持体、シリコン支持体、カーボン支持体などを用いることができる。電流シード層30の材料は、金、銀、プラチナ、チタン、アルミニウムなどの金属を含む。それら金属を、蒸着、スパッタ、電解メッキなどの方法を用いて絶縁性または半導体性の支持体11の上に付着することによって、電流シード層30を形成することができる。絶縁性または半導体性の支持体11の上に、電流シード層30を形成した積層体を用いる場合、電流シード層30は、基板10周縁部に取り付けられる電力供給手段からの電流を基板10全面にわたって供給することができる膜厚を有することが望ましい。この観点から、電流シード層30は、10nm〜100nmの膜厚を有することが望ましい。必要に応じて、研磨などの方法を用いて、基板10の導電性表面(図4における電流シード層30の表面)の表面粗さを小さくしてもよい。導電性表面の表面粗さを小さくすることは、最終的に得られるモールド100の凸部上面の表面粗さを小さくする点において有効である。
【0017】
次に、電流シード層30の表面を酸化処理して、5nm以下、望ましくは1〜3nmの膜厚を有する酸化皮膜を形成する。金、銀およびプラチナのような不活性金属を用いて電流シード層30を形成する場合は、電流シード層の上に、前述の膜厚の酸化物皮膜を形成する。このような膜厚の酸化皮膜または酸化物皮膜は電鋳工程に支障をきたすことがなく、本発明の目的において電流シード層30の表面は依然として導電性といえる。そして、それら酸化皮膜または酸化物皮膜は、電流シード層30と電鋳膜40との分離を容易にする。
【0018】
次に、導電性表面を有する基板10上に凹凸パターンを有するレジスト層20を形成し、レジストパターン凹部において、導電性表面を露出させる。この工程は、たとえば、図4(b)に示すように基板10の導電性表面(図4の例においては電流シード層30である)の全面にわたってレジスト層20を形成した後に、図4(c)に示すようにレジスト層20のパターニングを行うことによって実施することができる。
【0019】
導電性表面全面にわたるレジスト層20の形成は、スピンコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法などの当該技術において知られている塗布法を用いて実施することができる。レジスト層20は、100nm以下、好ましくは10〜60nmの膜厚を有することが望ましい。レジスト層20の材料は、引き続くパターニング工程において用いられる放射線(電子線、真空紫外線、深紫外線、紫外線など)に適合することを条件として、任意の市販の材料を用いることができる。レジスト層20の材料は、放射線に暴露された部位が硬化する、いわゆるネガ型材料であってもよいし、放射線に暴露された部位が可溶化する、いわゆるポジ型材料であってもよい。
【0020】
次いで、レジスト層20をパターニングする。パターン精細度の観点から、この工程は、たとえば電子線描画法を用いて実施することが望ましい。電子線描画法においては、電子線に対してレジスト層20をパターン状に暴露し、暴露部を硬化または可溶化させる。その後、レジスト層20を現像液に浸漬して、未硬化部または可溶化部を除去して、複数の凹部を形成する。また、硬化部および非可溶化部は凸部となり、リッジを構成する。現像液は、用いたレジスト層20の材料に応じて適宜選択することができる。本発明においては、凹部の底面において、基板10の導電性表面(図4の例においては電流シード層30の表面)が露出することが必要である。
【0021】
本発明において、レジスト層20の凹部は、ホールまたはトレンチのいずれか、またはそれらの組み合わせであってもよい。レジスト層20にホールを形成する場合、ホールは、一辺が10nm〜200nmの矩形状、あるいは直径が10nm〜200nmの円形状の底面を有することが望ましい。また、隣接する2つのホールの間の間隔は、10nm〜200nmとすることが望ましい。また、レジスト層20にトレンチ(すなわち溝)を形成する場合、トレンチは10〜100nmの線幅を有することが望ましい。また、隣接する2つのトレンチの間の間隔は、10nm〜100nmとすることが望ましい。ホールまたはトレンチは、基板10の上に同心円状またはスパイラル状に配置することが望ましい。本発明における「ホールの同心円状配置」とは、ホールの中心線を繋いだ際に複数の同心円になることを意味する。また、本発明における「ホールのスパイラル状配置」とは、ホールの中心線を繋いだ際に、一回転する毎に等ピッチで半径位置が変化する螺旋を描くことを意味する。また、ホールおよびトレンチを組み合わせて凹部を形成する場合においても、ホールおよびトレンチ全体として、同心円状またはスパイラル状のパターンに配置することが望ましい。本発明における「ホールおよびトレンチ全体としての同心円状配置」とは、ホールおよびトレンチの中心線を繋いだ際に複数の同心円になることを意味する。また、本発明における「ホールおよびトレンチ全体としてのスパイラル状配置」とは、ホールおよびトレンチの中心線を繋いだ際に、一回転する毎に等ピッチで半径位置が変化する螺旋を描くことを意味する。
【0022】
一方、本発明におけるレジスト層20のリッジの高さは、レジスト層20の膜厚によって決定される。リッジの高さは、最終的に得られるモールドの凹凸の高さに相当し、100nm以下、好ましくは10〜60nmであることが望ましい。
【0023】
次に、得られた積層体を電鋳液に浸漬し、レジスト層20の凹部に露出した導電性表面上に電鋳を行って、電鋳膜40を形成する。電鋳膜40は、Ni、Cu、Au、Ni−P合金、Ni−Co合金、Ni−Fe合金などを用いて形成することができる。特に、Niを用いて電鋳膜を形成することが好ましい。電鋳液は、当該技術において知られている任意の組成の溶液を用いることができる。たとえば、Niからなる電鋳膜40を形成する場合、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸を主成分とする溶液、スルファミン酸ニッケルおよびホウ酸を主成分とする溶液、あるいは塩化ニッケルを主成分とする溶液を電鋳液として用いることができる。また、導電性表面(図4の場合の電流シード層30)は、陰極として用いられ、たとえば基板10の周縁部に取り付けられる電力供給手段(不図示)から電流を供給される。電鋳の際の陽極は、電鋳膜40の材料と同一の金属(Niなど)を用いて形成して、電鋳膜40の材料の供給源として用いてもよい。あるいはまた、不溶性の金属からなる陽極を用いてもよい。この場合には、必要に応じて電鋳液中に電鋳膜40の材料となる金属塩を補充してもよい。
【0024】
図4(d)に、本工程の初期における電鋳膜40の形状を示す。図3(d)に示したように凹凸パターンの電流シード層330の全表面から全方向に向かって電鋳膜340が成長する場合とは異なり、本発明の方法においては、複数の電鋳膜40が、レジスト層20のホールまたはトレンチの底部に露出した導電性表面(図4の場合の電流シード層30)から上方に向かって、一方向的に成長する。したがって、ホールまたはトレンチの内部において、電鋳膜40の内部に空隙が発生することはない。
【0025】
本発明においては、図4(e)に示すようにホールまたはトレンチ内の複数の電鋳膜40がレジスト層20のリッジを超えて一体化し、一体化した電鋳膜が十分な膜厚に成長するまで、電鋳をさらに継続する。所望される用途に依存するが、機械的強度などの観点から、電鋳膜40が50〜300μmの最大膜厚(図4(e)において電流シード層30と接触する部分)を有することが好ましい。
【0026】
最後に、導電性表面を有する基板10(図4における絶縁性または半導体性の支持体11および電流シード層30)およびレジスト層20を除去して、電鋳膜40からなるモールド100が得られる。電流シード層30表面に形成された酸化皮膜または酸化物皮膜の補助などによって、電鋳膜40と導電性表面を有する基板10との分離を実施することができる。さらに、分離後に、酸素プラズマ処理またはアルカリ溶液中への浸漬などを実施することによって、電鋳膜40からレジスト層20を除去することができる。
【0027】
得られるモールド100は、内部に空隙が存在しないので、十分な機械的強度を有し、かつモールド100の変形およびパターン欠損などの欠陥は存在せず、高い品質を有する。また、得られるモールド100の凸部の高さは、レジスト層20の膜厚によって規定されるため、高い精度で制御することが可能である。さらに、得られるモールド100の凸部の上面は、導電性表面(図4における電流シード層30)に接触していた面であるために、その表面粗さを小さくすることができる。この点からも、本発明の方法によって得られるモールド100は、ナノインプリント用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】光ディスク用スタンパの製造方法の一例の概略を示す図である。
【図2】従来のスパッタ法で作製したチタン堆積膜の被覆性を示す概略図である。
【図3】従来のスパッタ法を用いて電流シード層を形成するナノインプリント用モールドの製造方法を示す図であり、(a)〜(f)は各工程を示す図である。
【図4】本発明のナノインプリント用モールドの製造方法を示す図であり、(a)〜(f)は各工程を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 導電性表面を有する基板
11 絶縁性または半導体性の支持体
210、310 基板
20、220、320 レジスト層
30、330 電流シード層
230 チタン堆積膜
40、340 電鋳膜
100、300 モールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)導電性表面を有する基板を準備する工程と、
(2)導電性表面を有する基板上に凹凸パターンを有するレジスト層を形成し、レジスト層のパターンの凹部において、導電性表面を露出させる工程と、
(3)レジスト層のパターンの凹部に露出した導電性表面上に電鋳を行って、レジスト層の膜厚よりも大きい膜厚を有する電鋳膜を形成する工程と、
(4)導電性表面を有する基板およびレジスト層を除去する工程と
を有することを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項2】
導電性表面を有する基板は、金属基板、または絶縁性または半導体性支持体上に電流シード層を形成した積層体であることを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項3】
電流シード層は、金、プラチナ、チタンまたはアルミニウムで形成されることを特徴とする請求項2に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項4】
電流シード層は、10nm〜100nmの膜厚を有することを特徴とする請求項3に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項5】
レジストパターンの凹部は、
(a)10〜100nmの線幅を有し、10〜100nmの間隔で配置されるトレンチ;
(b)一辺が10〜200nmの矩形状底面または直径が10〜200nmの円形状底面を有し、10〜200nmの間隔で配置されるホール;および
(c)それらの組み合わせ
から構成され、前記トレンチおよびホールは、同心円状またはスパイラル状に配列されることを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項6】
工程(2)は、レジスト層を導電性表面上に塗布する工程と、レジスト層を電子線描画法によってパターニングする工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−17865(P2010−17865A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177882(P2008−177882)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】