移植機
【課題】 苗トレイの苗収容部から取出した苗を圃場に直接植付けるように構成された植付体の爪部を前記苗収容部への進入位置に正確に進入させることができるようにする。
【解決手段】 爪部材31が苗収容部C1への進入位置(a) 及び該進入位置(a) の下側の植付位置並びに進入位置(a) から爪部材31が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡Zで移動が可能な植付体3と、苗トレイを支持する苗載台支持部8aとの一方に、植付体3の移動方向と交差する方向へ突出する凸部50を設け、他方に、植付体3が進入位置(a) の進入始点部分(d) に移動したとき、凸部50に係合して植付体3の進入位置(a) への移動を案内する案内部51を設け、案内部51に沿って植付体3を進入始点部分(d) から進入位置(a) に移動させるようにした。
【解決手段】 爪部材31が苗収容部C1への進入位置(a) 及び該進入位置(a) の下側の植付位置並びに進入位置(a) から爪部材31が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡Zで移動が可能な植付体3と、苗トレイを支持する苗載台支持部8aとの一方に、植付体3の移動方向と交差する方向へ突出する凸部50を設け、他方に、植付体3が進入位置(a) の進入始点部分(d) に移動したとき、凸部50に係合して植付体3の進入位置(a) への移動を案内する案内部51を設け、案内部51に沿って植付体3を進入始点部分(d) から進入位置(a) に移動させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は苗トレイの苗収容部から取り出した玉ねぎ、葉ねぎ、白ねぎ等の野菜の苗を圃場に直接植付ける移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
移植機は苗載台に搭載された苗トレイの苗収容部から苗を取出す苗取出爪、及び該苗取出爪の下側に上下移動可能に配置され、苗取出爪が取出した苗を受入れて圃場に植付ける植付器を備える移植機と、苗載台に搭載された苗トレイの苗収容部から苗を取出し、且つ取出した苗を圃場に直接植付ける植付爪を備える移植機(例えば、特許文献1参照)とが知られている。
【0003】
特許文献1の移植機は、苗収容部を有する苗トレイを支持する移植機本体と、該移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の偏心位置に回転が自在に支持された第2回転部材と、前記苗トレイの苗収容部に進入する爪部を有し、前記第2回転部材の偏心位置に枢支された植付体と、該植付体を上下に揺動させ、前記第2回転部材を第1回転部材と反対方向へ回転させる複数本の制御アーム等を備えており、前記第1回転部材、第2回転部材の回転及び植付体の揺動により該植付体を、爪部が前記苗収容部に進入する進入位置及び該進入位置の下側で苗を植付ける植付位置並びに前記進入位置から前記爪部が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡で移動させるように構成されている。
【特許文献1】特開2003−274710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、苗トレイの苗収容部は、比較的小さい四角形で格子形をなすように並んでおり、この小形の苗収容部の一つに植付体の爪部が進入して、苗収容部の苗を取出すことになる。
【0005】
ところが、特許文献1のように構成された移植機は、第1回転部材及び第2回転部材が互いに反対方向へ回転し、さらに、植付体が上下に揺動可能に構成されているため、第1回転部材、第2回転部材及び植付体等の駆動系のガタ等により前記爪部の進入位置への進入を正確に行わせるのが難しく、改善策が要望されていた。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、主たる目的は苗トレイの苗収容部から取出した苗を圃場に直接植付けるように構成された植付体と移植機本体との一方に凸部を設け、該凸部に係合して植付体の移動を案内する案内部を他方に設けることにより、爪部の移動方向と異なる方向への動きを進入位置への進入始点部分で規制し、爪部を進入位置に正確に進入させることができる移植機を提供することにある。
【0007】
また、他の目的は第1回転部材の偏心位置に第1回転部材の回転方向と反対方向に回転が自在に支持された第2回転部材と、該第2回転部材の偏心位置に植付体が上下に揺動が可能に枢支されている構成とし、該植付体の揺動中心と平行的に凸部を設けることにより、植付体の進入始点部分での揺動を規制し、爪部を進入位置に正確に進入させることができる移植機を提供することにある。
【0008】
また、他の目的は第1回転部材の偏心位置に対して両側に第1回転部材の回転方向と反対方向に回転が自在に支持された二つの第2回転部材と、それぞれの第2回転部材の偏心位置に植付体が上下に揺動が可能に枢支されている構成とし、該植付体の揺動中心と平行的に凸部を設けることにより、二つの植付体が交互に苗を植付け、しかも、植付体の進入始点部分での揺動を規制し、爪部を進入位置に正確に進入させることができる移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る移植機は、苗収容部を有する苗トレイを支持する移植機本体と、前記苗収容部に進入する爪部を有し、該爪部が前記苗収容部に進入する進入位置及び該進入位置の下側で苗を植付ける植付位置並びに前記進入位置から前記爪部が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡で移動が可能な植付体とを備える移植機において、前記移植機本体及び前記植付体の一方は、前記植付体の移動方向と交差する方向へ突出する凸部を有しており、他方は、前記植付体が前記進入位置の進入始点部分に移動したとき、前記凸部に係合して前記植付体の前記進入位置への移動を案内する案内部を有することを特徴とする。
【0010】
第1発明にあっては、爪部を有する植付体が、爪部が前記苗収容部に進入する進入位置及び該進入位置の下側で苗を植付ける植付位置並びに前記進入位置から前記爪部が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡で移動することにより、進入位置で爪部が苗収容部に進入して苗を取出し、苗取出後の植付体が下側へ揺動しつつ苗が植付位置に運ばれ、この植付位置で植付体により苗が圃場に植付けられ、苗植付後の植付体は上側へ揺動しつつ後退位置へ移動し、さらに後退位置から前進位置へ移動して新たに苗収容部から苗を取出すことになる。植付体が後退位置から進入位置の進入始点部分に移動したとき、凸部が案内部に係合し、案内部に沿って植付体を進入始点部分から進入位置に移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部に爪部を正確に進入させることができ、苗収容部の苗を正確に取出すことができる。
【0011】
第2発明に係る移植機は、前記移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の偏心位置に前記第1回転部材と反対方向へ回転が自在に支持された第2回転部材を備えており、該第2回転部材の偏心位置に前記植付体が上下に揺動が可能に枢支されており、前記凸部は前記植付体の揺動中心と平行的に設けてあることを特徴とする。
【0012】
第2発明にあっては、第1回転部材と第2回転部材とが互いに反対方向へ回転し、さらに、植付体が上下に揺動することにより、該植付体が前記移動軌跡で移動し、植付体が進入始点部分に移動したとき凸部が案内部に係合し、植付体の揺動を規制することができ、この規制した状態で爪部を進入位置に正確に進入させることができ、苗収容部の苗を正確に取出すことができる。
【0013】
第3発明に係る移植機は、前記移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の回転中心に対して両側に前記第1回転部材と反対方向へ回転が自在に支持された二つの第2回転部材を備えており、夫々の第2回転部材の偏心位置に前記植付体が上下に揺動が可能に枢支されており、前記凸部は前記植付体の揺動中心と平行的に設けてあることを特徴とする。
【0014】
第3発明にあっては、第1回転部材と二つの第2回転部材とが互いに反対方向へ回転し、さらに、二つの植付体が上下に揺動することにより、二つの植付体が前記移動軌跡で移動し、一の植付体が進入始点部分に移動したとき凸部が案内部に係合し、一の植付体の揺動を規制することができ、この規制した状態で爪部を進入位置に正確に進入させることができ、苗収容部の苗を正確に取出すことができる。また、一の植付体が苗を取出し、進入位置から植付位置を経て後退位置へ移動する間に、他の植付体が進入始点部分に移動して凸部が案内部に係合し、他の植付体の揺動を規制することができ、この規制した状態で爪部を進入位置に正確に進入させることができる。
【発明の効果】
【0015】
第1発明、第2発明及び第3発明によれば、植付体が移動軌跡の後退位置から進入位置の進入始点部分に移動したとき、案内部に沿って植付体を進入始点部分から進入位置に移動させることができるため、比較的小さい苗収容部に爪部を正確に進入させることができ、苗収容部の苗を正確に取出すことができ、苗取り性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は本発明に係る移植機の全体の構成を示す側面図、図2は移植機本体部分の構成を示す模式的説明図、図3は植付体部分の構成を示す模式的説明図、図4及び図5は第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図、図6は植付体部分の構成を示す概略平面図、図7は第1回転部材と植付体との関係を示す概略説明図である。
【0017】
この移植機は、二つの前輪1a及び二つの後輪1bにより機体1が支持された走行部Aと、該走行部Aの後側に昇降機構2により昇降が可能に支持された移植機本体Bと、該移植機本体Bに支持された植付体3とを備える。
【0018】
走行部Aの機体1には駆動源としてのエンジン4及び該エンジン4が発生した回転動力を変速するミッション5と、該ミッション5に連動連結されたPTO軸6とが設けられており、後輪1bがミッション5に連動連結されている。
【0019】
移植機本体Bは、PTO軸6に連動連結され、PTO軸と直交的に配置された出力軸7が支持されたフレーム8と、該フレーム8に横移動を可能に支持された苗載台9と、該苗載台9を横方向に往復動させる往復動機構(図示せず)と、苗載台9が往復動方向の終端位置に移動したとき、該苗載台9に支持される苗トレイCを下方に向かって、換言すれば後記する進入位置(a) に向かって1ピッチ縦送りする縦送り機構(図示せず)と、出力軸7に連動連結され、苗載台9の移動方向に離隔して配置された複数本の第1伝動軸10と、その一端がフレーム8に結合され、内部に第1伝動軸10を回転自在に支持した管形状をなす複数の支持体11とを備える。
【0020】
各支持体11の他端には第1伝動軸10に連動連結され、第1伝動軸10と直交的に配置された第2伝動軸12が回転自在に支持されており、該第2伝動軸12に第1回転部材13が回転自在に支持されており、さらに、第1回転部材13の回転中心周りで環状となる揺動用カム14を有するカム板15が固定されている。
【0021】
第1回転部材13はその中央部が第2伝動軸12に結合された長円形のケースからなり、回転中心に対して長手方向両側に第1筒軸16,16を介して二つの第2回転部材17,17が回転が自在に支持されており、さらに、各第1筒軸16,16内に回転が自在である第3伝動軸18,18が支持されている。
【0022】
第1回転部材13内には、第2伝動軸12の外周りに固定された入力歯車19と、該入力歯車19に噛合し、中間軸20,20に遊転が自在に支持された二つの中間歯車21,21と、該中間歯車21,21に噛合し、各第1筒軸16に固定された二つの出力歯車22,22と、各第3伝動軸18,18に固定された伝動歯車23,23と、該伝動歯車23,23に噛合する部分歯24a,24a及び揺動用カム14に係合する転動輪24b,24bを有し、枢支軸24c,24cにより揺動が自在に支持された二つの揺動アーム24,24とが収容されており、第1回転部材13の回転に連動して第2回転部材17,17が回転し、さらに、第1回転部材13の回転に連動して揺動アーム24,24が揺動し、第3伝動軸18,18を正逆回転方向へ角回転させるように構成されている。
【0023】
出力歯車22と入力歯車19とのギヤ比は1:3になっており、第1回転部材13が正回転方向に1回転するとき、第2回転部材17,17が逆回転方向に2回転するように構成されている。
【0024】
揺動アーム24,24はその中央部が第1回転部材13内に枢支された略L字形をなしており、揺動中心がピッチ円の部分歯24aが一端部に設けられ、他端部に転動輪24bが軸支され、第2回転部材17,17が1回転するとき、第3伝動軸18,18がほぼ90度正転及び逆転し、該第3伝動軸18,18に連動連結される植付体3を往動/復動させるように構成されている。
【0025】
第2回転部材17,17は、その一端部が第1筒軸16,16に結合された長円形のケースからなり、回転中心に対して長手方向側へ偏心した位置に第2筒軸25,25を介して植付体3,3が上下に揺動が可能に枢支されており、さらに、第2筒軸25,25内に角回転が自在である制御軸26,26が支持されている。
【0026】
第2回転部材17,17内には、第3伝動軸18,18の外周りに固定された入力歯車27,27と、該入力歯車27,27に噛合し、中間軸28,28に遊転が自在に支持された中間歯車29,29と、該中間歯車29,29に噛合し、第2筒軸25,25に固定された出力歯車40,40と、制御軸26,26に固定された伝動歯車41,41と、該伝動歯車41,41に噛合し、中間歯車29,29と一体に形成された遊転歯車42,42とが収容されており、第2回転部材17,17が1回転するとき、植付体3,3が上下にほぼ90度往復揺動し、さらに、制御軸26,26が角回転するように構成されている。
【0027】
入力歯車27及び中間歯車29は同一歯数であり、伝動歯車41及び遊転歯車42は同一歯数であり、中間歯車29と出力歯車40とのギヤ比は2:3になっており、第2筒軸25,25に設けられた出力歯車40,40と、制御軸26,26に設けられた伝動歯車41,41との回転差がほぼ1回転となるようになっており、第2筒軸25,25と一体に揺動する植付体3,3が揺動するとき、制御軸26,26を植付体3,3に対して一定角度で角回転させるように構成されている。
【0028】
植付体3,3はその中央部が第2筒軸25,25に結合された四角形のケース30,30を備えており、揺動中心に対して偏心した位置に爪部としての一対の爪部材31,31が揺動自在に枢支されており、さらに、爪部材31,31を離隔する方向へ開動作させる付勢ばね32と、制御軸26,26に固定された掴み用カム33及び苗押出用カム34と、爪部材31,31の内側面に沿って摺動が自在の苗押出部材35と、苗押出用カム34の動作を苗押出部材35に伝動する伝動アーム36とがケース30,30内に収容されている。
【0029】
爪部材31,31は離隔する二つの枢支軸37,37に遊嵌された筒部31a,31a及び該筒部31a,31aの外側に突設され、互いに当接する第1の凸片31b,31bを有しており、該凸片31b,31bが付勢ばね32により付勢されてほぼ平行となるように開動作している。また、一方の爪部材31の筒部31aには第3の凸片31cが突設されており、第3の凸片31c及び掴み用カム33間に介装された伝動部材38を介して制御軸26,26の角回転を一方の爪部材31に伝動し、付勢ばね32の付勢力に打ち勝って一対の爪部材31,31を閉動作させるように構成されている。
【0030】
図8は植付体3,3の移動軌跡を示す説明図である。以上のように第1回転部材13が正回転方向に1回転するとき、第2回転部材17,17が逆回転方向に2回転し、該第2回転部材17,17が1回転するとき、植付体3,3が上下にほぼ90度往復揺動する構成とすることにより、植付体3,3の揺動中心の移動軌跡が図8に示すように略三角形をなす植付基本軌跡Kとなり、且つ、爪部としての爪部材31,31の先端の移動軌跡Zが図8に示すように略三角形をなす移動軌跡となり、爪部材31,31が苗トレイCの苗収容部C1に進入する進入位置(a) 及び該進入位置(a) の下側で圃場の畝に苗を植付ける植付位置(b) 並びに前記進入位置(a) から爪部材31,31が後退する側の後退位置(c) で移動転換される移動軌跡で移動が可能となる。
【0031】
図9〜図12は植付体3,3の移動過程を示す説明図である。第1回転部材13及び第2回転部材17,17が回転している状態で一の植付体3が苗トレイCの苗収容部C1に収容された苗を取出すとき、一の植付体3の爪部材31,31は進入始点部分(d) から進入位置(a) にかけてほぼ水平となり(図9参照)、該爪部材31,31が進入位置(a) に進入し、他の植付体3は移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c) に向けて移動している(図9参照)。この場合、一の植付体3の爪部材31,31は付勢ばね32の付勢力により開いており、この開状態で進入位置(a) に進入した後、掴み用カム33により爪部材31,31は閉動作し、苗収容部C1の苗を掴む。
【0032】
苗を掴んだ状態から第1回転部材13が矢印X方向に回転し、第2回転部材17,17が矢印Y方向に回転することにより、一の植付体3が進入位置(a) から進入始点部分(d) に水平的に後退移動しつつ下側の植付位置(b) に向けて下方へ揺動し、爪部材31,31は水平姿勢から下向き側へ傾斜し(図10参照)、他の植付体3は上方へ揺動しつつ後退位置(c) を通過し、進入位置(a) に向けて移動しており、爪部材31,31は下向きのほぼ鉛直状から上向き側へ傾斜方向が変わっている(図10参照)。この場合、一の植付体3の爪部材31,31が掴んだ苗は苗収容部C1から水平的に取出され、爪部材31,31に掴まれた状態で根鉢部が下側となるように姿勢が変わる。
【0033】
下降過程を経て一の植付体3の揺動角度がほぼ90度になると、一の植付体3は植付位置(b) に移動し、一の植付体3の爪部材31,31はほぼ鉛直状となり、該爪部材31,31が圃場の畝に突込み、他の植付体3は上方へ揺動しつつ進入始点部分(d) と僅かに離隔した位置を進入位置(a) に向けて移動しており、爪部材31,31は水平状態になりつつ姿勢が変わっている(図12参照)。この場合、一の植付体3の爪部材31,31は掴み用カム33による拘束が解除され、付勢ばね32の付勢力により開動作し、苗の根鉢部を開放し、該苗を圃場に植付ける。また、植付体3には苗押出し部材35が設けられているため、苗押出し用カム34及び伝動アーム36により苗押出し部材35が爪部材31,31に沿って下方へ摺動し、該苗押出し部材35の先端が苗の根鉢部上面に当接し、苗を爪部材31,31に対して押出す。従って、苗の爪部材31,31による持ち上がりを確実に防ぐことができる。
【0034】
一の植付体3が苗を圃場に植付けた状態から上方へ揺動しつつ後退位置(c) に向けて移動するとき、他の植付体3の揺動角度がほぼ90度になり、他の植付体3の爪部材31,31は進入始点部分(d) から進入位置(a) にかけてほぼ水平となり、該爪部材31,31が進入位置(a) に進入し、一の植付体3は移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c) に向けて移動している(図9参照)。この場合、他の植付体3の爪部材31,31は付勢ばね32の付勢力により開いており、この開状態で進入位置(a) に進入した後、掴み用カム33により爪部材31,31は閉動作し、苗収容部C1の苗を掴む。以上の(a) 〜(d) の過程を繰り返すことにより苗トレイCの苗を圃場の畝に植付ける。
【0035】
図13は植付体3,3の移動を案内する部分の斜視図、図14〜図16は植付体3,3の移動過程における植付体3,3の案内状態を示す説明図である。以上のように構成された植付体3,3は、ケース30,30の一側で、且つ揺動中心に対して偏心した位置に、前記揺動中心と平行的に突設された凸部50,50を有しており、この凸部50,50に係合して植付体3,3の進入位置(a) への移動を案内する案内部51が移植機本体Bの苗載台支持部8aに設けられている。
【0036】
凸部50,50はピンを用いてなり、該ピンの一端部が固定部材52,52を介して制御軸26,26の端部に固定されている。固定部材52,52は制御軸26,26の端部にスプライン嵌合された嵌合筒52a,52aと、該嵌合筒52a,52aにその一端部が溶接により固定された第1板体52b,52bと、該第1板体52b,52bの他端部にその一端部が連結軸52c,52cを介して結合され、中央部の貫通孔が嵌合筒52a,52aに外嵌された第2板部52d,52dとを有しており、第2板部52d,52dの他端部に凸部50,50が制御軸26,26と平行的に結合されている。
【0037】
案内部51はフレーム8の苗載台支持部8aに設けられたブラケット8bに固定された板体51aに移動軌跡Zの進入始点部分(d) から進入位置(a) までの往移動の移動軌跡(Z1) 及び復移動の移動軌跡(Z2) の移動軌跡に沿って上下に対向する略<字形に設けられている。往移動の移動軌跡(Z1)に沿う上側の案内部51はほぼ直線状になっており、復移動の移動軌跡(Z2)に沿う下側の案内部51は上向きの円弧で下側へ変位する湾曲状になっている。
【0038】
以上のように植付体3,3のケース30,30には凸部50がそれぞれ設けられており、移植機本体Bのフレーム8には凸部50が係合する案内部51がそれぞれ設けられているため、一の植付体3が後退位置(c) から進入位置(a) の進入始点部分(d) に移動したとき、凸部50が往移動の移動軌跡(Z1)に沿う上側の案内部51に係合し、一の植付体3を進入始点部分(d) から進入位置(a) に移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部C1に一の植付体3の(爪部材31,31を正確に進入させることができる。この爪部材31,31が進入位置(a) に進入している状態で掴み用カム33により爪部材31,31が閉動作し、苗収容部C1の苗を掴み、凸部50は下側の復移動の移動軌跡(Z2)に沿う案内部51に係合し、一の植付体3を進入位置(a) から進入始点部分(d) に後退移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部C1の苗を掴んだ状態で苗をスムーズに取出すことができる。
【0039】
一の植付体3が植付位置(b) で苗を圃場に植え付けた後、一の植付体3が後退位置(c) へ移動するとき、他の植付体3が進入始点部分(d) に移動し、一の植付体3の場合と同様、凸部50が往移動の移動軌跡(Z1)に沿う上側の案内部51に係合し、他の植付体3を進入始点部分(d) から進入位置(a) に移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部C1に他の植付体3の爪部材31,31を正確に進入させることができる。この爪部材31,31が進入位置(a) に進入している状態で掴み用カム33により爪部材31,31が閉動作し、苗収容部C1の苗を掴み、凸部50は復移動の移動軌跡(Z2)に沿う下側の案内部51に係合し、他の植付体3を進入位置(a) から進入始点部分(d) に後退移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部C1の苗を掴んだ状態で苗をスムーズに取出すことができる。
【0040】
尚、以上説明した実施の形態では、植付体3が凸部50を有し、移植機本体Bのフレーム8が案内部51を有する構成としたが、その反対に、植付体3が案内部51を有し、移植機本体Bのフレーム8が凸部50を有する構成としてもよい。また、移植機本体Bに設ける案内部51又は凸部50は、植付体3に対して静止する静止部材に設けるのであり、静止部材の構成は特に制限されない。
【0041】
また、以上説明した実施の形態では、往移動の移動軌跡(Z1)に沿う上側の案内部51と、復移動の移動軌跡(Z2)に沿う下側の案内部51とを有する構成としたが、その他、復移動の移動軌跡(Z2)に沿う下側の案内部51は特に必要でない。
【0042】
また、以上説明した実施の形態では植付体3の一側の凸部50(又は案内部51)を有する構成としたが、その他、植付体3の両側に凸部50(又は案内部51)を有し、この両側の凸部50に係合する案内部51(又は凸部50)が移植機本体Bに設けられた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る移植機の全体の構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る移植機の移植機本体部分の構成を示す模式的説明図である。
【図3】本発明に係る移植機の植付体部分の構成を示す模式的説明図である。
【図4】本発明に係る移植機の第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図である。
【図5】本発明に係る移植機の第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図である。
【図6】本発明に係る移植機の植付体部分の構成を示す概略平面図である。
【図7】本発明に係る移植機の第1回転部材と植付体との関係を示す概略説明図である。
【図8】本発明に係る移植機の植付体の移動軌跡を示す説明図である。
【図9】本発明に係る移植機の植付体の移動過程を示す説明図である。
【図10】本発明に係る移植機の植付体の移動過程を示す説明図である。
【図11】本発明に係る移植機の植付体の移動過程を示す説明図である。
【図12】本発明に係る移植機の植付体の移動過程を示す説明図である。
【図13】本発明に係る移植機の植付体の移動を案内する部分の斜視図である。
【図14】本発明に係る移植機の植付体の移動過程における植付体の案内状態を示す説明図である。
【図15】本発明に係る移植機の植付体の移動過程における植付体の案内状態を示す説明図である。
【図16】本発明に係る移植機の植付体の移動過程における植付体の案内状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
3 植付体
31 爪部材(爪部)
13 第1回転部材
17 第2回転部材
50 凸部
51 案内部
B 移植機本体
C 苗トレイ
C1 苗収容部
(a) 進入位置
(b) 植付位置
(c) 後退位置
(d) 進入始点部分
Z 移動軌跡
【技術分野】
【0001】
本発明は苗トレイの苗収容部から取り出した玉ねぎ、葉ねぎ、白ねぎ等の野菜の苗を圃場に直接植付ける移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
移植機は苗載台に搭載された苗トレイの苗収容部から苗を取出す苗取出爪、及び該苗取出爪の下側に上下移動可能に配置され、苗取出爪が取出した苗を受入れて圃場に植付ける植付器を備える移植機と、苗載台に搭載された苗トレイの苗収容部から苗を取出し、且つ取出した苗を圃場に直接植付ける植付爪を備える移植機(例えば、特許文献1参照)とが知られている。
【0003】
特許文献1の移植機は、苗収容部を有する苗トレイを支持する移植機本体と、該移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の偏心位置に回転が自在に支持された第2回転部材と、前記苗トレイの苗収容部に進入する爪部を有し、前記第2回転部材の偏心位置に枢支された植付体と、該植付体を上下に揺動させ、前記第2回転部材を第1回転部材と反対方向へ回転させる複数本の制御アーム等を備えており、前記第1回転部材、第2回転部材の回転及び植付体の揺動により該植付体を、爪部が前記苗収容部に進入する進入位置及び該進入位置の下側で苗を植付ける植付位置並びに前記進入位置から前記爪部が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡で移動させるように構成されている。
【特許文献1】特開2003−274710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、苗トレイの苗収容部は、比較的小さい四角形で格子形をなすように並んでおり、この小形の苗収容部の一つに植付体の爪部が進入して、苗収容部の苗を取出すことになる。
【0005】
ところが、特許文献1のように構成された移植機は、第1回転部材及び第2回転部材が互いに反対方向へ回転し、さらに、植付体が上下に揺動可能に構成されているため、第1回転部材、第2回転部材及び植付体等の駆動系のガタ等により前記爪部の進入位置への進入を正確に行わせるのが難しく、改善策が要望されていた。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、主たる目的は苗トレイの苗収容部から取出した苗を圃場に直接植付けるように構成された植付体と移植機本体との一方に凸部を設け、該凸部に係合して植付体の移動を案内する案内部を他方に設けることにより、爪部の移動方向と異なる方向への動きを進入位置への進入始点部分で規制し、爪部を進入位置に正確に進入させることができる移植機を提供することにある。
【0007】
また、他の目的は第1回転部材の偏心位置に第1回転部材の回転方向と反対方向に回転が自在に支持された第2回転部材と、該第2回転部材の偏心位置に植付体が上下に揺動が可能に枢支されている構成とし、該植付体の揺動中心と平行的に凸部を設けることにより、植付体の進入始点部分での揺動を規制し、爪部を進入位置に正確に進入させることができる移植機を提供することにある。
【0008】
また、他の目的は第1回転部材の偏心位置に対して両側に第1回転部材の回転方向と反対方向に回転が自在に支持された二つの第2回転部材と、それぞれの第2回転部材の偏心位置に植付体が上下に揺動が可能に枢支されている構成とし、該植付体の揺動中心と平行的に凸部を設けることにより、二つの植付体が交互に苗を植付け、しかも、植付体の進入始点部分での揺動を規制し、爪部を進入位置に正確に進入させることができる移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る移植機は、苗収容部を有する苗トレイを支持する移植機本体と、前記苗収容部に進入する爪部を有し、該爪部が前記苗収容部に進入する進入位置及び該進入位置の下側で苗を植付ける植付位置並びに前記進入位置から前記爪部が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡で移動が可能な植付体とを備える移植機において、前記移植機本体及び前記植付体の一方は、前記植付体の移動方向と交差する方向へ突出する凸部を有しており、他方は、前記植付体が前記進入位置の進入始点部分に移動したとき、前記凸部に係合して前記植付体の前記進入位置への移動を案内する案内部を有することを特徴とする。
【0010】
第1発明にあっては、爪部を有する植付体が、爪部が前記苗収容部に進入する進入位置及び該進入位置の下側で苗を植付ける植付位置並びに前記進入位置から前記爪部が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡で移動することにより、進入位置で爪部が苗収容部に進入して苗を取出し、苗取出後の植付体が下側へ揺動しつつ苗が植付位置に運ばれ、この植付位置で植付体により苗が圃場に植付けられ、苗植付後の植付体は上側へ揺動しつつ後退位置へ移動し、さらに後退位置から前進位置へ移動して新たに苗収容部から苗を取出すことになる。植付体が後退位置から進入位置の進入始点部分に移動したとき、凸部が案内部に係合し、案内部に沿って植付体を進入始点部分から進入位置に移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部に爪部を正確に進入させることができ、苗収容部の苗を正確に取出すことができる。
【0011】
第2発明に係る移植機は、前記移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の偏心位置に前記第1回転部材と反対方向へ回転が自在に支持された第2回転部材を備えており、該第2回転部材の偏心位置に前記植付体が上下に揺動が可能に枢支されており、前記凸部は前記植付体の揺動中心と平行的に設けてあることを特徴とする。
【0012】
第2発明にあっては、第1回転部材と第2回転部材とが互いに反対方向へ回転し、さらに、植付体が上下に揺動することにより、該植付体が前記移動軌跡で移動し、植付体が進入始点部分に移動したとき凸部が案内部に係合し、植付体の揺動を規制することができ、この規制した状態で爪部を進入位置に正確に進入させることができ、苗収容部の苗を正確に取出すことができる。
【0013】
第3発明に係る移植機は、前記移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の回転中心に対して両側に前記第1回転部材と反対方向へ回転が自在に支持された二つの第2回転部材を備えており、夫々の第2回転部材の偏心位置に前記植付体が上下に揺動が可能に枢支されており、前記凸部は前記植付体の揺動中心と平行的に設けてあることを特徴とする。
【0014】
第3発明にあっては、第1回転部材と二つの第2回転部材とが互いに反対方向へ回転し、さらに、二つの植付体が上下に揺動することにより、二つの植付体が前記移動軌跡で移動し、一の植付体が進入始点部分に移動したとき凸部が案内部に係合し、一の植付体の揺動を規制することができ、この規制した状態で爪部を進入位置に正確に進入させることができ、苗収容部の苗を正確に取出すことができる。また、一の植付体が苗を取出し、進入位置から植付位置を経て後退位置へ移動する間に、他の植付体が進入始点部分に移動して凸部が案内部に係合し、他の植付体の揺動を規制することができ、この規制した状態で爪部を進入位置に正確に進入させることができる。
【発明の効果】
【0015】
第1発明、第2発明及び第3発明によれば、植付体が移動軌跡の後退位置から進入位置の進入始点部分に移動したとき、案内部に沿って植付体を進入始点部分から進入位置に移動させることができるため、比較的小さい苗収容部に爪部を正確に進入させることができ、苗収容部の苗を正確に取出すことができ、苗取り性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は本発明に係る移植機の全体の構成を示す側面図、図2は移植機本体部分の構成を示す模式的説明図、図3は植付体部分の構成を示す模式的説明図、図4及び図5は第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図、図6は植付体部分の構成を示す概略平面図、図7は第1回転部材と植付体との関係を示す概略説明図である。
【0017】
この移植機は、二つの前輪1a及び二つの後輪1bにより機体1が支持された走行部Aと、該走行部Aの後側に昇降機構2により昇降が可能に支持された移植機本体Bと、該移植機本体Bに支持された植付体3とを備える。
【0018】
走行部Aの機体1には駆動源としてのエンジン4及び該エンジン4が発生した回転動力を変速するミッション5と、該ミッション5に連動連結されたPTO軸6とが設けられており、後輪1bがミッション5に連動連結されている。
【0019】
移植機本体Bは、PTO軸6に連動連結され、PTO軸と直交的に配置された出力軸7が支持されたフレーム8と、該フレーム8に横移動を可能に支持された苗載台9と、該苗載台9を横方向に往復動させる往復動機構(図示せず)と、苗載台9が往復動方向の終端位置に移動したとき、該苗載台9に支持される苗トレイCを下方に向かって、換言すれば後記する進入位置(a) に向かって1ピッチ縦送りする縦送り機構(図示せず)と、出力軸7に連動連結され、苗載台9の移動方向に離隔して配置された複数本の第1伝動軸10と、その一端がフレーム8に結合され、内部に第1伝動軸10を回転自在に支持した管形状をなす複数の支持体11とを備える。
【0020】
各支持体11の他端には第1伝動軸10に連動連結され、第1伝動軸10と直交的に配置された第2伝動軸12が回転自在に支持されており、該第2伝動軸12に第1回転部材13が回転自在に支持されており、さらに、第1回転部材13の回転中心周りで環状となる揺動用カム14を有するカム板15が固定されている。
【0021】
第1回転部材13はその中央部が第2伝動軸12に結合された長円形のケースからなり、回転中心に対して長手方向両側に第1筒軸16,16を介して二つの第2回転部材17,17が回転が自在に支持されており、さらに、各第1筒軸16,16内に回転が自在である第3伝動軸18,18が支持されている。
【0022】
第1回転部材13内には、第2伝動軸12の外周りに固定された入力歯車19と、該入力歯車19に噛合し、中間軸20,20に遊転が自在に支持された二つの中間歯車21,21と、該中間歯車21,21に噛合し、各第1筒軸16に固定された二つの出力歯車22,22と、各第3伝動軸18,18に固定された伝動歯車23,23と、該伝動歯車23,23に噛合する部分歯24a,24a及び揺動用カム14に係合する転動輪24b,24bを有し、枢支軸24c,24cにより揺動が自在に支持された二つの揺動アーム24,24とが収容されており、第1回転部材13の回転に連動して第2回転部材17,17が回転し、さらに、第1回転部材13の回転に連動して揺動アーム24,24が揺動し、第3伝動軸18,18を正逆回転方向へ角回転させるように構成されている。
【0023】
出力歯車22と入力歯車19とのギヤ比は1:3になっており、第1回転部材13が正回転方向に1回転するとき、第2回転部材17,17が逆回転方向に2回転するように構成されている。
【0024】
揺動アーム24,24はその中央部が第1回転部材13内に枢支された略L字形をなしており、揺動中心がピッチ円の部分歯24aが一端部に設けられ、他端部に転動輪24bが軸支され、第2回転部材17,17が1回転するとき、第3伝動軸18,18がほぼ90度正転及び逆転し、該第3伝動軸18,18に連動連結される植付体3を往動/復動させるように構成されている。
【0025】
第2回転部材17,17は、その一端部が第1筒軸16,16に結合された長円形のケースからなり、回転中心に対して長手方向側へ偏心した位置に第2筒軸25,25を介して植付体3,3が上下に揺動が可能に枢支されており、さらに、第2筒軸25,25内に角回転が自在である制御軸26,26が支持されている。
【0026】
第2回転部材17,17内には、第3伝動軸18,18の外周りに固定された入力歯車27,27と、該入力歯車27,27に噛合し、中間軸28,28に遊転が自在に支持された中間歯車29,29と、該中間歯車29,29に噛合し、第2筒軸25,25に固定された出力歯車40,40と、制御軸26,26に固定された伝動歯車41,41と、該伝動歯車41,41に噛合し、中間歯車29,29と一体に形成された遊転歯車42,42とが収容されており、第2回転部材17,17が1回転するとき、植付体3,3が上下にほぼ90度往復揺動し、さらに、制御軸26,26が角回転するように構成されている。
【0027】
入力歯車27及び中間歯車29は同一歯数であり、伝動歯車41及び遊転歯車42は同一歯数であり、中間歯車29と出力歯車40とのギヤ比は2:3になっており、第2筒軸25,25に設けられた出力歯車40,40と、制御軸26,26に設けられた伝動歯車41,41との回転差がほぼ1回転となるようになっており、第2筒軸25,25と一体に揺動する植付体3,3が揺動するとき、制御軸26,26を植付体3,3に対して一定角度で角回転させるように構成されている。
【0028】
植付体3,3はその中央部が第2筒軸25,25に結合された四角形のケース30,30を備えており、揺動中心に対して偏心した位置に爪部としての一対の爪部材31,31が揺動自在に枢支されており、さらに、爪部材31,31を離隔する方向へ開動作させる付勢ばね32と、制御軸26,26に固定された掴み用カム33及び苗押出用カム34と、爪部材31,31の内側面に沿って摺動が自在の苗押出部材35と、苗押出用カム34の動作を苗押出部材35に伝動する伝動アーム36とがケース30,30内に収容されている。
【0029】
爪部材31,31は離隔する二つの枢支軸37,37に遊嵌された筒部31a,31a及び該筒部31a,31aの外側に突設され、互いに当接する第1の凸片31b,31bを有しており、該凸片31b,31bが付勢ばね32により付勢されてほぼ平行となるように開動作している。また、一方の爪部材31の筒部31aには第3の凸片31cが突設されており、第3の凸片31c及び掴み用カム33間に介装された伝動部材38を介して制御軸26,26の角回転を一方の爪部材31に伝動し、付勢ばね32の付勢力に打ち勝って一対の爪部材31,31を閉動作させるように構成されている。
【0030】
図8は植付体3,3の移動軌跡を示す説明図である。以上のように第1回転部材13が正回転方向に1回転するとき、第2回転部材17,17が逆回転方向に2回転し、該第2回転部材17,17が1回転するとき、植付体3,3が上下にほぼ90度往復揺動する構成とすることにより、植付体3,3の揺動中心の移動軌跡が図8に示すように略三角形をなす植付基本軌跡Kとなり、且つ、爪部としての爪部材31,31の先端の移動軌跡Zが図8に示すように略三角形をなす移動軌跡となり、爪部材31,31が苗トレイCの苗収容部C1に進入する進入位置(a) 及び該進入位置(a) の下側で圃場の畝に苗を植付ける植付位置(b) 並びに前記進入位置(a) から爪部材31,31が後退する側の後退位置(c) で移動転換される移動軌跡で移動が可能となる。
【0031】
図9〜図12は植付体3,3の移動過程を示す説明図である。第1回転部材13及び第2回転部材17,17が回転している状態で一の植付体3が苗トレイCの苗収容部C1に収容された苗を取出すとき、一の植付体3の爪部材31,31は進入始点部分(d) から進入位置(a) にかけてほぼ水平となり(図9参照)、該爪部材31,31が進入位置(a) に進入し、他の植付体3は移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c) に向けて移動している(図9参照)。この場合、一の植付体3の爪部材31,31は付勢ばね32の付勢力により開いており、この開状態で進入位置(a) に進入した後、掴み用カム33により爪部材31,31は閉動作し、苗収容部C1の苗を掴む。
【0032】
苗を掴んだ状態から第1回転部材13が矢印X方向に回転し、第2回転部材17,17が矢印Y方向に回転することにより、一の植付体3が進入位置(a) から進入始点部分(d) に水平的に後退移動しつつ下側の植付位置(b) に向けて下方へ揺動し、爪部材31,31は水平姿勢から下向き側へ傾斜し(図10参照)、他の植付体3は上方へ揺動しつつ後退位置(c) を通過し、進入位置(a) に向けて移動しており、爪部材31,31は下向きのほぼ鉛直状から上向き側へ傾斜方向が変わっている(図10参照)。この場合、一の植付体3の爪部材31,31が掴んだ苗は苗収容部C1から水平的に取出され、爪部材31,31に掴まれた状態で根鉢部が下側となるように姿勢が変わる。
【0033】
下降過程を経て一の植付体3の揺動角度がほぼ90度になると、一の植付体3は植付位置(b) に移動し、一の植付体3の爪部材31,31はほぼ鉛直状となり、該爪部材31,31が圃場の畝に突込み、他の植付体3は上方へ揺動しつつ進入始点部分(d) と僅かに離隔した位置を進入位置(a) に向けて移動しており、爪部材31,31は水平状態になりつつ姿勢が変わっている(図12参照)。この場合、一の植付体3の爪部材31,31は掴み用カム33による拘束が解除され、付勢ばね32の付勢力により開動作し、苗の根鉢部を開放し、該苗を圃場に植付ける。また、植付体3には苗押出し部材35が設けられているため、苗押出し用カム34及び伝動アーム36により苗押出し部材35が爪部材31,31に沿って下方へ摺動し、該苗押出し部材35の先端が苗の根鉢部上面に当接し、苗を爪部材31,31に対して押出す。従って、苗の爪部材31,31による持ち上がりを確実に防ぐことができる。
【0034】
一の植付体3が苗を圃場に植付けた状態から上方へ揺動しつつ後退位置(c) に向けて移動するとき、他の植付体3の揺動角度がほぼ90度になり、他の植付体3の爪部材31,31は進入始点部分(d) から進入位置(a) にかけてほぼ水平となり、該爪部材31,31が進入位置(a) に進入し、一の植付体3は移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c) に向けて移動している(図9参照)。この場合、他の植付体3の爪部材31,31は付勢ばね32の付勢力により開いており、この開状態で進入位置(a) に進入した後、掴み用カム33により爪部材31,31は閉動作し、苗収容部C1の苗を掴む。以上の(a) 〜(d) の過程を繰り返すことにより苗トレイCの苗を圃場の畝に植付ける。
【0035】
図13は植付体3,3の移動を案内する部分の斜視図、図14〜図16は植付体3,3の移動過程における植付体3,3の案内状態を示す説明図である。以上のように構成された植付体3,3は、ケース30,30の一側で、且つ揺動中心に対して偏心した位置に、前記揺動中心と平行的に突設された凸部50,50を有しており、この凸部50,50に係合して植付体3,3の進入位置(a) への移動を案内する案内部51が移植機本体Bの苗載台支持部8aに設けられている。
【0036】
凸部50,50はピンを用いてなり、該ピンの一端部が固定部材52,52を介して制御軸26,26の端部に固定されている。固定部材52,52は制御軸26,26の端部にスプライン嵌合された嵌合筒52a,52aと、該嵌合筒52a,52aにその一端部が溶接により固定された第1板体52b,52bと、該第1板体52b,52bの他端部にその一端部が連結軸52c,52cを介して結合され、中央部の貫通孔が嵌合筒52a,52aに外嵌された第2板部52d,52dとを有しており、第2板部52d,52dの他端部に凸部50,50が制御軸26,26と平行的に結合されている。
【0037】
案内部51はフレーム8の苗載台支持部8aに設けられたブラケット8bに固定された板体51aに移動軌跡Zの進入始点部分(d) から進入位置(a) までの往移動の移動軌跡(Z1) 及び復移動の移動軌跡(Z2) の移動軌跡に沿って上下に対向する略<字形に設けられている。往移動の移動軌跡(Z1)に沿う上側の案内部51はほぼ直線状になっており、復移動の移動軌跡(Z2)に沿う下側の案内部51は上向きの円弧で下側へ変位する湾曲状になっている。
【0038】
以上のように植付体3,3のケース30,30には凸部50がそれぞれ設けられており、移植機本体Bのフレーム8には凸部50が係合する案内部51がそれぞれ設けられているため、一の植付体3が後退位置(c) から進入位置(a) の進入始点部分(d) に移動したとき、凸部50が往移動の移動軌跡(Z1)に沿う上側の案内部51に係合し、一の植付体3を進入始点部分(d) から進入位置(a) に移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部C1に一の植付体3の(爪部材31,31を正確に進入させることができる。この爪部材31,31が進入位置(a) に進入している状態で掴み用カム33により爪部材31,31が閉動作し、苗収容部C1の苗を掴み、凸部50は下側の復移動の移動軌跡(Z2)に沿う案内部51に係合し、一の植付体3を進入位置(a) から進入始点部分(d) に後退移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部C1の苗を掴んだ状態で苗をスムーズに取出すことができる。
【0039】
一の植付体3が植付位置(b) で苗を圃場に植え付けた後、一の植付体3が後退位置(c) へ移動するとき、他の植付体3が進入始点部分(d) に移動し、一の植付体3の場合と同様、凸部50が往移動の移動軌跡(Z1)に沿う上側の案内部51に係合し、他の植付体3を進入始点部分(d) から進入位置(a) に移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部C1に他の植付体3の爪部材31,31を正確に進入させることができる。この爪部材31,31が進入位置(a) に進入している状態で掴み用カム33により爪部材31,31が閉動作し、苗収容部C1の苗を掴み、凸部50は復移動の移動軌跡(Z2)に沿う下側の案内部51に係合し、他の植付体3を進入位置(a) から進入始点部分(d) に後退移動させることができる。従って、比較的小さい苗収容部C1の苗を掴んだ状態で苗をスムーズに取出すことができる。
【0040】
尚、以上説明した実施の形態では、植付体3が凸部50を有し、移植機本体Bのフレーム8が案内部51を有する構成としたが、その反対に、植付体3が案内部51を有し、移植機本体Bのフレーム8が凸部50を有する構成としてもよい。また、移植機本体Bに設ける案内部51又は凸部50は、植付体3に対して静止する静止部材に設けるのであり、静止部材の構成は特に制限されない。
【0041】
また、以上説明した実施の形態では、往移動の移動軌跡(Z1)に沿う上側の案内部51と、復移動の移動軌跡(Z2)に沿う下側の案内部51とを有する構成としたが、その他、復移動の移動軌跡(Z2)に沿う下側の案内部51は特に必要でない。
【0042】
また、以上説明した実施の形態では植付体3の一側の凸部50(又は案内部51)を有する構成としたが、その他、植付体3の両側に凸部50(又は案内部51)を有し、この両側の凸部50に係合する案内部51(又は凸部50)が移植機本体Bに設けられた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る移植機の全体の構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る移植機の移植機本体部分の構成を示す模式的説明図である。
【図3】本発明に係る移植機の植付体部分の構成を示す模式的説明図である。
【図4】本発明に係る移植機の第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図である。
【図5】本発明に係る移植機の第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図である。
【図6】本発明に係る移植機の植付体部分の構成を示す概略平面図である。
【図7】本発明に係る移植機の第1回転部材と植付体との関係を示す概略説明図である。
【図8】本発明に係る移植機の植付体の移動軌跡を示す説明図である。
【図9】本発明に係る移植機の植付体の移動過程を示す説明図である。
【図10】本発明に係る移植機の植付体の移動過程を示す説明図である。
【図11】本発明に係る移植機の植付体の移動過程を示す説明図である。
【図12】本発明に係る移植機の植付体の移動過程を示す説明図である。
【図13】本発明に係る移植機の植付体の移動を案内する部分の斜視図である。
【図14】本発明に係る移植機の植付体の移動過程における植付体の案内状態を示す説明図である。
【図15】本発明に係る移植機の植付体の移動過程における植付体の案内状態を示す説明図である。
【図16】本発明に係る移植機の植付体の移動過程における植付体の案内状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
3 植付体
31 爪部材(爪部)
13 第1回転部材
17 第2回転部材
50 凸部
51 案内部
B 移植機本体
C 苗トレイ
C1 苗収容部
(a) 進入位置
(b) 植付位置
(c) 後退位置
(d) 進入始点部分
Z 移動軌跡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗収容部を有する苗トレイを支持する移植機本体と、前記苗収容部に進入する爪部を有し、該爪部が前記苗収容部に進入する進入位置及び該進入位置の下側で苗を植付ける植付位置並びに前記進入位置から前記爪部が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡で移動が可能な植付体とを備える移植機において、前記移植機本体及び前記植付体の一方は、前記植付体の移動方向と交差する方向へ突出する凸部を有しており、他方は、前記植付体が前記進入位置の進入始点部分に移動したとき、前記凸部に係合して前記植付体の前記進入位置への移動を案内する案内部を有することを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の偏心位置に前記第1回転部材と反対方向へ回転が自在に支持された第2回転部材を備えており、該第2回転部材の偏心位置に前記植付体が上下に揺動が可能に枢支されており、前記凸部は前記植付体の揺動中心と平行的に設けてある請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の回転中心に対して両側に前記第1回転部材と反対方向へ回転が自在に支持された二つの第2回転部材を備えており、夫々の第2回転部材の偏心位置に前記植付体が上下に揺動が可能に枢支されており、前記凸部は前記植付体の揺動中心と平行的に設けてある請求項1記載の移植機。
【請求項1】
苗収容部を有する苗トレイを支持する移植機本体と、前記苗収容部に進入する爪部を有し、該爪部が前記苗収容部に進入する進入位置及び該進入位置の下側で苗を植付ける植付位置並びに前記進入位置から前記爪部が後退する側の後退位置で移動転換される移動軌跡で移動が可能な植付体とを備える移植機において、前記移植機本体及び前記植付体の一方は、前記植付体の移動方向と交差する方向へ突出する凸部を有しており、他方は、前記植付体が前記進入位置の進入始点部分に移動したとき、前記凸部に係合して前記植付体の前記進入位置への移動を案内する案内部を有することを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の偏心位置に前記第1回転部材と反対方向へ回転が自在に支持された第2回転部材を備えており、該第2回転部材の偏心位置に前記植付体が上下に揺動が可能に枢支されており、前記凸部は前記植付体の揺動中心と平行的に設けてある請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記移植機本体に回転が自在に支持された第1回転部材及び該第1回転部材の回転中心に対して両側に前記第1回転部材と反対方向へ回転が自在に支持された二つの第2回転部材を備えており、夫々の第2回転部材の偏心位置に前記植付体が上下に揺動が可能に枢支されており、前記凸部は前記植付体の揺動中心と平行的に設けてある請求項1記載の移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−223192(P2006−223192A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41008(P2005−41008)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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