説明

産業車両

【課題】バッテリのバッテリ液面低下時の放電によるバッテリ劣化を抑制し、オペレータに対してバッテリ液面低下状態を確実に認識させることができる産業車両の提供にある。
【解決手段】車体11に搭載されるバッテリ14と、バッテリ14の電力により駆動力を生じる電動モータを備えた産業車両であって、バッテリ14のバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態を検出する液面レベルセンサ47と、液面レベルセンサ47による液面低下状態の検出に基づき、液面低下状態での車両稼動時間である液面低下状態稼働時間を積算する稼働時間積算手段と、液面低下状態稼働時間を記憶する記憶手段と、液面低下状態稼働時間の積算に応じて電動モータの駆動を段階的に制限する電動モータ制限条件に基づき、電動モータの駆動を制御するモータ制御手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業車両に関し、特に、バッテリとして鉛蓄電池を搭載した産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリを搭載するバッテリフォークリフトは、バッテリの電力を用いて走行モータを駆動して走行するほか、荷役モータの駆動により荷役装置を作動させ荷役作業を行う。
バッテリが鉛蓄電池の場合、充放電の繰り返し等よりバッテリのバッテリ液が減少するから、バッテリ液が減少したときはバッテリ液を補給する必要がある。
バッテリ液が減少した状態でバッテリを放電することはバッテリ劣化を促進し、バッテリ寿命を短くするおそれがある。
そこで、従来では、バッテリにバッテリ液の液面レベルを検出する液面レベルセンサを設けてバッテリ液が減少してバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面になる液面低下状態を検出し、バッテリ液の補給を促す技術が存在する。
【0003】
液面レベルセンサを用いる従来技術としては、例えば、特許文献1に記載された電動車両用バッテリ液面レベル警報装置を挙げることができる。
特許文献1に記載された電動車両用バッテリ液面レベル警報装置は、充電器と、充電器により充電が行われる車載バッテリと、車載バッテリに付設され車載バッテリの電解液面レベルを検出する液面センサと、車載バッテリの異常を警報する発光ダイオードを備えている。
そして、充電器にマイクロコンピュータおよび発光ダイオードを併設している。
【0004】
この装置では、マイクロコンピュータが、充電器による車載バッテリへの充電開始に際して、液面センサにより検出した車載バッテリの電解液面が設定レベルより低下している場合に発光ダイオードを作動させて警報を行わせる。
このため、電動車両の充電作業者に車載バッテリに対するバッテリ液の補充を促すことが可能であり、車載バッテリに対する充電時に静止状態にある車載バッテリの電解液面レベルを検出するため、電解液面が設定レベルより低下しているか否かを正確に検出することが可能としている。
【0005】
関連する別の従来技術としては、特許文献2に開示されたバッテリ車のバッテリ情報の管理方法及び管理システムが存在する。
特許文献2に開示されたバッテリ車のバッテリ情報の管理システムでは、バッテリ車に搭載されているバッテリにバッテリ液量を検出する液面センサが取り付けられており、バッテリ液量を周期時間毎に制御器に取り込み、異常検出時には警報を出す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−142099号公報
【特許文献2】特開2002−120999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された電動車両用バッテリ液面レベル警報装置は、車載バッテリの電解液面が設定レベルより低下している場合に液面センサの検出により警報を出す技術に過ぎない。
一方、特許文献2に開示されたバッテリ車のバッテリ情報の管理方法及び管理システムは、バッテリ液量の異常検出時には警報を出すものの、液量不足状態のバッテリの放電によるバッテリの劣化を強制的に抑制するための具体的対策はない。
【0008】
液量不足状態での放電によるバッテリの劣化を強制的に抑制するため、例えば、液量不足となった時点で車両を直ちに停止することが考えられる。
しかし、産業車両の場合、バッテリ液を補給することが可能な補給場所は特定の場所に定められていることが多く、例えば、車両停止の位置が補給場所から離れていると極めて不便である。
また、液量不足状態を示す光や音を用いた警報では、工場内等の周囲の環境によってはオペレータが警報を見逃してしまいオペレータに対して液量不足状態を把握させることができない場合があるという問題がある。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、バッテリのバッテリ液面低下時の放電によるバッテリ劣化を抑制し、オペレータに対してバッテリ液面低下状態を確実に認識させることができる産業車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体に搭載されるバッテリと、前記バッテリの電力により駆動力を生じる電動モータを備えた産業車両であって、前記バッテリのバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態を検出する液面レベルセンサと、前記液面レベルセンサによる前記液面低下状態の検出に基づき、前記液面低下状態での車両稼動時間である液面低下状態稼働時間を積算する稼働時間積算手段と、前記液面低下状態稼働時間を記憶する記憶手段と、前記液面低下状態稼働時間に応じて前記電動モータの駆動を段階的に制限する電動モータ制限条件に基づき、前記電動モータの駆動を制御するモータ制御手段と、を備えたことを特徴とする。
電動モータは、例えば、車両走行のための走行モータ、あるいは荷役動力を生じる荷役モータ等、車体に搭載されたバッテリの電力により駆動される電動モータである。
また、電動モータの駆動を段階的に制限するとは、特定の段階から次の段階へ進む度に電動モータの駆動の制限を強化することを意味する。
【0011】
本発明によれば、液面低下状態になると、稼動時間積算手段が、液面低下状態での車両が稼動する車両稼動時間である液面低下状態稼働時間を積算する。
モータ制御手段は電動モータを制御するが、電動モータ制限条件に基づき液面低下状態稼働時間に応じて電動モータの駆動を段階的に制限する。
従って、電動モータの駆動が段階的に制限されることで、産業車両は走行や荷役等の車両性能の制限を受けることになり、車両性能の制限によりバッテリ劣化を積極的に抑制することができる。
また、オペレータが車両性能の制限を体感することになるのでバッテリの液面低下状態を確実に認識することができる。
【0012】
また、本発明では、上記の産業車両において、前記電動モータ制限条件には、複数の段階を規定する複数の設定時間と、各段階に対応する前記電動モータの制限内容と、が設定され、前記制限内容および前記設定時間は変更可能であってもよい。
【0013】
この場合、電動モータ制限条件における制限内容や設定時間は変更可能であるから、例えば、よりバッテリの劣化防止を強化し、バッテリの保護を重視するの電動モータ制限条件や、逆にバッテリ保護よりも作業優先の電動モータ制限条件を設定することができる。
【0014】
また、本発明では、上記の産業車両において、前記電動モータは、走行駆動力を生じる走行モータであり、電動モータ制限条件は、前記液面低下状態稼働時間に対応して前記走行モータの最大トルクを段階的に制限するトルク制限条件又は、前記液面低下状態稼働時間に対応して最大車速を段階的に制限する車速制限条件であってもよい。
【0015】
この場合、液面低下状態になると、稼動時間積算手段が液面低下状態稼働時間を積算する。
モータ制御手段は、電動モータ制限条件に基づき液面低下状態稼働時間の積算に応じて走行モータのトルクを段階的に制限したり、あるいは、最大車速を段階的に制限したりするように、走行モータを制御する。
従って、産業車両はトルク制限又は車速制限を受けることで、液面低下状態でのバッテリの放電量が抑制され、放電によるバッテリ劣化を積極的に抑制することができる。
また、オペレータが産業車両の走行時にトルク制限又は車速制限を体感することになるのでバッテリの液面低下状態を確実に認識することができる。
【0016】
また、本発明では、上記の産業車両において、前記電動モータに対する電流の出入がないモータ停止状態で、前記液面レベルセンサが前記液面低下状態を検出してもよい。
【0017】
この場合、液面レベルセンサは、電動モータに対する電流の出入がないモータ停止状態でバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下の状態を検出する。
電流の出入がない状態の電動モータは力行および回生のない状態であり、車体が静止して揺れがなく、バッテリ液の揺れがない。
従って、液面レベルセンサはバッテリの液面をより正確に検出することができる。
【0018】
また、本発明では、上記の産業車両において、時間表示可能な表示手段を備え、前記表示手段は、積算中の前記液面低下状態稼働時間および現在進行中にある前記段階の残存時間の少なくとも一方を表示してもよい。
【0019】
この場合、液面低下状態になり電動モータの駆動が段階的に制限されると、表示手段には、積算中の液面低下状態稼働時間および現在進行中にある段階の残存時間の少なくとも一方が表示される。
なお、現在進行中の段階の残存時間が表示される場合、残存時間が減数表示されるからオペレータに対してバッテリ液補給の必要性を強く促すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バッテリのバッテリ液面低下時の放電によるバッテリ劣化を抑制し、オペレータに対してバッテリ液面低下状態を確実に認識させることができる産業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係るフォークリフトの概略側面図である。
【図2】第1の実施形態に係るフォークリフトの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】トルク制限条件の各段階を規定する設定時間と制限内容を説明する時系列図である。
【図4】走行モータの駆動に対する段階的なトルク制限を説明するグラフ図である。
【図5】走行モータの駆動に対する段階的な車速制限を説明するグラフ図である。
【図6】第2の実施形態に係るフォークリフトの電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る産業車両としてのフォークリフトを図面に基づいて説明する。
なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、フォークリフトのオペレータが運転席の運転シートに着座して、フォークリフトの前進側を向いた状態を基準として示す。
【0023】
図1に示すように、産業車両としてのフォークリフト10は、車体11の前部に荷役手段としての荷役装置12を備えている。
車体11の中央付近には運転席13が設けられており、車体11における運転席13の下方にはバッテリ14が収容されている。
バッテリ14は鉛蓄電池でありバッテリ液(電解液)を有している。
車体11の前部には前輪としての駆動輪15が設けられ、車体11の後部には後輪としての操舵輪16が設けられている。
車体11には、走行駆動力を生じる電動モータとしての走行モータ17が設けられている。
走行モータ17と駆動輪15との間には、走行モータ17の走行駆動力は駆動輪15へ伝達する動力伝達機構(図示せず)が設けられている。
本実施形態のフォークリフト10は、車体11に搭載されたバッテリ14の電力により作動するバッテリフォークリフトである。
【0024】
荷役装置12はアウタマスト19およびインナマスト(図示せず)を有するマスト18を備えている。
左右一対のアウタマスト19には、アウタマスト19の内側にてスライド可能なインナマストが備えられている。
アウタマスト19には油圧により作動するティルトシリンダ20が設置されており、ティルトシリンダ20の作動により、マスト18が前後方向に傾動する。
インナマストには油圧により作動するリフトシリンダ21が設けられており、リフトシリンダ21の作動により、インナマストがアウタマスト19内でスライドして昇降する。
マスト18には左右一対のフォーク22がリフトブラケット23を介して設けられ、リフトブラケット23はインナマストに対して昇降するように設けられている。
車体11は、リフトシリンダ21やティルトシリンダ20に作動油を供給する荷役ポンプ(図示せず)と荷役ポンプを駆動する電動モータとしての荷役モータ24を搭載している。
【0025】
車体11における運転席13には、オペレータが着座可能な運転シート25が設けられている。
運転シート25は車体に設けられたシートスタンド26上に配置されている。
運転シート25の前方には、操舵のためのステアリングホイール27が設けられている。
ステアリングホイール27の左側には前後進レバー28が設けられ、前後進レバー28の操作によりフォークリフト10の「前進」又は「後進」が選択される。
ステアリングホイール27の右側には、リフトシリンダ操作用のリフトレバー29と、ティルトシリンダ操作用のティルトレバー30が設けられている。
【0026】
運転席13の床にはアクセルペダル31が設けられており、アクセルペダル31はフォークリフト10の車速を調整するためのものである。
フォークリフト10は、オペレータによるアクセルペダル31の踏み込み量に応じた車速となるように走行モータ17の駆動を制御する。
車体11は、フォークリフト10の各種制御を行う走行荷役コントローラ33を搭載している。
ステアリングホイール27に前部にディスプレイユニット32が設けられている。
ディスプレイユニット32は、車体11において着座したオペレータから視認しやすいようにリフトレバー29およびティルトレバー30の近くに設置されている。
【0027】
次に、フォークリフト10の電気的構成について図2に基づいて説明する。
走行荷役コントローラ33は、走行モータ17の駆動制御を行う駆動回路34および荷役モータ24の駆動制御を行う駆動回路35とインターフェース36を介してそれぞれ接続され、通信可能である。
また、走行モータ17および荷役モータ24は夫々対応する駆動回路34、35を介してバッテリ14の電力供給を受けることができるように接続されている。
走行モータ17は走行荷役コントローラ33の指令に基づいて駆動回路34が作動することにより駆動され、荷役モータ24は走行荷役コントローラ33の指令に基づいて駆動回路35が作動することにより駆動される。
この実施形態では、走行荷役コントローラ33はモータ制御手段に相当し、図示はしないが各種の制御を所定の手順で実行するCPU、各種のデータを記憶するメモリ等を備えている。
走行荷役コントローラ33のCPUに内蔵された内蔵メモリ(図示せず)には、走行モータ17のトルクを段階的に制限するトルク制限条件に関するプログラムが格納されている。
走行モータ17に対するトルク制限条件は電動モータ制限条件に相当する。
【0028】
走行荷役コントローラ33は、運転席13に設けられたディスプレイユニット32とインターフェース37を介して通信可能に接続されている。
ディスプレイユニット32は、時間表示可能であって各種情報を表示する表示手段としての時間表示可能な表示部40を有するほか、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理ユニット)41、リアルタイムクロックIC42、メモリ43、操作スイッチ44を備えている。
CPU41はインターフェース45を介して走行荷役コントローラ33と通信可能に接続されており、各種の制御を所定の手順で実行する。
【0029】
表示部40は、例えば、バッテリ容量計等のバッテリ14に関する情報、パーキングブレーキのアラーム表示といった各種アラーム表示、キーON状態(フォークリフト10にキーが差し込まれた状態)の積算時間等の時間に関する表示、選択されているパワーモード表示を行う。
操作スイッチ44は、例えば、情報表示の切り換えスイッチ、パワーモードの切り換えスイッチや、充電を予約するための設定スイッチ等である。
因みに、パワーモードは、パワーモードは走行や荷役等の作業負荷レベルに応じて段階的に設定されており、この実施形態では、S(スタンダード)モード、P(パワー)モード、H(ハイパワー)モードの3モードが用意されている。
例えば、通常の走行や荷役作業を行う場合には、Sモードでの運転とし、Sモードよりも負荷が大きい走行や荷役が予定される場合にPモードによる運転を行い、Pモードを越える負荷が予定される場合にはHモードとすればよい。
【0030】
リアルタイムクロックIC42はCPU41に接続されており、時間を計測するとともに時刻に関するデータをCPU41に出力する。
リアルタイムクロックIC42は計時手段に相当し、キーOFF(フォークリフト10からキーが抜かれた状態)であっても現在時刻を計時する。
この実施形態の車両稼動時間は、キーON状態の経過時間であり、リアルタイムクロックIC42の計時データに基づいてCPU41が積算する時間である。
従って、CPU41は稼働時間積算手段に相当する。
液面低下状態での車両稼動時間は、フォークリフト10がキーON状態であって、かつバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態での経過時間であり、液面低下状態稼動時間に相当する。
液面低下状態稼動時間は、車両稼動時間と同様にリアルタイムクロックIC42の計時データに基づいてCPU41が積算する時間である。
また、CPU41はリアルタイムクロックIC42の計時データをもとにして液面低下状態における走行モータ17が稼働している時間や荷役モータ24が稼働している時間を計時する。
この実施形態では、液面低下状態における走行モータ17の稼働時間を液面低下状態モータ稼動時間としている。
【0031】
メモリ43はCPU41に接続されており、記憶手段に相当する。
メモリ43には積算された時間等のデータが記憶され、電源供給が遮断されても記憶されたデータを保持することが可能である。
図2では、説明の便宜上、メモリ43を一つのみ図示したが、例えば、メモリ43は複数個であってもよい。
また、メモリ43の種類としては、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の書き換え可能な不揮発性メモリを設けてもよいが、特にメモリ43の種類は限定されない。
因みに、ディスプレイユニット32がメモリ43への電源供給を常時行う電源バックアップ機能を有している場合、メモリ43としてRAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリなどの揮発性メモリを使用することも可能である。
【0032】
ディスプレイユニット32のCPU41は、インターフェース46を介してバッテリ14に設けられた液面レベルセンサ47と接続されている。
バッテリに設けられた液面レベルセンサ47は、バッテリ液の液面が予め設定した設定バッテリ液面以下の時に検出信号をCPUに送るセンサである。
なお、フォークリフト10の走行時における振動等により、バッテリ14の液面が傾いたり、揺れたりしていると、液面レベルセンサ47が正確にバッテリ液面を検出することができないため、液面レベルセンサ47は走行モータ17が駆動している間はバッテリ液の液面を確認しないように設定されている。
この実施形態では、走行モータ17の駆動停止後に液面を検出するまでの検出待機時間(例えば、3秒程度)が設定されている。
この検出待機時間はバッテリ液面の揺れが収まることを考慮して設定された時間である。
なお、走行モータ17が駆動停止しているモータ停止状態とは、力行時や回生時以外であって走行モータ17において電流の出入がない状態である。
【0033】
ここで、液面低下状態稼働時間の積算に応じて走行モータ17のトルクを段階的に制限するトルク制限条件に関するプログラムについて説明する。
この実施形態のトルク設定条件は、複数の段階(この実施形態では第1〜第4段階)を規定する複数の設定時間(第1〜第3設定時間)と、各段階に対応して走行モータ17のトルクを制限する制限内容(第1〜第4制限内容)と、が設定されている。
図3に示すように、液面低下状態稼働時間における積算開始からの所定時間(例えば、16時間)を第1設定時間T1とし、積算開始から第1設定時間T1を越える所定時間(例えば、36時間)を第2設定時間T2とする。
さらに、積算開始から第2設定時間T2を越える所定時間(例えば、40時間)を第3設定時間T3とする。
このように第1〜第3設定時間を設定することで、第1〜第3段階の継続時間が規定される。
【0034】
この実施形態では、第1設定時間T1に至るまでの第1段階においては、特に走行モータ17のトルク制限は行わない制限内容(便宜上、第1制限内容とする)が設定される。
第1設定時間T1の経過から第2設定時間T2に至るまでの第2段階は、走行モータ17の最大トルクがバッテリ液面通常時(バッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面より高い位置にあるとき)と比較して低く設定される制限内容(便宜上、第2制限内容とする)が適用される。
第2設定時間T2の経過から第3設定時間T3に至るまでの第3段階は、走行モータ17の最大トルクが第1段階と比較して小さく設定される制限内容(便宜上、第3制限内容とする)が適用される。
第3設定時間T3を経過した第4段階は走行モータ17を強制的に停止するという制限内容(便宜上、第4制限内容とする)が適用される。
このように、トルク制限条件においては、第1〜第4段階に対応する走行モータ17の制限内容が設定されている。
ただし、第1制限内容は走行モータ17のトルク制限を行わないという制限内容である。
【0035】
この実施形態では、荷役モータ24に対しては液面低下状態稼働時間の積算開始後においても特別な制限条件を設けないようにしている。
液面低下時の放電によるバッテリ14の劣化を抑制する点では、走行モータ17と同様に荷役モータ24に対しても制限条件を設定することが望ましいが、この実施形態では、荷役作業に対する効率を重視するため走行モータ17に対してのみ制限条件を設定している。
走行モータ17に対するトルク制限条件における制限内容に係るトルク制限の設定値はフォークリフト10の管理者が自由に設定することが可能である。
また、第1段階から走行モータ17のトルク制限を行うように変更することも可能であり、また、設定時間の設定数を変更してトルク制限の段階数(例えば、4段階以上)を多くし、設定時間の変更により段階毎の継続時間を自由に変更することも可能である。
【0036】
次に、本実施形態のフォークリフト10において、バッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した場合のフォークリフト10の制御について説明する。
バッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した状態になるタイミングは、フォークリフト10の稼動時(キーON状態)、または非稼動時(キーOFF状態)である。
まず、フォークリフト10の稼動時にバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した場合のフォークリフト10の制御について説明する。
キーが車体11に挿入され、フォークリフトがキーON状態となると、CPU41がリアルタイムクロックIC42の計時データに基づき車両稼動時間の積算を開始する。
キーON状態にあるフォークリフト10は、停止状態(非走行状態)や荷役作業が行われない状態でも、フォークリフト10としては稼動されている状態にあり、バッテリ14の電力は消費される状態にある。
フォークリフト10が走行したり、荷役作業を行ったりすると、走行モータ17や荷役モータ24の駆動に必要な大きな電力が消費される。
【0037】
バッテリ14のバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下になっているか否かは、液面レベルセンサ47により検出する。
液面レベルセンサ47は、走行モータ17の力行や回生のされていない走行モータ停止状態のときおよび走行モータ17の駆動停止後には検出待機時間が経過したときにバッテリ液面の状態の検出を行う。
つまり、走行モータ17の駆動停止後は、検出待機時間を待って液面レベルセンサ47の状態が参照される。
駆動停止後の検出待機時間が経過することで、バッテリ14の液面が傾いたり、揺れたりすることなく落ち着いた状態となる。
【0038】
バッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面より高い位置にあるバッテリ液面通常時では、液面レベルセンサ47は検出信号を発生しない。
バッテリ液が減少し、バッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達すると、液面レベルセンサ47は設定バッテリ液面以下に達したことを示す検出信号をディスプレイユニット32のCPU41に送信する。
ディスプレイユニット32のCPU41が検出信号を受けると、CPU41がリアルタイムクロックIC42の計時データに基づき液面低下状態稼働時間の積算を開始する。
つまり、CPU41は、バッテリ14のバッテリ液面が設定バッテリ液面以下に達した状態の車両稼働時間である液面低下状態稼働時間を積算する。
この液面低下状態稼働時間は、バッテリ液が補給されてバッテリ14の液面低下状態ではない状態になるまで継続して積算される。
メモリ43はCPU41により積算中の液面低下状態稼働時間を記憶する。
CPU41が液面低下状態稼働時間の積算を開始すると、ディスプレイユニット32の表示部40においてバッテリ14の液面低下状態を示すアラームや積算中の液面低下状態稼働時間が表示される。
【0039】
この実施形態では、走行モータ17がトルク制限条件により液面低下状態稼働時間に応じて段階的に制限される。
液面低下状態稼働時間の積算開始の第1段階では、トルク制限条件の第1制限内容に基づき走行モータ17はトルク制限を受けることはない。
ただし、第1段階ではバッテリ14の液面低下状態を示すアラームおよび積算中の液面低下状態稼働時間が表示部40に表示される。
第1段階で、オペレータがバッテリ14の液面低下状態に気付き、バッテリ液の補給場所へフォークリフト10を移動してバッテリ液を補給すれば、バッテリ液面は予め設定した設定バッテリ液面より高い位置となる。
バッテリ液面通常時の状態になると、液面レベルセンサ47は検出信号を発しないので、液面低下状態稼働時間の積算は中止されリセットされる。
【0040】
バッテリ14の液面低下状態でバッテリ液の補給がなくフォークリフト10を使用または放置すると、液面低下状態稼働時間が第1設定時間T1を越え、第2段階に進む。
第2段階では、走行荷役コントローラ33はトルク制限条件における第2段階に対応する第2制限内容に基づき走行モータ17を駆動制御する。
第2段階では、走行荷役コントローラ33は走行モータ17の最大トルクがバッテリ液面通常時(および第1段階)と比較して低く制限された条件で駆動回路34を制御して走行モータ17を駆動する。
走行モータ17のトルクは電流と正比例の関係にあることから、バッテリ14から供給される電流が通常時よりも抑制されることで、最大トルクも電流の制限に応じて制限される。
従って、第2段階ではバッテリ14から供給される電流が通常時(および第1段階)よりも少なくなり放電によるバッテリ14の劣化抑制が図られる。
【0041】
第2段階では、第2段階に対応する第2制限内容により走行モータ17の最大トルクがバッテリ液面通常時(および第1段階)と比較して低く設定されているので、フォークリフト10の加速はバッテリ液面通常時(および第1段階)よりも緩やかなとなる。
このため、オペレータは、通常時のフォークリフト10の加速とは異なる低加速を体感する。
オペレータは、低加速を体感することにより、通常状態の加速ができないことを認識することになり、バッテリ液が設定バッテリ液面高さ以下になった液面低下状態であることを認識する。
因みに、ここで言う体感とは、フォークリフト10の加速の違いを体で感じるなど操作フィーリングが異なることをオペレータが感じることを意味し、視覚、聴覚に頼るものではない。
この実施形態では、S(スタンダード)モード、P(パワー)モード、H(ハイパワー)モードの3モードが用意されているが、第2段階では、走行モータ17がトルク制限を受けることで、例えば、PモードやHモードへの切り換えができない状態となる。
【0042】
第2段階で、バッテリ液の補給場所へ移動してバッテリ液を補給する場合、低加速による走行によりフォークリフト10を移動することが可能である。
バッテリ液の補給によりバッテリ液面通常時の状態になると、液面レベルセンサ47は検出信号を発しないので、液面低下状態稼働時間の積算は中止となりリセットされるほか、走行モータ17に対するトルク制限条件が解除され、フォークリフト10は制限を受けない通常時の走行が可能となる。
【0043】
第2段階においてバッテリ液の補給がなくフォークリフト10を使用または放置すると、液面低下状態稼働時間が第2設定時間を越えて、第3段階に進む。
第3段階では、走行荷役コントローラ33はトルク制限条件における第3段階に対応する第3制限内容に基づき走行モータ17を駆動制御する。
第3段階では、走行荷役コントローラ33は走行モータ17の最大トルクが第2段階と比較して低く制限された条件で駆動回路34を制御して走行モータ17を駆動するから、バッテリ14から供給される電流が第2段階よりも少なくなる。
つまり、第3段階ではバッテリ14から供給される電流がバッテリ液面通常時(および第1段階)よりも著しく少なくなり、放電によるバッテリ14の劣化抑制がより一層図られる。
【0044】
第3段階では、第3段階に対応する制限内容により走行モータ17の最大トルクが第2段階と比較して低く設定されているので、フォークリフト10の加速は第2段階と比べて緩やかとなる。
このため、オペレータは、バッテリ液面通常時のフォークリフト10の加速と比較すると著しい低加速を体感する。
オペレータは、著しい低加速を体感することにより、通常状態の加速はおろか第2段階における加速までができないことを認識することになり、あたかもバッテリ14が劣化したときのような車両挙動となり、バッテリ液が設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態であることを認識できるとともに、その液面低下状態が長時間継続されていることを認識することができる。
つまり、この段階ではバッテリの劣化は抑制されている状態にあるものの、オペレータはバッテリ14の劣化状態を疑似体験することになる。
【0045】
第3段階で、バッテリ液の補給場所へ移動してバッテリ液を補給する場合、バッテリ液面通常時と比較して著しい低加速による走行によりフォークリフト10を移動することが可能である。
バッテリ液の補給によりバッテリ液面通常時の状態になると、液面レベルセンサ47は検出信号を発しないので、液面低下状態稼働時間の積算は中止となりリセットされるほか、走行モータ17に対するトルク制限条件が解除され、フォークリフト10は制限を受けない走行が可能となる。
【0046】
第3段階においてバッテリ液の補給がなくフォークリフト10を使用または放置すると、液面低下状態稼働時間が第3設定時間を越えて、第4段階に進む。
第4段階では、走行荷役コントローラ33はトルク制限条件における第4段階に対応する第4制限内容に基づき走行モータ17の駆動を強制的に不可とする制御を行う。
第4段階では、走行荷役コントローラ33は走行モータ17を駆動不可とする条件で駆動回路34を制御するから、バッテリ14から走行モータ17へ供給される電流が遮断される。
つまり、第4段階では走行モータ17へバッテリ14から供給される電流が遮断され、放電によるバッテリ14の劣化防止がほぼ図られる。
ただし、フォークリフト10は走行不能であるから、停止した位置から移動することはできない。
従って、オペレータは第3段階に至る間にバッテリ液の補給場所へフォークリフト10を移動させることが望ましい。
【0047】
図4は、バッテリ液面通常時(および第1段階時)、第2段階時および第3段階時におけるフォークリフト10の車速と時間との関係を示すグラフである。
バッテリ液面通常時(および第1段階時)のグラフA1では所定車速Vに対する所要時間t1が最も短く通常状態の加速が可能である。
第2段階時のグラフA2では所定車速Vに対する所要時間t2が所要時間t1よりも大きくなり加速度は低く設定されており、第3段階時のグラフA3では所定車速Vに対する所要時間t3は所要時間t2より大きくなり加速度はさらに低く設定されている。
【0048】
次に、キーOFF状態においてバッテリ液面が設定バッテリ液面以下に達した場合について説明する。
キーOFF状態においてバッテリ液面が設定バッテリ液面以下に達したとき、キーOFF状態であるからフォークリフト10は稼動状態ではない。
キーが挿入されてキーONになるとフォークリフト10は稼動状態となり、液面レベルセンサ47はバッテリ液面を確認する。
バッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態では、液面レベルセンサ47は、設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態であることを示す検出信号をディスプレイユニット32のCPU41に直ちに送信する。
【0049】
ディスプレイユニット32のCPU41が検出信号を受けると、CPU41が時間積算を開始する。
つまり、キーOFF状態においてバッテリ液面が設定バッテリ液面以下に達した場合、キーONの時点からバッテリ液面が設定バッテリ液面以下に達した状態の液面低下状態稼働時間を積算する。
液面低下状態稼働時間の積算後は、走行モータ17は、液面低下状態稼働時間に応じて走行モータ17のトルクを制限するトルク制限条件に基づき制御される。
【0050】
なお、バッテリ液面が設定バッテリ液面以下になり液面低下状態稼働時間が積算されている状態でキーOFFしても、キーOFFされるまでに積算された液面低下状態稼働時間はメモリ43に記憶保持される。
そして、キーOFF後に再びキーONされると、バッテリ液面が設定バッテリ液面以下になっている状態では、記憶保持された液面低下状態稼働時間から引き続き時間が積算される。
【0051】
本実施形態のフォークリフト10では、上記に説明したように、バッテリ液の減少によりバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下の液面低下状態に達すると、バッテリ14の液面低下状態における車両稼動時間である液面低下状態稼働時間が積算され、トルク制限条件に基づき液面低下状態稼働時間の積算に応じて走行モータ17のトルクが段階的に制限される。
走行モータ17のトルクがトルク制限条件に基づき段階的に制限されることで、フォークリフト10は加速性能がバッテリ液面通常時よりも制限されるという車両性能の制限を段階的に受ける。
これにより、バッテリ14の液面低下状態での走行時の放電が抑制され、バッテリ14の液面低下状態における放電によるバッテリ劣化が抑制される。
また、オペレータがフォークリフト10の加速性能がバッテリ液面通常時よりも制限されていることを体感することで、バッテリ14の液面低下状態の異常をオペレータに確実に認識させやすい。
【0052】
本実施形態のフォークリフト10によれば以下の作用効果を奏する。
(1)バッテリ14の予め設定した設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態になると、CPU41が液面低下状態稼働時間の積算を開始する。フォークリフト10の走行モータ17が液面低下状態稼働時間に応じて段階的なトルク制限を受けることで、走行時におけるバッテリ14の放電は、バッテリ液通常時よりも抑制され、バッテリの液面低下時の放電によるバッテリ劣化を積極的に抑制することができる。また、フォークリフト10の加速時においてオペレータがトルク制限に基づく低加速を体感することにより、バッテリ液面低下の状態を確実に認識することができる。これにより、例えば、産業車両をバッテリ液の補給場所へ向けて移動させるなどの措置をオペレータに促すことができる。
【0053】
(2)トルク制限条件における制限内容や各設定時間を変更可能であるから、各段階における最大トルクの設定値や各段階を規定する各設定時間、段階数を適宜変更することができる。例えば、第1段階から走行モータ17のトルク制限を行ってバッテリ14の劣化抑制を強化するとしたバッテリ保護を最重視するトルク制限条件や、逆に、第4段階でも走行できるバッテリ保護よりも作業優先のトルク制限条件等、フォークリフトの管理者の希望に沿ってトルク制限条件の設定を行うことができる。
(3)液面レベルセンサ47は、走行モータ17に対する電流の出入がないモータ停止状態でバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した状態を検出する。つまり、電流の出入がない状態の走行モータ17は力行および回生のない状態であり、車体11が走行せず静止して車体11の揺れがなく、バッテリ液の揺れがない。従って、液面レベルセンサ47は、バッテリ14の液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達したか否かを正確に検出することができる。
【0054】
(4)バッテリ14のバッテリ液が予め設定した設定バッテリ液面以下になり走行モータ17のトルクが段階的に制限されると、ディスプレイユニット32の表示部40には、積算されている液面低下状態稼働時間が表示される。従って、オペレータは低加速度の体感によるバッテリ14の液面低下状態を認識しやすくなるとともに、液面低下状態になってからの経過時間を認識することができる。
(5)S(スタンダード)モード、P(パワー)モード、H(ハイパワー)モードの3モードが用意されているが、走行モータ17がトルク制限を受けることで、例えば、PモードやHモードへの切り換えができない状態となり、オペレータはパワーモードの切り換えが不可能あるいは制限されていることを認識し、バッテリ14の液面低下状態を認識しやすくなる。
【0055】
なお、本実施形態では、電動モータ制限条件として、液面低下状態稼働時間に応じて走行モータ17のトルクを段階的に制限するトルク制限条件とした。
電動モータ制限条件は、例えば、トルクを制限するトルク制限条件に代えてフォークリフト10の車速を段階的に制限する車速制限条件としてもよい。
車速制限条件の場合も各段階(第1〜第4段階)を規定する複数の設定時間(第1〜第3設定時間)と、各段階に対応する制限内容(第1〜第4制限内容)が設定される。
図5は各段階に対応する制限内容を示すグラフ図であり、バッテリ液面通常時(および第1段階)のグラフB1では、車速制限を受けることがなく最大車速V1が可能である。
第2段階のグラフB2では第2段階の最大車速V1の80%の最大車速V2とし、第3段階のグラフB3では通常時における最大車速V1の30%の最大車速V3としてもよい。
車速制限を段階的に受ける場合、フォークリフト10の通常状態の加速は可能であっても最大車速が制限されるので加速期間がバッテリ液面通常時よりも段階的に短くなり、バッテリ14の放電が抑制される。
【0056】
車速制限条件に基づき走行モータ17を駆動制御することで、バッテリ14のバッテリが液面低下時の放電によるバッテリ劣化を抑制することができる。
また、フォークリフト10の走行時においてオペレータが最大車速の制限を体感することにより、バッテリ14の液面低下状態を確実に認識することができる。
オペレータは車速性能の制限という車両性能の制限を体感することでバッテリ14の液面低下状態を認識しやすくなり、例えば、フォークリフト10をバッテリ液の補給場所へ向けて移動させるなどの措置を促すことができる。
なお、車速制限を段階的に受ける場合も、例えば、PモードやHモードへの切り換えができない状態とすることが可能であり、オペレータはパワーモードの切り換えが不可能あるいは制限されていることを認識できる。
【0057】
本実施形態では、キーON状態であってバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態における車両稼動時間である液面低下状態稼働時間を積算するようにしたが、液面低下状態稼働時間をキーON状態の時間以外の時間を条件としてもよい。
例えば、バッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態における走行モータ17の稼動時間である液面低下状態モータ稼動時間を液面低下状態稼働時間として積算してもよい。
この場合、液面低下状態モータ稼動時間である液面低下状態稼働時間に応じてトルク制限条件に基づき走行モータ17のトルクを段階的に制限すればよい。
【0058】
液面低下状態モータ稼動時間を液面低下状態稼働時間として積算する場合でも、図3および図4に示すトルク制限条件に基づき段階的に走行モータ17のトルクを制限することができる。
バッテリ14の電力消費において大きな割合を占める走行モータ17の稼働時間である液面低下状態モータ稼動時間を液面低下状態稼働時間として積算し、液面低下状態稼働時間に応じてトルク制限条件に基づき走行モータ17のトルクを段階的に制限することで、液面低下時の放電によるバッテリ劣化を抑制することができる。
因みに、液面低下状態モータ稼動時間を液面低下状態稼働時間として積算する場合でも、図5に示す車速制限条件に基づき段階的に車速を制限することも可能である。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るフォークリフトについて説明する。
本実施形態のフォークリフトは、ディスプレイユニットを設置しない構成である。
第1の実施形態と共通する要素については、先の実施形態の説明を援用して説明を省略し同一符号を用いる。
図6に示すように、本実施形態の走行荷役コントローラ33はCPU51を備え、CPU51にはリアルタイムクロックIC52およびメモリ53が接続されている。
CPU51、リアルタイムクロックIC52およびメモリ53は第1の実施形態のCPU41、リアルタイムクロックIC42およびメモリ43と同じ機能を果す構成である。
走行モータ17のトルクを段階的に制限するトルク制限条件に関するプログラムはCPU51に内蔵された内蔵メモリ(図示せず)に記憶保持されている。
バッテリ14の液面レベルセンサ47は、走行荷役コントローラ33のCPU51にインターフェース54を介して接続されている。
【0060】
バッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下になった場合のフォークリフト10の制御については、第1の実施形態と同様に、液面低下状態稼働時間を積算し、液面低下状態稼働時間に応じて段階的にトルクを制限するトルク制限条件に基づき走行モータ17が駆動される。
本実施形態によれば、バッテリ14の液面低下状態を示すアラーム表示や経過時間の表示がなくても、オペレータはフォークリフト10の加速時においてトルク制限条件に基づく低加速を体感することで、バッテリ14の液面低下を認識することができる。
【0061】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○ 上記の各実施形態では、トルク制限又は車速制限という走行モータに対する性能制限を行う電動モータ制限条件としたが、走行モータに限らず荷役モータに対する性能制限を行う電動モータ制限条件としてもよい。この場合、バッテリの液面低下時の放電は、走行モータにのみ性能制限を行う場合と比較すると抑制され、バッテリの液面低下時の放電によるバッテリ劣化をさらに抑制することができる。
○ 上記の各実施形態では、リアルタイムクロックICを用いて計時するようにしたが、例えば、ディスプレイユニットのCPUや走行荷役コントローラのCPUが有する制御周期クロック機能により計時してもよい。この場合、リアルタイムクロックICを設ける必要がなくなるほか、リアルタイムクロックICを用いた場合と同様の作用効果を奏する。
○ 第1の実施形態では、ディスプレイユニットにおいて積算中の液面低下状態稼働時間の表示を行うようにしたが、例えば、液面低下状態稼働時間の表示に代えて、現在進行中の段階が次の段階へ移行するまでの残存時間を減数表示(カウントダウン表示)してもよい。この現在段階の残存時間の減数表示することにより、オペレータは、バッテリ容量計や車両稼働時間の表示から現在段階の残存時間を推測する場合と比較すると、現在段階が継続可能な時間を直接的に正確に認識することができ、バッテリ液の補給の必要性をオペレータにより強く促すことができる。なお、現在段階の残存時間は、各設定時間と積算される液面低下状態稼働時間との関係から求めることができる。
○ 上記の各実施形態では、産業車両としてのバッテリフォークリフトについて説明したが、産業車両は建設車両を含み、バッテリを駆動源とする建設車両についても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 フォークリフト(産業車両としての)
14 バッテリ
17 走行モータ(電動モータとしての)
24 荷役モータ
32 ディスプレイユニット
33 走行荷役コントローラ
34、35 駆動回路
36、37、45、46、54 インターフェース
40 表示部
41、51 CPU
42、52 リアルタイムクロックIC
43、53 メモリ
44 操作スイッチ
47 液面レベルセンサ
T1 第1設定時間
T2 第2設定時間
T3 第3設定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に搭載されるバッテリと、
前記バッテリの電力により駆動力を生じる電動モータを備えた産業車両であって、
前記バッテリのバッテリ液面が予め設定した設定バッテリ液面以下に達した液面低下状態を検出する液面レベルセンサと、
前記液面レベルセンサによる前記液面低下状態の検出に基づき、前記液面低下状態での車両稼動時間である液面低下状態稼働時間を積算する稼働時間積算手段と、
前記液面低下状態稼働時間を記憶する記憶手段と、
前記液面低下状態稼働時間に応じて前記電動モータの駆動を段階的に制限する電動モータ制限条件に基づき、前記電動モータの駆動を制御するモータ制御手段と、を備えたことを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記電動モータ制限条件には、
複数の段階を規定する複数の設定時間と、
各段階に対応する前記電動モータの制限内容と、が設定され、
前記制限内容および前記設定時間は変更可能であることを特徴とする請求項1記載の産業車両。
【請求項3】
前記電動モータは、走行駆動力を生じる走行モータであり、
前記電動モータ制限条件は、
前記液面低下状態稼働時間に対応して前記走行モータの最大トルクを段階的に制限するトルク制限条件又は、
前記液面低下状態稼働時間に対応して最大車速を段階的に制限する車速制限条件であることを特徴とする請求項1又は2記載の産業車両。
【請求項4】
前記電動モータに対する電流の出入がないモータ停止状態で、前記液面レベルセンサが前記液面低下状態を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の産業車両。
【請求項5】
時間表示可能な表示手段を備え、
前記表示手段は、積算中の前記液面低下状態稼働時間および現在進行中にある前記段階の残存時間の少なくとも一方を表示することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の産業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−100379(P2012−100379A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243783(P2010−243783)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】