説明

ワイヤーソー切断方法及びワイヤーソー切断装置

【課題】水を使用することなくワイヤーソーの冷却と切り粉の除去をおこない、後処理を不要とすると共にワイヤーソーの寿命を延長する。
【解決手段】ワイヤーソー10を切断対象物に巻きつけ、ワイヤーソー駆動装置1によってワイヤーソー10を走行駆動して切断対象物を切断するワイヤーソー切断方法において、ワイヤーソー10にドライアイス粒子吹き付け手段2のノズル21からドライアイス粒子を高速でワイヤーソーに吹き付け、ワイヤーソー10に付着した切り粉を除去すると共にワイヤーソーを冷却する。除去された切り粉は集塵装置3で吸引して周囲に散逸しないように処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物等の切断対象物にワイヤーソーを巻きつけ、ワイヤーソーを走行駆動して切断対象に切り込ませて切断するワイヤーソー切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーソーによる切断方法においては、切断による発熱によって高温となるワイヤーソーを冷却するために水を使用していたが、原子力発電施設や放射性物質を取り扱う施設等の解体工事や改造工事においては、切断部位に直接水をかけると冷却水の流出による放射性物質による二次汚染の恐れがある。そのため、特許文献1〜3にあるように、冷却水を使用せず、ボルテックスチューブを用いた冷却装置などで生成した冷気をワイヤーソーに吹き付けて冷却するワイヤーソー切断方法が提案されている。
また、切り粉を含む冷却水は産業廃棄物であり、廃棄処理を必要とするためコストがかかることから、一般的なワイヤーソー切断工事においても水を使用せずに冷気によってワイヤーソーを冷却することが提案されている。
【特許文献1】特許2833693号公報
【特許文献2】特許2833692号公報
【特許文献3】特許2968185号公報
【特許文献4】特開2005−329506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、冷気によるワイヤーソーの冷却では、ワイヤーソーに付着した切り粉の排除が不十分であり、ダイヤモンドチップをプラスチック材あるいはゴム材の止め具にて取り付けた構造のダイヤモンドワイヤーソーでは、プラスチック材あるいはゴム材の止め具が摩擦熱により変形してダイヤモンドチップが移動して切断作業が円滑におこなえなかったり、切り粉が除去されないためダイヤモンドチップの摩耗が激しくなり、ダイヤモンドワイヤーソーの寿命が短くなるという問題があった。
本発明は、水を使用することなくワイヤーソーの冷却と切り粉の除去をおこない、ワイヤーソーの寿命を延長できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ワイヤーソーを切断対象物に巻きつけ、ワイヤーソー駆動装置によってワイヤーソーを走行駆動して切断対象物を切断するワイヤーソー切断方法において、ワイヤーソーにドライアイス粒子を吹き付けてワイヤーソーに付着した切り粉を除去すると共にワイヤーソーを冷却するものである。
更に、ドライアイス粒子の吹き付け箇所を複数とするものであり、ワイヤーソー駆動装置のワイヤーソーの送り出し側と受け入れ側の両方に吹き付けてワイヤーソーを確実に冷却するものである。
また、ワイヤーソーから剥離除去した切り粉集塵装置で回収することにより、切り粉の飛散を防止するものである。
【0005】
ワイヤーソーを走行移動して被切断体を切断するワイヤーソー切断装置において、該切断体の切断部位に冷気を直接吹き付ける冷気吹付け手段と、集塵手段とが設けられ、その冷気吹付け手段は被切断体の切断部位の付近に設けられた吹き付け管の吹き付け口を有し、その吹き付け管は冷気タンクを介して送風器に接続されており、その集塵手段は切断部位の上方に設けられ、集塵フードと、その集塵フードに一端が接続され、他端が集塵器に接続されている集塵ホースとを備えている。
【発明の効果】
【0006】
冷却水を使用せず、ワイヤーソーにドライアイス粒子を吹き付けてワイヤーソーに付着した切り粉を剥離して除去すると共に、ワイヤーソーを冷却してワイヤーソーの温度上昇を防止する。ワイヤーソーに衝突したドライアイス粒子は昇華して気体となって散逸するので、冷却水のように回収を必要とせず、切り粉を含んだ冷却水を処分する必要がなく、剥離除去した切り粉を集塵装置により集塵して処分することができるので、冷却水を使用した場合に比較して処理費用が格段に低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施例
以下図面を参照して本発明を実施例に基づいて説明する。
図1に示すように本発明のワイヤーソー切断装置は、ワイヤーソー10を走行駆動するワイヤーソー駆動装置1、ドライアイス粒子吹付け装置2及び集塵装置3から構成される。
図1に示すワイヤーソー駆動装置1は、橋梁の伸縮継手の撤去に使用するもので、橋梁の床版を水平に切断するのに適したものである。
基台11に移動用の車輪12が設けてあり、作業員がハンドル13を持って押すことによって移動させることができる。基台11の下側には切断作業時に装置を固定する固定装置14が設けてあり、脚15を延ばして車輪12を設置面より浮かせて装置を固定する。基台11上には駆動プーリ4及び複数の調整プーリ40が設けてある。
ワイヤーソー10が複数の調整プーリ40の間に往復させて掛け渡してあり、切断の進行に伴って生じるワイヤーソー10の余剰長さを吸収する。駆動プーリ4は油圧モータによって回転駆動され、駆動プーリ4に掛け回したワイヤーソー10を高速で走行させる。
【0008】
基台11の下部にブラケット24が設けてあり、下側に延びるアーム25がブラケット24に形成してある長穴にボルトで固定してあり、アーム25の基台11からの突出長さを調節できる。アーム25の先端部にはアーム25に対して旋回可能なキャスタ式の変換プーリ41が取り付けてある。
ワイヤーソー駆動装置1は、床版Sの上に設置され、固定装置14を使用して固定される。床版Sには、伸縮継手Jを包囲する溝Dが形成されており、この溝内をワイヤーソー10は、駆動プーリ4から調整プーリ40に導かれ、変換プーリ41、また、必要に応じて配設されるガイドプーリ42を介して溝D内に配設される。駆動プーリ4の回転によってワイヤーソー10が走行して床版Sを水平に切断する。変換プーリ41はキャスタ式でアーム25に対して旋回するので、変換プーリ41は、切断の進行に伴ってワイヤーソーの走行方向が変化してもワイヤーソーの走行方向に追随して向きが変わり、変換プーリ41からワイヤーソー10が外れたり、応力集中が生ずることなく走行が円滑におこなわれる。
【0009】
ドライアイス粒子吹付け装置2は、図2に示すように、ドライアイス粒子を流体と共に供給するドライアイス供給装置20と、ドライアイス粒子を噴射するノズル21とを備えている。この実施例では、図1に示すように、ドライアイス供給装置20からのドライアイス粒子は、Y字管等の分岐管で二つに分けられ、ワイヤーソー駆動装置1からワイヤーソーが切断対象物に送り出される送り出し側と、切断後の戻り側の2箇所でドライアイス粒子をワイヤーソーに吹き付けている。
ワイヤーソー10の冷却を十分におこなうためには、更にドライアイス粒子の吹き付け箇所を追加するか、吹き付けられたドライアイス粒子及び昇華した炭酸ガスの散逸を防止するため、吹き付け箇所の前後を覆うフードを設け、ドライアイスの冷熱を効率よく使用する。
【0010】
ドライアイス供給装置20には、ドライアイス源となる炭酸ガスを供給するための液化炭酸ガス容器22が接続され、また、ドライアイス粒子を高速で供給するためのエアコンプレッサー等を含む空気供給装置23が接続されている。この実施例では、液化炭酸ガス容器を装備した例を示したが、液化炭酸ガス容器を装備することなく、ドライアイス供給装置20に直接ドライアイス粒子を供給する態様も可能である。
【0011】
ドライアイス供給装置20とノズル21は、ウレタン製等のホースで接続され、ノズル21は、ワイヤーソー10に向けてセットされる。
ドライアイス供給装置20で液化炭酸ガス容器22から供給される炭酸ガスがドライアイス粒子となり、このドライアイス粒子は空気供給装置23から供給される圧縮空気によってノズル21から高速で噴出され、ワイヤーソー10に付着した切り粉を剥離して除去する。ドライアイス粒子はワイヤーソーに衝突して昇華して炭酸ガスとなるので、そのまま散逸させるか、若しくは、回収して適宜の中和処理をおこなう。
【0012】
空気供給装置23に、ボルテックスチューブ等の冷却手段を付設して、ドライアイス粒子を搬送する空気の温度を−50℃程度まで冷却することによって、ワイヤーソー10を冷却してもよい。
【0013】
集塵装置3は、集塵フード31と一端が集塵フード31に接続された集塵ホース32と、その集塵ホース32の他端に接続されたホッパー等の切り粉集積容器33とからなっており、吸引によって剥離除去された切り粉を回収する。
【0014】
ワイヤーソー10は、ドライアイス粒子が吹き付けられて冷却されて温度上昇が阻止されると共にドライアイス粒子がワイヤーソーに衝突することによって付着した切り粉が剥離除去される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の概略説明図。
【図2】ドライアイス粒子吹付け装置のブロック図。
【符号の説明】
【0016】
1 ワイヤーソー駆動装置
10 ワイヤーソー
2 ドライアイス粒子吹付け装置
21 ノズル
3 集塵装置
31 集塵フード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーソーを切断対象物に巻きつけ、ワイヤーソーを走行駆動して切断対象物を切断するワイヤーソー切断方法において、ワイヤーソーにドライアイス粒子を吹き付けてワイヤーソーに付着した切り粉を除去すると共にワイヤーソーを冷却するワイヤーソー切断方法。
【請求項2】
請求項1において、ドライアイス粒子をワイヤーソーの送り出し側と戻り側の両方に吹き付けるワイヤーソー切断方法。
【請求項3】
請求項1または2において、ドライアイス粒子を吹き付ける流体が冷却された流体であるワイヤーソー切断方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、除去した切り粉を集塵装置で回収するワイヤーソー切断方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、ドライアイスを吹き付ける周辺を覆うフードを設け、ドライアイス粒子が昇華して生じた炭酸ガスの散逸を防止するワイヤーソー切断方法。
【請求項6】
ワイヤーソー駆動装置、ドライアイス粒子吹付け装置、及び集塵装置とからなるワイヤーソー切断装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−255403(P2009−255403A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107484(P2008−107484)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(508117525)株式会社 アクティブ (5)
【出願人】(597044106)日本フレキ産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】