説明

熱源機

【課題】流量センサや温度センサの検知誤差の影響を解消又は小さくした精度の高い他栓使用判定を実施できる熱源機を提供する。
【解決手段】熱交換器と、熱交換器の上流側に位置する入水管と、熱交換器の下流側に位置する出湯管とを有し、前記出湯管は少なくとも一般給湯管と風呂自動落とし込み管とに分岐し、風呂の自動落とし込みと一般給湯栓への湯水の供給とを実施可能な熱源機にて他栓使用判定を行う。このとき熱源機は、入水管及び出湯管、並びに風呂自動落とし込み管を流れる湯水の温度、流量、熱量を取得又は演算し、出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量の比率を演算する。そして出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを演算された熱量の比率に基づいて補正し、補正した熱量の値に基づいて他栓使用判定で使用する値を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一般給湯と風呂自動落とし込みとを実施可能な熱源機において、風呂自動落とし込みの実施時に他の給湯栓が使用されたか否かを判別する他栓使用判定機能を有する熱源機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部から供給された湯水を適宜加熱して一般給湯と風呂の自動落とし込みの両方に使用する熱源機が広く一般に知られている。これらの熱源機では、風呂の自動落とし込みの途中で一般給湯の要求があったとき、一般給湯で要求される温度に応じて燃焼機の燃焼量や湯水の流量を調整するといった制御が一般的に行われている。そのため、このような熱源機では、風呂自動落とし込みの実施時に他の給湯栓が使用されたか否かを判別する他栓使用判定を行っている。
【0003】
他栓使用判定を行う方法として、湯水を加熱する熱交換器の上流側と風呂落とし込み管とにそれぞれ設けた流量センサを使用し、熱交換器に流入する湯水の流量と風呂落とし込みに使用する湯水の流量とを比較する方法が知られている。即ち、熱交換器に流入する湯水の流量と風呂落とし込みに使用する湯水の流量とを比較し、風呂落とし込みに使用する湯水の流量が熱交換器に流入する湯水の流量に対して少なくなっていれば、他栓で湯水が使用されていると判断するという方法である。
しかしながらこの方法では、熱交換器の上流側に設けた流量センサよりさらに上流側にバイパス管を設けた構成の場合に、単純に実施できないという問題があった。つまりこのようなバイパス管を設けた構成の場合、熱交換器に流入した流量とバイパス管を通過した流量とを足し合わせた流量が風呂の自動落とし込みや一般給湯に使用される。したがって、熱交換器に流入した流量と風呂落とし込みに使用する湯水の流量とを単純に比較しても、正確な他栓使用判定を実施できないという問題である。
【0004】
そこで本件出願人は、この問題を解消する方法として、特許文献1に開示されている他栓使用判定方法を提案した。特許文献1に開示されている他栓使用判定方法は、熱交換器の出湯の熱量と風呂自動落とし込み流の熱量とを比較し、熱交換器の出湯の熱量が風呂自動落とし込み流の熱量に対して大であれば、他栓で湯水が使用されていると判断するという方法である。この方法によれば、上記のようなバイパス管を設けた構成の場合であっても、専用の流量センサや他栓使用の有無を直接検出する水流スイッチ等を追加して設けることなく、他栓使用判定を実施することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2522129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、流量センサや温度センサの検知誤差が他栓使用判定の結果に影響を与えてしまうおそれがあった。即ち、流量センサや温度センサには構造上発生してしまう誤差が存在し、流量又は温度に誤差がある状態でこれらの値から熱量を計算すると、算出された熱量の値の精度が低くなる。そして、精度の低い熱量の値を基準に他栓使用判定を行うことで誤判定してしまうという問題がおこる可能性があった。
なお、他栓使用判定で誤判定してしまうと、風呂に落とし込む湯水や給湯栓から供給される湯水を要求される温度とすることが出来なくなる。そのため、この問題は熱源機を提供する上での重大な問題となるおそれがある。
【0007】
ところで熱源機には、太陽熱温水機等の外部に設けた機器により加熱した湯水を給湯器に供給するものがある。即ち、予め加熱した湯水を給湯器内に供給し、給湯器側では供給された湯水を必要に応じて加熱する熱源機である。このような熱源機では、給湯器に供給された湯水を熱交換器で加熱する場合と、熱交換器で加熱しない場合とがある。
【0008】
そして特許文献1に開示されている他栓使用判定方法では、このような熱交換器で湯水を加熱しない場合に単純に実施できないという問題があった。即ち、特許文献1に開示されている他栓使用判定方法は、熱交換器の出湯の熱量と風呂自動落とし込み流の熱量とを比較するとき、熱交換器によって湯水に与えられた熱量を熱交換器の出湯の熱量として演算する。しかしながら、湯水を熱交換器で加熱しない場合、つまり熱交換器が燃焼動作を行わない場合において、熱交換器で湯水に与えられる熱量は0(ゼロ)となってしまう。そのため、特許文献1に開示されている他栓使用判定方法を単純に実施すると熱交換器の出湯の熱量と風呂自動落とし込み流の熱量を比較できない。
【0009】
そこで本発明は上記した従来技術の問題点に注目し、流量センサや温度センサで検知した値に誤差があっても、その誤差の影響を受けない状態、又は誤差の影響を極めて小さくした状態で正確な他栓使用判定を実施できる熱源機を提供することを課題とするものである。
またさらに、熱交換器によって湯水を加熱しない場合であっても、他栓使用判定を実施することができる汎用性の高い熱源機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、熱交換器と、熱交換器の上流側に位置する入水管と、熱交換器の下流側に位置する出湯管とを有し、前記出湯管は少なくとも一般給湯管と風呂自動落とし込み管とに分岐し、一般給湯と風呂自動落とし込みとを実施可能であると共に風呂自動落とし込み時に一般給湯の使用の有無を判定する他栓使用判定が実施可能な熱源機であって、前記入水管及び出湯管、並びに風呂自動落とし込み管を流れる湯水の温度、流量、熱量を取得又は演算可能であると共に、出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量の比率を演算可能であり、出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを演算された熱量の比率に基づいて補正し、補正した熱量の値によって他栓使用判定を実施することを特徴とする熱源機である。
【0011】
本発明の熱源機は、基準となる条件下で出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水との熱量の比率を演算し、演算した比率によって出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを補正する。
このことにより、温度センサ並びに流量センサで取得した値のいずれか又は両方に誤差があり、それらの値を基に演算した熱量の値の精度が低い場合であっても、湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水との熱量の比率を高い精度で取得することできる。つまり、当該熱量の比率と当該熱量の比率に基づいて演算されるさまざまな値とを高い精度で取得することができる。よって本発明の熱源機は、精度の高い値に基づいて他栓使用判定を実施可能であり、温度センサや流量センサで誤差が発生する場合であっても精度の高い他栓使用判定が可能となる。このことにつき、以下で具体的に説明する。
【0012】
出湯管を流れる湯水の流量又は温度と、風呂自動落とし込み管を流れる湯水の流量又は温度のいずれか又は全ての値が変化することにより、出湯管を流れる湯水の熱量(以下出湯熱量)と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量(以下落とし込み熱量)の比率が多様に変化する場合について考える。ここで、温度センサや流量センサで検出した値から算出する出湯熱量及び落とし込み熱量の誤差は、いずれも熱量が大きくなれば誤差が大きくなり熱量が小さくなれば誤差も小さくなる。即ち、それぞれの熱量の値に対する誤差の値は一定の割合となる。
本発明の熱源機では、このような熱源機の性質に鑑み、出湯熱量と落とし込み熱量の比率が所定の割合となることが予測される条件下において、出湯熱量と落とし込み熱量の比率を演算する構成とした。そして、予測される所定の割合と実際に算出された熱量の比率から、実際に算出された熱量の比率を予測される所定の割合に補正するための補正値を取得する制御を行うものとした。この補正値は、出湯熱量の値と落とし込み熱量の値のいずれか一方に対する他方の割合を補正する値であるため、出湯熱量と落とし込み熱量とが増減しても同じ補正値で出湯熱量と落とし込み熱量の比率を補正することができる。
このことにより、本発明の熱源機では、出湯熱量と落とし込み熱量がどのように変化しても、これらの熱量の比率を常に高い精度で演算することができる。そして、これらの熱量の比率に基づいて他栓使用判定で使用する値(例えば、一般給湯管を流れる湯水の流量)を算出することで、他栓使用判定で使用する値を高い精度で演算することができる。よって本発明の熱源機は、高精度な値に基づいた精度の高い他栓使用判定を実施できる。
ところで本発明は、入水管に流量センサを備えており、入水管の流量センサの上流側と出湯管とがバイパス管によって接続された熱源機を想定して開発されている。そしてそのような熱源機で、本発明の特徴的構成たる他栓使用判定を実施することにより、新たに流量センサ等を設けずに他栓使用判定を実施できるという効果がある。しかしながら本発明の熱源機は、入水管と出湯管とをバイパス管で接続する構成に限らない。即ち、本発明の熱源機はバイパス管を設けない構成であってもよい。このような構成においても、従来の他栓使用判定に比べて精度の高い他栓使用判定を実施することができるという効果がある。
【0013】
請求項2に記載の発明は、他栓不使用時において出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水との熱量の比率を演算し、出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを演算された熱量の比率に基づいて補正し、補正した熱量の値によって他栓使用判定を実施することを特徴とする請求項1に記載の熱源機である。
【0014】
本発明の熱源機では、出湯熱量がそのまま落とし込み熱量として使用される状況下において、出湯熱量と落とし込み熱量の比率を演算する。このとき、熱量の値の演算誤差や配管等への放熱ロスが無いと仮定すると、熱量の比率は1対1となることが予測される。このような熱量の比率が1対1となることが予測される状況下で、出湯熱量と落とし込み熱量の比率を演算することで、演算された熱量の比率をそのまま補正値とすることができる。具体的に説明すると、出湯熱量と落とし込み熱量が誤差等により異なる値であった場合、出湯熱量と落とし込み熱量のいずれか一方に対する他方の割合によって、出湯熱量又は落とし込み熱量の一方を他方の値と同じ値に補正することができる。つまり、熱量の比率を1対1に補正することができる。そして上記したように、出湯熱量の誤差と落とし込み熱量の誤差はそれぞれ算出される出湯熱量の値と落とし込み熱量の値に一定の割合で含まれる。そのため、算出される出湯熱量と落とし込み熱量の比率が変化しても、他栓不使用時(熱量の比率が1対1となることが予測される状態)における出湯熱量と落とし込み熱量のいずれか一方に対する他方の割合によって、これら熱量の比を補正することができる。即ち、熱源機の動作時において、他栓不使用時において出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水との熱量の比率を演算して取得することにより、出湯熱量と落とし込み熱量の比率が変化しても常に精度の高い出湯熱量と落とし込み熱量の比率を算出することができる。
ところで出湯熱量と落とし込み熱量が同じ値であった場合(誤差が発生しなかった場合)、出湯熱量と落とし込み熱量のいずれか一方に対する他方の割合はいずれも1となる。つまり、この割合で熱量の比率を補正しても実質的な補正にはならず、正確な値が必要のない補正により精度の低い値になるということはない。したがって、出湯熱量と落とし込み熱量が異なる値であった場合(誤差が発生した場合)と同様に精度の高い熱量の比率を取得できる。
なお、出湯熱量と落とし込み熱量のいずれか一方に対する他方の割合はいずれも1の場合は補正を行っても良く、行わなくても良いということは当然である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記入水管と出湯管とがバイパス管によって接続され、外部から入水管を通って供給される湯水が熱交換器内を通過して出湯管へと出湯されるとき、熱交換器を通過した湯水とバイパス管を通過した湯水との混合が可能であり、熱交換器の非燃焼動作時において、前記バイパス管を流れる湯水の流量を固定すると共に出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水との熱量の比率の演算し、出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを演算された熱量の比率に基づいて補正し、補正した熱量の値によって他栓使用判定を実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱源機である。
【0016】
本発明の熱源機は、熱交換器の非燃焼動作時において、前記バイパス管を流れる湯水の流量を固定すると共に出湯熱量と落とし込み熱量の比率を演算する。このことにより、外部で加熱された湯水を使用する場合においても、出湯熱量と落とし込み熱量の比率を高い精度で演算できる。以下具体的に説明する。
【0017】
熱交換器の非燃焼動作時とは、例えば、低温の湯水に変わって熱源機の外部で加熱した湯水を熱源機内に供給して風呂の自動落とし込みや一般給湯に供する場合等が想定される。ここで、太陽熱温水器等の外部の機器で加熱した湯水を熱源機内へ流入し、燃焼動作を行わない熱交換器を通過させた後で風呂の落とし込みや一般給湯に供する場合について考える。このとき、熱交換器の上流側で熱交換器側とバイパス管とに分岐した湯水は、熱交換器の下流側で合流し、風呂の落とし込みや一般給湯に供される。
このような場合、演算誤差及び配管等への放熱ロスが無いものと仮定すると、熱源機に供給された直後の湯水と熱交換器を通過した直後の湯水とで温度が変化しない。また、熱交換器を通過した湯水とバイパス管を通過した湯水が混合されるとき、混合される前後で温度が変化しない。したがって、熱交換器で湯水を加熱する(熱交換器が燃焼動作する)場合、即ち、熱交換器から出湯された高温の湯水にバイパス管を通過した低温の湯水を混合する場合とは異なり、出湯管と風呂落とし込み管を流れる湯水の温度と流量、並びに加熱前の湯水の温度といった情報から各管を流れる湯水の熱量の比率を単純に算出できない。
【0018】
ここで本発明では、バイパス管を流れる湯水の流量を固定する。即ち、熱交換器を通過する湯水とバイパス管を通過する湯水の比率を固定する。
このようにすることで、熱交換器を通過する湯水と風呂自動落とし込み及び一般給湯で使用される湯水との流量の比率が定まる。そして本発明では、風呂自動落とし込みで使用される流量と一般給湯で使用される流量の比が判明している条件下(例えば他栓不使用時)において、出湯熱量と落とし込み熱量を演算し、さらにこれら熱量の比率を演算する。
ここで、熱交換器を通過する湯水と風呂自動落とし込み及び一般給湯で使用される湯水との流量の比率と、風呂自動落とし込みで使用される流量と一般給湯で使用される流量との比率から、熱交換器を通過する湯水と風呂自動落とし込みで使用される湯水の流量の比率が定まる。
また、出湯管を流れる湯水と風呂落とし込み管を流れる湯水はその温度が同じ(誤差がない場合同じ)であることから、出湯熱量と落とし込み熱量の比率は、熱交換器を通過する湯水と風呂自動落とし込みで使用される湯水の流量の比率と同じとなることが予測される。したがって、これら熱量の比率と流量の比率の差異があった場合、出湯熱量と落とし込み熱量のいずれか一方に対する他方の割合を補正し、熱量の比率と流量の比率とを同じ値にするための補正値が算出できる。また、算出した熱量の比率に誤差が無い場合(熱量の比率と流量の比率が同じ場合)、この補正値は1となる。
なお、出湯熱量と落とし込み熱量の比率を演算するとき、前記した加熱前の湯水の温度(熱源機に流入した直後の湯水の温度)には仮の値を代入して演算するものとする。
【0019】
請求項4に記載の発明は、出湯管を流れる湯水の熱量の積算値と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量の積算値との比率を演算し、出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを演算された熱量の比率に基づいて補正し、補正した熱量の値によって他栓使用判定を実施することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱源機である。
【0020】
本発明の熱源機は、出湯管を流れる湯水の熱量の積算値と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量の積算値との比率を演算する。これにより、熱交換器の燃焼開始時等の出湯熱量が不安定な場合であっても、出湯熱量と落とし込み熱量の比率を高い精度で算出できる。
具体的に説明すると、熱源機ではバーナの燃焼が安定しない等の理由によって、熱交換器で燃焼を開始してから一定の時間が過ぎるまでの間、燃焼機から出湯された湯水の温度がバラついてしまう場合がある。このような状態では、ある特定の瞬間に取得した温度と、この特定の瞬間を含む一定の時間内の平均の温度とが大きく異なってしまう場合がある。したがって、ある特定の瞬間に取得した温度から演算した熱量もまた、一定の時間内の温度の平均値から算出した熱量と大きく異なってしまう場合がある。
本発明の熱源機では、出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の情報を所定の時間内に所定の回数だけ取得し、取得した情報に基づいて所定の時間内の所定の瞬間における出湯管を流れる湯水の熱量と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量とをそれぞれ算出することができる。そして、算出した出湯管を流れる湯水の熱量と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量とを別途積算し、それぞれの積算値の比率を演算することができる。そのことにより、算出された積算値による熱量の比率は、所定の時間内の温度の平均値や流量の平均値から算出した熱量の比率と近似する。つまり、積算値による熱量の比率を算出することで、熱交換器の燃焼開始時における温度バラツキによる誤差を解消又は低減することができる。したがって、本発明の熱源機は、熱交換器の燃焼開始時の出湯熱量が安定しない場合であっても、出湯熱量と落とし込み熱量の比率を高い精度で算出できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水との熱量の比率が変化しても、これらの熱量の比率を常に高い精度で取得することができる。そして、高精度の熱量の比率を演算に使用することで他栓使用判定の精度を高くできるという効果がある。
また、熱交換器の非燃焼動作時においても高精度な他栓使用判定を実施できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1乃至第3の実施形態に係る熱源機を示す作動原理図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の他栓使用判定の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態の他栓使用判定の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第3の実施形態の他栓使用判定の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る熱源機について詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0024】
本発明の第1の実施形態の熱源機1は、外部から供給される燃焼ガスを燃焼する燃焼装置2と、湯水を給湯栓61から出湯させる一般給湯運転を行う給湯系統3と、浴槽10の湯水を循環させて適宜加熱する追い焚き運転及び湯水の浴槽10への自動落とし込み運転を行う風呂系統4を備えている。
そして熱源機1はコントローラ5を備えており、コントローラ5が熱源機1の各部に動作指令を出すことにより、熱源機1が各種運転を実施する。
【0025】
燃焼装置2は、燃焼部22と、燃焼部22で燃焼して生成された燃焼ガスの熱エネルギーを回収して湯水を加熱する一次熱交換器23及び二次熱交換器24と、燃焼装置2に空気を供給する送風機28とを備えている。
なお、一次熱交換器23は主に顕熱を回収して湯水が加熱されるものであり、二次熱交換器24は一次熱交換器23より燃焼ガスの流れ方向下流側に位置し燃焼ガスに含まれる水蒸気の主に潜熱を回収して湯水が加熱されるものである。そして一次熱交換器には、給湯系統3側の湯水を加熱する給湯用熱交換部25と、風呂系統4側の湯水を加熱する風呂熱交換部26とが設けられている。
【0026】
給湯系統3は、入水管41と、出湯管44と、入水管41と出湯管44とをバイパスするバイパス管50とを備えている。
【0027】
入水管41は、図示しない給水源から供給される湯水を二次熱交換器24及び一次熱交換器23に流すための配管である。入水管41の中途には、入水流量センサ46と入水温度センサ47が設けられている。
なお、入水側流量センサ46及び入水温度センサ47は、入水管41におけるバイパス管50の接続部より湯水の流れ方向下流側に配置され、コントローラ5と電気的に接続されている。
【0028】
出湯管44は、湯水の流れ方向下流側で一般給湯管60と風呂自動落とし込み管70とに分岐している。そして、一般給湯管60及び風呂自動落とし込み管70に湯水を供給するものである。出湯管44の湯水の流れ方向上流側であって燃焼装置2の近傍には出湯温度センサ49が設けられている。
一般給湯管60は、燃焼装置2を通過した湯水をシャワーやカラン等の給湯栓61に供給するものである。
風呂自動落とし込み管70は、風呂系統4の風呂戻り管31と出湯管44とを接続するものである。そして風呂自動落とし込み管70には、上流側から風呂用流量センサ36、注湯電磁弁71、水位センサ73が設けられ、これらはコントローラ5と電気的に接続されている。
【0029】
風呂系統4は、浴槽10を含む循環流路を形成するものであり、浴槽10側から燃焼装置2の二次熱交換器23側に湯水を戻す風呂戻り管31と、二次熱交換器23側から浴槽10に湯水を送りだす風呂往き管32とを備えている。
浴槽10には、その壁面に循環アダプタ11が取付けられている。循環アダプタ11は浴槽10内外を連通するものであり、風呂戻り管31及び風呂往き管32が接続されている。
風呂戻り管31には、風呂用ポンプ34、水流スイッチ35、風呂用温度センサ37が設けられている。なお、水流スイッチ35と風呂用温度センサ37は、風呂戻り管31における風呂自動落とし込み管70の接続部より湯水の流れ方向下流側に配置され、コントローラ5と電気的に接続されている。
【0030】
コントローラ5は、マイクロコンピュータ(図示せず)が内蔵されており、熱源機1の各種センサが取得した情報を記憶、演算することが可能となっている。そしてコントローラ5は、リモコン(図示せず)等の指令や熱源機1の各種センサ等の情報に基づいて、熱源機1の各部に動作指令を出すものである。
【0031】
次に本実施形態の熱源機1の動作について説明する。
本実施形態の熱源機1は、図示しない給水源から湯水を供給されて使用するものである。このような給水源には常温の湯水を供給するものと、加熱した湯水を熱源機1に供給するものがある。常温の湯水が供給された場合、熱源機1は燃焼装置2の燃焼部22を動作させて湯水を昇温する燃焼動作を行う。それに対して、加熱された湯水が供給された場合、熱源機1は燃焼装置2の燃焼部22を動作させない非燃焼動作を行う。
非燃焼動作時では、基本的に、湯水は燃焼部22が動作しない状態の燃焼装置2を通過する。この場合、供給された湯水は燃焼装置2内をただ通過するのみであって昇温されることはない。
しかしながら加熱された湯水が熱源機1に供給される場合には、外部で加熱された湯水の温度が熱源機1の要求する温度より低い場合がある。この場合は、熱源機1は非燃焼動作を行わずに湯水を燃焼装置2でさらに加熱するものとする。
また、上記した加熱した湯水を供給する給水源には、例えば、公知の太陽熱温水機等が挙げられる。
【0032】
そして本実施形態の熱源機1は、風呂追い焚き運転、風呂自動落とし込み運転、給湯運転を実施可能となっている。各運転についてそれぞれ説明する。
【0033】
[風呂追い焚き運転]
図示しないリモコン等で風呂追い焚き運転が要求されると、風呂用ポンプ34が動作され、浴槽10内の湯水が燃焼装置2の風呂用熱交換部26に送られて昇温する。そして昇温された湯水は、風呂往き管32を経て浴槽10に戻される。
【0034】
[風呂自動落とし込み運転]
図示しないリモコン等で風呂自動落とし込み運転が要求されると、注湯電磁弁71が開いた状態となる。そして図示しない給水源から供給された湯水が入水管41を流れて燃焼装置2へ導入され、二次熱交換器24、一次熱交換器23の給湯用熱交換部25を経て出湯管44へ出湯する。なお、このとき燃焼動作時であれば、湯水は二次熱交換器24及び一次熱交換器23を通過すると共に昇温される。そして、出湯管44へ出湯した湯水はバイパス管50を通過した湯水と混合され、風呂自動落とし込み管70を介して風呂戻り管31に出湯され、浴槽10へと落とし込まれる。
【0035】
[給湯運転]
給湯栓61等が操作されて出湯要求があると、図示しない給水源から供給された湯水が入水管41を流れて燃焼装置2へ導入され、二次熱交換器24、一次熱交換器23の給湯用熱交換部25を経て出湯管44へ出湯する。なお、このとき燃焼動作時であれば、湯水は二次熱交換器24及び一次熱交換器23を通過すると共に昇温される。そして、出湯管44へ出湯した湯水はバイパス管50を通過した湯水と混合され、一般給湯管60へと出湯される。そして一般給湯管60から給湯栓61へと供給される。
【0036】
ここで、熱源機1が行う各運転には優先順位が設定されており、例えば、風呂自動落とし込み運転中に給湯栓61が開かれて給湯運転が要求された場合、熱源機1は風呂自動落とし込み運転を一次的に停止して給湯運転を実施する。
【0037】
換言すると本発明の熱源機1は、風呂自動落とし込み運転を実施している間、給湯栓61が使用されたか否かを判定する他栓使用判定を実施するものである。ここで本発明の特徴的な動作である他栓使用判定につき、燃焼動作時の場合と非燃焼動作時の場合についてそれぞれ説明する。
【0038】
まず燃焼動作時おける他栓使用判定について図2を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態の熱源機1では、風呂自動落とし込み運転を開始され注湯電磁弁71が開かれると(ステップ1)、燃焼装置2の燃焼部22が燃焼動作を開始する。ここで、本実施形態の他栓使用判定では、燃焼装置2の燃焼動作が安定するまで待機する(ステップ2)。なお、このとき待機する時間Y1は適宜設定してよく、例えば、熱源機1で使用する燃焼装置に合わせて2秒〜15秒の間のいずれかの値を設定してよい。
【0039】
燃焼装置2の燃焼動作が安定すると、コントローラ5が補正値X1を演算する(ステップ3)。ここで本実施形態の他栓使用判定では、他栓不使用時の情報に基づいて補正値X1の演算を実施する。即ち、本発明の他栓使用判定では、風呂自動落とし込み運転が開始された直後には他の給湯栓61の使用がないことを想定している。換言すると、ステップ3が終了するまでの間には風呂自動落とし込み運転のみが実施され、他の給湯栓61が使用されていないことを想定している。そして、その状態において各センサで情報を取得して補正値X1の演算を実施する。
なお他栓不使用時とは、熱源機1に供給された湯水が風呂の自動落とし込み運転のみに使用され、給湯栓61等で使用されない状態とする。
【0040】
熱源機1の補正値X1の具体的な演算方法は以下の通りである。
コントローラ5が、入水温度センサ47が取得した入水温度T1と、出湯温度センサ49が取得した出湯温度T2と、風呂用温度センサ37が取得した落とし込み温度T3と、入水流量センサ46が取得した缶体流量Q1と、風呂用流量センサ36が取得した落とし込み流量Q2から、缶体入熱量J1を下記式(1):
J1=Q1×(T2−T1) ・・・(1)
によって演算すると共に、注湯熱量J2を下記式(2):
J2=Q2×(T3−T1) ・・・(2)
によって演算する。
【0041】
そして、次に演算された缶体入熱量J1と注湯熱量J2から補正値X1を下記式(3):
X1=J1/J2 ・・・(3)
に基づいて演算する。
【0042】
次に、ステップ4に進んで他栓使用流量AQ1を演算する。
具体的には、ステップ3で演算された缶体入熱量J1、注湯熱量J2、補正値X1と、入水温度センサ47又は風呂用温度センサ37によってそれぞれ取得した落とし込み温度T3、入水温度T1から他栓使用流量AQ1を下記式(4):
AQ1=(J1−J2×X1)/(T3−T1) ・・・(4)
によって演算する。
【0043】
そして、算出された他栓使用流量AQ1と予め設定した閾値Zとを比較する(ステップ5)。ここで、閾値Zは任意の値に設定可能であり適時変更してよい。なお、本実施形態では閾値Zを3L/minとする。
【0044】
ステップ5で他栓使用流量AQ1が閾値Zと同じ又は閾値Zを上回っていれば、他栓(給湯栓61等)で湯水が使用されているものと判断し、風呂自動落とし込み運転中に給湯運転が要求されたものと判断する(ステップ6)。そして、ステップ7へと進み、注湯電磁弁71を閉じて風呂自動落とし込み運転を中断して、他栓使用判定を終了する。
なお、割り込んで実施した給湯運転が終了した後で風呂自動落とし込み運転が再開される場合、他栓使用判定も再びステップ1から実施される。
【0045】
対して、ステップ5で他栓使用流量AQ1が閾値Zを下回っていれば、他栓(給湯栓61等)で湯水が使用されていないものと判断し、風呂自動落とし込み運転中に一般給湯が要求されていないものと判断する(ステップ8)。その場合、水位センサ73等から取得した情報によって、浴槽10に風呂自動落とし込み運転で要求された水量が落とし込まれたどうかを判断する(ステップ9)。
このとき浴槽10に要求された水量が落とし込まれていなければ、ステップ4に戻って他栓使用流量AQ1を再び演算する。また、浴槽10に要求された水量が落とし込まれていれば、注湯電磁弁71を閉じて(ステップ7)風呂自動落とし込み運転及び他栓使用判定を終了する。
【0046】
上記した他栓使用判定では、熱源機1が他栓不使用の状態のとき、ステップ3で補正値X1を演算するための情報を各センサから取得したが、本発明の熱源機が行う他栓使用判定はこれに限るものではない。例えばステップ3の演算を実施する以前に、他栓不使用時であることが確定した状態において各センサで情報を予め取得しておいてもよい。そして、取得した値をコントローラ5等に記憶させておき、ステップ3ではその値に基づいて補正値X1の演算を実施してもよい。即ち、ステップ3では情報の取得は行わず、補正値X1の演算のみを行ってもよい。つまり、補正値X1を演算するために必要な値を他栓不使用時に取得できればよく、値を取得する方法は適宜変更してよい。
【0047】
上記した他栓使用判定では、燃焼装置2の燃焼が安定するまでの間に所定の時間だけ待機する構成であったが、本発明の熱源機が行う他栓使用判定はこれに限るものではない。本発明の熱源機で実施する他栓使用判定は燃焼装置2の燃焼の安定を待たなくてもよい。このような他栓使用判定を実施する第2の実施形態について、図3を参照しつつ詳細に説明する。なお、第2の実施形態で実施する他栓使用判定は上記した第1の実施形態と同様の熱源機1で実施するものとする。また、第1の実施形態と同様の部材、同様の値については同じ番号又は同じ記号を付して説明を省略する。
【0048】
熱源機1で風呂自動落とし込み運転を開始され、注湯電磁弁71が開かれると(ステップ1)、燃焼装置2の燃焼部22が燃焼動作を開始する。ここで、本実施形態の他栓使用判定では、缶体入熱量の積算値SJ1と、注湯熱量の積算値SJ2を算出する(ステップ2)。なおこのとき、熱源機1は他栓不使用時の状態であることが想定されている。即ち、本実施形態でも風呂自動落とし込み運転開始直後は、他の給湯栓61が使用されていないことを想定している。
缶体入熱量の積算値SJ1と注湯熱量の積算値SJ2の具体的な演算方法は以下のとおりである。
【0049】
コントローラ5が所定の時間Y2に所定の回数だけ、各センサから必要な情報を取得して缶体入熱量J1と注湯熱量J2を演算する処理を実施する。なお、缶体入熱量J1と注湯熱量J2の演算方法は第1の実施形態と同様であり、式(1)及び式(2)に基づいて演算する。そして、演算された全ての缶体入熱量J1を足し合わせてSJ1とし、演算された全ての注湯熱量J2を足し合わせてSJ2とする。
【0050】
次にステップ3に進み、演算された缶体入熱量の積算値SJ1と注湯熱量の積算値SJ2から補正値X1を下記式(5):
X1=SJ1/SJ2 ・・・(5)
に基づいて演算する。
【0051】
そしてステップ4に進み、ステップ4に進んで他栓使用流量AQ1を演算する。ステップ4乃至ステップ9については、第1の実施形態と同じであるため重複する説明を省略する。
【0052】
第2の実施形態のように、缶体入熱量の積算値SJ1と注湯熱量の積算値SJ2から補正値X1を算出すると、第1の実施形態のようにある瞬間の缶体入熱量J1と注湯熱量J2から補正値X1を算出する場合に比べ、他栓使用判定をより早く実施できるという利点がある。即ち、第2の実施形態の他栓使用判定は、燃焼装置2の燃焼が安定しない状態から他栓使用判定を開始することができるため、風呂自動落とし込み運転が開始されてから他栓使用判定を開始するまでの時間を短くすることができる。
【0053】
次に、非燃焼動作時における他栓使用判定を実施する第3の実施形態について、図4を参照しつつ詳細に説明する。なお、第3の実施形態で実施する他栓使用判定は上記した第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の熱源機1で実施するが、第3の実施形態では熱源機1に外部の太陽熱温水機で昇温された湯水が供給されるものとする。また、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の部材、同様の値については同じ番号又は同じ記号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施形態の熱源機1では、風呂自動落とし込み運転を開始されて注湯電磁弁71が開かれると(ステップ1)、バイパス比率を演算する(ステップ2)。ここでバイパス比率とは、入水管41において燃焼装置2側へ向かう湯水の水量と、バイパス管50を通過する湯水の水量との割合のことである。このバイパス比率は、入水流量センサ46や風呂用流量センサ36等で取得した値に基づいて算出する。
【0055】
バイパス比率が算出されると、バイパス流量調整弁51の開度を固定する等によりバイパス比率が変化しないようにする(ステップ3)。このことにより、他栓使用判定が終了するまでの間、給湯栓61で湯水が使用された場合を除いて、バイパス比率と入水管41及びバイパス管50を流れる水の水圧が変化しないようにする。
【0056】
バイパス比率が固定されると、コントローラ5が補正値X2を演算する(ステップ4)。ここで本実施形態の他栓使用判定では、他栓不使用時の情報に基づいて補正値X2の演算を実施する。即ち、本実施形態においても風呂自動落とし込み運転が開始された直後には他の給湯栓61の使用がないことを想定している。つまり、ステップ3が終了するまでの間には風呂自動落とし込み運転のみが実施され、他の給湯栓61が使用されていないことを想定している。
そして、各センサで情報を取得して補正値X2の演算を実施する。
【0057】
熱源機1の補正値X2の具体的な演算方法は以下の通りである。
コントローラ5が、出湯温度センサ49が取得した出湯温度T2と、風呂用温度センサ37が取得した落とし込み温度T3と、入水流量センサ46が取得した缶体流量Q1と、風呂用流量センサ36が取得した落とし込み流量Q2から、缶体入熱量J1を下記式(6):
J1=Q1×(T2−0) ・・・(6)
によって演算すると共に、注湯熱量J2を下記式(7):
J2=Q2×(T3−0) ・・・(7)
によって演算する。
【0058】
そして、次に演算された缶体入熱量J1と注湯熱量J2から補正値X2を下記式(8):
X2=J2/J1 ・・・(8)
に基づいて演算する。
【0059】
次に、ステップ5に進んで他栓使用流量AQ1を演算する。
具体的には、ステップ3で演算された缶体入熱量J1、注湯熱量J2、補正値X2と、風呂用温度センサ37によってそれぞれ取得した落とし込み温度T3から他栓使用流量AQ1を下記式(9):
AQ1=(J1×X2−J2)/(T3−0) ・・・(9)
によって演算する。
【0060】
そして、算出された他栓使用流量AQ1と予め設定した閾値Zとを比較する(ステップ6)。ここで、閾値Zは任意の値に設定可能であり適時変更してよい。なお、本実施形態では閾値Zを3L/minとする。
【0061】
ステップ6で他栓使用流量が閾値Zと同じ又は閾値Zを上回っていれば、他栓(給湯栓61等)で湯水が使用されているものと判断し、風呂自動落とし込み運転中に給湯運転が要求されたものと判断する(ステップ7)。そして、ステップ8へと進み、注湯電磁弁71を閉じて風呂自動落とし込み運転を中断して、他栓使用判定を終了する。
なお、割り込んで実施した給湯運転が終了した後で風呂自動落とし込み運転が再開される場合、他栓使用判定も再びステップ1から実施される。
【0062】
対して、ステップ6で他栓使用流量が閾値Zを下回っていれば、他栓(給湯栓61等)で湯水が使用されていないものと判断し、風呂自動落とし込み運転中に一般給湯が要求されていないものと判断する(ステップ9)。その場合、水位センサ73等から取得した情報によって、浴槽10に風呂自動落とし込み運転で要求された水量が落とし込まれたどうかを判断する(ステップ10)。
このとき浴槽10に要求された水量が落とし込まれていなければ、ステップ5に戻って他栓使用流量AQ1を再び演算する。また、浴槽10に要求された水量が落とし込まれていれば、注湯電磁弁71を閉じて(ステップ8)風呂自動落とし込み運転及び他栓使用判定を終了する。
【0063】
ここで本実施形態では、ステップ1で注湯電磁弁71が開かれた後、ステップ2でバイパス比率を演算するものとしたが、バイパス比率は注湯電磁弁71が開かれる前に予め計算しておいてもよい。そして注湯電磁弁71が開かれた後で、予め計算されたバイパス比率となるようにバイパス比率を固定する動作を行ってもよい。
【0064】
またここで、上記した第1の実施形態の式(1),(2),(4)と第3の実施形態の式(6),(7),(9)をそれぞれ比較してみると、第3の実施形態では第1の実施形態の入水温度T1に変わって0(ゼロ)を代入している。つまり、燃焼装置2の非燃焼動作時では供給された湯水を加熱しないため、入水温度T1と出湯温度T2の誤差を想定しない理論上の値は同じとなる。また、燃焼装置2から出湯した湯水と混合するバイパス管50を流れる湯水も外部で加熱された同じ温度のものであるため、落とし込み温度T3もまた入水温度T1と出湯温度T2と同じ値となる。そこで、燃焼装置2の非燃焼動作時では、入水温度を0(ゼロ)とすることによって仮の温度差を作成して演算している。
このように、燃焼装置2の燃焼動作時と非燃焼動作時における演算方法を統一することにより、燃焼動作時と非燃焼動作時で演算方法が異なる場合と比べて、演算方法の違いによる計算誤差が発生しないという利点がある。
【0065】
なお、上記した第3の実施形態では入水温度T1に0(ゼロ)を代入したが、出湯温度T2及び落とし込み温度T3に0(ゼロ)を代入し、取得した入水温度T1を−T1として仮の温度差を作成してもよい。また、代入する値は0(ゼロ)でなくてもよい。適宜設定した固定値であってもよい。燃焼装置2の非燃焼動作時に仮の温度差が作成できればよい。
【0066】
ところで、被燃焼動作時において燃焼装置2の一次熱交換器23及び二次熱交換器24に余熱がある場合がある。即ち、燃焼装置2による湯水の加熱が終了して燃焼部22が燃焼動作を停止した直後の状態において、熱源機1に湯水が供給される場合がある。
ここで上記した各実施形態の熱源機1では、入水温度T1と出湯温度T2の差や式(6)の値等から、この燃焼装置2の缶体余熱の有無を把握することができる。燃焼装置2の缶体余熱がある場合、非燃焼動作時であっても第1の実施形態のような燃焼動作時の他栓使用判定を行ってもよい。このようにすることで、燃焼装置2の非燃焼動作時に、何らかの要因によって水圧が変化してしまい、バイパス比率の維持ができなくなってしまった場合であっても他栓使用判定を実施することができる。
なお、風呂自動落とし込み時に他の給湯栓61の使用以外で水圧が変化する要因には、近隣で水が使用された場合等がある。
【0067】
上記した各実施形態の他栓使用判定では、他栓不使用時に必要な値を取得して補正値X1又は補正値X2を演算したが、本発明の熱源機が行う他栓使用判定はこれに限るものではない。即ち、補正値X1又は補正値X2を演算するために必要な値は風呂自動落とし込み運転中に、給湯栓61が使用されている状態で各種情報を取得しても構わない。
その場合、風呂自動落とし込みで使用される熱量(注湯熱量J2)とその他の給湯栓61で使用される熱量の比率が取得できればよい。具体的には、演算誤差や配管等への放熱ロスが無いと仮定した場合の、注湯熱量J2とその他の給湯栓61で使用される熱量の比率が取得できればよい。この比率が取得できれば、演算誤差や配管等への放熱ロスが無いと仮定した場合の、燃焼装置2から出湯された湯水の熱量(缶体入熱量J1)と風呂の落とし込みで使用する熱量(注湯熱量J2)との比率(以下熱量の比率の理論値)が取得できる。そして、上記した第1式(3)又は式(4)で算出した補正値X1又は補正値X2を、熱量の比率の理論値で補正することによって、缶体入熱量J1又は注湯熱量J2を補正するための値を得ることができる。
しかしながら、本発明の熱源機が行う他栓使用判定は、缶体入熱量J1がそのまま注湯熱量J2として使用される状況下で演算されることが望ましい。即ち、熱量の値の演算誤差や配管等への放熱ロスが無いと仮定した場合、缶体入熱量J1又は注湯熱量J2が1対1となることが予測される状況下で実施することが望ましい。このように実施することにより、補正値を算出するときの演算回数を減らすことができるため、補正値の演算が容易になる。
【0068】
上記した第1の実施形態では、補正値X1を式(3)によって算出し、式(5)で他栓使用流量AQ1を演算するときに注湯熱量J2を補正したが、他栓使用流量AQ1の演算方法はこれに限るものではない。補正値X1を下記式(10):
X1=J2/J1 ・・・(10)
とし、他栓使用流量AQ1を下記式(11):
AQ1=(J1×X1−J2)/(T3−T1) ・・・(11)
としてもよい。即ち、缶体入熱量J1と注湯熱量J2の比率によって、缶体入熱量J1又は注湯熱量J2のいずれか一方の他方に対する割合を補正できればよい。
また、第3の実施形態でも同様に、補正値X2を下記式(12):
X2=J1/J2 ・・・(12)
とし、他栓使用流量AQ1を下記式(13):
AQ1=(J1−J2×X1)/(T3−0) ・・・(13)
としてもよい。
【0069】
上記した各実施形態では、他栓使用流量AQ1を算出して予め設定した閾値Zと比較し、他栓使用流量AQ1が閾値Zと同等以上であれば他の給湯栓61が使用されていると判断する他栓使用判定を行った。しかし、本発明の熱源機で実施する他栓使用判定はこれに限るものではない。例えば、熱量の比率を使って補正した熱量によって缶体流量や落とし込み流量を算出し、缶体流量と落とし込み流量の差と適宜設定した閾値とを比較する他栓使用判定であってもよい。つまり、缶体入熱量J1と注湯熱量J2の比率によって、缶体入熱量J1又は注湯熱量J2のいずれか一方の他方に対する割合を補正し、補正した値によって必要な値を算出すればよい。演算に補正した値を使用することにより、算出された値の精度を上昇できればよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0071】
〔実施例1〕
上記した第1の実施形態乃至第3の実施形態に準じた熱源機で、燃焼動作時において、他栓使用流量AQ1を式(1)乃至式(4)に基づいて演算した。算出された他栓使用流量AQ1の誤差は1L/min以下となった。
【0072】
〔実施例2〕
上記した第1の実施形態乃至第3の実施形態に準じた熱源機で、非燃焼動作時において、他栓使用流量AQ1を式(6)乃至式(9)に基づいて演算した。算出された他栓使用流量AQ1の誤差は1L/min以下となった。
【0073】
〔比較例1〕
上記した第1の実施形態乃至第3の実施形態に準じた熱源機で、燃焼動作時において、他栓使用流量AQ2を式(1)、式(2)及び下記式(14):
AQ2=(J1−J2)/(T3−T1) ・・・(14)
に基づいて演算した。即ち、熱量の比率で補正を実施しない演算方法で他栓使用流量AQ2を算出した。算出された他栓使用流量AQ2には4L/min程度の誤差が検出された。
【0074】
〔比較例2〕
上記した第1の実施形態乃至第3の実施形態に準じた熱源機で、非燃焼動作時において、他栓使用流量AQ2を式(6)、式(7)及び下記式(15):
AQ2=(J1−J2)/(T3−0) ・・・(15)
に基づいて演算した。即ち、熱量の比率で補正を実施しない演算方法で他栓使用流量AQ2を算出した。算出された他栓使用流量AQ2には4L/min程度の誤差が検出された。
【0075】
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2の結果から、補正しないで演算した他栓使用流量AQ2では4L/min程度の誤差が発生するが、補正して演算した他栓使用流量AQ1では誤差を1L/min以下に抑えることが可能である。このように誤差の値を低減させることにより、閾値Zの値を従来よりも低く設定することが可能となり、他栓使用判定の精度を上げることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 熱源機
23 一次熱交換器(熱交換器)
24 二次熱交換器(熱交換器)
41 入水管
44 出湯管
50 バイパス管
60 一般給湯管
70 風呂自動落とし込み管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、熱交換器の上流側に位置する入水管と、熱交換器の下流側に位置する出湯管とを有し、
前記出湯管は少なくとも一般給湯管と風呂自動落とし込み管とに分岐し、
一般給湯と風呂自動落とし込みとを実施可能であると共に風呂自動落とし込み時に一般給湯の使用の有無を判定する他栓使用判定が実施可能な熱源機であって、
前記入水管及び出湯管、並びに風呂自動落とし込み管を流れる湯水の温度、流量、熱量を取得又は演算可能であると共に、出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量の比率を演算可能であり、
出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを演算された熱量の比率に基づいて補正し、補正した熱量の値によって他栓使用判定を実施することを特徴とする熱源機。
【請求項2】
他栓不使用時において出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水との熱量の比率を演算し、
出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを演算された熱量の比率に基づいて補正し、補正した熱量の値によって他栓使用判定を実施することを特徴とする請求項1に記載の熱源機。
【請求項3】
前記入水管と出湯管とがバイパス管によって接続され、
外部から入水管を通って供給される湯水が熱交換器内を通過して出湯管へと出湯されるとき、熱交換器を通過した湯水とバイパス管を通過した湯水との混合が可能であり、
熱交換器の非燃焼動作時において、前記バイパス管を流れる湯水の流量を固定すると共に出湯管を流れる湯水と風呂自動落とし込み管を流れる湯水との熱量の比率の演算し、
出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを演算された熱量の比率に基づいて補正し、補正した熱量の値によって他栓使用判定を実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱源機。
【請求項4】
出湯管を流れる湯水の熱量の積算値と風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量の積算値との比率を演算し、
出湯管を流れる湯水の熱量又は風呂自動落とし込み管を流れる湯水の熱量のいずれかを演算された熱量の比率に基づいて補正し、補正した熱量の値によって他栓使用判定を実施することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱源機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−72978(P2012−72978A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218702(P2010−218702)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】