説明

ミシン

【課題】布送り方向に沿った布端に沿って適切に縫い目を形成する。
【解決手段】針板14上の被縫製物C1,C2に下方から接して送り動作を行う送り歯1と、被縫製物に上方から接する押さえ足19と、送り歯による送り方向に交差する方向について被縫製物の縫い目に沿った端部の位置を移動調節する端部調節機構と、被縫製物の端部が所定位置にあるか否かを検知する検知手段24,25と、端部調整機構を、検知手段が端部ありと検知した場合に検知手段から離れる方向に移動制御し、検知手段が端部なしと検知した場合には、当該検知状態が継続する時間又は送り距離について定めた閾値を超えるまで端部なしの検知が継続した場合に、被縫製物が検知手段から離れる方向に移動するよう制御を行う制御手段13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被縫製物の端部に合わせて縫い目を形成するミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンは、縫い代を一定に保つため、針板上面において布送り方向に交差する方向にそれぞれの布を移動させる上マニピュレータと、下マニピュレータと、を備えている。
上マニピュレータ及び下マニピュレータは、それぞれ先端に布を布送り方向に交差する方向に移動させるローラを備えており、縫製中は布端をセンサで検出しながらパルスモータによりローラを回転させて縫い代を一定に保っている。
即ち、センサにより布端ありと検出された場合には、布端がセンサの検出位置から離間する方向にローラを回転制御し、布端なしと検出された場合には、布端がセンサの検出位置に入る方向にローラを回転制御することで、布端が一定の位置となるようにしていた(例えば、特許文献1,2参照)。
また、二枚の布を重ね合わせて縫い合わせを行う際に、上の布と下の布の位置合わせのために相互の布端に楔状(V字状)の切り込みであるノッチN(図14参照)を予め形成しておき、それを目印として縫製を行う場合がある。
また、布の縫い方向に沿った端部は、切断により所定の形状に切り出されているが、そのような切断端部には、布の繊維である糸のケバB(図17参照)が飛び出して入る場合がある。
これらノッチNやケバBの有無を検知する装置が下記の特許文献3に記載されている。特許文献3は、光ファイバーによる布端検出点を布送り方向と直交する方向に並べておき、検出した布端位置の変化を予め設定したファジールールに基づいて、ノッチNやケバBの有無を検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−192576号公報
【特許文献2】特開昭59−14881号公報
【特許文献3】特開平6−121887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3の装置は、布端検知に光ファイバー群を用いており、装置が高価となり、さらに、ファジールールに基づいているので、制御系が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、簡単な構成や制御で、被縫製物の送り方向に沿った端部に沿って安定して縫い目を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、針板上の被縫製物に下方から接して送り動作を行う送り歯と、前記被縫製物に上方から接する押さえ足と、前記送り歯による送り方向に直交する方向について被縫製物の縫い目に沿った端部の位置を移動調節する端部調節機構と、被縫製物の前記端部が所定位置にあるか否かを検知する検知手段と、前記端部調整機構を、前記検知手段が前記端部ありと検知した場合に前記検知手段から離れる方向に移動制御し、前記検知手段が前記端部なしと検知した場合に前記検知手段側に移動制御して、前記送り方向に直交する方向について前記被縫製物の端部から縫い目までの距離が一定となるように制御する制御手段と、を備えるミシンにおいて、前記制御手段は、前記検知手段の前記端部なしとする検知状態が継続する時間又は送り距離について一定の閾値を記憶し、当該閾値を超える場合に前記調節駆動源による前記検知手段側への移動制御を実行することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記制御手段は、前記検知手段の前記端部ありとする検知状態が継続する時間又は送り距離について一定の閾値を記憶し、当該閾値を超える場合に前記調節駆動源による前記検知手段から離れる方向への移動制御を実行することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記一定の閾値について任意に設定する閾値設定手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、針板上の被縫製物に上方から接して送り動作を行う送り足を備え、前記端部調節機構は、上側の被縫製物の位置調節を行う上側端部調節機構と下側の被縫製物の位置調節を行う下側端部調節機構とから構成され、前記端部調節機構は、上側の被縫製物の端部の位置について検知を行う上側検知手段と下側の被縫製物の端部の位置について検知を行う下側検知手段とから構成され、前記制御手段は、前記上側の被縫製物と下側の被縫製物のそれぞれについて、その端部から縫い目までの距離一定となるように制御を行うと共に、前記閾値に基づいて前記調節駆動源による移動制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明では、端部なしを検知してからの時間又は送り距離が一定の閾値を超えるまでは被縫製物の端部を移動させる制御を行わないので、ノッチが閾値に応じた被縫製物の送り方向の長さよりも小さい場合には、被縫製物の端部を移動させる動作が行われず、従って、ノッチが存在してもその影響を生じることなく被縫製物の端部に沿って縫い目を形成することが可能となる。
また、被縫製物の端部の検出とノッチ対策とを共通する検知手段で行うことができ、ノッチ対策のための専用のセンサ及びその処理回路を設ける必要がないので、部品点数を低減すると共に、処理の簡易化を図ることが可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明では、端部ありを検知してからの時間又は送り距離が一定の閾値を超えるまでは被縫製物の端部を移動させる制御を行わないので、ケバが閾値に応じた被縫製物の送り方向の長さよりも小さい場合には、被縫製物の端部を移動させる動作が行われず、従って、ケバが存在してもその影響を生じることなく被縫製物の端部に沿って縫い目を形成することが可能となる。
また、被縫製物の端部の検出とケバ対策とを共通する検知手段で行うことができ、ケバ対策のための専用のセンサ及びその処理回路を設ける必要がないので、部品点数を低減すると共に、処理の簡易化を図ることが可能となる。
【0012】
請求項3記載の発明は、閾値の設定を行うことができるので、被縫製物に形成され得るノッチ又はケバの大きさに応じて適切な閾値を用いることが可能となる。また、過分に閾値が大きくなることも回避でき、実際に被縫製物の端部に対する縫いの方向が外れた場合の被縫製物の移動の応答性の低下を最小限とすることが可能となる。
【0013】
請求項4記載の発明は、上下のそれぞれの被縫製物について、調節機構及び検知手段を備えているので、上下それぞれの被縫製物にたいして、縫製に対するノッチの影響低減を図ることを可能とし、さらには、ケバの影響低減を図ることを可能とし得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】上下送りミシンの斜視図である。
【図2】針落ち近傍を示す模式図である。
【図3】各ローラの駆動に関する機構を示した斜視図である。
【図4】下側ローラの駆動に関する機構を示した下方からの斜視図である。
【図5】下側ローラの駆動に関する機構を示した上方からの斜視図である。
【図6】ソレノイドの断面図である。
【図7】上側ローラの駆動に関する機構を示した上方からの斜視図である。
【図8】上側ローラの駆動に関する機構を示した上方からの斜視図である。
【図9】布センサの斜視図である。
【図10】布センサの検知について説明する模式図である。
【図11】制御装置まわりの構成を示すブロック図である。
【図12】布のセット時における上下送りミシンの動作の流れを示すフローチャートである。
【図13】布端位置制御を説明するための検知手段の平面図である。
【図14】布端の検出位置を拡大した説明図であってノッチが存在する場合を示すである。
【図15】布端の検出位置を拡大した説明図であってノッチが存在しない場合を示すである。
【図16】主軸回転数ごと用意される設定ピッチと判定時間との関係を示す布移動量テーブルの説明図である。
【図17】布端の検出位置を拡大した説明図であってケバが存在する場合を示すである。
【図18】布端位置制御の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の実施形態の全体構成)
本発明に係る上下送りミシンの実施形態について説明する。
上下送りミシンは、針板上に重ねて載置された二枚の布C1,C2(被縫製物)をそれぞれ同じ方向に送りながら縫い合わせるものであり、上下の布の送り量を変えることによりいせ込み縫いが可能なミシンである。
図1〜12に示すように、上下送りミシン100は、押さえ足としての布押さえ19と、送り歯1と、送り足2と、下側ローラ3と、下側パルスモータ4と、下側連結機構5と、下側ソレノイド6と、上側ローラ7と、上側パルスモータ8と、上側連結機構9と、上側ソレノイド10と、分離板11と、下側布センサ24と、上側布センサ25と、制御装置13と、ガイド板20とを備えている。これらの内、下側ローラ3と、下側パルスモータ4と、下側連結機構5と、下側ソレノイド6と、上側ローラ7と、上側パルスモータ8と、上側連結機構9と、上側ソレノイド10と、分離板11と、各布センサ24,25と、ガイド板20とは、送り歯1による送り方向に直交する方向について被縫製物の縫い目に沿った端部の位置を移動調節する端部調節機構を構成するものである。
【0016】
(送り歯)
図2に示すように、送り歯1は、針板14上に重ねて載置された二枚の布のうち、下側の布C1(以下、下布という。)に下方から接して送り動作を行う。送り歯1は、布送り方向に沿った往復動作を付与する送り歯前後送り機構(図示略)と上下方向に沿った往復動作を付与する送り歯上下送り機構(図示略)と、によって駆動する。これにより、送り歯1は、針板14の下方で側面視楕円軌道を描くように運動し、送り歯1が上方に移動した際に針板14から突出して下布に下方から接する。
【0017】
(布押さえ及び送り足)
図2に示すように、送り足2は、針板14上に重ねて載置された二枚の布のうち、上側の布C2(以下、上布という。)に上方から接して送り動作を行い、布押さえ19は上布C2に上方から接して布押さえを行う。送り足2は、布送り方向に沿った往復動作を付与する送り足前後送り機構(図示略)と上下方向に沿った往復動作を付与する送り足上下送り機構(図示略)と、によって駆動し、布押さえ19は前述した送り足上下送り機構により上下動のみを行う。これにより、送り足2は、針板14の上方で側面視楕円軌道を描くように運動し、送り足2が下方に移動した際に上布に上方から接する。また、布押さえ19は定位置で送り足2と交互に上下動を行う。つまり、布押さえ19が上布C2の上方に離間している間に送り足2が下降しつつ送り方向下流側へ移動して上布C2の送り動作を行い、布押さえ19が上布C2に接している間に送り足2が上昇しつつ送り方向上流側への復帰移動を行う。
【0018】
(下側ローラ)
下側ローラ3は、後述するスイングアーム17により上下動可能に支持されており、上昇時に針板14上に少し突出するように設けられ、下布C1に下方から接して送り歯1による布送り方向に交差(直交)する方向に布を往復移動させる。下側ローラ3は、下側連結機構5(詳細は後述する)に回転自在に支持されている。下側ローラ3は、その外周面が鋸歯状に形成され、布と接した際に下側ローラ3が布を確実に捉えて移動させることができるように形成されている。
図3〜図5に示すように、下側ローラ3は、ベルト15により下側パルスモータ4の出力軸に連結されている。
【0019】
(下側パルスモータ)
図3〜図5に示すように、下側パルスモータ4は、土台16に固定されている。土台16には直線状に延びるスイングアーム17が設けられている。スイングアーム17の一端は下側パルスモータ4とともに土台16に固定され、他端は自由端となっている。スイングアーム17の他端には、下側ローラ3が回転自在に支持されている。スイングアーム17は、棒状に形成され、スイングアーム17を覆うようにベルト15が下側ローラ3と下側パルスモータ4の出力軸とに架け渡されている。これにより、下側パルスモータ4の出力軸が回転すると、その回転はベルト15を介して下側ローラ3に伝達され、下側ローラ3を回転させる。すなわち、下側パルスモータ4は、「調節駆動源」として機能する。
【0020】
(下側連結機構)
図3〜図5に示すように、下側連結機構5は、上述した土台16及びスイングアーム17と、回転軸21と、駆動レバー22と、伝達リンク23と、を備えている。
下側パルスモータ4が固定される土台16は、五角形状に形成され、その一角に回転軸21が設けられている。
回転軸21は、ミシンフレームに回転可能に支持されており、軸の向きは下側パルスモータ4の出力軸と平行である。そして、その一端部が土台16に固定されており、回転軸21の軸回りの回転と共に土台16も回転する。回転軸21の他端部には駆動レバー22が設けられている。
駆動レバー22は、回転軸21を中心とする半径方向に延びる棒状の板材であり、その一端部において回転軸21が抱き締め固定されている。駆動レバー22の他端部には、伝達リンク23の一端部がネジ等により連結、固定されている。
伝達リンク23は、駆動レバー22の延長方向に延びる板材であり、伝達リンク23の他端部には、下側ソレノイド6のプランジャ62が下方から当接可能となっている。
すなわち、下側ソレノイド6は、プランジャ62が上下方向に移動可能に配置されており、プランジャ62が伸びると伝達リンク23を押し上げ、縮むと伝達リンク23は支えるものがなくなって下方に移動する。なお、伝達リンク23に対して下方への移動を付勢するバネ等の付勢部材を設けても良い。つまり、伝達リンク23は、下側ソレノイド6により上方に移動し、バネにより下方に移動する構成としても良い。ここで、下側ソレノイド6のハウジング60には、支持台61が設けられており、プランジャ62が駆動していないときには、伝達リンク23を下方から支えている。
【0021】
(下側ソレノイド)
図3〜図5に示すように、下側ソレノイド6は、ミシンの上下方向(針の上下方向)に沿ってプランジャ62が移動するように配置されている。下側ソレノイド6は、通電された電流量に応じてプランジャ62の移動量が変化する。これにより、下側ソレノイド6は、通電された電流量に応じて下側ローラ3を介して布に対する押圧力を制御可能となっている。
図6に示すように、下側ソレノイド6は、ハウジング60、プランジャ62、コイル用フレーム63、コイル64、磁性材料65等から構成される。ハウジング60は、軸受け60A,60Bを支持する非磁性体60Cを有する。プランジャ62は、軸方向に移動可能で且つ回転不能に軸受け60A,60Bに支持されている。プランジャ62に固着された磁性部材65は、円筒形状でその一部に軸心からの径をかえる段部65aが形成されている。そして、この形状により、推力がストロークによらない特定ストローク区間(後に詳述)が得られる。
【0022】
下側ソレノイド6は、コイル64に通電することでプランジャ62を引き込む方向に駆動する方向に取り付けられている。そして、通電電流の増大に従ってプランジャ62を引き込む推力を増大させる。これにより下側ローラ3による押圧力調整が容易となる。
すなわち、下側ソレノイド6は、「下側押圧手段」として機能する。
【0023】
(上側ローラ)
図3,7,8に示すように、上側ローラ7は、針板14の上方において上下動可能に設けられ、下降時に上布に上方から接して送り歯1による布送り方向に対して交差(直交)する方向であって針板14の上面に平行な方向に布を移動させる。上側ローラ7は、上側連結機構9(詳細は後述する)に回転自在に支持されている。上側ローラ7は、その外周面が鋸歯状に形成され、布と接した際に上側ローラ7が布を確実に捉えて移動させることができるように形成されている。
上側ローラ7は、ベルト18により上側パルスモータ8の出力軸に連結され回転が付与されるようになっている。
【0024】
(上側パルスモータ)
上側パルスモータ8は、土台31に固定されている。上側パルスモータ8には直線状に延びるスイングアーム32が設けられている。スイングアーム32の一端は上側パルスモータ8に固定され、他端は自由端となっている。スイングアーム32の他端には、上側ローラ7が回転自在に支持されている。スイングアーム32は、板状に形成され、スイングアーム32を覆うようにベルト18が上側ローラ7と上側パルスモータ8の出力軸とに架け渡されている。これにより、上側パルスモータ8の出力軸が回転すると、その回転はベルト18を介して上側ローラ7に伝達され、上側ローラ7を回転させる。すなわち、上側パルスモータ8は、「調節駆動源」として機能する。
【0025】
(上側連結機構)
上側連結機構9は、上述した土台31及びスイングアーム32と、回転軸33と、駆動レバー34と、伝達リンク35と、回転リンク36と、を備えている。
上側パルスモータ8が固定される土台31は、五角形状に形成され、その一角に回転軸33が設けられている。
回転軸33は、ミシンフレームに回転可能に支持されており、軸の向きは上側パルスモータ8の出力軸と平行である。そして、その一端部が土台31に固定されており、回転軸33の軸回りの回転と共に土台31も回転する。回転軸33の他端部には駆動レバー34が設けられている。
駆動レバー34は、回転軸33を中心とする半径方向に延びる板材であり、その一端部において回転軸33が抱き締め固定されている。駆動レバー34の他端部には、伝達リンク35の一端部が回転自在に連結されている。
伝達リンク35は、駆動レバー34におおむね直交する方向に延びる棒状の板材であり、その長手方向に沿って複数の連結孔35aが形成されている。伝達リンク35の他端部には、回転リンク36の一端部が回転自在に連結されている。
回転リンク36は、その中央部近傍で上側ソレノイド10のハウジング70に取り付けられた板材71に回転自在に支持されている。回転リンク36の他端部は、上側ソレノイド10の出力軸となるプランジャ72に回転自在に連結されている。また、この回転リンク36は、駆動レバー34とおおむね平行に配設されている。
【0026】
(上側ソレノイド)
上側ソレノイド10は、伝達リンク35の移動方向(長手方向)に沿ってプランジャ72が移動するように配置されている。
上側ソレノイド10は、ハウジング70、プランジャ72等を備えている。なお、上側ソレノイド10の内部構成は、下側ソレノイド6と同じであるため、説明を省略する。
すなわち、上側ソレノイド10は、「上側押圧手段」として機能する。
【0027】
(分離板)
図7に示すように、分離板11は、その一端側が支持板44の底面に不図示のネジにより固定される。支持板44の上面には、図示省略したガイド板20がネジ固定される。支持板44は、不図示のラックとピニオンギアを介して、図1に示す調節ダイヤル45に連結されている。調節ダイヤル45を回動させると、分離板11とガイド板20が布送り方向に対して直交する方向Gに対して、位置調整される。
支持板44の底面に固定された分離板11は、上側ローラ7と下側ローラ3との間で、針板14より上方に配置される。分離板11は、針板14に取り付けた際に、その先端が針板14から浮き上がるように屈曲形成されている。さらに、分離板11は、各ローラ3,7よりも幾分布送り方向上流側まで延出されている。すなわち、分離板11により、針板14上の空間を上下に仕切ることができ、分離板11の上側に上布C2が下側に下布C1がそれぞれ送られる。
これにより、分離板11は、二枚の布C1,C2の間に配置され、下側ローラ3と分離板11の下面とで下布C1を挟み込み、上側ローラ7と分離板11の上面とで上布C2を挟み込む。
【0028】
ガイド板20は、分離板11の上側に配置されるように、支持板44の上面にネジにより取付けられている。ガイド板20はその下面が、分離板11の上面と対向すると共に上布C2が通過するための隙間が形成されている。このガイド板20の布送り方向下流側の端部は、上側ローラ7の手前まで延出されており、ガイド板20の下面は、上布C2を上側ローラ7と分離板11との隙間に案内するガイド面として機能する。また、ガイド板20の布送り方向上流側の端部は、上流側に向かうに連れて徐々に上方に向かうように傾斜している。
【0029】
(布センサ)
図9,10に示すように、下側及び上側布センサ24,25は、縫製時に縫い代(布の一方の側端部(布端という)から縫い目までの長さ)を一定に保つために布端が所定の位置にあるか否かを検知するものである。図2に示すように、各布センサ24,25は、下側ローラ3と上側ローラ7に対してそれぞれ布送り方向下流側に近接して設けられている。図9,10に示すように、これらの布センサ24,25は、共通のセンサ台41に保持されており、水平に配置され、両面が反射面となる反射板46を挟んでそれぞれが対向配置されている。各布センサ24,25は、それぞれ、手前側の布有無センサ42と、奥側の布端センサ43とを備えている。
センサ台41は、その先端部が布送り方向から見て略コ字状に形成され、その内側には前述の反射板46が水平に保持されている。そして、コ字状部の内側下面と内側上面とには、それぞれ、各ローラ3,7による布移動方向(以下、上下ローラ3,7による布移動方向を調整方向Gというものとし、布送り方向を向いた状態で右手方向(図8では左方)を「正方向」又は「右方向」といい、左手方向(図8では右方)を「逆方向」又は「左方向」というものとする)に沿って一様にV字状に下方と上方とに窪んだ凹部41a、41bが形成されている。そして、反射板46は、針板14上で重ねられて搬送される下布C1と上布C2との間に挿入されるように、針板14の上面より幾分高い位置に配置されている。
これにより、下布C1はセンサ台41のコ字状部の内側であって反射板46と下側の凹部41aとの間を通過し、上布C2はセンサ台41のコ字状部の内側であって反射板46と上側の凹部41bとの間を通過することになる。
【0030】
各凹部41a、41bは、調整方向Gから見た際にV字状に形成されている。
各凹部41a、41bの二つの傾斜面には、手前側(調整方向Gの逆方向寄り)に発光センサ42aと受光センサ42bからなる布有無センサ42が設けられている。上壁面の布有無センサ42は、上布C2があるか否かを検知するセンサであり、下壁面の布有無センサ42は、下布C1があるか否かを検知するセンサである。
各凹部41a、41bの二つの傾斜面には、奥側(調整方向Gの正方向寄り)に発光センサ43aと受光センサ43bからなる布端センサ43が設けられている。上壁面(41b側)の布端センサ43は、上布C2の布端が所定位置にあるか否かを検出するセンサであり、下壁面(41a側)の布端センサ43は、下布C1の布端が所定位置にあるか否かを検出するセンサである。
反射板46は、各発光センサ42a,43aから発光された光を反射するものであり、光路上に布端が存在しなければ反射板46により反射された光は高強度で各受光センサ42b,43bにて受光される。
【0031】
上記構造により、上布C2は反射板46と上壁面の布有無センサ42及び布端センサ43との間に進入することができ、下布C1は反射板46と下壁面の布有無センサ42及び布端センサ43との間に進入することができる。布が進入していれば、各発光センサ42a,43aからの光を布が遮って反射板46により反射されなくなるので、各受光センサ42b,43bは光を検知することができない。この原理を利用して布の有無、布端を検知している。
すなわち、下側布センサ24は「下側の検知手段」として機能し、上側布センサ25は「上側の検知手段」として機能する。
【0032】
(制御装置)
図11に示すように、制御装置13は、各種の演算処理を行うCPU51と、送り歯1及び送り足2の駆動制御、各パルスモータ4,8の駆動制御、各ソレノイド6,10の駆動制御に関するプログラムが格納されたROM52と、CPU51の処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM53とを備えている。
制御装置13は、布有無センサ42が布があることを検知している場合に、布端センサ43で布端を検知し、その検知結果に基づいて、各ローラ3,7の回転方向及び回転量を決定し、各パルスモータ4,8を駆動させる。また、制御装置13は、いせ込み縫いを行う際に、いせ込み量に応じてローラ3,7による布の押圧力を調整するため、各ソレノイド6,10を駆動させる。
すなわち、制御装置13は、「制御手段」として機能する。
制御装置13には、縫製動作及び送り歯1及び送り足2の駆動源であるミシンモータ56と、その軸角度を検出するエンコーダ57と、各パルスモータ4,8と、各ソレノイド6,10と、上下の布センサ24,25の各布有無センサ42,42と、各布端センサ43,43とが接続されている。
また、制御装置13には、図示しないインターフェイスを介して各種の設定を入力するための設定入力手段としての操作パネル54と、設定内容等の表示を行う表示装置55とが接続されている。
【0033】
(縫製前の布のセット動作)
次に、上下送りミシンの縫製前の布のセット動作について説明する。
図12に示すように、縫製実行前に布をセットする際には、制御装置13は、布有無センサ42が下布を検知したか否かを判断する(ステップS1)。
ステップS1において、制御装置13は、布有無センサ42が下布を検知したと判断すると(ステップS1:YES)、制御装置13は、下側ソレノイド6を駆動させて、下側ローラ3を上昇させる(ステップS2)。また、制御装置13は、下側パルスモータ4を駆動させる(ステップS3)。これにより、下側ローラ3は回転しながら下布に当接する。下側ローラ3が下布に当接すると、下側ローラ3の回転によって下布はセンサ台41の凹部41aに引き込まれる。
次いで、制御装置13は、布端センサ43が下布を検知したか否かを判断する(ステップS4)。
ステップS4において、制御装置13は、布端センサ43が下布を検知したと判断すると(ステップS4:YES)、制御装置13は、下側パルスモータ4の駆動を停止させる(ステップS5)。
【0034】
次いで、制御装置13は、布有無センサ42が上布を検知したか否かを判断する(ステップS6)。
ステップS6において、制御装置13は、布有無センサ42が上布を検知したと判断すると(ステップS6:YES)、制御装置13は、上側ソレノイド10を駆動させて、上側ローラ7を下降させる(ステップS7)。また、制御装置13は、上側パルスモータ8を駆動させる(ステップS8)。これにより、上側ローラ7は回転しながら上布に当接する。上側ローラ7が上布に当接すると、上側ローラ7の回転によって上布はセンサ台41の凹部41bに引き込まれる。
次いで、制御装置13は、布端センサ43が下布を検知したか否かを判断する(ステップS9)。
ステップS9において、制御装置13は、布端センサ43が上布を検知したと判断すると(ステップS9:YES)、制御装置13は、上側パルスモータ8の駆動を停止させる(ステップS10)。以上をもって、縫製前の布のセット動作が終了する。
【0035】
(布端位置制御)
次に、上下送りミシン100の布端位置制御について説明する。
図13は布端位置制御を説明するための検知手段12の平面図である。この上下送りミシン100では、縫製中において、前述した上下の布端センサ43により布端を検出し、上布と下布の各布端が常に布端センサ43位置を通過するように上側パルスモータ8と下側パルスモータ4の動作制御を行う。
上記布端センサ43は、受光センサ43bにより検出光強度の閾値を予め定めており、制御装置13は、受光センサ43bの出力が閾値未満の場合には布端で遮蔽されている領域が大きいことから「布端あり(検知)」と判定し、閾値以上の場合には遮蔽されていないか遮蔽されている領域が小さいので「布端なし(非検知)」と判定する。また、この布端センサ43による布端検知は、縫製中において周期的に(例えば1[msec]ごとに)実行される。
【0036】
上布C2を例に説明すると、制御装置13は、上布C2の布端が布端センサ43に検知されると(図13二点鎖線)、上側パルスモータ8を調整方向Gの逆方向に駆動制御し、上布C2の布端が布端センサ43に検知されないときには(図13二点鎖線)、上側パルスモータ8を調整方向Gの正方向に駆動制御する。なお、下布C1も同様の制御が行われる。
つまり、これにより、布C1,C2は、それぞれ布端センサ43を中心に交互左右に移動を繰り返して布送りが行われることとなり、これにより布端に沿って縫い目が形成される。
なお、図13では説明上、振り幅を大きく図示しているが実際にはより小さい振り幅で布送りが行われる。
【0037】
さらに、制御装置13は、上記布端位置制御において、ノッチの対策として以下の制御を行うことを特徴としている。
図14は布端の検出位置を拡大した説明図である。図示のように、布端センサ43の検出エリアA内で布端にノッチNが存在すると、受光センサ43bの出力が閾値以上となり、制御装置13は「布端なし」と判定してしまう。その結果、何ら対処を施さないと、布端が適正な位置にあっても、布は調整方向Gの正方向に移動させられてしまう。
従って、この制御装置13の布端位置制御では、受光センサ43bの出力が「布端なし」の状態に切り替わってから予め定められた判定距離L1だけ布送りが行われるまで「布端なし」の判定が継続した場合に布が調整方向Gの正方向(布端ありとなる方向)に移動されるように上側パルスモータ8及び下側パルスモータ4の動作制御を行っている。
この判定距離L1は、一般的なノッチNの布送り方向の長さより長い距離とすることが望ましく、前述した操作パネル54からその数値を設定することができる。
【0038】
上記制御によれば、図15に示すように、受光センサ43bにより布端なしと検知されているのがノッチNのない布端であれば、判定距離Lの送りが行われている間、周期的に実行される受光センサ43bの検出結果は毎回「布端なし」と判定されることになるが、ノッチNにより布端なしと判定された場合には、ノッチNの位置を通過した時点で「布端あり」との判定となる。従って、このように、「布端なし」の判定が行われてから判定距離L1の送りが行われる間、当該判定を維持するか否かをさらに判定することにより、ノッチNによる布端の誤検出を防止することができる。
【0039】
また、上記判定距離L1の経過を判定するために、制御装置13は、受光センサ43bが布端なしとの検出を行った時点から判定距離L1の送りが行われたか否かの監視を行う必要がある。
上下送りミシンは、ミシン頭部に設けられた送りピッチダイヤル60から毎針ごとの布送り量である送りピッチの設定を行うことができる。設定された送りピッチは、送りピッチダイヤル60に連動する不図示のポテンショメータによりその設定量が制御装置13に送られる。尚、送りピッチダイヤル60に代えて、操作パネル54から送りピッチを設定することも容易に考えられる。
この設定ピッチとエンコーダ57の出力に基づくミシンの主軸回転数(回転速度)から布送り量の変化を求めることが可能である。つまり、制御装置13は、判定距離L1の送りが行われたか否かを、「布端なし」の検出からの経過時間(「判定時間」とする)によって監視している。
図16は、主軸回転数ごと用意される設定ピッチと判定時間との関係を示す布移動量テーブルの説明図である。
この図16の布移動量テーブルは、ノッチNは最大でも2[mm]未満という前提の下で判定距離L1を2[mm]に設定した場合の例を示している。図16左表は、主軸回転数が1000[rpm]に対応する布移動量テーブルである。主軸回転数が1000[rpm]の場合、主軸一回転で設定ピッチ分の布送りが行われることとなる。つまり、判定時間は下式(1)により算出される。
[判定時間]=[判定距離L1]/([設定ピッチ]/[周期]) …(1)
周期は0.06[s]となるので、例えば、判定距離L1の送りに要する時間は、設定ピッチが1[mm]であれば0.12[s]、設定ピッチが2[mm]であれば0.06[s]、設定ピッチが3[mm]であれば0.04[s]となる。なお、図16では設定ピッチについて一部のみを図示しているが布移動量テーブルにはより木目が細かく設定されている。また、図16の右表には主軸回転数が2000[rpm]の布移動量テーブルを図示しているが、判定時間は同様に上式(1)により算出されたものである。
また、図16には主軸回転数が1000[rpm]と2000[rpm]の布移動量テーブルのみを図示しているが、より多くの主軸回転数について用意されている。
制御装置13は、縫製時に布端センサ43が「布端なし」と検出すると、その時のエンコーダ57の出力から主軸回転数を求め、対応する布移動量テーブルを読み出して、現在の設定ピッチから判定時間を特定する。そして、計時を開始して、当該判定時間が経過するまで「布端なし」の検出が継続するか否かにより、「布端なし」の検出が本当に布端の検出に起因するのか或いはノッチNの誤検出に起因するものなのかを判定する。
つまり、制御装置13は、受光センサ43bが「布端なし」との検出を行うと、現在の設定ピッチを読み出し、エンコーダ57の検出から主軸回転数を求め、対応する布移動量テーブルを読み出して、現在の設定ピッチから判定時間を特定する。そして、それ以降、判定時間が経過するまで、1[msec]ごとに行われる受光センサ43bが「布端なし」の検出を維持するかを判定する。そして、判定時間が経過した場合には受光センサ43bは布端を検出したものとして布を調整方向Gの逆方向に移動させ、判定時間が経過する前に受光センサ43bの検出状態が「布端あり」に切り替わった場合にはノッチNの誤検出に起因するものであったものとして布の調整方向Gの逆方向への移動は行わない。
【0040】
また、制御装置13は、上記布端位置制御において、ケバの対策として以下の制御を行うことを特徴としている。
図17は布端の検出位置を拡大した説明図である。図示のように、布端センサ43の検出エリアA内で布端にケバBが存在すると、受光センサ43bの出力が閾値未満となり、制御装置13は「布端あり」と判定してしまう。その結果、何ら対処を施さないと、布端が適正な位置にあっても、布は調整方向Gの逆方向に移動させられてしまう。
従って、この制御装置13の布端位置制御では、予め定められた判定距離L2だけ布送りが行われるまで「布端あり」の判定が継続した場合に布が調整方向Gの逆方向(布端なしとなる方向)に移動されるように上側パルスモータ8及び下側パルスモータ4の動作制御を行っている。
この判定距離L2は、一般的なケバBの布送り方向の長さより長い距離とすることが望ましく、前述した操作パネル54からその数値を設定することができる。
前述したノッチNの場合と同様に、受光センサ43bにより布端ありと検知されているのがケバBのない布端であれば、判定距離L2の送りが行われている間、周期的に実行される受光センサ43bの検出結果は毎回「布端あり」と判定されることになるが、ケバBにより布端ありと判定された場合には、ケバBの位置を通過した時点で「布端なし」との判定となる。従って、このように、「布端あり」の判定が行われてから判定距離L2の送りが行われる間、当該判定を維持するか否かをさらに判定することにより、ケバBによる布端の誤検出を防止することができる。
また、上記判定距離L2の経過を判定するための手法は、前述したノッチNの判定距離L1を判定する場合の手法と全く同じであるため、その説明は省略する。
【0041】
以下、図18のフローチャートに基づいて布端位置制御を詳細に説明する。なお、上布C2と下布C1に対する布端位置制御はそれぞれ個別に行われるが、その制御内容はほぼ同一なので、このフローチャートでは、上布C2に対する処理のみを示して、下布C1に対する制御の説明は省略するものとする。
まず、周期的な布端センサ43による布端検出を実行する(ステップS21)。その結果、受光センサ43bの検出光量が閾値未満で「布端あり」の判定が得られた場合には(ステップS21:YES)、現在の設定ピッチを読み込むと共にエンコーダ57の出力からミシンの主軸回転数を算出する(ステップS22)。
さらに、主軸回転数から布移動量テーブルを特定し、当該布移動量テーブルを参照して設定ピッチに応じて判定距離L2の布送りに要する判定時間を取得する。そして、制御装置13は、判定時間の計時を開始する(ステップS23)。そして、布端センサ43の次の検出周期の経過を待ってから(ステップS24)、再び布端センサ43により布端検出を実行する(ステップS25)。
その結果、布端が検出されなかったときには(ステップS25:NO)、ステップS21における布端の検出はケバBによる誤検出だったものとして、ステップS26に処理が進められ、布が右方向(正方向)に移動される。なお、このとき、ステップS23で開始された判定時間の計時は終了となる。そして、ステップS36に処理が進められる。これにより、次の検出周期の経過を待って、ステップS21に戻り、次の新たな布端検出に処理が進められる。
【0042】
一方、ステップS25において「布端あり」と再び検出されたときには(ステップS25:YES)、判定時間の経過が判定され(ステップS27)、経過していないときには(ステップS27:NO)、ステップS26に処理を戻し、経過したときには(ステップS27:YES)、ステップS21における布端ありの検出は適正だったものとして、布が左方向(逆方向)に移動される(ステップS28)。なお、このとき、ステップS23で開始された判定時間の計時は終了となる。そして、ステップS36に処理が進められる。これにより、次の検出周期の経過を待って、ステップS21に戻り、次の新たな布端検出に処理が進められる。
【0043】
一方、ステップS21の判定において、受光センサ43bの検出光量が閾値未満で「布端なし」の判定が得られた場合には(ステップS21:NO)、現在の設定ピッチを読み込むと共にエンコーダ57の出力からミシンの主軸回転数を算出する(ステップS29)。
さらに、主軸回転数から布移動量テーブルを特定し、当該布移動量テーブルを参照して設定ピッチに応じて判定距離L1の布送りに要する判定時間を取得する。そして、制御装置13は、判定時間の計時を開始する(ステップS30)。そして、布端センサ43の次の検出周期の経過を待ってから(ステップS31)、再び布端センサ43により布端検出を実行する(ステップS32)。
その結果、布端が検出されたときには(ステップS32:YES)、ステップS21における布端なしの検出はノッチNによる誤検出だったものとして、ステップS33に処理が進められ、布が左方向(逆方向)に移動される。なお、このとき、ステップS30で開始された判定時間の計時は終了となる。そして、ステップS36に処理が進められる。これにより、次の検出周期の経過を待って、ステップS21に戻り、次の新たな布端検出に処理が進められる。
【0044】
一方、ステップS32において「布端なし」と再び検出されたときには(ステップS32:NO)、判定時間の経過が判定され(ステップS33)、経過していないときには(ステップS33:NO)、ステップS31に処理を戻し、経過したときには(ステップS33:YES)、ステップS21における布端なしの検出は適正だったものとして、布が右方向(正方向)に移動される(ステップS34)。なお、このとき、ステップS30で開始された判定時間の計時は終了となる。そして、ステップS36に処理が進められる。これにより、次の検出周期の経過を待って、ステップS21に戻り、次の新たな布端検出に処理が進められる。
なお、上記の布端位置制御は、布有無センサ42により、上布C2及び下布C1の終端部が検出されて縫製が終了するまで繰り返し実行される。
【0045】
(実施形態の効果)
上述のように、上下送りミシン100の制御装置13は、下布C1と上布C2のそれぞれについて、端部なしを検知してからの送り距離が判定距離L1を超えるまでは布端部を移動させる制御を行わないので、ノッチNが布送り方向について判定距離L1よりも小さい場合には、布端部を移動させる動作が行われず、従って、ノッチNが存在しても誤検出をすることなく、各布C1,C2の端部に沿って縫い目を形成することが可能となる。
【0046】
また、同様に、制御装置13は、下布C1と上布C2のそれぞれについて、端部ありを検知してからの送り距離が判定距離L2を超えるまでは布端部を移動させる制御を行わないので、ケバBが布送り方向について判定距離よりも小さい場合には、布端部を移動させる動作が行われず、従って、ノッチBが存在しても誤検出することなく、各布C1,C2の端部に沿って縫い目を形成することが可能となる。
【0047】
また、布C1,C2の端部の検出を行う下側及び上側布センサ24,25にを用いてノッチN及びケバBの誤検出の防止を図っているので、ノッチNやケバBを検出するための専用のセンサ及びその処理回路を設ける必要がないので、部品点数を低減すると共に、処理の簡易化を図ることが可能となる。
また、上記上下送りミシン100では、操作パネル54により、ノッチN及びケバBの有無を判定するための閾値となる判定距離L1,L2をそれぞれ設定入力することができるので、より適正な判定距離を設定することで、ノッチN及びケバBの識別と布送りの追従性のバランスをより適切に調節することが可能となる。
【0048】
また、上下送りミシン100は、下側ローラ3を下布C1に押圧する下側ソレノイド6を備え、また、上側ローラ7を上布C2に押圧する上側ソレノイド10を備えている。そして、各ソレノイド6、10の推力を制御装置13が任意に制御することができるので、いせ込み縫いの際に、下布C1及び上布C2に対する押圧力の制御により任意のいせ込み量での縫いを実現することが可能となる。
なお、いせ込み縫いを行う際には、一針ごとの送りピッチが変動するので、判定距離L1,L2との比較において、下布C1又は上布C2への押圧力或いはそれを決定する各ソレノイド6,10の駆動電流値を布の移動距離の算出に考慮しても良い。例えば、ソレノイド6又は10の駆動電流値が高くなれば、下布C1又は上布C2への押圧力が増加し、布移動速度が低下するので、布移動量テーブルで取得される判定時間に対して、駆動電流値が高くなるに連れて大きくなるような係数を乗じて判定時間を長くなるように修正しても良い。
【0049】
(その他)
上記制御装置13には、例えば、操作パネル54により、ノッチNの有無の判定を含んだ布端位置制御やケバBの有無の判定を含んだ布端位置制御の実行の有無をそれぞれ個別に設定可能としても良い。即ち、ノッチNやケバBの判定を行わない場合には、布端ありの検知の場合や布端なしの検知の場合に、判定時間の経過を待つことなく布の左右移動を開始させることとなる。
また、同様に、ノッチNの有無の判定を含んだ布端位置制とケバBの有無の判定を含んだ布端位置制御とは、いずれか一方のみを実行してもよい。
上記のように設定可能とすることにより、ノッチの形成された布地のみについてノッチNの有無の判定を含んだ布端位置制御を実行したり、ケバBの生じやすい布地のみについてケバBの有無の判定を含んだ布端位置制御を実行するなど、必要性に応じたケバ対策を施すことが可能となる。
【0050】
また、上記制御装置13に、ノッチNやケバBの布送り方向の長さを計測する機能を追加しても良い。
例えば、前述した図18のフローチャートにおいて、ステップS25において「NO」と判定された場合には、ステップS21での「布端有り」の判定がケバBを原因とするものなので、ステップS23で開始された計時からステップS25で「NO」と判定されるまでの計時時間と主軸回転数と設定ピッチとにより、ステップS21での「布端有り」の判定が行われてからそれまでの布移動距離を算出することで、当該布移動距離をケバBの布送り方向長さと見なすことができる。
同様に、ステップS32において「YES」と判定された場合には、ステップS21での「布端なし」の判定がノッチNを原因とするものなので、ステップS30で開始された計時からステップS32で「YES」と判定されるまでの計時時間と主軸回転数と設定ピッチとにより、ステップS21での「布端なし」の判定が行われてからそれまでの布移動距離を算出することで、当該布移動距離をノッチNの布送り方向長さと見なすことができる。
これらのケバ長又はノッチ長はRAM53に記憶するか或いは表示装置55で表示させる制御を行っても良い。
このように、ノッチNやケバBの布送り方向の長さを取得可能となることにより、操作パネル54から設定する判定距離L1又はL2をより適切な値に設定することが可能となる。
【0051】
また、上記制御手段13は、布端センサ43による布端検出を周期的(1[msec]ごと)に実行しているが、布C1,C2が布送り方向について予め定められた微少な移動距離の移動が行われるたびに布端センサ43による布端検出を実行するように制御しても良い。
その場合、「布端あり」の判定時にのみ布C1,C2の移動距離を算出するのではなく、縫製中は常にエンコーダ57の出力を監視して主軸角度を求め、主軸角度と設定ピッチとから布C1,C2の移動量を常に又は周期的に算出し、所定の移動量の移動が行われるたびに、布端センサ43による布端検出を実行し、布端位置制御を実行するよう制御しても良い。
【0052】
また、上記上下送りミシン100では、ノッチN又はケバBの有無の判定に布送り距離の閾値(判定距離L1,L2)を用いているが、ミシンモータ56の回転速度に関係なく、より単純に、一定の時間を閾値として、「布端なし」又は「布端あり」の検出があってから一定の閾値である判定時間の間、同じ検出状態が継続するか否かによって布移動の方向を決定する制御を行っても良い。
即ち、「布端なし」の検出が行われてから一定の判定時間、その検出が継続すれば実際に布端がないものとして布を右方(正方向)に移動し、その検出が継続することなく「布端あり」に変化すればノッチTであったものとして布を左方(逆方向)に移動させる。また、同様に、「布端あり」の検出が行われてから一定の判定時間、その検出が継続すれば実際に布端があるものとして布を左方(逆方向)に移動し、その検出が継続することなく「布端なし」に変化すればケバBであったものとして布を右方(正方向)に移動させる。
なお、この場合も、「布端なし(あり)」の検出から「布端あり(なし)」の検出に変化する間での経過時間を計時すると共に、その時のミシンモータ56の回転数及び設定ピッチとによりノッチN(又はケバB)の布送り方向の大きさを求めることが可能である。
【0053】
また、前述した布端位置制御では、ステップS22又はS29において、布移動量テーブルにより判定時間を取得する例を示したが、前述した式(1)によりその都度、判定時間を算出しても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 送り歯
2 送り足
3 下側ローラ(端部調節機構)
4 下側パルスモータ(調節駆動源)
5 下側連結機構(端部調節機構)
6 下側ソレノイド(端部調節機構)
7 上側ローラ(端部調節機構)
8 上側パルスモータ(調節駆動源)
9 上側連結機構(端部調節機構)
10 上側ソレノイド(端部調節機構)
11 分離板(端部調節機構)
13 制御装置(制御手段)
14 針板
19 布押さえ(押さえ足)
20 ガイド板(端部調節機構)
24 下側布センサ(検知手段)
25 上側布センサ(検知手段)
54 操作パネル(閾値設定手段)
C1 下布(被縫製物)
C2 上布(被縫製物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針板上の被縫製物に下方から接して送り動作を行う送り歯と、
前記被縫製物に上方から接する押さえ足と、
前記送り歯による送り方向に直交する方向について被縫製物の縫い目に沿った端部の位置を移動調節する端部調節機構と、
被縫製物の前記端部が所定位置にあるか否かを検知する検知手段と、
前記端部調整機構を、前記検知手段が前記端部ありと検知した場合に前記検知手段から離れる方向に移動制御し、前記検知手段が前記端部なしと検知した場合に前記検知手段側に移動制御して、前記送り方向に直交する方向について前記被縫製物の端部から縫い目までの距離が一定となるように制御する制御手段と、を備えるミシンにおいて、
前記制御手段は、前記検知手段の前記端部なしとする検知状態が継続する時間又は送り距離について一定の閾値を記憶し、当該閾値を超える場合に前記調節駆動源による前記検知手段側への移動制御を実行することを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検知手段の前記端部ありとする検知状態が継続する時間又は送り距離について一定の閾値を記憶し、当該閾値を超える場合に前記調節駆動源による前記検知手段から離れる方向への移動制御を実行することを特徴とする請求項1記載のミシン。
【請求項3】
前記一定の閾値について任意に設定する閾値設定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
【請求項4】
針板上の被縫製物に上方から接して送り動作を行う送り足を備え、
前記端部調節機構は、上側の被縫製物の位置調節を行う上側端部調節機構と下側の被縫製物の位置調節を行う下側端部調節機構とから構成され、
前記端部調節機構は、上側の被縫製物の端部の位置について検知を行う上側検知手段と下側の被縫製物の端部の位置について検知を行う下側検知手段とから構成され、
前記制御手段は、前記上側の被縫製物と下側の被縫製物のそれぞれについて、その端部から縫い目までの距離一定となるように制御を行うと共に、前記閾値に基づいて前記調節駆動源による移動制御を実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−136127(P2011−136127A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37(P2010−37)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】