減衰力可変ダンパ
【課題】減衰力を簡単な制御で変えることが可能な減衰力可変ダンパを提供する。
【解決手段】減衰力可変ダンパ10は、上流体室31から仕切られた状態に設けられた圧電体56を備え、圧電体56に印加される電圧に対応させてバルブ手段62を流体通路78に向けて押圧する力を変えることが可能に構成されている。上流体室31の作動油圧が低くなるようにピストン組立体14が摺動した際に、上下の流体室31,32の作動油13の圧力差で、バルブ手段62を流体通路78から離間させて流体通路78を開放可能とした。一方、上流体室31の作動油圧が高くなるようにピストン組立体14が摺動した際に、高くなった作動油圧でバルブ手段62を流体通路78から離す方向に移動して流体通路78を開放可能とした。
【解決手段】減衰力可変ダンパ10は、上流体室31から仕切られた状態に設けられた圧電体56を備え、圧電体56に印加される電圧に対応させてバルブ手段62を流体通路78に向けて押圧する力を変えることが可能に構成されている。上流体室31の作動油圧が低くなるようにピストン組立体14が摺動した際に、上下の流体室31,32の作動油13の圧力差で、バルブ手段62を流体通路78から離間させて流体通路78を開放可能とした。一方、上流体室31の作動油圧が高くなるようにピストン組立体14が摺動した際に、高くなった作動油圧でバルブ手段62を流体通路78から離す方向に移動して流体通路78を開放可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の懸架装置に用いられてシリンダ内のピストンを摺動させることで減衰力を変えることができる減衰力可変ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
減衰力可変ダンパのなかには、シリンダ内に摺動自在に収納されたピストンでシリンダを第1、第2の流体室に区画し、ピストン内に圧電体およびスプールを収納したものが知られている。
この減衰力可変ダンパによれば、圧電体に電圧を印加して圧電体を伸縮させることでスプールを移動させる。
スプールを移動させることで連通孔(ピストンの周壁に形成された側孔)の開口面積を変えて減衰力を調整することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−85210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、圧電体の伸縮量(変位量)は微少であり、スプールの移動量も微少になる。
スプールを微少量に移動させて連通孔(ピストンの周壁に形成された側孔)の開口面積を調整するためには、スプールの移動量を高精度に調整する必要がある。
しかし、スプールの移動量を高精度に調整するためには、圧電体に印可する電圧を精度よく制御する必要があり、圧電体に電圧を印加する制御が複雑になる。
【0005】
本発明は、減衰力を簡単な制御で変えることが可能な減衰力可変ダンパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車両の懸架装置に用いられて減衰力を変えることが可能な減衰力可変ダンパにおいて、流体が充填されたシリンダと、前記シリンダに摺動自在に収納されて前記シリンダを第1、第2の流体室に区画するとともに、前記第1、第2の流体室を連通させる流体通路を有するピストンと、前記ピストンに設けられ、前記流体通路に向けて押圧することで前記流体通路を閉塞可能で、かつ、前記ピストンの摺動時に前記流体通路を開放可能なバルブ手段と、前記バルブ手段に連結されるとともに前記第1、第2の流体室の一方から仕切られた状態に設けられ、印加される電圧に対応させて前記バルブ手段を前記流体通路に向けて押圧する力を変えることが可能な圧電体と、を備え、前記第1、第2の流体室の一方の液圧が低くなるように前記ピストンが摺動した際に、前記第1流体室の流体および前記第2流体室の流体の圧力差で、前記バルブ手段を前記流体通路から離間させて前記流体通路を開放可能とし、前記第1、第2の流体室の一方の液圧が高くなるように前記ピストンが摺動した際に、高くなった液圧で前記バルブ手段を前記流体通路から離す方向に移動して前記流体通路を開放可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記バルブ手段は、前記圧電体側に設けられたバルブ支持部材と、前記バルブ支持部材に移動自在に支持され、前記流体通路を開閉可能なバルブ部材と、前記バルブ部材を前記流体通路に向けて押圧することにより、前記バルブ部材で前記流体通路を閉塞可能なバルブ付勢手段と、を備え、前記バルブ支持部材は、前記バルブ付勢手段の付勢力による前記バルブ部材の移動を規制する規制部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記バルブ手段は、前記圧電体側に設けられ、前記圧電体の伸縮に対応して伸縮方向に変位可能なバルブ支持部材と、前記バルブ支持部材の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達可能な変位伝達手段と、前記変位伝達手段に移動自在に支持され、前記流体通路を開閉可能なバルブ部材と、前記バルブ部材を前記流体通路に向けて押圧することにより、前記バルブ部材で前記流体通路を閉塞可能なバルブ付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、バルブ手段を圧電体で流体通路に向けて押圧することで流体通路を閉塞し、ピストンの摺動時に流体通路をバルブ手段で開放可能とした。
そして、圧電体に印可する電圧を制御してバルブ手段を押圧する力(押圧力)を変えるようにした。
バルブ手段を押圧する押圧力を変えることで、ピストンの摺動中に押圧力に対応させて流体通路の開口面積(すなわち、流路断面積)を変えることができる。
ピストンの摺動中に流体通路の流路断面積を変えることで、減衰力可変ダンパの減衰力を変えることができる。
【0010】
このように、請求項1に係る発明によれば、圧電体によるバルブ手段への押圧力を変えることで減衰力を変えることができる。
よって、従来技術で説明したように、圧電体に電圧を印加して圧電体を伸縮させることで流体通路の開口面積を調整して減衰力を変える必要がない。
このため、圧電体によるバルブ手段の移動量を必要以上に高精度に調整する必要がない。
バルブ手段の高精度の調整を不要にできるので、バルブ手段を移動する際に圧電体に印可する電圧を精度よく制御する必要がない。
【0011】
これにより、圧電体に印可する電圧を容易に制御することが可能になり、減衰力可変ダンパの減衰力を簡単な制御で変えることができる。
特に、一例として、圧電体に印可する電圧と、電圧に応じて得られる減衰力との関係をマップ化し、この特性マップなどを用いることで減衰力の調整を一層簡単に制御することが可能である。
【0012】
さらに、請求項1に係る発明では、第1、第2の流体室の一方から仕切られた状態に圧電体を設けた。
第1、第2の流体室の一方から圧電体を仕切る理由はつぎの通りである。
すなわち、減衰力可変ダンパとして、例えば、第1、第2の流体室の他方に隣接してガス室(ガス室に代えて空気室)が設けられたモノチューブ(単筒式)ダンパが用いられることがある。
モノチューブダンパは一般に用いられるダンパである。
【0013】
このモノチューブダンパは、他方の流体室とガス室とがフリーピストンで区画されている。
他方の流体室がフリーピストンでガス室と区画されることで、減衰力可変ダンパが伸縮した際に、ピストンとともにフリーピストンが摺動する。
このように、減衰力可変ダンパが伸縮した際にフリーピストンが摺動することで、ガス室に隣接する他方の流体室の圧力変動が略一定に保たれる。
【0014】
よって、第1流体室の流体および第2流体室の圧力変動に差が生じる。
ここで、ピストンは、圧力変動が略一定に保たれている他方の流体室の液圧に対して、一方の流体室の液圧が高くなる方向と、低くなる方向とに摺動する。
【0015】
このため、圧力変動が略一定に保たれている他方の流体室に対して、一方の流体室の液圧が高くなる場合と、低くなる場合との両方の状態において、圧力差を利用してバルブ付勢手段を流体通路から離間させ、流体通路を確実に開放する構成を単一方向からの力の変化でおこなうことが必要となる。
【0016】
そこで、請求項1において、第1、第2の流体室の一方から仕切られた状態に圧電体を設けるようにした。第1、第2の流体室の一方から圧電体を仕切ることで、バルブ手段のうち圧電体に連結された部位を第1、第2の流体室の一方から仕切ることができる。
よって、バルブ手段のうち圧電体に連結された部位に、第1、第2の流体室の一方の液圧が作用しないようにできる。
これにより、第1、第2の流体室の一方の液圧が高くなるようにピストンが摺動した際に、高くなった液圧でバルブ手段を流体通路から離す方向に移動して流体通路を確実に開放することができる。
【0017】
一方、第1、第2の流体室の一方の液圧が低くなるようにピストンが摺動した際には、第1流体室の流体および第2流体室の流体の圧力差でバルブ手段を流体通路から離間させて流体通路を開放することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、バルブ支持部材に規制部を有し、規制部でバルブ部材の移動を規制するようにした。
よって、圧電体を収縮(圧縮)させてバルブ支持部材を流体通路から離す方向に移動する際に、バルブ支持部材の規制部でバルブ部材を確実に移動させることができる。
このように、バルブ部材を規制部で確実に移動させることで流体通路を良好に開放できる。
さらに、バルブ支持部材に規制部を備えるだけで、バルブ部材の移動を規制することができるので構成の簡素化を図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、変位伝達手段を備え、この変位伝達手段でバルブ支持部材の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達可能とした。
バルブ支持部材の変位方向は圧電体の伸縮方向と同じである。よって、変位伝達手段を備えることでバルブ部材を圧電体の伸縮方向に対して直交する方向に向けて設けることができる。
【0020】
このように、圧電体の伸縮方向に対して直交する方向に向けてバルブ部材を設けることで、圧電体に対するバルブ部材の軸方向への突出量を小さく抑えることができる。
これにより、ピストンの軸方向への長さ寸法を小さく抑えることができるのでピストンの小型化を図ることができ、設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施例1の減衰力可変ダンパを示す断面図である。
【図2】図1の減衰力可変ダンパのピストン組立体を示す断面図である。
【図3】図2のベローズを断面で示す断面図である。
【図4】図2のバルブ手段を示す断面図である。
【図5】実施例1の圧電体に電圧を印加して流体通路をバルブ手段で閉塞する例を説明する図である。
【図6】実施例1の減衰力可変ダンパを収縮(圧縮)する状態を示す図である。
【図7】ピストン組立体を下向きに摺動させて減衰力を得る例を説明する図である。
【図8】実施例1の減衰力可変ダンパを伸長する状態を示す図である。
【図9】ピストン組立体を上向きに摺動させて減衰力を得る例を説明する図である。
【図10】本発明に係る実施例2の減衰力可変ダンパを示す断面図である。
【図11】(a)は図10の11a部拡大図、(b)は(a)の押圧ロッドを下方に押し下げた状態示す断面図である。
【図12】図10の12−12線断面図である。
【図13】実施例2の圧電体に電圧を印加して上下の流体通路をバルブ手段で閉塞する例を説明する図である。
【図14】実施例2の減衰力可変ダンパを収縮(圧縮)させた際にピストン組立体を下向きに摺動させて減衰力を得る例を説明する図である。
【図15】実施例2の減衰力可変ダンパを伸長させた際にピストン組立体を上向きに摺動させて減衰力を得る例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0023】
実施例1に係る減衰力可変ダンパ10について説明する。
図1に示すように、減衰力可変ダンパ10は、車両11の懸架装置に用いられて減衰力を変えることが可能な緩衝装置である。
【0024】
この減衰力可変ダンパ10は、円筒状のシリンダ(シリンダチューブ)12と、シリンダ12内に摺動自在に収納されたピストン組立体14と、ピストン組立体14に連結されてシリンダ12の上端部12aから突出されたピストンロッド16と、ピストン組立体14の下方に摺動自在に収納されたフリーピストン17とを備えている。
【0025】
さらに、減衰力可変ダンパ10は、ピストン組立体14の圧電体56がワイヤハーネス21を経て制御部22に接続され、圧電体56が電源(バッテリ)24に接続され、電源24が電装部品25などに接続されている。
【0026】
シリンダ12は、内部に作動油(流体)13が充填され、ピストン組立体14が矢印方向に摺動自在に収納され、かつ、フリーピストン17が矢印方向に摺動自在に収納されている。
よって、シリンダ12内がピストン組立体14およびフリーピストン17で上流体室(第1流体室)31、下流体室(第2流体室)32およびガス室(空気室)33に区画されている。
【0027】
具体的には、減衰力可変ダンパ10は、シリンダ12内の略中央にピストン組立体14が収納され、ピストン組立体14の下方にフリーピストン17が収納されている。
シリンダ12にピストン組立体14が収納されることで、シリンダ12内がピストン組立体14で上流体室31および下流体室32に区画されている。
上流体室31および下流体室32には作動油13が充填されている。
【0028】
さらに、シリンダ12内のうちピストン組立体14の下方にフリーピストン17が収納されることで、下流体室32に隣接させてガス室33が区画されている。
ガス室33には高圧ガス18が充填されている。
すなわち、減衰力可変ダンパ10は、下流体室32に隣接してガス室33が設けられたモノチューブ(単筒式)ダンパである。
モノチューブダンパは、車両11の懸架装置として一般に用いられる緩衝装置である。
【0029】
減衰力可変ダンパ10によれば、減衰力可変ダンパ10が伸縮する際にシリンダ12内でピストン組立体14やフリーピストン17を矢印方向に摺動させることができる。
ピストン組立体14を矢印方向に摺動させることで作動油13を上流体室31および下流体室32間で移動させることができる。
上流体室31および下流体室32間で作動油13を移動させることにより、減衰力可変ダンパ10で減衰力を得ることができる。
【0030】
図2に示すように、ピストン組立体14は、シリンダ12に摺動自在に収納されたピストンケース(ピストン)35と、ピストンケース35内に設けられたベローズ(仕切部材)51と、ベローズ51内に収納された圧電体56と、圧電体56側に連結されたバルブ手段62とを備えている。
【0031】
ピストンケース35は、シリンダ12内に収納可能で、かつ、シリンダ12の軸線方向(上下方向)に摺動可能なケースである。
このピストンケース35は、円筒状に形成されることでピストン空間67を備えている。ピストン空間67にベローズ51およびバルブ手段62が収納されている。
【0032】
具体的には、ピストンケース35は、ピストンロッド16の下端部16aに上部35aが一体に連結され、下部35bにピストンリング38が設けられ、ピストンリング38の下方にピストン底部75が設けられている。
ピストンケース35の上部35aに形成されたロッド係止孔35cに圧電体56が嵌入されている。
【0033】
ピストンケース35は、円筒状に形成され、周壁36の周方向に複数のピストン開口部37が設けられている。
周壁36にピストン開口部37が設けられることで、ピストンケース35内のピストン空間67がピストン開口部37を経て上流体室31に連通されている。
【0034】
ピストン底部75は、ピストン開口部37の下方に設けられ、中央に流体通路78が設けられている。
ピストン底部75の中央に流体通路78が設けられることで、ピストンケース35内のピストン空間67が流体通路78を経て下流体室32に連通される。
よって、下流体室32は、流体通路78、ピストン空間67およびピストン開口部37を経て上流体室31に連通されている。
【0035】
ピストンリング38は、環状に形成され、外周面38aがシリンダ12の内周面12bに摺動自在に接触されている。
ピストンリング38の外周面38aがシリンダ12の内周面12bに摺動自在に接触されることで、ピストン組立体14がシリンダ12の軸線方向(矢印方向)に摺動自在に支持されている。
【0036】
さらに、ピストンリング38は、外周面38aがシリンダ12の内周面12bに摺動自在に接触されることで、外周面38aおよび内周面12b間が密閉される。
よって、シリンダ12内がピストンリング38で上流体室31および下流体室32に区画される。
【0037】
図3に示すように、ベローズ51は、一例として鋼材で筒形に形成された金属製の仕切部材である。
ベローズ51を鋼材で形成することでベローズ51の剛性を確保できる。
ベローズ51の剛性を確保した理由については後で詳しく説明する。
【0038】
このベローズ51は、円筒形状の周壁が蛇腹状に形成されたベローズ本体52と、ベローズ本体52の上端部に設けられた環状の上取付部53と、ベローズ本体52の下端部に設けられた環状の下取付部54とを有する。
【0039】
環状の上取付部53は、ピストンケース35(上部35a)のベローズ支持部35dに一体に連結されている。
ピストンケース35(上部35a)のロッド係止孔35cに圧電体56が貫通されている。
このロッド係止孔35cを経て圧電体56の下部56aが下方に突出されている。ロッド係止孔35cから下方に突出された下部56aがベローズ本体52で覆われている。
【0040】
ベローズ本体52は、円筒形状の周壁が蛇腹状に形成されることで軸線方向に伸縮自在に形成されている。
よって、圧電体56の伸縮に対応させてベローズ本体52を伸縮させることが可能である。
【0041】
環状の下取付部54は、バルブ手段62のバルブ支持部材63(具体的には、圧電/ベローズ連結部91)の外周壁に嵌入された状態で溶接(接合)されている。
この状態で、下取付部54および圧電/ベローズ連結部91間の下隙間88が密封されている。
【0042】
このように、上取付部53が上部35aのベローズ支持部35dに一体に連結され、下取付部54および圧電/ベローズ連結部91間の下隙間88が密封されることで、ベローズ51内の圧電体収納室66がピストン空間67から仕切られている。
【0043】
すなわち、圧電体収納室66は、圧電体56の下部56aをピストン空間67から仕切られた状態に収納可能な空間である。
この圧電体収納室66は、減衰力可変ダンパ10の外部空間に連通され、ピストン空間67に対して密閉状態に仕切られている。
【0044】
よって、ピストン空間67に充填された作動油13が圧電体収納室66に浸入することをベローズ51で防止できる。これにより、ベローズ51で圧電体56を作動油13から保護することができる。
さらに、圧電体収納室66が外部空間に連通されることで大気圧に保持されている。
【0045】
ここで、前述したように、ベローズ51は鋼材で形成されることで剛性が確保されている。
よって、ベローズ51の外周壁に作用する作動油13の作動油圧(液圧)と、圧電体収納室66の内周壁に作用する大気圧との圧力差でベローズ51が変形することを防止できる。
【0046】
このベローズ51に、圧電体56の下部56aおよび圧電/ベローズ連結部91の上面(バルブ手段62のうち圧電体56に連結された部位)91aが覆われている。
よって、圧電体56の下部56aおよび圧電/ベローズ連結部91の上面91aが、ピストン空間67(すなわち、上下の流体室31,32)から仕切られている。
これにより、ピストン空間67に充填された作動油13(すなわち、上下の流体室31,32の作動油13)の作動油圧が圧電体56の下部56aや圧電/ベローズ連結部91の上面91aに作用することを阻止できる。
【0047】
ここで、圧電体収納室66の内圧は、大気圧に保たれ、上流体室31の作動油圧(液圧)より低く抑えられている。
このように、圧電体収納室66の内圧を低く抑えることで、圧電/ベローズ連結部91の上面91aに作用する圧力が低く抑えられている。
圧電/ベローズ連結部91の上面91aに作用する圧力を低く抑える理由については後で詳しく説明する。
【0048】
圧電体56は、複数の圧電素子(ピエゾ素子)単体57が上下方向に積層されている。
複数の圧電素子単体57に電源24(図1参照)から電圧が印加されることで、圧電体56を伸長することができる。
【0049】
この圧電体56は、上部56bがピストンロッド16の下端部16a内に同軸上に収納され(設けられ)、下部56aがベローズ51内の圧電体収納室66に収納されている。
この状態で、圧電体56の下端部56dがバルブ手段62の圧電/ベローズ連結部91に連結(接触)されている。
【0050】
圧電体56の上端部56cがワイヤハーネス21を経て制御部22および電源24(図1参照)に接続されている。
図1に示す制御部22は、圧電体56に電源24から電圧を印可する状態と、電源24から印可しない状態に切り替える機能を備えている。
さらに、制御部22は、電源24から圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)機能を備えている。
【0051】
電源24から圧電体56に電圧が印加されることで圧電体56が伸長する。
圧電体56が伸長することで、圧電体56でバルブ手段62をピストンケース35のピストン底部75に向けて押圧することができる。
【0052】
バルブ手段62は、圧電体56を介してピストンケース35(ピストンロッド16)に設けられている。
このバルブ手段62は、圧電体56側に設けられたバルブ支持部材63と、バルブ支持部材63に移動自在に支持されたバルブ部材64と、バルブ部材64を流体通路78に向けて押圧可能なバルブ付勢ばね(バルブ付勢手段)65とを備えている。
【0053】
図4に示すように、バルブ支持部材63は、圧電体56側に連結された圧電/ベローズ連結部91と、圧電/ベローズ連結部91に同軸上に設けられたバルブ案内部96と、バルブ案内部96に設けられたバルブ規制部(規制部)101とを備えている。
【0054】
圧電/ベローズ連結部91は、下面に第2受圧部91bが形成されている。
第2受圧部91bは、上流体室31の作動油13の圧力を上向きに作用させる部位である。
上流体室31の作動油13の圧力を第2受圧部91bに上向きに作用させることで、圧電体56を収縮(圧縮)させる荷重を作用させることができる。
【0055】
バルブ案内部96は、圧電/ベローズ連結部91から下方に向けて同軸上に突出された円筒部97を有する。
円筒部97の内部空間98にバルブ部材64のバルブ摺動部105が上下方向に移動自在に収納(支持)されている。
円筒部97の下端部97aにバルブ規制部101が設けられている。
【0056】
バルブ規制部101は、円筒部97の下端部97aに設けられて中央に開口部102が形成されている。開口部102にバルブ支持軸106が貫通されている。
バルブ規制部101のうち開口部102の内周縁101aが円筒部97の中心に向けて張り出されている。
【0057】
内周縁101aにバルブ摺動部105の外周縁105aを当接させることで、バルブ付勢ばね65の付勢力(ばね力)によるバルブ摺動部105(すなわち、バルブ部材64)の移動を規制することができる。
すなわち、バルブ規制部101は、バルブ付勢ばね65の付勢力によるバルブ部材64の移動を規制する部材である。
【0058】
バルブ部材64は、円筒部97の内部空間98に上下方向に移動自在に収納されたバルブ摺動部105と、バルブ摺動部105から下方に向けて突出されたバルブ支持軸106と、バルブ支持軸106の下端部に設けられたバルブ本体107とを有する。
【0059】
バルブ摺動部105は、円板状に形成され、円筒部97の内部空間98に上下方向に移動自在に収納されている。
バルブ摺動部105の外周縁105aをバルブ規制部101の内周縁101aに上方から当接させて、バルブ部材64を規制位置P1に保持することができる。
【0060】
バルブ支持軸106は、バルブ摺動部105から下方に向けて突出され、バルブ規制部101の開口部102に摺動自在に貫通されている。
バルブ摺動部105にバルブ支持軸106を設けることで、バルブ摺動部105が上下方向に移動することを許容する。
【0061】
バルブ本体107は、バルブ支持軸106の下端部に設けられ、円筒部97の外径と略同径の円板状に形成されている。
このバルブ本体107は、ピストン底部75の表面75aに押圧された状態で流体通路78を閉塞可能で、ピストン底部75の表面75aから離間された(離された)状態で流体通路78を開放可能に形成されている。
バルブ本体107の中央に流体通路78に対向する第1受圧部107aを有する。
この第1受圧部107aに、上流体室31の作動油13(図3参照)および下流体室32の作動油13の圧力差(すなわち、差圧力)が作用する。
【0062】
バルブ付勢ばね65は、円筒部97の内部空間98に収納され、かつ、円筒部97の上端部96aおよびバルブ摺動部105間に圧縮された状態で配置された圧縮ばねである。
バルブ付勢ばね65の付勢力でバルブ部材64(バルブ摺動部105)が流体通路78に向けて押圧されている。
【0063】
バルブ部材64が流体通路78に向けて押圧されることで、バルブ摺動部105の外周縁105aがバルブ規制部101の内周縁101aに当接された状態に保たれる。
外周縁105aが内周縁101aに当接された状態に保たれることで、バルブ部材64が規制位置P1に保持される。
【0064】
バルブ部材64が規制位置P1に保持された状態で、圧電体56に電圧を印加して圧電体56を伸長することで、バルブ本体107がピストン底部75の表面75aに押圧される。
バルブ本体107をピストン底部75の表面75aに押圧することにより、バルブ本体107で流体通路78が閉塞される。
【0065】
一方、バルブ部材64が流体通路78に向けて押圧されることで、バルブ摺動部105の外周縁105aがバルブ規制部101の内周縁101aに当接された状態に保たれている。
すなわち、バルブ部材64の移動をバルブ規制部101で規制することができる。
【0066】
よって、圧電体56から電圧を解除して圧電体56を収縮することにより、バルブ本体107がバルブ規制部101とともにピストン底部75の表面75aから確実に離間される(離される)。
バルブ本体107をピストン底部75の表面75aから離間させることで流体通路78が良好に開放される。
【0067】
このように、バルブ部材64の移動をバルブ規制部101で規制することで、バルブ本体107で流体通路78を良好に閉塞、開放することができる。
このバルブ部材64の規制を、バルブ支持部材63にバルブ規制部101を備えるだけの簡単な構成で実現することができる。
これにより、減衰力可変ダンパ10の構成の簡素化を図ることができる。
【0068】
つぎに、圧電体56に電圧を印加して流体通路78をバルブ手段62で閉塞する例を図5に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、バルブ部材64がバルブ付勢ばね65で流体通路78に向けて押圧されている。
バルブ部材64が押圧されることで、バルブ摺動部105の外周縁105aがバルブ規制部101の内周縁101aに当接された状態に保たれている。
外周縁105aが内周縁101aに当接された状態に保たれることで、バルブ部材64が規制位置P1に保持されている。
【0069】
この状態において、制御部22を制御して電源24から圧電体56に電圧を印加して圧電体56を矢印Aの如く伸長させる。
圧電体56が伸長することでバルブ支持部材63が矢印Bの如く下降する。
バルブ支持部材63が下降することで、バルブ支持部材63とともにバルブ部材64がピストン底部75に向けて矢印Cの如く下降する。
【0070】
図5(b)に示すように、バルブ部材64がピストン底部75に向けて下降することで、バルブ部材64のバルブ本体107をピストン底部75の表面75aに押圧する。
このように、バルブ本体107をピストン底部75の表面75aに押圧することにより、バルブ本体107で流体通路78を閉塞することができる。
【0071】
ついで、減衰力可変ダンパ10が伸縮する際にピストン組立体14を摺動させて減衰力を得る例を図6〜図9に基づいて説明する。
まず、減衰力可変ダンパ10が収縮(圧縮)する際にピストン組立体14を下向きに摺動させて減衰力を得る例を図6、図7に基づいて説明する。
【0072】
図6(a)に示すように、減衰力可変ダンパ10に圧縮力F1が作用することにより減衰力可変ダンパ10が収縮(圧縮)する。
減衰力可変ダンパ10が収縮することで、ピストン組立体14およびフリーピストン17が矢印Dの如く摺動する。
【0073】
図6(b)に示すように、ピストン組立体14が摺動することで上流体室31の容積が増加し、上流体室31の作動油13の作動油圧が低くなる。
また、ピストン組立体14およびフリーピストン17が摺動することで、ピストン組立体14の摺動に伴う下流体室32の容積変化がガス室33で吸収される。
よって、下流体室32の作動油13の作動油圧(液圧)が殆ど変化しないように保たれる。
これにより、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差を比較的大きく確保できる。
【0074】
図7(a)に示すように、圧電体56に電圧が印加された状態においてバルブ本体107で流体通路78が閉塞されている。
この状態において、減衰力可変ダンパ10を収縮させることによりピストン組立体14が矢印Dの如く下向きに摺動する。
【0075】
ピストン組立体14を下向きに摺動することで、上流体室31の容積が増し、上流体室31の作動油13の作動油圧が低くなる。
よって、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差(すなわち、差圧力Po1)を比較的大きく確保できる。
【0076】
比較的大きく確保した差圧力Po1によりバルブ本体107の第1受圧部107aに押圧力Fo1が作用する。
第1受圧部107aに作用する押圧力Fo1がバランス荷重Fb1を超えた場合にバルブ手段62のバルブ付勢ばね65が圧縮される。
ここで、バランス荷重Fb1は、バルブ付勢ばね65の圧縮状態により作用する荷重(すなわち、バルブ付勢ばね65でバルブ本体107を押圧する力)である。
【0077】
図7(b)に示すように、バルブ付勢ばね65が圧縮することで、バルブ本体107が流体通路78から離れる(離間させる)方向に矢印Eの如く押し上げられて流体通路78が開放される。
流体通路78が開放することで、下流体室32の作動油13が流体通路78を経てピストン空間67に矢印Fの如く導かれる。
ピストン空間67に導かれた作動油13は、ピストン開口部37を経てピストンケース35の外部(すなわち、上流体室31)に矢印Gの如く導かれる。
【0078】
これにより、減衰力可変ダンパ10が収縮してピストン組立体14が下向きに摺動した際に、下流体室32の作動油13を流体通路78を経て上流体室31に円滑に導くことができる。
このように、流体通路78に作動油13を円滑に流すことで、押圧力Fo1(図7(a)参照)によって決まるダンパ減衰力が得られる。
【0079】
つぎに、減衰力可変ダンパ10が伸長する際にピストン組立体14を上向きに摺動させて減衰力を得る例を図8、図9に基づいて説明する。
【0080】
図8(a)に示すように、減衰力可変ダンパ10に引張力F2が作用することにより減衰力可変ダンパ10が伸長する。
減衰力可変ダンパ10が伸長することで、ピストン組立体14およびフリーピストン17が矢印Hの如く摺動する。
【0081】
図8(b)に示すように、ピストン組立体14が摺動することで上流体室31の容積が減少し、上流体室31の作動油13の作動油圧が高くなる。
一方、ピストン組立体14およびフリーピストン17が摺動することで、ピストン組立体14の摺動に伴う下流体室32の容積変化がガス室33で吸収される。
よって、下流体室32の作動油13が略一定に保たれる。
これにより、減衰力可変ダンパ10の伸長時には、減衰力可変ダンパ10の圧縮時の場合に対して、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差の正負が逆転する。
【0082】
このように、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差の正負が逆転した場合には、圧縮時と同様の機構で流体通路78(図5参照)を開放することが困難となる。
そこで、圧電体収納室66を、ベローズ51などでピストン空間67に対して密閉状態に仕切るようにした。
【0083】
図9(a)に示すように、バルブ本体107で流体通路78が閉塞された状態において、ピストン組立体14を上向きに矢印Hの如く摺動することで、上流体室31(ピストン空間67)の作動油圧Po2が高くなる。
【0084】
ここで、圧電体収納室66は、ベローズ51などでピストン空間67に対して密閉状態に仕切られている。さらに、圧電体収納室66は、減衰力可変ダンパ10の外部空間に連通されている。
よって、圧電体収納室66の内圧(すなわち、大気圧)は上流体室31の作動油圧より低く抑えられている。
圧電体収納室66の内圧を低く抑えることで、圧電/ベローズ連結部91の上面91aに作用する圧力が低く抑えられている。
【0085】
これにより、圧電/ベローズ連結部91の第2受圧部91bに押圧力Fo2が作用する。
第2受圧部91bに作用する押圧力Fo2がバランス荷重Fb2を超えた場合に圧電体56が圧縮される。
ここで、バランス荷重Fb2は、圧電体56の伸長により作用する押圧力である。
【0086】
図9(b)に示すように、バルブ摺動部105の外周縁105aがバルブ規制部101の内周縁101aに当接された状態に保たれている。
よって、圧電体56が押圧力Fo2(図9(a)参照)で圧縮されることでバルブ手段62を矢印Iの如く確実に上昇させることができる。
バルブ手段62が上昇することで、バルブ手段62のバルブ本体107が流体通路78から離れる(離間させる)方向に矢印Iの如く上昇して流体通路78を良好に開放できる。
【0087】
流体通路78が開放することで、ピストン空間67の作動油13が流体通路78を経て下流体室32に矢印Jの如く導かれる。
ピストン空間67の作動油13が下流体室32に導かれることで、ピストン空間67に上流体室31の作動油13がピストン開口部37を経て矢印Kの如く導かれる。
すなわち、流体通路78が開放することで、上流体室31の作動油13が流体通路78を経て下流体室32に円滑に導かれる。
【0088】
これにより、減衰力可変ダンパ10が伸長してピストン組立体14が上向きに摺動した際に、上流体室31の作動油13を流体通路78を経て下流体室32に円滑に導くことができる。
このように、流体通路78に作動油13を円滑に流すことで、押圧力Fo2(図9(a)参照)によって決まるダンパ減衰力が得られる。
【0089】
図6〜図9においては、圧電体56に一定の電圧を印可した例について説明したが、圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)ことも可能である。
すなわち、図5(a)に示す制御部22で圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)ことで圧電体56の伸長量を調整することができる。
【0090】
このように、圧電体56の伸長量を調整することで圧電体56によるバルブ手段62への押圧力を変えることができる。
バルブ手段62への押圧力を変えることで、バルブ付勢ばね65の圧縮状態を変化させてバランス荷重Fb1(図7(a)参照)やバランス荷重Fb2(図9(a)参照)を変える(調整する)ことができる。
【0091】
バランス荷重Fb1やバランス荷重Fb2は圧電体56によるバルブ手段62への押圧力を変えることで調整可能である。
これにより、圧電体56によるバルブ手段62への押圧力を変えることで減衰力を変えることができる。
【0092】
ここで、減衰力可変ダンパのなかには、圧電体に電圧を印加して圧電体を伸縮させることで流体通路の開口面積を調整して減衰力を変えるものが知られている。
しかし、圧電体の伸縮で流体通路の開口面積を調整するためには、圧電体に印可する電圧を精度よく制御する必要があり、圧電体に電圧を印加する制御が複雑になる。
【0093】
これに対して、実施例1の減衰力可変ダンパ10は、圧電体56によるバルブ手段62への押圧力を変えることで減衰力を変えることができる。
よって、従来の減衰力可変ダンパのように、圧電体56によるバルブ手段62の移動量を必要以上に高精度に調整する必要がない。
バルブ手段62の高精度の調整を不要にできるので、バルブ手段62を移動する際に圧電体56に印可する電圧を精度よく制御する必要がない。
【0094】
これにより、圧電体56に印可する電圧を容易に制御することが可能になり、減衰力可変ダンパ10の減衰力を簡単な制御で変えることができる。
特に、一例として、圧電体56に印可する電圧と、電圧に応じて得られる減衰力との関係をマップ化し、この特性マップなどを用いることで減衰力の調整を一層簡単に制御することが可能である。
【0095】
ところで、図1に示す減衰力可変ダンパ10において、車両11の走行中に圧電体56に路面振動が反力として作用する。
圧電体56に路面振動が反力として作用することで、圧電体56が変位して圧電体56に電圧(電力)が発生する。
【0096】
具体的には、圧電体収納室66がベローズ51などでピストン空間67に対して密閉状態に仕切られることで、圧電体収納室66の内圧(大気圧)は上流体室31の作動油圧より低く抑えられている。
よって、圧電/ベローズ連結部91の第2受圧部91bに押圧力Fo2(図9(a)参照)が作用した際に、圧電体56を良好に圧縮することができる。
【0097】
これにより、圧電体56が変位して圧電体56に電圧(電力)を好適に発生させることができる。
このように、圧電体56で発生させた電圧(電力)を電源24に蓄える(回生する)ことができる。
【0098】
つぎに、実施例2に係る減衰力可変ダンパ120を図10〜図12に基づいて説明する。
なお、実施例2の減衰力可変ダンパ120において実施例1の減衰力可変ダンパ10と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0099】
実施例2に係る減衰力可変ダンパ120について説明する。
図10に示すように、減衰力可変ダンパ120は、実施例1のピストンケース35およびバルブ手段62をそれぞれピストンケース(ピストン)121およびバルブ手段131に代えたもので、その他の構成は実施例1の減衰力可変ダンパ10と同様である。
ここで、実施例2のピストン組立体は、実施例1のピストン組立体14と構成が異なるが構成の理解を容易にするために、実施例1と同様にピストン組立体14として説明する。
【0100】
ピストンケース121は、実施例1の周壁36およびピストン底部75をそれぞれ周壁122およびピストン底部123に代えたもので、その他の構成は実施例1のピストンケース35と同様である。
【0101】
周壁122は、周壁の周方向に湾曲状に延長された一対の上流体通路(流体通路)126と、一対の上流体通路126の下方に設けられた一対の下流体通路(流体通路)128とを有する。
【0102】
一対の上流体通路126は、周壁の周方向に180°の間隔をおいて形成されている。
【0103】
一対の下流体通路128は、一対の上流体通路126の下方に設けられることで一対の上流体通路126と同様に、180°の間隔をおいて形成されている。
【0104】
このように、周壁122に上下の流体通路126,128が湾曲状に延長されることで上下の流体通路126,128の長さ寸法を大きく確保できる。
さらに、周壁122に上下の流体通路126,128が複数段(一例として、二段)に形成されている。
上下の流体通路126,128の長さ寸法を大きく確保し、さらに、上下の流体通路126,128を複数段に形成することで、流体通路の開口面積の選択範囲を大きく確保できる。
【0105】
流体通路の開口面積の選択範囲を大きく確保することで、圧電体56の伸縮量を小さく抑えた場合でも、減衰力可変ダンパ120の減衰力を好適に変えることができる。
さらに、流体通路の開口面積の選択範囲を大きく確保することで、設計の自由度を高めることができる。
【0106】
周壁122に一対の上流体通路126および一対の下流体通路128が設けられることで、ピストンケース121内のピストン空間141が上下の流体通路126,128を経て下流体室32に連通されている。
よって、下流体室32は、上下の流体通路126,128、ピストン空間141およびピストン開口部37を経て上流体室31に連通されている。
【0107】
ピストン底部123は、周壁122のうち下流体通路128の下方部位122aに設けられ、ピストン空間141を下流体室32から仕切る部材である。
ピストン底部123にバルブ手段131が載置されている。
【0108】
バルブ手段131は、圧電体56側に設けられた圧電/ベローズ連結部(バルブ支持部材)132と、圧電/ベローズ連結部132に連結された変位伝達手段133と、変位伝達手段133に支持されたバルブ部材134と、バルブ部材134を上下の流体通路126,128に向けて押圧可能なバルブ付勢手段135と、バルブ部材134を規制可能なバルブ復帰手段136とを備えている。
【0109】
圧電/ベローズ連結部132は、実施例1の圧電/ベローズ連結部91と同じ部材である。
この圧電/ベローズ連結部132の下部中央132aから変位伝達手段133の押圧ロッド145が下方に向けて垂下されている。
この圧電/ベローズ連結部132は、圧電体56側に設けられ、圧電体56の伸縮に対応して伸縮方向に変位可能である。
【0110】
変位伝達手段133は、圧電/ベローズ連結部132から下方に向けて同軸上に突出された押圧ロッド145と、押圧ロッド145の両側に設けられた一対の変位伝達部151とを備えている。
押圧ロッド145は、下端部にくさび部148が設けられている。
【0111】
図11に示すように、押圧ロッド145の下端部にくさび部148を有することで、くさび部148に一対の傾斜ガイド部149が形成されている。
一対の傾斜ガイド部149は、押圧ロッド145の中心から外方に向けて上り勾配に形成されている。
よって、押圧ロッド145を下方に押し下げることにより、一対の傾斜ガイド部149で一対の変位伝達部151をそれぞれ周壁122(図10参照)に向けて移動させることができる。
【0112】
図10に示すように、一対の変位伝達部151は、押圧ロッド145の両側に設けられている。
押圧ロッド145の傾斜ガイド部149が、一対の変位伝達部151の傾斜底部151a(図11(a)参照)に当接されている。
よって、図11(b)に示すように、くさび部148の傾斜ガイド部149を下方に押し下げることで、変位伝達部151を周壁122(図10参照)に向けて移動させることができる。
図10に示すように、変位伝達部151にバルブ部材134が連結されている。
傾斜底部151aおよび傾斜ガイド部149については後で詳しく説明する。
【0113】
バルブ部材134は、一対の変位伝達部151に載置されたガイドプレート161と、ガイドプレート161の下側に移動自在に配置された一対の上規制部材162と、ピストン底部123に移動自在に載置された一対の下規制部材163と、上規制部材162および下規制部材163に連結されたバルブ本体164とを備えている。
【0114】
図12に示すように、一対のバルブ本体164は、周壁122に沿って湾曲状に形成され、周壁122に対して所定間隔Sをおいて配置されている。
バルブ本体164は、上下の規制部材162,163(図10参照)を介して変位伝達部151に対して移動自在に支持され、上下の流体通路126,128(図10も参照)を開閉可能な部材である。
【0115】
具体的には、バルブ本体164は、湾曲状の外周壁164aに設けられた上下の閉塞部(第1受圧部)166,167を有する。
上閉塞部166は、バルブ本体164の上端部において、湾曲状の外周壁164aに沿って湾曲状に形成されている。
下閉塞部167は、バルブ本体164の下端部において、湾曲状の外周壁164aに沿って湾曲状に形成されている。
【0116】
バルブ本体164を周壁122に向けて押圧することで、上閉塞部166で上流体通路126が閉塞され、下閉塞部167で下流体通路128が閉塞される。
バルブ本体164の内壁164bにバルブ付勢手段135が設けられている。
【0117】
バルブ付勢手段135は、内壁164bの略中央から半径方向内方に突出された支持ロッド部176と、支持ロッド部176に支持されたバルブ付勢ばね177とを備えている。
バルブ付勢ばね177は、バルブ本体164および変位伝達部151(図10参照)間に介在されている。
【0118】
図10、図12に示すように、バルブ付勢ばね177の付勢力でバルブ本体164が周壁122(上下の流体通路126,128)に向けて押圧されている。
この状態において、バルブ付勢ばね177の付勢力で、変位伝達部151の下部に下規制部材163が連結状態に保持され、変位伝達部151の上部に上規制部材162が連結状態に保持されている。
【0119】
バルブ付勢ばね177の付勢力によるバルブ本体164の移動は上下の規制部材162,163で規制される。
これにより、バルブ本体164(上下の閉塞部166,167)が上下の規制部材162,163で規制位置P2に配置されている。
【0120】
バルブ本体164が規制位置P2に配置されることで、バルブ本体164(上下の閉塞部166,167)が周壁122(具体的には、上下の流体通路126,128)に対して所定間隔S(図12参照)をおいて配置されている。
この状態で、バルブ本体164を周壁122に向けて押圧することにより、上下の閉塞部166,167で上下の流体通路126,128が閉塞される。
【0121】
図10、図12に示すように、バルブ復帰手段136は、バルブ本体164の外周壁164aに沿って配置された一対の当接部181と、各当接部181に設けられた一対の当接ロッド部182と、一対の当接ロッド部182に支持された一対の復帰ばね183とを備えている。
【0122】
当接部181は、バルブ本体164の上下の閉塞部166,167間に配置され、バルブ本体164の外周壁164aに沿って湾曲状に形成されている。
当接部181を湾曲状に形成することで、当接部181の外周壁181aが周壁122に当接可能に形成されている。
【0123】
復帰ばね183は、当接ロッド部182に嵌入され、当接部181および変位伝達部151間に介在された圧縮ばねである。
この復帰ばね183の付勢力で当接部181が周壁122に押圧され、周壁122にバルブ部材134が保持されている。
このように、バルブ復帰手段136を備えることで、バルブ部材134がピストンケース121の軸線方向に移動することを防止できる。
【0124】
加えて、バルブ復帰手段136を備えることで、復帰ばね183の付勢力で変位伝達部151が押圧ロッド145に向けて押圧されている。
よって、押圧ロッド145を図11(b)の状態から図11(a)の状態にまで上昇させた際に、復帰ばね183の付勢力で変位伝達部151を押圧ロッド145に向けて(復帰)移動させることができる。
変位伝達部151を移動することで、変位伝達部151とともに上下の規制部材162,163を押圧ロッド145に向けて移動(復帰)させることができる。
【0125】
上下の規制部材162,163が移動することで、上下の規制部材162,163とともにバルブ本体164を上下の流体通路126,128から離す(離間させる)方向に移動させることができる。
バルブ本体164が移動することにより、上下の閉塞部(第1受圧部)166,167を上下の流体通路126,128から離して上下の流体通路126,128を開放できる。
【0126】
つぎに、傾斜底部151aおよび傾斜ガイド部149について詳しく説明する。
図11(a)に示すように、変位伝達部151の傾斜底部151aに押圧ロッド145の傾斜ガイド部149が当接されている。
傾斜底部151aおよび傾斜ガイド部149は傾斜角θに形成されている。
よって、押圧ロッド145を下方に押し下げた際に、押圧ロッド145の変位が、傾斜ガイド部149および傾斜底部151aで変位方向に対して直交する方向に伝えられる。
【0127】
図11(b)に示すように、押圧ロッド145の変位が変位方向に対して直交する方向に伝えられることで、変位伝達部151が周壁122(図10参照)に向けて押圧される。
【0128】
図10に示すように、変位伝達部151が周壁122に向けて移動することにより、変位伝達部151とともにバルブ付勢ばね177(図12参照)が移動する。
よって、バルブ付勢ばね177とともにバルブ本体164が周壁122に向けて移動する。
【0129】
バルブ本体164が周壁122に向けて移動することで、上閉塞部166で上流体通路126が閉塞され、下閉塞部167で下流体通路128が閉塞される。
このように、バルブ手段131に変位伝達手段133を備えることで、変位伝達手段133で圧電/ベローズ連結部132(押圧ロッド145)の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達できる。
【0130】
ここで、図11に示す傾斜角θを45°より小さくすることで、押圧ロッド145の変位量δ1に対して変位伝達部151の変位量δ2を大きく確保できる。
よって、圧電体56(図10参照)の伸縮量に対してバルブ本体164の移動量を増加させることができる。
【0131】
傾斜角θは、40°を超えないように決めることが好ましい。
傾斜角θを40°を超えないように設定することでバルブ本体164の移動量を十分に増加させることができる。
【0132】
バルブ本体164の移動量を増加させることで、上下の流体通路126,128に対する上下の閉塞部166,167の最大離間量を大きく確保できる。
これにより、上下の流体通路126,128を流れる作動油13の流量(すなわち、流路断面積)を広範囲で変えることができるので、減衰力可変ダンパ120の減衰力を好適に変えることができる。
【0133】
加えて、実施例2の減衰力可変ダンパ120によれば、バルブ手段131に変位伝達手段133を備えることで、変位伝達手段133で圧電/ベローズ連結部132の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達可能とした。
圧電/ベローズ連結部132の変位方向は圧電体56の伸縮方向と同じである。よって、変位伝達手段133を備えることで一対のバルブ部材134を圧電体56の伸縮方向に対して直交する方向に向けて設けることができる。
【0134】
このように、圧電体56の伸縮方向に対して直交する方向に向けて一対のバルブ部材134を設けることで、圧電体56に対するバルブ手段131の軸方向への突出量を小さく抑えることができる。
これにより、ピストン組立体14の軸方向への長さ寸法を小さく抑えることができるのでピストン組立体14の小型化を図ることができ、設計の自由度を高めることができる。
【0135】
つぎに、圧電体56に電圧を印加して一対の上流体通路126および一対の下流体通路128をバルブ手段131(バルブ本体164)で閉塞する例を図13に基づいて説明する。
なお、図13においては作用の理解を容易にするために一方の上流体通路126および一方の下流体通路128について説明する。
【0136】
図13(a)に示すように、バルブ手段131のバルブ本体164がバルブ付勢ばね177で上下の流体通路126,128に向けて押圧されている。
バルブ本体164が押圧された状態において、下規制部材163および上規制部材162でバルブ本体164が規制位置P2に保持されている。
【0137】
この状態において、制御部22を制御して電源24から圧電体56に電圧を印加して圧電体56を矢印Lの如く伸長させる。
圧電体56が伸長することで圧電/ベローズ連結部132が矢印Mの如く下降する。
圧電/ベローズ連結部132が下降することで、圧電/ベローズ連結部132とともに押圧ロッド145がピストン底部123に向けて矢印Mの如く下降する。
【0138】
ここで、押圧ロッド145の傾斜ガイド部149が変位伝達部151の傾斜底部151aに当接されている。
よって、押圧ロッド145が下降することで、押圧ロッド145の傾斜ガイド部149で変位伝達部151の傾斜底部151aを押圧する。
これにより、変位伝達部151が周壁122に向けて矢印Nの如く移動する。
【0139】
図13(b)に示すように、変位伝達部151が周壁122に向けて移動することで、バルブ本体164が上下の流体通路126,128に向けて矢印Nの如く移動する。
バルブ本体164が移動することで、バルブ本体164の上閉塞部(第1受圧部)166で上流体通路126を押圧し、下閉塞部(第1受圧部)167で下流体通路128を押圧することができる。
これにより、上閉塞部166で上流体通路126を閉塞し、下閉塞部167で下流体通路128を閉塞することができる。
【0140】
ついで、減衰力可変ダンパ120が伸縮する際にピストン組立体14を摺動させて減衰力を得る例を図14、図15に基づいて説明する。
まず、減衰力可変ダンパ120が収縮(圧縮)する際にピストン組立体14を下向きに摺動させて減衰力を得る例を図14に基づいて説明する。
【0141】
図14(a)に示すように、圧電体56に電圧が印加された状態において上閉塞部166で上流体通路126が閉塞され、下閉塞部167で下流体通路128が閉塞されている。
この状態において、減衰力可変ダンパ120に圧縮力が作用することにより減衰力可変ダンパ120が収縮(圧縮)する。
減衰力可変ダンパ120が収縮することで、ピストン組立体14およびフリーピストン17(図6参照)が下方に向けて矢印Oの如く摺動する。
【0142】
ピストン組立体14を下方に向けて摺動することで、上流体室31の容積が増し、上流体室31の作動油13の作動油圧が低くなる。
よって、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差(すなわち、差圧力Po3)を比較的大きく確保できる。
【0143】
比較的大きく確保した差圧力Po3により上下の閉塞部(第1受圧部)166,167に押圧力Fo3が作用する。
上下の閉塞部(第1受圧部)166,167に作用する押圧力Fo3がバランス荷重Fb3を超えた場合にバルブ付勢ばね177が圧縮される。
ここで、バランス荷重Fb3は、バルブ付勢ばね177の圧縮状態により作用する荷重(すなわち、バルブ付勢ばね177でバルブ本体164を押圧する力)である。
【0144】
図14(b)に示すように、バルブ付勢ばね177が圧縮することで、バルブ本体164が上下の流体通路126,128から離れる方向に矢印Pの如く押圧される。
よって、上下の閉塞部(第1受圧部)166,167が上下の流体通路126,128から離れて(離間して)上下の流体通路126,128が開放される。
上下の流体通路126,128が開放することで、下流体室32の作動油13が上下の流体通路126,128を経てピストン空間141に矢印Qの如く導かれる。
ピストン空間141に導かれた作動油13は、ピストン開口部37(図14(a)参照)を経て周壁122の外部(すなわち、上流体室31(図14(a)参照))に導かれる。
【0145】
これにより、減衰力可変ダンパ120が収縮してピストン組立体14が下向きに摺動した際に、下流体室32の作動油13を上下の流体通路126,128を経て上流体室31に円滑に導くことができる。
このように、上下の流体通路126,128に作動油13を円滑に流すことで、押圧力Fo3(図14(a)参照)によって決まるダンパ減衰力が得られる。
【0146】
つぎに、減衰力可変ダンパ120が伸長する際にピストン組立体14を上向きに摺動させて減衰力を得る例を図15に基づいて説明する。
【0147】
図15(a)に示すように、圧電体56に電圧が印加された状態において上閉塞部166で上流体通路126が閉塞され、下閉塞部167で下流体通路128が閉塞されている。
この状態において、減衰力可変ダンパ120に引張力が作用することにより減衰力可変ダンパ120が伸長する。
減衰力可変ダンパ120が伸長することで、ピストン組立体14およびフリーピストン17(図8参照)が上方に向けて矢印Rの如く摺動する。
【0148】
ピストン組立体14が摺動することで上流体室31(図8も参照)の容積が減少し、上流体室31の作動油13の作動油圧が高くなる。
一方、ピストン組立体14およびフリーピストン17が上方に向けて摺動することで、ピストン組立体14の摺動に伴う下流体室32の容積変化がガス室33(図8参照)で吸収される。
【0149】
よって、下流体室32の作動油13の作動油圧が略一定に保たれる。
これにより、減衰力可変ダンパ10の伸長時には、減衰力可変ダンパ10の圧縮時の場合に対して、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差の正負が逆転する。
このように、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差の正負が逆転した場合には、圧縮時と同様の機構で上下の流体通路126,128を開放することが困難となる。
【0150】
そこで、圧電体収納室66を、ベローズ51などでピストン空間141に対して密閉状態に仕切るようにした。
圧電体収納室66は、外部空間に連通されることで大気圧に保持されている。
【0151】
よって、圧電体収納室66の内圧(大気圧)は上流体室31の作動油圧より低く抑えられている。
圧電体収納室66の内圧を低く抑えることで、圧電/ベローズ連結部132の上面132bに作用する圧力が低く抑えられている。
これにより、圧電/ベローズ連結部132の第2受圧部132cに押圧力Fo4が作用する。
【0152】
第2受圧部132cは、圧電/ベローズ連結部132の下面に形成されている。
第2受圧部132cに作用する押圧力Fo4がバランス荷重Fb2を超えた場合に圧電体56が圧縮される。
ここで、バランス荷重Fb2は、圧電体56の伸長により作用する押圧力である。
【0153】
図15(b)に示すように、圧電体56が圧縮されることで押圧ロッド145が矢印Sの如く上昇する。
押圧ロッド145が上昇することにより、バルブ復帰手段136に備えた復帰ばね183の付勢力で変位伝達部151が押圧ロッド145に向けて矢印Tの如く移動する。
変位伝達部151が移動することで、変位伝達部151とともに上下の規制部材162,163が矢印Tの如く移動する。
【0154】
上下の規制部材162,163が移動することで、上下の規制部材162,163とともにバルブ本体164が矢印Tの如く移動する。
バルブ本体164が移動することにより、上下の閉塞部(第1受圧部)166,167が上下の流体通路126,128から離れて(離間して)上下の流体通路126,128が開放される。
【0155】
上下の流体通路126,128が開放することで、ピストン空間141の作動油13が上下の流体通路126,128を経て下流体室32に矢印Uの如く導かれる。
ピストン空間141の作動油13が下流体室32に導かれることで、ピストン空間141に上流体室31(図15(a)参照)の作動油13がピストン開口部37(図15(a)参照)を経て導かれる。
すなわち、上下の流体通路126,128が開放することで、上流体室31の作動油13が上下の流体通路126,128を経て下流体室32に円滑に導かれる。
【0156】
これにより、減衰力可変ダンパ120が伸長してピストン組立体14が上向きに摺動した際に、上流体室31の作動油13を上下の流体通路126,128を経て下流体室32に円滑に導くことができる。
このように、上下の流体通路126,128に作動油13を円滑に流すことで、押圧力Fo4(図15(a)参照)によって決まるダンパ減衰力が得られる。
【0157】
図14、図15においては、圧電体56に一定の電圧を印可した例について説明したが、実施例1と同様に、圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)ことも可能である。
すなわち、図13(a)に示す制御部22で圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)ことで圧電体56の伸長量を調整することができる。
【0158】
このように、圧電体56の伸長量を調整することで圧電体56によるバルブ手段131への押圧力を変えることができる。
バルブ手段131への押圧力を変えることで、バルブ付勢ばね177の圧縮状態を変化させてバランス荷重Fb3(図14(a)参照)やバランス荷重Fb2(図15(a)参照)を変える(調整する)ことができる。
これにより、減衰力可変ダンパ120の伸縮で上下の流体通路126,128を開放する際に、上下の流体通路126,128を開放する荷重、すなわち上流体室31の作動油圧(液圧)を調整してダンパ減衰力を調整する(変える)ことができる。
【0159】
このように、圧電体56によるバルブ手段131への押圧力を変えることで減衰力を変えることができる。
よって、従来技術で説明したように、圧電体56によるバルブ手段131の移動量を必要以上に高精度に調整する必要がない。
バルブ手段131の高精度の調整を不要にできるので、バルブ手段131を移動する際に圧電体56に印可する電圧を精度よく制御する必要がない。
【0160】
これにより、圧電体56に印可する電圧を容易に制御することが可能になり、減衰力可変ダンパ120の減衰力を簡単な制御で変えることができる。
特に、一例として、圧電体56に印可する電圧と、電圧に応じて得られる減衰力との関係をマップ化し、この特性マップなどを用いることで減衰力の調整を一層簡単に制御することが可能である。
【0161】
以上説明したように、実施例2の減衰力可変ダンパ120によれば、実施例1の減衰力可変ダンパ10と同様に、減衰力を好適に変えることができるなどの効果を得ることができる。
【0162】
なお、本発明に係る減衰力可変ダンパは、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1,2では、減衰力可変ダンパ10,120の下流体室32にガス室33を隣接させた例について説明したが、これに限らないで、ガス室33に代えて空気室を設けることも可能である。
空気室には高圧空気が充填されている
【0163】
また、前記実施例2では、上下の流体通路126,128を二段に設けた例について説明したが、これに限らないで、三段などの他の複数段に形成することも可能である。
また、流体通路を一段に形成することも可能である。
【0164】
さらに、前記実施例2では、一対の上流体通路126を180°の間隔をおいて形成し、一対の下流体通路128を180°の間隔をおいて形成した例について説明したが、これに限らないで、上流体通路126や下流体通路128を120°などの他の間隔をおいて形成することも可能である。
【0165】
また、前記実施例1,2で示した減衰力可変ダンパ10,120、車両11、シリンダ12、ピストン組立体14、ピストンケース35,121、圧電体56、バルブ手段62,131、バルブ支持部材63、バルブ部材64,134、バルブ付勢ばね65,177、流体通路78、圧電/ベローズ連結部91、バルブ規制部101、上下の流体通路126,128、圧電/ベローズ連結部132、変位伝達手段133、バルブ付勢手段135、上規制部材162および下規制部材163などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、車両の懸架装置に用いられ、シリンダ内のピストンを摺動させることにより減衰力を可変可能な減衰力可変ダンパを備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0167】
10,120…減衰力可変ダンパ、11…車両、12…シリンダ、13…作動油(流体)、14…ピストン組立体、31…上流体室(第1流体室)、32…下流体室(第2流体室)、35,121…ピストンケース(ピストン)、56…圧電体、62,131…バルブ手段、63…バルブ支持部材、64,134…バルブ部材、65…バルブ付勢ばね(バルブ付勢手段)、78…流体通路、91…圧電/ベローズ連結部、101…バルブ規制部(規制部)、126…上流体通路(流体通路)、128…下流体通路(流体通路)、132…圧電/ベローズ連結部(バルブ支持部材)、133…変位伝達手段、135…バルブ付勢手段、162…上規制部材(規制部)、163…下規制部材(規制部)、177…バルブ付勢ばね。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の懸架装置に用いられてシリンダ内のピストンを摺動させることで減衰力を変えることができる減衰力可変ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
減衰力可変ダンパのなかには、シリンダ内に摺動自在に収納されたピストンでシリンダを第1、第2の流体室に区画し、ピストン内に圧電体およびスプールを収納したものが知られている。
この減衰力可変ダンパによれば、圧電体に電圧を印加して圧電体を伸縮させることでスプールを移動させる。
スプールを移動させることで連通孔(ピストンの周壁に形成された側孔)の開口面積を変えて減衰力を調整することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−85210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、圧電体の伸縮量(変位量)は微少であり、スプールの移動量も微少になる。
スプールを微少量に移動させて連通孔(ピストンの周壁に形成された側孔)の開口面積を調整するためには、スプールの移動量を高精度に調整する必要がある。
しかし、スプールの移動量を高精度に調整するためには、圧電体に印可する電圧を精度よく制御する必要があり、圧電体に電圧を印加する制御が複雑になる。
【0005】
本発明は、減衰力を簡単な制御で変えることが可能な減衰力可変ダンパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車両の懸架装置に用いられて減衰力を変えることが可能な減衰力可変ダンパにおいて、流体が充填されたシリンダと、前記シリンダに摺動自在に収納されて前記シリンダを第1、第2の流体室に区画するとともに、前記第1、第2の流体室を連通させる流体通路を有するピストンと、前記ピストンに設けられ、前記流体通路に向けて押圧することで前記流体通路を閉塞可能で、かつ、前記ピストンの摺動時に前記流体通路を開放可能なバルブ手段と、前記バルブ手段に連結されるとともに前記第1、第2の流体室の一方から仕切られた状態に設けられ、印加される電圧に対応させて前記バルブ手段を前記流体通路に向けて押圧する力を変えることが可能な圧電体と、を備え、前記第1、第2の流体室の一方の液圧が低くなるように前記ピストンが摺動した際に、前記第1流体室の流体および前記第2流体室の流体の圧力差で、前記バルブ手段を前記流体通路から離間させて前記流体通路を開放可能とし、前記第1、第2の流体室の一方の液圧が高くなるように前記ピストンが摺動した際に、高くなった液圧で前記バルブ手段を前記流体通路から離す方向に移動して前記流体通路を開放可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記バルブ手段は、前記圧電体側に設けられたバルブ支持部材と、前記バルブ支持部材に移動自在に支持され、前記流体通路を開閉可能なバルブ部材と、前記バルブ部材を前記流体通路に向けて押圧することにより、前記バルブ部材で前記流体通路を閉塞可能なバルブ付勢手段と、を備え、前記バルブ支持部材は、前記バルブ付勢手段の付勢力による前記バルブ部材の移動を規制する規制部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記バルブ手段は、前記圧電体側に設けられ、前記圧電体の伸縮に対応して伸縮方向に変位可能なバルブ支持部材と、前記バルブ支持部材の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達可能な変位伝達手段と、前記変位伝達手段に移動自在に支持され、前記流体通路を開閉可能なバルブ部材と、前記バルブ部材を前記流体通路に向けて押圧することにより、前記バルブ部材で前記流体通路を閉塞可能なバルブ付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、バルブ手段を圧電体で流体通路に向けて押圧することで流体通路を閉塞し、ピストンの摺動時に流体通路をバルブ手段で開放可能とした。
そして、圧電体に印可する電圧を制御してバルブ手段を押圧する力(押圧力)を変えるようにした。
バルブ手段を押圧する押圧力を変えることで、ピストンの摺動中に押圧力に対応させて流体通路の開口面積(すなわち、流路断面積)を変えることができる。
ピストンの摺動中に流体通路の流路断面積を変えることで、減衰力可変ダンパの減衰力を変えることができる。
【0010】
このように、請求項1に係る発明によれば、圧電体によるバルブ手段への押圧力を変えることで減衰力を変えることができる。
よって、従来技術で説明したように、圧電体に電圧を印加して圧電体を伸縮させることで流体通路の開口面積を調整して減衰力を変える必要がない。
このため、圧電体によるバルブ手段の移動量を必要以上に高精度に調整する必要がない。
バルブ手段の高精度の調整を不要にできるので、バルブ手段を移動する際に圧電体に印可する電圧を精度よく制御する必要がない。
【0011】
これにより、圧電体に印可する電圧を容易に制御することが可能になり、減衰力可変ダンパの減衰力を簡単な制御で変えることができる。
特に、一例として、圧電体に印可する電圧と、電圧に応じて得られる減衰力との関係をマップ化し、この特性マップなどを用いることで減衰力の調整を一層簡単に制御することが可能である。
【0012】
さらに、請求項1に係る発明では、第1、第2の流体室の一方から仕切られた状態に圧電体を設けた。
第1、第2の流体室の一方から圧電体を仕切る理由はつぎの通りである。
すなわち、減衰力可変ダンパとして、例えば、第1、第2の流体室の他方に隣接してガス室(ガス室に代えて空気室)が設けられたモノチューブ(単筒式)ダンパが用いられることがある。
モノチューブダンパは一般に用いられるダンパである。
【0013】
このモノチューブダンパは、他方の流体室とガス室とがフリーピストンで区画されている。
他方の流体室がフリーピストンでガス室と区画されることで、減衰力可変ダンパが伸縮した際に、ピストンとともにフリーピストンが摺動する。
このように、減衰力可変ダンパが伸縮した際にフリーピストンが摺動することで、ガス室に隣接する他方の流体室の圧力変動が略一定に保たれる。
【0014】
よって、第1流体室の流体および第2流体室の圧力変動に差が生じる。
ここで、ピストンは、圧力変動が略一定に保たれている他方の流体室の液圧に対して、一方の流体室の液圧が高くなる方向と、低くなる方向とに摺動する。
【0015】
このため、圧力変動が略一定に保たれている他方の流体室に対して、一方の流体室の液圧が高くなる場合と、低くなる場合との両方の状態において、圧力差を利用してバルブ付勢手段を流体通路から離間させ、流体通路を確実に開放する構成を単一方向からの力の変化でおこなうことが必要となる。
【0016】
そこで、請求項1において、第1、第2の流体室の一方から仕切られた状態に圧電体を設けるようにした。第1、第2の流体室の一方から圧電体を仕切ることで、バルブ手段のうち圧電体に連結された部位を第1、第2の流体室の一方から仕切ることができる。
よって、バルブ手段のうち圧電体に連結された部位に、第1、第2の流体室の一方の液圧が作用しないようにできる。
これにより、第1、第2の流体室の一方の液圧が高くなるようにピストンが摺動した際に、高くなった液圧でバルブ手段を流体通路から離す方向に移動して流体通路を確実に開放することができる。
【0017】
一方、第1、第2の流体室の一方の液圧が低くなるようにピストンが摺動した際には、第1流体室の流体および第2流体室の流体の圧力差でバルブ手段を流体通路から離間させて流体通路を開放することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、バルブ支持部材に規制部を有し、規制部でバルブ部材の移動を規制するようにした。
よって、圧電体を収縮(圧縮)させてバルブ支持部材を流体通路から離す方向に移動する際に、バルブ支持部材の規制部でバルブ部材を確実に移動させることができる。
このように、バルブ部材を規制部で確実に移動させることで流体通路を良好に開放できる。
さらに、バルブ支持部材に規制部を備えるだけで、バルブ部材の移動を規制することができるので構成の簡素化を図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、変位伝達手段を備え、この変位伝達手段でバルブ支持部材の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達可能とした。
バルブ支持部材の変位方向は圧電体の伸縮方向と同じである。よって、変位伝達手段を備えることでバルブ部材を圧電体の伸縮方向に対して直交する方向に向けて設けることができる。
【0020】
このように、圧電体の伸縮方向に対して直交する方向に向けてバルブ部材を設けることで、圧電体に対するバルブ部材の軸方向への突出量を小さく抑えることができる。
これにより、ピストンの軸方向への長さ寸法を小さく抑えることができるのでピストンの小型化を図ることができ、設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施例1の減衰力可変ダンパを示す断面図である。
【図2】図1の減衰力可変ダンパのピストン組立体を示す断面図である。
【図3】図2のベローズを断面で示す断面図である。
【図4】図2のバルブ手段を示す断面図である。
【図5】実施例1の圧電体に電圧を印加して流体通路をバルブ手段で閉塞する例を説明する図である。
【図6】実施例1の減衰力可変ダンパを収縮(圧縮)する状態を示す図である。
【図7】ピストン組立体を下向きに摺動させて減衰力を得る例を説明する図である。
【図8】実施例1の減衰力可変ダンパを伸長する状態を示す図である。
【図9】ピストン組立体を上向きに摺動させて減衰力を得る例を説明する図である。
【図10】本発明に係る実施例2の減衰力可変ダンパを示す断面図である。
【図11】(a)は図10の11a部拡大図、(b)は(a)の押圧ロッドを下方に押し下げた状態示す断面図である。
【図12】図10の12−12線断面図である。
【図13】実施例2の圧電体に電圧を印加して上下の流体通路をバルブ手段で閉塞する例を説明する図である。
【図14】実施例2の減衰力可変ダンパを収縮(圧縮)させた際にピストン組立体を下向きに摺動させて減衰力を得る例を説明する図である。
【図15】実施例2の減衰力可変ダンパを伸長させた際にピストン組立体を上向きに摺動させて減衰力を得る例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0023】
実施例1に係る減衰力可変ダンパ10について説明する。
図1に示すように、減衰力可変ダンパ10は、車両11の懸架装置に用いられて減衰力を変えることが可能な緩衝装置である。
【0024】
この減衰力可変ダンパ10は、円筒状のシリンダ(シリンダチューブ)12と、シリンダ12内に摺動自在に収納されたピストン組立体14と、ピストン組立体14に連結されてシリンダ12の上端部12aから突出されたピストンロッド16と、ピストン組立体14の下方に摺動自在に収納されたフリーピストン17とを備えている。
【0025】
さらに、減衰力可変ダンパ10は、ピストン組立体14の圧電体56がワイヤハーネス21を経て制御部22に接続され、圧電体56が電源(バッテリ)24に接続され、電源24が電装部品25などに接続されている。
【0026】
シリンダ12は、内部に作動油(流体)13が充填され、ピストン組立体14が矢印方向に摺動自在に収納され、かつ、フリーピストン17が矢印方向に摺動自在に収納されている。
よって、シリンダ12内がピストン組立体14およびフリーピストン17で上流体室(第1流体室)31、下流体室(第2流体室)32およびガス室(空気室)33に区画されている。
【0027】
具体的には、減衰力可変ダンパ10は、シリンダ12内の略中央にピストン組立体14が収納され、ピストン組立体14の下方にフリーピストン17が収納されている。
シリンダ12にピストン組立体14が収納されることで、シリンダ12内がピストン組立体14で上流体室31および下流体室32に区画されている。
上流体室31および下流体室32には作動油13が充填されている。
【0028】
さらに、シリンダ12内のうちピストン組立体14の下方にフリーピストン17が収納されることで、下流体室32に隣接させてガス室33が区画されている。
ガス室33には高圧ガス18が充填されている。
すなわち、減衰力可変ダンパ10は、下流体室32に隣接してガス室33が設けられたモノチューブ(単筒式)ダンパである。
モノチューブダンパは、車両11の懸架装置として一般に用いられる緩衝装置である。
【0029】
減衰力可変ダンパ10によれば、減衰力可変ダンパ10が伸縮する際にシリンダ12内でピストン組立体14やフリーピストン17を矢印方向に摺動させることができる。
ピストン組立体14を矢印方向に摺動させることで作動油13を上流体室31および下流体室32間で移動させることができる。
上流体室31および下流体室32間で作動油13を移動させることにより、減衰力可変ダンパ10で減衰力を得ることができる。
【0030】
図2に示すように、ピストン組立体14は、シリンダ12に摺動自在に収納されたピストンケース(ピストン)35と、ピストンケース35内に設けられたベローズ(仕切部材)51と、ベローズ51内に収納された圧電体56と、圧電体56側に連結されたバルブ手段62とを備えている。
【0031】
ピストンケース35は、シリンダ12内に収納可能で、かつ、シリンダ12の軸線方向(上下方向)に摺動可能なケースである。
このピストンケース35は、円筒状に形成されることでピストン空間67を備えている。ピストン空間67にベローズ51およびバルブ手段62が収納されている。
【0032】
具体的には、ピストンケース35は、ピストンロッド16の下端部16aに上部35aが一体に連結され、下部35bにピストンリング38が設けられ、ピストンリング38の下方にピストン底部75が設けられている。
ピストンケース35の上部35aに形成されたロッド係止孔35cに圧電体56が嵌入されている。
【0033】
ピストンケース35は、円筒状に形成され、周壁36の周方向に複数のピストン開口部37が設けられている。
周壁36にピストン開口部37が設けられることで、ピストンケース35内のピストン空間67がピストン開口部37を経て上流体室31に連通されている。
【0034】
ピストン底部75は、ピストン開口部37の下方に設けられ、中央に流体通路78が設けられている。
ピストン底部75の中央に流体通路78が設けられることで、ピストンケース35内のピストン空間67が流体通路78を経て下流体室32に連通される。
よって、下流体室32は、流体通路78、ピストン空間67およびピストン開口部37を経て上流体室31に連通されている。
【0035】
ピストンリング38は、環状に形成され、外周面38aがシリンダ12の内周面12bに摺動自在に接触されている。
ピストンリング38の外周面38aがシリンダ12の内周面12bに摺動自在に接触されることで、ピストン組立体14がシリンダ12の軸線方向(矢印方向)に摺動自在に支持されている。
【0036】
さらに、ピストンリング38は、外周面38aがシリンダ12の内周面12bに摺動自在に接触されることで、外周面38aおよび内周面12b間が密閉される。
よって、シリンダ12内がピストンリング38で上流体室31および下流体室32に区画される。
【0037】
図3に示すように、ベローズ51は、一例として鋼材で筒形に形成された金属製の仕切部材である。
ベローズ51を鋼材で形成することでベローズ51の剛性を確保できる。
ベローズ51の剛性を確保した理由については後で詳しく説明する。
【0038】
このベローズ51は、円筒形状の周壁が蛇腹状に形成されたベローズ本体52と、ベローズ本体52の上端部に設けられた環状の上取付部53と、ベローズ本体52の下端部に設けられた環状の下取付部54とを有する。
【0039】
環状の上取付部53は、ピストンケース35(上部35a)のベローズ支持部35dに一体に連結されている。
ピストンケース35(上部35a)のロッド係止孔35cに圧電体56が貫通されている。
このロッド係止孔35cを経て圧電体56の下部56aが下方に突出されている。ロッド係止孔35cから下方に突出された下部56aがベローズ本体52で覆われている。
【0040】
ベローズ本体52は、円筒形状の周壁が蛇腹状に形成されることで軸線方向に伸縮自在に形成されている。
よって、圧電体56の伸縮に対応させてベローズ本体52を伸縮させることが可能である。
【0041】
環状の下取付部54は、バルブ手段62のバルブ支持部材63(具体的には、圧電/ベローズ連結部91)の外周壁に嵌入された状態で溶接(接合)されている。
この状態で、下取付部54および圧電/ベローズ連結部91間の下隙間88が密封されている。
【0042】
このように、上取付部53が上部35aのベローズ支持部35dに一体に連結され、下取付部54および圧電/ベローズ連結部91間の下隙間88が密封されることで、ベローズ51内の圧電体収納室66がピストン空間67から仕切られている。
【0043】
すなわち、圧電体収納室66は、圧電体56の下部56aをピストン空間67から仕切られた状態に収納可能な空間である。
この圧電体収納室66は、減衰力可変ダンパ10の外部空間に連通され、ピストン空間67に対して密閉状態に仕切られている。
【0044】
よって、ピストン空間67に充填された作動油13が圧電体収納室66に浸入することをベローズ51で防止できる。これにより、ベローズ51で圧電体56を作動油13から保護することができる。
さらに、圧電体収納室66が外部空間に連通されることで大気圧に保持されている。
【0045】
ここで、前述したように、ベローズ51は鋼材で形成されることで剛性が確保されている。
よって、ベローズ51の外周壁に作用する作動油13の作動油圧(液圧)と、圧電体収納室66の内周壁に作用する大気圧との圧力差でベローズ51が変形することを防止できる。
【0046】
このベローズ51に、圧電体56の下部56aおよび圧電/ベローズ連結部91の上面(バルブ手段62のうち圧電体56に連結された部位)91aが覆われている。
よって、圧電体56の下部56aおよび圧電/ベローズ連結部91の上面91aが、ピストン空間67(すなわち、上下の流体室31,32)から仕切られている。
これにより、ピストン空間67に充填された作動油13(すなわち、上下の流体室31,32の作動油13)の作動油圧が圧電体56の下部56aや圧電/ベローズ連結部91の上面91aに作用することを阻止できる。
【0047】
ここで、圧電体収納室66の内圧は、大気圧に保たれ、上流体室31の作動油圧(液圧)より低く抑えられている。
このように、圧電体収納室66の内圧を低く抑えることで、圧電/ベローズ連結部91の上面91aに作用する圧力が低く抑えられている。
圧電/ベローズ連結部91の上面91aに作用する圧力を低く抑える理由については後で詳しく説明する。
【0048】
圧電体56は、複数の圧電素子(ピエゾ素子)単体57が上下方向に積層されている。
複数の圧電素子単体57に電源24(図1参照)から電圧が印加されることで、圧電体56を伸長することができる。
【0049】
この圧電体56は、上部56bがピストンロッド16の下端部16a内に同軸上に収納され(設けられ)、下部56aがベローズ51内の圧電体収納室66に収納されている。
この状態で、圧電体56の下端部56dがバルブ手段62の圧電/ベローズ連結部91に連結(接触)されている。
【0050】
圧電体56の上端部56cがワイヤハーネス21を経て制御部22および電源24(図1参照)に接続されている。
図1に示す制御部22は、圧電体56に電源24から電圧を印可する状態と、電源24から印可しない状態に切り替える機能を備えている。
さらに、制御部22は、電源24から圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)機能を備えている。
【0051】
電源24から圧電体56に電圧が印加されることで圧電体56が伸長する。
圧電体56が伸長することで、圧電体56でバルブ手段62をピストンケース35のピストン底部75に向けて押圧することができる。
【0052】
バルブ手段62は、圧電体56を介してピストンケース35(ピストンロッド16)に設けられている。
このバルブ手段62は、圧電体56側に設けられたバルブ支持部材63と、バルブ支持部材63に移動自在に支持されたバルブ部材64と、バルブ部材64を流体通路78に向けて押圧可能なバルブ付勢ばね(バルブ付勢手段)65とを備えている。
【0053】
図4に示すように、バルブ支持部材63は、圧電体56側に連結された圧電/ベローズ連結部91と、圧電/ベローズ連結部91に同軸上に設けられたバルブ案内部96と、バルブ案内部96に設けられたバルブ規制部(規制部)101とを備えている。
【0054】
圧電/ベローズ連結部91は、下面に第2受圧部91bが形成されている。
第2受圧部91bは、上流体室31の作動油13の圧力を上向きに作用させる部位である。
上流体室31の作動油13の圧力を第2受圧部91bに上向きに作用させることで、圧電体56を収縮(圧縮)させる荷重を作用させることができる。
【0055】
バルブ案内部96は、圧電/ベローズ連結部91から下方に向けて同軸上に突出された円筒部97を有する。
円筒部97の内部空間98にバルブ部材64のバルブ摺動部105が上下方向に移動自在に収納(支持)されている。
円筒部97の下端部97aにバルブ規制部101が設けられている。
【0056】
バルブ規制部101は、円筒部97の下端部97aに設けられて中央に開口部102が形成されている。開口部102にバルブ支持軸106が貫通されている。
バルブ規制部101のうち開口部102の内周縁101aが円筒部97の中心に向けて張り出されている。
【0057】
内周縁101aにバルブ摺動部105の外周縁105aを当接させることで、バルブ付勢ばね65の付勢力(ばね力)によるバルブ摺動部105(すなわち、バルブ部材64)の移動を規制することができる。
すなわち、バルブ規制部101は、バルブ付勢ばね65の付勢力によるバルブ部材64の移動を規制する部材である。
【0058】
バルブ部材64は、円筒部97の内部空間98に上下方向に移動自在に収納されたバルブ摺動部105と、バルブ摺動部105から下方に向けて突出されたバルブ支持軸106と、バルブ支持軸106の下端部に設けられたバルブ本体107とを有する。
【0059】
バルブ摺動部105は、円板状に形成され、円筒部97の内部空間98に上下方向に移動自在に収納されている。
バルブ摺動部105の外周縁105aをバルブ規制部101の内周縁101aに上方から当接させて、バルブ部材64を規制位置P1に保持することができる。
【0060】
バルブ支持軸106は、バルブ摺動部105から下方に向けて突出され、バルブ規制部101の開口部102に摺動自在に貫通されている。
バルブ摺動部105にバルブ支持軸106を設けることで、バルブ摺動部105が上下方向に移動することを許容する。
【0061】
バルブ本体107は、バルブ支持軸106の下端部に設けられ、円筒部97の外径と略同径の円板状に形成されている。
このバルブ本体107は、ピストン底部75の表面75aに押圧された状態で流体通路78を閉塞可能で、ピストン底部75の表面75aから離間された(離された)状態で流体通路78を開放可能に形成されている。
バルブ本体107の中央に流体通路78に対向する第1受圧部107aを有する。
この第1受圧部107aに、上流体室31の作動油13(図3参照)および下流体室32の作動油13の圧力差(すなわち、差圧力)が作用する。
【0062】
バルブ付勢ばね65は、円筒部97の内部空間98に収納され、かつ、円筒部97の上端部96aおよびバルブ摺動部105間に圧縮された状態で配置された圧縮ばねである。
バルブ付勢ばね65の付勢力でバルブ部材64(バルブ摺動部105)が流体通路78に向けて押圧されている。
【0063】
バルブ部材64が流体通路78に向けて押圧されることで、バルブ摺動部105の外周縁105aがバルブ規制部101の内周縁101aに当接された状態に保たれる。
外周縁105aが内周縁101aに当接された状態に保たれることで、バルブ部材64が規制位置P1に保持される。
【0064】
バルブ部材64が規制位置P1に保持された状態で、圧電体56に電圧を印加して圧電体56を伸長することで、バルブ本体107がピストン底部75の表面75aに押圧される。
バルブ本体107をピストン底部75の表面75aに押圧することにより、バルブ本体107で流体通路78が閉塞される。
【0065】
一方、バルブ部材64が流体通路78に向けて押圧されることで、バルブ摺動部105の外周縁105aがバルブ規制部101の内周縁101aに当接された状態に保たれている。
すなわち、バルブ部材64の移動をバルブ規制部101で規制することができる。
【0066】
よって、圧電体56から電圧を解除して圧電体56を収縮することにより、バルブ本体107がバルブ規制部101とともにピストン底部75の表面75aから確実に離間される(離される)。
バルブ本体107をピストン底部75の表面75aから離間させることで流体通路78が良好に開放される。
【0067】
このように、バルブ部材64の移動をバルブ規制部101で規制することで、バルブ本体107で流体通路78を良好に閉塞、開放することができる。
このバルブ部材64の規制を、バルブ支持部材63にバルブ規制部101を備えるだけの簡単な構成で実現することができる。
これにより、減衰力可変ダンパ10の構成の簡素化を図ることができる。
【0068】
つぎに、圧電体56に電圧を印加して流体通路78をバルブ手段62で閉塞する例を図5に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、バルブ部材64がバルブ付勢ばね65で流体通路78に向けて押圧されている。
バルブ部材64が押圧されることで、バルブ摺動部105の外周縁105aがバルブ規制部101の内周縁101aに当接された状態に保たれている。
外周縁105aが内周縁101aに当接された状態に保たれることで、バルブ部材64が規制位置P1に保持されている。
【0069】
この状態において、制御部22を制御して電源24から圧電体56に電圧を印加して圧電体56を矢印Aの如く伸長させる。
圧電体56が伸長することでバルブ支持部材63が矢印Bの如く下降する。
バルブ支持部材63が下降することで、バルブ支持部材63とともにバルブ部材64がピストン底部75に向けて矢印Cの如く下降する。
【0070】
図5(b)に示すように、バルブ部材64がピストン底部75に向けて下降することで、バルブ部材64のバルブ本体107をピストン底部75の表面75aに押圧する。
このように、バルブ本体107をピストン底部75の表面75aに押圧することにより、バルブ本体107で流体通路78を閉塞することができる。
【0071】
ついで、減衰力可変ダンパ10が伸縮する際にピストン組立体14を摺動させて減衰力を得る例を図6〜図9に基づいて説明する。
まず、減衰力可変ダンパ10が収縮(圧縮)する際にピストン組立体14を下向きに摺動させて減衰力を得る例を図6、図7に基づいて説明する。
【0072】
図6(a)に示すように、減衰力可変ダンパ10に圧縮力F1が作用することにより減衰力可変ダンパ10が収縮(圧縮)する。
減衰力可変ダンパ10が収縮することで、ピストン組立体14およびフリーピストン17が矢印Dの如く摺動する。
【0073】
図6(b)に示すように、ピストン組立体14が摺動することで上流体室31の容積が増加し、上流体室31の作動油13の作動油圧が低くなる。
また、ピストン組立体14およびフリーピストン17が摺動することで、ピストン組立体14の摺動に伴う下流体室32の容積変化がガス室33で吸収される。
よって、下流体室32の作動油13の作動油圧(液圧)が殆ど変化しないように保たれる。
これにより、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差を比較的大きく確保できる。
【0074】
図7(a)に示すように、圧電体56に電圧が印加された状態においてバルブ本体107で流体通路78が閉塞されている。
この状態において、減衰力可変ダンパ10を収縮させることによりピストン組立体14が矢印Dの如く下向きに摺動する。
【0075】
ピストン組立体14を下向きに摺動することで、上流体室31の容積が増し、上流体室31の作動油13の作動油圧が低くなる。
よって、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差(すなわち、差圧力Po1)を比較的大きく確保できる。
【0076】
比較的大きく確保した差圧力Po1によりバルブ本体107の第1受圧部107aに押圧力Fo1が作用する。
第1受圧部107aに作用する押圧力Fo1がバランス荷重Fb1を超えた場合にバルブ手段62のバルブ付勢ばね65が圧縮される。
ここで、バランス荷重Fb1は、バルブ付勢ばね65の圧縮状態により作用する荷重(すなわち、バルブ付勢ばね65でバルブ本体107を押圧する力)である。
【0077】
図7(b)に示すように、バルブ付勢ばね65が圧縮することで、バルブ本体107が流体通路78から離れる(離間させる)方向に矢印Eの如く押し上げられて流体通路78が開放される。
流体通路78が開放することで、下流体室32の作動油13が流体通路78を経てピストン空間67に矢印Fの如く導かれる。
ピストン空間67に導かれた作動油13は、ピストン開口部37を経てピストンケース35の外部(すなわち、上流体室31)に矢印Gの如く導かれる。
【0078】
これにより、減衰力可変ダンパ10が収縮してピストン組立体14が下向きに摺動した際に、下流体室32の作動油13を流体通路78を経て上流体室31に円滑に導くことができる。
このように、流体通路78に作動油13を円滑に流すことで、押圧力Fo1(図7(a)参照)によって決まるダンパ減衰力が得られる。
【0079】
つぎに、減衰力可変ダンパ10が伸長する際にピストン組立体14を上向きに摺動させて減衰力を得る例を図8、図9に基づいて説明する。
【0080】
図8(a)に示すように、減衰力可変ダンパ10に引張力F2が作用することにより減衰力可変ダンパ10が伸長する。
減衰力可変ダンパ10が伸長することで、ピストン組立体14およびフリーピストン17が矢印Hの如く摺動する。
【0081】
図8(b)に示すように、ピストン組立体14が摺動することで上流体室31の容積が減少し、上流体室31の作動油13の作動油圧が高くなる。
一方、ピストン組立体14およびフリーピストン17が摺動することで、ピストン組立体14の摺動に伴う下流体室32の容積変化がガス室33で吸収される。
よって、下流体室32の作動油13が略一定に保たれる。
これにより、減衰力可変ダンパ10の伸長時には、減衰力可変ダンパ10の圧縮時の場合に対して、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差の正負が逆転する。
【0082】
このように、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差の正負が逆転した場合には、圧縮時と同様の機構で流体通路78(図5参照)を開放することが困難となる。
そこで、圧電体収納室66を、ベローズ51などでピストン空間67に対して密閉状態に仕切るようにした。
【0083】
図9(a)に示すように、バルブ本体107で流体通路78が閉塞された状態において、ピストン組立体14を上向きに矢印Hの如く摺動することで、上流体室31(ピストン空間67)の作動油圧Po2が高くなる。
【0084】
ここで、圧電体収納室66は、ベローズ51などでピストン空間67に対して密閉状態に仕切られている。さらに、圧電体収納室66は、減衰力可変ダンパ10の外部空間に連通されている。
よって、圧電体収納室66の内圧(すなわち、大気圧)は上流体室31の作動油圧より低く抑えられている。
圧電体収納室66の内圧を低く抑えることで、圧電/ベローズ連結部91の上面91aに作用する圧力が低く抑えられている。
【0085】
これにより、圧電/ベローズ連結部91の第2受圧部91bに押圧力Fo2が作用する。
第2受圧部91bに作用する押圧力Fo2がバランス荷重Fb2を超えた場合に圧電体56が圧縮される。
ここで、バランス荷重Fb2は、圧電体56の伸長により作用する押圧力である。
【0086】
図9(b)に示すように、バルブ摺動部105の外周縁105aがバルブ規制部101の内周縁101aに当接された状態に保たれている。
よって、圧電体56が押圧力Fo2(図9(a)参照)で圧縮されることでバルブ手段62を矢印Iの如く確実に上昇させることができる。
バルブ手段62が上昇することで、バルブ手段62のバルブ本体107が流体通路78から離れる(離間させる)方向に矢印Iの如く上昇して流体通路78を良好に開放できる。
【0087】
流体通路78が開放することで、ピストン空間67の作動油13が流体通路78を経て下流体室32に矢印Jの如く導かれる。
ピストン空間67の作動油13が下流体室32に導かれることで、ピストン空間67に上流体室31の作動油13がピストン開口部37を経て矢印Kの如く導かれる。
すなわち、流体通路78が開放することで、上流体室31の作動油13が流体通路78を経て下流体室32に円滑に導かれる。
【0088】
これにより、減衰力可変ダンパ10が伸長してピストン組立体14が上向きに摺動した際に、上流体室31の作動油13を流体通路78を経て下流体室32に円滑に導くことができる。
このように、流体通路78に作動油13を円滑に流すことで、押圧力Fo2(図9(a)参照)によって決まるダンパ減衰力が得られる。
【0089】
図6〜図9においては、圧電体56に一定の電圧を印可した例について説明したが、圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)ことも可能である。
すなわち、図5(a)に示す制御部22で圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)ことで圧電体56の伸長量を調整することができる。
【0090】
このように、圧電体56の伸長量を調整することで圧電体56によるバルブ手段62への押圧力を変えることができる。
バルブ手段62への押圧力を変えることで、バルブ付勢ばね65の圧縮状態を変化させてバランス荷重Fb1(図7(a)参照)やバランス荷重Fb2(図9(a)参照)を変える(調整する)ことができる。
【0091】
バランス荷重Fb1やバランス荷重Fb2は圧電体56によるバルブ手段62への押圧力を変えることで調整可能である。
これにより、圧電体56によるバルブ手段62への押圧力を変えることで減衰力を変えることができる。
【0092】
ここで、減衰力可変ダンパのなかには、圧電体に電圧を印加して圧電体を伸縮させることで流体通路の開口面積を調整して減衰力を変えるものが知られている。
しかし、圧電体の伸縮で流体通路の開口面積を調整するためには、圧電体に印可する電圧を精度よく制御する必要があり、圧電体に電圧を印加する制御が複雑になる。
【0093】
これに対して、実施例1の減衰力可変ダンパ10は、圧電体56によるバルブ手段62への押圧力を変えることで減衰力を変えることができる。
よって、従来の減衰力可変ダンパのように、圧電体56によるバルブ手段62の移動量を必要以上に高精度に調整する必要がない。
バルブ手段62の高精度の調整を不要にできるので、バルブ手段62を移動する際に圧電体56に印可する電圧を精度よく制御する必要がない。
【0094】
これにより、圧電体56に印可する電圧を容易に制御することが可能になり、減衰力可変ダンパ10の減衰力を簡単な制御で変えることができる。
特に、一例として、圧電体56に印可する電圧と、電圧に応じて得られる減衰力との関係をマップ化し、この特性マップなどを用いることで減衰力の調整を一層簡単に制御することが可能である。
【0095】
ところで、図1に示す減衰力可変ダンパ10において、車両11の走行中に圧電体56に路面振動が反力として作用する。
圧電体56に路面振動が反力として作用することで、圧電体56が変位して圧電体56に電圧(電力)が発生する。
【0096】
具体的には、圧電体収納室66がベローズ51などでピストン空間67に対して密閉状態に仕切られることで、圧電体収納室66の内圧(大気圧)は上流体室31の作動油圧より低く抑えられている。
よって、圧電/ベローズ連結部91の第2受圧部91bに押圧力Fo2(図9(a)参照)が作用した際に、圧電体56を良好に圧縮することができる。
【0097】
これにより、圧電体56が変位して圧電体56に電圧(電力)を好適に発生させることができる。
このように、圧電体56で発生させた電圧(電力)を電源24に蓄える(回生する)ことができる。
【0098】
つぎに、実施例2に係る減衰力可変ダンパ120を図10〜図12に基づいて説明する。
なお、実施例2の減衰力可変ダンパ120において実施例1の減衰力可変ダンパ10と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0099】
実施例2に係る減衰力可変ダンパ120について説明する。
図10に示すように、減衰力可変ダンパ120は、実施例1のピストンケース35およびバルブ手段62をそれぞれピストンケース(ピストン)121およびバルブ手段131に代えたもので、その他の構成は実施例1の減衰力可変ダンパ10と同様である。
ここで、実施例2のピストン組立体は、実施例1のピストン組立体14と構成が異なるが構成の理解を容易にするために、実施例1と同様にピストン組立体14として説明する。
【0100】
ピストンケース121は、実施例1の周壁36およびピストン底部75をそれぞれ周壁122およびピストン底部123に代えたもので、その他の構成は実施例1のピストンケース35と同様である。
【0101】
周壁122は、周壁の周方向に湾曲状に延長された一対の上流体通路(流体通路)126と、一対の上流体通路126の下方に設けられた一対の下流体通路(流体通路)128とを有する。
【0102】
一対の上流体通路126は、周壁の周方向に180°の間隔をおいて形成されている。
【0103】
一対の下流体通路128は、一対の上流体通路126の下方に設けられることで一対の上流体通路126と同様に、180°の間隔をおいて形成されている。
【0104】
このように、周壁122に上下の流体通路126,128が湾曲状に延長されることで上下の流体通路126,128の長さ寸法を大きく確保できる。
さらに、周壁122に上下の流体通路126,128が複数段(一例として、二段)に形成されている。
上下の流体通路126,128の長さ寸法を大きく確保し、さらに、上下の流体通路126,128を複数段に形成することで、流体通路の開口面積の選択範囲を大きく確保できる。
【0105】
流体通路の開口面積の選択範囲を大きく確保することで、圧電体56の伸縮量を小さく抑えた場合でも、減衰力可変ダンパ120の減衰力を好適に変えることができる。
さらに、流体通路の開口面積の選択範囲を大きく確保することで、設計の自由度を高めることができる。
【0106】
周壁122に一対の上流体通路126および一対の下流体通路128が設けられることで、ピストンケース121内のピストン空間141が上下の流体通路126,128を経て下流体室32に連通されている。
よって、下流体室32は、上下の流体通路126,128、ピストン空間141およびピストン開口部37を経て上流体室31に連通されている。
【0107】
ピストン底部123は、周壁122のうち下流体通路128の下方部位122aに設けられ、ピストン空間141を下流体室32から仕切る部材である。
ピストン底部123にバルブ手段131が載置されている。
【0108】
バルブ手段131は、圧電体56側に設けられた圧電/ベローズ連結部(バルブ支持部材)132と、圧電/ベローズ連結部132に連結された変位伝達手段133と、変位伝達手段133に支持されたバルブ部材134と、バルブ部材134を上下の流体通路126,128に向けて押圧可能なバルブ付勢手段135と、バルブ部材134を規制可能なバルブ復帰手段136とを備えている。
【0109】
圧電/ベローズ連結部132は、実施例1の圧電/ベローズ連結部91と同じ部材である。
この圧電/ベローズ連結部132の下部中央132aから変位伝達手段133の押圧ロッド145が下方に向けて垂下されている。
この圧電/ベローズ連結部132は、圧電体56側に設けられ、圧電体56の伸縮に対応して伸縮方向に変位可能である。
【0110】
変位伝達手段133は、圧電/ベローズ連結部132から下方に向けて同軸上に突出された押圧ロッド145と、押圧ロッド145の両側に設けられた一対の変位伝達部151とを備えている。
押圧ロッド145は、下端部にくさび部148が設けられている。
【0111】
図11に示すように、押圧ロッド145の下端部にくさび部148を有することで、くさび部148に一対の傾斜ガイド部149が形成されている。
一対の傾斜ガイド部149は、押圧ロッド145の中心から外方に向けて上り勾配に形成されている。
よって、押圧ロッド145を下方に押し下げることにより、一対の傾斜ガイド部149で一対の変位伝達部151をそれぞれ周壁122(図10参照)に向けて移動させることができる。
【0112】
図10に示すように、一対の変位伝達部151は、押圧ロッド145の両側に設けられている。
押圧ロッド145の傾斜ガイド部149が、一対の変位伝達部151の傾斜底部151a(図11(a)参照)に当接されている。
よって、図11(b)に示すように、くさび部148の傾斜ガイド部149を下方に押し下げることで、変位伝達部151を周壁122(図10参照)に向けて移動させることができる。
図10に示すように、変位伝達部151にバルブ部材134が連結されている。
傾斜底部151aおよび傾斜ガイド部149については後で詳しく説明する。
【0113】
バルブ部材134は、一対の変位伝達部151に載置されたガイドプレート161と、ガイドプレート161の下側に移動自在に配置された一対の上規制部材162と、ピストン底部123に移動自在に載置された一対の下規制部材163と、上規制部材162および下規制部材163に連結されたバルブ本体164とを備えている。
【0114】
図12に示すように、一対のバルブ本体164は、周壁122に沿って湾曲状に形成され、周壁122に対して所定間隔Sをおいて配置されている。
バルブ本体164は、上下の規制部材162,163(図10参照)を介して変位伝達部151に対して移動自在に支持され、上下の流体通路126,128(図10も参照)を開閉可能な部材である。
【0115】
具体的には、バルブ本体164は、湾曲状の外周壁164aに設けられた上下の閉塞部(第1受圧部)166,167を有する。
上閉塞部166は、バルブ本体164の上端部において、湾曲状の外周壁164aに沿って湾曲状に形成されている。
下閉塞部167は、バルブ本体164の下端部において、湾曲状の外周壁164aに沿って湾曲状に形成されている。
【0116】
バルブ本体164を周壁122に向けて押圧することで、上閉塞部166で上流体通路126が閉塞され、下閉塞部167で下流体通路128が閉塞される。
バルブ本体164の内壁164bにバルブ付勢手段135が設けられている。
【0117】
バルブ付勢手段135は、内壁164bの略中央から半径方向内方に突出された支持ロッド部176と、支持ロッド部176に支持されたバルブ付勢ばね177とを備えている。
バルブ付勢ばね177は、バルブ本体164および変位伝達部151(図10参照)間に介在されている。
【0118】
図10、図12に示すように、バルブ付勢ばね177の付勢力でバルブ本体164が周壁122(上下の流体通路126,128)に向けて押圧されている。
この状態において、バルブ付勢ばね177の付勢力で、変位伝達部151の下部に下規制部材163が連結状態に保持され、変位伝達部151の上部に上規制部材162が連結状態に保持されている。
【0119】
バルブ付勢ばね177の付勢力によるバルブ本体164の移動は上下の規制部材162,163で規制される。
これにより、バルブ本体164(上下の閉塞部166,167)が上下の規制部材162,163で規制位置P2に配置されている。
【0120】
バルブ本体164が規制位置P2に配置されることで、バルブ本体164(上下の閉塞部166,167)が周壁122(具体的には、上下の流体通路126,128)に対して所定間隔S(図12参照)をおいて配置されている。
この状態で、バルブ本体164を周壁122に向けて押圧することにより、上下の閉塞部166,167で上下の流体通路126,128が閉塞される。
【0121】
図10、図12に示すように、バルブ復帰手段136は、バルブ本体164の外周壁164aに沿って配置された一対の当接部181と、各当接部181に設けられた一対の当接ロッド部182と、一対の当接ロッド部182に支持された一対の復帰ばね183とを備えている。
【0122】
当接部181は、バルブ本体164の上下の閉塞部166,167間に配置され、バルブ本体164の外周壁164aに沿って湾曲状に形成されている。
当接部181を湾曲状に形成することで、当接部181の外周壁181aが周壁122に当接可能に形成されている。
【0123】
復帰ばね183は、当接ロッド部182に嵌入され、当接部181および変位伝達部151間に介在された圧縮ばねである。
この復帰ばね183の付勢力で当接部181が周壁122に押圧され、周壁122にバルブ部材134が保持されている。
このように、バルブ復帰手段136を備えることで、バルブ部材134がピストンケース121の軸線方向に移動することを防止できる。
【0124】
加えて、バルブ復帰手段136を備えることで、復帰ばね183の付勢力で変位伝達部151が押圧ロッド145に向けて押圧されている。
よって、押圧ロッド145を図11(b)の状態から図11(a)の状態にまで上昇させた際に、復帰ばね183の付勢力で変位伝達部151を押圧ロッド145に向けて(復帰)移動させることができる。
変位伝達部151を移動することで、変位伝達部151とともに上下の規制部材162,163を押圧ロッド145に向けて移動(復帰)させることができる。
【0125】
上下の規制部材162,163が移動することで、上下の規制部材162,163とともにバルブ本体164を上下の流体通路126,128から離す(離間させる)方向に移動させることができる。
バルブ本体164が移動することにより、上下の閉塞部(第1受圧部)166,167を上下の流体通路126,128から離して上下の流体通路126,128を開放できる。
【0126】
つぎに、傾斜底部151aおよび傾斜ガイド部149について詳しく説明する。
図11(a)に示すように、変位伝達部151の傾斜底部151aに押圧ロッド145の傾斜ガイド部149が当接されている。
傾斜底部151aおよび傾斜ガイド部149は傾斜角θに形成されている。
よって、押圧ロッド145を下方に押し下げた際に、押圧ロッド145の変位が、傾斜ガイド部149および傾斜底部151aで変位方向に対して直交する方向に伝えられる。
【0127】
図11(b)に示すように、押圧ロッド145の変位が変位方向に対して直交する方向に伝えられることで、変位伝達部151が周壁122(図10参照)に向けて押圧される。
【0128】
図10に示すように、変位伝達部151が周壁122に向けて移動することにより、変位伝達部151とともにバルブ付勢ばね177(図12参照)が移動する。
よって、バルブ付勢ばね177とともにバルブ本体164が周壁122に向けて移動する。
【0129】
バルブ本体164が周壁122に向けて移動することで、上閉塞部166で上流体通路126が閉塞され、下閉塞部167で下流体通路128が閉塞される。
このように、バルブ手段131に変位伝達手段133を備えることで、変位伝達手段133で圧電/ベローズ連結部132(押圧ロッド145)の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達できる。
【0130】
ここで、図11に示す傾斜角θを45°より小さくすることで、押圧ロッド145の変位量δ1に対して変位伝達部151の変位量δ2を大きく確保できる。
よって、圧電体56(図10参照)の伸縮量に対してバルブ本体164の移動量を増加させることができる。
【0131】
傾斜角θは、40°を超えないように決めることが好ましい。
傾斜角θを40°を超えないように設定することでバルブ本体164の移動量を十分に増加させることができる。
【0132】
バルブ本体164の移動量を増加させることで、上下の流体通路126,128に対する上下の閉塞部166,167の最大離間量を大きく確保できる。
これにより、上下の流体通路126,128を流れる作動油13の流量(すなわち、流路断面積)を広範囲で変えることができるので、減衰力可変ダンパ120の減衰力を好適に変えることができる。
【0133】
加えて、実施例2の減衰力可変ダンパ120によれば、バルブ手段131に変位伝達手段133を備えることで、変位伝達手段133で圧電/ベローズ連結部132の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達可能とした。
圧電/ベローズ連結部132の変位方向は圧電体56の伸縮方向と同じである。よって、変位伝達手段133を備えることで一対のバルブ部材134を圧電体56の伸縮方向に対して直交する方向に向けて設けることができる。
【0134】
このように、圧電体56の伸縮方向に対して直交する方向に向けて一対のバルブ部材134を設けることで、圧電体56に対するバルブ手段131の軸方向への突出量を小さく抑えることができる。
これにより、ピストン組立体14の軸方向への長さ寸法を小さく抑えることができるのでピストン組立体14の小型化を図ることができ、設計の自由度を高めることができる。
【0135】
つぎに、圧電体56に電圧を印加して一対の上流体通路126および一対の下流体通路128をバルブ手段131(バルブ本体164)で閉塞する例を図13に基づいて説明する。
なお、図13においては作用の理解を容易にするために一方の上流体通路126および一方の下流体通路128について説明する。
【0136】
図13(a)に示すように、バルブ手段131のバルブ本体164がバルブ付勢ばね177で上下の流体通路126,128に向けて押圧されている。
バルブ本体164が押圧された状態において、下規制部材163および上規制部材162でバルブ本体164が規制位置P2に保持されている。
【0137】
この状態において、制御部22を制御して電源24から圧電体56に電圧を印加して圧電体56を矢印Lの如く伸長させる。
圧電体56が伸長することで圧電/ベローズ連結部132が矢印Mの如く下降する。
圧電/ベローズ連結部132が下降することで、圧電/ベローズ連結部132とともに押圧ロッド145がピストン底部123に向けて矢印Mの如く下降する。
【0138】
ここで、押圧ロッド145の傾斜ガイド部149が変位伝達部151の傾斜底部151aに当接されている。
よって、押圧ロッド145が下降することで、押圧ロッド145の傾斜ガイド部149で変位伝達部151の傾斜底部151aを押圧する。
これにより、変位伝達部151が周壁122に向けて矢印Nの如く移動する。
【0139】
図13(b)に示すように、変位伝達部151が周壁122に向けて移動することで、バルブ本体164が上下の流体通路126,128に向けて矢印Nの如く移動する。
バルブ本体164が移動することで、バルブ本体164の上閉塞部(第1受圧部)166で上流体通路126を押圧し、下閉塞部(第1受圧部)167で下流体通路128を押圧することができる。
これにより、上閉塞部166で上流体通路126を閉塞し、下閉塞部167で下流体通路128を閉塞することができる。
【0140】
ついで、減衰力可変ダンパ120が伸縮する際にピストン組立体14を摺動させて減衰力を得る例を図14、図15に基づいて説明する。
まず、減衰力可変ダンパ120が収縮(圧縮)する際にピストン組立体14を下向きに摺動させて減衰力を得る例を図14に基づいて説明する。
【0141】
図14(a)に示すように、圧電体56に電圧が印加された状態において上閉塞部166で上流体通路126が閉塞され、下閉塞部167で下流体通路128が閉塞されている。
この状態において、減衰力可変ダンパ120に圧縮力が作用することにより減衰力可変ダンパ120が収縮(圧縮)する。
減衰力可変ダンパ120が収縮することで、ピストン組立体14およびフリーピストン17(図6参照)が下方に向けて矢印Oの如く摺動する。
【0142】
ピストン組立体14を下方に向けて摺動することで、上流体室31の容積が増し、上流体室31の作動油13の作動油圧が低くなる。
よって、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差(すなわち、差圧力Po3)を比較的大きく確保できる。
【0143】
比較的大きく確保した差圧力Po3により上下の閉塞部(第1受圧部)166,167に押圧力Fo3が作用する。
上下の閉塞部(第1受圧部)166,167に作用する押圧力Fo3がバランス荷重Fb3を超えた場合にバルブ付勢ばね177が圧縮される。
ここで、バランス荷重Fb3は、バルブ付勢ばね177の圧縮状態により作用する荷重(すなわち、バルブ付勢ばね177でバルブ本体164を押圧する力)である。
【0144】
図14(b)に示すように、バルブ付勢ばね177が圧縮することで、バルブ本体164が上下の流体通路126,128から離れる方向に矢印Pの如く押圧される。
よって、上下の閉塞部(第1受圧部)166,167が上下の流体通路126,128から離れて(離間して)上下の流体通路126,128が開放される。
上下の流体通路126,128が開放することで、下流体室32の作動油13が上下の流体通路126,128を経てピストン空間141に矢印Qの如く導かれる。
ピストン空間141に導かれた作動油13は、ピストン開口部37(図14(a)参照)を経て周壁122の外部(すなわち、上流体室31(図14(a)参照))に導かれる。
【0145】
これにより、減衰力可変ダンパ120が収縮してピストン組立体14が下向きに摺動した際に、下流体室32の作動油13を上下の流体通路126,128を経て上流体室31に円滑に導くことができる。
このように、上下の流体通路126,128に作動油13を円滑に流すことで、押圧力Fo3(図14(a)参照)によって決まるダンパ減衰力が得られる。
【0146】
つぎに、減衰力可変ダンパ120が伸長する際にピストン組立体14を上向きに摺動させて減衰力を得る例を図15に基づいて説明する。
【0147】
図15(a)に示すように、圧電体56に電圧が印加された状態において上閉塞部166で上流体通路126が閉塞され、下閉塞部167で下流体通路128が閉塞されている。
この状態において、減衰力可変ダンパ120に引張力が作用することにより減衰力可変ダンパ120が伸長する。
減衰力可変ダンパ120が伸長することで、ピストン組立体14およびフリーピストン17(図8参照)が上方に向けて矢印Rの如く摺動する。
【0148】
ピストン組立体14が摺動することで上流体室31(図8も参照)の容積が減少し、上流体室31の作動油13の作動油圧が高くなる。
一方、ピストン組立体14およびフリーピストン17が上方に向けて摺動することで、ピストン組立体14の摺動に伴う下流体室32の容積変化がガス室33(図8参照)で吸収される。
【0149】
よって、下流体室32の作動油13の作動油圧が略一定に保たれる。
これにより、減衰力可変ダンパ10の伸長時には、減衰力可変ダンパ10の圧縮時の場合に対して、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差の正負が逆転する。
このように、上流体室31の作動油13および下流体室32の作動油13の圧力差の正負が逆転した場合には、圧縮時と同様の機構で上下の流体通路126,128を開放することが困難となる。
【0150】
そこで、圧電体収納室66を、ベローズ51などでピストン空間141に対して密閉状態に仕切るようにした。
圧電体収納室66は、外部空間に連通されることで大気圧に保持されている。
【0151】
よって、圧電体収納室66の内圧(大気圧)は上流体室31の作動油圧より低く抑えられている。
圧電体収納室66の内圧を低く抑えることで、圧電/ベローズ連結部132の上面132bに作用する圧力が低く抑えられている。
これにより、圧電/ベローズ連結部132の第2受圧部132cに押圧力Fo4が作用する。
【0152】
第2受圧部132cは、圧電/ベローズ連結部132の下面に形成されている。
第2受圧部132cに作用する押圧力Fo4がバランス荷重Fb2を超えた場合に圧電体56が圧縮される。
ここで、バランス荷重Fb2は、圧電体56の伸長により作用する押圧力である。
【0153】
図15(b)に示すように、圧電体56が圧縮されることで押圧ロッド145が矢印Sの如く上昇する。
押圧ロッド145が上昇することにより、バルブ復帰手段136に備えた復帰ばね183の付勢力で変位伝達部151が押圧ロッド145に向けて矢印Tの如く移動する。
変位伝達部151が移動することで、変位伝達部151とともに上下の規制部材162,163が矢印Tの如く移動する。
【0154】
上下の規制部材162,163が移動することで、上下の規制部材162,163とともにバルブ本体164が矢印Tの如く移動する。
バルブ本体164が移動することにより、上下の閉塞部(第1受圧部)166,167が上下の流体通路126,128から離れて(離間して)上下の流体通路126,128が開放される。
【0155】
上下の流体通路126,128が開放することで、ピストン空間141の作動油13が上下の流体通路126,128を経て下流体室32に矢印Uの如く導かれる。
ピストン空間141の作動油13が下流体室32に導かれることで、ピストン空間141に上流体室31(図15(a)参照)の作動油13がピストン開口部37(図15(a)参照)を経て導かれる。
すなわち、上下の流体通路126,128が開放することで、上流体室31の作動油13が上下の流体通路126,128を経て下流体室32に円滑に導かれる。
【0156】
これにより、減衰力可変ダンパ120が伸長してピストン組立体14が上向きに摺動した際に、上流体室31の作動油13を上下の流体通路126,128を経て下流体室32に円滑に導くことができる。
このように、上下の流体通路126,128に作動油13を円滑に流すことで、押圧力Fo4(図15(a)参照)によって決まるダンパ減衰力が得られる。
【0157】
図14、図15においては、圧電体56に一定の電圧を印可した例について説明したが、実施例1と同様に、圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)ことも可能である。
すなわち、図13(a)に示す制御部22で圧電体56に印可する電圧を調整する(変化させる)ことで圧電体56の伸長量を調整することができる。
【0158】
このように、圧電体56の伸長量を調整することで圧電体56によるバルブ手段131への押圧力を変えることができる。
バルブ手段131への押圧力を変えることで、バルブ付勢ばね177の圧縮状態を変化させてバランス荷重Fb3(図14(a)参照)やバランス荷重Fb2(図15(a)参照)を変える(調整する)ことができる。
これにより、減衰力可変ダンパ120の伸縮で上下の流体通路126,128を開放する際に、上下の流体通路126,128を開放する荷重、すなわち上流体室31の作動油圧(液圧)を調整してダンパ減衰力を調整する(変える)ことができる。
【0159】
このように、圧電体56によるバルブ手段131への押圧力を変えることで減衰力を変えることができる。
よって、従来技術で説明したように、圧電体56によるバルブ手段131の移動量を必要以上に高精度に調整する必要がない。
バルブ手段131の高精度の調整を不要にできるので、バルブ手段131を移動する際に圧電体56に印可する電圧を精度よく制御する必要がない。
【0160】
これにより、圧電体56に印可する電圧を容易に制御することが可能になり、減衰力可変ダンパ120の減衰力を簡単な制御で変えることができる。
特に、一例として、圧電体56に印可する電圧と、電圧に応じて得られる減衰力との関係をマップ化し、この特性マップなどを用いることで減衰力の調整を一層簡単に制御することが可能である。
【0161】
以上説明したように、実施例2の減衰力可変ダンパ120によれば、実施例1の減衰力可変ダンパ10と同様に、減衰力を好適に変えることができるなどの効果を得ることができる。
【0162】
なお、本発明に係る減衰力可変ダンパは、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1,2では、減衰力可変ダンパ10,120の下流体室32にガス室33を隣接させた例について説明したが、これに限らないで、ガス室33に代えて空気室を設けることも可能である。
空気室には高圧空気が充填されている
【0163】
また、前記実施例2では、上下の流体通路126,128を二段に設けた例について説明したが、これに限らないで、三段などの他の複数段に形成することも可能である。
また、流体通路を一段に形成することも可能である。
【0164】
さらに、前記実施例2では、一対の上流体通路126を180°の間隔をおいて形成し、一対の下流体通路128を180°の間隔をおいて形成した例について説明したが、これに限らないで、上流体通路126や下流体通路128を120°などの他の間隔をおいて形成することも可能である。
【0165】
また、前記実施例1,2で示した減衰力可変ダンパ10,120、車両11、シリンダ12、ピストン組立体14、ピストンケース35,121、圧電体56、バルブ手段62,131、バルブ支持部材63、バルブ部材64,134、バルブ付勢ばね65,177、流体通路78、圧電/ベローズ連結部91、バルブ規制部101、上下の流体通路126,128、圧電/ベローズ連結部132、変位伝達手段133、バルブ付勢手段135、上規制部材162および下規制部材163などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、車両の懸架装置に用いられ、シリンダ内のピストンを摺動させることにより減衰力を可変可能な減衰力可変ダンパを備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0167】
10,120…減衰力可変ダンパ、11…車両、12…シリンダ、13…作動油(流体)、14…ピストン組立体、31…上流体室(第1流体室)、32…下流体室(第2流体室)、35,121…ピストンケース(ピストン)、56…圧電体、62,131…バルブ手段、63…バルブ支持部材、64,134…バルブ部材、65…バルブ付勢ばね(バルブ付勢手段)、78…流体通路、91…圧電/ベローズ連結部、101…バルブ規制部(規制部)、126…上流体通路(流体通路)、128…下流体通路(流体通路)、132…圧電/ベローズ連結部(バルブ支持部材)、133…変位伝達手段、135…バルブ付勢手段、162…上規制部材(規制部)、163…下規制部材(規制部)、177…バルブ付勢ばね。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の懸架装置に用いられて減衰力を変えることが可能な減衰力可変ダンパにおいて、
流体が充填されたシリンダと、
前記シリンダに摺動自在に収納されて前記シリンダを第1、第2の流体室に区画するとともに、前記第1、第2の流体室を連通させる流体通路を有するピストンと、
前記ピストンに設けられ、前記流体通路に向けて押圧することで前記流体通路を閉塞可能で、かつ、前記ピストンの摺動時に前記流体通路を開放可能なバルブ手段と、
前記バルブ手段に連結されるとともに前記第1、第2の流体室の一方から仕切られた状態に設けられ、印加される電圧に対応させて前記バルブ手段を前記流体通路に向けて押圧する力を変えることが可能な圧電体と、
を備え、
前記第1、第2の流体室の一方の液圧が低くなるように前記ピストンが摺動した際に、前記第1流体室の流体および前記第2流体室の流体の圧力差で、前記バルブ手段を前記流体通路から離間させて前記流体通路を開放可能とし、
前記第1、第2の流体室の一方の液圧が高くなるように前記ピストンが摺動した際に、高くなった液圧で前記バルブ手段を前記流体通路から離す方向に移動して前記流体通路を開放可能としたことを特徴とする減衰力可変ダンパ。
【請求項2】
前記バルブ手段は、
前記圧電体側に設けられたバルブ支持部材と、
前記バルブ支持部材に移動自在に支持され、前記流体通路を開閉可能なバルブ部材と、
前記バルブ部材を前記流体通路に向けて押圧することにより、前記バルブ部材で前記流体通路を閉塞可能なバルブ付勢手段と、
を備え、
前記バルブ支持部材は、
前記バルブ付勢手段の付勢力による前記バルブ部材の移動を規制する規制部を有することを特徴とする請求項1記載の減衰力可変ダンパ。
【請求項3】
前記バルブ手段は、
前記圧電体側に設けられ、前記圧電体の伸縮に対応して伸縮方向に変位可能なバルブ支持部材と、
前記バルブ支持部材の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達可能な変位伝達手段と、
前記変位伝達手段に移動自在に支持され、前記流体通路を開閉可能なバルブ部材と、
前記バルブ部材を前記流体通路に向けて押圧することにより、前記バルブ部材で前記流体通路を閉塞可能なバルブ付勢手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の減衰力可変ダンパ。
【請求項1】
車両の懸架装置に用いられて減衰力を変えることが可能な減衰力可変ダンパにおいて、
流体が充填されたシリンダと、
前記シリンダに摺動自在に収納されて前記シリンダを第1、第2の流体室に区画するとともに、前記第1、第2の流体室を連通させる流体通路を有するピストンと、
前記ピストンに設けられ、前記流体通路に向けて押圧することで前記流体通路を閉塞可能で、かつ、前記ピストンの摺動時に前記流体通路を開放可能なバルブ手段と、
前記バルブ手段に連結されるとともに前記第1、第2の流体室の一方から仕切られた状態に設けられ、印加される電圧に対応させて前記バルブ手段を前記流体通路に向けて押圧する力を変えることが可能な圧電体と、
を備え、
前記第1、第2の流体室の一方の液圧が低くなるように前記ピストンが摺動した際に、前記第1流体室の流体および前記第2流体室の流体の圧力差で、前記バルブ手段を前記流体通路から離間させて前記流体通路を開放可能とし、
前記第1、第2の流体室の一方の液圧が高くなるように前記ピストンが摺動した際に、高くなった液圧で前記バルブ手段を前記流体通路から離す方向に移動して前記流体通路を開放可能としたことを特徴とする減衰力可変ダンパ。
【請求項2】
前記バルブ手段は、
前記圧電体側に設けられたバルブ支持部材と、
前記バルブ支持部材に移動自在に支持され、前記流体通路を開閉可能なバルブ部材と、
前記バルブ部材を前記流体通路に向けて押圧することにより、前記バルブ部材で前記流体通路を閉塞可能なバルブ付勢手段と、
を備え、
前記バルブ支持部材は、
前記バルブ付勢手段の付勢力による前記バルブ部材の移動を規制する規制部を有することを特徴とする請求項1記載の減衰力可変ダンパ。
【請求項3】
前記バルブ手段は、
前記圧電体側に設けられ、前記圧電体の伸縮に対応して伸縮方向に変位可能なバルブ支持部材と、
前記バルブ支持部材の変位を変位方向に対して直交する方向に伝達可能な変位伝達手段と、
前記変位伝達手段に移動自在に支持され、前記流体通路を開閉可能なバルブ部材と、
前記バルブ部材を前記流体通路に向けて押圧することにより、前記バルブ部材で前記流体通路を閉塞可能なバルブ付勢手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の減衰力可変ダンパ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−24268(P2013−24268A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157298(P2011−157298)
【出願日】平成23年7月17日(2011.7.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月17日(2011.7.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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