乗用型田植機の後輪下降装置
【課題】 機体の前後傾斜姿勢を修正するために自動的に後輪を下降させる機構を、機体の重量アップやコストアップを抑えて簡単に構成する。
【解決手段】 本発明は、後輪伝動ケース(30)を後輪車軸(31)より前側の回動支点(P)回りに上下回動可能に構成すると共に、後輪伝動ケースを下方に回動付勢する圧縮スプリング(34)を設け、通常の走行時には機体の自重で圧縮スプリング(34)が縮んで後輪(3)が上動状態となり、機体の前進で後輪に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により後輪伝動ケース(30)が下側へ回動して後輪(3)が下動状態となるよう構成してあることを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、後輪伝動ケース(30)を後輪車軸(31)より前側の回動支点(P)回りに上下回動可能に構成すると共に、後輪伝動ケースを下方に回動付勢する圧縮スプリング(34)を設け、通常の走行時には機体の自重で圧縮スプリング(34)が縮んで後輪(3)が上動状態となり、機体の前進で後輪に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により後輪伝動ケース(30)が下側へ回動して後輪(3)が下動状態となるよう構成してあることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型田植機の後輪下降装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車輌の一例である乗用型田植機では、例えば、特許文献1に示されているように、左右の後輪を左右独立的に上下揺動自在に支持し、旋回時に機体後部の苗植付部を田面から所定の非作業位置まで上昇させると、この上昇操作に連動して左右の後輪を下降させることにより、機体の後部を持ち上げて機体を前下がり気味にすることで、機体の旋回が円滑に行えるようにしている。
【特許文献1】特開2004−275059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の機体後部持ち上げ(ヒップアップ)は、植付部の上下に連動した構成であり、植付部を上昇させると、前後進に関係なくヒップアップするため、後進から畦越えや、アユミを登る場合、逆にバランスを悪くする問題があった。また、構成上、植付部を下げた植付作業時はヒップアップが不可能な為、機体が前上がり姿勢になったり、苗の植付姿勢が悪化する問題がある。
【0004】
本発明では、機体の前後傾斜姿勢を修正するために自動的に後輪を下降させる機構を、機体の重量アップやコストアップを抑えて簡単に構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に記載の本発明は、後輪伝動ケース(30)を後輪車軸(31)より前側の回動支点(P)回りに上下回動可能に構成すると共に、後輪伝動ケースを下方に回動付勢する圧縮スプリング(34)を設け、通常の走行時には機体の自重で圧縮スプリング(34)が縮んで後輪(3)が上動状態となり、機体の前進で後輪に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により後輪伝動ケース(30)が下側へ回動して後輪(3)が下動状態となるよう構成してあることを特徴とする。
【0006】
機体の前進での畦越え時、前進でのトラックへの積込時あるいは耕盤が深い圃場での前進植付時において、後輪(3)に所定以上の駆動負荷が生じたときには、その駆動反力により圧縮スプリング(34)が伸びて後輪(3)が下動状態となり、機体が前上がり姿勢になって前輪が浮き上がったりするのを防止できる。また、後輪(3)が下動状態となることで、植付部(6)の必要以上の沈下により苗植付姿勢が乱れたりするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0007】
以上要するに、本発明によれば、機体の前進での畦越え時、前進でのトラックへの積込時あるいは耕盤が深い圃場での前進植付時は、駆動反力により後輪が下動状態となり、機体が前上がり姿勢になって前輪が浮き上がったり、あるいは苗の植付姿勢が悪化したりするような事態を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、乗用型の4条植田植機を示すものであり、車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2,2及び後輪3,3が架設されている。車体上前部には操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有する操縦装置が設置され、また、車体後方部には昇降可能な苗植付部6が装備されている。操縦装置の後側に運転席9が設置され、運転席の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジンEが搭載されている。
【0009】
前記ステアリングハンドル5は、これの回動操作によりステアリングポスト17内のステアリング軸18からステアリングケース内を経て減速回転される出力軸、ピットマンア−ム及び操向ロッド等を介して左右の前輪2,2を操向させ操舵するようになっている。
【0010】
苗植付部6は、車体の後部に昇降リンク機構7を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ8の伸縮作動により昇降する構成であり、本例では、油圧シリンダ8の引き側で苗植付部を上昇させる構成としている。そして、昇降用油圧シリンダ8の支点Q1と昇降リンク機構7の支点Q2,Q3とは一枚のプレート15で結び、これら3点を互いに突っ張ることにより強度をもたせた構成になっている。なお、16は植付昇降レバーを示す。
【0011】
また、この苗植付部6には、左右に往復動する苗載タンク11、1株分の苗を切取って土中に植込む植込杆12を有する2条分植付装置13,13、苗植付面を滑走しながら整地するフロ−ト(サイドフロ−ト)14,14、センタフロ−ト14S等を備えている。
【0012】
エンジンEの回転動力は、エンジン出力プーリ20からベルト25を介して油圧式無段変速装置(HST)21の入力プ−リ22、入力軸23に伝えられ、この入力軸23からこれと同一軸芯上に設けられた伝動軸を介して油圧ポンプを駆動するようになっており、更に、HST21の出力軸からミッションケ−ス26のミッション入力軸に伝えられるようになっている。
【0013】
前記HST21は、フロントカバー10の下方に配置してあり、フロントカバー10の上部近傍には、該HSTを駆動する変速レバ−25が配置され、この変速レバ−25の前後方向の操作でHST21を駆動し機体の前進及び後進制御を司るように構成されている。
【0014】
後輪伝動ケース30は、後輪3の車軸31より前側の回動支点P回りに上下回動可能に構成している。図3に示すように、走行フレーム32には後輪伝動ケース30を下方に向けて回動付勢する圧縮スプリング34を設けてあり、通常の走行時には機体の自重で圧縮スプリング34が縮んで後輪3が上動状態となり、機体の前進で後輪3に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により後輪伝動ケース30が下側へ回動して後輪3が下動状態となるよう構成している。
【0015】
また、前記後輪伝動ケース30は、後輪車軸31を挟む位置で上下に分割して半割アッパーケース30aと半割ロワーケース30bとからなる構成としてあり、回動支点軸Pを半割ロワーケース30b側に設定すると共に、半割アッパーケース30a側には、独立スイングのストッパー部35を進行方向前側に設けた構成としている。
【0016】
なお、回動支点軸Pは、走行フレーム32から下方に突設するブラケット33に軸支してあり、且つ、後輪3の外径内に設定している。要するに、左右後輪の伝動ケース30は、圧縮ススプリング34を介して回動支点軸P回りに左右独立的にスイングする構成であり、かかる構成によれば、回動支点軸Pとストッパー部35との間隔が大きく取れるため、ストッパー部の剛性を低くでき、軽量でコストダウンが可能となる。
【0017】
また、図4に示す実施例では、前記図3と同様に後輪伝動ケースに回動支点を持つ後輪独立スイング構成において、後輪回動時の後輪伝動軸36におけるユニバーサルジョイント部36aのユニバーサル折れ角が大きくなるのを防ぐ為に、非回動時のユニバーサル折れ角を逆側に傾けるまでスイング最大時のユニバーサル折れ角の許容範囲内に納めるようにしている。
【0018】
直進高負荷時、駆動反力によって機体を自動的にヒップアップする構成にあって、ヒップアップ側の力に抵抗を加える圧縮スプリングを設けた構成において、その抵抗力を可変させることにより、ヒップアップする負荷を任意に変更可能にし、変速レバー切り替えによる機体「移動」(路上走行)時には抵抗をゼロにして後輪の接地性を高め、「植付作業」時には抵抗をかけて機体前部が浮き上がるような高負荷時のみヒップアップするように構成することで、駆動反力の小さい路上走行では抵抗を与えず、駆動反力の大きい圃場走行では必要以上にヒップアップしないように抵抗を与えることが可能となる。
【0019】
また、上記のような構成において、HSTを駆動する変速レバ−25の操作に起因する前後進低速時には、抵抗をゼロにして後輪の接地性を高め、中・高速時には抵抗をかけて機体前部が浮き上がるような高負荷時のみヒップアップするよう構成することもでき、駆動反力の小さい低速走行では抵抗を与えず、駆動反力の大きい高速走行では必要以上にヒップアップしないように抵抗を与えることが可能となる。
【0020】
更に、エンジンEのスロットル低回転時には抵抗をゼロにして後輪の接地性を高め、中・高速時には抵抗をかけて機体前部が浮き上がるような高負荷時のみヒップアップするように構成することもできる。
【0021】
図5に示す実施例では、半割アッパーケース30aの前側に設けたストッパー部35にクッションゴム37を設け、後進高負荷時にはクッションゴム37のたわみにより、機体を逆にヒップダウンさせて前下がり状態を緩和させ、前輪の沈み込みを防止する構成としている。これによれば、後進での畦越えやアユミ越えが容易にでき、走行抵抗の大きい湿田での後進性能が向上する。
【0022】
また、植付昇降レバー16の植付部上げ操作時には、抵抗をゼロにして後輪の接地性を高め、下げ操作時には抵抗をかけて機体前部が浮き上がるような高負荷時のみヒップアップするように構成することもでき、これによって駆動反力の小さい路上走行では抵抗を与えず、駆動反力の大きい圃場走行では必要以上にヒップアップしないように抵抗を与えて安定した走行が可能となる。
【0023】
直進高負荷時、駆動反力によって機体を自動的にヒップアップする上記構成において、ヒップアップ時、浅田での植付部最低高さ上昇による浮き苗を防ぐために、苗植付部6と昇降用油圧シリンダ8との間に装備したスイングスプリング40の伸縮量を規制することにより、植付部最低高さを低くするように構成することができる。つまり、スイングスプリング40は、図6に示すように、保持部材41aと41b間に介装してあり、螺子杆42と調整ナット43によって保持部材41a,41b間の間隔を拡縮変更しスプリング伸縮量を規制調整するようになっている。
【0024】
図7に示す実施例は、直進高負荷時、駆動反力によって機体を自動的にヒップアップする構成において、ブレーキペダル44を踏み込むと、後輪伝動ケース30を後輪下げ位置で固定するロックピン45が作動するように連動構成し、運行時のハネ上がりを防止するようにしている。
【0025】
図8及び図9に示す実施例は、リヤアクスル46内のリヤアクスル軸47上にサイドクラッチ48を設けた構成のものにおいて、後輪伝動ケース30には、リヤアクスル軸47から後輪車軸31までの減速伝動経路としてベベルギヤ伝動機構49が内装されてあり、そして、この後輪伝動ケース30は、前記リヤアクスル軸47を回動支点として左右独立的にスイング可能に構成され、直進高負荷時には、駆動反力により圧縮スプリング34を介して後輪伝動ケース30が下方へスイングして後輪が下動状態となって機体の後部が上昇するようになっている。
【0026】
図10及び図11に示す実施例では、図8の実施例と同じように、後輪伝動ケース30がリヤアクスル軸47軸芯を支点としてスイングする構成であり、左右の後輪伝動ケース30,30間に設けたヒップアップ用油圧シリンダ50の伸縮作動によって左右の後輪を昇降駆動する構成としている。そして、機体前部に設けられた畦越え操作アーム51(図1、図2参照)を前方に倒すと、これに連動してヒップアップ用油圧シリンダ50を作動させ、後輪伝動ケース30のスイング、後輪3の下動により、機体をヒップアップするように構成している。これによれば、機体のヒップアップにより、機体の重心が前方に移動し、前上がりを防ぎ、畦越えの容易化を図ることができる。
【0027】
また、図12に示す実施例は、左右の後輪3,3がリヤアクスル46の中央に設けられた前後方向の軸芯P1を回動支点として左右独立して上下動する構成であり、畦越え時に、畦越え操作アーム51を前方に倒すと、ヒップアップ用油圧シリンダ50の作動によって左右の後輪3,3を前後方向の軸芯P1回りに下動させて機体のヒップアップを図るようにしている。
【0028】
更に、図13に示す実施例では、左右に後輪3,3を備えたリヤアクスル46を左右に分割し、その分割された左右のリヤアクスル46L,46Rが前後方向の軸芯P2,P2を支点として独立的に上下動する構成であり、畦越え時には、畦越え操作アーム51を前方に倒すと、ヒップアップ用油圧シリンダ50の作動によって左右の後輪3,3を前後方向の二つの軸芯P2,P2を回動支点として下動させて機体の後部をリフトアップし、畦越えの容易化を図るようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】田植機の側面図
【図2】同上平面図
【図3】同上要部の側面図
【図4】同上要部の側面図
【図5】同上一部の側面図
【図6】植付部の昇降機構の側面図
【図7】ブレーキペダルと後輪伝動ケースとの関連構成を示す側面図
【図8】後輪下動機構を示す平面図
【図9】同上要部の側面図
【図10】後輪下動機構を示す背面図
【図11】同上要部の側面図
【図12】別実施例の後輪下動機構背面図
【図13】別実施例の後輪下動機構背面図
【符号の説明】
【0030】
P 回動支点軸
1 走行車体 2 前輪
3 後輪 30 後輪伝動ケース
31 後輪車軸 34 圧縮スプリング
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型田植機の後輪下降装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車輌の一例である乗用型田植機では、例えば、特許文献1に示されているように、左右の後輪を左右独立的に上下揺動自在に支持し、旋回時に機体後部の苗植付部を田面から所定の非作業位置まで上昇させると、この上昇操作に連動して左右の後輪を下降させることにより、機体の後部を持ち上げて機体を前下がり気味にすることで、機体の旋回が円滑に行えるようにしている。
【特許文献1】特開2004−275059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の機体後部持ち上げ(ヒップアップ)は、植付部の上下に連動した構成であり、植付部を上昇させると、前後進に関係なくヒップアップするため、後進から畦越えや、アユミを登る場合、逆にバランスを悪くする問題があった。また、構成上、植付部を下げた植付作業時はヒップアップが不可能な為、機体が前上がり姿勢になったり、苗の植付姿勢が悪化する問題がある。
【0004】
本発明では、機体の前後傾斜姿勢を修正するために自動的に後輪を下降させる機構を、機体の重量アップやコストアップを抑えて簡単に構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に記載の本発明は、後輪伝動ケース(30)を後輪車軸(31)より前側の回動支点(P)回りに上下回動可能に構成すると共に、後輪伝動ケースを下方に回動付勢する圧縮スプリング(34)を設け、通常の走行時には機体の自重で圧縮スプリング(34)が縮んで後輪(3)が上動状態となり、機体の前進で後輪に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により後輪伝動ケース(30)が下側へ回動して後輪(3)が下動状態となるよう構成してあることを特徴とする。
【0006】
機体の前進での畦越え時、前進でのトラックへの積込時あるいは耕盤が深い圃場での前進植付時において、後輪(3)に所定以上の駆動負荷が生じたときには、その駆動反力により圧縮スプリング(34)が伸びて後輪(3)が下動状態となり、機体が前上がり姿勢になって前輪が浮き上がったりするのを防止できる。また、後輪(3)が下動状態となることで、植付部(6)の必要以上の沈下により苗植付姿勢が乱れたりするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0007】
以上要するに、本発明によれば、機体の前進での畦越え時、前進でのトラックへの積込時あるいは耕盤が深い圃場での前進植付時は、駆動反力により後輪が下動状態となり、機体が前上がり姿勢になって前輪が浮き上がったり、あるいは苗の植付姿勢が悪化したりするような事態を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、乗用型の4条植田植機を示すものであり、車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2,2及び後輪3,3が架設されている。車体上前部には操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有する操縦装置が設置され、また、車体後方部には昇降可能な苗植付部6が装備されている。操縦装置の後側に運転席9が設置され、運転席の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジンEが搭載されている。
【0009】
前記ステアリングハンドル5は、これの回動操作によりステアリングポスト17内のステアリング軸18からステアリングケース内を経て減速回転される出力軸、ピットマンア−ム及び操向ロッド等を介して左右の前輪2,2を操向させ操舵するようになっている。
【0010】
苗植付部6は、車体の後部に昇降リンク機構7を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ8の伸縮作動により昇降する構成であり、本例では、油圧シリンダ8の引き側で苗植付部を上昇させる構成としている。そして、昇降用油圧シリンダ8の支点Q1と昇降リンク機構7の支点Q2,Q3とは一枚のプレート15で結び、これら3点を互いに突っ張ることにより強度をもたせた構成になっている。なお、16は植付昇降レバーを示す。
【0011】
また、この苗植付部6には、左右に往復動する苗載タンク11、1株分の苗を切取って土中に植込む植込杆12を有する2条分植付装置13,13、苗植付面を滑走しながら整地するフロ−ト(サイドフロ−ト)14,14、センタフロ−ト14S等を備えている。
【0012】
エンジンEの回転動力は、エンジン出力プーリ20からベルト25を介して油圧式無段変速装置(HST)21の入力プ−リ22、入力軸23に伝えられ、この入力軸23からこれと同一軸芯上に設けられた伝動軸を介して油圧ポンプを駆動するようになっており、更に、HST21の出力軸からミッションケ−ス26のミッション入力軸に伝えられるようになっている。
【0013】
前記HST21は、フロントカバー10の下方に配置してあり、フロントカバー10の上部近傍には、該HSTを駆動する変速レバ−25が配置され、この変速レバ−25の前後方向の操作でHST21を駆動し機体の前進及び後進制御を司るように構成されている。
【0014】
後輪伝動ケース30は、後輪3の車軸31より前側の回動支点P回りに上下回動可能に構成している。図3に示すように、走行フレーム32には後輪伝動ケース30を下方に向けて回動付勢する圧縮スプリング34を設けてあり、通常の走行時には機体の自重で圧縮スプリング34が縮んで後輪3が上動状態となり、機体の前進で後輪3に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により後輪伝動ケース30が下側へ回動して後輪3が下動状態となるよう構成している。
【0015】
また、前記後輪伝動ケース30は、後輪車軸31を挟む位置で上下に分割して半割アッパーケース30aと半割ロワーケース30bとからなる構成としてあり、回動支点軸Pを半割ロワーケース30b側に設定すると共に、半割アッパーケース30a側には、独立スイングのストッパー部35を進行方向前側に設けた構成としている。
【0016】
なお、回動支点軸Pは、走行フレーム32から下方に突設するブラケット33に軸支してあり、且つ、後輪3の外径内に設定している。要するに、左右後輪の伝動ケース30は、圧縮ススプリング34を介して回動支点軸P回りに左右独立的にスイングする構成であり、かかる構成によれば、回動支点軸Pとストッパー部35との間隔が大きく取れるため、ストッパー部の剛性を低くでき、軽量でコストダウンが可能となる。
【0017】
また、図4に示す実施例では、前記図3と同様に後輪伝動ケースに回動支点を持つ後輪独立スイング構成において、後輪回動時の後輪伝動軸36におけるユニバーサルジョイント部36aのユニバーサル折れ角が大きくなるのを防ぐ為に、非回動時のユニバーサル折れ角を逆側に傾けるまでスイング最大時のユニバーサル折れ角の許容範囲内に納めるようにしている。
【0018】
直進高負荷時、駆動反力によって機体を自動的にヒップアップする構成にあって、ヒップアップ側の力に抵抗を加える圧縮スプリングを設けた構成において、その抵抗力を可変させることにより、ヒップアップする負荷を任意に変更可能にし、変速レバー切り替えによる機体「移動」(路上走行)時には抵抗をゼロにして後輪の接地性を高め、「植付作業」時には抵抗をかけて機体前部が浮き上がるような高負荷時のみヒップアップするように構成することで、駆動反力の小さい路上走行では抵抗を与えず、駆動反力の大きい圃場走行では必要以上にヒップアップしないように抵抗を与えることが可能となる。
【0019】
また、上記のような構成において、HSTを駆動する変速レバ−25の操作に起因する前後進低速時には、抵抗をゼロにして後輪の接地性を高め、中・高速時には抵抗をかけて機体前部が浮き上がるような高負荷時のみヒップアップするよう構成することもでき、駆動反力の小さい低速走行では抵抗を与えず、駆動反力の大きい高速走行では必要以上にヒップアップしないように抵抗を与えることが可能となる。
【0020】
更に、エンジンEのスロットル低回転時には抵抗をゼロにして後輪の接地性を高め、中・高速時には抵抗をかけて機体前部が浮き上がるような高負荷時のみヒップアップするように構成することもできる。
【0021】
図5に示す実施例では、半割アッパーケース30aの前側に設けたストッパー部35にクッションゴム37を設け、後進高負荷時にはクッションゴム37のたわみにより、機体を逆にヒップダウンさせて前下がり状態を緩和させ、前輪の沈み込みを防止する構成としている。これによれば、後進での畦越えやアユミ越えが容易にでき、走行抵抗の大きい湿田での後進性能が向上する。
【0022】
また、植付昇降レバー16の植付部上げ操作時には、抵抗をゼロにして後輪の接地性を高め、下げ操作時には抵抗をかけて機体前部が浮き上がるような高負荷時のみヒップアップするように構成することもでき、これによって駆動反力の小さい路上走行では抵抗を与えず、駆動反力の大きい圃場走行では必要以上にヒップアップしないように抵抗を与えて安定した走行が可能となる。
【0023】
直進高負荷時、駆動反力によって機体を自動的にヒップアップする上記構成において、ヒップアップ時、浅田での植付部最低高さ上昇による浮き苗を防ぐために、苗植付部6と昇降用油圧シリンダ8との間に装備したスイングスプリング40の伸縮量を規制することにより、植付部最低高さを低くするように構成することができる。つまり、スイングスプリング40は、図6に示すように、保持部材41aと41b間に介装してあり、螺子杆42と調整ナット43によって保持部材41a,41b間の間隔を拡縮変更しスプリング伸縮量を規制調整するようになっている。
【0024】
図7に示す実施例は、直進高負荷時、駆動反力によって機体を自動的にヒップアップする構成において、ブレーキペダル44を踏み込むと、後輪伝動ケース30を後輪下げ位置で固定するロックピン45が作動するように連動構成し、運行時のハネ上がりを防止するようにしている。
【0025】
図8及び図9に示す実施例は、リヤアクスル46内のリヤアクスル軸47上にサイドクラッチ48を設けた構成のものにおいて、後輪伝動ケース30には、リヤアクスル軸47から後輪車軸31までの減速伝動経路としてベベルギヤ伝動機構49が内装されてあり、そして、この後輪伝動ケース30は、前記リヤアクスル軸47を回動支点として左右独立的にスイング可能に構成され、直進高負荷時には、駆動反力により圧縮スプリング34を介して後輪伝動ケース30が下方へスイングして後輪が下動状態となって機体の後部が上昇するようになっている。
【0026】
図10及び図11に示す実施例では、図8の実施例と同じように、後輪伝動ケース30がリヤアクスル軸47軸芯を支点としてスイングする構成であり、左右の後輪伝動ケース30,30間に設けたヒップアップ用油圧シリンダ50の伸縮作動によって左右の後輪を昇降駆動する構成としている。そして、機体前部に設けられた畦越え操作アーム51(図1、図2参照)を前方に倒すと、これに連動してヒップアップ用油圧シリンダ50を作動させ、後輪伝動ケース30のスイング、後輪3の下動により、機体をヒップアップするように構成している。これによれば、機体のヒップアップにより、機体の重心が前方に移動し、前上がりを防ぎ、畦越えの容易化を図ることができる。
【0027】
また、図12に示す実施例は、左右の後輪3,3がリヤアクスル46の中央に設けられた前後方向の軸芯P1を回動支点として左右独立して上下動する構成であり、畦越え時に、畦越え操作アーム51を前方に倒すと、ヒップアップ用油圧シリンダ50の作動によって左右の後輪3,3を前後方向の軸芯P1回りに下動させて機体のヒップアップを図るようにしている。
【0028】
更に、図13に示す実施例では、左右に後輪3,3を備えたリヤアクスル46を左右に分割し、その分割された左右のリヤアクスル46L,46Rが前後方向の軸芯P2,P2を支点として独立的に上下動する構成であり、畦越え時には、畦越え操作アーム51を前方に倒すと、ヒップアップ用油圧シリンダ50の作動によって左右の後輪3,3を前後方向の二つの軸芯P2,P2を回動支点として下動させて機体の後部をリフトアップし、畦越えの容易化を図るようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】田植機の側面図
【図2】同上平面図
【図3】同上要部の側面図
【図4】同上要部の側面図
【図5】同上一部の側面図
【図6】植付部の昇降機構の側面図
【図7】ブレーキペダルと後輪伝動ケースとの関連構成を示す側面図
【図8】後輪下動機構を示す平面図
【図9】同上要部の側面図
【図10】後輪下動機構を示す背面図
【図11】同上要部の側面図
【図12】別実施例の後輪下動機構背面図
【図13】別実施例の後輪下動機構背面図
【符号の説明】
【0030】
P 回動支点軸
1 走行車体 2 前輪
3 後輪 30 後輪伝動ケース
31 後輪車軸 34 圧縮スプリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪伝動ケース(30)を後輪車軸(31)より前側の回動支点(P)回りに上下回動可能に構成すると共に、後輪伝動ケースを下方に回動付勢する圧縮スプリング(34)を設け、通常の走行時には機体の自重で圧縮スプリング(34)が縮んで後輪(3)が上動状態となり、機体の前進で後輪に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により後輪伝動ケース(30)が下側へ回動して後輪(3)が下動状態となるよう構成してあることを特徴とする乗用型田植機の後輪下降装置。
【請求項1】
後輪伝動ケース(30)を後輪車軸(31)より前側の回動支点(P)回りに上下回動可能に構成すると共に、後輪伝動ケースを下方に回動付勢する圧縮スプリング(34)を設け、通常の走行時には機体の自重で圧縮スプリング(34)が縮んで後輪(3)が上動状態となり、機体の前進で後輪に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により後輪伝動ケース(30)が下側へ回動して後輪(3)が下動状態となるよう構成してあることを特徴とする乗用型田植機の後輪下降装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−1380(P2007−1380A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182176(P2005−182176)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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