説明

照明装置、照明方法、画像信号処理装置、画像信号処理方法及び画像投影装置

【課題】プロジェクタ等の照明装置において、光源からの光を液晶パネル上に所望の光強度分布で照射できるようにし、遮光する光を抑制して利用効率を向上する。
【解決手段】光源1と、光源1から射出される光を分割する分割部61と、分割部61において分割された光の進行方向、焦点距離の少なくともいずれかを可変とする光学手段62と、光学手段62に作用し、光の進行方向、焦点距離の少なくともいずれかを制御する光分布制御部63とを備える。光変調素子16上に照射する光を所望の強度分布にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光源からの光を光変調素子により変調してスクリーンなどに投影し、画像を表示するプロジェクタ等に用いる照明装置、照明方法、画像信号処理装置、画像信号処理方法及び画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタなどの画像投影装置は、液晶パネルやDMD(Digital Micromirror Device:登録商標)などの光変調素子を照明装置によって照射し、光変調素子からの透過光または反射光を投影レンズによってスクリーン上に投影する構成とされる。従来のプロジェクタの照明光学系においては、光源の光を液晶パネル等の光変調素子に均一に照射するインテグレータ光学系が利用されている。光源から射出される光にはもともと明るさのムラがあるため、このような光をそのまま液晶パネル等の光変調素子上に結合させると、明るさのムラがパネル上に反映され、投影される画像の明るさにもムラが生じてしまう。そのため、画像をムラのない均一な明るさで投影するために、光源からの光を均一な明るさとするインテグレータ光学系が用いられている。
【0003】
インテグレータ光学系としては、一般的には2枚のレンズアレイが用いられる。光源からの光は2枚のレンズアレイを通過した後、必要に応じて集束用のレンズや偏光変換素子等を介して、被照射体である液晶パネル等の光変調素子に、ほぼ均一な光分布をもって照射される。そして液晶パネル等の光変調素子を通過した光を投影光学系によってスクリーン等に投影することにより、スクリーン上の周辺部まで均一な明るさで画像を投影することができる。
【0004】
図15に、従来の画像投影装置におけるインテグレータ光学系とその周辺光学系の概略構成を示す。光源31の出射光路上に、第1レンズアレイ34、第2レンズアレイ35、集束レンズや偏光変換素子等の光学系36、液晶パネル等の光変調素子37が配置される。光源31から出射された光は、第1レンズアレイ34に入射して分割され、分割された光は第2レンズアレイ35に入射される。第2レンズアレイ35を通過した光は、それ以降に配置される光学系36を介してほぼ均一な分布をもって光変調素子37上に照射される。その結果、第1レンズアレイ34で分割された光が光変調素子37上で重ね合わされることにより、全体が均一な明るさになる。
【0005】
図16に、インテグレータ光学系を通る光と光変調素子表面における光の模式的な光強度分布を示す。例えば、第1レンズアレイ34の1番目のレンズ上の光の強度a1は、第2レンズアレイ35を通り、光変調素子37上に強度b1で照射される。同様に、第1レンズアレイ34の2番目のレンズ上の光の強度a2は、第2レンズアレイ35を通り、光変調素子37上に強度b2で照射される。このように、第1レンズアレイ34で分割された光を光変調素子37上に照射し、重ね合わせた結果、全体では強度b6となり、光変調素子37の端の部分までほぼ均一な明るさになる。
【0006】
特許文献1には、光源から射出される強度分布の不均一な光を、2枚のレンズアレイによって強度分布の均一な光に変換する技術が提案されている。特許文献1に開示の技術によれば、第2レンズアレイとして望ましい形状のレンズアレイを製造することにより、レンズ形状による光のムラを解消し、スクリーン等の投影面上で明るく均一な画像を形成することができる。
【特許文献1】特開2007−114263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようなインテグレータ光学系では、液晶パネル等の光変調素子上において均一な明るさで光を照射することは可能となるが、常に均一に照射するために、投影する画像の明るさに関わらず、同じ明るさで照射することになる。そのため、従来は、投影する画像が暗い場合は、物理的な手段や信号処理などの手段を用いて一部を遮光することにより明るさを制御していた。したがって、画像の暗い部分では光が不必要に照射され、光の利用効率が低くなってしまう。更にこの場合は、遮光されるロス分の光も照射されるので、液晶パネル等の光学部品において不必要に熱が発生し、熱による劣化が進んでしまうという問題もあった。
【0008】
また、図17に示すように、複数のプロジェクタ51及び52を並べてスクリーン40に画像を並列に投影し、よりワイドな画像を形成する場合がある。このとき、隣り合うプロジェクタ51、52によってスクリーン40上で重なって投影されるブレンディング部分41は、他の領域よりも光の強度が高くなる。図18に、このように複数のプロジェクタを並べて投影する場合の光強度分布の各例を示す。図18(a)で示すように、スクリーン40上にプロジェクタ51から投影される画像の光強度分布511と、プロジェクタ52から投影される画像の光強度分布512を重ねた光強度分布513は、ブレンディング部分514が他の領域より強くなる。そのため、従来は、図18(b)に示すように、それぞれのプロジェクタにおいて、ブレンディング部分の明るさを徐々に低減する光強度分布521、522とすることにより、合成した光強度分布523が均一になるようにしている。その結果、ブレンディング部分に対して光源からは光を出射しているにもかかわらず、遮光するなどして光の強度を調整しているために、その分の光が損失してしまうこととなる。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、光源からの光を目的とする光強度分布をもって被照射体上に照射し、光の利用効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光源と、光源から射出される光を分割する分割部と、分割部において分割された光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を可変とする光学手段を備える。更に、光学手段に作用し、光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を任意の状態に制御する光分布制御部を備えた構成とする。
【0011】
本発明は、光源から出射される光を分割し、分割された各光束を被照射体上の対応する領域に照射する。被照射体における一部の領域に対応する光束を、他の領域に向けて照射することにより、被照射体上で目的とする光分布となるように照射する。ここで光分布とは光強度分布を指し、以下の明細書において光分布とは光強度分布を意味する。
【0012】
また、本発明は、光源からの光を分割し、分割した光を合成することにより画像を投影するために、分割された光源からの光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方の変化量と、照射する光の明るさの分布情報とを定義した光分布データベースを設ける。更に、投影する画像の明暗部を判定する画像処理部と、判定された画像の明暗情報と光分布データベースの情報とを基に、分割された光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方の変化量を算出する変化量計算処理部と、算出された変化量に基づき、分割された光源からの光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を変化させる制御部とを備える。
【0013】
分割された光源からの光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を変化させることで、画像の明暗部に対応する光分布をもって光を合成し、画像を投影することができる。例えば、投影する画像の暗い部分や、複数のプロジェクタにより重なって投影されるブレンディング部分などに対して光源からの光の強度を弱くし、その分の光を他の明るい部分へ振り分けることが可能になる。したがって、本発明によれば、光源からの光を被照射体上に目的とする光強度分布をもって照射することができ、暗部に対応する光を遮光する必要がないか、または遮光する光量を抑制できるので、光の利用効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、光源からの光を目的とする光強度分布をもって被照射体上に照射することができ、暗部において遮光する量を抑制できるので、光を効率的に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図12を参照して説明する。
本実施の形態に係る照明装置を備える画像投影装置の概略構成例を図1に示す。この例においては、光変調素子として透過型の液晶パネルを用いる例を示す。光変調素子としては、その他反射型液晶パネルなどを用いることができる。図1に示すように、この画像投影装置50には、光源1と、分割部61として第1のレンズアレイ4と、光学手段62として可動型レンズアレイ等より成る第2のレンズアレイ5と、この第2のレンズアレイ5に作用して、第1のレンズアレイ4により分割された光の進行方向、焦点距離の少なくともいずれかを制御する光分布制御部63とを有する照明装置60が設けられる。この場合、図1に示すように、光源1の光出射側の光軸上に、コリメートレンズ2、第1のレンズアレイ4、第2のレンズアレイ5を配置し、更に偏光変換素子6、コンデンサレンズ7、第1のダイクロイックミラー8、第2のダイクロイックミラー9、レンズ13、ミラー11をこの順に配置する。一方、第1のダイクロイックミラー8の反射側にミラー10を配置し、ミラー10により例えば90°光路を変換された光軸上にフィールドレンズ15B及び光変調素子16B、この場合液晶パネルを配置する。第2のダイクロイックミラー9の反射側にも同様にフィールドレンズ15G及び液晶パネル等の光変調素子16Gを配置する。また、ミラー11の反射側にレンズ14を介してミラー12を配置し、このミラー12により光路を例えば90°変換された光軸上にフィールドレンズ15R、液晶パネル等の光変調素子16Rを配置する。
【0016】
ここで第1のダイクロイックミラー8は例えば赤色帯域及び緑色帯域の光を透過する構成とし、第2のダイクロイックミラー9は例えば赤色帯域の光を透過する構成とする。これにより、分岐された各光路において赤色帯域用、緑色帯域用及び青色帯域用の光変調素子16R、16G及び16Bとして、光変調部55を構成できる。また、各光変調素子16R、16G及び16Bの光出射側にクロスプリズム17を配置し、その光出射側に投影レンズ18を配置し、投影光学部22を構成する。
【0017】
本実施の形態では、光源1から出射した光を分割する分割部61として上述したように第1のレンズアレイ4を設け、分割された光の進行方向、焦点距離の少なくともいずれかを可変とする光学手段62として、可動型レンズアレイより成る第2のレンズアレイ5を設ける例を示す。可動型レンズアレイを用いる場合、第2のレンズアレイ5の各レンズの位置や傾きが第1のレンズアレイの各レンズ4の焦点位置から変化するので、合成焦点距離や偏心量が変化する。したがって、光の進行方向や出射角を可変とし、光分布を変化させることができる。
【0018】
第2のレンズアレイ5に設ける可動部としては、図示しないが例えば光軸に沿う方向と、光軸と直交する面内の2方向に可動とする3軸アクチュエータ等の駆動手段を用いることができる。またレンズを光軸から傾けるチルト駆動手段を設けてもよい。
【0019】
本例による画像投影装置50において、第2のレンズアレイ5のレンズを例えば均等に配列した場合は、従来と同様に、光源1から出射された光を第1のレンズアレイ4に入射して分割し、分割した光を更に第2のレンズアレイ5等を介して合成して、光変調素子16R、16G、16Bに照射することにより、均一な明るさで画像を投影することができる。
【0020】
一方、第2のレンズアレイ5のレンズ等を所定の配列とすることで、均一な明るさすなわち光強度分布ではなく、目的とする光強度分布をもって光変調素子16B、16G及び16Rを照射し、所望の光強度分布の画像を投影することができる。
【0021】
図2に、本例による光分布制御部63の構成例を表すブロック図を示す。図2を参照し、本例による光分布制御部63の構成について説明する。光分布制御部63は、光学手段5のこの場合各レンズを前後、左右に可動させることにより、そのレンズを通る光の進行方向などを制御する。
【0022】
光分布制御部63には、予め制御対象のレンズアレイやミラーアレイ、可変焦点レンズアレイ等の各レンズやミラーについて、レンズやミラー位置の変化量、可変焦点レンズにおいては焦点距離の変化量と、照射する光の明るさの分布、すなわち強度分布とを定義した光分布データベース24を備える。光分布制御部63は、投影する画像情報30を入力し、画像の明暗部を判定する画像処理部21と、画像処理部21により判定した明暗情報すなわち輝度情報と、光分布データベース24の情報を基に、レンズを通過する光の進行方向、焦点距離の少なくともいずれかの変化量を算出する変化量計算処理部22とを備える。そして、変化量計算処理部22により算出された変化量に従い、第2のレンズアレイ5の各レンズの位置を移動させる制御部23を備える。ここで、光分布データベース24は、例えば、レンズ位置を前後、左右に移動させる場合や光軸に対し傾ける場合の最小変化量から最大変化量までの間で、可動最小単位毎に変化させた場合の各レンズ等に対応する進行方向及び焦点距離の変化量と、それらを変化させた場合に照射される光の強度分布のデータをデータベースとして定義したものである。
【0023】
光分布制御部63は、上記のように構成し、投影する画像に対応してレンズアレイ等より成る光学手段62の例えば各レンズを可動し、レンズを通過する光の進行方向及び焦点距離を変化させることにより液晶パネル上に照射する光の強度分布を変えることができる。照射する光の光強度分布を制御することによって、スクリーン等の被照射体体上において目的とする輝度分布の画像が得られる。また、光分布制御部63は、投影する画像が動画像の場合は、一定時間周期で上記制御処理を繰り返し、投影する画像の状態に応じて液晶パネル上に照射する光の強度が最適な状態になるように制御することができる。
【0024】
図3に、本例による照明装置におけるレンズアレイの可動状態の例を表す概念図を、図4に光の強度分布の例を示す。図3は、可動レンズアレイより成る光学手段を可動させた場合の光分布の例を示している。このように、光分布制御部63による制御の結果、光学手段62の例えばレンズ位置を変更することにより、各レンズを通過する光の進行方向、出射角を任意に変更することができる。例えば図4に示すように、第1レンズアレイ4の1番目のレンズ上の光の強度A1は、第2レンズアレイ5を通り、光変調素子16上に強度B1で照射される。同様に、第1レンズアレイ4の2番目以降のレンズ上の光の強度A2〜A5は、第2レンズアレイ5を通り、光変調素子16上に強度B2〜B5で照射される。このように、第1レンズアレイ4で分割され、第2のレンズアレイ5により進行方向、出射角を変化させた光を光変調素子16上に照射し、重ね合わせた結果、全体では強度B6となる。このとき光変調素子16上において、光強度は均一ではなく、所望の分布とすることができ、投影する画像の明暗に応じて光の強度を調整できる。なお、図3においては一部の光線が光変調素子16の外部に向かっているが、この分の光量はレンズの移動量や傾き等によって調整可能である。このように調整することにより、画像の暗い部分に対して光源1から射出された光を単に遮光するのではなく、他の領域に振り分けて照射することができ、画像全体で有効に活用することが可能となる。また、輝度分布が複雑なパターンの画像を形成する場合は、液晶パネル等の光変調素子においてより細かい輝度レベルの調整のみを行えばよく、その場合においても、単に遮光する場合と比べて、光の利用効率を高めることができる。
【0025】
図5に、本例による光分布制御部63の制御処理例を表すフローチャートを示す。図5を参照し、光分布制御部63の制御処理の内容について説明する。まず、投影対象の画像情報を入力し、入力した画像情報を画像処理部21により分析し、画面上の明暗部を判定して画像の輝度分布を作成する(ステップS501)。次に、複数の画像投影装置を並べて投影する場合に、画像が重なって投影されるブレンディング部分に関する処理を行う(ステップS502)。ブレンディング処理の内容は、図6に示す。次に、変化量計算処理部22により、画像の輝度分布と光分布データベース24を参照し、レンズアレイの各レンズの焦点距離及び進行方向の変化量を算出する(ステップS503)。ここで、ブレンディング部分がある場合は、図6に示すブレンディング処理の結果、変更された画像の輝度分布を基に変化量を算出する。そして、制御部23により、算出した変化量を基に各レンズの位置を移動する(ステップS504)。最後に、動画などのように、次の画像が連続して存在するかを判定し(ステップS505)、次の画像がある場合はステップS501へ戻り処理を繰り返す。判定の結果、次の画像がない場合は、処理を終了する。
【0026】
次に、図6を参照し、ブレンディング処理の処理例について説明する。まず、入力した投影対象の画像情報から、他の画像投影装置と重ねて投影するブレンディング部分があるかを判定する(ステップS601)。判定の結果、ブレンディング部分がある場合は、上記処理のステップS501で作成した輝度分布のうち、重畳開始端から画像端までの輝度分布を滑らかに輝度が減少するような輝度分布に変更し(ステップS602)、元の処理に戻る。ステップS601の判定の結果、ブレンディング部分がない場合は、輝度分布を変更せずに、元の処理に戻る。なお、ブレンディングのみを行う場合は、ステップS501において例えば画像情報からではなく、均一な光分布から輝度分布を作成すればよい。
【0027】
上記処理により、投影する画像の明暗に従い、液晶パネル等の光変調素子へ照射する光の輝度を変更することができる。また、複数の画像投影装置を並べて投影するような場合において、各画像投影装置におけるブレンディング部分の輝度を落とし、その分の光量を他の領域に振り分けて、所望の光分布をもって投影させることが可能になる。
【0028】
なお、本例では、光源1から出射した光の焦点距離、進行方向を可変とする光学手段として第2レンズアレイ5のレンズを可動させるように構成したが、第1レンズアレイ4のレンズを可動させるように構成してもよい。
【0029】
また、第1レンズアレイ4及び第2レンズアレイ5の双方を連動して可動させるように構成してもよく、この場合、分割部61においても光学手段62の機能をもたせる構成となる。分割部61及び光学手段62として第1及び第2の可動型レンズアレイより構成することによって、より効率よく分割された光の進行方向や合成焦点距離を変化させ、目的とする光分布をもって照明することができる。
【0030】
また、光の進行方向や焦点距離を可変とする光学手段の他の実施形態として、レンズアレイを構成するレンズに可変焦点レンズを用いることもできる。具体的には、レンズ自体を移動させることなく電気的な制御信号により焦点距離や偏向方向を変化させることができる液晶レンズやエレクトロウエッティング現象を利用した液体レンズなどがある。これらの可変焦点レンズを例えばマトリクス状に複数配列した可変焦点型レンズアレイを配置して、光学手段を構成してもよい。この場合においても、光の進行方向、焦点距離の少なくともいずれかを変化させることによって、出射光の強度分布を変化させることができる。
【0031】
更に、他の光学手段として、可動型ミラーアレイを用いることもできる。例えば図1に示す例の場合、第2レンズアレイ5の代わりに、第1のレンズアレイ4で分割されたそれぞれの光に対応して、個々に反射方向を変化させ、その変化量を制御できるミラーを配列したミラーアレイを設ける構成としてもよい。具体的には、DMD(登録商標)等のMEMS(Micro-Electrical Machine System、微小電気機械素子)型のミラーがマトリクス状に配列された可動型ミラーアレイを用いることができる。この可動型ミラーアレイによって光源からの光を反射し、光の進行方向を変化させて、液晶パネル等の光変調素子上に照射して合成するように構成することができる。MEMS型のミラーは、微小可動ミラーがマトリクス状に配置されて半導体光スイッチ等として利用されており、各微小ミラーは電気信号により傾きを高速に制御することができ、可動型レンズアレイと同様に、入射された光の進行方向を画像信号等に対応して高速に制御することができる。
【0032】
図7に、本例の他の実施形態の例として、第2のレンズアレイの代わりにミラーアレイを設けて構成した場合のミラーの可動状態の例を示す。図7に示す例では、光源1から出射した光を第1のレンズアレイ4で分割し、分割した光をミラーアレイ5Aの各ミラーで反射する。反射した光は、液晶パネル等の光変調素子16上に照射して合成される。ここで、ミラーアレイ5Aのミラーを前後左右に移動または回転させることにより、反射光を均一な強度ではなく、任意の強度分布にすることができる。
【0033】
また、この場合においても、第1のレンズアレイ4を可動型レンズアレイや可変焦点型レンズアレイとしてもよい。その場合は、より効率よく分割された光の進行方向や合成焦点距離を変化させることができるので、光分布をよりダイナミックに変更することが可能となる。
【0034】
次に、本実施の形態における光の輝度分布の各例を、光学設計プログラムCODE V(登録商標)により解析した結果を示す。各例共に、第1及び第2のレンズアレイ4及び5は、縦及び横方向にそれぞれ5枚ずつ、合計25枚のレンズを配列した構成とし、各レンズの直径を4mm、焦点距離を5mmとした状態でシミュレーションを行った。
【0035】
図8(a)に、第1レンズアレイ4及び第2レンズアレイ5の各レンズを均等に配列した場合のレンズの配置例と光源から照射される光の光線の例を示し、図8(b)に、その場合の光変調素子16上に照射される光の輝度分布の例を示す。図8は、従来技術による固定された2枚のレンズアレイを用いる場合と同様の状態の例を示しており、光変調素子上の明るさはほぼ均一になっている。
【0036】
次に、図9(a)に、第2レンズアレイ5の各レンズを移動した場合のレンズの配置の例と光源から照射される光の光線の例を示し、図9(b)に、その場合の液晶パネル等の光変調素子上に照射される光の輝度分布の例を示す。図9(b)の輝度分布は、レンズアレイの配置を移動したため不均一な輝度分布となり、液晶パネルの中心よりずれた位置(図中下側)に明るさの中心が偏り、その他の部分が暗くなっている。このように、レンズアレイを可動とすることによって、特定の範囲のみを明るくし、他の部分を暗くすることができる。
【0037】
図10(a)に、第1のレンズアレイ4及び第2のレンズアレイ5をともに可動とした場合のレンズの配置の例と光源から照射される光の光線の例を示し、図10(b)に、その場合の光変調素子上に照射される光の輝度分布の例を示す。第2のレンズアレイ5のみを移動した場合と同様に、液晶パネルの下部がより明るくなっている。またこの例では輝度の高い領域が一箇所に集中せず、明るい部分の偏りがより広範囲になっている。輝度分布としては、その他図11及び図12に他の例を示すように、種々の分布とすることが可能である。図11においては全体的に比較的暗く、1箇所のみが明るい例、図12においては液晶パネルの下部が比較的明るく、上部を暗くする例を示す。
【0038】
本発明においては、これら各例に示すように、輝度の異なる領域毎に光の配分を行い、比較的明るい領域に集中的に光を照射するようにすることによって、全体の明るさは一定のままに保持しつつ、所望の光分布をもって照射することが可能となる。これにより、光の利用効率を向上することができる。
【0039】
次に、複数のプロジェクタを並べて部分的に重ね合わせて投影し、大画面を構成する場合の輝度分布の例について説明する。図13に、各画像投影装置の輝度が均一な状態のまま重ね合わせた場合の、個々の画像投影装置の輝度分布71、72と、それらを重ね合わせて投影した画像の輝度分布73の例を示す。このように、従来は、重ね合わせたブレンディング部分が高輝度になるため、図17及び図18で述べたように、それぞれの画像投影装置においてブレンディング部分で一部の光を遮光することにより明るさを低減させて、全体の明るさが均一になるように処理していた。
【0040】
これに対し、本例による画像投影装置を適用した場合の例を図14に示す。図14においては個々の画像投影装置の輝度分布81及び82と、それらを重ね合わせて投影した画像の輝度分布83の例を示す。本例では、個々の画像投影装置の輝度を不均一にして照射し、重ね合わせることによって、画像全体の輝度が均一になるように処理している。具体的には、ブレンディング部分の明るさを他の重ならない部分に割り当てるように処理することで、個々の輝度分布においては、ブレンディング部分が暗く、他の部分が明るくなる。その結果、重ね合わせて投影した画像の領域全体を均一な明るさで投影することができると共に、光の利用効率を高めるので、従来の画像より明るくすることができる。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、従来のインテグレータ光学系に替えて、光分布を可変とする光学手段とその可変量を制御する光分布制御部とを設けることによって、従来は輝度の低い部分に照射するため遮光されていた光を有効に利用することができる。これにより、画像全体の明るさを高めることができるので、コントラストの向上を図ることができる。
【0042】
更に、本発明によれば、複数の画像投影装置を並べて投影する場合において、従来遮光していたブレンディング部分への光を他の領域へ振り分けて照射することができるので、全体の画像の明るさを高め、同様にコントラストの向上を図ることができる。またこのように複数の画像投影装置を並べて投影する場合においても、液晶パネル等の光変調素子を均一な明るさにするだけでなく、投影される画像全体の中で、画像信号に合わせて部分的に不均一な輝度分布となるように、光分布を制御することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態による概略構成例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態による光分布制御部の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるレンズアレイの可動状態の例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態による光の強度分布例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態による可動制御処理例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態によるブレンディング処理例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施の形態によるミラーアレイの可動状態の例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態による光線及び輝度分布例を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態による輝度分布例を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施の形態による輝度分布例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態による輝度分布例(1)を示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態による輝度分布例(2)を示す説明図である。
【図13】従来技術によるブレンディング例を示す説明図である。
【図14】本発明の一実施の形態によるブレンディング例を示す説明図である。
【図15】従来技術によるインテグレータ光学系の構成例を示す模式図である。
【図16】従来技術によるインテグレータ光学系の光の強度分布例を示す説明図である。
【図17】従来技術による投影例を示す説明図である。
【図18】従来技術によるブレンディング部分の光の強度を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1…光源、2…コリメートレンズ、4…第1のレンズアレイ、5…第2のレンズアレイ、5A…ミラーアレイ、6…偏光変換素子、7…コンデンサレンズ、8…第1のダイクロイックミラー、9…第2のダイクロイックミラー、10、11、12…ミラー、13、14…レンズ、15R、15G、15B…フィールドレンズ、16、16R、16G、16B…光変調素子、17…クロスプリズム、18…投影レンズ、21…画像処理部、22…変化量計算処理部、23…制御部、24…光分布データベース、30…画像情報、40…スクリーン、41…ブレンディング部分、50、51、52…画像投影装置、55…光変調部、56…投影光学部、60…照明装置、61…分割部、62…光学手段、63…光分布制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出される光を分割する分割部と、
前記分割部において分割された光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を可変とする光学手段と、
前記光学手段に作用し、光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を制御する光分布制御部とを備えることを特徴とする
照明装置。
【請求項2】
請求項1記載の照明装置において、
前記分割部の機能を備える光学手段を有することを特徴とする
照明装置。
【請求項3】
請求項1記載の照明装置において、
前記光学手段は、可動型レンズアレイであることを特徴とする
照明装置。
【請求項4】
請求項1記載の照明装置において、
前記光学手段は、可動型ミラーアレイであることを特徴とする
照明装置。
【請求項5】
請求項1記載の照明装置において、
前記光学手段は、可変焦点型レンズアレイであることを特徴とする
照明装置。
【請求項6】
光源から出射される光を分割し、分割された各光束を被照射体上の対応する領域に照射する照射方法であって、
前記被照射体における一部の領域に対応する前記光束を、他の領域に向けて照射することにより、前記被照射体上で目的とする光分布となるように照射することを特徴とする
照射方法。
【請求項7】
分割された光源からの光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方の変化量と、照射する光の明るさの分布情報とを定義した光分布データベースと、
投影する画像の明暗部を判定する画像処理部と、
前記画像処理部により判定された画像の明暗情報と、前記光分布データベースの情報とを基に、分割された光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方の変化量を算出する変化量計算処理部と、
前記変化量計算処理部により算出された変化量に基づき、分割された光源からの光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を変化させる制御部とを備えることを特徴とする
画像信号処理装置。
【請求項8】
光源からの光を分割し、
分割された光源からの光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方の変化量と、照射する光の明るさの分布情報とを定義した光分布データベースを設け、
投影する画像の明暗部を判定し、
判定された画像の明暗情報と、前記光分布データベースの情報とを基に、分割された光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方の変化量を算出し、
算出された変化量に基づいて、分割された光源からの光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を変化させて合成することを特徴とする
画像信号処理方法。
【請求項9】
光源と、
前記光源から射出される光を分割する分割部と、
前記分割部において分割された光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を可変とする光学手段と、
前記光学手段に作用し、光の進行方向又は焦点距離の少なくとも一方を制御する光分布制御部と、
前記光学手段から出射される光が合成されて照射され、画像情報に対応して変調する光変調部と、
前記光変調部において変調された光を投影する投影光学部とを備えることを特徴とする
画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−186923(P2009−186923A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29363(P2008−29363)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】