履物
【課題】外反母趾などによる出っ張り部分に対する圧迫を軽減しかつその軽減状態を維持することによって、常に円滑な歩行を実現する履物を提供する。
【解決手段】底部2と底部2上に設けられる甲被部3との間に足の出し入れが可能な空間Pが形成されて成る履物であり、前記甲被部3は、前記空間Pが拡縮するように幅方向へ伸縮可能に形成されるとともに、親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に伸縮性を有する生地が部分的に設けられて柔軟壁16が形成されている。前記甲被部3には甲被部3の伸び許容量を調整するためのベルト5が取り付けられている。
【解決手段】底部2と底部2上に設けられる甲被部3との間に足の出し入れが可能な空間Pが形成されて成る履物であり、前記甲被部3は、前記空間Pが拡縮するように幅方向へ伸縮可能に形成されるとともに、親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に伸縮性を有する生地が部分的に設けられて柔軟壁16が形成されている。前記甲被部3には甲被部3の伸び許容量を調整するためのベルト5が取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外反母趾、さらには内反小指のような足に障害をもつ人が履くのに好適なサンダルのような履物に関し、特に、痛みのある部位を圧迫することなく円滑な歩行を実現する履物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外反母趾のような足の障害をもつ人が増えている。外反母趾とは、一般に、親指が変形して小指の方へ曲がっている状態をいい、親指が身体の中心線に対して外反するので「外反母趾」と呼ばれている。外反母趾には複数のパターンがあり、例えば、足先の横アーチを支えている横中足靭帯が緩んで親指が小指側に曲がる靭帯性外反母趾、親指の付け根の骨(中足骨)の骨頭部が異常に出っ張って曲がったように見える仮骨性外反母趾、靭帯性外反母趾と仮骨性外反母趾とが併合した混合性外反母趾などがある。
【0003】
一方、内反小指は、足の薬指と小指との間の中足靭帯が緩んで小指の付け根の骨(中足骨)の骨頭部が外側に出っ張った状態をいい、小指が身体の中心線に対して内反するので「内反小指」と呼ばれている。内反小指は、単独で発症する場合もあるが、靭帯性外反母趾や混合性外反母趾などに伴って発生する場合が殆どである。
【0004】
外反母趾や内反小指のような障害があると、特に、出っ張った親指や小指の付け根(中足骨骨頭部に相当する部分)に痛みを伴うため、靴やサンダルなどを履くと、その出っ張り部分が甲被部により圧迫される結果、痛みが一層ひどくなり、円滑な歩行が困難となる。外反母趾などの障害を矯正するための靴、靴下、サポータなどが各種提案されているが、いずれも矯正を目的とするものであり、円滑な歩行を助けるものではない。
【0005】
一般にサンダルは、底部と底部上に設けられる甲被部との間に足の出し入れが可能な空間が形成されたものであるが、足の甲の形態は人によって異なることから、甲被部の大きさを甲の高さや幅などの形態に応じて調節することが可能なサンダルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このサンダルによると、外反母趾や内反小指によって親指や小指の中足骨骨頭部が外側に出っ張っていても、その出っ張り度合に応じて甲被部の大きさを調整できるので、出っ張り部分への圧迫を多少なりとも軽減することが可能である。
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3057779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、その種のサンダルを履いて歩行すると、足は底部と甲被部との間の空間へ次第に深く入り込むため、甲被部によって親指や小指の出っ張り部分が徐々に圧迫され、ついには痛みで歩行が困難となる。そこで、出っ張り部分の上に柔軟な布を当てて履物を履くようなことも行われているが、そのような当て布は歩行中に位置ずれし、却って円滑な歩行を阻害するおそれがある。
【0008】
この発明は、上記した問題に着目してなされたもので、外反母趾などによる出っ張り部分に対する圧迫を軽減しかつその状態を維持することによって、円滑な歩行を実現する履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による履物は、底部と底部上に設けられる甲被部との間に足の出し入れが可能な空間が形成されて成るものであり、前記甲被部は、前記空間が拡縮可能なように幅方向へ伸縮可能に形成されるとともに、親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に伸縮性を有する生地が部分的に設けられており、前記甲被部には甲被部の伸び許容量を調整するためのベルトが取り付けられている。
【0010】
上記した構成の履物を履くに際して、底部と甲被部との間の空間へ足を挿入し、親指の中足骨骨頭部が伸縮性を有する生地が設けられた部分に対応位置するようにベルトにより甲被部の伸び許容量を調整する。かくして、その履物を履いて歩行したとき、歩行中に足が底部と甲被部との間の空間へ次第に深く入り込むようなことがなく、親指の中足骨骨頭部に伸縮性を有する生地が設けられた部分が定位する。その結果、たとえ外反母趾によって親指の中足骨骨頭部が外側へ出っ張っていても、その出っ張り度合に応じて生地が伸びるので、甲被部が親指の出っ張り部分を圧迫することがなく、親指の付け根の痛みによって歩行が困難となるおそれもない。
【0011】
この発明による履物は、さらに、前記甲被部が小指の中足骨骨頭部に対応させる部分にも伸縮性を有する生地が部分的に設けられている。この実施態様によると、内反小指によって小指の中足骨骨頭部が外側に出っ張っていても、その出っ張り度合に応じて生地が伸びるので、甲被部が小指の出っ張り部分を圧迫することがなく、小指の付け根の痛みによって歩行が困難となるおそれもない。
【0012】
この発明の好ましい一実施態様においては、前記伸縮性を有する生地が設けられている部分は、非伸縮性の生地によって周囲が囲まれている。
この実施態様によると、非伸縮性の生地によって親指や小指の出っ張り部分の周囲が支えられるので、伸縮性を有する生地が親指や小指の出っ張り部分によってむやみに伸びることがなく、中足骨の変形を矯正する働きもある。
【0013】
伸縮性を有する生地を非伸縮性の生地によって周囲を囲むには種々の形態が考えられるが、外反母趾に対応させるには、前記甲被部の内側面の親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に二股状の非伸縮性の生地を設けるとともに、前記非伸縮性の生地の二股部分の内側領域に前記伸縮性を有する生地を設けるようにする。
【0014】
また、外反母趾と内反小指との両方に対応させるには、前記甲被部の内側面の親指の中足骨骨頭部に対応させる部分と外側面の小指の中足骨骨頭部に対応させる部分とに二股状の非伸縮性の生地を設けるとともに、それぞれの非伸縮性の生地の二股部分の内側領域に前記伸縮性を有する生地を設けるようにする。
【0015】
この発明の好ましい実施態様においては、前記伸縮性を有する生地として、ポリウレタン弾性繊維を用いて形成されたものを用いるが、伸縮性を有する柔軟な生地であれば、これに限られるものではない。
【0016】
前記ベルトは、伸縮性を有する生地が設けられている部分に対応する位置に取り付けるのが望ましいが、その位置に限定されるものではない。伸縮性を有する生地が設けられている部分にベルトを取り付ければ、ベルトによって親指や小指の出っ張り部分が伸縮性を有する生地が設けられている部分にしっかりと位置決め固定される。
【0017】
前記ベルトには種々の形態が考えられるが、その一は、帯状の締付片と環状の留め金具とから成るものであって、前記締付片の表面には、締付片を前記留め金具を通して折り返したときの対向位置に、面ファスナの雄部と雌部とが装着されている。
この実施態様のベルトによると、面ファスナの雄部と雌部との噛み合わせ位置を変えるだけで、甲被部の伸び許容量を簡単に調整できる。
【0018】
この発明のさらに好ましい実施態様においては、前記甲被部の内側面および外側面の後端部間に、足の踵の後面に引っ掛けられる伸縮可能な後部ベルトがさらに取り付けられている。この実施態様によると、底部と甲被部との空間より足が抜けるのが防止される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によると、親指の中足骨骨頭部、さらには小指の中足骨骨頭部に対応させる部分に伸縮性を有する生地を部分的に設けているので、外反母趾や内反小指によって中足骨骨頭部が出っ張っていても、その中足骨骨頭部の出っ張り部分が圧迫されることがなく、その出っ張り部分の痛みを軽減できる。しかも、歩行中に底部と甲被部との間の空間へ足が次第に深く入り込むことがなく、親指や小指の中足骨骨頭部が伸縮性を有する生地が設けられた部分に定位するので、出っ張り部分が圧迫されない状態を維持でき、常に円滑な歩行を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1および図2は、この発明の一実施例であるサンダル1の外観を示す。なお、図示のサンダル1は右足用であるが、左足用についても同様の構成であり、ここでは図示並びに説明を省略する。
図示例のサンダル1は、外反足の矯正に有効な構成のもので、足裏を支持する底部2と、底部2上に設けられた甲被部3とから成り、底部2と甲被部3との間に足の出し入れが可能な空間Pが形成されている。甲被部3は、足の甲を固定するためのもので、非伸縮性の生地により形成されており、足の甲を内側面から上面にかけて覆う内被部3Aと、足の甲を外側面から上面にかけて覆う外被部3Bとを含んでいる。なお、図1において、35は内被部3Aのほぼ長さ中央部に形成されている通気のための開口部である。
【0021】
前記外被部3Bの前後の各位置には、図3および図4に示すように、先端に向けて細くなっている舌状片30,31がそれぞれ突設されている。前記内被部3Aの内部には、各舌状片30,31の挿脱が可能な入口32,33を有する中空部34が形成されている。各舌状片30,31の先端部には伸縮可能な帯状の弾性部材4,4の一端が接続され、各弾性部材4の他端が内被部3Aの中空部34の奥の位置に固定されている。このように内被部3Aと外被部3Bとが前後二カ所で弾性部材4,4を介して連結されることにより、足の大きさに応じて前記空間Pが拡縮するように甲被部3が幅方向へ伸縮する。
【0022】
なお、図2は弾性部材4,4の引っ張り力に抗して各舌状片30,31を引き出した状態を示している。また、図3および図4は、弾性部材4,4の引っ張り力が各舌状片30,31に作用して各舌状片30,31の先端部が中空部34に引き入れられた状態を示している。なお、図4において、一点鎖線は底部2上の甲被部3内の空間Pに足が挿入されたときの伸びた状態を示す。
【0023】
前記甲被部3は、図1に示されるように、内被部3Aの前寄りの位置、すなわち、前記開口部35の前方位置に、伸縮性を有する生地を用いて形成された第1の柔軟壁16を備えるとともに、図5に示すように、外被部3Bの前寄りの位置、すなわち、前側の舌状片30の基端部位置に、同じ伸縮性を有する生地を用いて形成された第2の柔軟壁17を備えている。
【0024】
図6は、第1、第2の各柔軟壁16,17の構造を示している。
同図中、51は前記内被部3Aや外被部3Bを構成する非伸縮性の生地50を切り欠いて形成された開口部であり、この開口部51に沿って二股状に裁断された非伸縮性の生地52が当てられ、その生地52の外周縁に沿って生地50,52間を糸18で縫い付けることにより二股状部14,15が形成されている。上下の非伸縮性の生地50,52の内周縁間には伸縮性を有する生地53の外周縁が挿入され、前記二股状部14,15を構成する生地52の内周縁に沿って生地50,52,53間を糸19で一体に縫い付けることにより各柔軟壁16,17が形成されている。前記伸縮性を有する生地53はポリウレタン弾性繊維を用いて形成されるが、伸縮性を有する柔軟な生地であれば、これに限られるものではない。
【0025】
図7は、サンダル1の底部2上に支持される足100の位置を示している。
同図中、点線の部分は第1、第2の各柔軟壁16,17が設けられる領域であり、第1の柔軟壁16は親指101の中足骨骨頭部102の位置に、第2の柔軟壁17は小指103の中足骨骨頭部104の位置に、それぞれに対応している。
【0026】
サンダル1の底部2と甲被部3との間の空間Pに足100を挿入したとき、親指101の中足骨骨頭部102が第1の柔軟壁16に、小指103の中足骨骨頭部104が第2の柔軟壁17に、それぞれ当たるように、内外の二股状部14,15の上端部間には、甲被部3の伸び許容量を調整するためのベルト5が取り付けられている。
前記ベルト5は、外被部3Bの二股状部15の上端位置に取り付けられた帯状の締付片7と、内被部3Aの二股状部14の上端位置に取り付けられた環状の留め金具8とから成るもので、前記留め金具8は前記締付片7を通すことが可能な大きさに形成されている。
【0027】
前記締付片7の上面には基端部に面ファスナ9のループ状の雌部が、先端部に面ファスナ9の鉤状の雄部が、それぞれ装着されている。締付片7を留め金具8に通して折り返し、面ファスナ9の雄部と雌部とを適所で噛み合わせて止着することにより、締付片7によって甲被部3の前部が固定され、かつ舌状片30に接続された弾性部材4の伸び許容量が設定される。
【0028】
内被部3Aおよび外被部3Bの後端部間には、伸縮性を有する後部ベルト13の両端部が取り外し可能なように釦止めされている。この後部ベルト13を足の踵の後面に引っ掛けることにより甲被部3からの足の抜けが防止される。
【0029】
図8は、上記したサンダル1の底部2の構成を示すもので、アウトソール20とミッドソール22とインナーソール21とを上下に積層して形成されている。
前記ミッドソール22は、クッション性を有するソール本体23と、このソール本体23の踵部の下面に設けられる傾斜板24とで構成されている。前記傾斜板24は、ソール本体23より硬いクッション材により形成され、ソール本体23の踵部の下面に接着剤により接合されている。この実施例では、ソール本体23と傾斜板24とは硬さが異なるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のような多孔質樹脂を用いて形成されている。
【0030】
前記傾斜板24の上面には、図9に示すように、外側へ低く傾斜する傾斜面24aが形成されており、一方、前記ソール本体23の踵部の下面には前記傾斜板24の傾斜面24aに沿う傾斜面23aが形成されている。傾斜板24の傾斜面24aとソール本体23の傾斜面23aとは重ねられ、両者は接着剤によって一体接合される。
【0031】
前記傾斜板24の傾斜面24aは水平面hに対する傾斜角度θが2〜9度に設定されるもので、この実施例では前記傾斜角度θを傾斜板24の全長にわたってほぼ7度に設定している。また、この実施例の傾斜板24は、その厚みを後端側が厚く、前端側にかけて次第に薄くなるように形成することにより、前端縁に生じる段差を小さくし、また、前足部に対して踵部が高くなるように、底部2をヒールアップしている。
【0032】
上記したミッドソール22のソール本体23の上面は凹面状になっており、この凹面上にインナーソール21が接合支持されている。
前記インナーソール21は、シリコンやポリプロピレンを原料にした低反発弾性体により形成され、表面全体がメッシュ地26により被覆されている。このインナーソール21の踵部の上面には、足の踵を支持する凹部21aが形成されている。この凹部21aは、図10に示すように、平面形状が略矩形状であり、全体が略同一深さに設定されている。凹部21a内にはインナーソール21より柔軟な踵支持板25が嵌め込んで接合してあり、踵支持板25の表面がソール本体23の表面よりわずかに突出している。前記踵支持板25は、インナーソール21と同じ低反発素材を用いて構成してもよいが、ポリウレタン樹脂を組成とした発泡体、すなわち、低反発弾性ウレタンフォームを用いて構成することもできる。
なお、凹部21aには必ずしも踵支持板25を装着する必要はないが、踵支持板25を用いない場合は、凹部21aの開口縁や底周縁は曲面状に形成するのが望ましい。
【0033】
前記インナーソール21の前足部の上面には、足の中足骨骨頭部が当たる位置に、面状に盛り上がる凸部21bが形成されている。この凸部21bは、底部2のヒールアップに伴って発生する足の中足骨骨頭部にかかる負担を軽減するために形成されている。
【0034】
図11は、底部2を裏面側より見た図であり、アウトソール20の構成を示している。
図示例のアウトソール20は、ミッドソール22の裏面に接合された複数枚(図示例では4枚)の接地板27A〜27Dにより構成されている。各接地板27A〜27Dは、例えばSBR(スチレン・ブタジエンゴム)などのゴム配合物またはエラストマー配合物により形成され、表面には滑り止めのための切り溝28や溝状または突状の模様40が形成されている。
前記ミッドソール22のソール本体23の裏面には、各接地板27A〜27Dの境界部分に、底部2が屈曲し易いように、V字状の溝29が斜め方向に形成されている。
【0035】
上記した構成のサンダル1を履くとき、底部2上の甲被部3内の空間Pに足を差し入れると、足の甲の形態に応じた長さだけ前後位置の弾性部材4,4が伸びる。この伸び量だけ内被部3Aの中空部34より外被部3Bの各舌状片30,31が抜け出るので、内被部3Aと外被部3Bとの間の空間Pが拡開し、甲被部3が足の甲の高さおよび幅に応じた長さとなる。この状態において、親指101の中足骨骨頭部102が伸縮性を有する生地53が設けられた第1の柔軟壁16に、小指103の中足骨骨頭部104が伸縮性を有する生地53が設けられた第2の柔軟壁17に、それぞれ対応位置するようにベルト5を締めて甲被部3を固定する。
【0036】
かくして、サンダル1を履いて歩行したとき、歩行中に足100が底部2と甲被部3との間の空間Pへ次第に深く入り込むようなことがなく、親指101の中足骨骨頭部102上に伸縮性を有する生地53が設けられた第1の柔軟壁16が定位し、また、小指103の中足骨骨頭部104上に伸縮性を有する生地53が設けられた第2の柔軟壁17が定位する。その結果、たとえ外反母趾や内反小指によって親指101や小指103の中足骨骨頭部102,104が外側へ出っ張っていても、その出っ張り度合に応じて生地53が伸びるので、甲被部3が親指や小指の出っ張り部分を圧迫することがなく、親指や小指の付け根の痛みによって歩行が困難となるおそれもない。
【0037】
しかも、二股状部14,15を構成する非伸縮性の生地52によって親指101や小指103の出っ張り部分の周囲が支えられるので、伸縮性を有する生地53が親指101や小指103の出っ張り部分によってむやみに伸びることがなく、中足骨の変形を矯正する働きもある。
【0038】
また、サンダル1を履いた状態では、前後位置において弾性部材4の復元力が外被部3Bに作用して内被部3Aに向けて引っ張るので、足の甲は甲被部3によって加圧状態で保持されるものの、甲被部3は拡縮可能であるので、圧迫感がなく、快適な履き心地が得られる。また、甲被部3に無理な力が掛かっても、弾性部材4が伸びるので、甲被部3が外れてサンダルが脱落するなどのおそれはない。さらに、ベルト5により弾性部材4の伸び許容量が設定されているので、必要以上に弾性部材4が伸びて甲被部3が拡開することもなく、サンダル1が脱げて歩行に支障をきたすこともない。
【0039】
また、足が底部2上に固定されたとき、足の踵はインナーソール21の踵部に設けられた踵支持板25上に支持される。踵支持板25は足の荷重により踵の形状に沿って凹部21a内で圧縮変形するので、踵は凹部21a内に嵌まった状態で安定支持される。
足の荷重はインナーソール21およびミッドソール22のソール本体23を圧縮変形させ、傾斜板24の傾斜面24aに作用する。傾斜板24の上面は外側へ低く傾斜する傾斜面24aになっているので、図9に示すように、荷重に対する傾斜面24aからの抗力Nの外向きの水平分力Nxが外反足を矯正する力として作用するとともに、オーバープロネーション(超外反運動)の発生を抑制する。
【0040】
また、前記底部2は、前足部に対して踵部がヒールアップされているので、外反足によるアキレス腱や腓腹筋などの下腿部の負担が取り除かれる。さらに、インナーソール21の前足部の上面には、足の中足骨骨頭部が当たる位置に、面状に盛り上がる凸部21bが形成されているので、ヒールアップに伴う代償として発生する中足骨骨頭部の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明にかかるサンダルの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のサンダルを前方より見た斜視図である。
【図3】サンダルの甲被部を拡大して示す平面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】外被部における第2の柔軟壁の構成を示す拡大図である。
【図6】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図7】サンダルの底部上に支持される足の位置を示す平面図である。
【図8】底部の縦断面図である。
【図9】図8のC−C線に沿う底部の断面図である。
【図10】図1のサンダルのインナーソールの平面図である。
【図11】図1のサンダルのアウトソールの底面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 サンダル
2 底部
3 甲被部
3A 内被部
3B 外被部
5 ベルト
14,15 二股状部
16,17 柔軟壁
52 非伸縮性の生地
53 伸縮性を有する生地
【技術分野】
【0001】
この発明は、外反母趾、さらには内反小指のような足に障害をもつ人が履くのに好適なサンダルのような履物に関し、特に、痛みのある部位を圧迫することなく円滑な歩行を実現する履物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外反母趾のような足の障害をもつ人が増えている。外反母趾とは、一般に、親指が変形して小指の方へ曲がっている状態をいい、親指が身体の中心線に対して外反するので「外反母趾」と呼ばれている。外反母趾には複数のパターンがあり、例えば、足先の横アーチを支えている横中足靭帯が緩んで親指が小指側に曲がる靭帯性外反母趾、親指の付け根の骨(中足骨)の骨頭部が異常に出っ張って曲がったように見える仮骨性外反母趾、靭帯性外反母趾と仮骨性外反母趾とが併合した混合性外反母趾などがある。
【0003】
一方、内反小指は、足の薬指と小指との間の中足靭帯が緩んで小指の付け根の骨(中足骨)の骨頭部が外側に出っ張った状態をいい、小指が身体の中心線に対して内反するので「内反小指」と呼ばれている。内反小指は、単独で発症する場合もあるが、靭帯性外反母趾や混合性外反母趾などに伴って発生する場合が殆どである。
【0004】
外反母趾や内反小指のような障害があると、特に、出っ張った親指や小指の付け根(中足骨骨頭部に相当する部分)に痛みを伴うため、靴やサンダルなどを履くと、その出っ張り部分が甲被部により圧迫される結果、痛みが一層ひどくなり、円滑な歩行が困難となる。外反母趾などの障害を矯正するための靴、靴下、サポータなどが各種提案されているが、いずれも矯正を目的とするものであり、円滑な歩行を助けるものではない。
【0005】
一般にサンダルは、底部と底部上に設けられる甲被部との間に足の出し入れが可能な空間が形成されたものであるが、足の甲の形態は人によって異なることから、甲被部の大きさを甲の高さや幅などの形態に応じて調節することが可能なサンダルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このサンダルによると、外反母趾や内反小指によって親指や小指の中足骨骨頭部が外側に出っ張っていても、その出っ張り度合に応じて甲被部の大きさを調整できるので、出っ張り部分への圧迫を多少なりとも軽減することが可能である。
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3057779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、その種のサンダルを履いて歩行すると、足は底部と甲被部との間の空間へ次第に深く入り込むため、甲被部によって親指や小指の出っ張り部分が徐々に圧迫され、ついには痛みで歩行が困難となる。そこで、出っ張り部分の上に柔軟な布を当てて履物を履くようなことも行われているが、そのような当て布は歩行中に位置ずれし、却って円滑な歩行を阻害するおそれがある。
【0008】
この発明は、上記した問題に着目してなされたもので、外反母趾などによる出っ張り部分に対する圧迫を軽減しかつその状態を維持することによって、円滑な歩行を実現する履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による履物は、底部と底部上に設けられる甲被部との間に足の出し入れが可能な空間が形成されて成るものであり、前記甲被部は、前記空間が拡縮可能なように幅方向へ伸縮可能に形成されるとともに、親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に伸縮性を有する生地が部分的に設けられており、前記甲被部には甲被部の伸び許容量を調整するためのベルトが取り付けられている。
【0010】
上記した構成の履物を履くに際して、底部と甲被部との間の空間へ足を挿入し、親指の中足骨骨頭部が伸縮性を有する生地が設けられた部分に対応位置するようにベルトにより甲被部の伸び許容量を調整する。かくして、その履物を履いて歩行したとき、歩行中に足が底部と甲被部との間の空間へ次第に深く入り込むようなことがなく、親指の中足骨骨頭部に伸縮性を有する生地が設けられた部分が定位する。その結果、たとえ外反母趾によって親指の中足骨骨頭部が外側へ出っ張っていても、その出っ張り度合に応じて生地が伸びるので、甲被部が親指の出っ張り部分を圧迫することがなく、親指の付け根の痛みによって歩行が困難となるおそれもない。
【0011】
この発明による履物は、さらに、前記甲被部が小指の中足骨骨頭部に対応させる部分にも伸縮性を有する生地が部分的に設けられている。この実施態様によると、内反小指によって小指の中足骨骨頭部が外側に出っ張っていても、その出っ張り度合に応じて生地が伸びるので、甲被部が小指の出っ張り部分を圧迫することがなく、小指の付け根の痛みによって歩行が困難となるおそれもない。
【0012】
この発明の好ましい一実施態様においては、前記伸縮性を有する生地が設けられている部分は、非伸縮性の生地によって周囲が囲まれている。
この実施態様によると、非伸縮性の生地によって親指や小指の出っ張り部分の周囲が支えられるので、伸縮性を有する生地が親指や小指の出っ張り部分によってむやみに伸びることがなく、中足骨の変形を矯正する働きもある。
【0013】
伸縮性を有する生地を非伸縮性の生地によって周囲を囲むには種々の形態が考えられるが、外反母趾に対応させるには、前記甲被部の内側面の親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に二股状の非伸縮性の生地を設けるとともに、前記非伸縮性の生地の二股部分の内側領域に前記伸縮性を有する生地を設けるようにする。
【0014】
また、外反母趾と内反小指との両方に対応させるには、前記甲被部の内側面の親指の中足骨骨頭部に対応させる部分と外側面の小指の中足骨骨頭部に対応させる部分とに二股状の非伸縮性の生地を設けるとともに、それぞれの非伸縮性の生地の二股部分の内側領域に前記伸縮性を有する生地を設けるようにする。
【0015】
この発明の好ましい実施態様においては、前記伸縮性を有する生地として、ポリウレタン弾性繊維を用いて形成されたものを用いるが、伸縮性を有する柔軟な生地であれば、これに限られるものではない。
【0016】
前記ベルトは、伸縮性を有する生地が設けられている部分に対応する位置に取り付けるのが望ましいが、その位置に限定されるものではない。伸縮性を有する生地が設けられている部分にベルトを取り付ければ、ベルトによって親指や小指の出っ張り部分が伸縮性を有する生地が設けられている部分にしっかりと位置決め固定される。
【0017】
前記ベルトには種々の形態が考えられるが、その一は、帯状の締付片と環状の留め金具とから成るものであって、前記締付片の表面には、締付片を前記留め金具を通して折り返したときの対向位置に、面ファスナの雄部と雌部とが装着されている。
この実施態様のベルトによると、面ファスナの雄部と雌部との噛み合わせ位置を変えるだけで、甲被部の伸び許容量を簡単に調整できる。
【0018】
この発明のさらに好ましい実施態様においては、前記甲被部の内側面および外側面の後端部間に、足の踵の後面に引っ掛けられる伸縮可能な後部ベルトがさらに取り付けられている。この実施態様によると、底部と甲被部との空間より足が抜けるのが防止される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によると、親指の中足骨骨頭部、さらには小指の中足骨骨頭部に対応させる部分に伸縮性を有する生地を部分的に設けているので、外反母趾や内反小指によって中足骨骨頭部が出っ張っていても、その中足骨骨頭部の出っ張り部分が圧迫されることがなく、その出っ張り部分の痛みを軽減できる。しかも、歩行中に底部と甲被部との間の空間へ足が次第に深く入り込むことがなく、親指や小指の中足骨骨頭部が伸縮性を有する生地が設けられた部分に定位するので、出っ張り部分が圧迫されない状態を維持でき、常に円滑な歩行を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1および図2は、この発明の一実施例であるサンダル1の外観を示す。なお、図示のサンダル1は右足用であるが、左足用についても同様の構成であり、ここでは図示並びに説明を省略する。
図示例のサンダル1は、外反足の矯正に有効な構成のもので、足裏を支持する底部2と、底部2上に設けられた甲被部3とから成り、底部2と甲被部3との間に足の出し入れが可能な空間Pが形成されている。甲被部3は、足の甲を固定するためのもので、非伸縮性の生地により形成されており、足の甲を内側面から上面にかけて覆う内被部3Aと、足の甲を外側面から上面にかけて覆う外被部3Bとを含んでいる。なお、図1において、35は内被部3Aのほぼ長さ中央部に形成されている通気のための開口部である。
【0021】
前記外被部3Bの前後の各位置には、図3および図4に示すように、先端に向けて細くなっている舌状片30,31がそれぞれ突設されている。前記内被部3Aの内部には、各舌状片30,31の挿脱が可能な入口32,33を有する中空部34が形成されている。各舌状片30,31の先端部には伸縮可能な帯状の弾性部材4,4の一端が接続され、各弾性部材4の他端が内被部3Aの中空部34の奥の位置に固定されている。このように内被部3Aと外被部3Bとが前後二カ所で弾性部材4,4を介して連結されることにより、足の大きさに応じて前記空間Pが拡縮するように甲被部3が幅方向へ伸縮する。
【0022】
なお、図2は弾性部材4,4の引っ張り力に抗して各舌状片30,31を引き出した状態を示している。また、図3および図4は、弾性部材4,4の引っ張り力が各舌状片30,31に作用して各舌状片30,31の先端部が中空部34に引き入れられた状態を示している。なお、図4において、一点鎖線は底部2上の甲被部3内の空間Pに足が挿入されたときの伸びた状態を示す。
【0023】
前記甲被部3は、図1に示されるように、内被部3Aの前寄りの位置、すなわち、前記開口部35の前方位置に、伸縮性を有する生地を用いて形成された第1の柔軟壁16を備えるとともに、図5に示すように、外被部3Bの前寄りの位置、すなわち、前側の舌状片30の基端部位置に、同じ伸縮性を有する生地を用いて形成された第2の柔軟壁17を備えている。
【0024】
図6は、第1、第2の各柔軟壁16,17の構造を示している。
同図中、51は前記内被部3Aや外被部3Bを構成する非伸縮性の生地50を切り欠いて形成された開口部であり、この開口部51に沿って二股状に裁断された非伸縮性の生地52が当てられ、その生地52の外周縁に沿って生地50,52間を糸18で縫い付けることにより二股状部14,15が形成されている。上下の非伸縮性の生地50,52の内周縁間には伸縮性を有する生地53の外周縁が挿入され、前記二股状部14,15を構成する生地52の内周縁に沿って生地50,52,53間を糸19で一体に縫い付けることにより各柔軟壁16,17が形成されている。前記伸縮性を有する生地53はポリウレタン弾性繊維を用いて形成されるが、伸縮性を有する柔軟な生地であれば、これに限られるものではない。
【0025】
図7は、サンダル1の底部2上に支持される足100の位置を示している。
同図中、点線の部分は第1、第2の各柔軟壁16,17が設けられる領域であり、第1の柔軟壁16は親指101の中足骨骨頭部102の位置に、第2の柔軟壁17は小指103の中足骨骨頭部104の位置に、それぞれに対応している。
【0026】
サンダル1の底部2と甲被部3との間の空間Pに足100を挿入したとき、親指101の中足骨骨頭部102が第1の柔軟壁16に、小指103の中足骨骨頭部104が第2の柔軟壁17に、それぞれ当たるように、内外の二股状部14,15の上端部間には、甲被部3の伸び許容量を調整するためのベルト5が取り付けられている。
前記ベルト5は、外被部3Bの二股状部15の上端位置に取り付けられた帯状の締付片7と、内被部3Aの二股状部14の上端位置に取り付けられた環状の留め金具8とから成るもので、前記留め金具8は前記締付片7を通すことが可能な大きさに形成されている。
【0027】
前記締付片7の上面には基端部に面ファスナ9のループ状の雌部が、先端部に面ファスナ9の鉤状の雄部が、それぞれ装着されている。締付片7を留め金具8に通して折り返し、面ファスナ9の雄部と雌部とを適所で噛み合わせて止着することにより、締付片7によって甲被部3の前部が固定され、かつ舌状片30に接続された弾性部材4の伸び許容量が設定される。
【0028】
内被部3Aおよび外被部3Bの後端部間には、伸縮性を有する後部ベルト13の両端部が取り外し可能なように釦止めされている。この後部ベルト13を足の踵の後面に引っ掛けることにより甲被部3からの足の抜けが防止される。
【0029】
図8は、上記したサンダル1の底部2の構成を示すもので、アウトソール20とミッドソール22とインナーソール21とを上下に積層して形成されている。
前記ミッドソール22は、クッション性を有するソール本体23と、このソール本体23の踵部の下面に設けられる傾斜板24とで構成されている。前記傾斜板24は、ソール本体23より硬いクッション材により形成され、ソール本体23の踵部の下面に接着剤により接合されている。この実施例では、ソール本体23と傾斜板24とは硬さが異なるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のような多孔質樹脂を用いて形成されている。
【0030】
前記傾斜板24の上面には、図9に示すように、外側へ低く傾斜する傾斜面24aが形成されており、一方、前記ソール本体23の踵部の下面には前記傾斜板24の傾斜面24aに沿う傾斜面23aが形成されている。傾斜板24の傾斜面24aとソール本体23の傾斜面23aとは重ねられ、両者は接着剤によって一体接合される。
【0031】
前記傾斜板24の傾斜面24aは水平面hに対する傾斜角度θが2〜9度に設定されるもので、この実施例では前記傾斜角度θを傾斜板24の全長にわたってほぼ7度に設定している。また、この実施例の傾斜板24は、その厚みを後端側が厚く、前端側にかけて次第に薄くなるように形成することにより、前端縁に生じる段差を小さくし、また、前足部に対して踵部が高くなるように、底部2をヒールアップしている。
【0032】
上記したミッドソール22のソール本体23の上面は凹面状になっており、この凹面上にインナーソール21が接合支持されている。
前記インナーソール21は、シリコンやポリプロピレンを原料にした低反発弾性体により形成され、表面全体がメッシュ地26により被覆されている。このインナーソール21の踵部の上面には、足の踵を支持する凹部21aが形成されている。この凹部21aは、図10に示すように、平面形状が略矩形状であり、全体が略同一深さに設定されている。凹部21a内にはインナーソール21より柔軟な踵支持板25が嵌め込んで接合してあり、踵支持板25の表面がソール本体23の表面よりわずかに突出している。前記踵支持板25は、インナーソール21と同じ低反発素材を用いて構成してもよいが、ポリウレタン樹脂を組成とした発泡体、すなわち、低反発弾性ウレタンフォームを用いて構成することもできる。
なお、凹部21aには必ずしも踵支持板25を装着する必要はないが、踵支持板25を用いない場合は、凹部21aの開口縁や底周縁は曲面状に形成するのが望ましい。
【0033】
前記インナーソール21の前足部の上面には、足の中足骨骨頭部が当たる位置に、面状に盛り上がる凸部21bが形成されている。この凸部21bは、底部2のヒールアップに伴って発生する足の中足骨骨頭部にかかる負担を軽減するために形成されている。
【0034】
図11は、底部2を裏面側より見た図であり、アウトソール20の構成を示している。
図示例のアウトソール20は、ミッドソール22の裏面に接合された複数枚(図示例では4枚)の接地板27A〜27Dにより構成されている。各接地板27A〜27Dは、例えばSBR(スチレン・ブタジエンゴム)などのゴム配合物またはエラストマー配合物により形成され、表面には滑り止めのための切り溝28や溝状または突状の模様40が形成されている。
前記ミッドソール22のソール本体23の裏面には、各接地板27A〜27Dの境界部分に、底部2が屈曲し易いように、V字状の溝29が斜め方向に形成されている。
【0035】
上記した構成のサンダル1を履くとき、底部2上の甲被部3内の空間Pに足を差し入れると、足の甲の形態に応じた長さだけ前後位置の弾性部材4,4が伸びる。この伸び量だけ内被部3Aの中空部34より外被部3Bの各舌状片30,31が抜け出るので、内被部3Aと外被部3Bとの間の空間Pが拡開し、甲被部3が足の甲の高さおよび幅に応じた長さとなる。この状態において、親指101の中足骨骨頭部102が伸縮性を有する生地53が設けられた第1の柔軟壁16に、小指103の中足骨骨頭部104が伸縮性を有する生地53が設けられた第2の柔軟壁17に、それぞれ対応位置するようにベルト5を締めて甲被部3を固定する。
【0036】
かくして、サンダル1を履いて歩行したとき、歩行中に足100が底部2と甲被部3との間の空間Pへ次第に深く入り込むようなことがなく、親指101の中足骨骨頭部102上に伸縮性を有する生地53が設けられた第1の柔軟壁16が定位し、また、小指103の中足骨骨頭部104上に伸縮性を有する生地53が設けられた第2の柔軟壁17が定位する。その結果、たとえ外反母趾や内反小指によって親指101や小指103の中足骨骨頭部102,104が外側へ出っ張っていても、その出っ張り度合に応じて生地53が伸びるので、甲被部3が親指や小指の出っ張り部分を圧迫することがなく、親指や小指の付け根の痛みによって歩行が困難となるおそれもない。
【0037】
しかも、二股状部14,15を構成する非伸縮性の生地52によって親指101や小指103の出っ張り部分の周囲が支えられるので、伸縮性を有する生地53が親指101や小指103の出っ張り部分によってむやみに伸びることがなく、中足骨の変形を矯正する働きもある。
【0038】
また、サンダル1を履いた状態では、前後位置において弾性部材4の復元力が外被部3Bに作用して内被部3Aに向けて引っ張るので、足の甲は甲被部3によって加圧状態で保持されるものの、甲被部3は拡縮可能であるので、圧迫感がなく、快適な履き心地が得られる。また、甲被部3に無理な力が掛かっても、弾性部材4が伸びるので、甲被部3が外れてサンダルが脱落するなどのおそれはない。さらに、ベルト5により弾性部材4の伸び許容量が設定されているので、必要以上に弾性部材4が伸びて甲被部3が拡開することもなく、サンダル1が脱げて歩行に支障をきたすこともない。
【0039】
また、足が底部2上に固定されたとき、足の踵はインナーソール21の踵部に設けられた踵支持板25上に支持される。踵支持板25は足の荷重により踵の形状に沿って凹部21a内で圧縮変形するので、踵は凹部21a内に嵌まった状態で安定支持される。
足の荷重はインナーソール21およびミッドソール22のソール本体23を圧縮変形させ、傾斜板24の傾斜面24aに作用する。傾斜板24の上面は外側へ低く傾斜する傾斜面24aになっているので、図9に示すように、荷重に対する傾斜面24aからの抗力Nの外向きの水平分力Nxが外反足を矯正する力として作用するとともに、オーバープロネーション(超外反運動)の発生を抑制する。
【0040】
また、前記底部2は、前足部に対して踵部がヒールアップされているので、外反足によるアキレス腱や腓腹筋などの下腿部の負担が取り除かれる。さらに、インナーソール21の前足部の上面には、足の中足骨骨頭部が当たる位置に、面状に盛り上がる凸部21bが形成されているので、ヒールアップに伴う代償として発生する中足骨骨頭部の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明にかかるサンダルの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のサンダルを前方より見た斜視図である。
【図3】サンダルの甲被部を拡大して示す平面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】外被部における第2の柔軟壁の構成を示す拡大図である。
【図6】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図7】サンダルの底部上に支持される足の位置を示す平面図である。
【図8】底部の縦断面図である。
【図9】図8のC−C線に沿う底部の断面図である。
【図10】図1のサンダルのインナーソールの平面図である。
【図11】図1のサンダルのアウトソールの底面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 サンダル
2 底部
3 甲被部
3A 内被部
3B 外被部
5 ベルト
14,15 二股状部
16,17 柔軟壁
52 非伸縮性の生地
53 伸縮性を有する生地
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と底部上に設けられる甲被部との間に足の出し入れが可能な空間が形成されて成る履物において、前記甲被部は、前記空間が拡縮可能なように幅方向へ伸縮可能に形成されるとともに、親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に伸縮性を有する生地が部分的に設けられており、前記甲被部には甲被部の伸び許容量を調整するためのベルトが取り付けられて成る履物。
【請求項2】
請求項1に記載された履物であって、前記甲被部は、さらに小指の中足骨骨頭部に対応させる部分にも伸縮性を有する生地が部分的に設けられて成る履物。
【請求項3】
前記伸縮性を有する生地が設けられている部分は、非伸縮性の生地によって周囲が囲まれている請求項1または2に記載された履物。
【請求項4】
前記甲被部は、内側面の親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に二股状の非伸縮性の生地が設けられるとともに、前記非伸縮性の生地の二股部分の内側領域に前記伸縮性を有する生地が設けられて成る請求項1に記載された履物。
【請求項5】
前記甲被部は、内側面の親指の中足骨骨頭部に対応させる部分と外側面の小指の中足骨骨頭部に対応させる部分とに二股状の非伸縮性の生地が設けられるとともに、それぞれの非伸縮性の生地の二股部分の内側領域に前記伸縮性を有する生地が設けられて成る請求項2に記載された履物。
【請求項6】
前記伸縮性を有する生地は、ポリウレタン弾性繊維を用いて形成されたものである請求項1〜5のいずれかに記載された履物。
【請求項7】
前記ベルトは、伸縮性を有する生地が設けられている部分に対応する位置に取り付けられている請求項1または2に記載された履物。
【請求項8】
前記ベルトは、帯状の締付片と環状の留め金具とから成り、前記締付片の表面には、締付片を前記留め金具を通して折り返したときの対向位置に、面ファスナの雄部と雌部とが装着されている請求項1,2,7のいずれかに記載された履物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載された履物であって、前記甲被部の内側面および外側面の後端部間に、足の踵の後面に引っ掛けられる伸縮性を有する後部ベルトがさらに取り付けられて成る履物。
【請求項1】
底部と底部上に設けられる甲被部との間に足の出し入れが可能な空間が形成されて成る履物において、前記甲被部は、前記空間が拡縮可能なように幅方向へ伸縮可能に形成されるとともに、親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に伸縮性を有する生地が部分的に設けられており、前記甲被部には甲被部の伸び許容量を調整するためのベルトが取り付けられて成る履物。
【請求項2】
請求項1に記載された履物であって、前記甲被部は、さらに小指の中足骨骨頭部に対応させる部分にも伸縮性を有する生地が部分的に設けられて成る履物。
【請求項3】
前記伸縮性を有する生地が設けられている部分は、非伸縮性の生地によって周囲が囲まれている請求項1または2に記載された履物。
【請求項4】
前記甲被部は、内側面の親指の中足骨骨頭部に対応させる部分に二股状の非伸縮性の生地が設けられるとともに、前記非伸縮性の生地の二股部分の内側領域に前記伸縮性を有する生地が設けられて成る請求項1に記載された履物。
【請求項5】
前記甲被部は、内側面の親指の中足骨骨頭部に対応させる部分と外側面の小指の中足骨骨頭部に対応させる部分とに二股状の非伸縮性の生地が設けられるとともに、それぞれの非伸縮性の生地の二股部分の内側領域に前記伸縮性を有する生地が設けられて成る請求項2に記載された履物。
【請求項6】
前記伸縮性を有する生地は、ポリウレタン弾性繊維を用いて形成されたものである請求項1〜5のいずれかに記載された履物。
【請求項7】
前記ベルトは、伸縮性を有する生地が設けられている部分に対応する位置に取り付けられている請求項1または2に記載された履物。
【請求項8】
前記ベルトは、帯状の締付片と環状の留め金具とから成り、前記締付片の表面には、締付片を前記留め金具を通して折り返したときの対向位置に、面ファスナの雄部と雌部とが装着されている請求項1,2,7のいずれかに記載された履物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載された履物であって、前記甲被部の内側面および外側面の後端部間に、足の踵の後面に引っ掛けられる伸縮性を有する後部ベルトがさらに取り付けられて成る履物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−314656(P2006−314656A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142084(P2005−142084)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(503370723)株式会社トータルヘルスケア (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(503370723)株式会社トータルヘルスケア (9)
【Fターム(参考)】
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