説明

撮影装置

【課題】撮影光学系の一部の構成要素のみを補正対象とすることで、最適なAFサーチ範囲を合理的に決定する。
【解決手段】撮影光路を屈曲させ、互いに略直交する被写体側光路(光軸S1)と撮像素子側光路(光軸S2)とする撮影位置と、撮像素子側光路から退避した退避位置との間で移動する可動式のミラー40を設ける。被写体側光路を遮光する遮蔽位置と、被写体側光路を開放する開放位置との間で移動する可動式のレンズバリア41を設ける。ミラー40を退避位置へ移動させ、レンズバリア41を遮蔽位置に移動することにより形成される補正用光路(延長線S2′)上に、テストパターンを撮像素子22に向けて発生するテストパターン発生部46を設ける。そして、テストパターンを撮像画像のコントラストを最大とするフォーカスレンズ45の合焦位置を検出し、この合焦位置の基準位置からの変位量に基づき、AFサーチ範囲を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカス機構を備えた撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮影装置には、オートフォーカス(AF:自動焦点調節)機構が設けられている。このAF機構は、フォーカスレンズを移動させながら被写体の撮像を行い、画像のコントラストが最大となる位置を合焦位置として決定する方式(いわゆるコントラストAF方式)が一般的である。このコントラストAF方式では、フォーカスレンズを、光軸に沿って設定した所定のサーチ範囲の一方の端から動かし、コントラストが最大となる点で動作を終了する。
【0003】
このAF動作は、レリーズボタンが操作されてから撮影動作を実行するまでの間に行われるため、シャッタラグを短縮するには、AF動作時のサーチ範囲できるだけ短く設定することが好ましい。しかし、フォーカスレンズを含む光学系やそれを保持する枠体等の物理的性質は、温度、湿度等の環境変化や経時変化により変化し、合焦距離とフォーカスレンズの基準位置との関係は一定ではないため、このフォーカスレンズの基準位置からのずれを考慮して、サーチ範囲を広めに設定する必要がある。特に、撮影光学系にプラスチックレンズが含まれる場合には、環境変化に対する物理的性質の変化が大きいため、サーチ範囲は広めに設定せざるを得ない。
【0004】
かかる問題に関して、特許文献1では、温度センサ、及び、温度領域ごとに異なる制御データを記憶したメモリを撮影装置内に設け、温度センサが検出した温度が含まれる温度領域の制御データを用いてレンズの駆動制御を行うことにより、環境変化に対する補正を行うことが提案されている。同様に、特許文献2,3では、温度センサを設け、検出温度に基づいてレンズの焦点位置の補正を行う方法が提案されている。しかしながら、上記のように温度センサを用いて補正を行う方法では、レンズの実際の温度を測定することは難しく、また、温度等の他の環境条件や経時変化を検出することができないため、ずれ量の推測値と実際のずれ量との間に差が生じ、十分な補正精度は得られない。
【0005】
また、上記問題に関連し、特許文献4には、撮像素子の撮影光学系に対する相対的な位置(角度)を補正するために、テストチャートを付したパネルを撮影光学系の前面に出し入れ自在に設け、撮像素子によりテストチャートを撮像しながらコントラストが最大となるように撮影光学系と撮像素子との相対位置関係を補正する補正方法が開示されている。
【特許文献1】特開平8−94910号公報
【特許文献2】特開平9−304678号公報
【特許文献3】特開2005−196173号公報
【特許文献4】特開2002−27309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4の補正方法は、特許文献1〜3の方法のように間接的な測定値に基づいて補正を行うのではなく、所定位置に位置するテストチャートを実際に撮像した結果に基づき、直接的に補正を行うものであるから、特許文献1〜3に係わる問題点を解決することができる。特許文献4の補正方法では、撮影光学系の全ての構成要素を用いて補正を行っているが、ガラスレンズの物理的特性は、環境変化や経時変化が殆ど生じないため、補正対象とする必要は特にない。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、撮影光学系の一部の構成要素のみを補正対象とすることで、最適なAFサーチ範囲を合理的に決定することができる撮影装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の撮影装置は、フォーカスレンズを光軸方向に所定サーチ範囲内を移動させ、撮像素子により前記フォーカスレンズを介して撮像した結果得られる画像のコントラストに基づいて焦点調節を行う自動焦点調節機構を備えた撮影装置において、前記撮像素子の撮像光路を、前記撮像素子から被写体までの撮影光路から、この撮影光路の途中から分岐してなる補正用光路へ変更する撮像光路変更手段と、前記撮像光路変更手段によって変更された補正用光路上に位置し、前記撮像素子にテストパターンを入射させるテストパターン発生手段と、前記テストパターンを前記撮像素子が撮像した結果得られる画像のコントラストから前記フォーカスレンズの合焦位置を検出し、この合焦位置の基準位置からの変位量に基づき、前記サーチ範囲を補正するサーチ範囲補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
なお、前記撮像光路変更手段は、前記撮影光路を屈曲させて、互いに略直交する被写体側光路と撮像素子側光路とする屈曲光学部材と、この屈曲光学部材を前記撮像素子側光路上から退避させ、前記撮像素子側光路及びその延長線上を前記補正用光路とする移動手段と、前記被写体側光路を遮蔽する遮蔽手段と、からなることが好ましい。前記屈曲光学部材は、ミラーであることが好ましい。
【0010】
また、前記屈曲光学部材は、プリズムであることも好ましい。この場合、前記移動手段は、前記プリズムを前記撮像素子側光路に略直交する方向にスライド移動させることにより、前記撮像素子側光路上から退避させることが好ましい。また、前記移動手段は、前記プリズムを前記被写体側光路の光軸周りに回転させることにより、前記撮像素子側光路上から退避させることも好ましい。
【0011】
また、前記遮蔽手段は、前記被写体側光路上の被写体側レンズの前面を保護する可動式のレンズバリアであることが好ましい。
【0012】
また、前記撮像光路変更手段は、前記撮影光路を屈曲させて、互いに略直交する被写体側光路と撮像素子側光路とするミラーと、前記撮像素子側光路上から退避させ、前記撮像素子側光路及びその延長線上を前記補正用光路とするとともに、前記被写体側光路を遮蔽するように前記ミラーを移動させる移動手段と、からなることも好ましい。この場合、遮蔽手段を別途設ける必要がない。
【0013】
また、前記撮像光路変更手段は、光路を屈曲させて、前記撮影光路を略直交する被写体側光路と撮像素子側光路とするように固定配置されたハーフミラーと、前記被写体側光路を遮蔽する遮蔽手段と、からなることも好ましい。
【0014】
また、前記補正用光路上の光学系にのみプラスチックレンズが含まれていることが好ましい。
【0015】
また、前記テストパターン撮像時の合焦位置が、被写体撮像時の合焦位置と略一致するように補正を行う補正レンズを、前記補正用光路上に設けることが好ましい。これにより、補正精度が向上する。
【0016】
また、電源投入を検出し、電源投入に応じて、前記撮像光路変更手段、前記テストパターン発生手段、及び前記サーチ範囲補正手段を順に動作させる制御手段を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、撮像素子の撮像光路を、撮影光路の途中から分岐してなる補正用光路へ変更し、テストパターン発生手段から補正用光路を介して撮像素子にテストパターンを入射させることによりフォーカスレンズの合焦位置の検出を行い、この合焦位置の基準位置からの変位量に基づいてAFサーチ範囲の補正を行っているので、撮影光学系の一部の構成要素のみを補正対象とし、最適なAFサーチ範囲を合理的に決定することができる。これにより、レリーズボタン操作時のシャッタラグが短縮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1において、デジタルカメラ2の前面には、ストロボ光を照射するストロボ発光部3と、撮影開口4が設けられている。撮影開口4からは、デジタルカメラ2の内部に組み込まれたレンズ装置5が備える第1レンズ6が露呈されている。この第1レンズ6は、被写体側レンズを構成する。また、デジタルカメラ2の上面には電源ボタン7とレリーズボタン8とが設けられている。
【0019】
図2において、デジタルカメラ2の背面には、LCD(液晶ディスプレイ)10と、ズーム操作に用いられるズームレバー11と、各種設定操作に用いられるカーソルボタン12、及び設定ボタン群13等が設けられている。LCD10は、動作モードに応じて、撮影画像、再生画像、各種設定メニュー等の表示を行う。ユーザは、LCD10に表示されるメニュー画面に基づき、カーソルボタン12及び設定ボタン群13を操作することで、動作モード(撮影モード、再生モード、設定モード等)の切り替え、ストロボ発光のオン/オフなどの各種設定を行うことができる。
【0020】
レリーズボタン8は、2段階押圧式のスイッチとなっている。デジタルカメラ2は、レリーズボタン8が半押しされるとAF動作を含む撮影準備動作を行い、レリーズボタン8が半押し後に全押しされると撮影動作を行う。
【0021】
図3において、CPU(制御手段)20は、前述の各操作部材から入力される指示信号に応じてデジタルカメラ2の各部の動作制御を行う。CPU20は、内部メモリ21が接続されており、内部メモリ21には制御プログラムや各種作業用データが記録されている。
【0022】
レンズ装置5には、CCD型イメージセンサやCMOS型イメージセンサ等の撮像素子22が組み込まれている。詳しくは後述するが、レンズ装置5内の各部は、駆動部23によって駆動され、撮影モード時には、第1レンズ6を介して外部から入射された被写体像を撮像素子22に入射させ、補正モード時には、内部に設けられたテストパターン発生部(テストパターン発生手段)46からテストパターン(光像)を撮像素子22に入射させる。撮像素子22は、入射された像を撮像し、順次に電気的な撮像信号に変換して出力する。
【0023】
撮像素子22から出力された撮像信号は、アナログ信号処理部24に入力され、ゲイン補正や2重相関サンプリング等のアナログ信号処理が施される。アナログ信号処理部24から出力された撮像信号は、A/D変換器25に入力され、デジタル信号に変換される。A/D変換器25から出力された撮像信号は、バス26を介し、メモリ制御部27により画像データとして画像メモリ28に書き込まれる。
【0024】
メモリ制御部27は、バス26に接続されたCPU20からの指示に基づき、画像メモリ28から画像データの読み出しを行う。この他、バス26には、AF積算部29、デジタル信号処理部30、圧縮伸張処理部31、外部メモリ制御部32、及び表示制御部33が接続されている。
【0025】
AF積算部29は、撮影モード中のレリーズボタン8の半押し時(AF動作時)や、本発明に係わる補正動作時に動作し、画像メモリ28から読み出された画像データ、または、A/D変換器25から出力された撮像信号から高周波成分を抽出し、抽出した高周波成分の積算値を算出する。具体的には、例えば、隣接する画素間の輝度信号値の差(絶対値化した値)を算出し、これをAFエリア内の各画素間について積算する。この算出値は、画像データのコントラストの度合いを表す評価値(AF評価値)であり、CPU20に入力される。CPU20には、AF動作制御部20aが構成されており、AF動作制御部20aは、駆動部23を制御し、レンズ装置5内のフォーカスレンズを移動させ(いわゆるAFサーチ)、AF評価値が最大(つまり、コントラストが最大)となる位置(合焦位置)にフォーカスレンズをセットする。また、CPU20には、AFサーチ範囲補正部(サーチ範囲補正手段)20bが構成されている。AFサーチ範囲補正部20bは、後述するように、補正動作時にAFサーチ範囲の補正を行う。
【0026】
デジタル信号処理部30は、画像メモリ28から読み出された画像データに対して、順次にYC変換、ガンマ補正、輪郭補正、ホワイトバランス補正などの所定の画像処理を施す。圧縮伸張処理部31は、撮影モード時のレリーズボタン8の全押しに応じて、デジタル信号処理部30により画像処理が施された画像データに対して、JPEG圧縮等の所定の圧縮処理を施す。
【0027】
外部メモリ制御部32は、撮影モード時には、メモリカード9へ画像データを書き込み、再生モード時には、メモリカード9に書き込まれた画像データの読み出しを行う。表示制御部33は、各モードにおいて、LCD10への画像データの表示やメニュー画面の表示等を行う。
【0028】
さらに、CPU20には、ストロボ発光部3を駆動するストロボ駆動部34や、電源ボタン7のオン操作に応じて各部に電源電圧を供給する電源部35が接続されている。
【0029】
図4において、レンズ装置5には、撮像素子22から被写体までの撮影光路を、ミラー(屈曲光学部材)40により略直角に屈曲させ、被写体側光路(光軸S1)と撮像素子側光路(光軸S2)とからなる屈曲光学系を構成するミラー40が設けられている。被写体側光路上には、前述の第1レンズ6が固定配置されており、第1レンズ6の被写体側には、電源オフ時に撮影開口4を塞いで第1レンズ6を保護する可動式のレンズバリア(遮蔽手段)41が設けられている。レンズバリア41は、駆動モータ41aにより、被写体側光路を遮蔽する遮蔽位置(2点差線で示す位置)と、被写体側光路を開放する開放位置(実線で示す位置)との間で移動する。なお、レンズバリア41の移動方式は、このスライド方式に限られず、適宜変更可能である。
【0030】
撮像素子側光路上には、ミラー40側から順に、第2レンズ42、第3レンズ43、露出制御機構44、及び第4レンズ45が配置され、入射光を撮像素子22の受光面に結像する。第2レンズ42は、固定配置されている。第3レンズ43は、レンズ装置5の焦点距離を変化させるズームレンズであり、駆動モータ43aにより光軸S2に沿って移動する。露出制御機構44は、絞り及びシャッタからなり、駆動モータ44aによって駆動され、撮像素子22への入射光量及び露光時間を変化させる。そして、第4レンズ45は、レンズ装置5の焦点調整を行なう結像レンズ群からなるフォーカスレンズであり、駆動モータ45aにより光軸S2に沿って移動する。
【0031】
なお、駆動モータ43a,45aは、ステッピングモータであり、駆動部23から供給される電圧パルスに基づいて動作を行う。また、撮像素子側光路上の第2〜第4レンズ42,43,45の少なくとも1つのレンズには、プラスチック材料からなるプラスチックレンズが使用されている。このプラスチックレンズの材料としては、アクリル系材料、ポリオレフィン系材料、ポリカーボネート等が適用可能である。被写体側光路上の第1レンズ6には、ガラスレンズが使用されている。
【0032】
ミラー40は、駆動モータ(移動手段)40aにより、撮影光路を上記のように屈曲させ、被写体光を撮像素子22に導くように配置された撮影位置(実線で示す位置)と、補正用光路(光軸S2+延長線S2′)を形成するように撮像素子側光路上から退避した退避位置(2点差線で示す位置)との間で移動する。補正用光路上(延長線S2′上)にテストパターン発生部46が固定配置されており、テストパターン発生部46は、ミラー40が退避位置に移動し、レンズバリア41が遮蔽位置に移動した際に、テストパターンを撮像素子22に入射させる。ミラー40及びレンズバリア41は、撮像素子22の撮像光路を、撮影光路から補正用光路へ変更する撮像光路変更手段として機能している。
【0033】
テストパターン発生部46は、パネル47と光源48とからなる。パネル47は、マイラー(PET樹脂)シートなどからなる遮光板にスリット(透光部)47aを設けたものであり、スリット47aによりテストチャートが描かれている。このテストチャートは、パターン間隔が広く低周波のものから、パターン間隔が狭く高周波のものまで、様々な周波数成分を含んでいる。光源48は、LEDなどからなり、パネル47の背後から撮像素子22側に向けて光を照射する。光源48からの照射光は、パネル47のスリット47aを透過することによって、テストパターン(光像)となり、補正用光路を介して撮像素子22に入射する。このテストパターン発生部46によるテストパターンの発生は、AFサーチ範囲を補正(最適化)する補正動作時に行われる。なお、パネル47は、上記構成に限られず、光拡散シートにテストパターンを印刷形成したものなど、種々の変形が可能である。
【0034】
次に、CPU20によって行われるAFサーチ範囲の補正動作について、図5のフローチャートを参照しながら説明を行う。電源ボタン7が操作され電源部35がオン状態となると、まず、ズームレンズ43を初期位置(Wide端)にセットし(ステップS1)、ミラー40を撮像素子側光路上から退避した退避位置にセットする(ステップS2)。これにより補正用光路が形成され、テストパターン発生部46が撮像素子22の撮像光路上に露呈される。なお、このとき、レンズバリア41は、遮蔽位置に位置し、被写体側光路を遮蔽している。
【0035】
次いで、テストパターン発生部46の光源48を点灯し、テストパターンを発生させる(ステップS3)。発生されたテストパターンは、補正用光路に沿って撮像素子22に入射する。この状態で、フォーカスレンズ45を駆動し、所定ステップずつ光軸S2に沿って移動させながら、撮像素子22によりテストパターンの撮像を行わせ、AF積算部29が算出したAF評価値が最大となるフォーカスレンズ45の位置(合焦位置)を検出する(ステップS4)。ここで検出された合焦位置は、図6に示すように、合焦検出位置Pdとして内部メモリ21に記録する。
【0036】
次いで、検出した合焦検出位置Pdを、予め内部メモリ21に記録されている合焦基準位置Pcと比較して変位量Δ(=Pd−Pc)を求め(ステップS5)、予め内部メモリ21に記録されているAFサーチ範囲Rcを、図7に示すように、変位量Δだけ変位させるように補正を行い、新たなAFサーチ範囲Rnを生成する(ステップS6)。この補正動作は、AFサーチ範囲補正部20bによって行われる。
【0037】
そして、ミラー40を撮影位置にセットし(ステップS7)、レンズバリア41を開放位置にセットして(ステップS8)、デジタルカメラ2を動作モードに応じた初期状態へ移行させる(ステップS9)。この後、デジタルカメラ2が撮影モードに設定され、AF動作を実行する場合には、AF動作制御部20aは、補正がなされた新たなAFサーチ範囲RnにてAFサーチを行う。
【0038】
また、所定の被写体距離に対する合焦位置は、ズーム倍率(ズームレンズ43の位置)に応じて変化するため、ズームレバー11によりズーム操作がなされた場合には、予め内部メモリ21に記録されているズーム時補正データDzに基づき、ズーム段ごとにAFサーチ範囲Rnの補正を行う。
【0039】
このように、本発明のデジタルカメラ2は、電源投入時に内部のテストパターンを撮像して合焦位置を検出し、この合焦位置の初期値(基準位置)からの変位量に基づいてAFサーチ範囲を変更するものである。この合焦位置のずれは、温度、湿度等の環境変化や経時変化によるものであり、AFサーチ範囲は、このずれ量を含めない分だけ狭く設定することができ、AF動作の高速化を図ることができる。
【0040】
なお、合焦基準位置Pcは、デジタルカメラ2の製造直後に、上記ステップS1〜S5のみを実施する特殊モードにより検出された合焦位置であり、AFサーチ範囲Rcは、無限遠撮影での合焦位置を基準に、設計上のサーチ幅と、マージン(環境変化による第1レンズ6やパネル47の位置ずれによる誤差量)とを考慮して定めたものである。また、合焦基準位置Pc及びAFサーチ範囲Rcは、図5の補正動作後に、合焦検出位置Pd及びAFサーチ範囲Rnによって置き換えるようにしてもよい。
【0041】
以下に、上記実施形態の変形例を示す。上記実施形態において、ミラー40及びレンズバリア41は、撮像素子22の撮像光路の変更を行う撮像光路変更手段であるが、これについては、種々の変形が可能である。
【0042】
図8は、上記実施形態において、ミラー40に代えてプリズム50を用いた例を示す。プリズム50は、駆動モータ51により、反射面50aが撮影光路を略直角に屈曲させるように配置された撮影位置(同図に示す位置)と、反射面50aが撮像素子側光路から退避した退避位置との間で移動可能に構成されている。プリズム50の反射面50aの退避動作は、プリズム50をスライド移動または回転させることにより行われる。図9は、プリズム50を光軸S1,S2に略直交する方向にスライド移動させることにより反射面50aを退避させる例を示している。この際、プリズム50は、撮像素子側光路から完全に退避する必要はなく、少なくとも光軸S2から退避すればよい。また、図10は、プリズム50を光軸S1の周りに略90°回転させて、反射面50aを光軸S2と略平行にすることにより、反射面50aを退避させる例を示している。
【0043】
図11は、上記実施形態において、ミラー40の移動機構を変更し、ミラー40を、撮影光路を略直角に屈曲させる撮影位置と、撮像素子側光路から退避するとともに被写体側を遮蔽する遮蔽位置(2点鎖線で示す位置)との間で移動可能と構成した例を示す。この場合、撮像光路変更手段としては、レンズバリア41は不要となる。
【0044】
図12は、上記実施形態において、撮影光路を略直角に屈曲させる撮影位置に、ミラー40に代えてハーフミラー52を固定配置した例を示す。ハーフミラー52は、テストパターン発生部46の光源48が点灯していない場合は、ミラーとして作用し、屈曲光学系を構成する。レンズバリア41が遮蔽位置にセットされ、光源48が点灯した場合には、テストパターンを透過させ、撮像素子22に入射させることができる。
【0045】
さらに、図13は、テストパターン発生部46の直前の補正用光路上(光軸S2′上)に補正レンズ60を設けた例を示す。撮像素子22からテストパターン発生部46までの距離は、デジタルカメラ2の高さ程度(10cm程度)しかなく、通常の被写体距離(1.2m程度〜無限遠)と大きく異なるため、撮像素子22からテストパターン発生部46までの撮像距離を補正するように補正レンズ60を設けている。補正レンズ60は、テストパターン撮影時の合焦位置が、被写体撮影時の合焦位置と略一致するように撮像距離の補正を行う。なお、この補正レンズ60は、図8,11,12の各変形例においても適用可能である。
【0046】
以上のように、本発明では、環境変化や経時変化による影響が大きいプラスチックレンズが含まれる一部の光学系のみを補正対象として、適正なAFサーチ範囲を合理的に決定している。本発明は、上記実施形態で示したように屈曲光学系に適用することが好適であり、屈曲光学系のデッドスペース(屈曲部近傍)にテストパターン発生部を配置することができるため、本発明を適用した撮影装置は、従来とサイズ的に同等である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】デジタルカメラの前面側斜視図である。
【図2】デジタルカメラの背面側斜視図である。
【図3】デジタルカメラの内部構成を示すブロック図である。
【図4】レンズ装置の内部構成を示す概略断面図である。
【図5】AFサーチ範囲の補正動作を説明するフローチャートである。
【図6】内部メモリに記録された各種データを示す図である。
【図7】補正前後のAFサーチ範囲の関係を示す図である。
【図8】ミラーに代えてプリズムを用いた変形例を示す概略断面図である。
【図9】プリズムをスライド移動させる例を示す概略斜視図である。
【図10】プリズムを回転させる例を示す概略斜視図である。
【図11】ミラーの移動機構を変更した変形例を示す概略断面図である。
【図12】ミラーに代えてハーフミラーを用いた変形例を示す概略断面図である。
【図13】補正レンズを設けた変形例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0048】
2 デジタルカメラ
4 撮影開口
5 レンズ装置
6 第1レンズ
20 CPU
20a AF動作制御部
20b AFサーチ範囲補正部
22 撮像素子
29 AF積算部
40 ミラー
41 レンズバリア
42 第2レンズ
43 第3レンズ(ズームレンズ)
44 露出制御機構
45 第4レンズ(フォーカスレンズ)
46 テストパターン発生部
47 パネル
47a スリット
48 光源
50 プリズム
50a 反射面
52 ハーフミラー
60 補正レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを光軸方向に所定サーチ範囲内を移動させ、撮像素子により前記フォーカスレンズを介して撮像した結果得られる画像のコントラストに基づいて焦点調節を行う自動焦点調節機構を備えた撮影装置において、
前記撮像素子の撮像光路を、前記撮像素子から被写体までの撮影光路から、この撮影光路の途中から分岐してなる補正用光路へ変更する撮像光路変更手段と、
前記撮像光路変更手段によって変更された補正用光路上に位置し、前記撮像素子にテストパターンを入射させるテストパターン発生手段と、
前記テストパターンを前記撮像素子が撮像した結果得られる画像のコントラストから前記フォーカスレンズの合焦位置を検出し、この合焦位置の基準位置からの変位量に基づき、前記サーチ範囲を補正するサーチ範囲補正手段と、
を備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記撮像光路変更手段は、前記撮影光路を屈曲させて、互いに略直交する被写体側光路と撮像素子側光路とする屈曲光学部材と、この屈曲光学部材を前記撮像素子側光路上から退避させ、前記撮像素子側光路及びその延長線上を前記補正用光路とする移動手段と、前記被写体側光路を遮蔽する遮蔽手段と、からなることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記屈曲光学部材は、ミラーであることを特徴とする請求項2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記屈曲光学部材は、プリズムであることを特徴とする請求項2に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記移動手段は、前記プリズムを前記撮像素子側光路に略直交する方向にスライド移動させることにより、前記撮像素子側光路上から退避させることを特徴とする請求項4に記載の撮影装置。
【請求項6】
前記移動手段は、前記プリズムを前記被写体側光路の光軸周りに回転させることにより、前記撮像素子側光路上から退避させることを特徴とする請求項4に記載の撮影装置。
【請求項7】
前記遮蔽手段は、前記被写体側光路上の被写体側レンズの前面を保護する可動式のレンズバリアであることを特徴とする請求項2から6いずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項8】
前記撮像光路変更手段は、前記撮影光路を屈曲させて、互いに略直交する被写体側光路と撮像素子側光路とするミラーと、前記撮像素子側光路上から退避させ、前記撮像素子側光路及びその延長線上を前記補正用光路とするとともに、前記被写体側光路を遮蔽するように前記ミラーを移動させる移動手段と、からなることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項9】
前記撮像光路変更手段は、光路を屈曲させて、前記撮影光路を略直交する被写体側光路と撮像素子側光路とするように固定配置されたハーフミラーと、前記被写体側光路を遮蔽する遮蔽手段と、からなることを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項10】
前記補正用光路上の光学系にのみプラスチックレンズが含まれていることを特徴とする請求項1から9いずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項11】
前記テストパターン撮像時の合焦位置が、被写体撮像時の合焦位置と略一致するように補正を行う補正レンズを、前記補正用光路上に設けたことを特徴とする請求項1から10いずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項12】
電源投入を検出し、電源投入に応じて、前記撮像光路変更手段、前記テストパターン発生手段、及び前記サーチ範囲補正手段を順に動作させる制御手段を設けたことを特徴とする請求項1から11いずれか1項に記載の撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−233762(P2008−233762A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76618(P2007−76618)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】