説明

多層基板

【課題】ノイズ成分に対して効果的に対策された多層基板の提供を目的とする。
【解決手段】導電パターンが形成された第一の表面層及び第二の表面層と、前記第一及び第二の表面層の間に設けられたグランド層と、前記第一及び第二の表面層の間に設けられた電源層と、を備えて構成される多層基板において、前記第一の表面層に形成された導電パターンと前記第二の表面層に形成された導電パターンとの間を貫通するよう形成されたビアホールと、前記第一の表面層又は前記第二の表面層のいずれかにおいて、前記ビアホールと接続するよう形成された導体パッドと、を有し、前記導体パッドが、3PFから5PFの容量を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層基板に関し、特にノイズを低減する多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板に形成された導電パターンを流れる信号の周波数が増大しており、この信号に重畳するノイズが問題となっている。信号にノイズが重畳すると、このノイズ成分により回路を誤動作させる恐れがあるため、何らかの対策が必要とされる。
【0003】
そのため、導電パターン上にノイズ対策部品等を実装することでパターン容量(インピーダンス容量)を増やし、ノイズを低減させる技術が開示されている(例えば、特許文献1−3参照。)。パターン容量を増やすことで、信号に合成された高周波成分を低減することができるためノイズ対策として有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−94005号公報
【特許文献2】特開平9−283974号公報
【特許文献3】特開昭61−43462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号に重畳するノイズ成分は所定値以上の周波数を伴うため、ノイズを低減させるのに必要なパターン容量は少なくてもよい。まして、対策部品により発生するパターン容量が大きくなりすぎると、導電パターンに流れる信号波形を変化させる場合があり、かえって回路の誤動作を生じさせる場合があった。
【0006】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、ノイズ成分に対して効果的に対策された多層基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、導電パターンが形成された第一の表面層及び第二の表面層と、前記第一及び第二の表面層の間に設けられたグランド層と、前記第一及び第二の表面層の間に設けられた電源層と、を備えて構成される多層基板において、前記第一の表面層に形成された導電パターンと前記第二の表面層に形成された導電パターンとの間を貫通するよう形成されたビアホールと、前記第一の表面層又は前記第二の表面層のいずれかにおいて、前記ビアホールと接続するよう形成された導体パッドと、を有し、前記導体パッドが、3PFから5PFの容量を備える構成としてある。
【0008】
上記のように構成された発明では、多層基板には、第一の表面層に形成された導電パターンと第二の表面層に形成された導電パターンとの間を貫通するようビアホールが形成され、第一の表面層又は第二の表面層のいずれかにおいて、前記ビアホールと接続するよう導体パッドが形成されている。更に、導体パッドは、3PFから5PFの容量を備えている。
そのため、ビアホールに接続された導体パッドによりパターン間容量を確保し、ノイズ成分を低減させることが可能となる。また、3PFから5PFという低いパターン間容量を基板上に発生させるだけなので、導電パターンに流れる信号に対して波形変化を生じさせない。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、ノイズ成分に対して効果的に対策された多層基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】表示装置1の構成を説明するためのブロック構成図である。
【図2】パネル駆動基板10の構成の一部を説明する断面図である。
【図3】パネル駆動基板10の一部を一方側(第二の表面側)から見た図である。
【図4】パネル駆動基板10の導電パターン上に流れる信号波形を拡大して示す図である。
【図5】テストポイントの大きさと増加する容量との関係を説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.第1の実施形態:
2.その他の実施形態:
【0012】
1.第1の実施形態:
以下、図を参照して、この発明に係る多層基板を具体化した第1の実施の形態について説明する。以下、第1の実施形態では、多層基板を備える製品として表示装置1を例に説明を行う。図1は、表示装置1の構成を説明するためのブロック構成図である。また、図2は、パネル駆動基板10の構成の一部を説明する断面図である。そして、図3は、パネル駆動基板10の一部を一方側(第二の表面側)から見た図である。
【0013】
表示装置1は、パネル駆動基板10と、表示パネル20と、を備えて構成されている。パネル駆動基板10と表示パネル20とはLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ケーブル40を通じて接続され、パネル駆動基板10から供給される差動増幅信号(クロック信号、映像信号)により表示パネル20を駆動する。
【0014】
パネル駆動基板10は多層基板であり、表面層(後記する第一の表面層と第二の表面層)にメインコントローラー30と、ビデオ入力IF31と、LVDS送信コネクター32と、を実装している。メインコントローラー30と、ビデオ入力IF31と、LVDS送信コネクター32とは、表面層に形成された導電パターンを通じて接続されている。そのため、ビデオ入力IF31を通じてビデオ信号がパネル駆動基板10に入力すると、メインコントローラー30は、このビデオ信号に画素数変換処理等の信号処理を施す。そして、処理後のビデオ信号は、LVDS送信コネクター32からLVDSケーブル40を通じて差動増幅信号として表示パネル20に供給される。
【0015】
図2に示すように、パネル駆動基板10は、トランジスター等の素子や導電パターンが形成される第一の表面層11及び第二の表面層12と、第一の表面層11と第二の表面層12との間に設けられた電源層13及びグランド層14とで構成される4層基板である。本実施形態では、パネル駆動基板10は、厚みが1.6mmであり、第一の表面層11と電源層13との間、及び第二の表面層12とグランド層14との間はそれぞれ100μm(0.1mm)である。
【0016】
また、パネル駆動基板10の第二の表面層12には、テストパターン15が形成されている。その一部として、テストパターン15は、第一の表面層11におけるメインコントローラー30とLVDS送信コネクター32とを繋ぐ配線に形成されている。具体的にはテストパターン15は、第一の表面層11の導電パターン(L1〜L8)と第二の表面層12の導電パターンとを繋ぐビアホール16と、第二の表面層12に形成されたテストポイント(導体パッド)17とで構成されている。
【0017】
本実施形態では、図3に示すように、ビアホール16は、8個形成され、それぞれ第二の表面層12に形成された導電パターンと第一の表面層11の導電パターン(L1〜L8)とを繋ぐよう、パネル駆動基板10を貫通している。また、テストポイント17は、第二の表面層11側に8個形成され、各ビアホール16と電気的に接続している。そのため、電界プローブをいずれかのテストポイント17に接続させることで、第一の表面層11に形成された導電パターンと第二の表面層12に形成された導電パターンとの間の導通状態を検査できるようになっている。
【0018】
表示パネル20は、パネル本体21と、Xドライバー22、Yドライバー23、更にはタイミングコントローラー24、LVDS受信コネクター25と、を備えて構成される。タイミングコントローラー24は、LVDS受信コネクター25と入力側で接続し、LVDSケーブル40を通じてパネル駆動基板10から供給される差動増幅信号(クロック信号、映像信号)を受信する。本実施形態では、クロック信号は74.25MHzであり、1クロック当たり7個分の映像信号が供給される。また、タイミングコントローラー24は、Xドライバー22とYドライバーとに出力側で接続されており、受信した差動増幅信号に基づいてXドライバー22及びYドライバー23を駆動する。
【0019】
Xドライバー22は、映像信号をアナログ・デジタル変換してパネル本体21を駆動するための駆動電圧を生成する。この駆動電圧は、映像信号の階調値に応じてその電圧値が設定される。また、Yドライバー23は、上記駆動電圧をパネル本体21に供給するタイミングを規定するゲート電圧を生成する。
【0020】
パネル本体21は、解像度に応じて縦横に配列された画素と、各画素をオン・オフさせる同数のFET(Field Effect Transistor)を備えて構成されている。FETのドレインはXドライバー22の出力端子とデータ線を通じて接続され、エミッターはそれぞれ各画素に接続されている。さらに、FETのゲートはYドライバー23とゲート線を通じて接続されている。そのため、Yドライバー23がタイミングコントローラー24から供給されたクロック信号に応じてゲート電圧をFETのゲートに供給すると、各FETがオンし、Xドライバー22と各画素とを導通する。そのため、Xドライバー22からデータ線を通じて駆動電圧が各画素に供給され、画素を駆動させる。
【0021】
図4は、パネル駆動基板10の導電パターン上に流れる信号波形を拡大して示す図である。上記構成のパネル駆動基板10において、導電パターンL1〜L8を流れる信号にノイズ成分が重畳することがあった。即ち、図4に示す信号波形では、594MHzの帯域においてノイズ成分が重畳している。そこで、本実施形態では、第二の表面層12に形成されたテストポイント17の表面積を従来のものより大きくすることでパターン間容量(インピーダンス容量)を増やし、ノイズ成分を抑制することとした。
【0022】
図5は、テストポイントの大きさと増加する容量との関係を説明する表である。図5に示す表は、テストポイント17の各サイズと第二の表面層12とグランド層14との距離との組合せにより生じるパターン間容量を示す。即ち、テストポイント17のサイズを1.5mm角パッド(即ち面積が2.25mm)とし、第二の表面層12とグランド層14との距離が0.1mmである場合は、このテストポイントにより生じる容量は約2.8PF(ピコ・ファラッド)以上となる。そのため、導電パターンに発生させる容量は、第二の表面層12とグランド層14との距離に応じて適宜設定されることとなる。
【0023】
本実施形態では、テストポイント17として、2.0mm角パッドを使用した。また、第二の表面層12とグランド層14との間は0.1mmとした。そのため、このテストポイント17により発生する容量は4.0PFとなる。また、本実施形態では、テストポイント17は半田等の導体で形成し、各基板は、FR4(ガラスエポキシ樹脂)により形成されている。
【0024】
上記条件で測定を行った結果、594MHzの帯域において、ノイズ成分が減少した。また、対策前の基板では594MHzのノイズがEMI(Electromagnetic Interference)規格に対して0.1dBマージンであるのに対して、対策後の基板では、594MHzのノイズがEMI規格に対して8.8dマージンまで改善した。ここで、マージンの定義は、FCC(Federal Communications Commission)(アメリカでのEMI規格)において、594MHzのノイズが46dBμV以下と規定されている場合において、この値からどれだけマージンが取れているかを意味する。そのため、8.8dBマージンとは、594MHzのノイズが46dBμVから更に8.8dBμV改善した37.2dBμVであることを意味している。また、導電パターンを流れる差動増幅信号において回路の誤動作を生じさせるような立ち上がり波形の変形は確認されなかった。
【0025】
さらに、3PFから5PFの容量が発生するようテストポイント17を形成することで、100MHz以上の周波数を備えるノイズの重畳を低減できることが確認された。ここで、テストポイント17により3PF以上の容量を生じさせるためには、層間距離が100μmとなる多層基盤において、テストパターンを1.5mm角パッド(面積が2.25mm)以上とすればよいことになる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態では、周波数の高いノイズ成分に対して効果的に対策された多層基板を提供することができる。
また、導体パッドをテストポイントにより構成することで、基板上に導体パッドを別個設ける必要がなく、導体パッドを個別に設ける場合に比べてコストを低減することができる。
【0027】
2.その他の実施形態:
本発明は様々な実施形態が存在する。
多層基板を実装する製品として表示装置を用いることは一例であり、これ以外の製品に対して本実施形態に係る多層基板を用いてもよい。
また、本実施形態に係るノイズ対策がこうじられる基板としては、ノイズ成分の周波数が所定周波数(100MHz)以上となる導体パターンを形成するものであればどのような基板でもよい。
【0028】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0029】
1…表示装置、10…パネル駆動基板、11…第一の表面層、12…第二の表面層、13…電源層、14…グランド層、15…テストパターン、16…ビアホール、17…テストポイント、20…表示パネル、21…パネル本体、22…Xドライバー、23…Yドライバー、24…タイミングコントローラー、25…LVDS受信コネクター、30…メインコントローラー、31…ビデオ入力IF、32…LVDS送信コネクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電パターンが形成された第一の表面層及び第二の表面層と、前記第一及び第二の表面層の間に設けられたグランド層と、前記第一及び第二の表面層の間に設けられた電源層と、を備えて構成される多層基板において、
前記第一の表面層に形成された導電パターンと前記第二の表面層に形成された導電パターンとの間を貫通するよう形成されたビアホールと、
前記第一の表面層又は前記第二の表面層のいずれかにおいて、前記ビアホールと接続するよう形成された導体パッドと、を有し、
前記導体パッドが、3PFから5PFの容量を備えることを特徴とする多層基板。
【請求項2】
前記導体パッドが、前記第一の表面層又は第二の表面層の導電パターン上に形成されたテストポイントであることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記導体パッドの形状が、2.25mm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の多層基板。
【請求項4】
当該多層基板が、前記導電パターンに差動増幅信号を流すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多層基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−238688(P2012−238688A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105996(P2011−105996)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】