説明

案内装置の錆固着防止装置

【課題】第2案内部材の嵌合穴の内周面からの錆の発生を容易に抑制し第1案内部材と第2案内部材との間の錆固着を防止する錆固着防止装置を提供する。
【解決手段】嵌合穴58aには、錆の発生を低減するための防錆剤が含浸された含浸部材68が収容されており、含浸部材68は、嵌合穴58aの開口からその嵌合穴58aの内周面に摺動させられつつ嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れられたものであるため、含浸部材68を嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れる際、開口から底部58cまでの嵌合穴58aの内周面全体にその含浸部材68が摺動されて防錆剤がその嵌合穴58aの内周面全体に塗布されるので、経時変化による第2案内部材58の嵌合穴58aの内周面からの錆の発生が容易に抑制されて第1案内部材60と第2案内部材58との間の錆固着が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内装置の錆固着防止装置に関し、特にその案内装置の錆固着防止装置の性能を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
案内装置の錆固着防止装置は、例えば特許文献1、2に示すように、(a) 長手状の軸部を有する第1案内部材として機能する第1ストラット部材56、スライドピン24,26と、(b) その軸部を嵌め入れる開口を一端に有し且つ他端が閉じられた嵌合穴が形成された第2案内部材として機能する第2ストラット部材58、ガイド部40,42とを備え、(c) 前記軸部の長手方向において相対移動可能とされた前記第1案内部材と前記第2案内部材との間の錆固着を防止するものである。
【0003】
具体的には、前記第1案内部材および前記第2案内部材に例えばメッキ等の表面処理を施したり、前記第1案内部材の軸部にグリースを塗布しそのグリースが塗布された軸部を上記第2案内部材の嵌合穴に挿入してその嵌合穴の内周面にグリースを塗布したりして、前記第1案内部材と前記第2案内部材との錆の発生を抑制することによってその第1案内部材と第2案内部材との間の錆固着を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−281179号公報
【特許文献2】実開平5−67830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような案内装置の錆固着防止装置は、その第2案内部材の嵌合穴の内周面の特に底部に前記表面処理を施すことが難しく未処理であり、且つ、前記グリースが塗布された第1案内部材の軸部が第2案内部材の嵌合穴に挿入されるとその軸部の先端部が前記第2案内部材の嵌合穴の底部に向かうにつれてその軸部の先端部に塗布されたグリースが少なくなり第2案内部材の嵌合穴の内周面の底部にグリースが塗布されない箇所ができる可能性があるため、その第2案内部材の嵌合穴の内周面の底部から経時変化にて錆が発生して第1案内部材と第2案内部材とが錆によって固着する恐れがあった。前記第2案内部材の嵌合穴の内周面に直接グリースを塗布するという考えもあるが、グリースを前記嵌合穴の内周面全体に塗布することは非常に難しく手間がかかる。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、第2案内部材の嵌合穴の内周面からの錆の発生を容易に抑制し第1案内部材と第2案内部材との間の錆固着を防止する案内装置の錆固着防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) 長手状の軸部を有する第1案内部材と、(b) その軸部を嵌め入れる開口を一端に有し且つ他端が閉じられた嵌合穴が形成された第2案内部材とを備え、(c) 前記軸部の長手方向において相対移動可能とされた前記第1案内部材と前記第2案内部材との間の錆固着を防止する案内装置の錆固着防止装置であって、(d) 前記嵌合穴には、錆の発生を低減するための防錆剤が含浸された含浸部材が収容されており、(e) 前記含浸部材は、前記嵌合穴の開口からその嵌合穴の内周面に摺動させられつつ前記嵌合穴の底部に嵌め入れられたものである。
【0008】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、(a) 前記含浸部材は、連通気孔を有する弾性変形可能な多孔質部材であり、(b) 前記含浸部材は、前記第2案内部材の嵌合穴の断面より大きい寸法を有するものである。
【0009】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1または2に係る発明において、(a) 前記第1案内部材は、その軸部の外周面の一部にねじ山が形成された雄螺子部を有し、バッキングプレート上に拡開可能に配設された円弧状の一対のブレーキシューに備えられた摩擦材の摩耗量によってその軸部回りに回動する第1ストラット部材であり、(b) 前記第2案内部材は、その嵌合穴の内周面の一部に前記第1ストラット部材の雄螺子部と螺合する雌螺子部が形成され、前記第1ストラット部材と共に前記一対のブレーキシューの一端部間に架け渡された非制動時のその一対のブレーキシューの一端部間の離間量を制限するストラットを構成する第2ストラット部材である。
【0010】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1または2に係る発明において、(a) 前記第1案内部材の軸部は、車輪と一体的に回転する円板状のディスクロータに摩擦材を押し付けるキャリパーに固定されたスライドピンであり、(b) 前記第2案内部材は、そのスライドピンを嵌め入れる嵌合穴を有し、車体側の非回転部材に取り付けられ且つ前記キャリパーを前記スライドピンを介して支持するマウンティングブラケットである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の案内装置の錆固着防止装置によれば、(d) 前記嵌合穴には、錆の発生を低減するための防錆剤が含浸された含浸部材が収容されており、(e) 前記含浸部材は、前記嵌合穴の開口からその嵌合穴の内周面に摺動させられつつ前記嵌合穴の底部に嵌め入れられたものであるため、前記含浸部材を前記嵌合穴の底部に嵌め入れる際、前記開口から前記底部までの前記嵌合穴の内周面全体にその含浸部材が摺動されて前記防錆剤がその嵌合穴の内周面全体に塗布されるので、経時変化による第2案内部材の嵌合穴の内周面からの錆の発生が容易に抑制されて第1案内部材と第2案内部材との間の錆固着が防止される。
【0012】
請求項2に係る発明の案内装置の錆固着防止装置によれば、(a) 前記含浸部材は、連通気孔を有する弾性変形可能な多孔質部材であり、(b) 前記含浸部材は、前記第2案内部材の嵌合穴の断面より大きい寸法を有するものであるため、前記含浸部材を前記嵌合穴の底部に嵌め入れる際、前記含浸部材が前記嵌合穴の形状に弾性変形しその含浸部材が前記嵌合穴の内周面全体に摺接するので容易に防錆剤を前記嵌合穴の内周面全体に塗布することができる。
【0013】
請求項3に係る発明の案内装置の錆固着防止装置によれば、(a) 前記第1案内部材は、その軸部の外周面の一部にねじ山が形成された雄螺子部を有し、バッキングプレート上に拡開可能に配設された円弧状の一対のブレーキシューに備えられた摩擦材の摩耗量によってその軸部回りに回動する第1ストラット部材であり、(b) 前記第2案内部材は、その嵌合穴の内周面の一部に前記第1ストラット部材の雄螺子部と螺合する雌螺子部が形成され、前記第1ストラット部材と共に前記一対のブレーキシューの一端部間に架け渡された非制動時のその一対のブレーキシューの一端部間の離間量を制限するストラットを構成する第2ストラット部材であるため、前記案内装置の錆固着防止装置をドラムブレーキのシュー間隙自動調節装置に適用することができドラムブレーキの耐久性能を向上させることができる。
【0014】
請求項4に係る発明の案内装置の錆固着防止装置によれば、(a) 前記第1案内部材の軸部は、車輪と一体的に回転する円板状のディスクロータに摩擦材を押し付けるキャリパーに固定されたスライドピンであり、(b) 前記第2案内部材は、そのスライドピンを嵌め入れる嵌合穴を有し、車体側の非回転部材に取り付けられ且つ前記キャリパーを前記スライドピンを介して支持するマウンティングブラケットであるため、前記案内装置の錆固着防止装置をディスクブレーキに適用することができディスクブレーキの耐久性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が適用されたリーディング・トレーリング型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図1の実施例のドラムブレーキのシュー間隙自動調節装置に備えられた案内装置の錆固着防止装置を説明する図である。
【図4】本発明が適用されたディスクブレーキを示す図である。
【図5】図4の実施例のディスクブレーキに備えられたスライドピンおよびマウンティングブラケットを説明する断面図である。
【図6】図4の実施例のディスクブレーキに備えられた案内装置の錆固着防止装置を説明する図である。
【図7】図3の案内装置の錆固着防止装置で使用された含浸部材の他の形状を示す図である。
【図8】図3の案内装置の錆固着防止装置で使用された含浸部材の他の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の一実施例のパーキングロック機能を備えたシュー間隙自動調節装置付ドラムブレーキであるリーディング・トレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10であって、ブレーキドラム12を取り外して示す正面図である。また、ブレーキドラム12は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちの中心側の円はブレーキドラム12の内周面14を示している。
【0018】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート16が備えられている。
【0019】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート16の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー18,20と、その一対のブレーキシュー18,20の一端部すなわち図1の上端部の間においてバッキングプレート16に位置固定に設けられたホイールシリンダ22と、一対のブレーキシュー18,20の一端部を互いに接近する方向に常時付勢してホイールシリンダ22に当接させるために、その一端部間に張設されたコイル状のリターンスプリング24と、そのコイル状のリターンスプリング24の内部を挿通するように一対のブレーキシュー18,20の一端部間に架け渡された非制動時における一対のブレーキシュー18,20とブレーキドラム12との間すなわちシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節装置26と、一対のブレーキシュー18,20の他端部すなわち図1の下端部の間に位置固定に設けられたアンカ28と、一対のブレーキシュー18,20の下端部間に張設されてそれら下端部をアンカ28に常時当接させるスプリング30とが備えられている。
【0020】
一対のブレーキシュー18,20は、何れも、バッキングプレート16の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ32,34と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム36,38と、それらシューリム36,38の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング40,42とによってそれぞれ構成されている。また、一対のブレーキシュー18,20は、シューウェブ32およびシューウェブ34にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置44,46によってバッキングプレート16側へ押圧されることによりそのバッキングプレート16に対して面方向の相対移動可能に保持されている。また、ブレーキシュー18の一端部には、平板状のパーキングブレーキレバー48の基端部がピン50により相対回動可能に連結されている。バッキングプレート16、シューウェブ32,34、シューリム36,38は、いずれも鋼板から打ち抜かれ且つ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。
【0021】
シュー間隙自動調節装置26は、図2に示すように、一対のブレーキシュー18,20の一端部間に架け渡された非制動時の一対のブレーキシュー18,20の一端部間の離間量を制限するストラット52と、そのストラット52に備えられたアジャストレバー54とによって構成されている。
【0022】
ストラット52は、図2に示すように、シューウェブ34に係合する第3ストラット部材56と、シューウェブ32およびパーキングブレーキレバー48に係合する第2ストラット部材(第2案内部材)58と、略円板形状のアジャストホイール60aを備えて第3ストラット部材56と第2ストラット部材58との間に配設され第2ストラット部材58と螺合する第1ストラット部材(第1案内部材)60とによって構成されている。
【0023】
第1ストラット部材60は、図2に示すように、略円板形状のアジャストホイール60aの中心部から第3ストラット部材56側に略円柱形状に突き出す嵌合軸部60bと、略円板形状のアジャストホイール60aの中心部からその嵌合軸部60bとは反対方向すなわち第2ストラット部材58側に略円柱形状に突設するとともにその外周面の一部にねじ山が形成された雄螺子部60cを有する長手状の軸部60dとから構成されており、嵌合軸部60bは第3ストラット部材56に穿設された略円柱形状の嵌合穴56aに相対回転可能に嵌め入れられている。
【0024】
第2ストラット部材58には、図2に示すように、第1ストラット部材60の長手状の軸部60dを嵌め入れる開口を一端に有し且つ他端が閉じられた略円柱形状の嵌合穴58bと、その嵌合穴58aの内周面の一部に第1ストラット部材60の雄螺子部60cと螺合する雌螺子部58bとが形成されている。
【0025】
そのため、アジャストレバー54によってアジャストホイール60aが所定方向に回動させられると、第1ストラット部材60の軸部60dの雄螺子部60cと第2ストラット部材58の嵌合穴58aの雌螺子部58bとのねじの作用によって第2ストラット部材58がブレーキシュー18側に移動させられてストラット52が伸長する。また、ブレーキシュー18および20には、図1に示すように第2ストラット部材58および第3ストラット部材56すなわちストラット52を支持するために相手に向かって突出した支持突起18aおよび20aがそれぞれ形成されている。
【0026】
アジャストレバー54は、例えば鋼板からプレス加工により成形されており、その厚み方向にプレス加工により一体に突設された軸部54aがブレーキシュー20のシューウェブ34に穿設された略円柱形状の係合穴34aに相対回転可能に嵌め入れられることにより、アジャストレバー54はその軸部54a回りに回動可能にブレーキシュー20のシューウェブ34に配設されている。
【0027】
また、アジャストレバー54は、上記軸部54aが備えられた回動中心部からアジャストホイール60a側に長手状に延長される延長部54bと、その延長部54bの先端部から略円板形状のアジャストホイール60aの外周面に備えられた複数の係合歯60eの一つに伸長し図示されていないブレーキペダル操作によるブレーキ制動時にその係合歯60eと係合する平板状の係合板54cと、延長部54bの中間部から第3ストラット部材56側に伸長しその第3ストラット部材56の一端部に当接する当接部54dとを一体的に備えている。また、アジャストレバー54には、図1に示すようにアジャストレバー54をその軸部54a回り矢印F方向に回動するように常時付勢するために、延長部54bの中間部とブレーキシュー20の他端部との間に張設させたコイル状のスプリング62が備えられている。
【0028】
ブレーキペダルが操作されないブレーキ非制動時において、アジャストレバー54は、上記スプリング62の付勢力によってその軸部54a回り矢印F方向に回動しようとするが当接部54dが第3ストラット部材56に当接され止められていることによって、軸部54a回りの回動が抑止される。また、リターンスプリング24の付勢力は、スプリング62の付勢力より大きいため、スプリング62の付勢力によってアジャストレバー54の当接部54dが第3ストラット部材56すなわちストラット52をブレーキシュー18側へ移動するように付勢しても一対のブレーキシュー18,20の一端部は拡開しない。
【0029】
ブレーキペダル操作によるブレーキ制動時において、一対のブレーキシュー18,20が拡開すると、アジャストレバー54の当接部54dは上記スプリング62の付勢力によって第2ストラット部材58がブレーキシュー18と当接するようにストラット52をブレーキシュー18側に移動させる。すなわち、ブレーキペダル操作によるブレーキ制動時において、一対のブレーキシュー18,20の拡開量と第3ストラット部材56とブレーキシュー20との隙間とは略同じであり、一対のブレーキシュー18,20の拡開量に応じてアジャストレバー54はその当接部54dが第3ストラット部材56と当接して止められるまで軸部54a回り矢印F方向に回動する。
【0030】
パーキングブレーキレバー48には、その先端部に連結されたパーキングブレーキケーブル64が備えられており、図示しないパーキングレバーの操作によりパーキングブレーキケーブル64を介してパーキングブレーキレバー48の先端部がバッキングプレート16の中心側へ回動させられると、ブレーキシュー20がストラット52に押されて外周側へ移動させられるとともにブレーキシュー18がピン50に押されて外周側へ移動させられるので、一対のブレーキシュー18,20が拡開されて制動力が発生させられるようになっている。
【0031】
以上のように構成されたドラムブレーキ10は、図示されていないブレーキペダル操作に伴ってホイールシリンダ22のピストンが突き出されることにより一対のブレーキシュー18,20の一端部が互いに離隔する方向に拡開され制動力が発生する。そして、ブレーキペダル操作が繰り返し使用されてライニング40,42が摩耗しシュー間隙が大きくなると、ホイールシリンダ22により一対のブレーキシュー18、20が拡開させられることによって、アジャストレバー54の係合板54cはアジャストレバー54の軸部54a回りの回動に連動してアジャストホイール60aの係合歯60eと係合して噛み合いライニング40,42の摩耗量によってそのアジャストホイール60aが軸部60d回りに回動させられる。それにより、ストラット52が伸長させられシュー間隙が調節される。
【0032】
ブレーキペダル操作解除時には、リターンスプリング24の付勢力に従ってブレーキシュー20と第3ストラット部材56とが当接するまでストラット52がブレーキシュー20側へ移動させられるのに伴い、アジャストレバー54はスプリング62の付勢力に抗してその軸部54aの矢印F方向とは反対方向に回動させられる。また、ブレーキペダル操作解除時のアジャストレバー54の戻り回動時には、軸部60d等の摩擦による回転抵抗によってアジャストホイール60aの戻り回転が阻止され、平板状の係合板54cが係合歯60eを乗り越えるようになっている。
【0033】
図3は、シュー間隙自動調節装置26に備えられた第1ストラット部材(第1案内部材)60と第2ストラット部材(第2案内部材)58とを有し、それらの間を相互に軸心方向に案内する案内装置66の錆固着を防止する錆固着防止装置を説明する図であり、以下においてその案内装置66の錆固着防止装置について説明する。
【0034】
案内装置66の錆固着防止装置は、図3に示すように、錆の発生を低減させるための例えば防錆油等の防錆剤が含浸された含浸部材68を備え、図3の上段図に示すようにその含浸部材68が作業者によって図示されていない工具を介して嵌合穴58aの開口から底部58cまでの嵌合穴58aの内周面全体に摺動されて嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れられる。それによって、含浸部材68に含浸された防錆剤がその嵌合穴58aの内周面全体に塗布され経時変化による第2ストラット部材58の嵌合穴58aの内周面からの錆の発生が抑制される。
【0035】
含浸部材68は、図3の上段図に示すように、連通気孔を有する弾性変形可能な例えばスポンジ等の略球状の多孔質部材であり、第2ストラット部材58の略円柱状の嵌合穴58aの断面の直径Aより大きい直径を有するものである。そのため、含浸部材68を嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れる際、作業者によって図示されていない工具を介して含浸部材68が嵌合穴58aの底部58cに押し込まれるだけで、含浸部材68が第2ストラット部材58の嵌合穴58aの形状に弾性変形し嵌合穴58aの内周面全体に摺接させられるので、容易に防錆剤を嵌合穴58aの内周面全体に塗布することができる。また、第2ストラット部材58の嵌合穴58aの内周面の一部は、ねじ山が形成された雌螺子部58bであるため、含浸部材68を嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れる際、作業者によってそのねじ山に合わせて含浸部材68を回転させながら嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れると雌螺子部58bのねじ山の谷へ好適に防錆剤を塗布することができる。
【0036】
第2ストラット部材58は、その第2ストラット部材58の加工工程およびメッキ工程において洗浄及び乾燥が行われるが、その嵌合穴58a特に底部58cはその洗浄及び乾燥が不十分になり易く水分及び汚れが残り易いためその水分及び汚れによって錆が発生し易いが、案内装置66の錆固着防止装置に備えられた含浸部材68によってその嵌合穴58aに残った水分及び汚れが拭き取られ嵌合穴58aの底部58cに閉じ込められるので第2ストラット部材58の嵌合穴58aの内周面からの錆の発生を好適に抑制することができる。
【0037】
案内装置66の錆固着防止装置は、その含浸部材68を用いて第2ストラット部材58の嵌合穴58aの内周面にその含浸部材を摺接させることによって嵌合穴58aの内周面に防錆剤を塗布するものであるため、その嵌合穴58aから防錆剤が漏れ出ない程度に防錆剤を好適に塗布することができる。
【0038】
さらに、図3の中段図および下段図に示すように、第1ストラット部材60の雄螺子部60c全体には例えばグリース等の防錆剤が塗布されてその防錆剤が塗布された雄螺子部60cが第2ストラット部材58の雌螺子部58bに螺合されるため、第1ストラット部材60の雄螺子部60cからの錆の発生が抑制されるとともに第2ストラット部材58の雌螺子部58bにも防錆剤がさらに塗布されるので、第1ストラット部材60と第2ストラット部材58との錆固着が好適に防止される。また、第1ストラット部材60の雄螺子部60cと第2ストラット部材58の雌螺子部58bとにグリース或いは防錆油等の防錆剤が塗布されることによって、雄螺子部60cと雌螺子部58bとの隙間をグリース或いは防錆油等の防錆剤で埋めることができるので、嵌合穴58aに対して外部からの空気の浸入を遮断することができ、さらに錆の発生を抑える効果がある。また、第1ストラット部材60と第2ストラット部材58との間の錆固着が防止されることによってドラムブレーキ10の耐久性能を向上させることができる。
【0039】
本実施例の案内装置66の錆固着防止装置によれば、嵌合穴58aには、錆の発生を低減するための防錆剤が含浸された含浸部材68が収容されており、含浸部材68は、嵌合穴58aの開口からその嵌合穴58aの内周面に摺動させられつつ嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れられたものであるため、含浸部材68を嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れる際、開口から底部58cまでの嵌合穴58aの内周面全体にその含浸部材68が摺動されて防錆剤がその嵌合穴58aの内周面全体に塗布されるので、経時変化による第2案内部材58の嵌合穴58aの内周面からの錆の発生が容易に抑制されて第1案内部材60と第2案内部材58との間の錆固着が防止される。
【0040】
また、本実施例の案内装置66の錆固着防止装置によれば、含浸部材68は、連通気孔を有する弾性変形可能な多孔質部材であり、含浸部材68は、第2案内部材58の嵌合穴58aの断面より大きい寸法を有するものであるため、含浸部材68を嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れる際、含浸部材68が嵌合穴58aの形状に弾性変形しその含浸部材68が嵌合穴58aの内周面全体に摺接するので容易に防錆剤を嵌合穴58aの内周面全体に塗布することができる。
【0041】
また、本実施例の案内装置66の錆固着防止装置によれば、第1案内部材60は、その軸部60dの外周面の一部にねじ山が形成された雄螺子部60cを有し、バッキングプレート16上に拡開可能に配設された円弧状の一対のブレーキシュー18,20に備えられた摩擦材であるライニング40,42の摩耗量によってその軸部60d回りに回動する第1ストラット部材60であり、第2案内部材58は、その嵌合穴58aの内周面の一部に第1ストラット部材60の雄螺子部60cと螺合する雌螺子部58bが形成され、第1ストラット部材60と共に一対のブレーキシュー18,20の一端部間に架け渡された非制動時のその一対のブレーキシュー18,20の一端部間の離間量を制限するストラット52を構成する第2ストラット部材58であるため、案内装置66の錆固着防止装置をドラムブレーキ10のシュー間隙自動調節装置26に適用することができドラムブレーキ10の耐久性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0042】
図4および図5は、本発明の他の実施例の車両用のディスクブレーキ70を説明する図であり、ディスクブレーキ70は、図示されてないブレーキペダルが操作されることによって発生する油圧によって制動状態が得られるものである。
【0043】
ディスクブレーキ70には、車輪と一体的に回転する略円板状の図示されていないディスクロータと、そのディスクロータの外周部に制動時摩擦材を押し付けるキャリパー72と、そのキャリパー72に例えばボルト等の締結部材74によって固定された一対のスライドピン(第1案内部材)76,78と、車体側の非回転部材に固定されると共にキャリパー72を上記ディスクロータの回転軸心方向と平行に移動可能に支持するマウンティングブラケット(第2案内部材)80とが備えられている。
【0044】
一対のスライドピン76,78には前記ディスクロータの回転軸心と平行な軸心を有する略円柱形状の軸部76a,78aが備えられており、マウンティングブラケット80にはその一対のスライドピン76,78の軸部76a,78aを摺動可能に嵌め入れる開口を一端に有し且つ他端が閉じられた略円柱形状の嵌合穴80aが備えられているため、キャリパ72は一対のスライドピン76,78によって前記ディスクロータの回転軸心方向と平行に移動可能且つその回転軸心回り回転が不能にマウンティングブラケット80に支持される。
【0045】
キャリパ72は、図示されていないが、略有底円筒状のブレーキピストンを前記ディスクロータの回転軸心と平行に移動可能に設ける略円柱形状の穴を有するシリンダ部と、前記ディスクロータの外周部をそのシリンダ部とで挟むようにそのシリンダ部と反対側に配置される爪部と、その爪部とそのシリンダ部とを連結する連結部とによって構成されている。また、図示されていないが、上記ブレーキピストンと前記ディスクロータの外周部との間には、そのディスクロータの外周部の一方の側面を押圧するインナパッドが配設されているとともに、上記爪部と前記ディスクロータの外周部との間には、そのディスクロータの外周部の他方の側面を押圧するアウタパッドが配設されている。
【0046】
前記インナパッドおよび前記アウタパッドは、前記ディスクロータの外周部を押圧することによってディスクブレーキ70に制動力を発生させる摩擦材と、その摩擦材を固定する略長方形状の金属製裏板とによってそれぞれ構成されるものである。また、前記インナパッドおよび前記アウタパッドの前記金属製裏板にはその金属製裏板の両側面の一部からマウンティングブラケット80側に延びる一対の耳部が備えられており、マウンティングブラケット80にはその一対の耳部を摺接することによって前記インナパッドおよび前記アウタパッドを前記ブレーキピストンの軸心方向に移動可能且つそのブレーキピストンの軸心回りの回転を不能に支持する一対のガイド溝が備えられている。
【0047】
キャリパ72の前記シリンダ部には、前記ブレーキピストンの内周面および前記シリンダ部の穴の内周面によって囲まれた油圧室と連通する油圧路が備えられており、前記ブレーキペダルの操作により発生した油圧をその油圧路を介して油圧室に発生することによって、前記ブレーキピストンが前記ディスクロータ側に移動する。
【0048】
上記のように構成されたディスクブレーキ70によれば、図示されていないブレーキペダルが操作されることによって前記油圧路を介して前記油圧室に油圧が発生させられると、前記ブレーキピストンが前記ディスクロータ側に突き出されるとともに前記インナパッドが前記ディスクロータの外周部の一方の側面を押圧する。前記インナパッドが前記ディスクロータの外周部を押圧するとその押圧する力によって、キャリパ72の爪部が一対のスライドピン76,78を介して前記ディスクロータの外周部側に移動し前記アウタパッドを前記ディスクロータの外周部の他方の側面に押圧するので、前記ディスクロータの外周部の両側面は、前記インナパッドと前記アウタパッドとによって挟圧されディスクブレーキ70に制動力が発生する。
【0049】
図6は、ディスクブレーキ70に備えられたスライドピン(第1案内部材)76,78とマウンティングブラケット(第2案内部材)80とを有し、それらの間を相互に軸心方向に案内する案内装置82の錆固着を防止する錆固着防止装置を説明する図であり、以下においてその案内装置82の錆固着防止装置について説明する。
【0050】
案内装置82の錆固着防止装置は、図6に示すように、錆の発生を低減させるための例えば防錆油等の防錆剤が含浸された含浸部材84を備え、図6の上段図に示すようにその含浸部材82が作業者によって図示されていない工具を介して嵌合穴80aの開口から底部80bまでの嵌合穴80aの内周面全体に摺動されて嵌合穴80aの底部80bに嵌め入れられる。それによって、含浸部材84に含浸された防錆剤がその嵌合穴80aの内周面全体に塗布され経時変化によるマウンティングブラケット80の嵌合穴80aの内周面からの錆の発生が抑制される。
【0051】
含浸部材84は、図6の上段図に示すように、連通気孔を有する弾性変形可能な例えばスポンジ等の略球状の多孔質部材であり、マウンティングブラケット80の略円柱状の嵌合穴80aの断面の直径Bより大きい直径を有するものである。そのため、含浸部材84を嵌合穴80aの底部80bに嵌め入れる際、作業者によって図示されていない工具を介して含浸部材84が嵌合穴80aの底部80bに押し込まれるだけで、含浸部材84がマウンティングブラケット80の嵌合穴80aの形状に弾性変形し嵌合穴80aの内周面全体に摺接させられるので、容易に防錆剤を嵌合穴80aの内周面全体に塗布することができる。
【0052】
マウンティングブラケット80は、そのマウンティングブラケット80の加工工程およびメッキ工程において洗浄及び乾燥が行われるが、その嵌合穴80a特に底部80bはその洗浄及び乾燥が不十分になり易く水分及び汚れが残り易すいためその水分及び汚れによって錆が発生し易いが、案内装置82の錆固着防止装置に備えられた含浸部材84によってその嵌合穴80aに残った水分及び汚れが拭き取られ嵌合穴80aの底部80bに閉じ込められるのでマウンティングブラケット80の嵌合穴80aの内周面からの錆の発生を好適に抑制することができる。
【0053】
案内装置82の錆固着防止装置は、その含浸部材84を用いてマウンティングブラケット80の嵌合穴80aの内周面にその含浸部材を摺接させることによって嵌合穴80aの内周面に防錆剤を塗布するものであるため、その嵌合穴80aから防錆剤が漏れ出ない程度に防錆剤を好適に塗布することができる。
【0054】
さらに、図6の中段図および下段図に示すように、スライドピン76,78の軸部76a,78a全体には例えばグリース等の防錆剤が塗布されてその防錆剤が塗布された軸部76a,78aがマウンティングブラケット80の嵌合穴80aに挿入されるため、スライドピン76,78の軸部76a,78aからの錆の発生が抑制されるとともにマウンティングブラケット80の嵌合穴80aの内周面にも防錆剤がさらに塗布されるので、スライドピン76,78の軸部76a,78aとマウンティングブラケット80の嵌合穴80aの内周面との錆固着が好適に防止される。また、スライドピン76,78の軸部76a,78aとマウンティングブラケット80の嵌合穴80の内周面とにグリース或いは防錆油等の防錆剤が塗布されることによって、軸部76a,78aと嵌合穴80aの内周面との隙間をグリース或いは防錆油等の防錆剤で埋めることができるので、嵌合穴80aに対して外部からの空気の浸入を遮断することができ、さらに錆の発生を抑える効果がある。また、スライドピン76,78とマウンティングブラケット80との間の錆固着が防止されることによってディスクブレーキ70の耐久性能を向上させることができる。
【0055】
本実施例の案内装置82の錆固着防止装置によれば、嵌合穴80aには、錆の発生を低減するための防錆剤が含浸された含浸部材84が収容されており、含浸部材84は、嵌合穴80aの開口からその嵌合穴80aの内周面に摺動させられつつ嵌合穴80aの底部80bに嵌め入れられたものであるため、含浸部材84を嵌合穴80aの底部80bに嵌め入れる際、開口から底部80bまでの嵌合穴80aの内周面全体にその含浸部材84が摺動されて防錆剤がその嵌合穴80aの内周面全体に塗布されるので、経時変化による第2案内部材80の嵌合穴80aの内周面からの錆の発生が容易に抑制されて第1案内部材76,78と第2案内部材80との間の錆固着が防止される。
【0056】
また、本実施例の案内装置82の錆固着防止装置によれば、含浸部材84は、連通気孔を有する弾性変形可能な多孔質部材であり、含浸部材84は、第2案内部材80の嵌合穴80aの断面より大きい寸法を有するものであるため、含浸部材84を嵌合穴80aの底部80bに嵌め入れる際、含浸部材84が嵌合穴80aの形状に弾性変形しその含浸部材84が嵌合穴80aの内周面全体に摺接するので容易に防錆剤を嵌合穴80aの内周面全体に塗布することができる。
【0057】
また、本実施例の案内装置82の錆固着防止装置によれば、第1案内部材76,78は、車輪と一体的に回転する円板状のディスクロータに摩擦材を押し付けるキャリパー72に固定されたスライドピン76,78であり、第2案内部材80は、そのスライドピン76,78を嵌め入れる嵌合穴80aを有し、車体側の非回転部材に取り付けられ且つキャリパー72をスライドピン76,78を介して支持するマウンティングブラケット80であるため、案内装置82の錆固着防止装置をディスクブレーキ70に適用することができディスクブレーキ70の耐久性能を向上させることができる。
【実施例3】
【0058】
更に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の他の実施例において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
本実施例のドラムブレーキは、実施例1のドラムブレーキ10において含浸部材68と形状が異なる含浸部材86を備える点で相違し、それ以外は実施例1のドラムブレーキ10と略同様であって、図7はその含浸部材86の形状を説明する図である。
【0060】
含浸部材86は、図7に示すように、実施例1の含浸部材68と略同様に錆の発生を低減させるための例えば防錆油等の防錆剤が含浸されるとともに第2ストラット部材58の嵌合穴58aの底部58cに収容されるものである。
【0061】
また、含浸部材86は、図7に示すように、連通気孔を有する弾性変形可能な例えばスポンジ等の略円板状の多孔質部材であり、第2ストラット部材58の略円柱状の嵌合穴58aの断面の直径Aより大きい直径を有するものである。そのため、含浸部材86を嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れる際、作業者によって図示されていない工具を介して含浸部材86が嵌合穴58aの底部58cに押し込まれるだけで、含浸部材86が第2ストラット部材58の嵌合穴58aの形状に弾性変形し嵌合穴58aの内周面全体に摺接させられるので、容易に防錆剤を嵌合穴58aの内周面全体に塗布することができ実施例1の含浸部材68と略同様の効果を備える。
【実施例4】
【0062】
更に、本発明の他の実施例を説明する。本実施例のドラムブレーキは、実施例1のドラムブレーキ10において含浸部材68と形状が異なる含浸部材88を備える点で相違し、それ以外は実施例1のドラムブレーキ10と略同様であって、図8はその含浸部材88の形状を説明する図である。
【0063】
含浸部材88は、図8に示すように、実施例1の含浸部材68と略同様に錆の発生を低減させるための例えば防錆油等の防錆剤が含浸されるとともに第2ストラット部材58の嵌合穴58aの底部58cに収容されるものである。
【0064】
また、含浸部材88は、図8に示すように、連通気孔を有する弾性変形可能な例えばスポンジ等の略円板状の多孔質部材であり、第2ストラット部材58の略円柱状の嵌合穴58aの断面の直径Aより大きい直径を有するものである。そのため、含浸部材88を嵌合穴58aの底部58cに嵌め入れる際、作業者によって図示されていない工具を介して含浸部材88が嵌合穴58aの底部58cに押し込まれるだけで、含浸部材88が第2ストラット部材58の嵌合穴58aの形状に弾性変形し嵌合穴58aの内周面全体に摺接させられるので、容易に防錆剤を嵌合穴58aの内周面全体に塗布することができ実施例1の含浸部材68と略同様の効果を備える。
【0065】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0066】
たとえば、本実施例の案内装置66,82の錆固着防止装置は、ドラムブレーキ10のシュー間隙自動調節装置26またはディスクブレーキ70に適用されたがそれ以外のものに適用されても良い。また、本発明は、シュー間隙自動調節装置26において第1案合部材である第1ストラット部材60がその軸部60d回りに回動することによって第2案内部材である第2ストラット部材58がその軸部60dの長手方向に移動するものに適用され、ディスクブレーキ70において第2案合部材であるマウンティングブラケット80が非回転部材に固定され前記ブレーキペダル操作により発生する油圧により第1案内部材であるスライドピン76,78がその軸部76a,78aの長手方向に移動するものに適用されたが、前記第1案合部材と前記第2案内部材とがその第1案内部材の軸部の長手方向において両方移動するものにも適用することができる。
【0067】
また、本実施例の含浸部材68,84,86,88は、連通気孔を有する弾性変形可能な例えばスポンジ等の多孔質部材が使用されたが、防錆剤を含浸し嵌合穴58a,80aの内周面に含浸部材が摺接することによってその内周面に防錆剤が塗布されるものであればどのような部材が使用されても良い。
【0068】
また、本実施例の含浸部材68,84,86,88に含浸された防錆剤は、液体である防錆油が使用されたが、防錆剤は必ずしも液体である必要はなく例えば粉体の黒鉛や二硫化モリブデン等の固体潤滑剤等が使用されても良く嵌合穴58a,80aの内周面に塗布されることによってその内周面からの錆の発生が低減されるものであれば何が使用されても良い。
【0069】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
10:ドラムブレーキ
16:バッキングプレート
18,20:一対のブレーキシュー
52:ストラット
58:第2ストラット部材(第2案内部材)
58a:嵌合穴
58b:雌螺子部
58c:底部
60:第1ストラット部材(第1案内部材)
60c:雄螺子部
60d:軸部
66,82:案内装置
68,84,86,88:含浸部材(錆固着防止装置)
72:キャリパー
76,78:スライドピン(第1案内部材)
76a,78a:軸部
80:マウンティングブラケット(第2案内部材)
80a:嵌合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状の軸部を有する第1案内部材と、該軸部を嵌め入れる開口を一端に有し且つ他端が閉じられた嵌合穴が形成された第2案内部材とを備え、前記軸部の長手方向において相対移動可能とされた前記第1案内部材と前記第2案内部材との間の錆固着を防止する案内装置の錆固着防止装置であって、
前記嵌合穴には、錆の発生を低減するための防錆剤が含浸された含浸部材が収容されており、
前記含浸部材は、前記嵌合穴の開口から該嵌合穴の内周面に摺動させられつつ前記嵌合穴の底部に嵌め入れられたものであることを特徴とする案内装置の錆固着防止装置。
【請求項2】
前記含浸部材は、連通気孔を有する弾性変形可能な多孔質部材であり、
前記含浸部材は、前記第2案内部材の嵌合穴の断面より大きい寸法を有するものであることを特徴とする請求項1の案内装置の錆固着防止装置。
【請求項3】
前記第1案内部材は、その軸部の外周面の一部にねじ山が形成された雄螺子部を有し、バッキングプレート上に拡開可能に配設された円弧状の一対のブレーキシューに備えられた摩擦材の摩耗量によって該軸部回りに回動する第1ストラット部材であり、
前記第2案内部材は、その嵌合穴の内周面の一部に前記第1ストラット部材の雄螺子部と螺合する雌螺子部が形成され、前記第1ストラット部材と共に前記一対のブレーキシューの一端部間に架け渡された非制動時の該一対のブレーキシューの一端部間の離間量を制限するストラットを構成する第2ストラット部材であることを特徴とする請求項1または2の案内装置の錆固着防止装置。
【請求項4】
前記第1案内部材の軸部は、車輪と一体的に回転する円板状のディスクロータに摩擦材を押し付けるキャリパーに固定されたスライドピンであり、
前記第2案内部材は、該スライドピンを嵌め入れる嵌合穴を有し、車体側の非回転部材に取り付けられ且つ前記キャリパーを前記スライドピンを介して支持するマウンティングブラケットであることを特徴とする請求項1または2の案内装置の錆固着防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−265993(P2010−265993A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118107(P2009−118107)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】