説明

ファイバレーザ装置およびファイバレーザ装置の制御方法

【課題】複数の励起用レーザダイオードの負荷を均一化すること。
【解決手段】光ファイバを用いてレーザ光を発生または増幅するファイバレーザ装置1において、光ファイバ11,21に対して励起光を供給する複数のレーザダイオード16,17,24,25と、複数のレーザダイオードを駆動する駆動手段(駆動部18,19,26,27)と、光ファイバから出射されるレーザ光が所望の強度になり、かつ、複数のレーザダイオードのそれぞれの負荷が等しくなるように駆動手段を制御する制御手段(制御部30)と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバレーザ装置およびファイバレーザ装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸ガス(CO)レーザやネオジウム・ヤグ(Nd:YAG)レーザといったレーザが、物質の加工を目的として商用化され、高強度のビームを利用した板金加工、パルス光を利用したマーキングや彫刻などの微細加工に用いられている。一方、近年、共振器あるいは増幅器に光ファイバを用いるファイバレーザの高強度化が進んでいる。このようなファイバレーザは、前述した炭酸ガスレーザやネオジウム・ヤグレーザと比較して、ビーム品質が安定しており、ビーム広がり角度が小さく、メンテナンス性に優れているといった特徴を備えていることから、加工用レーザとしての利用が広がりつつある。
【0003】
ファイバレーザの光学構成としては、例えば、特許文献1に説明されているように、共振器および増幅器を双方とも励起用半導体レーザ(以下、LD(Laser Diode))と希土類添加ファイバで構成し、励起用LDと希土類添加ファイバをカプラで結合したものがある。また、たとえば特許文献2で例示されているように、LDを種光源として用いる構成もある。
【0004】
このような光学構成において、パルス出力を得るための光出力制御を行う場合、特許文献1で言及されているように、発振器の駆動をQスイッチ型で行うと光出力波形の自由な制御が行えず、加工対象の特性に応じた適切なパルス光が得られない可能性がある。そこで特許文献1では、ファイバ型共振器の発振閾値付近まで励起用LDの出力を上げるよう電流値を制御し、その電流値を起点として電流を制御することで、緩和発振を抑制しながら出力パルス波形を制御するという方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−176944号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0080570号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に挙げられているように、励起用LD(または励起用LD群)に流す電流量を個別に制御する場合、特定のLD(またはLD群)の負荷が増大し、これらのLD(またはLD群)の寿命が短くなったり、故障につながったりするという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、複数の励起用レーザダイオードの負荷を均一化することが可能なファイバレーザ装置およびファイバレーザ装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のファイバレーザ装置は、光ファイバを用いてレーザ光を発生または増幅するファイバレーザ装置において、前記光ファイバに対して励起光を供給する複数のレーザダイオードと、前記複数のレーザダイオードを駆動する駆動手段と、前記光ファイバから出射されるレーザ光が所望の強度になり、かつ、前記複数のレーザダイオードのそれぞれの負荷が等しくなるように前記駆動手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、複数の励起用レーザダイオードの負荷を均一化することが可能となる。
【0009】
また、他の発明のファイバレーザ装置は、上記発明に加えて、光ファイバによりレーザ光を発生する発生部と、発生部によって発生されたレーザ光を光ファイバにより増幅する増幅部とを有し、前記発生部および増幅部のそれぞれは前方励起光を供給するレーザダイオード、および、後方励起光を供給するレーザダイオードの少なくとも一方を有し、前記制御手段はこれらのレーザダイオードの負荷が等しくなるように制御することを特徴とする。
このような構成によれば、ファイバレーザ装置が発生部と増幅部を有し、それぞれが前方励起光および後方励起光を発生するレーザダイオードの少なくとも一方を有する場合において、これらの発生部および増幅部を構成する複数の励起用レーザダイオードの負荷を均一化することが可能になる。
【0010】
また、他の発明のファイバレーザ装置は、上記発明に加えて、光ファイバによりレーザ光を発生する発生部と、発生部によって発生されたレーザ光を光ファイバにより増幅する増幅部とを有し、前記発生部および増幅部のそれぞれは前方励起光を供給するレーザダイオード群、および、後方励起光を供給するレーザダイオード群を有し、前記制御手段はこれらのレーザダイオードの負荷が等しくなるように制御する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、ファイバレーザ装置が発生部と増幅部を有し、それぞれが前方励起光を発生するレーザダイオード群および後方励起光を発生するレーザダイオード群の少なくとも一方を有する場合において、これらの発生部および増幅部を構成する複数の励起用レーザダイオードの負荷を均一化することが可能になる。
【0011】
また、他の発明のファイバレーザ装置は、上記発明に加えて、前記複数のレーザダイオードは、前方励起光を供給するレーザダイオード、および、後方励起光を供給するレーザダイオードの少なくとも一方を有し、前記制御手段はこれらのレーザダイオードの負荷が等しくなるように制御することを特徴とする。
このような構成によれば、ファイバレーザ装置が光ファイバを用いてレーザ光を発生または増幅する場合であって、前方励起光を供給するレーザダイオード、および、後方励起光を供給するレーザダイオードの少なくとも一方を有するときに、これら複数の励起用レーザダイオードの負荷を均一化することが可能になる。
【0012】
また、他の発明のファイバレーザ装置は、上記発明に加えて、前記複数のレーザダイオードは、前方励起光を供給するレーザダイオード群、および、後方励起光を供給するレーザダイオード群の少なくとも一方を有し、前記制御手段はこれらのレーザダイオードの負荷が等しくなるように制御することを特徴とする。
このような構成によれば、ファイバレーザ装置が光ファイバを用いてレーザ光を発生または増幅する場合であって、前方励起光を供給するレーザダイオード群、および、後方励起光を供給するレーザダイオード群の少なくとも一方を有するときに、これら複数の励起用レーザダイオードの負荷を均一化することが可能になる。
【0013】
また、他の発明のファイバレーザ装置は、上記発明に加えて、前記制御手段は、レーザ光の所望の強度値と、当該強度を出射するための各レーザダイオードの駆動値とを対応付けしたテーブルを有しており、当該テーブルに応じて各レーザダイオードの負荷を制御することを特徴とする。
このような構成によれば、テーブルを参照することにより、複数のレーザダイオードの負荷を簡易に制御することが可能になる。
【0014】
また、他の発明のファイバレーザ装置は、上記発明に加えて、各レーザダイオードの負荷状態を検出する検出部を有し、前記制御手段は、前記検出部によって検出される負荷状態を参照して、各レーザダイオードの負荷を制御することを特徴とする。
このような構成によれば、検出部によって検出された負荷状態に基づいて複数のレーザダイオードの負荷を正確に制御することができる。
【0015】
また、他の発明のファイバレーザ装置は、上記発明に加えて、前記検出部は、各レーザダイオード自身またはその周辺の温度を検出し、前記制御手段は、前記検出部によって検出された温度に基づいて、各レーザダイオードの負荷を制御することを特徴とする。
このような構成によれば、検出部によって検出されたレーザダイオードの温度に基づいて複数のレーザダイオードの負荷を正確に制御することができる。
【0016】
また、他の発明のファイバレーザ装置は、上記発明に加えて、前記検出部は、各レーザダイオードの発光効率を検出し、前記制御手段は、前記検出部によって検出された発光効率に基づいて、各レーザダイオードの負荷を制御することを特徴とする。
このような構成によれば、検出部によって検出されたレーザダイオードの発光効率に基づいて複数のレーザダイオードの負荷を正確に制御することができる。
【0017】
また、他の発明のファイバレーザ装置は、上記発明に加えて、レーザ光を発生する際の種光源を有することを特徴とする。
このような構成によれば、種光源を有するファイバレーザ装置のレーザダイオードについても負荷を均一化することができる。
【0018】
また、本発明のファイバレーザ装置の制御方法は、複数のレーザダイオードからの励起光により、光ファイバを用いてレーザ光を発生または増幅するファイバレーザ装置の制御方法において、前記複数のレーザダイオードを駆動する駆動ステップと、前記光ファイバから出射されるレーザ光が所望の強度になり、かつ、前記複数のレーザダイオードのそれぞれの負荷が等しくなるように前記駆動ステップにおける駆動動作を制御する制御ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、複数の励起用レーザダイオードの負荷を均一化することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の励起用レーザダイオードの負荷を均一化することが可能なファイバレーザ装置およびファイバレーザ装置の制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るファイバレーザ装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示す制御部の構成例を示す図である。
【図3】図2に示すLUTの一例である。
【図4】第1実施形態において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】第1実施形態の駆動電流を示す図である。
【図6】特許文献1の駆動電流を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るファイバレーザ装置の構成例を示す図である。
【図8】第2実施形態の駆動電流を示す図である。
【図9】種光源と励起光との駆動電流を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るファイバレーザ装置の構成例を示す図である。
【図11】第3実施形態において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
(A)第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係るファイバレーザ装置の構成例を示す図である。この図1に示すように、第1実施形態に係るファイバレーザ装置1(請求項中の「ファイバレーザ装置」に対応)は、ファイバ共振器10(請求項中の「ファイバレーザ装置」および「発生部」に対応)、ファイバ増幅器20(請求項中の「ファイバレーザ装置」および「増幅部」に対応)、制御部30(請求項中の「制御手段」に対応)、および、出力光学部40を主要な構成要素としており、生成されたレーザ光を対象物に照射して加工する加工装置を構成する。なお、生成されるレーザ光の強度としては、例えば、1キロワット程度となる場合も想定されるものである。
【0023】
ファイバ共振器10は、増幅用光ファイバ11、カプラ12,13、FBG(Fiber Bragg Grating)14,15、励起用LD(Laser Diode)16,17(請求項中の「レーザダイオード」に対応)、および、駆動部18,19(請求項中の「駆動手段」に対応)を主要な構成要素とし、レーザ共振によって得られたレーザ光を出射する。
【0024】
ここで、増幅用光ファイバ11は、例えば、ダブルクラッドファイバによって構成されており、レーザ発振に必要なレーザ媒質(例えば、イッテルビウム(Yb)等の希土類元素)がドープされたコア部と、その外周を被覆する2層のクラッド部とを有している。
【0025】
カプラ12,13は、励起用LD16,17から出射された励起光を増幅用光ファイバ11に導入する。より詳細には、カプラ12は励起用LD16からの励起光を前方励起光として増幅用光ファイバ11の内側のクラッドに導入し、カプラ13は励起用LD17からの励起光を後方励起光として増幅用光ファイバ11の内側のクラッドに導入する。
【0026】
FBG14,15は、周期的に光ファイバの屈折率を変化させて形成される光学素子であり、レーザ共振器の反射ミラーを構成する。より詳細には、FBG14は増幅用光ファイバ11の入射側のコア部に形成され、FBG15は増幅用光ファイバ11の出射側のコア部に形成されている。FBG14は100%近い反射率を有し、FBG15はFBG14よりも低い反射率(例えば、5%の反射率)を有しており、これによりレーザ共振器を構成する。
【0027】
励起用LD16,17は、例えば、出力波長が915nmであり、数ワット以上の出力光強度を有するマルチモードレーザダイオードによって構成されている。なお、この例では、励起用LD16,17は、それぞれ1つずつのLDから構成されているが、それぞれが複数のLDから構成されるようにしてもよい。なお、その場合には、カプラ22,23は複数の入射ポートを有し、駆動部18,19は、個々のLDを独立して制御し、制御部30は個々のLDを独立して制御することができる構成とする。
【0028】
駆動部18,19は、制御部30の制御に応じて励起用LD16,17を駆動し、励起用LD16,17から所定の強度の励起光を出射させる。なお、励起用LD16,17に供給される電力は数ワット程度と大きいので、駆動部18,19のそれぞれが独立した電源を有するようにしてもよい。
【0029】
一方、ファイバ増幅器20は、増幅用光ファイバ21、カプラ22,23、励起用LD24,25(請求項中の「レーザダイオード」に対応)、および、駆動部26,27(請求項中の「駆動手段」に対応)を主要な構成要素とし、ファイバ共振器10から出射されたレーザ光を増幅して出射する。
【0030】
増幅用光ファイバ21は、例えば、シングルモードのダブルクラッドファイバによって構成されており、光増幅に必要な媒質(例えば、エルビウム(Er)またはイッテルビウム(Yb)等の希土類元素)がドープされたコア部と、その外周を被覆する2層のクラッド部とを有している。
【0031】
カプラ22,23は、励起用LD24,25から出射された励起光を増幅用光ファイバ21に導入する。より詳細には、カプラ22は励起用LD24からの励起光を前方励起光として増幅用光ファイバ21の内側のクラッドに導入し、カプラ23は励起用LD25からの励起光を後方励起光として増幅用光ファイバ21の内側のクラッドに導入する。
【0032】
励起用LD24,25は、例えば、出力波長が915nmであり、数ワット以上の出力光強度を有するマルチモードレーザダイオードによって構成されている。なお、この例では、励起用LD24,25は、それぞれ1つずつのLDから構成されているが、それぞれが複数のLDから構成されるようにしてもよい。なお、その場合には、カプラ22,23は複数の入射ポートを有し、駆動部26,27は、個々のLDを独立して制御し、制御部30は個々のLDを独立して制御することができる構成とする。
【0033】
駆動部26,27は、制御部30の制御に応じて励起用LD24,25を駆動し、励起用LD24,25から所定の強度の励起光を出射させる。
【0034】
制御部30(請求項中の「制御手段」に対応)は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、I/F(Interface)34、および、バス35を主要な構成要素としている。ここで、CPU31は、ROM32に格納されているプログラム32bに基づいてファイバレーザ装置1の各部を制御する中央演算装置である。ROM32は、LUT(Look Up Table)32a(請求項中の「テーブル」に対応)およびプログラム32bを主に格納しており、CPU31からの要求に応じてLUT32aまたはプログラム32bを読み出して供給する。RAM33は、CPU31が演算処理を実行する際に、各種プログラムやデータを一時的に格納する。I/F34は、例えば、D/A(Digital to Analog)変換器等によって構成されており、駆動部18,19,26,27に対して駆動信号を供給してこれらを制御する。バス35は、CPU31、ROM32、RAM33、および、I/F34を相互に接続してこれらの間でデータの授受を可能とするための信号線群である。なお、LUT32aは、ファイバレーザ装置1から出力されるレーザ光の目標出力値と、各励起用LDの駆動電流値とを対応付けして格納するテーブルである。プログラム32bは、ファイバレーザ装置1の各部を制御するためのプログラムである。
【0035】
図3は、LUT32aの具体例(但し、一例)を示している。この例では、ファイバレーザ装置1の目標となる目標出力値と、励起用LD16,17,24,27の駆動電流値とを対応付けして格納している。具体的には、ファイバレーザ装置1の目標となるレーザ出力値が100Wである場合には、励起用LD16,17,24,25にはそれぞれ駆動電流として、10A,10A,9A,9Aが供給される。なお、LUT32aに格納されているデータは、各励起用LDの負荷が均等になるように予め設定されたものである。なお、本明細書中において「負荷」とは、例えば、励起用LD自身の温度または周辺温度の高低を指標としたり、あるいは、同じ光出力を得るための電流値を指標としたりすることができる。すなわち、負荷が大きい励起用LDは発熱量が大きいので、前述した温度が高くなると考えられるからである。また、同じ光出力を得るための電流値は発光効率を示し、発光効率が低い励起用LDは、高い励起用LDに比較して、同じ光出力を得るために大きな負荷がかかるからである。なお、これらは一例であって、これ以外の定義であってもよい。例えば、負荷を以下の式によって定義してもよい。
【0036】
L∝IFWexp(−E/kT)
なお、各パラメータは以下の通りである。
L:負荷、I:電流、F:駆動周波数、W:パルス幅、
:活性化エネルギー、k:ボルツマン定数、T:絶対温度
【0037】
つぎに、本発明の第1実施形態の動作について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、プログラム32bがCPU31によって読み出されて実行されることにより実現される。このフローチャートの処理が開始されるとつぎのステップが実行される。
【0038】
ステップS10では、CPU31は、例えば、ファイバレーザ装置1から出力しようとするレーザの目標値である目標レーザ出力値を上位の制御装置(不図示)より取得する。具体的には、目標レーザ出力値として、120Wが取得される。
【0039】
ステップS11では、CPU31は、LUT32aからステップS10で取得したレーザ目標出力値から各励起用LDの電流値を取得する。いまの例では、目標レーザ出力値は120Wであるので、励起用LD16,17,24,25の電流値として、それぞれ12Aが取得される。なお、この例では、励起用LD16,17と励起用LD24,25の電流値は、全て同じとなっているが、これらが異なる場合も想定される。例えば、動作温度(前述したT)が異なる場合や、励起用LDの個体差が存在する場合である。そのような場合には、テーブルに格納されている電流値がLD毎に異なる場合も想定される。
【0040】
ステップS12では、CPU31は、ステップS11で取得した電流値をI/F34に対して供給して設定する。この結果、駆動部18,19,26,27は、ステップS11で取得した電流値がそれぞれ設定される。いまの例では、駆動部18,19,26,27には、それぞれ12Aが設定される。
【0041】
ステップS13では、CPU31は、駆動部18,19,26,27の動作を開始させる。なお、このとき、CPU31は、駆動部18,19,26,27の動作が同期して開始されるように制御する。これにより、励起用LD16,17がレーザ光を出射し、カプラ12,13を介して、増幅用光ファイバ11に入射される。増幅用光ファイバ11では、クラッド部に入射された励起光がクラッド部を伝搬していく過程で、コア部にドープされた希土類元素に吸収され、コア部を励起状態にする。コア部の両端には、FBG14,15が配置されているので、これらによるレーザ共振作用により、コア部の励起状態がレーザ発振の閾値を超えると、FBG15からレーザ光が射出される。ファイバ増幅器20では、励起用LD24,25が出射したレーザ光が、カプラ22,23を介して、増幅用光ファイバ21に入射される。増幅用光ファイバ21では、クラッド部に入射された励起光がクラッド部を伝搬していく過程で、コア部にドープされた希土類元素に吸収され、コア部を励起状態にする。このような状態において、ファイバ共振器10から出射されたレーザ光が増幅用光ファイバ21に入射されると、伝搬される過程で増幅され、増幅されたレーザ光が出力光学部40を介して出力される。なお、いまの例では、目標レーザ出力値は120Wであるので、出力光学部40から出力されるレーザ光の強度は120Wとなる。
【0042】
ステップS14では、CPU31は、レーザの動作開始から所定の時間が経過したか否かを判定し、所定の時間が経過した場合(ステップS14;YES)にはステップS15に進み、それ以外の場合(ステップS14;NO)には同様の処理を繰り返す。
【0043】
ステップS15では、CPU31は、I/F34を介して駆動部18,19,26,27の動作を停止させる。これにより、レーザ光の照射が停止される。なお、このとき、CPU31は、駆動部18,19,26,27の動作が同期して停止されるように制御する。
【0044】
ステップS16では、CPU31は、動作を終了するか否かを判定し、終了しないと判定した場合(ステップS16;NO)にはステップS10に戻って同様の動作を繰り返し、それ以外の場合(ステップS16;YES)には処理を終了する。
【0045】
図5はファイバ共振器10およびファイバ増幅器20を構成する励起用LD16,17,24,26に流れる電流とレーザ出力値との関係を示す図である。具体的には、図5(A)はファイバ共振器10の励起用LD16,17に流れる電流の時間的変化を示しており、図5(B)はファイバ増幅器20の励起用LD24,25に流れる電流の時間的変化を示している。また、図5(C)は出力光学部40から出力されるレーザ光の強度の時間的変化を示している。この図5に示すように、第1実施形態では、励起用LD16,17に流れる電流と励起用LD24,25に流れる電流は略等しくなるように変化する。すなわち、i11≒i21およびi12≒i22となるように設定されている。また、図5では、励起用LD16,17,24,25に流れる電流の変曲点は、等しくなるように設定されている。これにより、各励起用LDの動作時間が等しくなるので、時間的な負荷が等しくなるとともに、変曲点がずれることに起因する損失の発生を防止できる。
【0046】
一方、図6は、特許文献1によって図5(C)と同様な出力を得る場合における電流の時間的変化を示している。この図6に示すように、特許文献1の技術では、ファイバ共振器とファイバ増幅器を構成する励起用LDに流れる電流は独立して変化する。具体的には、図6の例では、ファイバ共振器の励起用LDに流れる電流と、ファイバ増幅器の励起用LDに流れる電流の値が異なっている。すなわち、これらの励起用LDの負荷は異なる。したがって、このような制御では、ファイバ共振器とファイバ増幅器を構成する励起用LDの負荷が異なることから、これらの寿命が異なってしまう。一方で、第1実施形態ではこれらに分担される負荷が等しくなるので、寿命を等しくすることができる。すなわち、第1実施形態では、各励起用LDの負荷が均一化されることから、LDの寿命を最大化することができ、結果的にファイバレーザの運用コストを抑制することができる。さらに、励起用LDの電流・出力光特性は、電流の増大に対して光出力が飽和することが知られているので、電流値を分散して、駆動電流を小さく設定することにより、装置全体としての変換効率を高く維持することができる。また、LUT32aを予め作成して格納しておき、LUT32aから所望の値を読み出してレーザダイオードの出力を設定することで、負荷分散を簡易に実現できる。このため、負荷分散を実現するための複雑な制御を行う必要がなくなることから、装置の構成を簡略化し、製造コストを低減することができる。
【0047】
(B)第2実施形態
第2実施形態について説明する。図7は本発明の第2実施形態の構成例を示す図である。図7において図1と対応する部分には同一の符号を付してあるので、その説明は省略する。第2実施形態のファイバレーザ装置1Aでは、第1実施形態と比較すると、種光源LD50(請求項中の「種光源」に対応)と駆動部51が新たに追加されている。それ以外の構成は図1の場合と同様である。なお、第2実施形態のファイバレーザ装置1Aは、例えば、微細加工用のパルス光出力を得るためのものであり、平均出力光強度は、一般的には板金の切断や溶接に用いられるものに比較すると低い。
【0048】
ここで、種光源LD50は、波長のそろったレーザ光を出射する種光源として機能する。駆動部51は、制御部30の制御に応じて種光源LD50を制御する。なお、種光源LD50は、例えば、10ns以下の高速変調が可能なものであり、数百mW程度の出力光強度のシングルモードレーザを用いることができる。種光源LD50が出射するレーザ光の波長としては、後段のFBG14,15に反射されない波長を選択する必要がある。種光源LD50から出射されるレーザ光の変調を変調する方法としては、種光源LD50を駆動する電流を直接変調してもよいし、例えば、AOM(Acousto-Optic Modulator:音響光学変調素子)等の外部変調素子を用いて出射光を変調するようにしてもよい。
【0049】
つぎに、第2実施形態の動作について説明する。第2実施形態では、図8に示すように、励起用LD16,17,24,25の駆動のタイミングと同期するように、種光源LD50が駆動され、種光源としてのレーザ光が出射される。より詳細には、第2実施形態では、図8(B)〜(D)に示すように、第1実施形態と同様に、ファイバ共振器とファイバ増幅器の励起用LD16,17,24,25が駆動されるが、第2実施形態では図8(A)に示すように、励起用LD16,17,24,25の駆動と同期して、種光源LD50が制御されて種光源としてのレーザ光が増幅用光ファイバ11に入射される。なお、励起用LD16,17,24,25は、10ns以下の光学応答時間を有する種光源LD50に比較すると、駆動開始からレーザ光が出射されるまでの時間が長い。このため、第2実施形態では、図9に示すように、励起用LD16,17,24,25に流れる電流iは、種光源LD50に流れる電流iよりも時間Mだけ速いタイミングで立ち上がるように設定されている。ここで、Mの値としては、例えば、励起用LD16,17,24,25の駆動が開始されてから、増幅用光ファイバ11,21が励起状態となるまでの時間Tとすることができる。あるいは、種光源LD50の駆動が開始されてから種光が射出されるまでの時時間Tsを時間Tから減算した時間(T−Ts)としてもよい。このような設定により、励起用LD16,17,24,25と種光源LD50がレーザ光を出射するタイミングが略等しくなる。なお、図9において、「L」は励起用LD16,17,24,25に流れる電流の期間を示し、「N」は1周期を示している。
【0050】
以上に説明したように第2実施形態では、種光源によってレーザ光を励起するファイバレーザ装置1Aに本発明を適用するようにしたので、励起用LDの負荷の分担を均等にし、ファイバ共振器とファイバ増幅器を構成する励起用LDの寿命を等しくすることができる。また、種光を用いることにより、ASE(Amplified Spontaneous Emission)を抑制することができるとともに、不要な成分を抑制することによる省電力化を図ることができる。さらに、種光源の発光のタイミングを励起用LDのタイミングよりも遅らせることにより、増幅用光ファイバ11の励起が完了した状態で種光を入射することができるので、起動特性を良好にすることができる。
【0051】
(C)第3実施形態
つぎに、第3実施形態について説明する。図10は、第3実施形態の構成例を示すブロック図である。なお、この図において、図1と対応する部分には同一の符号を付してあるので、その説明は省略する。図10に示すファイバレーザ装置1Bでは、図1と比較して、温度検出部60〜63(検出部)が新たに追加されているとともに、制御部30が制御部30Aに置換されている。それ以外の構成は、図1の場合と同様である。
【0052】
ここで、温度検出部60〜63は、励起用LD16,17,24,25それぞれの温度を検出し、検出した温度情報を制御部30Aに供給する。なお、検出する温度としては、励起用LD16,17,24,25自体の温度でもよいし、その周辺温度であってもよい。制御部30Aは、温度検出部60〜63から供給される温度情報に基づいて、励起用LD16,17,24,25それぞれの負荷状態を算出し、これらの負荷の分散状態が適正になるように制御を行う。なお、制御部30Aは、図2と同様の構成とされているが、I/F34が温度検出部60〜63から供給される温度情報を、例えば、A/D変換して取り込む点と、制御の内容が異なっている。
【0053】
つぎに、第3実施形態の動作について説明する。図11は、第3実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。この図に示すフローチャートは、図2に示すプログラム32bが読み出されて実行された場合に実現される。このフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0054】
ステップS30では、CPU31は、I/F34を介して、温度検出部60〜63から温度情報を取得する。例えば、励起用LD16,17,24,25の温度としてT〜Tがそれぞれ取得される。具体的には、例えば、T〜Tとして30℃、40℃、38℃、および、32℃が取得される。
【0055】
ステップS31では、CPU31は、ステップS30で取得した温度情報に基づいて負荷の分散状態を算出する。以下では、説明を簡略化するために、各励起用LDのその時点における温度と負荷とは比例する関係にあるとし、また、各励起用LDの発光効率(=出射光強度/駆動電流)は等しいとして説明する。このような前提では、各励起用LDに分担されている負荷は、ステップS30で取得した温度に比例していると考えることができる。いまの例では、温度が40℃である励起用LD17が最も負荷が重く、温度が38℃の励起用LD24がつぎに重く、温度が32℃の励起用LD25がつづいて重く、温度が30℃である励起用LD16が最も軽いと判断される。
【0056】
ステップS32では、CPU31は、負荷の分担を最適化するための駆動電流を計算する。駆動電流を計算する方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。なお、以下の方法は、あくまでも一例であって、これ以外の方法であってもよいことはいうまでもない。
(1)T〜Tの合計温度T(=T+T+T+T)と平均温度TAV(=(T+T+T+T)/4)を求める。
(2)ファイバレーザ装置1Bのレーザ目標出力を得るために励起用LD16,17,24,25のそれぞれに流す電流(I,I,I,I)の合計値(I=I+I+I+I)を求める。
(3)I=I×(TAV+(TAV−T))/T(但し、n=1〜4)により、励起用LD16,17,24,25のそれぞれに対する駆動電流(I,I,I,I)を求める。
具体的には、いまの例では、T=30、T=40、T=38、T=32であるので、T=140(=30+40+38+32)であり、TAV=35(=140/4)である。この結果、I=I×40/140(=I×(35+(35−30))/140)、I=I×30/140(=I×(35+(35−40))/140)、I=I×32/140(=I×(35+(35−38))/140)、I=I×38/140(=I×(35+(35−32))/140)を得る。このようにして得た電流値I〜Iは、それぞれの励起用LDの温度が高い程、電流値が小さくなるように設定されている(I>I>I>I)。
【0057】
ステップS33では、CPU31は、ステップS32で算出した電流値を駆動電流値として駆動部18,19,26,27にそれぞれ設定する。いまの例では、前述した電流値I〜Iが、駆動部18,19,26,27にそれぞれ設定される。
【0058】
ステップS34では、CPU31は、駆動部18,19,26,27の動作を開始させる。なお、このとき、CPU31は、駆動部18,19,26,27の動作が同期して開始されるように制御する。
【0059】
ステップS35では、CPU31は、レーザの動作開始から所定の時間が経過したか否かを判定し、所定の時間が経過した場合(ステップS35;YES)にはステップS36に進み、それ以外の場合(ステップS35;NO)には同様の処理を繰り返す。
【0060】
ステップS36では、CPU31は、I/F34を介して駆動部18,19,26,27の動作を停止させる。これにより、レーザ光の照射が停止される。なお、このとき、CPU31は、駆動部18,19,26,27の動作が同期して停止されるように制御する。
【0061】
ステップS37では、CPU31は、動作を終了するか否かを判定し、終了しないと判定した場合(ステップS37;NO)にはステップS30に戻って同様の動作を繰り返し、それ以外の場合(ステップS37;YES)には処理を終了する。
【0062】
以上の第3実施形態によれば、温度検出部60〜63によって検出された温度情報によって各励起用LDの負荷状態をリアルタイムに算出し、負荷状態に応じて駆動電流を設定するようにしたので、励起用LDの負荷を均一化することができるので、励起用LDの寿命を長くすることができる。
【0063】
なお、以上では、各励起用LDの温度を測定するようにしたが、例えば、ペルチェ素子等の冷却素子によって励起用LDが冷却されている場合には、励起用LDの温度は一定に保たれているので温度を測定しても負荷の状況は検出できない。そこで、そのような場合には、冷却素子に流れる電流値を検出し、その電流値の大小により負荷を検出するようにしてもよい。すなわち、負荷が大きい励起用LDは発熱量が大きいため、それを一定温度にまで冷却するためには大きな電流が必要になるからである。
【0064】
なお、以上では、計算結果に基づいて、電流値を直接変化させるようにしたが、温度変化は電流変化に比較して緩やかであることから、電流変化が緩やかに起こるように、例えば、駆動電流の以前の値をRAM33に記憶しておき、前回までの値と今回の値を比較し、これらの間の変化が所定の範囲内(例えば、前回値から数%以内)に収まるように補正してもよい。また、以上では、レーザ光を出射する度に、温度を測定して駆動電流を設定するようにしたが、所定の周期で(例えば、数分毎に)実行したり、所定値(例えば、2℃)以上の温度のバラツキが発生した場合に実行したり、動作が所定の時間(例えば、数分)以上継続した場合に実行するようにしてもよい。
【0065】
また、温度を検出するのではなく、発光効率を用いるようにしてもよい。具体的には、励起用LDの出力光の一部を所定の分岐比(例えば、1/1000)で分岐してフォトダイオード等によって所定の周期毎(例えば、5時間毎)に検出するとともに、そのときの駆動電流値も併せて取得し、フォトダイオードの検出値を駆動電流値で除算することにより発光効率に対応する値を得る。そして、このような発光効率に対応する値の経時変化を観察し、経時変化が速い励起用LDは劣化が速く進んでいると考えられるので、対応する励起用LDの駆動電流を相対的に小さくするように設定する。このような方法によっても、負荷の分担状況を改善することができる。
【0066】
(D)変形実施形態
なお、上記の各実施形態は、一例であって、これ以外にも各種の変形実施態様が存在する。例えば、以上の各実施形態では、ファイバ共振器10およびファイバ増幅器20を有する構成としたが、例えば、ファイバ共振器10だけの構成とし、ファイバ共振器10を構成する2つの励起用LD16,17を前述した各実施形態と同様の方法によって負荷が均一化されるように制御してもよい。あるいは、ファイバ増幅器20だけの構成とし、ファイバ増幅器20を構成する2つの励起用LD24,25を前述した各実施形態と同様の方法によって負荷が均一化されるように制御してもよい。
【0067】
また、励起用LD16,17のいずれか一方しか有しない場合であって、当該励起用LDが複数のLDから構成される場合に、これら複数のLDを前述した場合と同様の方法によって制御するようにしてもよい。もちろん、励起用LD24,25のいずれか一方しか有しない場合であって、当該励起用LDが複数のLDから構成される場合に、これら複数のLDを前述した場合と同様の方法によって制御するようにしてもよい。
【0068】
また、ファイバ共振器10およびファイバ増幅器20の双方を有する構成の場合、前述した各実施形態では、ファイバ共振器10およびファイバ増幅器20のそれぞれが2つの励起用LDを有するようにしたが、例えば、1つずつとしたり、一方が1つで他方が2つとしたりしてもよい。また、各励起用LDがさらに複数のLDから構成されるようにしてもよい。そのような場合であっても、前述した場合と同様の制御により、励起用LDの負荷を均一にし、寿命が等しくなるようにすることができる。要するに、本実施形態では、ファイバ共振器10単体の構成の場合、ファイバ増幅器20単体の構成の場合、または、ファイバ共振器10およびファイバ増幅器20の双方を有する構成の場合において、これらに含まれている2つ以上の励起用LDを前述した方法によって制御することにより、負荷の分担を均一化し、励起用LDの寿命を等しくすることができる。
【0069】
また、第1および第2実施形態では、LUT32aに格納されている値は固定としたが、レーザダイオードの経年変化を考慮して、例えば、「劣化係数」を設け、時間の経過とともに劣化係数の値を増加させ、LUT32aに格納されている値に劣化係数を乗算して使用するようにしてもよい。もちろん、LUT32aに格納されている値自体を時間の経過とともに所定の割合で増加させるようにしてもよい。このような方法によれば、レーザダイオードの劣化によらず、常に一定の出力を得ることができる。
【0070】
また、以上の各実施形態では、ファイバ共振器10およびファイバ増幅器20の各励起用LDを駆動するタイミングは同じとしたが、ファイバ共振器10からファイバ増幅器20へのレーザ光の伝搬時間だけ、これらの駆動タイミングをずらすようにしてもよい。具体的には、ファイバ共振器10からファイバ増幅器20へレーザ光が伝搬する時間は、増幅用光ファイバ11が10m程度である場合には約30n秒程度であるので、これらの駆動タイミングを30n秒程度ずらすようにしてもよい。
【0071】
また、以上の各実施形態では、CPU31によって各部を制御するようにしたが、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を用いるようにしてもよい。
【0072】
また、以上の各実施形態では、説明を簡略化するために、緩和発振については言及していないが、緩和発振を防止するために、レーザ光を出力する際に、ファイバ共振器10の励起用LD16,17を発振閾値付近であらかじめ励起した後に、所望の強度のレーザ光を出力するようにしてもよい。その場合、ファイバ共振器10の励起用LD16,17だけに電流を通じるのは、負荷を等しくする観点からは望ましくないので、ファイバ増幅器20の励起用LD24,25にも同じ電流を通じるようにしてもよい。
【0073】
また、以上の各実施形態では、同じ時間帯における各励起用LDの負荷を分散(空間的に分散)するようにしたが、例えば、時間的に分散することも可能である。すなわち、ファイバ共振器10およびファイバ増幅器20のそれぞれの励起用LDを駆動するタイミングをずらすことにより、負荷を分散することも可能である。例えば、ファイバ共振器10の励起用LDを駆動した後の異なるタイミングで、ファイバ増幅器20の励起用LDを駆動するようにしてもよい。すなわち、前述した各実施形態では、ファイバ共振器10およびファイバ増幅器20は、常に同じ出力光となるように制御されるので、最少の光出力は発振閾値の約2倍となるが、ファイバ共振器10の励起用LDを発振閾値付近で駆動した後、同様の条件でファイバ増幅器20の励起用LDを駆動すれば、当該励起エネルギーは出力光には寄与しないので、発振閾値付近の出力を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B ファイバレーザ装置(ファイバレーザ装置)
10 ファイバ共振器(ファイバレーザ装置、発生部)
11 増幅用ファイバ
12,13 カプラ
14,15 FBG
16,17 励起用LD(レーザダイオード)
18,19 駆動部(駆動手段)
20 ファイバ増幅器(ファイバレーザ装置、増幅部)
21 増幅用ファイバ
22,23 カプラ
24,25 励起用LD(レーザダイオード)
26,27 駆動部(駆動手段)
30 制御部(制御手段)
31 CPU
32 ROM
32a LUT(テーブル)
32b プログラム
33 RAM
34 I/F
35 バス
50 種光源LD(種光源)
60〜63 温度検出部(検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを用いてレーザ光を発生または増幅するファイバレーザ装置において、
前記光ファイバに対して励起光を供給する複数のレーザダイオードと、
前記複数のレーザダイオードを駆動する駆動手段と、
前記光ファイバから出射されるレーザ光が所望の強度になり、かつ、前記複数のレーザダイオードのそれぞれの負荷が等しくなるように前記駆動手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするファイバレーザ装置。
【請求項2】
光ファイバによりレーザ光を発生する発生部と、発生部によって発生されたレーザ光を光ファイバにより増幅する増幅部とを有し、
前記発生部および増幅部のそれぞれは前方励起光を供給するレーザダイオード、および、後方励起光を供給するレーザダイオードの少なくとも一方を有し、
前記制御手段はこれらのレーザダイオードの負荷が等しくなるように制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザ装置。
【請求項3】
光ファイバによりレーザ光を発生する発生部と、発生部によって発生されたレーザ光を光ファイバにより増幅する増幅部とを有し、
前記発生部および増幅部のそれぞれは前方励起光を供給するレーザダイオード群、および、後方励起光を供給するレーザダイオード群の少なくとも一方を有し、
前記制御手段はこれらのレーザダイオードの負荷が等しくなるように制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザ装置。
【請求項4】
前記複数のレーザダイオードは、前方励起光を供給するレーザダイオード、および、後方励起光を供給するレーザダイオードを有し、
前記制御手段はこれらのレーザダイオードの負荷が等しくなるように制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザ装置。
【請求項5】
前記複数のレーザダイオードは、前方励起光を供給するレーザダイオード群、および、後方励起光を供給するレーザダイオード群の少なくとも一方を有し、
前記制御手段はこれらのレーザダイオードの負荷が等しくなるように制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のファイバレーザ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、レーザ光の所望の強度値と、当該強度を出射するための各レーザダイオードの駆動値とを対応付けしたテーブルを有しており、当該テーブルに応じて各レーザダイオードの負荷を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項7】
各レーザダイオードの負荷状態を検出する検出部を有し、
前記制御手段は、前記検出部によって検出される負荷状態を参照して、各レーザダイオードの負荷を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項8】
前記検出部は、各レーザダイオード自身またはその周辺の温度を検出し、
前記制御手段は、前記検出部によって検出された温度に基づいて、各レーザダイオードの負荷を制御する、
ことを特徴とする請求項7項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項9】
前記検出部は、各レーザダイオードの発光効率を検出し、
前記制御手段は、前記検出部によって検出された発光効率に基づいて、各レーザダイオードの負荷を制御する、
ことを特徴とする請求項7項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項10】
レーザ光を発生する際の種光源を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項11】
複数のレーザダイオードからの励起光により、光ファイバを用いてレーザ光を発生または増幅するファイバレーザ装置の制御方法において、
前記複数のレーザダイオードを駆動する駆動ステップと、
前記光ファイバから出射されるレーザ光が所望の強度になり、かつ、前記複数のレーザダイオードのそれぞれの負荷が等しくなるように前記駆動ステップにおける駆動動作を制御する制御ステップと、
を有することを特徴とするファイバレーザ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−187825(P2011−187825A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53404(P2010−53404)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】