説明

制振装置

【課題】本発明は制振装置の取付作業の作業性を改善することを課題とする。
【解決手段】制振装置10は、上部伝達部材24と、下部伝達部材26と、一対の油圧ダンパ28、29と、一対の上部取付部材30、31と、一対の下部取付部材32、33とから構成されている。油圧ダンパ28、29は、夫々四角形状に形成された上部伝達部材24と下部伝達部材26との間に介在するように取り付けられている。上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33は、それぞれ第1のL字鋼34、第2のL字鋼35、平板鋼36を溶接により一体化したものであり、第1のL字鋼34と第2のL字鋼35とを組み合わせることで、製作が容易になり、作業性が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物の振動エネルギを吸収する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の制振装置としては、構造物の壁部の内部に設置するものと、構造物の外壁に設置するものとがある。また、住宅の壁部の内部に収納するタイプの制振装置は、耐震改修の場合には工事が大掛かりになるため、特許文献1に示されるような住宅の外壁に取り付けられる制振装置が要望されている。
【0003】
特許文献1の制振装置は、構造物の上梁に固定される上部伝達部材と下梁に固定される下部伝達部材とが構造物の壁面(梁や柱)に結合され、且つ上部伝達部材と下部伝達部材との間に油圧ダンパを配置して、上部伝達部材と下部伝達部材との相対変位に伴う油圧ダンパの伸縮動作によって振動エネルギを吸収する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−314082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す技術は、上部伝達部材、下部伝達部材を上梁、下梁のみに固定する構成であるため、外壁と上部伝達部材、下部伝達部材との結合強度を高めるには、数多くの強固なネジ又はボルト等の締結部材を用いなければならず、設置現場での作業性に問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した制振装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0008】
本発明は、構造物の壁面の外側に設けられ、前記構造物の上梁の水平方向の振動が入力される上部伝達部材と、
前記壁面の外側に設けられ、前記構造物の下梁の水平方向の振動が入力される下部伝達部材と、
前記上部伝達部材と前記下部伝達部材との間の振動による相対変位を減衰するダンパと、
前記上部伝達部材を前記上梁および柱に取り付ける上部取付部材と、
前記下部伝達部材を前記下梁および前記柱に取り付ける下部取付部材と、
を備え、
前記上部取付部材、及び前記下部取付部材は、前記上部伝達部材、及び下部伝達部材を、前記上梁、前記下梁、前記柱に前記壁面の外側から締結部材を挿入して固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上部伝達部材及び下部伝達部材を構造物に外側から強固に固定することができる。よって、地震による地面から家に伝わる揺れを壁の外側を介して上部伝達部材及び下部伝達部材に伝達させ、上部伝達部材及び下部伝達部材の相対変位をダンパで効果的に減衰することができる。また、外側から取付部材を柱、上梁、下梁、伝達部材に締結部材により固定することができるので、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明による制振装置の一実施例を示す斜視図である。
【図1B】制振装置の正面図である。
【図1C】制振装置の側面図である。
【図1D】制振装置が設けられる構造部の柱と下梁の接合部の側面図である。
【図2A】取付部材の正面図である。
【図2B】取付部材の側面図である。
【図2C】取付部材の平面図である。
【図3】本発明による制振装置に触れ止めを設けた正面図である。
【図4】本発明による制振装置の変形例1を示す斜視図である。
【図5】本発明による制振装置の変形例2を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
〔制振装置の構成〕
図1Aは本発明による制振装置の一実施例を示す斜視図である。図1Bは制振装置の正面図である。図1Cは制振装置の側面図である。図1Dは制振装置が用いられる構造物の
柱と下梁の接合部の拡大側面図である。
【0012】
図1A〜図1Dに示されるように、制振装置10は、構造物の基礎に固定された下梁14と、2階床を支持するように横架された上梁18と、下梁14と上梁18の間に固定された一対の柱20に取り付けられている。また、下梁14は、1階床を支持する土台である。制振装置10が取り付けられる構造物としては、例えば、既に建設された木造住宅又は木造建築物などである。
【0013】
また、下梁14及び上梁18及び各柱20の正面(外側)には、外壁(図1A〜図1Cにおいて構造が分かりやすくするため図示を省略する)が形成されており、制振装置10は、外壁に沿うように下梁14及び上梁18及び各柱20に直接取り付けられる。既存の構造物の場合、内部に家具や電化製品が設置されているので、内壁に制振装置10を取り付けることは難しい。また、壁面内に設けることが望ましいが、窓のない壁面内には、筋交いが設けられていることが殆どで有り、設置できる場所に制約がある。さらに、耐震改修においては、外壁または内壁を取り除く必要があるため、設置工事の工数がかかる。そのため、制振装置10は、既存の構造物の外壁の外側のスペースに施工される。
【0014】
制振装置10は、上部伝達部材24と、下部伝達部材26と、一対の油圧ダンパ28、29と、一対の上部取付部材30、31と、一対の下部取付部材32、33とから構成されている。上部取付部材30、31は、上部伝達部材24の左右両端の角部を構造物の壁面に固定するための金具である。下部取付部材32、33は、下部伝達部材26の左右両端の角部を構造物の壁面に固定するための金具である。
【0015】
上部伝達部材24は、上端の左右角部がビスまたはボルト等の複数の締結部材50により上部取付部材30、31に締結され、上部取付部材30、31を介して上梁18及び柱20の被取付け部に固定される。下部伝達部材26は、下端の左右角部がビスまたはボルト等の複数の締結部材50により下部取付部材32、33に締結され、下部取付部材32、33を介して下梁14及び柱20の被取付け部(壁面)に固定される。
【0016】
また、複数の締結部材50のうち下梁14と柱20との結合部分、及び上梁18と柱20との結合部分は、図1D中、破線で示されるように木造住宅で一般的に用いられるほぞ20A(凸部)をほぞ穴14Aに嵌合させる構造からなる。尚、図1Dにおいては、締結部材50Aの位置を見やすくするため、下部取付部材32を省略してある。
【0017】
複数の締結部材50のうち上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33の角部に位置する締結部材50Aは、ほぞ20A(凸部)のX方向の中心部に打ち込まれる。当該角部の締結部材50Aは、下梁14と柱20との結合部分、及び上梁18と柱20との結合部分の中心に位置するため、上部伝達部材24と下部伝達部材26との間でY軸周りの回転方向の相対変位を可能にしている。もし、ほぞ20AのX方向の両側の外れた位置に締結部材50Aをねじ込んだ場合、締結部材50Aの先端がほぞ20Aの側面に食い込み、地震発生時にほぞ20Aの木材が裂けてしまうおそれがある。そのため、各柱20は、両端がほぞ(凸部)を支点として傾斜方向に変位して上部伝達部材24と下部伝達部材26との相対変位が可能になる。
【0018】
また、上部伝達部材24及び下部伝達部材26は、X方向の横幅が一対の柱20の離間距離よりも広く形成されており、且つY方向の隙間Sを介して一対の柱20と対向するように上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33により支持されている。このY方向の隙間Sは、外壁の厚さより余裕をもって大きい寸法に設定されている。そのため、上部伝達部材24及び下部伝達部材26は、外壁が厚い場合でも当該構造物の外壁に接触することなくX方向に相対変位する。
【0019】
油圧ダンパ28、29は、夫々四角形状に形成された上部伝達部材24と下部伝達部材26との間に介在するように取り付けられている。油圧ダンパ28、29は、作動油が充填されたシリンダ42、43と、シリンダ42、43内を摺動するピストン(図示せず)と、ピストンに結合されたピストンロッド44、45とからなる。
【0020】
シリンダ42、43の端部は、下部伝達部材26の上端に締結されたブラケット46に連結されており、ピストンロッド44、45の端部は、上部伝達部材24の下端に締結されたブラケット48、49に連結されている。
【0021】
上記のように構成された制振装置10では、例えば、地震により水平方向の振動が構造物に入力されると、上梁18、下梁14を介して振動が伝達される上部伝達部材24と下部伝達部材26との間で水平方向の相対変位(例えば、図1において、X方向の変位)が生じる。これにより、上部伝達部材24と下部伝達部材26との間に介在する油圧ダンパ28、29は、シリンダ42、43内をピストンが摺動して作動油の粘性抵抗による抵抗力(減衰力)を発生して振動を減衰させる。
【0022】
また、油圧ダンパ28、29は、X方向上互いに180度反転させた向きに取り付けられているため、上部伝達部材24と下部伝達部材26と相対変位の右方向又は左方向に応じて一方の油圧ダンパが伸び動作となり、他方の油圧ダンパが圧縮動作となる。そのため、油圧ダンパ28、29は、左右方向のどちらの振動でも同じように減衰力を発生して振動エネルギを吸収できる。
〔上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33の構成〕
図2Aは外付用取付部材の正面図である。図2Bは外付用取付部材の側面図である。図2Cは外付用取付部材の平面図である。尚、上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33は、左右対称又は上下対称となるため、以下では上部取付部材30の構成について説明し、他の各取付部材の説明は省略する。
【0023】
図2A〜図2Cに示されるように、上部取付部材30は、第1のL字鋼34、第2のL字鋼35、平板鋼36を溶接により結合させたものである。第2のL字鋼35の一端側は第1のL字鋼34の一端側に直交して固定される。平板鋼36は、第1のL字鋼34の他端側と第2のL字鋼35の他端側、及び第1のL字鋼34と第2のL字鋼35との直交固定部と接するように配される。
【0024】
上部取付部材30の場合、第1のL字鋼34は、垂直方向に延在する向きに配されている。第2のL字鋼35は、水平方向に延在する向きに配されている。従って、第2のL字鋼35の左端部35aが第1のL字鋼34の起立部34aに対して直角に突き合わされた状態で溶接される。また、第1のL字鋼34及び第2のL字鋼35は、それぞれ外壁が部分的に除去された取付位置の下梁14、上梁18、柱20に当接される取付部34b、35bを有する。尚、外壁が比較的薄いパネルの場合には、第1のL字鋼34及び第2のL字鋼35を直接外壁に固定しても良い。
【0025】
さらに、第1のL字鋼34の上端(Z方向の角部)には、45度の角度に傾斜した切欠部34cが設けられている。この切欠部34cにより上部取付部材30の軽量化が図れると共に、落下時の衝撃を緩和することができる。なお、切欠部34cを設けたほうが軽量化の面で優れるが、設けなくても良い。
【0026】
平板鋼36は、金属板によりほぼ三角形状に形成され、直角の角部が第1のL字鋼34の起立部34aと第2のL字鋼35の起立部35cの壁面に当接させた状態で溶接される。また、平板鋼36は、第1のL字鋼34の起立部34aと第2のL字鋼35の起立部35cの端部(外壁から最も離間した位置)に溶接される。
【0027】
平板鋼36及び取付部34b、35bには、前述した締結部材50が挿通される貫通孔37、37Aが所定間隔で設けられている。そして、平板鋼36は、上部伝達部材24又は下部伝達部材26の角部外面に当接させた状態で締結部材50により固定される。また、取付部34b、35bは、当該制振装置10の取付位置に下梁14又は上梁18、及び柱20に締結部材50を用いて外側から固定する。貫通孔37Aは、ほぞ20A(図1D参照)と一致する位置に設けられており、締結部材50Aの螺入位置をガイドする。
【0028】
上部取付部材30は、垂直方向に延在する取付部34bが柱20に固定され、取付部34bと直交する水平方向に延在する取付部35bと上梁18に固定されるため、構造物の壁面に対する結合強度が従来のもの(特許文献1参照)よりもより一層高められている。また、上部取付部材30は、被取付部である柱20と上梁18との結合も補強しており、耐震強度を高めている。
【0029】
起立部34a、35cの奥行き寸法は、上部伝達部材24又は下部伝達部材26の厚さの2〜3倍ある。そのため、上部取付部材30を構造物の壁面に取り付けると、上部伝達部材24及び下部伝達部材26の内側と外壁との間には、外壁の厚さに対して十分な隙間Sが確保される。従って、上部伝達部材24及び下部伝達部材26と下梁14、上梁18、柱20の被取付部(壁面)との隙間Sが所定寸法に規定される。
【0030】
また、第1のL字鋼34及び第2のL字鋼35の端部(角部より離れた位置)には、起立部34aと取付部34bとの間、起立部35cと取付部35bとの間を補強する補強板38、39が溶接されている。
【0031】
このように、上部取付部材30は、第1のL字鋼34、第2のL字鋼35、平板鋼36を溶接により一体化したものであり、第1のL字鋼34と第2のL字鋼35とを組み合わせることで、製作が容易になり、作業性が高められる。
【0032】
また、第1のL字鋼34、第2のL字鋼35は、通常の板金よりも強度が高いので、上部伝達部材24又は下部伝達部材26の重量を安定的に支えることができる。また、第1のL字鋼34及び第2のL字鋼35は、市販のL字鋼をそのまま使用できるので、コストが安価にできる。
〔取付作業方法〕
ここで、上記のように構成された上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33の取付作業の手順について説明する。
(手順1)設置現場において、まず、当該構造物の制振装置取付け部分(少なくとも上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33が対向する部分)の外壁を部分的にめくり(折り曲げ)、あるいは当該部分を切断する。これにより、当該取付け箇所となる下梁14、上梁18、各柱20の被取付部が外側に露出される。これにより、上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33の取付作業が容易に行える。なお、外壁をめくった箇所、あるいは切断した箇所には防水シートを取り付ける。
(手順2)手順1において、取付け箇所となる下梁14、上梁18、各柱20の被取付部に、上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33を取り付ける。
(手順3)次に、上部伝達部材24の下梁14側の端部と下部伝達部材26の上梁18側の端部にブラケット48,49,46をそれぞれ取付け、さらにブラケット48,49には油圧ダンパ28,29を仮留めしておく。なお、本実施の形態では上部伝達部材24に二つのブラケット48,49を取付け、下部伝達部材26に一つのブラケット46を取付ける構成を示したが、上部伝達部材24の端部の中央に一つのブラケットを取付け、下部伝達部材26の端部の両端側に二つのブラケットを取付けるようにしてもよい。
(手順4)上部取付部材30、31及び下部取付部材32、33に上部伝達部材24、下部伝達部材26を取り付ける。その際、第1のL字鋼34の起立部34aの内壁と第2のL字鋼35の起立部35cの内壁に上部伝達部材24、下部伝達部材26の角部側面を当接させて角部を一致させる。そして、平板鋼36の貫通孔37を通して上部伝達部材24、下部伝達部材26に外側から締結部材50を打ち込む。この取付状態における上部伝達部材24及び下部伝達部材26は、隙間S(図1A、図1C参照)を介して構造物の外壁と対向しており、外壁と非接触状態である。
(手順5)手順3で上部伝達部材24に取付けられたブラケット48,49にそれぞれ仮留めされた油圧ダンパ28,29を、下部伝達部材26に取付けられたブラケット46に固定する(図1A、図1B参照)。
(手順6)次に図3に示す触れ止め板60を取付ける。触れ止め板60は、図1に示す制振装置10の上部伝達部材24及び下部伝達部材26の内側、外側に所定の隙間を介して対向するように設けられている。この一対の触れ止め板60は、地震発生時において、上部伝達部材24及び下部伝達部材26が面外方向に座屈するのを未然に回避するものである。図3では、外側の触れ止め板60のみが示されているが、内側の同じ高さ位置にも触れ止め板60が横架されている。なお、触れ止め板60は、制振装置10の上部伝達部材24及び下部伝達部材26とは隙間を空けて柱20に固定される。この隙間は、制振装置10の上部伝達部材24及び下部伝達部材26の動作を阻害しないために設けている。
(手順7)制振装置10の外側を覆う図示せぬ防水カバー部材(化粧板)を上部伝達部材24及び下部伝達部材26の外側に取り付ける。このように、構造物の所定の取付位置の外側から順々に制振装置10の各部品を容易に取り付けることができる。
〔変形例1〕
図4は本発明による制振装置の変形例1を示す斜視図である。尚、図4において、前述した制振装置10と同一部分には、同一符合を付してその説明を省略する。また、図4では、外壁を省略している。
【0033】
図4に示されるように、変形例1の制振装置70では、上部伝達部材24と下部伝達部材26との間には、油圧ダンパ72が設けられている。油圧ダンパ72は、構造物の質量に応じて前述した油圧ダンパ28、29よりも容量の大きいものを使用しても良い。
【0034】
変形例1では、油圧ダンパ72が1つなので、油圧ダンパ72を固定するブラケット74、76の取付スペースが小さくて済む。そのため、上部伝達部材24及び下部伝達部材26は、傾斜部77、78を設けることで、台形状に形成され、その分軽量化が図れるので、作業性が高められる。
〔変形例2〕
図5は本発明による制振装置の変形例2を示す斜視図である。尚、図5において、前述した制振装置10、70と同一部分には、同一符合を付してその説明を省略する。また、図5では、外壁を省略している。
【0035】
図5に示されるように、変形例2の制振装置80では、上部取付部材30A、31A及び下部取付部材32A、33Aが金属板をプレス加工したものからなる。
【0036】
尚、上部取付部材30A、31A及び下部取付部材32A、33Aは、左右対称及び上下対称となるため、以下では上部取付部材30Aの構成について説明し、他の各取付部材の説明は省略する。
【0037】
上部取付部材30Aは、上部伝達部材24及び下部伝達部材26の角部に対向する四角形状の固定部82と、固定部82の2辺に連続する段差部84と、段差部84の外側に形成されたL字状平面部86と、上部伝達部材24及び下部伝達部材26の角部を通すための開口88とを有する。
【0038】
段差部84の厚さ方向(Y方向)の寸法は、上部伝達部材24及び下部伝達部材26の対応する寸法に形成されている。
【0039】
固定部82は、締結部材50を通すための複数の貫通孔が設けられ、上部伝達部材24及び下部伝達部材26との当接面積が大きくとれるので、強固に固定されると共に、作業性も高められている。
【0040】
また、L字状平面部86は、ボルト付き取付部材90のボルト部94が挿通されるボルト挿通孔(図5中、ナット96に隠れて見えない)が3箇所に設けられている。このボルト挿通孔に対向する下梁14、上梁18、柱20の各箇所には、ボルト付き取付部材90が固定される。
【0041】
ボルト付き取付部材90は、下梁14、上梁18、柱20に固定されるフランジ部92と、フランジ部92の中心から起立するボルト部94とを有する。また、ボルト部94には、構造物の外壁と上部伝達部材24及び下部伝達部材26との間に隙間Sを確保するためのスペーサが挿入されている。このスペーサは、上部伝達部材24及び下部伝達部材26の厚さに応じて中空円筒形状のものを適宜挿入しても良いし、あるいは複数のナットをボルト部94に螺入させてスペーサとしても良い。
【0042】
ボルト部94に螺入されたナット96を締付けると、L字状平面部86は、上記スペーサの端部に当接して下梁14、上梁18、柱20の被取付部(壁面)からの隙間Sが所定寸法に規定される。
【0043】
また、変形例2の上部取付部材30A、31A及び下部取付部材32A、33Aは、金属板をプレス加工により大量生産可能であるので、コストを安価に抑えることができる。
【0044】
上記各実施の形態では、上部取付部材30、30A、31、31A及び下部取付部材32、32A、33、33Aが鉄製の剛体で構成され、柱20と梁14,18に跨って取り付けられているため、梁のみに固定された場合と比較し、梁のX軸を中心とした回転方向のトルクに対して、梁のX軸から離間した柱20への締結部材で力を受けることができるので、高い取り付け剛性が確保できる。さらに、柱と梁を強固に結合させることにもなるので、構造物自身の剛性を合わせて確保することが出来る。よって、ボルトなどの締結部材の数を減らすことができ、設置現場での作業性の向上を図ることができる。
【0045】
尚、上記実施の形態では、制振装置を既存の住宅の1階と2階との間の外壁に取り付ける場合の構成を一例として説明したが、これに限らず、例えば、木造住宅の2階と3階(または屋根)との間に取り付けることも可能であり、また新築住宅の建設時に取り付けることも可能である。
【0046】
また、上記実施の形態では、外壁を剥がして直接、上梁18、下梁14の被取付け部に外側から取り付ける施工方法について説明したが、外壁の壁面が平面状であれば直接外壁に締結部材を打ち込む方法を用いても構わない。
【0047】
さらに、また、上記実施の形態では、ダンパとして油圧ダンパを用いたものを示したが、別段これに限らず、摩擦ダンパ、ゴムを用いた粘弾性ダンパ等の減衰力を発生することができるものであれば構わない。
【符号の説明】
【0048】
10、70、80 制振装置
14 下梁
18 上梁
20 柱
24 上部伝達部材
26 下部伝達部材
28、29、72 油圧ダンパ
30、30A、31、31A 上部取付部材
32、32A、33、33A 下部取付部材
34 第1のL字鋼
35 第2のL字鋼
36 平板鋼
37 貫通孔
38、39 補強板
42、43 シリンダ
44、45 ピストンロッド
46、48、49、74、76 ブラケット
50、50A 締結部材
60 触れ止め板
77、78 傾斜部
82 固定部
84 段差部
86 L字状平面部
88 開口
90 ボルト付き取付部材
92 フランジ部
94 ボルト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の壁面の外側に設けられ、前記構造物の上梁の水平方向の振動が入力される上部伝達部材と、
前記壁面の外側に設けられ、前記構造物の下梁の水平方向の振動が入力される下部伝達部材と、
前記上部伝達部材と前記下部伝達部材との間の振動による相対変位を減衰するダンパと、
前記上部伝達部材を前記上梁および柱に取り付ける上部取付部材と、
前記下部伝達部材を前記下梁および前記柱に取り付ける下部取付部材と、
を備え、
前記上部取付部材、及び前記下部取付部材は、前記上部伝達部材、及び下部伝達部材を、前記上梁、前記下梁、前記柱に前記壁面の外側から締結部材を挿入して固定することを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記上部取付部材、および前記下部取付部材は、前記上部伝達部材、前記下部伝達部材の左右両端に設けることを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記上部取付部材、および前記下部取付部材は、
第1のL字鋼と、第2のL字鋼と、平板鋼と、からなり、
該第1のL字鋼の一端側に直交して前記第2のL字鋼の一端側を固定し、
前記平板鋼は、前記第1のL字鋼の他端側と前記第2のL字鋼の他端側、及び前記第1のL字鋼と前記第2のL字鋼の直交固定部と接するように配されることを特徴とする請求項1、2の何れかに記載の制振装置。
【請求項4】
前記平板鋼を前記上部伝達部材、前記下部伝達部材の前記壁面の外側と複数個所で締結することを特徴とする請求項3に記載の制振装置。
【請求項5】
前記上部伝達部材、前記下部伝達部材は、前記壁面との間に隙間をもって固定されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の制振装置。
【請求項6】
前記上部取付部材、または上記下部取付部材を、前記柱および前記上梁、または前記柱および下梁に締結する締結部材のうち、前記柱を前記梁に結合させるほぞ部に締結されるほぞ部締結部材は、ほぞ部の制振動作方向の中心部に挿通することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の制振装置。
【請求項7】
前記上部取付部材、および下部取付部材は、前記柱と前記梁が交差する被取付け部を覆う外壁を部分的に除去し、前記被取付け部を形成する前記柱および前記上梁、前記下梁を外側に露出させて取り付けることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の制振装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−102570(P2012−102570A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253046(P2010−253046)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(502141636)江戸川木材工業株式会社 (6)
【出願人】(000133135)株式会社タナカ (15)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】