説明

排ガス浄化装置

【課題】ディーゼルエンジンがアイドル状態のときにDPFの再生を行う場合において、排気管から排出される排ガスの排ガス温度とDPFの再生時間とを適切に制御できる排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】DPF13の再生を開始する際、ECU20は、ディーゼルエンジン30がアイドル状態であると判定した場合には、排出温度が目標排出温度T以下になると共にDPF13の床温が目標床温T以上になるディーゼルエンジン30の回転数の範囲を算出する。メモリ40に組み込まれた放熱マップに基づいて、当該範囲内でDPF13の再生時間が最短となる回転数を算出し、ディーゼルエンジン30の回転数を、当該算出された回転数に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排ガス浄化装置に係り、特に、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを浄化するための排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排ガス中には、規制対象のパティキュレートマター(PM)が含まれている。排ガスからPMを除去する方法として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を排気管に設けてろ過する方法が一般的に知られている(例えば、特許文献1等参照)。DPFに堆積したPMは、定期的に燃焼させて取り除く(DPFの再生)必要があるが、この再生には、DPF床温をおおよそ600℃以上にする必要がある。DPF床温の上昇は、例えば、排ガス中に燃料を添加し、DPFの上流側に設けられた酸化触媒で燃料を酸化させて排ガス温度を上昇させることによって行われている。排ガス中に添加される燃料の添加量は、排ガス流量やPMの堆積量により決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−291826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載されたディーゼルエンジンがアイドル状態のときにDPFの再生を行う場合には、排ガス中に燃料の添加を行っても、走行時の状態に比べて排ガス流量が少ないので、排ガス温度を上昇させることが困難となる。そのため、DPFの再生時には、ディーゼルエンジンの回転数を上昇することにより、排ガス流量を増加させて排ガス温度を上昇させることが行われる。しかし、前述した如く、回転数を上げることで、酸化触媒及びDPFに流入する排ガス温度を上げることは可能となるが、アイドル状態で排ガス温度を上げ過ぎると、車両が停車中であるために、排気管周辺の物体が、高温の排ガスの影響を継続して受け続ける為に好ましくない。逆に、排ガス温度が低いままでDPFの再生を行おうとすると、再生時間が長くなってしまい、燃料の添加量が増加して燃費悪化の要因になるといった問題点があった。
【0005】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、ディーゼルエンジンがアイドル状態のときにDPFの再生を行う場合において、排気管から排出される排ガスの排出温度とDPFの再生時間とを適切に制御できる排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る排ガス浄化装置は、ディーゼルエンジンから排気管を介して排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置であって、排ガスに燃料を添加する燃料添加手段と、排気管に設けられた酸化触媒と、酸化触媒の下流側で排気管に設けられたDPFと、排気管から外気へ排出される排ガスの温度である排出温度についての目標排出温度とDPFの再生時におけるDPFの床温についての目標床温とが設定された制御装置とを備え、制御装置は、DPFの再生を開始する際、ディーゼルエンジンがアイドル状態であると判定した場合には、排出温度が目標排出温度以下になると共にDPFの床温が目標床温以上になるディーゼルエンジンの回転数の範囲を算出し、ディーゼルエンジンの回転数を、算出された範囲内に制御する。このような制御により、DPFの再生時間が過度に長くならない範囲で、排出温度が目標温度以下に抑えられる。
DPFの下流側で排気管を流通する排ガスの排ガス温度を検出する流通排ガス温度検出手段と、ディーゼルエンジンに吸引される空気量を検出する吸入空気量検出手段と、外気温を検出する外気温検出手段とを備え、制御装置は、流通排ガス温度検出手段によって検出された排ガス温度と、吸入空気量検出手段によって検出された吸入空気量と、外気温検出手段によって検出された外気温とから、DPFの下流側で排気管から放熱される放熱量を推定する放熱マップを有し、制御装置は、排ガス温度と放熱量とから、ディーゼルエンジンの回転数の範囲を推定してもよい。
制御装置は、その範囲内において、DPFの再生時間に基づいてディーゼルエンジンの回転数を算出してもよい。
制御装置は、その範囲内において、ディーゼルエンジンの燃費に基づいてディーゼルエンジンの回転数を算出してもよい。この場合、ディーゼルエンジンの回転数は、フィードバック制御により決定してもよい。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、DPFの再生を開始する際、ディーゼルエンジンがアイドル状態である場合には、排出温度が目標排出温度以下になるディーゼルエンジンの回転数の範囲を算出し、ディーゼルエンジンの回転数をその範囲内に制御することにより、DPFの再生時間が過度に長くならない範囲で、排出温度が目標排出温度以下に抑えられるので、排気管から排出される排ガスの排出温度とDPFの再生時間とを適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る排ガス浄化装置を備えたディーゼルエンジンの構成模式図である。
【図2】実施の形態1に係る排ガス浄化装置に組み込まれた放熱マップである。
【図3】実施の形態1に係る排ガス浄化装置において、ディーゼルエンジンの回転数の制御動作を説明するためのグラフである。
【図4】実施の形態2に係る排ガス浄化装置において、燃費の変化を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る排ガス浄化装置を備えたディーゼルエンジンの構成模式図を図1に示す。直列4気筒のディーゼルエンジン30のシリンダヘッド1には、吸気マニフォルド3及び排気マニフォルド4が接続されている。4つの気筒2のそれぞれには、気筒2内に燃料(軽油)を噴射するインジェクション9が設けられている。それぞれのインジェクション9は、共通のコモンレール8に接続されている。コモンレール8には、燃料通路5の一端が接続され、燃料通路5の他端は、燃料供給ポンプ6に接続されている。コモンレール8は、燃料供給ポンプ6から高圧の燃料の供給を受けることにより、常に内部に所定の圧力の高圧燃料が維持されるようになっている。燃料供給ポンプ6には、燃料通路7の一端が接続され、燃料通路7の他端は、図示しない燃料タンクに接続されている。コモンレール8内の高圧燃料の圧力を利用し、インジェクション9から、所望の量の燃料が気筒2内に噴射されるようになっている。
【0010】
吸気マニフォルド3には、吸気管14が接続されている。吸気管14には、吸気管14を流通する空気の温度を検出するための吸気温センサ15と、吸気管14を流通する空気の量を検出するためのエアフローセンサ16とが設けられている。ここで、吸気管14を流通する空気は、ディーゼルエンジン30の外部から吸引された空気(外気)であるため、吸気温センサ15は、外気温t(℃)を検出するための外気温検出手段を構成し、エアフローセンサ16は、ディーゼルエンジン30に吸引される吸入空気量m(g/sec)を検出するための吸入空気量検出手段を構成する。
【0011】
排気マニフォルド4には、排ガスが流通する排気管11が接続されている。また、排気マニフォルド4には、排ガスに燃料を添加する燃料添加手段である燃料添加弁10が設けられている。燃料添加弁10は、燃料通路17を介して燃料供給ポンプ6と連通しており、コモンレール8内の圧力よりも低圧の燃料を供給するようになっている。排気管11には、上流から下流に向って、酸化触媒12及びDPF13が設けられている。酸化触媒12及びDPF13の間と、DPF13の下流側直近とにはそれぞれ、流通する排ガスの温度を検出するための温度センサ23及び24が設けられている。ここで、温度センサ24は、DPF13の下流側で排気管11を流通する排ガスの排ガス温度t(℃)を検出するための流通排ガス温度検出手段を構成する。また、DPF13には、DPF13の前後の差圧p(Pa)を検出するための差圧センサ25が設けられている。
【0012】
制御装置としてECU20が設けられ、ECU20には、燃料供給ポンプ6と、各インジェクション9と、燃料添加弁10と、吸気温センサ15と、エアフローセンサ16と、温度センサ23及び24と、差圧センサ25とが電気的に接続されている。また、ECU20には、運転者により操作されるアクセルペダル19の踏み角を検出するアクセルセンサ18と、ディーゼルエンジン30が搭載された図示しない車両の車速を検出するための車速センサ21と、クランクシャフト26の端部付近に配置されてディーゼルエンジン30の回転数を検出する回転数センサ22とが電気的に接続されている。さらに、ECU20は、メモリ40を有している。メモリ40には、排気管11から外気へ排出される排ガスの温度(以下、「排出温度」という)についての目標排出温度T(℃)と、DPF13の再生時における床温についての目標床温T(℃)と、DPF13の前後の差圧についての基準差圧P(Pa)とが設定されている。この実施の形態1では、目標排出温度Tを300℃とし、目標床温Tを610℃として説明する。
【0013】
メモリ40にはさらに、DPF13よりも下流側の排気管11から放熱される放熱量ΔTを推定するための放熱マップが組み込まれている。ここで、放熱量ΔTとは、DPF13から流出した直後の排ガスが排気管11から外気へ排出されるまでの間に低下する温度を意味する。この放熱マップの一例を図2に示す。放熱マップは、縦方向にΔt(=t−t)をとり、横方向にエアフローセンサ16によって検出された吸入空気量mをとったマトリックスであり、各Δt及びmの組み合わせに対して、放熱量ΔTが特定されている。なお、ここで吸入空気量mを用いているのは、高温の排ガスの流量を直接正確に計測することは難しい為、排ガスの流量と相関関係のある吸入空気量mにて、代用している。例えば、Δt=550℃かつm=30g/secの場合には、放熱量ΔT=320℃であるので、排ガス温度tが580℃であったとすると、排出温度は、260℃(=580℃−320℃)となる。尚、放熱マップにおける各数値は、実験やシミュレーション等により求めた値であり、ディーゼルエンジン30の仕様等に依存する値である。
【0014】
次に、この発明の実施の形態1に係る排ガス浄化装置を備えたディーゼルエンジンの動作について説明する。
図1に示されるように、ディーゼルエンジン30が始動すると、燃料供給ポンプ6は、燃料通路7,5を介して、図示しない燃料タンクから燃料をコモンレール8に供給し、コモンレール8内に所定の高圧燃料を維持する。
【0015】
また、ディーゼルエンジン30が始動すると、吸入空気が、吸気管14及び吸気マニフォルド3を介して各気筒2内に吸入される。この際、吸気温センサ15によって、外気から吸引されて吸気管14を流通する空気の温度、すなわち外気温tが検出されると共に、エアフローセンサ16によって、外気から吸入吸引されて吸気管14を流通する空気の量、すなわちディーゼルエンジン30に吸引される吸入空気量mが検出される。外気温t及び吸入空気量mについての検出値は、ECU20に伝送される。各気筒2内では、図示しないピストンにより空気が圧縮されて高温高圧になると共に、各インジェクション9から燃料が噴射される。これにより、各気筒2内で燃焼が起こる。各気筒2内における燃焼により生じた排ガスは、各気筒2から排出されて排気マニフォルド4により集められ、排気管11を流通する。排気管11を流通する排ガスは、酸化触媒12を通過後、DPF13に流入し、DPF13によって、排ガス中に含まれるPMが捕捉された後、外気へ排出される。
【0016】
DPF13に捕捉されたPMの量が増加していくと、差圧センサ25によって検出される差圧pが上昇していく。ECU20は、差圧pが基準差圧P以上となったら、DPF13を再生する必要があると判断する。DPF13の再生を開始する前に、ECU20は、アクセルセンサ18及び車速センサ21の検出値に基づいて、ディーゼルエンジン30を搭載した車両がアイドル状態か否かを判定する。アクセルセンサ18の検出値によって、運転手がアクセルを踏んでいないことと、車速センサ21の検出値によって、当該車両が停車していることとの両方が満たされた場合には、アイドル状態であると判定する。
【0017】
車両がアイドル状態にないときには、ECU20は、公知の技術により、DPF13の再生処理を行う。ECU20は、温度センサ23及び24の検出値と、エアフローセンサ16の検出値とに基づいて、DPF13の床温が目標床温Tとなる燃料添加量を算出し、燃料添加弁10から当該燃料添加量で排ガス中に燃料を添加する。添加された燃料は、排ガスと共に酸化触媒12に流入する。酸化触媒12によって燃料が排気ガス中に含まれる酸素と反応して酸化されることにより、その反応熱で排ガス温度が上昇する。反応熱によって温度が上昇した排ガスがDPF13に流入することにより、DPF13の床温が目標床温Tとなり、DPF13に捕捉されているPMが燃焼されて、DPF13から除去される。ECU20は、差圧センサ25の検出値に基づいて、DPF13に捕捉されたPMが除去されたと判断したら、燃料添加弁10からの燃料添加を停止して、DPF13の再生を終了する。
【0018】
一方、車両がアイドル状態のときには、ECU20は、ディーゼルエンジン30を再生可能な状態とする処理と、再生状態を最適にする処理とを行う。
まず、ディーゼルエンジン30の回転数を所定回転数まで上昇(アイドルアップ)させて、排ガス流量及び吸入空気量を増加させる。そして、この処理により、排ガス流量を増加させた後に、燃料添加弁10からの燃料の添加を開始し、DPF13の床温を、目標床温Tとする。
ECU20は、吸気温センサ15及び温度センサ24の検出値からΔtを算出し、このΔt及びエアフローセンサ16によって検出された吸入空気量mを用い、図2に示された放熱マップに基づいて、放熱量ΔTを推定する。例えば、外気温t=30℃、排ガス温度t=580℃、吸入空気量m=30g/secとすると、Δt=t−t=550℃となるので、放熱マップから、ΔT=320℃と推定される。すると、排出温度は260℃(=t−ΔT=580℃−320℃)となり、メモリ40に設定されている目標排出温度T=300℃よりも低いので、排ガスの流量を増加させてDPF13の再生時間をさらに短くすることができる。具体的には、排出温度260℃は、目標排出温度T=300℃よりも40℃低いので、放熱量ΔTを40℃小さくすること、すなわち放熱量ΔTを280℃にすることができる。放熱マップにおいて、Δt=550℃の場合には、ΔT=280℃となる吸入空気量mは、40g/secである。ECU20は、吸入空気量m=40g/secとなるディーゼルエンジン30の回転数を算出する。算出された回転数は、DPF13の再生に要する時間に基づく回転数、すなわちDPF13の再生時間が最短となる回転数である。ディーゼルエンジン30を、算出された回転数に制御することにより、排出温度が目標排出温度T以下となる条件で、DPF13の再生時間が最短となる。燃料添加弁10から添加される燃料添加量を算出してDPF13の再生を開始してからDPF13の再生を終了するまでの動作については、車両がアイドル状態にないときと同じである。
【0019】
次に、ディーゼルエンジン30の回転数の制御について説明する。図3に示されたグラフは、横軸に吸入空気量(排ガス流量及びディーゼルエンジン30の回転数に相当する)をとり、縦軸にDPF13の床温をとっている。DPF13の床温がある温度t’以下では、捕捉されたPMが燃焼されない(再生不可)ので、温度t’以下の領域を斜線で塗りつぶしている。また、吸入空気量mがある量m’以下では、排ガス流量が少なくなり、その状態で燃料を添加すると、添加雰囲気温度が低くなって燃料が反応しなくなる。すなわち、添加された燃料は排ガスの熱を奪って気化するが、排ガス流量が少ないと、相対的に排ガスの温度低下が大きくなる。排ガスの温度が下がると、酸化触媒12の温度も下がり、酸化触媒12の温度が活性温度以下になると、添加された燃料が触媒で反応しなくなる。このため、燃料を添加してもPMが燃焼されず、DPF13の再生ができなくなるので、添加不可の領域として、吸入空気量m’以下の領域を斜線で塗りつぶしている。また、排出温度を一定に保ったままDPF13の床温を高くするには、放熱量ΔTを大きくしなければならないので、床温の増加に伴い吸入空気量mを小さくしなければならない。従って、排気管11から排出される排ガスの温度を一定に保ったままDPF13の目標床温を達成するための境界線Lは、右肩下がりの傾きをもつ直線となる。この境界線Lよりも上方の領域は、排出温度またはDPF13の床温のいずれかが目標値を達成できない領域となるので、この領域を斜線で塗りつぶしている。図3において斜線で塗りつぶされていない領域に基づいて、ディーゼルエンジン30の制御される回転数の範囲が算出される。
【0020】
実施の形態1における例では、図3において、目標床温T=610℃が温度t’よりも上方に位置している。吸入空気量m=30g/secの条件は、上記領域内に位置している。実施の形態1において、DPF13の再生時間を最短とすべく吸入空気量mを40g/secに上昇したが、この動作は、図3において、目標床温T=610℃の条件で、境界線L上まで移動したことに相当する(矢印A)。この境界線L上の位置における吸入空気量が40g/secに相当する。目標床温T=610℃の条件において、ディーゼルエンジン30の制御される回転数の範囲は、吸入空気量mがm’よりも大きく、かつ、40g/sec以下の範囲となる。目標床温Tが変更されれば(例えば、T’とする)、算出可能な範囲は、吸入空気量mがm’よりも大きく、かつ、目標床温T’の値を通る横軸に平行な直線と境界線Lとの交点における空気量(m”)以下の範囲となる。
【0021】
このように、DPF13の再生を開始する際、ディーゼルエンジン30がアイドル状態である場合には、排出温度が目標排出温度T以下になるディーゼルエンジン30の回転数の範囲を算出し、ディーゼルエンジン30の回転数をその範囲内に制御することにより、DPF13の再生時間が過度に長くならない範囲で、排出温度が目標排出温度T以下に抑えられるので、排気管11から排出される排ガスの排出温度とDPF12の再生時間とを適切に制御することができる。
【0022】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る排ガス浄化装置について説明する。
実施の形態2に係る排ガス浄化装置を備えたディーゼルエンジンの構成と、車両がアイドル状態にないときにDPFを再生する動作と、車両がアイドル状態のときにDPFを再生する動作であって、ディーゼルエンジンの制御される回転数の範囲を算出する動作とについては、実施の形態1と同様である。従って、実施の形態2において、各構成要素を指す参照符号は、図1の参照符号と同一の符号を使用する。
この発明の実施の形態2に係る排ガス浄化装置は、当該回転数の範囲内において、ディーゼルエンジン30の燃費が最良となる回転数を算出して、ディーゼルエンジン30の回転数を当該算出された回転数に制御するものである。
【0023】
車両がアイドル状態にあるときにDPF13を再生する場合の燃費は、(1)通常のアイドル状態を維持するために要する燃料と、(2)排ガス流量(言い換えれば、吸入空気量)を増加するために、通常のアイドル状態の回転数から回転数を上昇するのに要する燃料と、(3)DPF13の再生のために燃料添加弁10から排ガスへ添加される燃料とからなる。上記(2)を増加すると上記(3)も増加するが、これに伴い再生速度が上昇するので(再生時間が短くなるので)、再生速度とのバランスにより、上記(1)〜(3)からなる燃費には、図4に示されるように、最良となる排ガス流量、すなわちディーゼルエンジン30の回転数が存在することが理解できる。これを前提として、実施の形態2では、排出温度が目標排出温度T以下で、かつ、DPF13の床温が目標床温Tとなるディーゼルエンジン30の回転数の範囲のうち、燃費が最良となる回転数に制御する。
【0024】
まず、実施の形態1と同様にして、DPF13の再生時間が最短となる回転数にディーゼルエンジン30の回転数を制御する。その後、ディーゼルエンジン30の回転数を徐々に低下していき、それぞれの条件で燃費を算出し、燃費が最良となる回転数を算出する(フィードバック制御)。図4に示される燃費と排ガス流量との関係を考慮すると、ディーゼルエンジン30の回転数を低下した際に燃費が上昇する場合には、DPF13の再生時間が最短となる回転数が、燃費が最良となる回転数であると考えられる。
【0025】
このように、燃費を最良にしながら、排気管11から排出される排ガスの排出温度とDPF12の再生時間とを適切に制御することができる。尚、燃費が最良となる回転数を算出する方法としては、上述したフィードバック制御に限定するものではなく、ECU20に計算式を組み込んでおき、各種条件から算出したり、マップ等をメモリ40に組み込んでおいて、マップ等に基づいて算出したりしてもよい。
【0026】
実施の形態1及び2では、燃料添加手段として、排ガスに直接燃料を添加する燃料添加弁10を使用したが、これに限定するものではない。ポスト噴射として、インジェクション9から気筒2に燃料を添加する形態であってもよい。この場合には、燃料添加手段はインジェクション9となる。
【0027】
実施の形態1及び2では、ディーゼルエンジン30は、直列4気筒のディーゼルエンジンであったが、これに限定するものではない。気筒の数は任意であってもよく、また、直列型に限定されず、V型や水平対向型であってもよい。
【0028】
実施の形態1及び2で使用した各数値はあくまでも、排ガス浄化装置の動作を説明するための例示に過ぎず、ディーゼルエンジンの仕様や走行条件等によって変化するものである。特に、図2に示された放熱マップ中の数値も例示に過ぎず、ディーゼルエンジンの仕様や走行する地域の環境等に基づいて、実験やシミュレーション等により数値を特定する必要がある。
【符号の説明】
【0029】
9 インジェクション(燃料添加手段)、10 燃料添加弁(燃料添加手段)、11 排気管、12 酸化触媒、13 DPF、15 吸気温センサ(外気温検出手段)、16 エアフローセンサ(吸入空気量検出手段)、20 ECU(制御装置)、24 温度センサ(流通排ガス温度検出手段)、30 ディーゼルエンジン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンから排気管を介して排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置であって、
前記排ガスに燃料を添加する燃料添加手段と、
前記排気管に設けられた酸化触媒と、
該酸化触媒の下流側で前記排気管に設けられたDPFと、
前記排気管から外気へ排出される排ガスの温度である排出温度についての目標排出温度と前記DPFの再生時における該DPFの床温についての目標床温とが設定された制御装置と
を備え、
該制御装置は、前記DPFの再生を開始する際、前記ディーゼルエンジンがアイドル状態であると判定した場合には、前記排出温度が前記目標排出温度以下になると共に前記DPFの床温が前記目標床温以上になる前記ディーゼルエンジンの回転数の範囲を算出し、該回転数を該範囲内に制御する排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記DPFの下流側で前記排気管を流通する排ガスの排ガス温度を検出する流通排ガス温度検出手段と、
前記ディーゼルエンジンに吸引される空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
外気温を検出する外気温検出手段と
を備え、
前記制御装置は、前記流通排ガス温度検出手段によって検出された排ガス温度と、前記吸入空気量検出手段によって検出された吸入空気量と、前記外気温検出手段によって検出された外気温とから、前記DPFの下流側で前記排気管から放熱される放熱量を推定する放熱マップを有し、
前記制御装置は、前記排ガス温度と前記放熱量とから、前記範囲を推定する、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記範囲内において、前記DPFの再生時間に基づいて前記ディーゼルエンジンの回転数を算出する、請求項1または2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記範囲内において、前記ディーゼルエンジンの燃費に基づいて前記ディーゼルエンジンの回転数を算出する、請求項1または2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記ディーゼルエンジンの回転数は、フィードバック制御により決定される、請求項4に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−47078(P2012−47078A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188510(P2010−188510)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】