説明

水田作業機

【課題】 機体の後部に水田作業装置を備え、機体と水田作業装置との間に整地装置を備えた水田作業機において、整地装置が田面の泥を押す状態を少なくする。
【解決手段】 機体の後部に水田作業装置5を備え、機体と水田作業装置5との間に整地装置53を備えて、整地装置53を田面Gに接地する作業位置と田面Gの上方に位置する退避位置とに亘って昇降自在に構成する。水田作業装置5が作業位置に下降駆動され且つ機体が設定距離だけ前進すると、整地装置53を作業位置に下降駆動する下降操作手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の後部に水田作業装置を備え、機体と水田作業装置との間に整地装置を備えた水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である乗用型田植機では、特許文献1に開示されているように、苗植付装置(水田作業装置に相当)(特許文献1の図1及び図2の4)を、機体の後部に昇降自在に備え、機体と水田作業装置との間に整地装置 (特許文献1の図1及び図2の40)を備えているものがある。
特許文献1では、苗植付装置の前部に整地装置が手動により高さ調節自在に支持されているので、操作レバー (特許文献1の図2及び図3の68)を操作することにより、苗植付装置に対する整地装置の高さを調節することができるのであり、苗植付装置を昇降駆動すると、整地装置も一緒に昇降駆動される。
【0003】
乗用型田植機では一般に、一回の作業行程が終了して機体が畦際に達すると、苗植付装置を停止させて、田面に接地する作業位置から田面の上方に位置する退避位置に上昇駆動し、機体の走行速度を作業走行速度から減速操作して、畦際での旋回を行う。畦際での旋回が終了すると、苗植付装置を作業位置に下降駆動して、苗植付装置を作動させながら、機体の走行速度を作業走行速度に増速操作して、次の作業行程に入る。
この場合、特許文献1のように、苗植付装置の前部に整地装置が支持されていると、一回の植付行程が終了して機体が畦際に達した際、苗植付装置と一緒に整地装置が上昇駆動され、畦際での旋回が終了した際、苗植付装置と一緒に整地装置が下降駆動される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−304648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているように、整地装置は苗植付装置の全幅に亘る横幅を備えた回転体を備えて構成されたものや、幅広のレーキ等によって構成されたものが多いので、水田作業装置(例えば苗植付装置は複数のフロートが田面に接地する)に比べ、機体の前進に伴って整地装置が田面の泥を押し易い。
【0006】
これにより、畦際での旋回が終了した際において、前述のように水田作業装置及び整地装置を作業位置に下降駆動して、水田作業装置を作動させながら、機体の走行速度を作業走行速度に増速操作した場合、後輪の逆駆動力により機体が前上がり状態(後下がり状態)となる。このような状態になると、水田作業装置及び整地装置が田面に沈み込む状態となりながら、機体が前進する状態となって、整地装置が田面の泥を押してしまうことがある。
例えば水田作業装置が苗植付装置である場合、整地装置が田面の泥を押してしまうと、この泥が横方向に流れて、前回の作業行程で田面に植え付けられた隣の苗が押し倒されてしまう可能性がある。前述のように、水田作業装置及び整地装置が田面に沈み込む状態となりながら、機体が前進する状態となるのは、機体を停止状態から発進させる場合においても同様に生じる。
【0007】
この場合、特許文献1では、苗植付装置の前部に整地装置が手動により高さ調節自在に支持され、操作レバーにより苗植付装置に対する整地装置の高さを調節することができるので、事前に操作レバーにより苗植付装置に対する整地装置の高さを高い位置に設定しておき、苗植付装置を作業位置に下降駆動しても、整地装置が田面に接地しないようにしておくこともできる。この後、機体の前上がり状態(後下がり状態)が解消してから、操作レバーにより苗植付装置に対する整地装置の高さを下方に変更して、整地装置を田面に接地させることもできる。
しかし、機体の前上がり状態(後下がり状態)が解消してから、運転者が操作レバーにより苗植付装置に対する整地装置の高さを下方に変更する必要があり、操作性の面で好ましいものではない。又、運転者が操作レバーにより苗植付装置に対する整地装置の高さを下方に変更することを忘れる可能性もある。
【0008】
本発明は、機体の後部に水田作業装置を備え、機体と水田作業装置との間に整地装置を備えた水田作業機において、畦際での旋回が終了した後に次の作業行程に入る場合や、機体を停止状態から発進させる場合において、整地装置が田面の泥を押してしまうような状態を少なくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、水田作業機において次のように構成することにある。
機体の後部に水田作業装置を備え、水田作業装置を田面に接地する作業位置と田面の上方に位置する退避位置とに亘って昇降自在に構成する。機体と水田作業装置との間に整地装置を備え、整地装置を田面に接地する作業位置と田面の上方に位置する退避位置とに亘って昇降自在に構成する。水田作業装置が作業位置に下降駆動され且つ機体が設定距離だけ前進すると、整地装置を作業位置に下降駆動する下降操作手段を備える。
【0010】
(作用)
本発明の第1特徴によると、例えば畦際での旋回が終了して、水田作業装置が退避位置から作業位置に下降駆動された場合、整地装置はまだ作業位置に下降駆動されず、田面の上方に位置する退避位置に位置しているのであり、この間に機体が前上がり状態(後下がり状態)になりながら前進しても、整地装置は田面に接地せず(田面に接地しても、整地装置が田面に沈み込む状態にならず)、整地装置が田面の泥を押してしまうような状態は少ない。
【0011】
この後、機体が設定距離だけ前進するまでは、整地装置は作業位置に下降駆動されないので、この間に機体の前上がり状態(後下がり状態)が解消するのであり、機体が設定距離だけ前進してから、整地装置が作業位置に自動的に下降駆動される。これにより、機体の前上がり状態(後下がり状態)が解消してから(整地装置が田面の泥を押してしまうような状態が少なくなってから)、整地装置により整地が開始される。
【0012】
本発明の第1特徴によれば、水田作業装置が作業位置に下降駆動され且つ機体が設定距離だけ前進すると、整地装置が作業位置に自動的に下降駆動されるので、特許文献1のように、運転者が操作レバーを操作して整地装置を作業位置に下降操作すると言うようなことを行わなくてもよい。又、運転者が操作レバーを操作して整地装置を作業位置に下降操作することを忘れてしまうようなこともない。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、機体の後部に水田作業装置を備え、機体と水田作業装置との間に整地装置を備えた水田作業機において、機体の前上がり状態(後下がり状態)が解消してから(整地装置が田面の泥を押してしまうような状態が少なくなってから)、整地装置により整地が開始されるようになり、整地装置が田面の泥を押してしまうことによる不具合を少なくすることができた。
【0014】
本発明の第1特徴によると、特許文献1のように、運転者が操作レバーを操作して整地装置を作業位置に下降操作すると言うようなことを行わなくてもよく、運転者が操作レバーを操作して整地装置を作業位置に下降操作することを忘れてしまうようなこともないので、操作性の面で好ましいものとなった。
【0015】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、水田作業機において次のように構成することにある。
機体の後部に水田作業装置を備え、水田作業装置を田面に接地する作業位置と田面の上方に位置する退避位置とに亘って昇降自在に構成する。機体と水田作業装置との間に整地装置を備え、整地装置を田面に接地する作業位置と田面の上方に位置する退避位置とに亘って昇降自在に構成する。水田作業装置が作業位置に下降駆動され且つ水田作業装置が作動を開始してから設定時間の経過後に、整地装置を作業位置に下降駆動する下降操作手段を備える。
【0016】
(作用)
本発明の第2特徴によると、例えば畦際での旋回が終了して、水田作業装置が退避位置から作業位置に下降駆動された場合、整地装置はまだ作業位置に下降駆動されず、田面の上方に位置する退避位置に位置しているのであり、この間に機体が前上がり状態(後下がり状態)になりながら前進しても、整地装置は田面に接地せず(田面に接地しても、整地装置が田面に沈み込む状態にならず)、整地装置が田面の泥を押してしまうような状態は少ない。
【0017】
この後、水田作業装置が作動を開始してから設定時間が経過するまでは、整地装置は作業位置に下降駆動されないので、この設定時間の間に機体の前上がり状態(後下がり状態)が解消するのであり、水田作業装置が作動を開始してから設定時間の経過後に、整地装置が作業位置に自動的に下降駆動される。これにより、機体の前上がり状態(後下がり状態)が解消してから(整地装置が田面の泥を押してしまうような状態が少なくなってから)、整地装置により整地が開始される。
【0018】
本発明の第2特徴によれば、水田作業装置が作業位置に下降駆動され且つ水田作業装置が作動を開始してから設定時間が経過後すると、整地装置が作業位置に自動的に下降駆動されるので、特許文献1のように、運転者が操作レバーを操作して整地装置を作業位置に下降操作すると言うようなことを行わなくてもよい。又、運転者が操作レバーを操作して整地装置を作業位置に下降操作することを忘れてしまうようなこともない。
【0019】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、機体の後部に水田作業装置を備え、機体と水田作業装置との間に整地装置を備えた水田作業機において、機体の前上がり状態(後下がり状態)が解消してから(整地装置が田面の泥を押してしまうような状態が少なくなってから)、整地装置により整地が開始されるようになり、整地装置が田面の泥を押してしまうことによる不具合を少なくすることができた。
【0020】
本発明の第2特徴によると、特許文献1のように、運転者が操作レバーを操作して整地装置を作業位置に下降操作すると言うようなことを行わなくてもよく、運転者が操作レバーを操作して整地装置を作業位置に下降操作することを忘れてしまうようなこともないので、操作性の面で好ましいものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[1]
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部に、リンク機構3により6条植型式の苗植付装置5(水田作業装置に相当)が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられて、水田作業機の一例である乗用型田植機が構成されている。後述するように、苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート11)が田面Gに接地する作業位置、及び田面Gの上方に位置する退避位置(リンク機構3の上限位置)の範囲において、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動される。
【0022】
次に、苗植付装置5について説明する。
図1,2,4に示すように、苗植付装置5は、1個のフィードケース17、3個の伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された一対の回転ケース7、回転ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、中央のセンターフロート9及びサイドフロート11、6個の苗のせ面を備えて左右方向に往復横送り駆動される苗のせ台10、苗のせ台10の苗のせ面の各々に備えられた縦送り機構25等を備えて構成されている。左右方向に配置された支持フレーム18に、フィードケース17及び伝動ケース6が固定されており、フィードケース17がリンク機構3の後部下部の前後軸芯P1(図3参照)周りにローリング自在に支持されている。
【0023】
図4に示すように、フィードケース17から横送り軸19が延出され、横送り軸19の端部が支持部材20を介して支持フレーム18に支持されて、横送り軸19の回転に伴って往復横送り駆動される送り部材21が横送り軸19に外嵌されており、送り部材21が苗のせ台10に接続されている。伝動ケース6にガイドレール38が左右方向に支持されて、苗のせ台10の下部がガイドレール38に沿って横移動自在に支持されている。図2及び図3に示すように、支持フレーム18の右及び左の端部に支持部材26が固定され上方に延出されて、支持部材26の上部に亘って支持部材50が固定されており、苗のせ台10の上部の前面にガイドレール27が固定され、支持部材50に支持されたローラー51にガイドレール27が横移動自在に支持されている。
【0024】
図1及び図4に示すように、エンジン49の動力が植付クラッチ87(図7参照)及びPTO軸22を介して、フィードケース17に備えられた入力軸28に伝達され、入力軸28の動力が横送り変速機構29を介して横送り軸19に伝達されており、横送り軸19が回転駆動される。入力軸28の動力が伝動チェーン30、伝動ケース6に亘って架設された伝動軸23、伝動ケース6に備えられた入力軸32に伝達されており、入力軸32の動力がトルクリミッター33、伝動チェーン34、少数条クラッチ24及び駆動軸35を介して回転ケース7に伝達されている。伝動ケース6に亘って円筒状のカバー60が固定されており、カバー60により伝動軸23が覆われている。
【0025】
これにより、植付クラッチ87が伝動状態に操作されると、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図2の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台10の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付ける。植付クラッチ87が遮断状態に操作されると、苗のせ台10の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止される。
【0026】
図2に示すように、苗のせ台10の6個の苗のせ面の各々に、ベルト式の縦送り機構25が備えられている。図4に示すように、フィードケース17から縦送り軸36が延出され、縦送り軸36の端部が支持部材37を介して支持フレーム18に支持されて、入力軸28の動力により縦送り軸36が回転駆動されており、縦送り軸36に一対の駆動アーム36aが固定されている。6個の縦送り機構25に動力を伝達する入力部(図示せず)が苗のせ台10に備えられており、入力部が縦送り軸36の駆動アーム36aの間に位置している。これにより、苗のせ台10が往復横送り駆動の右又は左端部に達すると、入力部が縦送り軸36の一方の駆動アーム36aに達して、縦送り軸36の一方の駆動アーム36aにより入力部が駆動され、6個の縦送り機構25により苗のせ台10の苗が下方に送られる。
【0027】
図1及び図2に示すように、運転座席31の後側に、肥料を貯留するホッパー12及び2つの植付条に対応した3個の繰り出し部13が備えられており、運転座席31の下側にブロア14が備えられている。センターフロート9及びサイドフロート11に2個の作溝器15が固定されて、6個の作溝器15が備えられており、繰り出し部13と作溝器15とに亘って6本のホース16が接続されている。これにより、前述のような苗の植え付けに伴って、ホッパー12から肥料が所定量ずつ繰り出し部13によって繰り出され、ブロア14の送風により肥料がホース16を通って作溝器15に供給されるのであり、作溝器15を介して肥料が田面Gに供給される。
【0028】
図7に示すように、繰り出し部13に動力を伝動及び遮断自在な施肥クラッチ90と、施肥クラッチ90を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ91とが備えられており、植付クラッチ87を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ89が備えられている。これにより、電動モータ89,91により植付及び施肥クラッチ87,90を伝動及び遮断状態に操作することによって、苗植付装置5(植付アーム8による苗の植え付け)及び繰り出し部13の作動及び停止を行う。
【0029】
[2]
次に、整地装置53について説明する。
図2,3,4に示すように、支持フレーム18の左の端部にボス部材64が固定され、伝動軸23及び入力軸32の横軸芯P2周りに、伝動ケース81がボス部材64に上下に揺動自在に支持されている。支持フレーム18の右の端部にブラケット82が固定され、ブラケット82の横軸芯P2(伝動軸23及び入力軸32の横軸芯P2)周りに、支持アーム83が上下に揺動自在に支持されており、伝動ケース81及び支持アーム83に亘って、断面正方形状の駆動軸61が回転自在に支持されている。
【0030】
図6に示すように、合成樹脂により一体的に成形された小幅の回転体62が備えられている。回転体62は、ボス部62a、ボス部62aに形成された断面正方形状の取付孔62b、ボス部62aに接続されたフランジ部62c、フランジ部62cの外周部に接続された凸状の整地部62dを備えて構成されている。図2,3,4に示すように、多数の回転体62のボス部62a(取付孔62b)に駆動軸61が挿入されて、回転体62が駆動軸61に固定されており、駆動軸61にスペーサ63が外嵌されて回転体62の位置が決められている。
【0031】
図2,3,4に示すように、伝動ケース81及び支持アーム83にブラケット65が固定され、伝動ケース81及び支持アーム83の外側に位置するように、合成樹脂製のカバー66がブラケット65に固定されている。ブラケット65に亘って、丸パイプ状の支持フレーム67が固定されており、合成樹脂製のカバー66が支持フレーム67に固定されている。カバー66は比較的軟質の薄板状で、回転体62の後方に位置しており、回転体62の外周部の下端部とカバー66の下端部とが略同じ高さに位置している。
【0032】
図2,3,4に示すように、駆動軸61、回転体62、カバー66、支持フレーム67、伝動ケース81及び支持アーム83等により整地装置53が構成されている。苗植付装置5(センターフロート9及びサイドフロート11)の前部に整地装置53が支持され、後輪2の後方に整地装置53が配置されており、伝動ケース81及び支持アーム83が横軸芯P2周りに上下に揺動することによって、整地装置53が苗植付装置5の前部に昇降自在に支持されている(機体と水田作業装置との間に整地装置を備えた状態に相当)。
【0033】
[3]
次に、整地装置53の駆動構造及び昇降駆動構造について説明する。
図4に示すように、入力軸32に接続された伝動軸75が、ボス部材64及び伝動ケース81の内部に配置されている。伝動ケース81の内部において、伝動軸75にスプロケット78が相対回転自在に外嵌され、駆動軸61にスプロケット79が固定されて、スプロケット78,79に亘って伝動チェーン80が巻回されており、伝動軸75とスプロケット78との間にトルクリミッター77が備えられている。
【0034】
前項[1]、図1及び図4に示すように、エンジン49の動力が植付クラッチ87及びPTO軸22を介して、入力軸28、伝動チェーン30、伝動軸23及び入力軸32に伝達されると、入力軸32の動力が伝動軸75、トルクリミッター77及び伝動チェーン80を介して駆動軸61に伝達されて、駆動軸61及び回転体62が図2の紙面反時計方向に回転駆動される。
【0035】
この場合、駆動軸61及び回転体62が、機体の走行速度よりも高速で回転駆動される(右及び左の後輪2の外周部の周速度よりも回転体62の外周部の周速度が高速になるように、駆動軸61及び回転体62が高速で回転駆動される)。これにより、植付アーム8の前方の田面Gが駆動軸61及び回転体62によって整地(代掻き)されるのであり、駆動軸61及び回転体62から後方の苗植付装置5への泥の飛散が、カバー66によって止められる。
【0036】
これにより、電動モータ89,91により植付及び施肥クラッチ87,90を伝動及び遮断状態に操作することによって、苗植付装置5(植付アーム8による苗の植え付け)及び繰り出し部13の作動及び停止を行うのと同時に、整地装置53(駆動軸61及び回転体62)の作動及び停止を行う。駆動軸61や回転体62に石等の異物が噛み込まれるなどして、駆動軸61及び回転体62に大きな負荷が発生すると、トルクリミッター77により駆動軸61及び回転体62への動力が遮断されて、駆動軸61及び回転体62が停止する。
【0037】
図2,3,5に示すように、リンク機構3の左隣に位置するように、支持フレーム52が支持フレーム18に固定されて、支持フレーム52の横軸芯P3周りに扇型の昇降ギヤ54が上下に揺動自在に支持されており、ピニオンギヤ55aを備えたギヤ機構55及びギヤ機構55を駆動する電動モータ56が支持フレーム52に固定され、ギヤ機構55のピニオンギヤ55aが昇降ギヤ54に咬合している。駆動軸61の中央部において、ボス部材57がベアリング(図示せず)により相対回転自在に駆動軸61に外嵌されており、昇降ギヤ54とボス部材57とに亘ってロッド58が接続されている。ブラケット65と支持部材26とに亘ってバネ59が接続されており、バネ59の付勢力により整地装置53が上昇側に付勢されている。
【0038】
以上の構造により、図2,3,5に示すように、電動モータ56によりギヤ機構55のピニオンギヤ55aを正逆に回転駆動して、昇降ギヤ54を横軸芯P3周りに上下に揺動駆動することにより、整地装置53を苗植付装置5に対して昇降駆動する。この場合、図7に示すように苗植付装置5が作業位置に位置している状態において、田面Gの上方に位置する退避位置A3及び田面Gに接地する作業位置A4の範囲において、電動モータ56により整地装置53を昇降駆動することができる。苗植付装置5が退避位置に位置していると、整地装置53が作業位置A4に下降駆動されても、整地装置53は田面Gに接地しない。
【0039】
図5及び図7に示すように、ポテンショメータ74が横軸芯P3に位置するように支持フレーム52に固定されて、ポテンショメータ74と昇降ギヤ54とが接続されており、ポテンショメータ74の検出値が制御装置40に入力されている。これにより、ポテンショメータ74によって、支持フレーム52に対する昇降ギヤ54の角度を検出することにより、苗植付装置5に対する整地装置53の高さが検出される。
【0040】
[4]
次に、苗植付装置5の昇降制御手段の構造について説明する。
図2,5,7に示すように、伝動ケース6の下部の横軸芯P4周りに支持軸41が回転自在に支持されて、支持軸41に固定された支持アーム41aが後方に延出されており、支持アーム41aの後端の横軸芯P5周りに、センターフロート9及びサイドフロート11の後部が上下に揺動自在に支持されている。図3及び図7に示すように、人為的に操作可能な植付設定高さレバー42が支持軸41に固定されて前方上方に延出されており、支持フレーム18に固定されたレバーガイド43に、植付設定高さレバー42が挿入されている。
【0041】
図5及び図7に示すように、植付設定高さレバー42により支持軸41及び支持アーム41aを回動操作して、横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11)の位置を上下に変更することによって、後述する設定高さA1(設定深さ)を変更することができるのであり、植付設定高さレバー42をレバーガイド43に係合させることにより、横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11)の位置を固定して、設定高さA1(設定深さ)を設定することができる。
【0042】
図7に示すように、支持軸41の角度を検出するポテンショメータ44が支持フレーム18に固定されて、ポテンショメータ44の検出値が制御装置40に入力されている。ポテンショメータ44により支持軸41の角度を検出することによって、横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11)の位置を検出することができるのであり、前述のように、植付設定高さレバー42により設定高さA1(設定深さ)を設定した場合、ポテンショメータ44の検出値により設定高さA1(設定深さ)が制御装置40に認識される(後述の[5]の記載及び図8のステップS1参照)。
【0043】
図5及び図7に示すように、センターフロート9の上方において支持フレーム18にブラケット45が固定され、ブラケット45にポテンショメータ68が固定されており、ポテンショメータ68の検出アーム68aとセンターフロート9の前部とに亘ってロッド69が接続されている。ポテンショメータ68の検出アーム68aを下方に付勢するバネ86が備えられて、バネ86によりセンターフロート9の前部が下方に付勢されており、ポテンショメータ68の検出値C1が制御装置40に入力されている。人為的に操作可能なダイヤル式の感度設定スイッチ70が備えられており、感度設定スイッチ70の操作位置が制御装置40に入力されている。
【0044】
図5及び図7に示す状態は、植付設定高さレバー42により横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11)の位置を設定した状態であり、ポテンショメータ44の検出値に基づいて、横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11)の位置に対応した設定高さA1(設定深さ)が設定された状態である。この状態において、例えばセンターフロート9の底面が水平となるポテンショメータ68の検出値C1が、設定高さA1(設定深さ)に対応する設定検出値B1として設定される(後述の[5]の記載及び図8のステップS2参照)。これにより、後述の[5]に記載のように、昇降制御手段が作動する。
【0045】
[5]
次に、苗植付装置5の昇降制御手段の作動について、図8に基づいて説明する。
前項[4]及び図7に示すように、苗植付装置5が作業位置に位置している状態において、ポテンショメータ44の検出値により設定高さA1(設定深さ)が制御装置40に認識され(ステップS1)、設定高さA1(設定深さ)に対応する設定検出値B1が設定されたとする(ステップS2)。
【0046】
図5及び図7に示すように、センターフロート9が田面Gに接地追従するのに対して、苗植付装置5が上下動すると、これに伴って田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)が変化しようとする。これにより、田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)が、ポテンショメータ68により検出されて(ステップS3)、設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))とポテンショメータ68の検出値C1との差E1が検出される(ステップS4)。
【0047】
田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)が、設定高さA1(設定深さ)よりも高い場合(ステップS5)、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する制御弁71が制御装置40により操作されて、油圧シリンダ4により苗植付装置5が下降駆動される(ステップS6)。
田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)が、設定高さA1(設定深さ)と同じ高さの場合(ステップS5)、制御弁71が制御装置40により操作されて、苗植付装置5の昇降駆動が停止する(ステップS7)。
田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)が、設定高さA1(設定深さ)よりも低い場合(ステップS5)、制御弁71が制御装置40により操作されて、油圧シリンダ4により苗植付装置5が上昇駆動される(ステップS8)。
【0048】
以上のようにして、ポテンショメータ68の検出値C1が設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))となるように、制御弁71が制御装置40により操作され、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持される(田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)が、設定高さA1(設定深さ)に維持される)(昇降制御手段)。
【0049】
図5及び図7に示すように、植付設定高さレバー42により横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11)の位置を変更すると、新たな設定高さA1(設定深さ)が設定される(ステップS1)。これに伴いポテンショメータ44の検出値に基づいて、例えばセンターフロート9の底面が水平となるポテンショメータ68の検出値C1が、前述の新たな設定高さA1(設定深さ)に対応する新たな設定検出値B1として設定されるのであり(ステップS2)、これにより苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さを変更することができる。
【0050】
この場合、感度設定スイッチ70により設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))を少し変更することができる。感度設定スイッチ70を敏感側及び鈍感側の中央の中立位置Nに操作していると、設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))に変更はない(植付設定高さレバー42により横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11)の位置を設定した状態で、横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11)の位置に対応した設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))が設定された状態)。
【0051】
感度設定スイッチ70を中立位置Nから敏感側に操作すると、図7に示す設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))が、感度設定スイッチ70の操作位置に対応して少し低側に変更される。これによって、設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))でのセンターフロート9の底面が少し下向きとなり、センターフロート9の田面Gへの接地面積が大きくなって、センターフロート9が田面Gに敏感に追従するようになるので、油圧シリンダ4による苗植付装置5の昇降駆動が敏感なものに設定される。
【0052】
感度設定スイッチ70を中立位置Nから鈍感側に操作すると、図7に示す設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))が、感度設定スイッチ70の操作位置に対応して少し高側に変更される。これによって、設定高さA1(設定深さ)でのセンターフロート9の底面が少し上向きとなり、センターフロート9の田面Gへの接地面積が小さくなって、センターフロート9が田面Gに鈍感に追従するようになるので、油圧シリンダ4による苗植付装置5の昇降駆動が鈍感なものに設定される。
【0053】
[6]
次に、苗植付装置5のローリング制御手段の構造及び作動について説明する。
前項[1]の記載及び図3に示すように、フィードケース17がリンク機構3の後部下部の前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている(苗植付装置5がリンク機構3の後部下部の前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている)。図3及び図7に示すように、フィードケース17に傾斜センサー48が固定されて、水平面(田面G)に対する苗植付装置5の左右方向の傾斜角度が傾斜センサー48によって検出されており、傾斜センサー48の検出値C2が制御装置40に入力されている。
【0054】
図3に示すように、リンク機構3の後部上部にローリング機構46が備えられており、ローリング機構46は、左右方向に押し引き操作される一対のワイヤ46a、ワイヤ46aを押し引き駆動するギヤ機構(図示せず)及び電動モータ46bを備えて構成されている。ガイドレール27の右及び左の端部にブラケット27aが固定されて、ローリング機構46に固定されたアーム46cとガイドレール27のブラケット27aとに亘って、バネ47が接続されており、ローリング機構46のワイヤ46aと支持部材50の右及び左側部とに亘ってバネ39が接続されている。
【0055】
これにより、前項[1]及び図3に示すように、苗のせ台10が往復横送り駆動されるのに伴って、右又は左のバネ47が引き延ばされるのであり、苗のせ台10が右(左)に横送り駆動されると、右(左)のバネ47が引き延ばされて、右(左)のバネ47の付勢力により苗植付装置5の右(左)への傾斜が抑えられる。
【0056】
図9に示すように、苗植付装置5が作業位置に位置している状態において、水平面(田面G)に対する苗植付装置5の左右方向の傾斜角度が傾斜センサー48により検出されて(ステップS11)、水平面(田面G)と傾斜センサー48の検出値C2との差E2が検出される(ステップS12)。
図9に示すように、苗植付装置5が水平面(田面G)から右傾斜側に変位していると(ステップS13)、制御装置40によりローリング機構46の電動モータ46bが作動操作され、ローリング機構46のワイヤ46aが押し引き駆動されて、苗植付装置5が前後軸芯P1周りに左にローリング駆動される(ステップS14)。
【0057】
図9に示すように、苗植付装置5が水平面(田面G)から左傾斜側に変位していると(ステップS13)、制御装置40によりローリング機構46の電動モータ46bが作動操作され、ローリング機構46のワイヤ46aが押し引き駆動されて、苗植付装置5が前後軸芯P1周りに右にローリング駆動される(ステップS15)。
図9に示すように、苗植付装置5が水平面(田面G)と同じ傾斜角度であると(ステップS13)、苗植付装置5のローリング駆動が停止する(ステップS16)。
以上のようにして、苗植付装置5が水平に維持される(田面Gと左右方向で平行に維持される)。
【0058】
[7]
次に、整地装置53の整地制御手段について説明する。
前項[5][6]、図5及び図7に示すように、苗植付装置5が作業位置に位置し、整地装置53が作業位置A4に位置して、昇降制御手段及びローリング制御手段が作動した状態(ポテンショメータ68の検出値C1が設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))となるように(田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)が、設定高さA1(設定深さ)となるように)、苗植付装置5が昇降駆動され、苗植付装置5が水平に維持されるようにローリング駆動された状態)において、ポテンショメータ74により苗植付装置5に対する整地装置53の高さが検出され、田面Gから整地装置53までの高さが制御装置40で演算される。
【0059】
図7に示すように、人為的に操作可能なダイヤル式の整地設定スイッチ84が備えられて、整地設定スイッチ84の操作位置が制御装置40に入力されており、整地設定スイッチ84を操作することにより整地設定高さA2(整地深さ)を任意に設定することができる。
【0060】
図7に示すように、苗植付装置5が作業位置に位置し、整地装置53が作業位置A4に位置して、昇降制御手段及びローリング制御手段が作動した状態において、整地設定スイッチ84によって整地設定高さA2(整地深さ)を設定すると、田面Gから整地装置53(例えば駆動軸61の軸芯の位置)までの高さが整地設定高さA2(整地深さ)となるように、制御装置40により電動モータ56が作動操作されて、整地装置53が苗植付装置5に対して昇降駆動される(整地制御手段)。
【0061】
前項[5]及び図7に示すように、植付設定高さレバー42により横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11)の位置を変更して(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さを変更して)、新たな設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))が設定されると、ポテンショメータ68の検出値C1が新たな設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))となるように(田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)が、新たな設定高さA1(設定深さ)となるように)、油圧シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動される。これに伴って田面Gから整地装置53までの高さが変化する。
【0062】
この場合、図7に示すように、整地設定スイッチ84により整地設定高さA2(整地深さ)を設定した状態において、田面Gから整地装置53(例えば駆動軸61の軸芯の位置)までの高さが変化すると、ポテンショメータ44の検出値に基づき、新たな設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))に対応して、田面Gから整地装置53(例えば駆動軸61の軸芯の位置)までの高さが整地設定高さA2(整地深さ)となるように、制御装置40により電動モータ56が作動操作されて、整地装置53が苗植付装置5に対して昇降駆動される(整地制御手段)。
【0063】
図7に示すように、設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))が上側に変更されると(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが浅側に変更されると)、整地装置53の位置が苗植付装置5に対して下方に変更されて、田面Gから整地装置53(例えば駆動軸61の軸芯の位置)までの高さが整地設定高さA2(整地深さ)に維持される。設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))が下側に変更されると(苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが深側に変更されると)、整地装置53の位置が苗植付装置5に対して上方に変更されて、田面Gから整地装置53(例えば駆動軸61の軸芯の位置)までの高さが整地設定高さA2(整地深さ)に維持される。
【0064】
図7に示すように、感度設定スイッチ70を敏感側及び鈍感側の中央の中立位置Nに操作していると、整地設定スイッチ84によって設定された整地設定高さA2(整地深さ)が維持される。感度設定スイッチ70を中立位置Nから敏感側に操作すると、前項[2]に記載のように、設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))が少し低側に変更され、油圧シリンダ4による苗植付装置5の昇降駆動が敏感なもの設定されることに加えて、整地設定スイッチ84の操作位置に対応した整地設定高さA2(整地深さ)が少し高側に変更される(整地装置53の整地深さが浅くなる状態)。
【0065】
図7に示すように、感度設定スイッチ70を中立位置Nから鈍感側に操作すると、前項[4]に記載のように、設定検出値B1(設定高さA1(設定深さ))が少し高側に変更され、油圧シリンダ4による苗植付装置5の昇降駆動が鈍感なものに設定されることに加えて、整地設定スイッチ84の操作位置に対応した整地設定高さA2(整地深さ)が少し低側に変更される(整地装置53の整地深さが深くなる状態)。
【0066】
[8]
次に苗植付装置5及び整地装置53の昇降駆動について図10に基づいて説明する。
図7に示すように、前輪1を操向操作する操縦ハンドル88の右下側に操作レバー73が備えられて、操作レバー73は上位置U1及び下位置D1、中立位置Nに操作自在で、中立位置Nに付勢されており、操作レバー73の操作位置が制御装置40に入力されている。操縦ハンドル88の左下側に昇降レバー76が備えられて、昇降レバー76は上位置U2及び下位置D2に操作自在に構成されており、昇降レバー76の操作位置が制御装置40に入力されている。
【0067】
一回の作業行程において、苗植付装置5が作業位置に位置し、整地装置53が作業位置A4に位置して(昇降レバー76が下位置D2に操作された状態(ステップS21))、植付及び施肥クラッチ87,90が伝動状態に操作され、苗植付装置5及び繰り出し部13が作動し、整地装置53が作動して、昇降制御手段及びローリング制御手段が作動し、整地制御手段が作動した状態であったとする。
【0068】
一回の作業行程が終了して機体が畦際に達すると、運転者は操作レバー73を上位置U1に操作し(上位置U1に操作して中立位置Nに戻し操作し)(ステップS24)、操縦ハンドル88により前輪1の操向操作を行いながら、走行用の変速装置(図示せず)の減速操作又はエンジン49のアクセル(図示せず)を低速側に操作し、機体の走行速度を減速操作して、畦際での旋回を行う。
【0069】
この場合、操作レバー73を上位置U1に操作すると(上位置U1に操作して中立位置Nに戻し操作すると)、昇降制御手段及びローリング制御手段が停止し(ステップS25,S26)、植付及び施肥クラッチ87,90が遮断状態に操作され(苗植付装置5及び繰り出し部13、整地装置53の停止状態)(ステップS27)、苗植付装置5が退避位置に上昇駆動されるのであり(ステップS28)、整地制御手段が停止して(ステップS30)、整地装置53が退避位置A3に上昇駆動される(ステップS31)。
【0070】
畦際での旋回が終了すると、運転者は操作レバー73を下位置D1に操作し(下位置D1に操作して中立位置Nに戻し操作し)(ステップS24)、走行用の変速装置(図示せず)又はエンジン49のアクセル(図示せず)を元の状態に操作し、機体の走行速度を増速操作して、次の作業行程に入る。
【0071】
この場合、操作レバー73を下位置D1に操作すると(下位置D1に操作して中立位置Nに戻し操作すると)(ステップS24)、植付及び施肥クラッチ87,90が遮断状態に保持され(苗植付装置5及び繰り出し部13、整地装置53の停止状態)、整地装置53が退避位置A3に保持された状態で、苗植付装置5が作業位置に下降駆動されて(ステップS33)、センターフロート9が田面Gに接地すると(ステップS34)、苗植付装置5の下降駆動が停止し、昇降制御手段及びローリング制御手段が作動するのであり(ステップS35,S36)、後述の[9]に記載の下降操作手段が作動する(ステップS38)。
【0072】
次に操作レバー73を下位置D1に操作すると(下位置D1に操作して中立位置Nに戻し操作すると)(ステップS24,S32)、植付及び施肥クラッチ87,90が伝動状態に操作される(苗植付装置5及び繰り出し部13、整地装置53の作動状態)(ステップS39,S40)。さらに操作レバー73を下位置D1に操作すると(下位置D1に操作して中立位置Nに戻し操作すると)(ステップS24,S32)、植付及び施肥クラッチ87,90が遮断状態に操作される(苗植付装置5及び繰り出し部13、整地装置53の停止状態)(ステップS39,S41)。
【0073】
以上のように、苗植付装置5を作業位置に下降駆動した後、操作レバー73を下位置D1に操作することを繰り返すことにより(下位置D1に操作して中立位置Nに戻し操作することを繰り返すことにより)、植付及び施肥クラッチ87,90の伝動及び遮断状態(苗植付装置5及び繰り出し部13、整地装置53の作動及び停止状態)を交互に現出させることができる。
【0074】
[9]
次に、下降操作手段について、図10及び図11に基づいて説明する。
図7に示すように、右の後輪2の回転数を検出する右の回転数センサー85、左の後輪2の回転数を検出する左の回転数センサー85が備えられて、右及び左の回転数センサー85の検出値が制御装置40に入力されている。
【0075】
これにより、前項[8]に記載のように、苗植付装置5が作業位置に下降駆動され(ステップS33)、センターフロート9が田面Gに接地して(ステップS34)、苗植付装置5の下降駆動が停止し、昇降制御手段及びローリング制御手段が作動すると(ステップS35,S36)、右及び左の回転数センサー85の検出値の差Eが検出される(ステップS51)。
【0076】
この場合、畦際での旋回が終了する前に、操作レバー73を下位置D1に操作して(下位置D1に操作して中立位置Nに戻し操作して)(ステップS24)、ステップS24,S32〜S36に移行することがあるので、差Eが設定値E1よりも大きいと(右及び左の後輪2の回転数差が大きいと)(ステップS52)、畦際での旋回が終了していないと判断される。
【0077】
次に差Eが設定値E1以下になると(右及び左の後輪2の回転数差が小さくなると)(ステップS52)、畦際での旋回が終了したと判断され、次の作業行程に入る状態であると判断されて、右及び左の回転数センサー85の検出値の平均値に基づいて機体の前進距離Kの検出が開始されるのであり(ステップS53)、機体の前進距離Kが設定距離K1に達するまで(ステップS54)、整地制御手段が停止状態に保持され、整地装置53が退避位置A3に保持される。
【0078】
機体の前進距離Kが設定距離K1に達するまでの間に、前項[8]に記載のように、運転者は、操作レバー73を下位置D1に操作して(下位置D1に操作して中立位置Nに戻し操作して)(ステップS24)、植付及び施肥クラッチ87,90を伝動状態に操作するのであり(苗植付装置5及び繰り出し部13、整地装置53の作動状態)(ステップS39,S40)、走行用の変速装置(図示せず)又はエンジン49のアクセル(図示せず)を元の状態に操作して、機体の走行速度を増速操作する。
次に機体の前進距離Kが設定距離K1に達すると(ステップS54)、整地装置53が作業位置A4に下降駆動されて(ステップS55)、整地制御手段が作動する(ステップS56)。
【0079】
この場合、昇降レバー76が上位置U2に操作されていると(ステップS21)、整地制御手段が停止状態に保持され(ステップS22)、整地装置53が退避位置A3に保持されるのであり(ステップS23,S29)、操作レバー73を下位置D1に操作しても(下位置D1に操作して中立位置Nに戻し操作しても)(ステップS24)、下降操作手段は作動せず、整地制御手段が停止状態に保持されて、整地装置53が退避位置A3に保持される(ステップS29,S37)。
【0080】
[10]
図1に示すように、運転座席31の右横側に昇降操作レバー72が備えられ、昇降操作レバー72は上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作自在に構成されており、昇降操作レバー72の操作位置が制御装置40に入力されている。
【0081】
昇降操作レバー92を上昇位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ87,90が遮断状態に操作されて、昇降制御手段及びローリング制御手段が停止した状態で、苗植付装置5が上昇駆動される。
昇降操作レバー92を中立位置に操作すると、植付及び施肥クラッチ87,90が遮断状態に操作されて、昇降制御手段及びローリング制御制御が停止した状態で、苗植付装置5の昇降駆動が停止する。
【0082】
昇降操作レバー92を下降位置に操作すると、植付及びクラッチ87,90が遮断状態に操作され、苗植付装置5が下降駆動され、センターフロート9が田面Gに接地すると、昇降制御手段及びローリング制御手段が作動する。昇降操作レバー92を植付位置に操作すると、前述の昇降操作レバー92を下降位置に操作した状態に加えて、植付及び施肥クラッチ87,90が伝動状態に操作される。
【0083】
これにより、図10及び図11に示すように、昇降レバー76が下位置D2に操作された状態(ステップS21)において、昇降操作レバー72を上昇位置に操作すると、ステップS29,S30,S31の操作が行われるのであり、昇降操作レバー72を下降位置に操作すると、ステップS37,S38,S51〜S56の操作が行われる。
【0084】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、前項[9]に記載の下降操作手段を、図12に示すように構成してもよい。
前項[8]及び図10に示すように、苗植付装置5が作業位置に下降駆動され(ステップS33)、センターフロート9が田面Gに接地して(ステップS34)、苗植付装置5の下降駆動が停止し、昇降制御手段及びローリング制御手段が作動した後(ステップS35,S36)において、運転者が操作レバー73を下位置D1に操作して(下位置D1に操作して中立位置Nに戻し操作して)(ステップS24,S32)、植付及び施肥クラッチ87,90を伝動状態に操作すると(苗植付装置5及び繰り出し部13、整地装置53の作動状態)(ステップS39,S40)、畦際での旋回が終了したと判断され、次の作業行程に入る状態であると判断される。
【0085】
これにより、図12のステップS61,S62に示すように、タイマーのカウントが開始されて、設定時間Tが経過するまでは(ステップS63)、整地制御手段が停止状態に保持され、整地装置53が退避位置A3に保持される。
設定時間Tが経過するまでの間に、前項[8]に記載のように、運転者は、走行用の変速装置(図示せず)又はエンジン49のアクセル(図示せず)を元の状態に操作して、機体の走行速度を増速操作する。次に設定時間Tが経過すると(ステップS63)、整地装置53が作業位置A4に下降駆動されて(ステップS64)、整地制御手段が作動する(ステップS65)。
【0086】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]において、整地装置53を以下のように構成してもよい。
図13に示すように、伝動ケース81の横側面の電動モータ97を固定し、伝動ケース81の内部において、電動モータ97に連結された駆動プーリー98と、駆動軸61に固定された入力プーリー99とに亘って伝動ベルト100を巻回し、伝動ベルト100にテンションプーリー101を当て付ける。これにより、図4に示す伝動軸23の動力ではなく、電動モータ97により整地装置53を駆動するのであり、電動モータ97を作動及び停止させることにより、整地装置53(駆動軸61及び回転体62)の作動及び停止を行う。
【0087】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において、整地装置53を以下のように構成してもよい。
(1)図14に示すように、整地装置53において、センターフロート9の前方に位置する回転体62eを、他の回転体62よりも小径のものに構成する。これにより、センターフロート9の前方に位置する田面Gの泥を、整地装置53(回転体62e)によりあまり押し退けないようにして、センターフロート9の田面Gへの沈み込み(潜り込み)を少なくする。
【0088】
(2)図15に示すように、整地装置53において、右及び左の後輪2の後方に位置する回転体62eを、他の回転体62よりも小径のものに構成する。これにより、右及び左の後輪2の後方に位置する田面Gの泥を、整地装置53(回転体62e)によりあまり押し退けないようにして、右及び左の後輪2によって田面Gに形成された溝が、田面Gの泥により早期に埋め戻されるようにする。
【0089】
(3)図16に示すように、整地装置53を機体の左右方向に配置するのではなく、整地装置53の右側部及び左側部が、中央部分から右及び左斜め後向きに配置されるように構成する。この場合、整地装置53の中央部分に伝動ケース92を備えて、PTO軸22の動力の一部が伝動軸93を介して伝動ケース92に伝達され、整地装置53の右側部及び左側部に伝達されるように構成する。
【0090】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第3別形態]において、センターフロート9を以下のように構成してもよい。
図17に示すように、センターフロート9の前部に平板状の支持部材94を連結し、整地装置53の下側(回転体62の存在しない部分の下側)を通して支持部材94を前方に延出し、支持部材94に小さなフロート95を連結する。センターフロート9と一体化したフロート95を整地装置53の前方に配置することにより、整地装置53によって泥が押し退けられた跡をセンターフロート9が通過することにより、センターフロート9が田面Gに沈み込む(潜り込む)状態を少なくする。
【0091】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第4別形態]の整地装置53において、伝動ケース81及び支持アーム83の外側に位置する回転体62を駆動軸61に着脱自在に構成し、整地装置53の横幅を小さくすることができるように構成して、トラック(図示せず)等での運搬を行い易くする。
この場合、図18に示すように、支持フレーム18に上向きの支持棒96を固定して、取り外した回転体62を支持棒96に差し込んで保持しておくことができるように構成する。
【0092】
[発明の実施の第6別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第5別形態]の整地装置53において、図19に示すように、回転体62のフランジ部62cを螺旋状に構成してもよい(整地装置53の右側部の回転体62及び左側部の回転体62において、回転体62のフランジ部62cの螺旋は互いに逆向き)。
これにより、整地装置53が作動すると、整地装置53の右側部の回転体62(フランジ部62c)及び左側部の回転体62(フランジ部62c)により、田面Gの泥が整地装置53の横外側に流れ出ないように中央側に寄せ集められるようにする。
【0093】
[発明の実施の第7別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第6別形態]において、水田作業装置として、ペースト状の肥料を田面に供給する施肥装置、直播装置、薬剤散布装置及び米ぬか散布装置等を備えてもよい。整地装置53を水田作業装置(苗植付装置5)に支持するのではなく、機体の後部から延出されたリンク機構(図示せず)に整地装置53を支持するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】苗植付装置及び整地装置の側面図
【図3】苗植付装置及び整地装置の正面図
【図4】苗植付装置及び整地装置の平面図
【図5】整地装置及びセンターフロートの前部の付近の側面図
【図6】整地装置の回転体の全体斜視図
【図7】制御装置と各部の連係状態を示す図
【図8】昇降制御手段の作動の流れを示す図
【図9】ローリング制御手段の作動の流れを示す図
【図10】苗植付装置及び整地装置の昇降駆動の作動の流れを示す図
【図11】下降操作手段の作動の流れを示す図
【図12】発明の実施の第1別形態における下降操作手段の作動の流れを示す図
【図13】発明の実施の第2別形態における整地装置の側面図
【図14】発明の実施の第3別形態における整地装置の平面図
【図15】発明の実施の第3別形態における整地装置の平面図
【図16】発明の実施の第3別形態における整地装置の平面図
【図17】発明の実施の第4別形態におけるセンターフロート及び整地装置の付近の側面図
【図18】発明の実施の第5別形態における支持棒の付近の正面図
【図19】発明の実施の第6別形態における整地装置の回転体の正面図
【符号の説明】
【0095】
5 水田作業装置
53 整地装置
A3 退避位置
A4 作業位置
K1 設定距離
T 設定時間
G 田面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の後部に水田作業装置を備え、前記水田作業装置を田面に接地する作業位置と田面の上方に位置する退避位置とに亘って昇降自在に構成し、
機体と前記水田作業装置との間に整地装置を備え、前記整地装置を田面に接地する作業位置と田面の上方に位置する退避位置とに亘って昇降自在に構成し、
前記水田作業装置が作業位置に下降駆動され且つ機体が設定距離だけ前進すると、前記整地装置を作業位置に下降駆動する下降操作手段を備えてある水田作業機。
【請求項2】
機体の後部に水田作業装置を備え、前記水田作業装置を田面に接地する作業位置と田面の上方に位置する退避位置とに亘って昇降自在に構成し、
機体と前記水田作業装置との間に整地装置を備え、前記整地装置を田面に接地する作業位置と田面の上方に位置する退避位置とに亘って昇降自在に構成し、
前記水田作業装置が作業位置に下降駆動され且つ水田作業装置が作動を開始してから設定時間の経過後に、前記整地装置を作業位置に下降駆動する下降操作手段を備えてある水田作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2009−207434(P2009−207434A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54939(P2008−54939)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】