振動波モータ及びその製造方法
【課題】動波モータとして必要な耐電圧を有する10〜100μm程度の均一的な組成から成る圧電体原材料膜を、安定的に量産可能な少工程にて形成した振動体を有する振動波モータを提供する。
【解決手段】振動波モータは、圧電体(圧電体原材料膜102)に周波電圧を印加して金属製の弾性体101に振動を励起し、圧電体と弾性体101からなる振動体100に接触する接触体を相対的に移動させる。そして、弾性体101の端面に圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜102を噴射し、圧電体を弾性体に直接に成膜形成する。
【解決手段】振動波モータは、圧電体(圧電体原材料膜102)に周波電圧を印加して金属製の弾性体101に振動を励起し、圧電体と弾性体101からなる振動体100に接触する接触体を相対的に移動させる。そして、弾性体101の端面に圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜102を噴射し、圧電体を弾性体に直接に成膜形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子に周波電圧を印加して振動体に振動を励起し、振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に実用されている振動波モータは、例えば、特許文献1に開示されているように、円環又は円盤状の振動体を有しており、この振動体は金属製弾性体に圧電素子を接合して構成されている。
【0003】
圧電素子上に形成された2相の電極群に時間的に位相の異なる高周波電圧を印加すると圧電素子の振動によって弾性体には2つの定在波振動が励起され、これら2つの定在波振動が合成されて進行波となり、弾性体の表面が楕円運動する。そして、この弾性体の表面に接触体を加圧接触させると、振動体と移動体とを相対駆動することができる。
【0004】
上述した圧電素子の圧電体としては、特許文献2に示されているように、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の粉末と有機バインダを混合して押し出し成形後打ち抜き加工によって所望形状に成形し、その後約1200℃での焼成を行うバルク材が実用されている。
【0005】
そして、焼成後に寸法精度を得るべく切削又は研磨の機械加工を行い、その後、上述した電極群を配置して分極を行っている。そして、上述したバルク材と弾性体を、特許文献3で開示されているように、エポキシ系又はアクリル系の熱硬化タイプの接着剤を用いて接着接合して一体化し、それを振動体としている。
【0006】
一般に、周波電圧Vとその電圧に対する圧電素子の変位量Sの関係は、圧電素子の厚さをdとすると、
S=K・V/d ・・・ (1)
の式で表される。尚、Kは比例定数である。式(1)で示されるように、圧電素子の厚さdを薄くすると、少ない周波電圧で所定の変位量Sを得ることができることになる。ところが、上述した一般的に実用されているバルク材の圧電素子は薄型加工に限界があり、現在においては0.1mmの厚さが加工的な限界とされている。
【0007】
それに対して、特許文献4、特許文献5及び特許文献6には、スクリーン印刷法及びスパッタ法によって0.1mm未満の厚さの圧電体を弾性体に成膜した振動波モータが提案されている。
【0008】
上記特許文献に開示された技術は、0.1mm未満の厚さを可能とするだけではなく、従来実用しているバルク材では必須である、弾性体との固着のための接着材を使用していない。そのため、圧電素子から弾性体への振動伝達が接着剤によって吸収劣化するという問題をも解決可能となる。
【特許文献1】特公平1−17354号公報
【特許文献2】特開平11−187677号公報
【特許文献3】特開平05−095687号公報
【特許文献4】特開昭63−31480号公報
【特許文献5】特開昭63−186572号公報
【特許文献6】特開平11−343569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した印刷法及びスパッタ法によって弾性体に圧電体を成膜した振動波モータは、現在実用化に至っていない。上述した式(1)で示されるように、理論的には圧電素子の厚さdを薄くすると少ない周波電圧で所定の変位量Sを得ることができるが、振動波モータにおいては、その膜厚の薄さには限界がある。
【0010】
即ち、振動波モータの場合は、振動体に接触する接触体を回転させるためのトルクを必要とするが、そのトルクを得るための変位量Sは、振動波モータ以外のインクジェット用ヘッド等の圧電素子応用製品と比較すると、数段高いレベルで要求される。
【0011】
その変位量Sを圧電素子に与えるためには、それに対応する所定の周波電圧以上の電圧を圧電素子に加える必要があるが、そのためには圧電素子がそれに耐え得る耐電圧を有していなければならない。その耐電圧を有するためには、それに対応する厚さを有する圧電素子が必要となる。
【0012】
しかし、数μm程度の薄さで成膜した圧電素子では、必要な耐電圧を得ることは困難で、10μm程度以上の厚さの圧電素子が必要となる。
【0013】
上記特許文献4には、接触体を回転させてモータを駆動した時の駆動電圧と圧電素子の膜厚の関係を示すデータが記載されているが、膜厚が10μm以上のデータしか記載されておらず、それ以下の膜厚の場合のデータは記載されていない。また、最適な膜圧は10〜50μm程度としている。
【0014】
ところが、印刷法においては、1工程で0.5μm程度の膜厚形成が限界のため、10μm以上の膜厚を得るためには20回以上の印刷工程が必要となる。更には、各回の印刷工程後に熱処理を行わないと次回の印刷膜を形成できないため、印刷回数と同回数の熱処理工程を必要とする。
【0015】
以上説明した課題のため、印刷法による振動波モータの量産化は、それらの総工程数及びその総工程時間、そしてそれに起因するコスト面から、非常に困難とされている。
【0016】
それに対して、スパッタ法は10μm以上の膜厚を形成することが1工程で可能であり、印刷法成膜の説明で指摘した多工程の問題はない。
【0017】
しかし、スパッタ法によってPZTの膜を形成すると、PZT膜を構成する鉛成分はチタン及びジルコニウムの成分と比較するとスパッタ率が高いために、鉛が選択的にエッチングされて膜中の鉛が所望の量よりも少なくなってしまう傾向がある(特許文献6)。そのため、組成制御が非常に困難である。
【0018】
更には、それらの成分が偏在して成膜される場合があり、均一の組成にて成膜することも困難である。それらの問題のため、所望の特性を安定して得ることができないという課題があり、やはり量産化は困難とされている。
【0019】
本発明の目的は、振動波モータとして必要な耐電圧を有する10〜100μm程度の均一的な組成から成る圧電体原材料膜を、安定的に量産可能な少工程にて形成した振動体を有する振動波モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1記載の振動波モータの製造方法は、圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、前記圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータにおいて、前記弾性体の端面に前記圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、前記圧電体を前記弾性体に直接に成膜形成することを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の振動波モータは、圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、前記圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータの製造方法において、前記弾性体の端面に前記圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、前記圧電体を前記弾性体に直接に成膜形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の振動波モータは、圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる。そして、弾性体の端面に圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、圧電体を弾性体に直接に成膜形成する。
【0023】
この構成により、振動波モータとして必要な耐電圧を有する10〜100μm程度の均一的な組成から成る圧電体原材料膜を、安定的に量産可能な少工程にて形成した振動体を有する振動波モータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
まず、圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化して噴射する、エアロゾルデポジション法によるセラミック構造物の作製方法及びセラミック構造物の作製装置について簡単に説明する。
【0026】
図1は、エアロゾルデポジション法によるセラミック構造物の作製装置の模式図である。
【0027】
図1に示すように、セラミック構造物の作製装置1は、膜形成部2とエアロゾル発生部3を備える。
【0028】
そして、エアロゾル発生部3で発生した圧電体の原材料微粉末をガス中に分散させたエアロゾルを膜形成部2に搬送するエアロゾル搬送管4によって、膜形成部2とエアロゾル発生部3を接続する。
【0029】
膜形成部2は、真空ポンプ21で真空化される真空チャンバー20を有し、その真空チャンバー20内に導かれたエアロゾル搬送管4端部に配置されたノズル5から、エアロゾル搬送管4によって搬送されたエアロゾル6を基板7bに噴射して膜7aを形成する。そして、膜7aと基板7bによるセラミック構造物7を作製する。
【0030】
尚、基板7bは、通常ステージ8に固定されており、基板7bをX−Y方向8aに移動しながら膜7aを形成する。
【0031】
また、エアロゾル発生部3は、エアロゾル発生器30と、ガス搬送管31と、ガス搬送管31によってエアロゾル発生器30内にガスを注入するマスフローコントローラ32とから構成される。エアロゾル搬送管4の他端部がエアロゾル発生器30の上部に挿入されている。
【0032】
以上説明したエアロゾルデポジション法によるセラミック構造物の作製装置において、本発明はセラミックとしてPZT等の圧電体原材料を使用し、また基板7bとして振動波モータの金属製の弾性体を設置する。同法によって圧電体材料を成膜することで、10〜100μm程度で均一的な組成から成る圧電体原材料膜を1回の工程にて成膜形成することができる。
【0033】
次に図2及び図3を用いて、振動波モータの弾性体とそれにエアロゾルデポジション法によって圧電体原材料を成膜した状態を説明する。
【0034】
図2は、弾性体101と圧電体原材料膜(圧電体)102から形成される振動体100を上面から見た斜視図、図3はそれの裏面(背面)から見た斜視図を示す。
【0035】
弾性体101は環状に形成されている。そして、厚さtが10〜100μm程度の圧電体原材料膜102が弾性体101の一平面(図3に示す背面)上に成膜されている。弾性体101の端面中央部101Cには圧電体原材料膜102が形成されていないが、これは成膜時に弾性体101をステージ8に固定する時に用いる固定治具を端面中央部101C部に設置したためである。
【0036】
弾性体101の圧電体原材料膜102形成面の反対面側には、複数の溝101Aとそれら溝間に形成された複数の凸部101Bを有する。圧電体原材料膜102の上面に電極膜103を形成して周波電圧(所定の電圧)を印加すると、圧電素子膜(圧電体)が形成される。
【0037】
圧電素子膜の振動が、溝101Aと凸部101Bの凸凹構造による効果によって弾性体101に2つの定在波振動を励起する。この際、溝101Aと凸部101Bの凸凹構造によって定在波振動を効果的に励起する。そして、これら2つの定在波振動が合成されて進行波となり、弾性体101の表面が楕円運動し、凸部101Bの上面に加圧接触する接触体(図示せず)に回転運動を与える。
【0038】
図2及び図3にて示した圧電体原材料膜102を成膜した状態の振動体100は、その後500〜700℃程度の温度で1〜2時間放置の熱処理を行い、圧電体原材料膜102の焼き固めを行う。その後、電極膜103をスパッタ法又は印刷法等にて形成してから分極処理を行い、圧電体原材料膜102の圧電素子(圧電体、圧電素子膜)化を行う。図4には、複数の電極膜103を形成した後の振動体100を示す。
【0039】
(第2の実施の形態)
前述したように、圧電体原材料膜102を成膜した振動体100は、その後、熱処理を行って圧電体原材料膜102の焼き固めを行う。その時に、圧電体原材料膜102と金属製の弾性体101との熱変形率の差によって、圧電体原材料膜102が弾性体101から剥離することがある。
【0040】
その問題を解決する手段を図5及び図6を用いて説明する。図5は、弾性体101の端面上にマスク104を設置した状態を示し、同状態にて圧電体原材料膜102の形成を行う。マスク104は複数の開口104Aを有し、弾性体101の面上に成膜される圧電体原材料膜102は開口104A部に形成される。マスク104の開口104A以外の枠及び桟の範囲は、弾性体101には成膜されない。
【0041】
図6は、成膜後にマスク104を外した状態を示す。マスク104の枠及び桟によって、成膜された圧電体原材料膜102Aは複数に分割され、各圧電体原材料膜102A間に非成膜範囲101Dを形成している。
【0042】
このように、圧電体原材料膜102Aを分割して成膜した構成で熱処理工程を行うと、弾性体101と圧電体原材料膜102Aの熱変形率の差によって発生する、成膜部を弾性体101から剥離する方向へ働く応力は非成膜範囲101Dによって緩和される。この結果、非分割成膜品にて圧電体原材料膜102の剥離が発生した熱処理温度でも剥離を防ぐことができ、更にはより高い温度での熱処理も可能となる。
【0043】
図7には、圧電体原材料膜102Aを分割成膜した弾性体101に対して、熱処理後に複数の電極膜103を形成した状態を示す。電極膜103の各々は、複数の圧電体原材料膜102A各々の膜面内に、圧電体原材料膜102Aに対して僅かな距離L分小さく形成されているものの、ほぼ圧電体原材料膜面積102Aと同一の形状で形成されている。
【0044】
圧電素子の特性は、電極膜103の面積と比例するもので、できる限り大きな面積の電極膜103を形成することが望ましい。しかし、圧電体原材料膜102A外側の弾性体101の上面に電極膜103を成膜すると、電極膜103と弾性体101間に電気的リークが発生するので、僅かな距離Lが必要となる。
【0045】
尚、以上図5乃至図7を用いて説明した実施の形態とは異なり、複数の分割した圧電体原材料膜102Aの位置と面積を、成膜面と相対する面の複数の溝101Aと複数の凸部101Bの位置及び面積に関連付けて形成することも可能である。
【0046】
一例としては、凸部101Bの背面部相当範囲をほぼ成膜範囲とし、溝101Aの背面部相当範囲をほぼ非成膜範囲とすることが挙げられる。それにより、溝101Aと凸部101Bの凸凹構造による振幅増幅効果を、より効果的に発揮することが可能となる。
【0047】
(第3実施の形態)
図8は、上述したマスク104を用いて成膜した後の、図5におけるA−A断面を示す。分割された圧電体原材料膜102Aは約30μmの厚さを有し、マスク104の桟部104Bは厚さ約0.3mm、幅約0.3mmの例を示している。
【0048】
同図において、圧電体原材料膜102Aの桟部104Bの両側面近傍は、テーパー形状部102A1となっている。それは、エアロゾルデポジション法での成膜時に、基材である弾性体101に噴射された圧電体の原材料を含んだエアロゾル6の噴射状況による。
【0049】
即ち、全てがエアロゾル6Aのように弾性体101の上面に対して垂直に噴射されるのではなく、エアロゾル6Bのように斜め方向へ噴射されるエアロゾルも多く含まれている。その斜めに噴射されたエアロゾル6Bのうち、桟部104Bの側面下部に衝突して跳ね返り、成膜中の圧電体原材料膜102Aの桟部104B近傍の上面に至るものに含まれる微粉末が、成膜された圧電体原材料膜102Aを削り取るエッチング効果を果たす。その結果、テーパー形状部102A1が発生する。
【0050】
圧電体原材料膜102Aのうち、テーパー形状部102A1の上面には、電極膜103を形成することができない。即ち、スパッタ法又は印刷法にて電極膜形成時、テーパー形状部102A1の上面に電極膜103を形成しようとすると、電極膜形成用のマスク104とテーパー形状部102A1によって生まれる隙間から電極材料が入り込む。そして、弾性体101上面に電極膜103を形成してしまう。
【0051】
そのため、電極膜103はテーパー形状部102A1を避けた圧電体原材料膜102Aの平面上に形成せざるを得ないため、図9に示すように、電極膜103の面積は少し小さく形成される。
【0052】
この圧電体原材料膜102Aの成膜時のマスク104にて発生するマスク枠及び桟部104B近傍にて発生するテーパー形状部102A1を避けるために、特許第3015869号には、マスク104を弾性体101上面から浮かして配置する技術が開示されている。
【0053】
マスク104を圧電体原材料膜102Aの厚さよりも高い位置まで浮かせることによって、上述した桟部104Bの側面近傍のエッチング効果を排し、テーパー形状部102A1を避けることが可能となる。
【0054】
上記特許文献では、マスクの開口がエアロゾルを噴射するノズル開口面積より小さいか、ノズル開口面積とほぼ同等の例を説明している。しかしながら、所望の圧電特性を得るための大きな面積の圧電体原材料膜を得ることを目的として、大きな開口面積で桟部104Bの幅が小さいマスク104を採用し、ノズル開口面積より遥かに大きな面積の膜を成膜形成する場合は、以下の問題がある。
【0055】
即ち、マスク104を弾性体101上面から浮かして配置すると、そのために発生するマスク104と弾性体101間の隙間に、上述した斜めに噴射されたエアロゾル6Bが入り込んでそこに成膜する。そして、分割して成膜した圧電体原材料膜102Aの隣同士を連結する。
【0056】
即ち、特開2002−190512号公報で開示されているように、基材である弾性体101の成膜面垂直方向に対して30°〜45°傾けて噴射しても十分成膜するので、45°以下角度のエアロゾル6Bは、マスク104と弾性体101間の隙間で成膜する。
【0057】
図8で示した桟部104Bのように、幅0.3mmの場合は、0.15mm以上マスク104を浮かして配置すると、左右の両開口104Aから桟部104Bの下側に入り込む角度45°以下の斜め方向からのエアロゾル6Bによって、以下の不具合が生じる。
【0058】
即ち、本来分割して成膜したい圧電体原材料膜102Aが隣同士互いに連結した状態になり、熱処理時の圧電体原材料膜102Aの剥離防止効果が失せることになる。特に、圧電体上面とマスク面との距離を、上記特許第3015869号が推奨する0.7mm以上に設置すると、隣同士の圧電体原材料膜102Aを完全に連結してしまうが可能性が高い。
【0059】
そこで、分割された圧電体原材料膜102Aを連結させることがなく、かつより広い面積の電極膜103を形成するために、マスクの枠部及び桟部の断面側面に段差面又は斜面を形成する。
【0060】
図10は、マスクの枠部及び桟部の開口側の断面側面に段部を設けた例を示す。本例のマスク105は、開口を形成する枠及び桟部の開口側の断面側面に段部105Aを有する。その段部105Aは、弾性体101と接触する側の枠又は桟部の幅が小さくなるように形成する。
【0061】
マスク105の上面側の幅は0.3mm、マスク105全体の高さは0.3mmであり、弾性体101近傍部の幅を0.15mmとしている。同構成においては、上述した斜めに噴射されたエアロゾル6Bは段部105A近傍の側面に衝突し、圧電体原材料膜106はその側面近傍にてテーパ形状部106Aを形成する。しかし、それは弾性体101と接触する桟部又は枠の狭い部分の近傍に形成される。
【0062】
従って、より広い平面部を有する圧電体原材料膜106を得ることができ、広い面積を有する電極膜103の形成が可能となる。そして、マスク105は開口部間に弾性体101と接触する部分を有しているため、隣同士の圧電体原材料膜106が連結することがない。
【0063】
(第4の実施の形態)
図11は、マスクの枠部及び桟部の断面側面に斜面を設けた例を示す。マスク107の斜面は弾性体101との接触部が狭くなるように形成する。同例においても、第3の実施の形態と同様に、圧電体原材料膜108はその斜面下部近傍に、テーパー形状部108Aを形成する。しかし、それは弾性体101と接触する桟部又は枠の狭い部分の近傍に形成され、より広い平面部を有する圧電体原材料膜108を得ることができる。
【0064】
(第5実施の形態)
以上説明した実施の形態においては、弾性体101に接して回転する接触体との接触面と対向する裏側の平面部に圧電体原材料膜102又は102Aを成膜する例を挙げて説明した。しかし、圧電体の原材料が有するd31方向とd33方向の振動量又は振幅量によっては、圧電体原材料膜を弾性体101の側面周面に形成した方が良い場合がある。
【0065】
図12を用いて、その実施の形態を説明する。振動体200は、弾性体201の側面周面に圧電体原材料膜202を厚さtで成膜して構成される。厚さtは第1の実施の形態と同様、10〜100μm程度である。このような周面への圧電体原材料膜202の形成は、他の膜形成方法では困難である。
【0066】
即ち、印刷法はスクリーン印刷法を主としており、周面又は曲面への成膜形成は困難である。また、スパッタ法においては、わずかな隙間へも圧電体原材料膜202を形成するというその特性上から必要となる、弾性体201側面周面への成膜時の溝201Aと凸部201Bの凹凸面への成膜を避けるための治具を持つことは困難である。即ち、その治具を量産時に寸法がばらつく弾性体201に対応させることは困難である。
【0067】
それに対して、本発明の圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化して噴射して圧電素子を直接成膜形成する弾性体であれば、周面への成膜は可能であり、かつ成膜面と垂直な面に圧電体原材料膜202を形成することがない。
【0068】
従って、弾性体201の側面周面への成膜は、本発明の特徴を最十分生かした構成ということができる。尚、具体的な成膜は、弾性体201の円周中心を中心軸として回転させながら、その円周側面に対して垂直方向近傍からエアロゾル6を噴射して行う。
【0069】
また、弾性体201の円周側面上に開口を有するマスクを配置することで、圧電体原材料膜202の分割成膜を行うことが可能で、第2〜第4の実施の形態で説明した技術をこの実施の形態においても実施することができる。
【0070】
以上の本発明の実施の形態で説明したように、振動波モータとして必要な耐電圧を有する10〜100μm程度の均一的な組成から成る圧電体原材料膜を、安定的に量産可能な少工程にて形成した振動体を有する振動波モータを提供することができる。
【0071】
更には、圧電体原材料膜の成膜後の熱処理工程にて発生することがある、圧電体原材料膜が振動体から剥離する問題を解決する手段を有する振動波モータと、より良い圧電特性を発揮する電極膜を有する振動波モータを提供することができる。そして、分割された圧電体原材料膜を連結させることがなく、かつより広い面積の電極膜を形成することができる。
【0072】
また、圧電体原材料膜の成膜後の熱処理工程にて発生することがある、圧電体原材料膜が振動体から剥離する問題を解決する手段と、熱処理後の圧電体原材料膜上に配置する電極膜面積をより広く設ける手段を有する振動波モータも提供することができる。更には、従来のバルク材では必須であった約1200℃での焼成工程を、700〜900℃程度の低い温度で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】エアロゾルデポジション法によるセラミック構造物の作製装置の模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る振動波モータを構成する、圧電体原材料膜を形成した振動体を説明するための上面斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る振動波モータを構成する、圧電体原材料膜を形成した振動体を説明するための裏面斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る振動波モータを構成する、電極膜を形成後の振動体を説明するための裏面斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体のマスクを説明するための裏面斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体の分割して成膜された圧電体原材料膜を説明するための裏面斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る振動波モータを構成する、電極膜を形成後の振動体を説明するための裏面斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体に関連する従来技術の振動体の要部断面図である。
【図9】図8の振動体に電極膜を形成した状態の図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体の要部断面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体の要部断面図である。
【図12】本発明の第の5実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体の裏面斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1 セラミック構造物の作製装置
2 膜形成部
3 エアロゾル発生部
4 エアロゾル搬送管
5 ノズル
6、6A、6B エアロゾル
7 セラミック構造物
100、200 振動体
101、201 弾性体
101A、201A 溝
101B、201B 凸部
101D 非成膜範囲
102、202 圧電体原材料膜
102A、106、108 分割された圧電体原材料膜
102A1、106A、108A テーパー形状部
103 電極膜
104、105 マスク
104A 開口
104B 桟部
105A 段部
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子に周波電圧を印加して振動体に振動を励起し、振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に実用されている振動波モータは、例えば、特許文献1に開示されているように、円環又は円盤状の振動体を有しており、この振動体は金属製弾性体に圧電素子を接合して構成されている。
【0003】
圧電素子上に形成された2相の電極群に時間的に位相の異なる高周波電圧を印加すると圧電素子の振動によって弾性体には2つの定在波振動が励起され、これら2つの定在波振動が合成されて進行波となり、弾性体の表面が楕円運動する。そして、この弾性体の表面に接触体を加圧接触させると、振動体と移動体とを相対駆動することができる。
【0004】
上述した圧電素子の圧電体としては、特許文献2に示されているように、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の粉末と有機バインダを混合して押し出し成形後打ち抜き加工によって所望形状に成形し、その後約1200℃での焼成を行うバルク材が実用されている。
【0005】
そして、焼成後に寸法精度を得るべく切削又は研磨の機械加工を行い、その後、上述した電極群を配置して分極を行っている。そして、上述したバルク材と弾性体を、特許文献3で開示されているように、エポキシ系又はアクリル系の熱硬化タイプの接着剤を用いて接着接合して一体化し、それを振動体としている。
【0006】
一般に、周波電圧Vとその電圧に対する圧電素子の変位量Sの関係は、圧電素子の厚さをdとすると、
S=K・V/d ・・・ (1)
の式で表される。尚、Kは比例定数である。式(1)で示されるように、圧電素子の厚さdを薄くすると、少ない周波電圧で所定の変位量Sを得ることができることになる。ところが、上述した一般的に実用されているバルク材の圧電素子は薄型加工に限界があり、現在においては0.1mmの厚さが加工的な限界とされている。
【0007】
それに対して、特許文献4、特許文献5及び特許文献6には、スクリーン印刷法及びスパッタ法によって0.1mm未満の厚さの圧電体を弾性体に成膜した振動波モータが提案されている。
【0008】
上記特許文献に開示された技術は、0.1mm未満の厚さを可能とするだけではなく、従来実用しているバルク材では必須である、弾性体との固着のための接着材を使用していない。そのため、圧電素子から弾性体への振動伝達が接着剤によって吸収劣化するという問題をも解決可能となる。
【特許文献1】特公平1−17354号公報
【特許文献2】特開平11−187677号公報
【特許文献3】特開平05−095687号公報
【特許文献4】特開昭63−31480号公報
【特許文献5】特開昭63−186572号公報
【特許文献6】特開平11−343569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した印刷法及びスパッタ法によって弾性体に圧電体を成膜した振動波モータは、現在実用化に至っていない。上述した式(1)で示されるように、理論的には圧電素子の厚さdを薄くすると少ない周波電圧で所定の変位量Sを得ることができるが、振動波モータにおいては、その膜厚の薄さには限界がある。
【0010】
即ち、振動波モータの場合は、振動体に接触する接触体を回転させるためのトルクを必要とするが、そのトルクを得るための変位量Sは、振動波モータ以外のインクジェット用ヘッド等の圧電素子応用製品と比較すると、数段高いレベルで要求される。
【0011】
その変位量Sを圧電素子に与えるためには、それに対応する所定の周波電圧以上の電圧を圧電素子に加える必要があるが、そのためには圧電素子がそれに耐え得る耐電圧を有していなければならない。その耐電圧を有するためには、それに対応する厚さを有する圧電素子が必要となる。
【0012】
しかし、数μm程度の薄さで成膜した圧電素子では、必要な耐電圧を得ることは困難で、10μm程度以上の厚さの圧電素子が必要となる。
【0013】
上記特許文献4には、接触体を回転させてモータを駆動した時の駆動電圧と圧電素子の膜厚の関係を示すデータが記載されているが、膜厚が10μm以上のデータしか記載されておらず、それ以下の膜厚の場合のデータは記載されていない。また、最適な膜圧は10〜50μm程度としている。
【0014】
ところが、印刷法においては、1工程で0.5μm程度の膜厚形成が限界のため、10μm以上の膜厚を得るためには20回以上の印刷工程が必要となる。更には、各回の印刷工程後に熱処理を行わないと次回の印刷膜を形成できないため、印刷回数と同回数の熱処理工程を必要とする。
【0015】
以上説明した課題のため、印刷法による振動波モータの量産化は、それらの総工程数及びその総工程時間、そしてそれに起因するコスト面から、非常に困難とされている。
【0016】
それに対して、スパッタ法は10μm以上の膜厚を形成することが1工程で可能であり、印刷法成膜の説明で指摘した多工程の問題はない。
【0017】
しかし、スパッタ法によってPZTの膜を形成すると、PZT膜を構成する鉛成分はチタン及びジルコニウムの成分と比較するとスパッタ率が高いために、鉛が選択的にエッチングされて膜中の鉛が所望の量よりも少なくなってしまう傾向がある(特許文献6)。そのため、組成制御が非常に困難である。
【0018】
更には、それらの成分が偏在して成膜される場合があり、均一の組成にて成膜することも困難である。それらの問題のため、所望の特性を安定して得ることができないという課題があり、やはり量産化は困難とされている。
【0019】
本発明の目的は、振動波モータとして必要な耐電圧を有する10〜100μm程度の均一的な組成から成る圧電体原材料膜を、安定的に量産可能な少工程にて形成した振動体を有する振動波モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1記載の振動波モータの製造方法は、圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、前記圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータにおいて、前記弾性体の端面に前記圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、前記圧電体を前記弾性体に直接に成膜形成することを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の振動波モータは、圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、前記圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータの製造方法において、前記弾性体の端面に前記圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、前記圧電体を前記弾性体に直接に成膜形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の振動波モータは、圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる。そして、弾性体の端面に圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、圧電体を弾性体に直接に成膜形成する。
【0023】
この構成により、振動波モータとして必要な耐電圧を有する10〜100μm程度の均一的な組成から成る圧電体原材料膜を、安定的に量産可能な少工程にて形成した振動体を有する振動波モータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
まず、圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化して噴射する、エアロゾルデポジション法によるセラミック構造物の作製方法及びセラミック構造物の作製装置について簡単に説明する。
【0026】
図1は、エアロゾルデポジション法によるセラミック構造物の作製装置の模式図である。
【0027】
図1に示すように、セラミック構造物の作製装置1は、膜形成部2とエアロゾル発生部3を備える。
【0028】
そして、エアロゾル発生部3で発生した圧電体の原材料微粉末をガス中に分散させたエアロゾルを膜形成部2に搬送するエアロゾル搬送管4によって、膜形成部2とエアロゾル発生部3を接続する。
【0029】
膜形成部2は、真空ポンプ21で真空化される真空チャンバー20を有し、その真空チャンバー20内に導かれたエアロゾル搬送管4端部に配置されたノズル5から、エアロゾル搬送管4によって搬送されたエアロゾル6を基板7bに噴射して膜7aを形成する。そして、膜7aと基板7bによるセラミック構造物7を作製する。
【0030】
尚、基板7bは、通常ステージ8に固定されており、基板7bをX−Y方向8aに移動しながら膜7aを形成する。
【0031】
また、エアロゾル発生部3は、エアロゾル発生器30と、ガス搬送管31と、ガス搬送管31によってエアロゾル発生器30内にガスを注入するマスフローコントローラ32とから構成される。エアロゾル搬送管4の他端部がエアロゾル発生器30の上部に挿入されている。
【0032】
以上説明したエアロゾルデポジション法によるセラミック構造物の作製装置において、本発明はセラミックとしてPZT等の圧電体原材料を使用し、また基板7bとして振動波モータの金属製の弾性体を設置する。同法によって圧電体材料を成膜することで、10〜100μm程度で均一的な組成から成る圧電体原材料膜を1回の工程にて成膜形成することができる。
【0033】
次に図2及び図3を用いて、振動波モータの弾性体とそれにエアロゾルデポジション法によって圧電体原材料を成膜した状態を説明する。
【0034】
図2は、弾性体101と圧電体原材料膜(圧電体)102から形成される振動体100を上面から見た斜視図、図3はそれの裏面(背面)から見た斜視図を示す。
【0035】
弾性体101は環状に形成されている。そして、厚さtが10〜100μm程度の圧電体原材料膜102が弾性体101の一平面(図3に示す背面)上に成膜されている。弾性体101の端面中央部101Cには圧電体原材料膜102が形成されていないが、これは成膜時に弾性体101をステージ8に固定する時に用いる固定治具を端面中央部101C部に設置したためである。
【0036】
弾性体101の圧電体原材料膜102形成面の反対面側には、複数の溝101Aとそれら溝間に形成された複数の凸部101Bを有する。圧電体原材料膜102の上面に電極膜103を形成して周波電圧(所定の電圧)を印加すると、圧電素子膜(圧電体)が形成される。
【0037】
圧電素子膜の振動が、溝101Aと凸部101Bの凸凹構造による効果によって弾性体101に2つの定在波振動を励起する。この際、溝101Aと凸部101Bの凸凹構造によって定在波振動を効果的に励起する。そして、これら2つの定在波振動が合成されて進行波となり、弾性体101の表面が楕円運動し、凸部101Bの上面に加圧接触する接触体(図示せず)に回転運動を与える。
【0038】
図2及び図3にて示した圧電体原材料膜102を成膜した状態の振動体100は、その後500〜700℃程度の温度で1〜2時間放置の熱処理を行い、圧電体原材料膜102の焼き固めを行う。その後、電極膜103をスパッタ法又は印刷法等にて形成してから分極処理を行い、圧電体原材料膜102の圧電素子(圧電体、圧電素子膜)化を行う。図4には、複数の電極膜103を形成した後の振動体100を示す。
【0039】
(第2の実施の形態)
前述したように、圧電体原材料膜102を成膜した振動体100は、その後、熱処理を行って圧電体原材料膜102の焼き固めを行う。その時に、圧電体原材料膜102と金属製の弾性体101との熱変形率の差によって、圧電体原材料膜102が弾性体101から剥離することがある。
【0040】
その問題を解決する手段を図5及び図6を用いて説明する。図5は、弾性体101の端面上にマスク104を設置した状態を示し、同状態にて圧電体原材料膜102の形成を行う。マスク104は複数の開口104Aを有し、弾性体101の面上に成膜される圧電体原材料膜102は開口104A部に形成される。マスク104の開口104A以外の枠及び桟の範囲は、弾性体101には成膜されない。
【0041】
図6は、成膜後にマスク104を外した状態を示す。マスク104の枠及び桟によって、成膜された圧電体原材料膜102Aは複数に分割され、各圧電体原材料膜102A間に非成膜範囲101Dを形成している。
【0042】
このように、圧電体原材料膜102Aを分割して成膜した構成で熱処理工程を行うと、弾性体101と圧電体原材料膜102Aの熱変形率の差によって発生する、成膜部を弾性体101から剥離する方向へ働く応力は非成膜範囲101Dによって緩和される。この結果、非分割成膜品にて圧電体原材料膜102の剥離が発生した熱処理温度でも剥離を防ぐことができ、更にはより高い温度での熱処理も可能となる。
【0043】
図7には、圧電体原材料膜102Aを分割成膜した弾性体101に対して、熱処理後に複数の電極膜103を形成した状態を示す。電極膜103の各々は、複数の圧電体原材料膜102A各々の膜面内に、圧電体原材料膜102Aに対して僅かな距離L分小さく形成されているものの、ほぼ圧電体原材料膜面積102Aと同一の形状で形成されている。
【0044】
圧電素子の特性は、電極膜103の面積と比例するもので、できる限り大きな面積の電極膜103を形成することが望ましい。しかし、圧電体原材料膜102A外側の弾性体101の上面に電極膜103を成膜すると、電極膜103と弾性体101間に電気的リークが発生するので、僅かな距離Lが必要となる。
【0045】
尚、以上図5乃至図7を用いて説明した実施の形態とは異なり、複数の分割した圧電体原材料膜102Aの位置と面積を、成膜面と相対する面の複数の溝101Aと複数の凸部101Bの位置及び面積に関連付けて形成することも可能である。
【0046】
一例としては、凸部101Bの背面部相当範囲をほぼ成膜範囲とし、溝101Aの背面部相当範囲をほぼ非成膜範囲とすることが挙げられる。それにより、溝101Aと凸部101Bの凸凹構造による振幅増幅効果を、より効果的に発揮することが可能となる。
【0047】
(第3実施の形態)
図8は、上述したマスク104を用いて成膜した後の、図5におけるA−A断面を示す。分割された圧電体原材料膜102Aは約30μmの厚さを有し、マスク104の桟部104Bは厚さ約0.3mm、幅約0.3mmの例を示している。
【0048】
同図において、圧電体原材料膜102Aの桟部104Bの両側面近傍は、テーパー形状部102A1となっている。それは、エアロゾルデポジション法での成膜時に、基材である弾性体101に噴射された圧電体の原材料を含んだエアロゾル6の噴射状況による。
【0049】
即ち、全てがエアロゾル6Aのように弾性体101の上面に対して垂直に噴射されるのではなく、エアロゾル6Bのように斜め方向へ噴射されるエアロゾルも多く含まれている。その斜めに噴射されたエアロゾル6Bのうち、桟部104Bの側面下部に衝突して跳ね返り、成膜中の圧電体原材料膜102Aの桟部104B近傍の上面に至るものに含まれる微粉末が、成膜された圧電体原材料膜102Aを削り取るエッチング効果を果たす。その結果、テーパー形状部102A1が発生する。
【0050】
圧電体原材料膜102Aのうち、テーパー形状部102A1の上面には、電極膜103を形成することができない。即ち、スパッタ法又は印刷法にて電極膜形成時、テーパー形状部102A1の上面に電極膜103を形成しようとすると、電極膜形成用のマスク104とテーパー形状部102A1によって生まれる隙間から電極材料が入り込む。そして、弾性体101上面に電極膜103を形成してしまう。
【0051】
そのため、電極膜103はテーパー形状部102A1を避けた圧電体原材料膜102Aの平面上に形成せざるを得ないため、図9に示すように、電極膜103の面積は少し小さく形成される。
【0052】
この圧電体原材料膜102Aの成膜時のマスク104にて発生するマスク枠及び桟部104B近傍にて発生するテーパー形状部102A1を避けるために、特許第3015869号には、マスク104を弾性体101上面から浮かして配置する技術が開示されている。
【0053】
マスク104を圧電体原材料膜102Aの厚さよりも高い位置まで浮かせることによって、上述した桟部104Bの側面近傍のエッチング効果を排し、テーパー形状部102A1を避けることが可能となる。
【0054】
上記特許文献では、マスクの開口がエアロゾルを噴射するノズル開口面積より小さいか、ノズル開口面積とほぼ同等の例を説明している。しかしながら、所望の圧電特性を得るための大きな面積の圧電体原材料膜を得ることを目的として、大きな開口面積で桟部104Bの幅が小さいマスク104を採用し、ノズル開口面積より遥かに大きな面積の膜を成膜形成する場合は、以下の問題がある。
【0055】
即ち、マスク104を弾性体101上面から浮かして配置すると、そのために発生するマスク104と弾性体101間の隙間に、上述した斜めに噴射されたエアロゾル6Bが入り込んでそこに成膜する。そして、分割して成膜した圧電体原材料膜102Aの隣同士を連結する。
【0056】
即ち、特開2002−190512号公報で開示されているように、基材である弾性体101の成膜面垂直方向に対して30°〜45°傾けて噴射しても十分成膜するので、45°以下角度のエアロゾル6Bは、マスク104と弾性体101間の隙間で成膜する。
【0057】
図8で示した桟部104Bのように、幅0.3mmの場合は、0.15mm以上マスク104を浮かして配置すると、左右の両開口104Aから桟部104Bの下側に入り込む角度45°以下の斜め方向からのエアロゾル6Bによって、以下の不具合が生じる。
【0058】
即ち、本来分割して成膜したい圧電体原材料膜102Aが隣同士互いに連結した状態になり、熱処理時の圧電体原材料膜102Aの剥離防止効果が失せることになる。特に、圧電体上面とマスク面との距離を、上記特許第3015869号が推奨する0.7mm以上に設置すると、隣同士の圧電体原材料膜102Aを完全に連結してしまうが可能性が高い。
【0059】
そこで、分割された圧電体原材料膜102Aを連結させることがなく、かつより広い面積の電極膜103を形成するために、マスクの枠部及び桟部の断面側面に段差面又は斜面を形成する。
【0060】
図10は、マスクの枠部及び桟部の開口側の断面側面に段部を設けた例を示す。本例のマスク105は、開口を形成する枠及び桟部の開口側の断面側面に段部105Aを有する。その段部105Aは、弾性体101と接触する側の枠又は桟部の幅が小さくなるように形成する。
【0061】
マスク105の上面側の幅は0.3mm、マスク105全体の高さは0.3mmであり、弾性体101近傍部の幅を0.15mmとしている。同構成においては、上述した斜めに噴射されたエアロゾル6Bは段部105A近傍の側面に衝突し、圧電体原材料膜106はその側面近傍にてテーパ形状部106Aを形成する。しかし、それは弾性体101と接触する桟部又は枠の狭い部分の近傍に形成される。
【0062】
従って、より広い平面部を有する圧電体原材料膜106を得ることができ、広い面積を有する電極膜103の形成が可能となる。そして、マスク105は開口部間に弾性体101と接触する部分を有しているため、隣同士の圧電体原材料膜106が連結することがない。
【0063】
(第4の実施の形態)
図11は、マスクの枠部及び桟部の断面側面に斜面を設けた例を示す。マスク107の斜面は弾性体101との接触部が狭くなるように形成する。同例においても、第3の実施の形態と同様に、圧電体原材料膜108はその斜面下部近傍に、テーパー形状部108Aを形成する。しかし、それは弾性体101と接触する桟部又は枠の狭い部分の近傍に形成され、より広い平面部を有する圧電体原材料膜108を得ることができる。
【0064】
(第5実施の形態)
以上説明した実施の形態においては、弾性体101に接して回転する接触体との接触面と対向する裏側の平面部に圧電体原材料膜102又は102Aを成膜する例を挙げて説明した。しかし、圧電体の原材料が有するd31方向とd33方向の振動量又は振幅量によっては、圧電体原材料膜を弾性体101の側面周面に形成した方が良い場合がある。
【0065】
図12を用いて、その実施の形態を説明する。振動体200は、弾性体201の側面周面に圧電体原材料膜202を厚さtで成膜して構成される。厚さtは第1の実施の形態と同様、10〜100μm程度である。このような周面への圧電体原材料膜202の形成は、他の膜形成方法では困難である。
【0066】
即ち、印刷法はスクリーン印刷法を主としており、周面又は曲面への成膜形成は困難である。また、スパッタ法においては、わずかな隙間へも圧電体原材料膜202を形成するというその特性上から必要となる、弾性体201側面周面への成膜時の溝201Aと凸部201Bの凹凸面への成膜を避けるための治具を持つことは困難である。即ち、その治具を量産時に寸法がばらつく弾性体201に対応させることは困難である。
【0067】
それに対して、本発明の圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化して噴射して圧電素子を直接成膜形成する弾性体であれば、周面への成膜は可能であり、かつ成膜面と垂直な面に圧電体原材料膜202を形成することがない。
【0068】
従って、弾性体201の側面周面への成膜は、本発明の特徴を最十分生かした構成ということができる。尚、具体的な成膜は、弾性体201の円周中心を中心軸として回転させながら、その円周側面に対して垂直方向近傍からエアロゾル6を噴射して行う。
【0069】
また、弾性体201の円周側面上に開口を有するマスクを配置することで、圧電体原材料膜202の分割成膜を行うことが可能で、第2〜第4の実施の形態で説明した技術をこの実施の形態においても実施することができる。
【0070】
以上の本発明の実施の形態で説明したように、振動波モータとして必要な耐電圧を有する10〜100μm程度の均一的な組成から成る圧電体原材料膜を、安定的に量産可能な少工程にて形成した振動体を有する振動波モータを提供することができる。
【0071】
更には、圧電体原材料膜の成膜後の熱処理工程にて発生することがある、圧電体原材料膜が振動体から剥離する問題を解決する手段を有する振動波モータと、より良い圧電特性を発揮する電極膜を有する振動波モータを提供することができる。そして、分割された圧電体原材料膜を連結させることがなく、かつより広い面積の電極膜を形成することができる。
【0072】
また、圧電体原材料膜の成膜後の熱処理工程にて発生することがある、圧電体原材料膜が振動体から剥離する問題を解決する手段と、熱処理後の圧電体原材料膜上に配置する電極膜面積をより広く設ける手段を有する振動波モータも提供することができる。更には、従来のバルク材では必須であった約1200℃での焼成工程を、700〜900℃程度の低い温度で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】エアロゾルデポジション法によるセラミック構造物の作製装置の模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る振動波モータを構成する、圧電体原材料膜を形成した振動体を説明するための上面斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る振動波モータを構成する、圧電体原材料膜を形成した振動体を説明するための裏面斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る振動波モータを構成する、電極膜を形成後の振動体を説明するための裏面斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体のマスクを説明するための裏面斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体の分割して成膜された圧電体原材料膜を説明するための裏面斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る振動波モータを構成する、電極膜を形成後の振動体を説明するための裏面斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体に関連する従来技術の振動体の要部断面図である。
【図9】図8の振動体に電極膜を形成した状態の図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体の要部断面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体の要部断面図である。
【図12】本発明の第の5実施の形態に係る振動波モータを構成する振動体の裏面斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1 セラミック構造物の作製装置
2 膜形成部
3 エアロゾル発生部
4 エアロゾル搬送管
5 ノズル
6、6A、6B エアロゾル
7 セラミック構造物
100、200 振動体
101、201 弾性体
101A、201A 溝
101B、201B 凸部
101D 非成膜範囲
102、202 圧電体原材料膜
102A、106、108 分割された圧電体原材料膜
102A1、106A、108A テーパー形状部
103 電極膜
104、105 マスク
104A 開口
104B 桟部
105A 段部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、前記圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータの製造方法において、前記弾性体の端面に前記圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、前記圧電体を前記弾性体に直接に成膜形成することを特徴とする振動波モータの製造方法。
【請求項2】
前記弾性体に対して前記圧電体原材料膜を直接に成膜形成の後、熱処理を施すことを特徴とする請求項1記載の振動波モータの製造方法。
【請求項3】
前記熱処理の後、前記圧電体原材料膜上に電極膜を配置することを特徴とする請求項2記載の振動波モータの製造方法。
【請求項4】
前記電極膜を配置の後、該電極膜を通して所定の電圧を印加して分極処理を施し、圧電素子膜を形成することを特徴とする請求項3記載の振動波モータの製造方法。
【請求項5】
前記熱処理後の前記圧電体原材料膜の厚さは10〜100μmであることを特徴とする請求項3記載の振動波モータの製造方法。
【請求項6】
前記弾性体の端面上に開口を有するマスクを配置し、前記弾性体に前記圧電体原材料膜を分割して成膜形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の振動波モータの製造方法。
【請求項7】
分割して成膜形成した前記圧電体原材料膜上に配置する前記電極膜は、分割して成膜形成した前記圧電体原材料膜よりも小さくかつほぼ同一の形状に形成して配置されることを特徴とする請求項6記載の振動波モータの製造方法。
【請求項8】
前記マスクの枠部及び桟部の前記開口側の断面側面に、段部又は斜面を形成することを特徴とする請求項7記載の振動波モータの製造方法。
【請求項9】
前記弾性体は円環又は円盤状の形状から成り、前記圧電体原材料膜は前記弾性体の一平面に成膜形成することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の振動波モータの製造方法。
【請求項10】
前記弾性体は、一平面と相対する平面に複数の溝と複数の凸部を有し、分割して成膜形成した前記圧電体原材料膜は、一平面に複数の前記溝と複数の前記凸部の位置及び面積に関連付けて分割して成膜形成されることを特徴とする請求項9記載の振動波モータの製造方法。
【請求項11】
前記弾性体は円環又は円盤状の形状から成り、前記圧電体原材料膜は、前記弾性体の側面周面に成膜形成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の振動波モータの製造方法。
【請求項12】
圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、前記圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータにおいて、前記弾性体の端面に前記圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、前記圧電体を前記弾性体に直接に成膜形成することを特徴とする振動波モータ。
【請求項1】
圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、前記圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータの製造方法において、前記弾性体の端面に前記圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、前記圧電体を前記弾性体に直接に成膜形成することを特徴とする振動波モータの製造方法。
【請求項2】
前記弾性体に対して前記圧電体原材料膜を直接に成膜形成の後、熱処理を施すことを特徴とする請求項1記載の振動波モータの製造方法。
【請求項3】
前記熱処理の後、前記圧電体原材料膜上に電極膜を配置することを特徴とする請求項2記載の振動波モータの製造方法。
【請求項4】
前記電極膜を配置の後、該電極膜を通して所定の電圧を印加して分極処理を施し、圧電素子膜を形成することを特徴とする請求項3記載の振動波モータの製造方法。
【請求項5】
前記熱処理後の前記圧電体原材料膜の厚さは10〜100μmであることを特徴とする請求項3記載の振動波モータの製造方法。
【請求項6】
前記弾性体の端面上に開口を有するマスクを配置し、前記弾性体に前記圧電体原材料膜を分割して成膜形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の振動波モータの製造方法。
【請求項7】
分割して成膜形成した前記圧電体原材料膜上に配置する前記電極膜は、分割して成膜形成した前記圧電体原材料膜よりも小さくかつほぼ同一の形状に形成して配置されることを特徴とする請求項6記載の振動波モータの製造方法。
【請求項8】
前記マスクの枠部及び桟部の前記開口側の断面側面に、段部又は斜面を形成することを特徴とする請求項7記載の振動波モータの製造方法。
【請求項9】
前記弾性体は円環又は円盤状の形状から成り、前記圧電体原材料膜は前記弾性体の一平面に成膜形成することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の振動波モータの製造方法。
【請求項10】
前記弾性体は、一平面と相対する平面に複数の溝と複数の凸部を有し、分割して成膜形成した前記圧電体原材料膜は、一平面に複数の前記溝と複数の前記凸部の位置及び面積に関連付けて分割して成膜形成されることを特徴とする請求項9記載の振動波モータの製造方法。
【請求項11】
前記弾性体は円環又は円盤状の形状から成り、前記圧電体原材料膜は、前記弾性体の側面周面に成膜形成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の振動波モータの製造方法。
【請求項12】
圧電体に周波電圧を印加して金属製の弾性体に振動を励起し、前記圧電体と弾性体からなる振動体に接触する接触体を相対的に移動させる振動波モータにおいて、前記弾性体の端面に前記圧電体の原材料微粉末をエアロゾル化した圧電体原材料膜を噴射し、前記圧電体を前記弾性体に直接に成膜形成することを特徴とする振動波モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−294293(P2008−294293A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139309(P2007−139309)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(000104630)キヤノンプレシジョン株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(000104630)キヤノンプレシジョン株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
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