説明

ロボット制御装置

【課題】ユーザ座標系を作業領域に応じて自動的に選択する場合、光電センサ等の導入が必要である。またはユーザ座標系の設定に加えて作業領域の複雑な設定が必要である。
【解決手段】アーム先端に取り付けられたツールを操作手段からの操作信号によりジョグ送りする際に、ツールが予め定められた作業領域に侵入したことを検知して、所定の軸方向を有するユーザ座標系を自動的に選択するロボット制御装置である。このロボット制御装置に作業領域自動設定手段を備える。すなわち、ユーザ座標系の原点Orを含んだ所定形状を有する領域を作業領域Qとして自動設定する。所定形状とは、原点Orを中心位置とした予め定めた半径長さDrを有する球体である(c)。または、予め定めた辺長さDx〜Dzを有する直方体である(b)。作業領域Qの中心位置となるユーザ座標系の原点は、シフトできるとさらに良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の軸方向を定めたユーザ座標系でのジョグ送りを可能としたロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接、スポット溶接等の加工作業をロボットで実現する場合、ティーチングプレイバックと呼ばれる方式が採用されることが一般的である。ティーチングプレイバック方式とは、予め決められた位置にワークを設置して、マニピュレータとワークとの相対的な位置関係を拘束した状態で、ワークに対するマニピュレータの動作を教示し、この教示データを繰り返し再生動作させることで、同一品種のワークを連続して加工するという方法である。
【0003】
図7は、ティーチングプレイバック方式を採用したロボット制御システム60の一般的な構成図である。同図において、マニピュレータ61は、アーム62の先端にワークWを加工するための作業ツールTを備えている。ティーチペンダント63は、ワークWに対するマニピュレータ61の動作を作業者が教示するための装置であり、その盤面上には、作業ツールTを移動させるための方向指示キー64が装備されている。方向指示キー64は、図示しているように座標系の方向(±X,±Y,±Z)に応じた複数のボタンが装備されているのが一般的である。例えば、手動操作座標系の1つであるベース座標系で作業ツールTを移動させる場合は、方向指示キー64のX+を押すと、ベース座標系のX+方向に作業ツールTの制御点が移動する。このように、作業者は方向指示キー64を操作することによって作業ツールTを所望の位置に動かして、加工作業を行わせるための作業経路を教示する。そして、作業経路上の教示点における作業ツールTの位置姿勢座標値が教示データとしてロボット制御装置65に記憶される。なお、以下では作業ツールTを移動させる操作のことを、ジョグ送りと呼ぶことにする。
【0004】
図8は、教示時におけるマニピュレータ61の移動方向と手動操作座標系の関係について説明するための図である。マニピュレータ61、作業ツールTおよびワークWは、図7と同符号を付与した同一のものであるので説明を省略する。作業経路Kは、ワークWを加工するために必要な経路の1つであり、同図の場合は教示点Aと教示点Bとによって形成される。ベース座標系Cbはマニピュレータ61に原点を有する手動操作座標系であり、軸方向は、例えば図示している方向で固定となる。説明の便宜上、ベース座標系Cbにおける軸方向のX+とY+を矢印で表現しており、その他の軸方向は省略している。
【0005】
作業者は作業ツールTを所望の位置にジョグ送りし、その位置を教示することになるが、ジョグ送りの際に必要なキー操作は煩雑さを伴うことが多い。例えば、同図において作業経路Kを教示するために、現在位置である教示点Aから目標位置である教示点Bに作業ツールTをジョグ送りする場合を想定する。教示点Aから教示点Bに向かう方向がベース座標系CbのX+方向に一致していれば、作業者は方向指示キー64のX+を押すだけでよい。しかしながら、ワークW上の作業経路Kは、ベース座標系Cbの軸方向と一致していない。このような場合、作業者は方向指示キー64のX+、Y−等を組み合わせて操作する必要がある。ワークWが大型であったり作業経路Kが複雑であったりすると、作業ツールTのジョグ送り操作は、より一層煩雑になる。
【0006】
そこで、近年の産業用ロボットでは、手動操作座標系の原点位置および軸方向を任意に定義可能なユーザ座標系を、作業者が事前に設定することによって、ジョグ送り操作の煩雑さを解消する提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照)。図8に示したように、作業経路Kの方向が座標系のX+方向に一致するように所望のユーザ座標系Cuを設定すれば、方向指示キー64のX+のみの操作で教示点Bに移動させることができる。すなわち、手動操作座標系の原点位置および軸方向をワークWの設置位置、形状等に合わせた任意の位置および方向に設定することができるため、ジョグ送り操作の煩雑さを解消することが可能である。
【0007】
なお、特許文献1によれば、ユーザ座標系Cuの設定方法は次の通りである。まず、作業者により、ワークWの特徴点E1、E2およびE3の合計3点が指定される。ロボット制御装置65は、指定された特徴点の位置座標値をベース座標系Cbでの座標値(以下ではベース座標値という)で記憶し、特徴点のベース座標値からユーザ座標系Cuを定めるための同次変換行列を算出する。以上により、特徴点E1を原点とし、図示したような軸方向を有するユーザ座標系Cuを得ることができる。
【0008】
特許文献2には、作業ツールが予め定めた作業領域に入ったことを検知し、該作業領域に対応したユーザ座標系を自動的に選択することで、さらに利便性を向上させたワーク搬送用ロボットの制御装置が開示されている。より具体的には、図8の一点鎖線で示した作業領域Qに作業ツールTが侵入したことを検知すると、手動操作座標系をユーザ座標系Cuに自動的に切り替えるというものである。ユーザ座標系は、作業領域に予め対応付けて記憶しておくように構成されており、他の作業領域Q’が存在する場合は、作業領域Q’に対応した別のユーザ座標系Cu’に切り替えることができる。作業ツールTが作業領域に入ったことの判定は、光電センサによる検出結果、または作業ツールTの現在位置と作業領域との比較により行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−115011号公報
【特許文献2】特開2009−110190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、作業ツールTが作業領域Qに入ったことを光電センサで検出する場合は、光電センサの設置、信号配線等の作業が必要となるために、コストアップに繋がるとともにシステム全体として複雑なものになる。一方、作業ツールTが作業領域Qに入ったことを現在位置との比較で検出する場合は、作業領域Qを予め教示する必要がある。すなわち、作業ツールTをジョグ送りし、作業領域Qを示す特徴点を複数教示する必要があるために、作業者にとって大きな負担となる。
【0011】
そこで、本発明は、ユーザ座標系を作業領域に応じて自動的に選択する場合に、光電センサを用いることなく、また作業領域の設定を簡便化したロボット制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、
アームの先端に取り付けられた作業ツールを操作手段からの操作信号によりジョグ送りする際に、前記作業ツールが予め定められた作業領域に侵入したことを検知し、前記作業領域に応じた所定の軸方向を有するユーザ座標系を自動的に選択するロボット制御装置において、
前記ユーザ座標系の原点を含んだ所定形状を有する領域を、前記作業領域として設定する作業領域自動設定手段を備えたことを特徴とするロボット制御装置である。
【0013】
請求項2の発明は、前記所定形状は、前記原点を中心位置とした予め定めた半径長さを有する球体であることを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置である。
【0014】
請求項3の発明は、前記所定形状は、前記原点を中心位置とした予め定めた辺長さを有する直方体または立方体であることを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置である。
【0015】
請求項4の発明は、前記中心位置を、所定方向に所定量だけシフト可能としたことを特徴とする請求項2または請求項3記載のロボット制御装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、手動操作座標系を作業領域に応じて自動的に選択する場合に、光電センサ等を不要にしたことによって、コストダウンを図ることができる。また、作業領域の設定作業を簡便化したことによって、セットアップ工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るロボット制御装置を適用したロボット制御システムの構成図である。
【図2】本発明に係るティーチペンダントの外観図である。
【図3】本発明に係るロボット制御装置の機能ブロック図である。
【図4】ユーザ座標系の設定メニューの一画面例である。
【図5】ユーザ座標系と作業領域の関係を示す図である。
【図6】ユーザ座標系の原点をシフトさせたときのイメージ図である。
【図7】ティーチングプレイバック方式を採用した従来のロボット制御システムの構成図である。
【図8】教示時におけるマニピュレータの移動方向と座標系の関係について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【0019】
[実施の形態1]
図1は、本発明に係るロボット制御装置RCを適用したロボット制御システム10のブロック図である。同図は、例としてアーク溶接用途に具体化したものを示しているが、スポット溶接、ハンドリング等のその他の用途においても本発明は適用可能である。
【0020】
同図において、マニピュレータMは、作業台WSに設置されたワークWに対してアーク溶接を自動で行うものであり、ロボット制御装置RCからの動作制御信号Mcにより駆動制御される。マニピュレータMは、複数のアーム部および手首部と、これらを回転駆動するための複数のサーボモータ(いずれも図示せず)とによって各々構成されている。なお、各サーボモータには、位置検出センサであるエンコーダが備わっており、このエンコーダからの出力データはエンコーダ信号Ecとしてロボット制御装置RCに入力される。また、マニピュレータMのアームの先端部分には、作業ツールとして溶接トーチTが取り付けられている。溶接トーチTは、直径1mm程度の溶接ワイヤを、ワークW上の教示された溶接箇所に導くためのものである。
【0021】
操作手段に相当するティーチペンダントTPは、可搬式の教示操作盤であり、ロボット制御装置RCに接続されている。作業者は、このティーチペンダントTPを用いて、マニピュレータMをジョグ送りしながら、ユーザ座標系を定めるための特徴点や、ワークWを加工するための作業経路を教示する。特徴点は特徴点データCdとして、作業経路は教示データTdとしてロボット制御装置RCに記憶される。
【0022】
ロボット制御装置RCは、ティーチペンダントTPからの入力に応じてマニピュレータMのジョグ送りを行わせるものである。ロボット制御装置RCには、ジョグ送りの際の基準となる手動操作座標系として、マニピュレータMに原点を有するベース座標系、溶接トーチT等の作業ツールを基準とした座標系であるツール座標系、ロボット制御システム10全体に共通の座標系であるワールド座標系を基準とした座標系等が予め記憶されている。これらに座標系に加えて、作業者が任意の軸方向を定めることができるユーザ座標系も記憶することができる。これらの手動操作座標系は、いずれか1つをティーチペンダントTPによって選択することができる。
【0023】
さらに、ロボット制御装置RCは、マニピュレータMからのエンコーダ信号Ecにより、溶接トーチTの現在位置を認識することができる。また、再生運転時は、教示データTdに基づいた所定のタイミングで動作制御信号McをマニピュレータMに出力したり、溶接制御信号Wcを溶接電源WPに出力したりすることで、アーク溶接加工を自動で行わせる。
【0024】
図2は、本発明に係るティーチペンダントの外観図である。キーボード41は、教示操作、各種設定操作等を行うためのものであり、マニピュレータMをジョグ送りする際の移動方向を定める方向指示キー41Aを含んでいる。表示部43は、後述する特徴点や教示データTdの教示内容、選択可能な手動操作座標系、ロボットの動作制御に必要な各種パラメータ等を表示するためのものである。
【0025】
図3は、本発明に係るロボット制御装置の機能ブロック図である。
【0026】
ロボット制御装置RCは、中央演算処理装置であるCPU21、ソフトウェアプログラムや制御パラメータ等が格納されたROM22、一時的な計算領域としてのRAM23、各種メモリ等を含むマイクロコンピュータによって構成されている。TPインターフェース1は、ティーチペンダントTPを接続するためのものである。なお、CPU21は、作業領域自動設定手段に相当する。
【0027】
ROM22には、各種処理を行うためのソフトウェアプログラムが記憶されている。これらを機能的に同図に示すと、キー入力監視部2、教示処理部3、座標系選択処理部7、座標系演算部8、ジョグ動作処理部9、作業領域設定部15、判定部16、現在位置取得部17、解釈実行部11、駆動指令部12および溶接制御部13の各処理部を備えている。これらの各処理部は、CPU21に読み込まれて実行される。
【0028】
キー入力監視部2は、ティーチペンダントTPのキーボード41の操作がなされたときに入力される操作信号Ssを監視する。教示処理部3は、ティーチペンダントTPから入力された教示点の位置姿勢座標値、各種命令等を教示データTdとしてハードディスク5に記憶する。また、ユーザ座標系を定めるために教示された特徴点の位置姿勢座標値を、特徴点データCdとしてハードディスク5に記憶する。
【0029】
座標系選択処理部7は、ティーチペンダントTPによって選択された、ジョグ送り操作の基準となる手動操作座標系をジョグ動作処理部9に通知する。さらに、座標系選択処理部7は、後述する判定部16によって溶接トーチTが作業領域に入ったと判断されたときに、該作業領域に対応したユーザ座標系を自動的に選択してジョグ動作処理部9に通知する。
【0030】
ジョグ動作処理部9は、方向指示キー41Aおよび選択された手動操作座標系に従って、マニピュレータMを移動させるための演算を行い、演算結果を駆動指令部12に出力する。この結果、マニピュレータMが駆動制御される。
【0031】
座標系演算部8は、教示された特徴点に基づいて、ユーザ座標系を設定する。作業領域設定部15は、ユーザ座標系の原点を含んだ所定形状を有する領域を、上述した作業領域として自動的に設定する。
【0032】
現在位置取得部17は、マニピュレータMからのエンコーダ信号Ecに基づいて、溶接トーチTの現在位置を認識(監視)する。判定部16は、現在位置取得部17が取得した現在位置と作業領域とを比較することによって、溶接トーチTが作業領域に入ったかどうかを判定する。
【0033】
記憶手段としてのハードディスク5は不揮発性メモリであり、特徴点データCd、作業領域設定情報Qi、作業領域データQdおよび教示データTdを記憶する。
【0034】
教示データTdを再生するための解釈実行部11は、ハードディスク5に格納されている教示データTdを教示ステップごとに読み出してその内容を解析し、駆動指令部12に動作制御信号Mcを、溶接制御部13に溶接制御信号Wcを出力する。この結果、マニピュレータMが駆動制御されると共に、溶接電源WPにより所定のタイミングで溶接電力の供給、シールドガスの出力等の処理が行われる。
【0035】
次に、上記のように構成されたロボット制御装置RCの作用について説明する。以下では、作業者によってユーザ座標系Cuが設定されたときに作業領域も同時に設定し、さらには、ジョグ送りされた溶接トーチTが作業領域に侵入したことを判定して手動操作座標系をユーザ座標系Cuに切り替えるまでを、順を追って説明する。
【0036】
(1.ユーザ座標系の設定)
作業者がワークWの形状に応じたユーザ座標系を設定する場合は、まず、複数の特徴点を指定する。この作業は、図8ですでに説明したように、特徴点E1、E2およびE3を指定する作業である。
【0037】
図4は、ユーザ座標系の設定メニューの一画面例である。(a)に示した画面領域では、従来技術と同様に、特徴点を3点指定することが可能になっている。位置座標値(Z,Y,Z)を直接入力することもできるし、「現在位置を記録」の押下により、マニピュレータMをジョグ送りした後の現在位置をエンコーダから取り込んで記録することもできる。この画面領域で設定された情報は、教示処理部3によって、特徴点データCdとしてハードディスクに記憶される。
【0038】
(b)の画面領域では、作業領域に関する情報をパラメータb1〜b3により設定することが可能になっている。作業領域とは、手動操作座標系が、設定中のユーザ座標系に自動的に切り替わる領域のことである。ここで、ユーザ座標系と作業領域の関係について説明する。
【0039】
図5は、ユーザ座標系と作業領域の関係を示す図である。同図(a)は、ワークWに設定されたユーザ座標系Cuの軸方向X,Y,Zおよび原点Orを示している。同図(b)は、直方体形状を有する領域(一点鎖線の領域)が、作業領域Qとして設定された様子を示している。同様に、同図(c)は、球体形状を有する領域(二点鎖線の領域)が、作業領域Qとして設定された様子を示している。このように、ユーザ座標系Cuの原点Orを含んだ所定形状を有する領域が、作業領域Qとして設定される。
【0040】
図4に戻り、パラメータb1(作業領域の設定)は、手動操作座標系を切り替えるか否かを決定するパラメータである。「する」の場合は、溶接トーチTが作業領域Qに侵入したときに、手動操作座標系を、設定中のユーザ座標系に切り替える。「しない」の場合は、溶接トーチTが作業領域Qに侵入しても手動操作座標系を切り替えない。パラメータb2(作業領域の形状)は、作業領域Qの形状を直方体または球形のどちらとするかを設定するパラメータである。パラメータb3(領域の大きさ)は、作業領域Qの大きさ(直方体のときは辺長さ、球形のときは半径長さ)を設定するパラメータである。この画面領域で設定された情報は、教示処理部3によって、作業領域設定情報Qiとしてハードディスクに記憶される。
【0041】
(2.ユーザ座標系の算出)
特徴点データCdが設定されると、座標系演算部8はユーザ座標系Cuを算出する。より具体的には、ベース座標系から見たユーザ座標系の位置姿勢を表す同次変換行列に変換する。これらの演算は、特許文献1に記載されているように公知の演算技術により容易に可能であるので、詳細な説明を省略する。
【0042】
(3.作業領域の設定)
作業領域設定情報Qiが設定されると、作業領域設定部15は、作業領域設定情報Qiおよび特徴点データCdを入力とし、以下の方法により作業領域Qを設定する。
【0043】
図5(b)において、作業領域Qは、ユーザ座標系Cuの原点Orを中心位置とし、各辺の長さがDx、Dy、Dzである直方体で表される領域である。各辺の方向は、ユーザ座標系Cuの軸方向と一致する。また、同図(c)において、作業領域Qは、ユーザ座標系Cuの原点Orを中心位置とし、半径長さがDrである球体で表される領域である。作業領域設定部15は、作業領域設定情報Qiで定められた形状および大きさを示す作業領域データQdをベース座標値で算出し、ハードディスク5に保存する。なお、作業領域Qの形状は、本実施例では図4の設定に従ってどちらかとなるが、あくまでも例示であり、その他の形状としても良い。また、作業領域Qの形状が直方体である場合、その向きは、直方体の一面が、特徴点を含む平面と平行であることが望ましい。
【0044】
(4.手動操作座標系でのジョグ送り)
上記までにユーザ座標系Cuおよび作業領域Qの設定は完了しているので、マニピュレータMのジョグ送りが可能な状態となっている。ジョグ送りの際は、作業者により手動操作座標系が選択される。座標系選択処理部7は、選択された手動操作座標系(ユーザ座標系Cu以外の座標系)をジョグ動作処理部9に通知する。
【0045】
(5.作業領域の判定とユーザ座標系Cuへの切り替え)
ティーチペンダントTPの方向指示キー41A等によりジョグ送り操作が行われると、ジョグ動作処理部9は、選択された手動操作座標系の軸方向に応じて溶接トーチTの先端を移動させるための演算を行い、演算結果を駆動指令部12に出力する。この結果、マニピュレータMが駆動制御されてジョグ送りが行われる。この駆動制御と同時に、現在位置取得部17は、マニピュレータMからのエンコーダ信号Ecを所定のサンプリング周期で読み取り、溶接トーチTの現在位置(ベース座標値)を算出し、判定部16に通知する。判定部16は、通知された現在位置と作業領域データQdと比較を行う。そして、現在位置が作業領域Qの内部にあると判定すると、その旨を座標系選択処理部7に通知する。座標系選択処理部7は、手動操作座標系を、作業領域Qに対応したユーザ座標系Cuに切り替える。以上により、溶接トーチTが作業領域Qに侵入したときに、手動操作座標系を作業領域Qに応じたユーザ座標系Cuに切り替えることができる。
【0046】
以上説明したように、ユーザ座標系Cuを作業領域Qに応じて自動的に選択する場合に、光電センサ等を不要としたことによって、コストダウンを図ることができる。また、作業領域Qを、ユーザ座標系Cuを定めるための特徴点に基づいて自動的に設定するようにしたことによって、セットアップ工数を低減することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態においては、ユーザ座標系CuがワークWの中心付近に設定されたものとして説明した(例えば、図5(a)参照)。一般的には、ユーザ座標系Cuを設定する際は、ワークWの角部等、特徴のある部位を特徴点として指定することが多い。例えば、図6(a)に示すように、ユーザ座標系Cuの原点Orを、ワークWの角部等に一致させる設定が行われる。この場合、作業領域Qは、原点Orを中心位置Cpとして設定されるために、作業領域QがワークWの偏った位置へ設定される。このような場合に備えて、作業領域Qの中心位置Cpを、ユーザ座標系Cuの原点Orから別の位置(例えば、ワークWの中心付近Cp’)にシフトできるように構成しておくことが望ましい。より具体的には、同図(b)に示すように、ユーザ座標系の設定メニューに、中心位置Cpを所定方向に所定量だけシフトさせるためのパラメータb4を設けておく。シフト量および方向の指定は、ユーザ座標系Cuを基準として、X,Y,Zの各座標値を入力することによって行われるようにするとよい。
【符号の説明】
【0048】
1 TPインターフェース
2 キー入力監視部
3 教示処理部
5 ハードディスク
7 座標系選択処理部
8 座標系演算部
9 ジョグ動作処理部
10 ロボット制御システム
11 解釈実行部
12 駆動指令部
13 溶接制御部
15 作業領域設定部
16 判定部
17 現在位置取得部
21 CPU
22 ROM
23 RAM
41 キーボード(方向指示キー)
43 表示部
60 ロボット制御システム
61 マニピュレータ
62 アーム
63 ティーチペンダント
64 方向指示キー
65 ロボット制御装置
A 教示点
B 教示点
b1 パラメータ
b2 パラメータ
b3 パラメータ
b4 パラメータ
Cb ベース座標系
Cd 特徴点データ
Cu ユーザ座標系
Dr 半径
Dx 辺長さ
Dy 辺長さ
Dz 辺長さ
E1 特徴点
E2 特徴点
E3 特徴点
Ec エンコーダ信号
K 作業経路
M マニピュレータ
Mc 動作制御信号
Or 原点
Q 作業領域
Qd 作業領域データ
Qi 作業領域設定情報
RC ロボット制御装置
Ss 操作信号
T 溶接トーチ(作業ツール)
Td 教示データ
TP ティーチペンダント
W ワーク
Wc 溶接制御信号
WP 溶接電源
WS 作業台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの先端に取り付けられた作業ツールを操作手段からの操作信号によりジョグ送りする際に、前記作業ツールが予め定められた作業領域に侵入したことを検知し、前記作業領域に応じた所定の軸方向を有するユーザ座標系を自動的に選択するロボット制御装置において、
前記ユーザ座標系の原点を含んだ所定形状を有する領域を、前記作業領域として設定する作業領域自動設定手段を備えたことを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記所定形状は、前記原点を中心位置とした予め定めた半径長さを有する球体であることを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記所定形状は、前記原点を中心位置とした予め定めた辺長さを有する直方体または立方体であることを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記中心位置を、所定方向に所定量だけシフト可能としたことを特徴とする請求項2または請求項3記載のロボット制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−111010(P2012−111010A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263064(P2010−263064)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】