説明

フロントフォーク

【課題】 ダンパを有して減衰作用を具現化する側に対して懸架バネを有してバネ作用を具現化する側のフロントフォークにおいて、懸架バネにおける初期荷重の調整を可能にする。
【解決手段】 ダンパを内蔵する他方のフォーク本体と一対となり懸架バネSを内装する一方のフォーク本体が懸架バネSにおる上端位置を昇降可能にするバネ力調整機構100を有し、このバネ力調整機構100が車体側チューブ1の上端部に昇降可能に螺装されて基端操作部101aを車体側チューブ1の上方に突出させるアジャスタ101を有し、このアジャスタ101が基端操作部101aに対する人力による回動で昇降して懸架バネSの上端位置を昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントフォークに関し、特に、二輪車の前輪を懸架する油圧緩衝器たるフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車の前輪を懸架する油圧緩衝器たるフロントフォークとしては、これまでに種々の提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1には、左右で一対となるフロントフォークが左右で構成を異にする提案、すなわち、一方のフロントフォークが内蔵のダンパで減衰作用を具現化するのに対して、他方のフロントフォークが内装の懸架バネでバネ作用を具現化する提案が開示されている。
【0003】
そして、特許文献2には、フロントフォーク内のダンパで具現化される圧側の減衰作用の制御をダンパにおけるボトム部側、すなわち、フロントフォークを構成する車輪側チューブにおけるボトム部側で実践する提案が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、フロントフォーク内のダンパで具現化される伸側の減衰作用の制御をダンパにおける上端部側、すなわち、フロントフォークを構成する車体側チューブにおける上端部側で実践する提案が開示されている。
【0005】
それゆえ、特許文献1に開示の提案によれば、フロントフォークが左右で同じ構成とされる場合、すなわち、内蔵のダンパで減衰作用を具現化する同一のフロントフォークを左右に配置する場合に比較して、たとえば、二輪車の前輪側における重量の軽減化に寄与する。
【0006】
そして、特許文献2に開示の提案によれば、左右で構成が異なるフロントフォークの一方のフロントフォーク、すなわち、内蔵のダンパで減衰作用を具現化するフロントフォークにあって、ダンパで具現化される圧側の減衰作用の制御が可能になる。
【0007】
また、特許文献3に開示の提案によれば、左右で構成が異なるフロントフォークの一方のフロントフォーク、すなわち、内蔵のダンパで減衰作用を具現化するフロントフォークにあって、ダンパで具現化される伸側の減衰作用の制御が可能になる。
【0008】
それゆえ、この特許文献1,特許文献2および特許文献3に開示の提案によれば、左右で構成が異なるフロントフォークの一方のフロントフォークにあって、伸側および圧側の各減衰作用を適宜に制御することで、二輪車における乗り心地を好ましい状態に改善し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−265129号公報(明細書中の段落0024,図1参照)
【特許文献2】特開2007−170598号公報(要約,図1,図4参照)
【特許文献3】特開2010−7758号公報(要約,図1,図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した特許文献1,特許文献2および特許文献3に開示されているところを具現化するフロントフォークにあっては、二輪車における乗り心地を好ましい状態に改善し得る点で、基本的に問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0011】
すなわち、左右で構成が異なるフロントフォークの一方のフロントフォークにあって、内蔵されるダンパで発生される圧側の減衰作用をアクチュエータの利用によるいわゆる自動制御で具現化するとなると、アクチュエータが車輪側チューブにおけるボトム部側に配設される。
【0012】
つまり、左右で構成が異なるフロントフォークの一方のフロントフォークが車体側チューブの上端部に配設のアクチュエータで伸側の減衰作用を制御するとき、車輪側チューブにおけるボトム部側にもアクチュエータを配設して圧側の減衰作用を制御するとなると、一方のフロントフォークが上下にアクチュエータを有することになる。
【0013】
その結果、左右で構成が異なるフロントフォークの一方のフロントフォークにあって、上下にアクチュエータを有することから二輪車に装備されるフロントフォークにおける重量の軽減化を妨げると共にコストの低廉化に寄与し得なくなる。
【0014】
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、二輪車における乗り心地を好ましい状態に改善し得るのはもちろんのこと、内蔵のダンパによる伸側および圧側の減衰作用を単一の駆動手段の駆動で具現化し得るようにして、重量の軽減化とコストの低廉化を可能にし、その汎用性の向上を期待するのに最適となるフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、この発明によるフロントフォークの構成を、基本的には、車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体が一方および他方の一対とされ、一方のフォーク本体が内装の懸架バネによるバネ作用を具現化し、他方のフォーク本体が内蔵のダンパによる減衰作用を具現化してなるフロントフォークにおいて、一方のフォーク本体が内装の懸架バネにおる上端位置を昇降可能にするバネ力調整機構を有し、このバネ力調整機構が車体側チューブの上端部に昇降可能に螺装されて基端操作部を車体側チューブの上方に突出させるアジャスタを有し、このアジャスタが基端操作部に対する人力による回動で昇降して懸架バネの上端位置を昇降させてなるとする。
【0016】
そして、より好ましくは、上記の構成において、他方のフォーク本体が内側をリザーバにしながらダンパを内蔵し、このダンパが車輪側チューブ内に立設されるシリンダ体と、このシリンダ体内に下端側が出没可能に挿通されて車体側チューブ内に垂設されるロッド体とを有すると共にシリンダ体に対してロッド体が出没する伸縮作動時にシリンダ体内からの作動流体のロッド体内およびロッド体の上端開口を通過してのリザーバへの流出を許容し、ロッド体の上端開口に対向するように配設されてこのロッド体の上端開口からリザーバに向けて流出する作動流体に流路抵抗を付与する制御手段を有し、この制御手段が車体側チューブにおける上端部に配設のアクチュエータに連結され、このアクチュエータの作動で制御手段によるダンパにおける伸側および圧側の減衰作用が具現化されてなるとする。
【発明の効果】
【0017】
それゆえ、この発明によるフロントフォークにあって、ダンパを内蔵せずして内装の懸架バネでバネ作用を具現化する一方のフォーク本体、すなわち、一方のフロントフォークは、懸架バネにおる上端位置の昇降を可能にするバネ力調整機構を有するから、このバネ力調整機構によって懸架バネにおける初期荷重の高低変更を可能にし得ることになり、二輪車におけるハンドル側の車高の高低調整を可能にする。
【0018】
そして、この一方のフロントフォークにあって、バネ力調整機構が車体側チューブの上端部に昇降可能に螺装されて基端操作部を車体側チューブの上方に突出させるアジャスタを有し、このアジャスタが基端操作部に対する人力による回動で懸架バネの上端位置を昇降させるから、アジャスタにおける基端操作部をライダーが摘むようにしながら回動することが可能になる。
【0019】
つまり、この一方のフロントフォークと他方のフォーク本体たる他方のフロントフォークとを一対にして前輪側に装備する二輪車におけるライダーは、たとえば、走行中にハンドル側の車高を調整した方が良いと気付くなどするとき、二輪車が走行を中止するなどの停車時に、二輪車におけるシートに着座した言わば乗車姿勢のままに、所望のバネ作用調整を可能にし得ることになり、従前のように、一旦二輪車の走行を中止してライダーが降車し、なおかつ、スタンド利用で二輪車を駐輪状態にするなどの場合に比較して、調整作業を簡単に実践し得る。
【0020】
また、一方のフロントフォークにあっては、ダンパを内蔵しなくて良いから、ダンパに類似するが減衰手段を有しない伸縮体を内蔵する場合を含めて、潤滑材を収容する以外に、減衰作用のための作動流体を収容する必要がなく、全体重量の軽減化に寄与する。
【0021】
そして、この発明によるフロントフォークにあっては、ダンパを内蔵する他方のフォーク本体、すなわち、他方のフロントフォークがダンパにおける伸側および圧側の減衰作用を具現化する制御手段を有し、この制御手段が車体側チューブにおける上端部に配設のアクチュエータに連結されるから、このアクチュエータの作動で所望の伸側および圧側の減衰作用を具現化できる。
【0022】
このとき、制御手段は、ロッド体の上端開口に対向するように配設されてこのロッド体の上端開口からリザーバに向けて流出する作動流体に流路抵抗を付与する構成とされるから、この制御手段が、たとえば、シリンダ体内に収装されるピストン部やその近傍部に設けられる場合に比較して、制御手段の構成を簡素化することが可能になる。
【0023】
のみならず、アクチュエータが車体側チューブの上端部に設けられるから、このアクチュエータが、たとえば、シリンダ体内に収装されるピストン部やその近傍部に配設される場合に比較して、アクチュエータにおける耐久性の向上を保障し易くなる。
【0024】
そして、このとき、アクチュエータの作動が二輪車におけるハンドルに配設の操作手段で実践されるように設定されることで、ライダーがシートに着座したままの乗車姿勢で所望の制御を実践できる。
【0025】
ちなみに、この発明によるフロントフォークにあっては、左右で一対とされる各フロントフォークがその構成を異にするから、各フロントフォークが同じ構成からなる場合に比較して、たとえば、二輪車の前輪側における重量の軽減化を可能にし、また、一対となるフロントフォークにおける製品コストの低廉化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明による左右で一対となるフロントフォークの一方を一部破断して示す正面図である。
【図2】この発明による左右で一対となるフロントフォークの他方を図1と同様に示す図である。
【図3】図2の他方のフロントフォークにおける上端部を拡大して示す半截縦断面図である。
【図4】図2の他方のフロントフォークにおける下端部を図3と同様に示す図である。
【図5】図1の一方のフロントフォークにおける上端部を図3と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるフロントフォークは、二輪車(図示せず)の前輪側に装備されて下端部で懸架する前輪(図示せず)に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器として機能する。
【0028】
そして、この発明によるフロントフォークは、左右で一対とされるもので、図1に示すように、図1に示すように、ダンパを内蔵せずして内装する懸架バネSによるバネ作用の具現化を可能にする一方のフロントフォークと、懸架バネSを内装するが、内蔵するダンパ(符示せず)による減衰作用の具現化を可能にする他方のフロントフォークとを有してなる。
【0029】
なお、他方のフロントフォークにあって、懸架バネSを有するのは、フロントフォークにおける伸長状態を保障するためであり、それがため、ダンパにおける伸長状態が保障される。
【0030】
ちなみに、フロントフォークが左右で同じ構成とされる場合、すなわち、図示しないが、従前のように、左右のフロントフォークがダンパと懸架バネSとを有する構成とされる場合にも、多くの場合に、左右の一対とされる。
【0031】
そして、一対のフロントフォークは、二輪車の前輪側に装備されるについて、図示しないが、一対となる二本のフロントフォークの上端側部をあらかじめブリッジ機構で一体化し、各フロントフォークにおける車輪側チューブ2(図1および図2参照)の下端部を前輪の車軸(図示せず)に連結させて前輪を挟むようにして懸架する。
【0032】
また、ブリッジ機構は、図示しないが、各フロントフォークを構成する車体側チューブ1(図1および図2参照)における上端部の上方側部に連結されるアッパーブラケットと、下方側部に連結されるアンダーブラケットとを有し、それぞれが両端部に形成の取り付け孔に車体側チューブ1における上端部を挿通させて一体的に把持する。
【0033】
さらに、このブリッジ機構は、同じく図示しないが、アッパーブラケットとアンダーブラケットとを一体的に連結する一本のステアリングシャフトを両者の中央に有し、このステアリングシャフトが二輪車における車体の先端部を構成するヘッドパイプ内に回動可能に導通され、これによって、ハンドル操作による二本のフロントフォークを介しての前輪における左右方向への転舵が可能になる。
【0034】
ところで、この発明による左右となる一方のフロントフォークおよび他方のフロントフォークは、図1および図2に示すところにあって、それぞれ上端側部材とされる車体側チューブ1内に下端側部材とされる車輪側チューブ2がテレスコピック型に出没可能に挿通されて伸縮可能とされるフォーク本体(符示せず)を有する。
【0035】
そして、図1に示す一方のフロントフォークにあっては、特に、フォーク本体が内装する懸架バネSの伸縮作動によって所定のバネ作用の具現化を可能にし、図2に示す他方のフロントフォークにあっては、特に、フォーク本体が内蔵するダンパ(図示せず)の伸縮作動によって所定の減衰作用の具現化を可能にする。
【0036】
ちなみに、懸架バネSは、コイルスプリングからなり、車体側チューブ1側と車輪側チューブ2側との間に配設され、したがって、フォーク本体は、懸架バネSによって伸長方向に附勢されて懸架バネSのバネ力による反力を具有する。
【0037】
一方、各フロントフォークを構成するフォーク本体は、車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間に上下となって離間配置される上方の軸受11と下方の軸受12とを有し、この離間配置される上方の軸受11と下方の軸受12とが車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間における同芯となる摺動性を保障する。
【0038】
そして、このフォーク本体にあっては、離間配置される上方の軸受11と下方の軸受12とで車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間に潤滑隙間(符示せず)を出現させ、この潤滑隙間に車輪側チューブ2に開穿の連通孔2aを介して車輪側チューブ2の内方の作動流体たる作動油の流入を許容し、この作動油を潤滑油にして、車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間における潤滑を保障する。
【0039】
ちなみに、図1および図2に示すように、車体側チューブ1の下端部となる開口端部(符示せず)の内周には、下方の軸受12が配設されると共に、この下方の軸受12に直列してオイルシール13とダストシール14が配設され、特に、図2に示す他方のフロントフォークを構成するフォーク本体にあっては、オイルシール13の配在でフォーク本体内を密封空間にする。
【0040】
なお、ダストシール14は、車輪側チューブ2の外周に付着する微小な砂粒などのダストを掻き落し、このダストが上記のオイルシール13側に侵入することを阻止して、オイルシール13におけるシール機能を保障する。
【0041】
また、車体側チューブ1内に車輪側チューブ2が大きいストロークで没入するフォーク本体の最収縮作動時には、それ以上の収縮を阻止するべく、図1および図2中に示すように、車輪側チューブ2の上端が車体側チューブ1側に当接される。
【0042】
そして、フォーク本体が最伸長するときには、たとえば、図2に示すところでは、ダンパ内に収装の伸び切りバネS1が最収縮し、この伸び切りバネS1の最収縮でいわゆる衝撃吸収が実現される。
【0043】
ちなみに、一方のフロントフォークを構成するフォーク本体にあっては、原理的には、ダンパを有することを要しないが、その実施にあって、ダンパを有しないフォーク本体を形成する手間を省く観点からすれば、図示しないが、シリンダ体3内に収装されるピストン部5(図2参照)が作動流体の通過を許容するが減衰作用を具現化しない、すなわち、ダンパに類似するが減衰手段を有しない伸縮体を有するのが好ましいであろう。
【0044】
そして、一方のフロントフォークにおいて、フォーク本体が減衰手段を有しない伸縮体を有する場合には、いわゆる軸受部が増えることになり、フォーク本体が伸縮体を有しない場合に比較して、フォーク本体おける曲げ強度を保障し易くなる点でも有利になる。
【0045】
以上のことからすれば、一方のフロントフォークにあっても、図示するように、フォーク本体内に減衰手段を有しない伸縮体が収装されるから、この伸縮体の最伸長作動時に伸び切りバネS1(図示せず)で衝撃吸収が実現されても良い。
【0046】
さらに、上記の各フォーク本体についてであるが、図示するところでは、車体側チューブ1が大径のアウターチューブからなり、車輪側チューブ2が小径のインナーチューブからなる倒立型に設定されるが、この発明が意図するところからすると、上記に代えて、図示しないが、車体側チューブ1が小径のインナーチューブからなり、車輪側チューブ2が大径のアウターチューブからなる正立型に設定されても良い。
【0047】
ところで、他方のフロントフォークにおけるフォーク本体にあっては、上記のオイルシール13の配設で密封空間となる内方をリザーバRに設定し、このリザーバRは、所定量の作動流体たる作動油を収容すると共に、作動油の油面Oを境にして画成される気室Aを有し、この気室Aは、フォーク本体の伸縮作動時に同期して膨縮し、この膨縮の際に所定のエアバネ力、すなわち、反力を発生する。
【0048】
ちなみに、上記の気室Aは、任意の圧力下に大気を封入してなるが、これに代えて、不活性ガスを任意の圧力下に封入するガス室とされても良く、また、気室Aであれ、あるいは、ガス室であれ、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11に配設されるエアバルブ(図示せず)を介して封入された内圧を高低し得るとしても良い。
【0049】
なお、一方のフロントフォークにあっては、ダンパを内蔵しないから、フォーク本体内に作動油が収容されなくても良く、そのためフォーク本体内には言わば大きな気室が形成されるが、この気室が膨縮することによる反力は、上記の他方のフロントフォークにおけるフォーク本体の伸縮時に発生される反力に比較して極めて小さくなるので、言わば考慮外となる。
【0050】
一方、この他方のフロントフォークにおけるフォーク本体は、作動油を収容してリザーバRとされる内方にダンパ(符示せず)を有し、このダンパは、下端側部材とされる車輪側チューブ2の軸芯部に起立するシリンダ体3と、このシリンダ体3内に上端側部材とされる車体側チューブ1の軸芯部に垂設され下端側となる先端側を出没可能に挿通させるロッド体4とを有して正立型に設定される。
【0051】
そして、このダンパにあっては、作動油を充満するシリンダ体3内にピストン部5が摺動可能に収装され、このピストン部5には上記のロッド体4の図中での下端部となる先端部が連結される。
【0052】
ちなみに、シリンダ体3は、任意の方策で車輪側チューブ2の軸芯部に立設されて良く、また、ロッド体4も任意の方策で任意の方策で車体側チューブ1の軸芯部に垂設されて良い。
【0053】
もっとも、図1および図2に示すところでは、詳しくは図示しないが、シリンダ体3の図中で下端部たるボトム端部(符示せず)が車輪側チューブ2の下端開口を閉塞するボトム部材21に連結、すなわち、螺着される。
【0054】
そして、図2に示すところでは、図3にも示すように、ロッド体4の図中で上端部たる基端部(符示せず)が車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材15に連結のホルダ部材16における下端連結部16aにロックナット17の配設下に連結、すなわち、螺着される。
【0055】
また、図1に示すところでは、図5にも示すように、ロッド体4の図中で上端部たる基端部(符示せず)が車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材15における下端連結部15aにロックナット17の配設下に連結、すなわち、螺着される。
【0056】
ちなみに、図2に示すように、シリンダ体3の上端開口は、前記した懸架バネSの下端を担持するロッドガイド31で閉塞され、このロッドガイド31は、軸芯部にブッシュ32の介在下にロッド体4を貫通させる。
【0057】
そして、このロッドガイド31は、図1に示す場合もそうであるが、ダンパの最収縮作動時にロッド体4の外周に固定的に保持されたバネ受41との間のバランスバネS2を収縮状態に挟持する。
【0058】
そしてまた、このバランスバネS2は、ダンパの最収縮作動時に具有する反力でダンパを伸長方向に附勢し、したがって、ダンパにおける最収縮時の反力が低下傾向に抑制され、ダンパが最収縮状態から反転して伸長作動を開始するときの突発性を解消する。
【0059】
なお、懸架バネSの上端は、後述する筒状に形成のバネホルダ10の下端段差部10aに係止される。
【0060】
一方、他方のフロントフォークにあって、ダンパは、シリンダ体3内にピストン部5によって画成されてピストン部5の言わば上方となるロッド側室たる上方室R1と、このピストン部5の言わば下方となるピストン側室たる下方室R2とを有する。
【0061】
そして、このピストン部5は、図4に示すように、伸側減衰手段たる伸側減衰バルブ51を有し、それゆえ、このダンパにあっては、上方室R1がこの伸側減衰バルブ51を介して下方室R2に連通するときに所定の伸側の減衰作用が具現化される。
【0062】
なお、後述することであるが、この発明の具現化にあっては、他方のフロントフォークにおけるダンパがシリンダ体3内に収装のピストン部5に伸側減衰手段、つまり、伸側減衰バルブ51を有しないとしても良く、この場合には、ピストン部5が伸側チェック弁52のみを有する。
【0063】
そして、この他方のフロントフォークにおけるダンパにあっては、シリンダ体3のボトム端部内にベースバルブ部6を有し、このベースバルブ部6は、シリンダ体3の外、つまり、フォーク本体の内側となるリザーバRのシリンダ体3内たる下方室R2への連通を許容する圧側チェック弁61を有する。
【0064】
そしてまた、この圧側チェック弁61は、この実施形態にあっては、下方室R2の作動油のリザーバRへの流出を許容する圧側減衰手段たるオリフィスからなる絞り流路61a(図4参照)を有して、圧側減衰作用の具現化を可能にしている。
【0065】
なお、やはり後述することであるが、この発明の具現化にあっては、図4に示すベースバルブ部6における圧側チェック弁61が圧側減衰手段としての絞り流路61aを有せずして圧側チェック弁としてのみ機能するとしても良い。
【0066】
一方、この他方のフロントフォークにおけるダンパにあって、ロッド体4は、図3および図4に示すように、パイプ体からなり、軸芯部に透孔4aを有し、この透孔4aがロッド体4の上端たる基端に開口する(図3参照)。
【0067】
ちなみに、ロッド体4がパイプ体からなることで、ダンパにおける重量の軽減化に寄与すると共に、透孔4aを作動油の流路として利用し得ることになり、この作動油が流路を通過する際の流路抵抗を制御する、すなわち、減衰作用を具現化するための構成を簡単にし得る点で有利になる。-
そして、ロッド体4がパイプ体からなることで、ダンパにおける重量の軽減化に寄与する観点からすれば、図1に示す一方のフロントフォーク内に収容の伸縮体、すなわち、ダンパに類似するが減衰手段を有しない伸縮体におけるロッド体4もパイプ体からなるのが好ましい。
【0068】
ところで、ロッド体4の基端部は、前記したように車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材15に連結されるホルダ部材16における下端連結部16aに連結される(図3参照)が、このホルダ部材16は、図示するところでは、後述する制御手段(符示せず)とこの制御手段を作動するアクチュエータ7を有する。
【0069】
そのため、先ず、キャップ部材15は、有頭筒状に形成されて車体側チューブ1の上端部に螺着されるときに内側に空部(符示せず)を画成し、このキャップ部材15の下端側の開口(符示せず)を下方から閉塞するように有底筒状に形成のホルダ部材16が連結されて、上記のキャップ部材15の内側の空部とこの空部に連続するホルダ部材16の内側の空部(符示せず)とで、アクチュエータ7を収容する部位(符示せず)を形成すると共に、上記のホルダ部材16が下端側の軸芯部に制御手段を有する。
【0070】
このとき、アクチュエータ7は、電動モータからなり、図3に示すように、電動モータから突出する二面幅構造のシャフト71をアジャスタ72に異形嵌合させ、アジャスタ72は、前記したホルダ部材16に圧入固着されるアジャスタケース73に出力軸部72aを螺合しながらその回動時に図3中で上下方向に進退して、図中で下方にある制御手段を進退させ、この制御手段の作動を制御する。
【0071】
なお、キャップ部材15は、下端部の外周にシール15bを有し、車体側チューブ1の上端部との間における液密性を保障し、ホルダ部材16にあっても、上端部の内周にシール16bを有し、アクチュエータ7との間における液密性を保障している。
【0072】
また、ホルダ部材16は、図3に示すように、上端部に筒状に形成されるフランジ部16cを有し、このフランジ部16cがキャップ部材15の下端部の内周に形成の段差部15cとキャップ部材15の下端部の内周に螺合されるリングナット18の上端との間に挟持されることで、キャップ部材15に一体的に連結される。
【0073】
そして、アクチュエータ7は、図2に示すように、入力部7aを有し、この入力部7aに配設されるリード線(図示せず)を介して外部からの電力の供給を受ける。
【0074】
制御手段は、図3に示すように、制御弁体としてのニードル弁体8を有し、このニードル弁体8の図中で下端となる尖端8aが前記したロッド体4における上端開口に連通するホルダ部材16の下端側の軸芯部に開穿の小孔16cに臨在される。
【0075】
それゆえ、この制御手段にあっては、前記したアクチュエータ7の作動でニードル弁体8が図中で昇降するように進退するとき、上記の小孔16cとニードル弁体8の尖端8aとで形成される環状流路(符示せず)の面積を広狭して、この環状流路を通過する作動油に対する流路抵抗を大小する。
【0076】
このことからすると、制御手段は、作動油の流路抵抗下での通過を許容して減衰作用を具現化するだけでなく、その際に発生される減衰力の高低をも可能にすることになり、したがって、減衰力発生機能だけでなく、減衰力調整機能をも発揮する。
【0077】
以上のように、この発明にあって、他方のフロントフォークに内蔵されるダンパにおける制御手段を構成するニードル弁体8およびこのニードル弁体8を進退させるアクチュエータ7がフォーク本体を形成する車体側チューブ1の上端部に配設されるから、この種のニードル弁体8およびアクチュエータ7が、たとえば、シリンダ体3内に収装されるピストン部5やその近傍部に設けられる場合に比較して、制御手段の構成の簡素化を可能にすると共に、アクチュエータの耐久性の向上を保障し易くする。
【0078】
なお、上記の制御手段を構成するニードル弁体8を収装するホルダ部材16の下端側部にはこのニードル弁体8を収装して上記の小孔16cを開口させる収容部16dに連通すると共にこのホルダ部材16の外周に開口する横孔16eが開穿され、この横孔16eは、このホルダ部材16の下端側部の外周にいわゆる後付で介装される係止部材9に形成の切欠通路9aに連通する。
【0079】
そして、係止部材9は、筒状に形成されるバネホルダ10の上端のホルダ部材16に対する係止を可能にすると共に、バネホルダ10は、下端に懸架バネSの上端を係止させるから、上記の横孔16eから流出する作動油は、切欠通路9aを介することもあって、いたずらに飛散して作動油中に気泡を混入させることなくバネホルダ10の内側を介して下方の油面Oに向けて落下する。
【0080】
このとき、バネホルダ10は、懸架バネSの上端を係止する下端部(符示せず)の内周とロッド体4の外周との間に環状の隙間(符示せず)を有して、作動油の滞りない通過を許容する(図2参照)。
【0081】
ところで、この発明における他方のフロントフォークが内蔵するダンパにあっては、作動油がロッド体4の透孔4aを介してロッド体4の外たるリザーバRに流出するときに所定の減衰作用を具現化するが、そのため、ロッド体4は、整流手段(符示せず)を有してなる。
【0082】
すなわち、先ず、前記したピストン部5は、図示する実施形態にあって、ロッド体4の先端部を形成する先端部材42の外周に保持されるが、この先端部材42は、上方室R1をロッド体4の透孔4aに連通させる通路42aを有し、この通路42aを先端部材42の上端部に螺着されるロッド体4の下端部(符示せず)の内側に連通させる。
【0083】
そして、このロッド体4の下端部の内側には、上記の整流手段が配設され、この整流手段は、ロッド体4の下端部の内側に圧入されるバルブハウジング43内に昇降可能に配設される鋼球44を有するチェック弁構造に構成される。
【0084】
それゆえ、この整流手段にあっては、鋼球44の上流側、すなわち、上方室R1側がリザーバR側に比較していわゆる高圧側になるとき鋼球44が上昇し、上方室R1からの作動油のロッド体4の透孔4a内への流入を許容する。
【0085】
そして、鋼球44の下流側、すなわち、リザーバR側が下方室R1側に比較していわゆる高圧側になるときこの鋼球44が下降し、ロッド体4の透孔4a内からの作動油の上方室R1への流出を阻止する。
【0086】
すなわち、この発明にあって、整流手段は、シリンダ体3内の作動油がロッド体4の透孔4aを通過してリザーバRに流出する言わば一方向流れを具現化する。
【0087】
ちなみに、この整流手段にあって、鋼球44は、バルブハウジング43の下端部の内側へのストッパ45の圧入で、バルブハウジング43内からの抜け出しが阻止される。
【0088】
以上のように形成された他方のフロントフォークにあっては、フォーク本体の伸縮作動時に同期してダンパが伸縮作動するが、このダンパの伸縮作動時には、以下のようにして、減衰作用が具現化される。
【0089】
先ず、ダンパが伸長作動するときには、ロッド体4がシリンダ体3内から抜け出ると共に、ピストン部5がシリンダ体3内を上昇して上方室R1が収縮し、下方室R2が膨張する。
【0090】
このとき、ロッド体4の透孔4aが作動油の通過を許容しない、たとえば、制御手段たるニードル弁体8がロッド体4における透孔4aの上端開口を閉塞していると仮定すると、収縮する上方室R1からの作動油は、ピストン部5に配設の伸側減衰手段たる伸側減衰バルブ51を通過して膨張する下方室R2に流出し、このとき、伸側減衰バルブ51による伸側の減衰作用が具現化される。
【0091】
そして、このときには、下方室R2でロッド体4の退出体積分に相当する量の作動油が不足するので、リザーバRから作動油がベースバルブ部6における圧側チェック弁61を開放作動させて流入し、下方室R2で不足する量の作動油を補う。
【0092】
上記に対して、ダンパが収縮作動するときには、ロッド体4がシリンダ体3内に没入すると共に、ピストン部5がシリンダ体3内を下降して上方室R1が膨張し、下方室R2が収縮する。
【0093】
そして、このとき、下方室R2にあっては、ロッド体4の侵入体積分に相当する量の作動油が余剰となるので、この余剰となる量の作動油がベースバルブ部6の圧側チェック弁61における絞り流路61aを通過してリザーバRに流出し、このとき、圧側減衰手段たる絞り流路61aによる圧側の減衰作用が具現化される。
【0094】
一方、ダンパの伸縮作動時に、ロッド体4の透孔4aにおける上端開口が制御手段によって閉塞されない、すなわち、チェック弁構造の整流手段が上方室R1からの作動油のリザーバRへの流出を許容する場合には、減衰作用が以下のようにして具現化される。
【0095】
先ず、ダンパが収縮作動すると、シリンダ体3内へのロッド体4の没入でピストン部5がシリンダ体3内を下降して上方室R1が膨張するが、このとき、ロッド体4の透孔4aは、チェック弁構造に構成される整流手段によって透孔4a内の作動油を上方室R1に流出させないから、膨張する上方室R1には下方室R2からの作動油がピストン部5の伸側チェック弁52を開放させて流入する。
【0096】
そして、このとき、下方室R2にあっては、ロッド体4の侵入体積分に相当する量の作動油が余剰となるので、この余剰となる量の作動油がベースバルブ部6の圧側チェック弁61における絞り流路61aを通過してリザーバRに流出し、このとき、圧側減衰手段たる絞り流路61aによる圧側の減衰作用が具現化される。
【0097】
しかしながら、このとき、圧側減衰手段たるベースバルブ部6の圧側チェック弁61における絞り流路61aは、オリフィスからなるから、ここを通過する際の作動油における流路抵抗を大きくする。
【0098】
それゆえ、下方室R2で余剰となる作動油の一部がベースバルブ部6における絞り流路61aに比較して流路抵抗を小さくするピストン部5における伸側チェック弁52を開放させて上方室R1に流入する。
【0099】
ところが、下方室R2からの余剰油の一部を流入させる上方室R1においても、この下方室R2から流入する余剰油の一部がそのまま余剰になり、したがって、上方室R1から整流手段および透孔4aを通過してリザーバRに流出される。
【0100】
このとき、透孔4aの上端たる開口端には制御手段たるニードル弁体8が配設されており、それゆえ、このニードル弁体8によって透孔4aを通過してリザーバRに流出する作動油に流路抵抗が与えられる。
【0101】
したがって、このときに、ニードル弁体8の尖端8aとこの尖端8aが臨む開口との間に出現する環状流路の流路面積に基づく言うなれば圧側の減衰作用が具現化される。
【0102】
上記に対して、ダンパが伸長作動すると、シリンダ体3内からのロッド体4の突出でピストン部5がシリンダ体3内を上昇して上方室R1が収縮するが、このとき、ロッド体4の透孔4aは、チェック弁構造に構成される整流手段がいわゆる開放作動して上方室R1の作動油のリザーバRへの流出を許容する。
【0103】
すなわち、基本的には、ダンパの伸長作動時には、収縮する上方室R1からの作動油は、ピストン部5の伸側減衰手段たる伸側減衰バルブ51を開放させて下方室R2に流入する。
【0104】
しかしながら、この伸側減衰バルブ51を開放させる際の流路抵抗に比較すると、整流手段たるチェック弁構造における流路抵抗の方が小さくなるので、上方室R1の作動油の一部が整流手段および透孔4aを通過してリザーバRに流出される。
【0105】
そして、このとき、上記したように、透孔4aの上端たる開口端には制御手段たるニードル弁体8が配設されており、それゆえ、このニードル弁体8によって透孔4aを通過してリザーバRに流出する作動油に流路抵抗が与えられる。
【0106】
したがって、このときに、ニードル弁体8の尖端8aとこの尖端8aが臨む開口との間に出現する環状流路の流路面積に基づく言うなれば伸側の減衰作用が具現化される。
【0107】
ちなみに、ピストン部5が上昇することで下方室R2において不足することになる量の作動油は、リザーバRからベースバルブ部6の圧側チェック弁を通過して補充される。
【0108】
以上からすると、この発明による一方のフロントフォーク、すなわち、上記したフロントフォークにあっては、ピストン部5における伸側減衰バルブ51が伸側減衰手段を構成し、ベースバルブ部6における絞り流路61aが圧側減衰手段を構成する。
【0109】
その一方で、上記のフロントフォークにあっては、制御手段が言わばバイパス路とされるロッド体4の透孔4aを通過する作動油に流路抵抗を付与するから、上記の伸側減衰バルブ51および絞り流路61aを主たる減衰手段とすれば、この制御手段は、主たる減衰手段で具現化される減衰作用をいわば高低調整可能にする減衰力調整手段を構成する。
【0110】
それゆえ、図1に示す一方のフロントフォークにあっては、ダンパで具現化される減衰作用にいわゆる幅を持たすことが可能になり、二輪車における乗り心地をより一層良好に改善することが可能になる利点がある。
【0111】
ちなみに、上記したところでは、ダンパにおいて、ピストン部5なりベースバルブ部6なりで具現化される主たる減衰作用が制御手段で高低調整可能とされる設定としたが、これに代えて、図示しないが、ピストン部5およびベースバルブ部6が減衰手段を有せず、専ら制御手段によって高低調整を可能にする減衰作用が具現化される設定としても良い。
【0112】
そして、この発明による一方のフロントフォークにあっては、アクチュエータ7、すなわち、駆動手段の駆動を、図示しないが、たとえば、二輪車におけるハンドルに配設の操作手段で実践されるように設定されることで、ライダーがシートに着座したままの乗車姿勢で所望の制御を実践できる。
【0113】
ちなみに、駆動手段たるアクチュエータ7に電力を供給する操作手段については、ライダーによる操作を可能にするなど任意の構成を選択でき、たとえば、ブレーキ機構と連動されるように構成されても良く、また、前輪に入力される振動を検知することで、あるいは、フロントフォークにおける伸縮状態を検知することで作動されるように構成されても良い。
【0114】
ところで、上記した他方のフロントフォークに対する一方のフロントフォークは、ダンパを有せずして、すなわち、懸架バネSを有することで、バネ作用を具現化する。
【0115】
そして、この発明にあっては、この一方のフロントフォークが懸架バネSの初期荷重を高低調整可能にし、これによって二輪車におけるハンドル側の車高の高低調整を可能にする。
【0116】
すなわち、この一方のフロントフォークは、図1および図5に示すように、車体側チューブ1の上端側部にバネ力調整機構100を有し、このバネ力調整機構100は、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材15の軸芯部に螺装されて昇降可能とされるアジャスタ101を有する。
【0117】
そして、このアジャスタ101は、図5に示すように、シール102の配設下にキャップ部材15に螺装されて、図中で上端となる基端操作部101aをキャップ部材15の上端より上方に突出させる。
【0118】
このとき、キャップ部材15は、この実施形態にあって、図5に示すように、ほぼ有底筒状に形成され、上方部たる筒部の内側に上記のアジャスタ101を昇降可能に螺装させ、下方部たる底部を前記した下端連結部15aにしてロッド体4の基端部たる上端部をロックナット17の利用下に固定状態に連結させる。
【0119】
そして、このバネ力調整機構100にあっては、アジャスタ101の下端に環状に形成の係止片103を隣接させ、この係止片103は、キャップ部材15の筒部にあって、直径方向に突出してアジャスタ101を螺装する筒部の外側にまで突出する突出片部103a有し、この突出片部103aの下面に環座104を隣接させる。
【0120】
このとき、環座104は、下方のバネガイド10の上端を上方の係止片103の突出片部103aに係止させるもので、そのため、キャップ部材15におけるアジャスタ101を螺装する筒部より大径にする断面アングル状に形成されて、バネガイド10の上端にあって径方向の移動が阻止される。
【0121】
そして、この環座104は、バネガイド10の上端に着座すると共に、上面に係止片103の突出片部103aを隣接させて、この係止片103の突出片部103aからの作用力をバネガイド10の周方向に万遍無く作用させると共に、バネガイド10の上端とのメタルタッチを回避する。
【0122】
それゆえ、以上のように形成されたバネ力調整機構100を有する一方のフロントフォークにあっては、アジャスタ101における基端操作部101aをライダーが摘むようにしながら回動することで、バネガイド10を昇降でき、したがって、懸架バネSの上端位置が高低されるから、この懸架バネSにおける初期荷重が高低調整二輪車におけるハンドル側の車高が高低される。
【0123】
以上からすれば、上記のバネ力調整機構100にあって、アジャスタ101の回動が遠隔操作で実現されても良いが、前記した他方のフロントフォークにおいてダンパで具現化される減衰作用を言わば遠隔操作可能にする観点からすれば、この一方のフロントフォークにおいてバネ作用の調整操作がライダーによる手動操作で具現化されるとする方が、フロントフォークをいたずらに高価にしない点からも好ましいと言い得る。
【0124】
以上のように、この発明によるフロントフォークにあっては、他方のフロントフォークにおいて内蔵するダンパが具現化する減衰作用をこの他方のフロントフォークの上端部となる車体側チューブ1の上端部に配設のアクチュエータ7の作動で高低調整し得ると共に、一方のフロントフォークにおいて内装する懸架バネSによるバネ作用をこの一方のフロントフォークの上端部となる車体側チューブ1の上端部に配設のアジャスタ101の回動操作で高低調整し得るから、この一方のフロントフォークと他方のフロントフォークとを一対にして前輪側に装備する二輪車におけるライダーは、二輪車におけるシートに着座したまま、所望の減衰作用の調整あるいはバネ作用の調整を実践し得ることになり、たとえば、走行中に減衰作用を調整した方が良いと気付くなどするとき、所望の減衰作用をすぐさま実践できる利点がある。
【0125】
また、たとえば、走行中にハンドル側の車高を調整した方が良いと気付くなどするとき、二輪車が走行を中止するなどの停車時に、言わば乗車姿勢のままに、所望のバネ作用調整を可能にし得ることになり、従前のように、一旦二輪車の走行を中止してライダーが降車し、なおかつ、スタンド利用で二輪車を駐輪状態にするなどの場合に比較して、調整作業を簡単に実践し得ることになる点で有利となる。
【0126】
前記した実施形態にあっては、他方のフロントフォークに内蔵されるダンパが減衰作用を具現化し、その際に、ダンパにおけるピストン部5が伸側減衰手段たる伸側減衰バルブ51を有し、また、ダンパにおけるベースバルブ部6が圧側減衰手段たる絞り流路61aを有してなるとした。
【0127】
それに対して、これに代えて、前記したように、上記のダンパにおけるピストン部5が伸側減衰手段たる伸側減衰バルブ51を有せず、また、ダンパにおけるベースバルブ部6が圧側減衰手段たる絞り流路61aを有しないとしても良いとした。
【0128】
そして、前記したところでは、他方のフロントフォークに内蔵されるダンパにあって、ピストン部5が伸側減衰手段を有するとき、ベースバルブ部6も圧側減衰手段を有し、ピストン部5が伸側減衰手段を有しないとき、ベースバルブ部6も圧側減衰手段を有しないとしたが、この発明が意図するところからすれば、これに代えて、ピストン部5がベースバルブ部6に関係なく、また、ベースバルブ部6がピストン部5に関係なく、減衰手段を有したり有しなかったりするのは自由である。
【0129】
また、他方のフロントフォークに内蔵されるダンパにあって、減衰作用を具現化する制御手段がニードル弁体8を有し、このニードル弁体8がアクチュエータ7の作動で進退して言わば制御流路を広狭するとしたが、このとき、制御流路の広狭がいわゆる無段階に具現化されても良く、また、いわゆる大小あるいは大中小の複数段階に具現化されるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0130】
左右で構成を異にする一対とされながら二輪車の前輪を懸架するq油圧緩衝器への具現化に向く。
【符号の説明】
【0131】
1 車体側チューブ
2 車輪側チューブ
3 シリンダ体
4 ロッド体
4a 透孔
5 ピストン部
6 ベースバルブ部
7 アクチュエータ
8 制御手段を構成するニードル弁体
8a 尖端
10 バネホルダ
10a 下端段差部
15 キャップ部材
16 ホルダ部材
52 伸側チェック弁
61 圧側チェック弁
71 電磁石
72 プランジャ
100 バネ力調整機構
101 アジャスタ
101a 基端操作部
103 係止片
103a 突出片部
104 環座
R リザーバ
R1 上方室
R2 下方室
S 懸架バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体が一方および他方の一対とされ、一方のフォーク本体が内装の懸架バネによるバネ作用を具現化し、他方のフォーク本体が内蔵のダンパによる減衰作用を具現化してなるフロントフォークにおいて、他方のフォーク本体が内側をリザーバにしながらダンパを内蔵し、このダンパが車輪側チューブ内に立設されるシリンダ体と、このシリンダ体内に下端側が出没可能に挿通されて車体側チューブ内に垂設されるロッド体とを有すると共にシリンダ体に対してロッド体が出没する伸縮作動時にシリンダ体内からの作動流体のロッド体内およびロッド体の上端開口を通過してのリザーバへの流出を許容し、ロッド体の上端開口に対向するように配設されてこのロッド体の上端開口からリザーバに向けて流出する作動流体に流路抵抗を付与する制御手段を有し、一方のフォーク本体が内装の懸架バネにおる上端位置を昇降可能にするバネ力調整機構を有し、このバネ力調整機構が車体側チューブの上端部に昇降可能に螺装されて基端操作部を車体側チューブの上方に突出させるアジャスタを有し、このアジャスタが基端操作部による回動で昇降して懸架バネの上端位置を昇降させてなることを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
上記のバネ力調整機構にあって、アジャスタが車体側チューブの上端開口を閉塞するキャップ部材の軸芯部に螺装されて昇降可能とされると共に、アジャスタの下端に隣接される環状に形成の係止片が外周に直径方向に突出する突出片部を有し、この突出片部の下面に隣接される環座がバネガイドの配設下に懸架バネの上端を係止してなる請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体が一方および他方の一対とされ、一方のフォーク本体が内装の懸架バネによるバネ作用を具現化し、他方のフォーク本体が内蔵のダンパによる減衰作用を具現化してなるフロントフォークにおいて、他方のフォーク本体が内側をリザーバにしながらダンパを内蔵し、このダンパが車輪側チューブ内に立設されるシリンダ体と、このシリンダ体内に下端側が出没可能に挿通されて車体側チューブ内に垂設されるロッド体とを有すると共にシリンダ体に対してロッド体が出没する伸縮作動時にシリンダ体内からの作動流体のロッド体内およびロッド体の上端開口を通過してのリザーバへの流出を許容し、ロッド体の上端開口に対向するように配設されてこのロッド体の上端開口からリザーバに向けて流出する作動流体に流路抵抗を付与する制御手段を有し、この制御手段が車体側チューブにおける上端部に配設のアクチュエータに連結され、このアクチュエータの作動で制御手段によるダンパにおける伸側および圧側の減衰作用が具現化されてなるフロントフォーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−67776(P2012−67776A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210413(P2010−210413)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】