説明

後輪に作用する複数のブレーキキャリパを有するモーターサイクル

【課題】後輪又は関連のタイヤの交換を簡単且つ迅速にすることができるモーターサイクルを提供する。
【解決手段】モーターサイクル(10)は、エンジン(16)と一体の揺動アーム(14)に回転可能に取り付けられた駆動後輪(12)、揺動アームとモーターサイクルのシャーシ(24)との間に位置決めされた少なくとも1つのリヤショックアブソーバ(20)及び駆動後輪のリム(38)に固定された単一のブレーキディスク(36)に作用する少なくとも第1のブレーキキャリパ(28)と少なくとも第2のブレーキキャリパ(32)を有する。リヤショックアブソーバ及び少なくとも第2のブレーキキャリパは、揺動アームの後端部のうちの1つ(14b)に取り外し可能に取り付けられたプレート(42)に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪に作用する複数のブレーキキャリパを備えたモーターサイクル及びモーターサイクルの後輪を迅速に取り外す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市場に出ているモーターサイクル(自動二輪車だけでなく自動三輪車を含む)の大部分、特に、高性能オートバイは、伝統的なドラム形ブレーキに取って代わったディスクブレーキを後輪に備えている。しかしながら、制動作用の向上という疑いようの無い利点が得られる一方で、ホイールリム内に直接位置決めされたドラムの代わりにブレーキディスク及び関連のキャリパが追加的に設けられていることに起因して、駆動後輪の取り外しが必要な場合、この作業が手が込んだものになるという欠点がある。
【0003】
幾つかのモーターサイクル、特にいわゆるマキシスクータ(maxi-scooter)は、最も一般的な自動車の場合のものと類似していて、車両の駐車時に車両の後輪にブレーキがかけられたままであるようにすることができる駐車時制動又はブレーキシステムを更に有する場合がある。駐車時ブレーキシステムは、一般に、常用ブレーキキャリパとは別個に後輪のブレーキディスクに作用する第2のキャリパの追加によって得られる。しかしながら、スクータ用ホイールの寸法は特に小さいので、追加のブレーキキャリパが常用ブレーキのために用いられるディスクと同一のディスクに作用した場合でも、かかる別のブレーキキャリパの追加により、スペース面での問題が別途生じ、車両の保守作業の場合に後輪の取り外しが容易になることはあり得ず、それどころか、一層手が込んだものになる。
【0004】
1対のリヤブレーキキャリパを有するモーターサイクルが、例えば、欧州特許第1186524(B1)号明細書に記載されており、この場合、モーターサイクルの両方のブレーキキャリパは、リヤショックアブソーバの下端部及び後輪それ自体のハブに加えて、モーターサイクルそれ自体の揺動アームから始まって後方に延びる単一のプレートに取り付けられている。したがって、同様なモーターサイクルでは、例えばタイヤを交換できるように後輪を取り外すためには、プレートに取り付けられていて、駐車時ブレーキキャリパ及び関連の制御リンク装置を含むコンポーネント全てを取り外すことが最初に必要である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、後輪に作用する複数のブレーキキャリパを備えたモーターサイクルであって、リヤアクスル全体の取り外しが容易であり、かくして、公知の技術のモーターサイクルの場合と比較して、後輪又は関連のタイヤの交換を簡単且つ迅速にすることができるモーターサイクルを提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、後輪に作用する複数のブレーキキャリパの取り付けを製造段階において簡単且つ経済的な仕方で行うことができるモーターサイクルを提供することにある。
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1186524(B1)号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のこれら目的は、後輪に作用する複数のブレーキキャリパを備えたモーターサイクルであって、構成上の特徴が添付の特許請求の範囲中の独立形式の請求項に記載されたモーターサイクルを提供すると共にモーターサイクルの後輪を迅速に取り外す方法であって、構成上の特徴が添付の特許請求の範囲中の独立形式の請求項に記載された方法を提供することによって達成される。
【0009】
本発明の別の特徴は、従属形式の請求項に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の後輪に作用する複数のブレーキキャリパを備えたモーターサイクルの特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の例示であって非限定的な説明を読むと明らかになろう。
【0011】
添付の図面に記載された図を参照すると、これら図は、全体が参照符号10で示されたモーターサイクルのリヤアクスルを示している。特定の実施形態では、例えば、1本又は2本の操舵前輪(図示せず)を備えている場合があるスクータとして示されたモーターサイクル10は、後輪12を備え、この後輪は、その前端部のうちの1つ14aのところで一連のねじ又はボルト18によってモーターサイクル10のエンジン16と一体になった揺動アーム14に回転可能に取り付けられている。
【0012】
アーム14の実質的に垂直方向における上方又は後方揺動は、少なくとも1つのリヤショックアブソーバ20が設けられていることによって可能になり、このリヤショックアブソーバの上端部22は、モーターサイクル10のシャーシ24に固定されており、ショックアブソーバ20の下端部26は、揺動アーム14それ自体の後端部のうちの1つ14bのところと一体である。
【0013】
コントロールパイプ30によって油圧式の常用制動システムに連結された少なくとも第1のブレーキキャリパ28及び好ましくは機械式の常用制動システムに連結された少なくとも第2のブレーキキャリパ32が、金属製コントロールワイヤ34によって駐車時の制動が可能であるように揺動アームの14に更に組み付けられている。常用ブレーキキャリパ28と駐車ブレーキキャリパ32の両方が、固定的に且つ公知の仕方で駆動後輪12のリム38に組み付けられた単一のブレーキディスク36に作用する。
【0014】
図示の例示の実施形態によれば、モーターサイクル10の消音装置40、即ちマフラーも又、添付の図面の図1に示すように揺動アーム14に固定されている。
【0015】
本発明によれば、ショックアブソーバ20の下端部26及びブレーキキャリパのうちの少なくとも一方、この場合、常用ブレーキキャリパ28は、1本又は2本以上のボルト44によって揺動アーム14の後端部14bのところに取り外し可能に取り付けられた脱着式プレート42に固定されている。モーターサイクル10の後輪12の取り外し段階では、以下により分かりやすく示されているように、これにより、駐車ブレーキキャリパ32もショックアブソーバ20もいずれも取り外す必要なく、後輪12それ自体への接近が可能になり、かくして、後輪12及び(又は)そのタイヤ46について実施が予想される交換が容易になる。
【0016】
様々な妨げを少なくするために、揺動アーム14には好ましくは貫通開口部48が設けられ、常用ブレーキキャリパ28は、この開口部内に配置されている。したがって、常用ブレーキキャリパ28は、ボルト50によって揺動アーム14に取り付けられており、これらボルトは、貫通開口部48内に突き出た固定用突起52に設けられた穴にそれぞれ挿入される。
【0017】
図1〜図6を参照して説明する本発明のモーターサイクル10の後輪12の取り外し手順は次の通りである。消音装置40の取り外しを関連の固定ねじ(図1)を弛めて外すことによって行った後、プレート42を揺動アーム14に取り付けているボルト44への接近が可能である。
【0018】
この時点において、単にボルト44を弛めて外し、そしてリヤショックアブソーバ20を、その上端部22をモーターサイクル10(図3)のシャーシ24に取り付けているピン回りに回転させることにより、駐車ブレーキキャリパ32それ自体及び関連の変速装置34をモーターサイクル10から取り外す必要なく、ショックアブソーバ20と駐車ブレーキキャリパ32の両方を揺動アーム14から同時期に外すことが可能である。
【0019】
その後、常用ブレーキキャリパ28(図4)を取り外す(しかしながら、これをその油圧パイプ30から取り外さないで)と共に揺動アーム14(図5)を、対応のボルト18をエンジン16の支持体から弛めて外すことによって取り外すと、図6で理解できるように、後輪12に接近してこれをモーターサイクル10から取り外すことが可能である。
【0020】
モーターサイクル10の走行中、モーターサイクル10のリヤアクスルの種々のコンポーネント相互間の相対運動(しかしながら、これらの相対運動は無視できる場合がある)の結果として、固定ねじ及びボルトの大部分(これらのうち、ボルト44は、プレート42を揺動アーム14に取り付けたままにする)は、それぞれの弾性座金(図示せず)を備えている。
【0021】
かくして、後輪に作用する複数のブレーキキャリパを備えた本発明のモーターサイクルは、上述した目的を達成することが理解できる。駐車ブレーキキャリパを揺動アームとは別個にショックアブソーバの下端部が固定されている同一のプレートに取り付けることにより、実際、駐車ブレーキキャリパ及び関連の変速装置を取り外す必要なく、後輪に接近し、その結果これを取り外すことが可能であり、かくして、ホイール又はタイヤについて実施が予想される交換が容易になる。
【0022】
上述のように想到した本発明の後輪に作用する複数のブレーキキャリパを備えたモーターサイクルには、とにかく多くの改造例及び変形例が存在し、これらは全て、同じ本発明の技術的思想に含まれ、更に、細部は全て、技術的に均等な要素によって置き換え可能である。実際には、用いられる材料、更に、形態及び寸法は、技術上の要件において様々であって良い。
【0023】
したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の後輪に作用する複数のブレーキキャリパを備えたモーターサイクルのリヤアクスルの詳細側面図である。
【図2】図1のモーターサイクルのリヤアクスルのコンポーネントの一連の取り外し段階のうちの一段階を示す詳細側面図である。
【図3】図1のモーターサイクルのリヤアクスルのコンポーネントの一連の取り外し段階のうちの別の段階を示す詳細側面図である。
【図4】図1のモーターサイクルのリヤアクスルのコンポーネントの一連の取り外し段階のうちの別の段階を示す詳細側面図である。
【図5】図1のモーターサイクルのリヤアクスルのコンポーネントの一連の取り外し段階を示す詳細側面図である。
【図6】後輪の取り外し手順の終わりにおける図1のモーターサイクルの詳細側面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 モーターサイクル
12 駆動後輪
14 揺動アーム
14b 揺動アームの後端部
20 リヤショックアブソーバ
26 リヤショックアブソーバの下端部
30 コントロールパイプ
32 ブレーキキャリパ
34 コントロールワイヤ
36 ブレーキディスク
38 リム
40 消音装置(サイレンサ)
44,50 ボルト
48 貫通開口部
52 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターサイクル(10)であって、前記モーターサイクル(10)のエンジン(16)と一体の揺動アーム(14)に回転可能に取り付けられた駆動後輪(12)と、前記揺動アーム(14)と前記モーターサイクル(10)のシャーシ(24)との間に位置決めされた少なくとも1つのリヤショックアブソーバ(20)と、前記駆動後輪(12)のリム(38)に固定された単一のブレーキディスク(36)に作用する少なくとも第1のブレーキキャリパ(28)及び少なくとも第2のブレーキキャリパ(32)とを有するモーターサイクルにおいて、前記リヤショックアブソーバ(20)及び前記少なくとも第2のブレーキキャリパ(32)は、前記揺動アーム(14)の後端部のうちの1つ(14b)に取り外し可能に取り付けられたプレート(42)に固定されている、モーターサイクル(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1のブレーキキャリパ(28)は、前記揺動アーム(14)に設けられた貫通開口部(48)の内部に位置決めされている、請求項1記載のモーターサイクル(10)。
【請求項3】
前記少なくとも第1のブレーキキャリパ(28)は、1本又は2本以上のボルト(50)によって前記揺動アーム(14)に取り付けられ、前記ボルトは、前記貫通穴(48)の中に突き出た固定用突起(52)に設けられた穴にそれぞれ挿入されている、請求項2記載のモーターサイクル(10)。
【請求項4】
前記プレート(42)は、各々が弾性座金を備えた1本又は2本以上のボルト(44)によって前記揺動アーム(14)にその後端部のうちの1つ(14b)のところで取り付けられている、請求項1記載のモーターサイクル(10)。
【請求項5】
前記少なくとも第1のブレーキキャリパ(28)は、少なくとも1つのコントロールパイプ(30)によって前記モーターサイクル(10)の油圧式常用制動システムに連結されている、請求項1記載のモーターサイクル(10)。
【請求項6】
前記少なくとも第2のブレーキキャリパ(32)は、少なくとも1つの金属製コントロールワイヤ(34)によって前記モーターサイクル(10)の機械式常用制動システムに連結されている、請求項1記載のモーターサイクル(10)。
【請求項7】
前記揺動アーム(14)に固定された少なくとも1つの消音装置(40)を更に有する、請求項1記載のモーターサイクル(10)。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一に記載のモーターサイクル(10)の前記駆動後輪(12)を迅速に取り外す方法であって、
・前記プレート(42)を前記揺動アーム(14)に取り付けている前記ボルト(44)を弛めて取り外すステップと、
・前記リヤショックアブソーバ(20)を、その上端部(22)を前記モーターサイクル(10)の前記シャーシに取り付けているピンの回りに回転させ、前記ショックアブソーバ(20)と前記少なくとも第2のブレーキキャリパ(32)の両方を同時期に前記揺動アーム(14)から外すステップと、
・前記エンジン(16)の支持体からボルト(18)を弛めて取り外すことによって前記少なくとも第1のブレーキキャリパ(28)及び前記揺動アーム(14)を取り外すステップと、
・前記駆動後輪(12)を前記モーターサイクル(10)から取り外すステップとを有する、方法。
【請求項9】
前記リヤショックアブソーバ(20)の上端部(22)を前記モーターサイクル(10)の前記シャーシ(24)に取り付けている前記ピン回りの前記リヤショックアブソーバ(20)の回転段階中、前記少なくとも第2のブレーキキャリパ(32)は、これに対応したコントロール手段(34)に連結されたままである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも第1のブレーキキャリパ(28)の取り外し段階中、前記少なくとも第1のブレーキキャリパ(28)は、これに対応したコントロール手段(30)に連結されたままである、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−8260(P2009−8260A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164649(P2008−164649)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(501441773)ピアジオ アンド コンパニア ソシエタ ペル アチオニ (15)
【Fターム(参考)】