説明

履物および履物用中敷

【課題】継続的な使用により、理想的な歩行や姿勢が形成され、次第に腰痛や膝痛も改善されていく履物および履物用中敷を提供する。
【解決手段】本発明の履物1、足を載置する底部2のうち足の指が位置する部位付近3に足の指を下方に向かって屈曲可能な深さに形成された足指配置用凹部4が設けられており、底部2のうち踵が載置される部位付近5は前記足指配置用凹部4より高く形成されると共に踵が配される踵配置用凹部6を備え、さらに、底部2は外側7が内側8に比して高く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継続的な使用により理想的な歩行や姿勢が形成され次第に腰痛や膝痛も改善されていく履物および履物用中敷に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、履物の底部構造に工夫を凝らすことで使用者の腰痛を予防または改善するものが種々提案されている。例えば、そのようなものとして、腰痛などの足裏反射点の位置に補助パットを貼付し、靴を着用した時の押圧刺激により腰痛等を改善するもの(特開平11−146802号)、低弾性の充填材により直接的な強い衝撃を緩和して膝痛、腰痛の発生を抑制するもの(特開2004−248942号)、爪先部を踵部より高くすることで、前傾姿勢を解消して内臓の機能低下、腰痛等を改善するもの(特開2005−160560号)などがある。
【0003】
ところで、現代人はアスファルトの上を歩き平らな床で生活しているため、足の指が使われず指の力が弱く、土踏まずが反り上がった縦アーチが形成されない傾向にある。その結果、扁平足気味の足で指を使わず、踵側に重心を置き、かつ爪先が外側に開いたいわゆるがに股で歩行するため、その衝撃で腰痛や膝痛が誘発されることが指摘されている。また、利き足側に重心が偏るため、肩の高さが左右で異なるなど姿勢がアンバランスとなって腰痛や膝痛がさらに悪化していくことが指摘されている。
【0004】
理想的な歩行は、踵側で軽く着地した後、足の指(特に親指)で地面を蹴り上げるようにして前に移動するものであり、そのような歩行を実現するためには、爪先側が低くなって前傾姿勢を保ちつつ履物内で踵部がずり落ちないこと、履物を履いても足の指を下方に屈曲させるなどの動作が自在に行えること、爪先側が外側に向かって開かないことが求められる。
【特許文献1】特開平11−146802号公報
【特許文献2】特開2004−248942号公報
【特許文献3】特開2005−160560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、上記のような理想的な歩行を繰り返すことができる履物によれば、姿勢が矯正され次第に腰痛や膝痛も改善されていくことに着眼し本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の課題は、継続的な使用により理想的な歩行や姿勢が形成され、次第に腰痛や膝痛も改善されていく履物および履物用中敷を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するものは、足を載置する底部のうち足の指が位置する部位付近に足の指を下方に向かって屈曲可能な深さに形成された足指配置用凹部が設けられており、前記底部のうち踵が載置される部位付近は前記足指配置用凹部より高く形成されると共に踵が配される踵配置用凹部を備え、さらに、前記底部は外側が内側に比して高く形成されていることを特徴とする履物である。
【0007】
前記底部のうち母子球付近が載置される部位には母子球配置用凹部が形成されていることが好ましい。前記底部のうち長手方向に沿う中央付近には、凸条部が形成されていることが好ましい。前記底部の外側には山なりの凸部が形成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記課題を解決するものは、履物の底部上面に配置する板状体であって、該板状体が履物内に配されると、足の指が位置する部位付近に足の指を下方に向かって屈曲可能な深さを備えた足指配置用凹部が構成され、踵が載置される部位付近は前記足指配置用凹部より高くなると共に踵が配される踵配置用凹部が構成され、さらに、前記底部の外側が内側に比して高く構成されることを特徴とする履物用中敷である。
【0009】
前記板状体は、母子球付近が載置される部位に母子球配置用凹部を有していることが好ましい。前記板状体は、長手方向に沿う中央付近に凸条部を有していることが好ましい。前記板状体は、外側に山なりの凸部を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1または5に記載の発明によれば、継続的な使用により理想的な歩行や姿勢が形成され、次第に腰痛や膝痛も改善されていく。
請求項2または6に記載の発明によれば、母子球が母子球配置用凹部に配されることで母子球を活用した理想的な歩行が可能となり、また、踵配置用凹部に踵が配されると共に母子球が母子球配置用凹部に配されることで身体における左右の歪みも徐々に解消され、かつ縦アーチのうちの内側アーチも形成され易くなって、上記請求項1または5の効果がより顕著なものとなる。
請求項3または7に記載の発明によれば、前側アーチが形成され易くなり、上記請求項1または5の効果がより顕著なものとなる。
請求項4または8に記載の発明によれば、縦アーチのうちの外側アーチが形成され易くなり、上記請求項1または5の効果がより顕著なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の履物の一実施例の平面図である。
【図2】図1のA−A線における底部の断面図である。
【図3】図1のB−B線における底部の断面図である。
【図4】図1のC−C線における底部の断面図である。
【図5】3つのアーチを説明するための人間の足の透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、足を載置する底部のうち足の指が位置する部位付近に足の指を下方に向かって屈曲可能な深さに形成された足指配置用凹部が設けられているため履物を履いても足の指を下方に屈曲させるなどの動作を自在に行うことができる。また、底部のうち踵が載置される部位付近は足指配置用凹部より高く形成されると共に踵が配される踵配置用凹部を備えているため爪先側が低くなって前傾姿勢を保ちつつ履物内で踵部がずり落ちることがない。さらに、底部は外側が内側に比して高く形成されているため爪先側が外側に開かない。本発明はこれらの構造を採用することによって、理想的な歩行や姿勢が形成され次第に腰痛や膝痛も改善されていく履物または履物用中敷を実現した。
【実施例1】
【0013】
この実施例の履物1は、足を載置する底部2のうち足の指が位置する部位付近3に足の指を下方に向かって屈曲可能な深さに形成された足指配置用凹部4が設けられており、底部2のうち踵が載置される部位付近5は前記足指配置用凹部4より高く形成されると共に踵が配される踵配置用凹部6を備え、さらに、底部2は外側7が内側8に比して高く形成されていることを特徴とするものである。以下、各構成について順次詳述する。
【0014】
この実施例の履物1はスリッパであるが、これに限定されるものではなく、履物であればどのようなものでもよく、例えば運動靴、革靴、ナースシューズなど広く靴一般、またはサンダルや草履などでもよい。
【0015】
この履物1はスリッパであるため、図1に示すように、底部2と底部2に取り付けられた甲当て9とから構成されている。そして、底部2のうち足の指が位置する部位付近3には、足指配置用凹部4が設けられている。この足指配置用凹部4は、足の指を下方に向かって屈曲可能な深さに形成されており、スリッパ1を履いた後、足の指を下方に曲げると、指を略直角に屈曲させても爪先が凹部4の底面4aに若干当接するか、或いは丁度当接しない程度の深さを備えている。より具体的には、この凹部の深さは使用者の足の大きさにもよるが10mm以上あることが好ましい。
【0016】
底部2の形成材料としては、公知の材料が使用できるが、例えばゴム材、合成樹脂、木材、紙材、発泡体などが好適に使用できる。また、この実施例の底部2は、底部を一枚の板状体で形成し、先端部に凹部4を形成した一体成形物で構成されているが、これに限定されるものではなく、複数の板状体の積層体から底部が構成され先端部を枚数低減することで凹部を構成したものも本発明の範疇に包含される。また、底部2の下面は、図4に示すように平面に形成されている。
【0017】
このように、本発明の履物1は、足を載置する底部2のうち足の指が位置する部位付近3に、足の指を下方に向かって屈曲可能な深さに形成された足指配置用凹部4を有しているので、履物1を履いても足の指を下方に屈曲させるなどの動作を自在に行うことができ、足の指の力も次第に強化されていく。これによって、土踏まずが反り上がった縦アーチも形成されていき理想的な歩行が可能となる。さらに、足の指を下方に屈曲させることで、脚の裏側の筋が伸びて腰が入り背筋も伸びて理想的な姿勢が形成されこれらの複合的作用により、次第に腰痛が改善されていく。
【0018】
また、底部2のうち踵が載置される部位付近5は、図4に示すように、足指配置用凹部4の内底面より高く形成されると共に踵が配される踵配置用凹部6を備えている。この実施例では、底部2のうち踵が載置される部位付近5は、踵が載置される部位付近5と足指配置用凹部4の内底面との間の部分より一段上がり、足指配置用凹部4の内底面より2段上がるように構成されている。このように、踵が載置される部位付近5が、足指配置用凹部4の内底面より高く形成されることにより、爪先側が低くなって前傾姿勢を保つことができ、腰や膝に負荷を掛けることを回避できる。特に、この実施例のように、底部2は先端側から後端側に向かって三段構造に構成されていると先端側に向かって足全体が下がることを抑制できより好ましい。さらに、踵が配される踵配置用凹部6が設けられていることで踵がずり落ちることが防止される。
【0019】
さらに、底部2は、図2または図3に示すように、外側7が内側8に比して高く形成されている。これにより、爪先側が外側に開くことが抑止され、がに股になって重心が後ろ側に移動して腰に負担を掛けることが抑制される。
【0020】
底部2のうち母子球(図5中符号20)付近が載置される部位付近には、図1または図2に示すように、母子球配置用凹部10が形成されている。このように、母子球20が母子球配置用凹部10に配されることで母子球を活用した理想的な歩行が可能となり、また、踵配置用凹部4に踵が配されると共に母子球20が母子球配置用凹部10に配されることで身体の左右の歪みも徐々に解消され肩の高さも左右同一になる。また、母子球配置用凹部10と踵配置用凹部4との間に凸部が構成されることにより、図5に示した内側アーチ21も形成され易くなる。なお、母子球20(図5参照)とは親指の付け根付近にあって親指の運動支点となる略球状体部位をいう。
【0021】
底部2のうち長手方向に沿う中央付近には、図1または図2に示すように、凸条部11が形成されている。これにより、図5に示した前側アーチ22が形成され易くなる。
【0022】
底部2の外側には、図1または図4に示すように、山なりの凸部12が形成されている。これにより、図5に示した外側アーチが形成され易くする。
【0023】
このように、本発明の履物では、足を載置する底部のうち足の指が位置する部位付近に足の指を下方に向かって屈曲可能な深さに形成された足指配置用凹部が設けられているため履物を履いても足の指を下方に屈曲させるなどの動作を自在に行うことができる。また、底部のうち踵が載置される部位付近は足指配置用凹部より高く形成されると共に踵が配される踵配置用凹部を備えているため爪先側が低くなって前傾姿勢を保ちつつ履物内で踵部がずり落ちることがない。さらに、底部は外側が内側に比して高く形成されているため爪先側が外側に開かない。これらの3つの基本構造を採用することによって、理想的な歩行や姿勢が形成され次第に腰痛や膝痛も改善されていく。さらに、本発明の履物は、履物の底部裏面がフラットであること、底部のうち踵が載置される部位付近が最も高くなるように形成されていること、二番目に外側が高く形成され、三番目に内側を外側より低く形成し、足の指が載置される部位付近が最も低くなるように形成されることで指先が歩行時における最後の動作として地面を蹴る動作が可能に構成されていることなどにより、足全体を内側に傾斜させ、前傾姿勢でかつ足の指や筋肉を正しく使って歩行することができる。座った時にも足の指先を下方に屈曲できるので背筋が伸びた状態で座ることができ姿勢が矯正される。従来のように土踏まずが載置される部位付近に単に凸部を形成し見かけ上縦アーチを形成したものとは異なり、足の各部がその機能を十分に発揮できるように熟考されたものであり、使用し続けることで理想的な歩行が抵抗なく自然に身に付き、結果として腰痛、膝痛、身体の左右の歪みも解消されていくものである。
【0024】
また、底部のうち母子球付近が載置される部位に母子球配置用凹部が形成され、底部のうち長手方向中央付近に凸条部が形成され、底部の外側に山なりの凸部が形成されている。これら3つの構造が上記基本構造に付加されることにより3つのアーチが形成され易くなく、理想的な歩行や姿勢が形成され次第に腰痛や膝痛も改善されていく効果がより顕著なものとなる。
【0025】
また、甲当て9は、図1に示すように、基端辺部が底部2の内側縁部に固定され先端辺部に連結用金具9aを備えた内側帯状体9bと、基端辺部が底部2の外側縁部に固定され先端辺部が連結用金具9a内に挿入されることで内側帯状体9bと連結される外側帯状体9cとを有している。外側帯状体9cは先端辺部が連結用金具9a内に挿入された後、折り返されてマジックテープ(登録商標)などの貼着部材(図示しない)により長さ調整可能に構成されている。このような長さ調整可能な構造に甲当てを構成することにより、使用者に足の大きさに応じて甲を保持でき、履物に対してより適切な位置に足を配置固定することができる。
【0026】
つぎに、本発明の履物用中敷について説明する。
本発明の履物用中敷は、履物の底部上面に配置する板状体であって、該板状体が履物内に配されると、足の指が位置する部位付近に足の指を下方に向かって屈曲可能な深さを備えた足指配置用凹部が構成され、踵が載置される部位付近は前記足指配置用凹部より高くなると共に踵が配される踵配置用凹部が構成され、さらに、前記底部の外側が内側に比して高く構成されることを特徴とする履物用中敷である。
【0027】
具体的な実施例としては、例えば前述した履物1の底部2の構造において、足指配置用凹部4を含む足の指が位置する部位付近3(平面視略三日月形状の先端部)を削除し、かつ、履物の底として必要な肉厚としたもの(例えば図4において足指配置用凹部4の内底面と底部の裏面間の厚みを後端まで削除したもの)が挙げられる。この実施例における各部の構造およびその構造による作用効果は履物1と同様であるため説明を省略する。
【0028】
履物用中敷の他の実施例として、最上層の板状体と、この板状体の下層に設けられ中間層を構成する接着剤層と、接着剤層の下層に設けられ最下層を構成する剥離層とからなるものも、本発明の履物用中敷の範疇に包含される。なお、この実施例において板状体は履物の底部上面に配置される部位であり、接着剤層は板状体を履物の底部上面に接着するための部位であり、剥離層は接着剤層を使用時まで被覆するための部位である。
【0029】
また、履物用中敷は、スリッパ、運動靴や革靴などの靴一般、サンダルまたは草履などの底部上面に貼付して使用するものであり、板状体は例えばゴム材、合成樹脂、木材、紙材、発泡体などで形成することができる。接着剤層は履物の底部上面に接着して硬化し板状体が履物の底部上面から容易に剥がれない程度の接着強度を備えるものであればどのようなものでもよく、例えばエポキシ樹脂などが好適に使用できる。さらに、剥離層は、接着剤層を使用時まで硬化させることなく被覆可能であればどのようなものでもよく、例えば紙材、樹脂シートなどが好適に使用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 履物
2 底部
3 底部のうち足の指が位置する部位付近
4 足指配置用凹部
5 底部のうち踵が載置される部位付近
6 踵配置用凹部
7 底部の外側
8 底部の内側
9 甲当て
10 母子球配置用凹部
11 凸条部
12 山なりの凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を載置する底部のうち足の指が位置する部位付近に足の指を下方に向かって屈曲可能な深さに形成された足指配置用凹部が設けられており、前記底部のうち踵が載置される部位付近は前記足指配置用凹部より高く形成されると共に踵が配される踵配置用凹部を備え、さらに、前記底部は外側が内側に比して高く形成されていることを特徴とする履物。
【請求項2】
前記底部のうち母子球付近が載置される部位には母子球配置用凹部が形成されている請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記底部のうち長手方向に沿う中央付近には、凸条部が形成されている請求項1または2に記載の履物。
【請求項4】
前記底部の外側には山なりの凸部が形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の履物。
【請求項5】
履物の底部上面に配置する板状体であって、該板状体が履物内に配されると、足の指が位置する部位付近に足の指を下方に向かって屈曲可能な深さを備えた足指配置用凹部が構成され、踵が載置される部位付近は前記足指配置用凹部より高くなると共に踵が配される踵配置用凹部が構成され、さらに、前記底部の外側が内側に比して高く構成されることを特徴とする履物用中敷。
【請求項6】
前記板状体は、母子球付近が載置される部位に母子球配置用凹部を有している請求項5に記載の履物用中敷。
【請求項7】
前記板状体は、長手方向に沿う中央付近に凸条部を有している請求項5または6に記載の履物用中敷。
【請求項8】
前記板状体は、外側に山なりの凸部を有している請求項5ないし7のいずれかに記載の履物用中敷。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−264037(P2010−264037A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117096(P2009−117096)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(507159957)
【Fターム(参考)】