移植機
【課題】 一対の苗植付爪夫々に付着した土、泥、小石等の異物(以下、泥土という)の除去効率を簡易な構成で向上させることができる移植機を提供する。
【解決手段】 第1回転部材13及び第2回転部材17,17の回転、並びに支持体3,3の揺動によって、一方の支持体3に配された苗植付爪31が移動軌跡Zの後退位置(c)を通過する場合に、他方の支持体3に配されたスクレーパ50が移動軌跡Zの後退位置(c)へ接近し、前記スクレーパ50が、前記苗植付爪31に付着した泥土を除去する。また、前記スクレーパ50は、他方の支持体3に配された苗植付爪31に付着した泥土を除去しない。
【解決手段】 第1回転部材13及び第2回転部材17,17の回転、並びに支持体3,3の揺動によって、一方の支持体3に配された苗植付爪31が移動軌跡Zの後退位置(c)を通過する場合に、他方の支持体3に配されたスクレーパ50が移動軌跡Zの後退位置(c)へ接近し、前記スクレーパ50が、前記苗植付爪31に付着した泥土を除去する。また、前記スクレーパ50は、他方の支持体3に配された苗植付爪31に付着した泥土を除去しない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗植付爪によって苗トレイから取り出した植物の苗をそのまま直接圃場に植え付ける移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
移植機の苗載台に支持される苗トレイには、玉ネギ、葉ネギ、白ネギ等の植物の苗が収容してあり、一対の苗植付爪が交互に、苗トレイに収容してある苗の根鉢部を苗植付爪で挟持して1株分ずつ取り出す。移植機は、まず苗を挟持した苗植付爪を土中に突入させ、次にこの苗植付爪による苗の挟持を解除し、最後にこの苗植付爪を土中から退避させることによって、圃場に苗を直接的に植え付ける(特許文献1参照)。
【0003】
各苗植付爪は対向する2個の挟持片を備え、この挟持片を閉じることによって苗の根鉢部を挟持する。苗の根鉢部は土を含むため、挟持片の対向する内側には根鉢部の土が付着する。更に、各苗植付爪は、土中に突入した状態で挟持片を開いて苗の挟持を解除するため、挟持片の対向する内側を含む苗植付爪に、土、泥、小石等の異物(以下、泥土という)が付着する。以上の結果、苗を植え付けた苗植付爪には、土中から退避した後も泥土が付着している。
【0004】
苗植付爪、特に、苗の根鉢部を挟持すべき挟持片の対向する内側に泥土が大量に付着したままである場合、付着した大量の泥土が苗植付爪の動作及び挟持すべき苗に悪影響を及ぼし、この結果、苗の取出精度、植付精度等の苗植付性能が悪化する。このため、特許文献1に開示された移植機は、苗植付爪に付着した泥土を除去するスクレーパを備えている。
【特許文献1】特開2003−274710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された移植機は、一対の苗植付爪に共用のスクレーパしか備えていない。この結果、スクレーパに2個分の苗植付爪から除去された泥土が大量に付着し、スクレーパに付着した大量の泥土が苗植付爪に付着した泥土の除去を阻害し、泥土除去効率が低下することがあった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、2個の苗植付爪に対応する2個の除去部が、夫々対応する苗植付爪に接近して夫々の苗植付爪に付着した泥土を除去する構成とすることにより、一対の苗植付爪夫々に付着した泥土の除去効率を向上させることができる移植機を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、2個の除去部が、苗植付爪が通過する所定位置に対し交互に離接する構成とすることにより、一対の苗植付爪夫々に付着した泥土を交互に除去することができる簡易な構成の移植機を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、夫々の苗植付爪を支持する支持部に除去部を配してあり、各支持部が、第1回転部に配された第2回転部に配してあることにより、更に簡易な構成の移植機を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、苗植付爪の2個の挟持片の間を通過する除去部を備えることにより、2個の挟持片を擦ることなく、この挟持片の内側に付着している泥土を除去することができる移植機を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、合成ゴムを用いてなる板状の除去部を備えることにより、簡易な構成で、長期間にわたって高い泥土除去効率を保つことができる移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る移植機は、略同一の無端状軌跡に沿って互いに約180°の位相差を有するサイクルで同一方向へ移動し、苗を収容する苗トレイからの苗の取り出し及び植え付けを交互に行なう2個の苗植付爪を備える移植機において、各苗植付爪に対応して1個ずつ設けられ、苗の植え付け後又は取り出し前に、対応する苗植付爪が前記無端状軌跡の所定位置を通過する場合に、該所定位置へ接近して前記苗植付爪に付着した付着物の除去を行なう除去部を備えることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る移植機は、前記所定位置は前記2個の苗植付爪に共通であり、前記除去部は交互に前記所定位置に対し接近及び退避するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る移植機は、一側にて一方の苗植付爪を支持し、他側にて他方の苗植付爪に対応する除去部を支持する2個の支持部と、一方向に回転する第1回転部と、該第1回転部の回転中心から略等距離の位置に約180°離隔して配してあり、前記第1回転部が1回転する間に前記一方向とは逆方向に2回転し、また、前記支持部が、その偏心位置に夫々揺動自在に配された2個の第2回転部とを備えることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る移植機は、各苗植付爪は前記苗を挟持する2個の挟持片を備え、各除去部は、該除去部に対応する苗植付爪の2個の挟持片の間を通過するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る移植機は、前記除去部は合成ゴムを用いてなる板状物であることを特徴とする。
【0016】
第1発明にあっては、無端状軌跡の所定位置を通過する一方の苗植付爪に対応する除去部が前記所定位置へ接近し、苗植付爪に付着した付着物が除去部によって除去される。また、各除去部は、対応しない苗植付爪には接近せず、このため対応しない苗植付爪の移動を阻害せず、しかも、対応しない苗植付爪に付着した付着物を除去しないため、対応しない苗植付爪に付着した付着物が除去部に付着することはない。
【0017】
第2発明にあっては、2個の苗植付爪は交互に苗を植え付けるため、交互に付着物が付着し、また、交互に所定位置を通過する。一方の苗植付爪に対応する除去部が前記所定位置へ接近して、前記所定位置を通過する苗植付爪に付着した付着物を除去し、前記所定位置から退避する。次に、他方の苗植付爪に対応する除去部が前記所定位置へ接近して、前記所定位置を通過する苗植付爪に付着した付着物を除去し、前記所定位置から退避する。以上の場合、各除去部は所定位置への接近後に前記所定位置から退避するため、対応しない苗植付爪からは常に離隔される。
【0018】
第3発明にあっては、一方向に回転する第1回転部及び第1回転部の1回転中に夫々逆方向に2回転する2個の第2回転部の回転によって、2個の支持部が略同一の特定の軌跡に沿って移動する。更に、特定の軌跡に沿って移動中の支持部が揺動することによって、2個の苗植付爪は、略同一の無端状軌跡に沿って約180°の位相差を有するサイクルで互いに同一方向へ移動する。
【0019】
このような2個の支持部夫々に配してある除去部は、略同一の無端状の移動軌跡に沿って約180°の位相差を有するサイクルで移動する。夫々の除去部の移動軌跡は、無端状軌跡の所定位置に交差し、しかも、一方の支持部に支持された苗植付爪が前記所定位置を通過する場合に、他方の支持部に支持された除去部、即ち一方の苗植付爪に対応する除去部が前記所定位置へ接近し、一方の苗植付爪の付着物を除去して、前記所定位置から退避する。また、各支持部は、一側にて一方の苗植付爪を支持し、他側にて他方の苗植付爪に対応する除去部を支持するため、各除去部は、対応しない苗植付爪から離隔配置される。
【0020】
第4発明にあっては、除去部が、2個の挟持片の間を挟持片に接触せずに通過して、挟持片の対向する内側に付着した付着物の除去を行なう。
【0021】
第5発明にあっては、加工性が高い合成ゴムを用いてなる単純な形状の除去部を備える。また、板状物であるため、例えば苗植付爪の挟持片の間を通過する場合に、除去部が挟持片に対向している時間が長い。更に、トラブルが生じて、除去部と、苗植付爪、移植機の苗植付爪を除く他部、又は移植機外部の他物とが当接した場合、除去部は自動的に変形して当接の衝撃を緩和し、また元の形状に復元する。
【発明の効果】
【0022】
第1発明の移植機によれば、2個の苗植付爪夫々に専用の除去部を備えるため、1個の除去部に2個の苗植付爪から除去された付着物が付着することが抑制され、除去部に付着した付着物が、苗植付爪に付着した付着物の除去を阻害することを抑制することができ、2個の苗植付爪夫々に付着した付着物の除去効率を向上させることができる。このため、苗植付爪に付着したままの付着物が苗植付爪の動作及び苗トレイから取り出すべき苗に悪影響を及ぼすことを抑制することができ、この結果、苗の取出精度、植付精度等の苗植付性能を向上させることができる。
【0023】
第2発明の移植機によれば、2個の苗植付爪に交互に付着する付着物を、2個の除去部が交互に所定位置へ接近して除去し、更に退避することができるため、除去部同士が互いの移動を阻害することを防止することができ、また、除去部が苗植付爪の移動を阻害することを防止することができる。更に、前記所定位置から退避することによって、対応しない苗植付爪の付着物を除去部が除去することを確実に防止することができる。
【0024】
更にまた、2個の苗植付爪は、無端状軌跡の共通の所定位置を、約180°の位相差を有するサイクルで交互に通過するため、2個の除去部は、無端状軌跡の共通の所定位置に対し、約180°の位相差を有するサイクルで交互に接近及び退避すればよく、この結果、2個の除去部を所定位置に対し接近及び退避させる手段は、例えば2個の除去部が約180°離隔して配された回転体を用いて構成すればよいため、簡易に構成する事ができる。
【0025】
第3発明の移植機によれば、2個の支持部が夫々除去部を有するため、2個の支持部の相対移動を利用して、除去部が苗植付爪に付着している付着物を除去することができる。また、対応しない苗植付爪と除去部とを同一の支持部の一側と他側とに離隔配置するため、対応しない苗植付爪の付着物を除去部が除去することを確実に防止することができる。更に、第1回転部、第2回転部及び支持部は、従来の移植機が備える第1回転部、第2回転部及び支持部と同様に簡易に構成する事ができ、各除去部を移動させる移動手段を改めて備える必要がなく、移植機の製造コストを低減させることができる。
【0026】
第4発明の移植機によれば、除去部が挟持片を擦過することなく、挟持片の対向する内側に付着した付着物を除去することができるため、除去部と挟持片との接触によって除去部及び/又は挟持片が磨耗することを防止することができる。また、除去部は、挟持片の対向する内側以外に付着した付着物は積極的に除去しないため、苗植付爪から除去した付着物が除去部に付着することが抑制される。つまり、除去部に付着した付着物が苗植付爪に付着した付着物の除去を阻害することを更に抑制することができ、苗植付爪からの付着物の除去効率を更に向上させることができる。
【0027】
第5発明の移植機によれば、合成ゴムを用いてなる板状の除去部は、原材料の加工性が高く形状が単純であるため、形成工程、取り付け工程等の製造工程が更に簡易である。また、挟持片に対向している時間が長い板状の除去部は付着物を確実に除去することができる。更に、除去部が他物に当接した場合でも、当接の衝撃が緩和されるため、除去部及び他物の破損を防止することができる。つまり、除去部の破損によって付着物の除去効率が低下することを防止することができ、長期間にわたって高い除去効率を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は本発明に係る移植機の全体の構成を示す側面図、図2は移植機本体部分の構成を示す模式的説明図、図3は支持体部分の構成を示す模式的説明図、図4及び図5は第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図、図6は支持体部分の構成を示す概略平面図、図7は第1回転部材と支持体との関係を示す概略説明図である。
【0029】
この移植機は、後植え式の乗用形移植機であり、2つの前輪1a及び2つの後輪1bにより機体1が支持された走行部Aと、該走行部Aの後側に昇降機構2により昇降が可能に支持された移植機本体Bと、該移植機本体Bに支持された金属製の苗植付爪31,31とを備える。
【0030】
走行部Aの機体1には駆動源としてのエンジン4及び該エンジン4が発生した回転動力を変速するミッション5と、該ミッション5に連動連結されたPTO軸6とが設けられており、後輪1bがミッション5に連動連結されている。
【0031】
移植機本体Bは、PTO軸6に連動連結され、PTO軸6と直交的に配置された出力軸7が支持されたフレーム8と、該フレーム8に横移動を可能に支持された苗載台9と、該苗載台9を横方向に往復動させる往復動機構(図示せず)と、苗載台9が往復動方向の終端位置に移動したとき、該苗載台9に支持される苗トレイCを下方に向かって、換言すれば後記する進入位置(a)に向かって1ピッチ縦送りする縦送り機構(図示せず)と、出力軸7に連動連結され、苗載台9の移動方向に離隔して配置された複数本の第1伝動軸10と、その一端がフレーム8に結合され、内部に第1伝動軸10を回転自在に支持した管形状をなす複数の支持フレーム11とを備える。
【0032】
各支持フレーム11の他端には第1伝動軸10に連動連結され、第1伝動軸10と直交的に配置された第2伝動軸12が回転自在に支持されており、該第2伝動軸12に第1回転部材(第1回転部)13が回転自在に支持されており、更に、第1回転部材13の回転中心周りで環状となる揺動用カム14を有するカム板15が固定されている。
【0033】
第1回転部材13はその中央部が第2伝動軸12に結合された長円形のケースからなり、回転中心から長手方向の略等距離の位置に約180°離隔して配された第1筒軸16,16を介して2つの第2回転部材(第2回転部)17,17が回転が自在に支持されており、更に、各第1筒軸16,16内に回転が自在である第3伝動軸18,18が支持されている。
【0034】
第1回転部材13内には、第2伝動軸12の外周りに固定された入力歯車19と、該入力歯車19に噛合し、中間軸20,20に遊転が自在に支持された2つの中間歯車21,21と、該中間歯車21,21に噛合し、各第1筒軸16に固定された2つの出力歯車22,22と、各第3伝動軸18,18に固定された伝動歯車23,23と、該伝動歯車23,23に噛合する部分歯24a,24a及び揺動用カム14に係合する転動輪24b,24bを有し、枢支軸24c,24cにより揺動が自在に支持された2つの揺動アーム24,24とが収容されており、第1回転部材13の回転に連動して第2回転部材17,17が回転し、更に、第1回転部材13の回転に連動して揺動アーム24,24が揺動し、第3伝動軸18,18を正逆回転方向へ角回転させるように構成されている。
【0035】
出力歯車22と入力歯車19とのギヤ比は1:3になっており、第1回転部材13が正回転方向に1回転するとき、第2回転部材17,17が逆回転方向に2回転するように構成されている。
【0036】
揺動アーム24,24はその中央部が第1回転部材13内に枢支された略L字形をなしており、揺動中心がピッチ円の部分歯24aが一端部に設けられ、他端部に転動輪24bが軸支され、第2回転部材17,17が1回転するとき、第3伝動軸18,18が略90度正転及び逆転し、該第3伝動軸18,18に連動連結される支持体(支持部)3を往動/復動させるように構成されている。
【0037】
第2回転部材17,17は、その一端部が第1筒軸16,16に結合された長円形のケースからなり、回転中心に対して長手方向側へ偏心した位置に第2筒軸25,25を介して支持体3,3が上下に揺動が可能に枢支されており、更に、第2筒軸25,25内に角回転が自在である制御軸26,26が支持されている。
【0038】
第2回転部材17,17内には、第3伝動軸18,18の外周りに固定された入力歯車27,27と、該入力歯車27,27に噛合し、中間軸28,28に遊転が自在に支持された中間歯車29,29と、該中間歯車29,29に噛合し、第2筒軸25,25に固定された出力歯車40,40と、制御軸26,26に固定された伝動歯車41,41と、該伝動歯車41,41に噛合し、中間歯車29,29と一体に形成された遊転歯車42,42とが収容されており、第2回転部材17,17が1回転するとき、支持体3,3が上下に略90度往復揺動し、更に、制御軸26,26が角回転するように構成されている。
【0039】
入力歯車27及び中間歯車29は同一歯数であり、伝動歯車41及び遊転歯車42は同一歯数であり、中間歯車29と出力歯車40とのギヤ比は2:3になっており、第2筒軸25,25に設けられた出力歯車40,40と、制御軸26,26に設けられた伝動歯車41,41との回転差が略1回転となるようになっており、第2筒軸25,25と一体に揺動する支持体3,3が揺動するとき、制御軸26,26を支持体3,3に対して一定角度で角回転させるように構成されている。
【0040】
支持体3,3はその中央部が第2筒軸25,25に結合された四角形のケース30,30を備えており、ケース30には、揺動中心に対して偏倚した長手方向一側に、苗植付爪31を構成する一対の挟持片310,310が揺動自在に枢支されており、更に、挟持片310,310を離隔する方向へ開動作させる付勢ばね32と、制御軸26,26に固定された挟持用カム33及び苗押出用カム34と、挟持片310,310の内側面に沿って摺動が自在の苗押出部材35と、苗押出用カム34の動作を苗押出部材35に伝動する伝動アーム36とがケース30,30内に収容されている。
【0041】
挟持片310,310は離隔する2つの枢支軸37,37に遊嵌された筒部31a,31a及び該筒部31a,31aの外側に突設され、互いに当接する第1の凸片31b,31bを有しており、該凸片31b,31bが付勢ばね32により付勢されて略平行となるように開動作している。また、一方の挟持片310の筒部31aには第3の凸片31cが突設されており、第3の凸片31c及び挟持用カム33間に介装された伝動部材38を介して制御軸26,26の角回転を一方の挟持片310に伝動し、付勢ばね32の付勢力に打ち勝って一対の挟持片310,310を閉動作させるように構成されている。
【0042】
図8は苗植付爪31,31の移動軌跡を示す説明図である。以上のように第1回転部材13が正回転方向に1回転するとき、第2回転部材17,17が逆回転方向に2回転し、また、支持体3,3が上下に略90度往復揺動する構成とすることにより、支持体3,3の揺動中心の移動軌跡が図8に示すように略三角形をなす植付基本軌跡Kとなり、且つ、2個の苗植付爪31,31の先端の移動軌跡Zが図8に示すように略三角形をなす無端状軌跡となる。この場合、苗植付爪31,31は移動軌跡Zに沿って互いに約180°の位相差を有するサイクルで、図中の移動軌跡Z上の矢符方向への移動が可能となる。
【0043】
具体的には、各苗植付爪31が苗トレイCの苗収容部C1に進入する進入位置(a)及び該進入位置(a)の下側で圃場の畝に苗Nを植え付ける植付位置(b)並びに前記進入位置(a)から苗植付爪31が後退する側の後退位置(c)で移動転換される移動軌跡Zで移動が可能となる。
【0044】
図9〜図13は苗植付爪31,31の移動過程を示す説明図である。進入位置(a)を、苗植付爪31が移動軌跡Zに沿って移動するサイクルの0°とする場合、後退位置(c)は約240°である。
【0045】
第1回転部材13及び第2回転部材17,17が回転し、支持体3,3が揺動している状態で一方の苗植付爪31が苗トレイCの苗収容部C1に収容された苗Nを取出すとき、一方の苗植付爪31の挟持片310,310は進入始点部分(d)から進入位置(a)にかけて略水平となり(図9参照)、該挟持片310,310が進入位置(a)に進入し、他方の苗植付爪31は移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c)に向けて移動している(図9参照)。この場合、一方の苗植付爪31の挟持片310,310は付勢ばね32の付勢力により開いており、この開状態で進入位置(a)に進入した後、挟持用カム33により挟持片310,310は閉動作し、苗収容部C1の苗Nの根鉢部を挟持する。
【0046】
苗Nの根鉢部を挟持した状態から第1回転部材13が矢印X方向に回転し、第2回転部材17,17が矢印Y方向に回転することにより、一方の苗植付爪31が進入位置(a)から進入始点部分(d)に水平的に後退移動しつつ下側の植付位置(b)に向けて下方へ揺動し、苗植付爪31は水平姿勢から下向き側へ傾斜し(図10〜図12参照)、他方の苗植付爪31は上方へ揺動しつつ後退位置(c)を通過し、進入位置(a)に向けて移動しており、苗植付爪31は下向きの略鉛直状から上向き側へ傾斜方向が変わっている(図10〜図12参照)。この場合、一方の苗植付爪31の挟持片310,310が挟持した苗Nは苗収容部C1から水平的に取出され、挟持片310,310に挟持された状態で根鉢部が下側となるように姿勢が変わる。
【0047】
下降過程を経て一方の苗植付爪31の揺動角度が略90度になると、一方の苗植付爪31は植付位置(b)に移動し、一方の苗植付爪31の挟持片310,310は略鉛直状となり、該挟持片310,310が圃場の畝に突っ込み、他方の苗植付爪31は上方へ揺動しつつ進入始点部分(d)と僅かに離隔した位置を進入位置(a)に向けて、水平状態になりつつ移動している(図13参照)。この場合、一方の苗植付爪31の挟持片310,310は挟持用カム33による拘束が解除され、付勢ばね32の付勢力により開動作し、苗Nの根鉢部を開放し、該苗Nを圃場に植え付ける。
【0048】
また、苗植付爪31には苗押出部材35が設けられているため、苗押出用カム34及び伝動アーム36により苗押出部材35が挟持片310,310の内側面に沿って下方へ摺動し、該苗押出部材35の先端が苗Nの根鉢部上面に当接し、苗Nを挟持片310,310に対して押し出す。従って、苗Nの挟持片310,310による持ち上がりを確実に防ぐことができる。
【0049】
一方の苗植付爪31が苗Nを圃場に植え付けた状態から上方へ揺動しつつ移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c)に向けて移動するとき、他方の苗植付爪31の揺動角度が略90度になり、他方の苗植付爪31の挟持片310,310は進入始点部分(d)から進入位置(a)にかけて略水平となり、該挟持片310,310が進入位置(a)に進入し、一方の苗植付爪31は移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c)に向けて移動している(図9参照)。この場合、他方の苗植付爪31の挟持片310,310は付勢ばね32の付勢力により開いており、この開状態で進入位置(a)に進入した後、挟持用カム33により挟持片310,310は閉動作し、苗収容部C1の苗Nの根鉢部を挟持する。
【0050】
以上の(a)〜(d)の過程を繰り返すことにより、苗植付爪31,31は、進入位置(a)における苗トレイCからの苗Nの取り出し、及び植付位置(b)における圃場の畝に対する苗Nの植え付けの動作を交互に行なう。
【0051】
圃場に苗Nを植え付けた後の苗植付爪31には、苗Nの植え付けの際に苗Nの根鉢部を挟持することによって挟持片310,310の内側面に付着した泥土、及び/又は苗植付爪31が土中に突入した状態で挟持片310,310を開くことによって挟持片310,310の内側面に付着した泥土が付着している。苗植付爪31に付着した泥土が苗Nの植え付けを阻害することを防止すべく、次の苗Nを取り出す前に、この苗植付爪31に付着している泥土、特に挟持片310,310の内側面に付着している泥土を除去する必要がある。このために、移植機本体Bは、夫々対応する苗植付爪31,31に付着した泥土を除去する一対のスクレーパ50,50を備える。
【0052】
各スクレーパ50は、2枚の合成ゴム製の矩形をなす板状部材50a,50aを、金属製の矩形をなす芯板50bを介在して貼り合わせてなる板状物であり、貼り合わされた板状部材50a,50aの間から突出する芯板50bの基端部を、金属製の支持台50cが支持してなる。また、スクレーパ50は、ケース30の揺動中心に対して偏心した長手方向他側に支持台50cが固定されることによって、ケース30の一側に支持された苗植付爪31の長手方向に対してスクレーパ50の長手方向が適宜の傾斜角を有するように取り付けてある。
【0053】
更に、スクレーパ50の厚さB5は、開いた状態の挟持片310,310の離隔距離より僅かに小さくしてある。即ち、挟持片310,310間に配された場合に、スクレーパ50の両面と、挟持片310,310の内側面との間は適長離隔してある。以上のようなスクレーパ50は、例えばトラブルが生じて予期せぬ外力が移植機に加えられ、スクレーパ50に、挟持片310、苗押出部材35等のような他物が当接した場合、芯板50b及び板状部材50a,50aが自動的に撓んで当接の衝撃を緩和し、その後、撓んだ芯板50b及び板状部材50a,50aが元の形状に復元する柔軟性と弾性とを有するようにしてある。
【0054】
図9〜図13で示したように、支持体3,3が夫々植付基本軌跡Kに沿って移動しつつ揺動することによって、苗植付爪31,31は移動軌跡Zに沿って約180°の位相差を有するサイクルで互いに同一方向へ移動し、このときスクレーパ50,50は、移動軌跡Zに後退位置(c)で交差する略同一の無端状の移動軌跡(不図示)に沿って約180°の位相差を有するサイクルで移動する。
【0055】
以上のような苗植付爪31,31及びスクレーパ50,50の相対移動によって、図11に示すように、一方の支持体3に支持された苗植付爪31が後退位置(c)を通過する場合に、他方の支持体3に支持されたスクレーパ50、即ち一方の苗植付爪31に対応するスクレーパ50が後退位置(c)へ接近する。このため、後退位置(c)にて、一方の支持体3に支持された苗植付爪31と他方の支持体3に支持されたスクレーパ50とが接近し、挟持片310,310の内側面と板状部材50a,50aの外面とが適長離隔して対向するように、挟持片310,310間をスクレーパ50が通過する。
【0056】
このとき、一方の支持体3に支持された苗植付爪31に付着した泥土、具体的には挟持片310,310の内側面に付着した泥土が他方の支持体3に支持されたスクレーパ50によって除去される。苗植付爪31,31による苗Nの取り出し及び植え付けは交互に行なわれるため、苗植付爪31,31には交互に泥土が付着し、また、苗植付爪31,31は交互に後退位置(c)を通過する。このため、スクレーパ50,50も交互に後退位置(c)に対し接近及び退避し、スクレーパ50,50による泥土の除去も交互に行なわれる。
【0057】
一方の支持体3に支持された苗植付爪31及び他方の支持体3に支持されたスクレーパ50は、後退位置(c)へ接近移動した後、夫々の移動軌跡に沿って後退位置(c)から退避移動する。一方の支持体3に支持された苗植付爪31及びスクレーパ50、即ち対応しない苗植付爪31及びスクレーパ50は同一の支持体3の一側と他側とに離隔配置してあり、互いに接近することはなく、このため対応しないスクレーパ50による苗植付爪31の泥土除去も起こらない。
【0058】
更に、スクレーパ50,50は互いの移動を阻害せず、しかも、各スクレーパ50は、泥土を除去すべき対象である苗植付爪31の移動、及び他の苗植付爪31の移動を阻害しない。
【0059】
スクレーパ50が挟持片310,310間を通過する場合、スクレーパ50と挟持片310,310とは適長離隔しているため、挟持片310,310の内側面にほとんど泥土が付着していないとき、スクレーパ50は泥土の除去を行なわない。しかしながら、挟持片310,310の内側面に多量の泥土が付着しない限りは、苗植付爪31に付着した泥土が苗植付爪31の動作及び苗Nに悪影響を及ぼして苗Nの取出精度、植付精度等の苗植付性能を悪化させることはない。一方、挟持片310,310の内側面に大量の泥土が付着しているとき、内側面に付着している泥土がスクレーパ50の板状部材50a,50aに接触して容易に掻き落とされる。つまり、挟持片310,310の内側面に付着している泥土が除去されずに残留することを抑制する。
【0060】
以上のような移植機にあっては、各スクレーパ50が、対応する苗植付爪31による苗Nの植え付け後、この苗植付爪31による次の苗Nの取り出し前に、この苗植付爪31に付着した泥土のみを除去して、対応しない苗植付爪31に付着した泥土を除去せず、しかも、この苗植付爪31の挟持片310,310の内側面に付着した泥土を除去して、内側面以外に付着した泥土は積極的に除去しない。
【0061】
つまり、このような移植機にあっては、スクレーパ50,50に泥土が付着することを抑制することができ、スクレーパ50,50に付着した泥土が、苗植付爪31,31に付着した泥土の除去を阻害することを抑制することができ、苗植付爪31,31夫々に付着した泥土の除去効率を向上させることができる。以上の結果、苗植付爪31,31に付着したままの泥土が苗植付爪31,31の動作及び/又は苗Nに悪影響を及ぼすことを抑制することができ、苗Nの取出精度、植付精度等の苗植付性能を向上させることができる。
【0062】
仮に、スクレーパ50が常に移動軌跡Z上にある場合、例えば特許文献1に開示された移植機のように、スクレーパ50が移動軌跡Zの所定位置に常に配されるよう移植機本体Bに固定してある場合、スクレーパ50は苗植付爪31,31によって共用され、苗植付爪31,31の両方から掻き取った泥土が大量に付着する。また、苗植付爪31,31には交互に泥土が付着するため、スクレーパ50,50で同時的に除去する必要はない。即ち、苗植付爪31,31に交互に付着する泥土を、対応するスクレーパ50,50で交互に除去する本実施の形態の移植機は、泥土の除去効率が高い。
【0063】
更に、第1回転部材13、第2回転部材17,17及び支持体3,3は、従来の移植機が備える第1回転部材、第2回転部材及び支持体と同様に簡易に構成する事ができ、支持体3,3の相対移動を利用して、苗植付爪31,31及び対応するスクレーパ50,50を適切なタイミングで後退位置(c)に対し接近/離隔させることができる。
【0064】
更にまた、スクレーパ50は、原材料である合成ゴムの加工性が高く、形状が単純な板状部材50a,50aで構成される。このため、スクレーパ50,50の形成工程、取り付け工程等の製造工程は簡易である。つまり、移植機は簡易な構成であり容易に製造できるため、移植機の製造コストを低減させることができる。
【0065】
また、スクレーパ50の厚さB5が、開いた状態の挟持片310,310の離隔距離より小さいため、挟持片310,310に板状部材50a,50aが接触することによる板状部材50a,50aの磨耗を防止することができる。また、スクレーパ50が他物に当接した場合でも、スクレーパ50が当接の衝撃を緩和するため、スクレーパ50及び当接した他物の破損を防止することができる。
【0066】
仮に、スクレーパ50の厚さB5と、開いた状態の挟持片310,310の離隔距離とが略等しい場合、泥土の除去時に合成ゴム製の板状部材50a,50aと金属製の挟持片310,310とが摺動するため、板状部材50a,50aが磨耗して泥土の除去効率が徐々に低下する。更に、スクレーパ50と苗植付爪31とが当接する確率が高くなり、苗植付爪31の円滑な作動を阻害することがある。つまり、本実施の形態のスクレーパ50は、簡易な構成で、必要十分に泥土を除去し、スクレーパ50,50の磨耗又は破損によって泥土の除去効率が低下することを防止することができ、苗植付爪31の円滑な作動を阻害することなく、長期間にわたって高い泥土除去効率を維持することができる。
【0067】
また、挟持片310,310間を通過しているスクレーパ50は、例えば棒状の除去部と比べて板状部材50a,50aが挟持片310,310の内側面と対向している時間が長いため、挟持片310,310の内側面に付着している泥土を確実に除去することができる。また、除去する泥土に石が含まれている場合、石と合成ゴム製の板状部材50a,50aとが衝突した場合でも、大きな異音が生じない。
【0068】
なお、スクレーパ50は合成ゴムを用いてなる板状物に限るものではなく、例えば合成樹脂を用いてなるブラシでもよい。また、スクレーパ50,50を支持体3,3に配する構成に限らず、第1回転部材13、第2回転部材17、苗載台9等、移植機本体Bの他部に配して、各スクレーパ50が、対応する苗植付爪31の移動に応じて移動軌跡Zに対し進入/退避する構成でもよい。更に、スクレーパ50,50に加えて、移動軌跡Zの所定位置に常に配されるよう移植機本体Bに固定されたスクレーパを備えてもよい。
【0069】
本実施の形態においては、後植え式の乗用形の移植機を例示したが、前植え式でもよく、歩行形でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る移植機の全体の構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る移植機の移植機本体部分の構成を示す模式的説明図である。
【図3】本発明に係る移植機の支持体部分の構成を示す模式的説明図である。
【図4】本発明に係る移植機の第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図である。
【図5】本発明に係る移植機の第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図である。
【図6】本発明に係る移植機の支持体部分の構成を示す概略平面図である。
【図7】本発明に係る移植機の第1回転部材と支持体との関係を示す概略説明図である。
【図8】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動軌跡を示す説明図である。
【図9】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【図10】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【図11】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【図12】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【図13】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
13 第1回転部材(第1回転部)
17 第2回転部材(第2回転部)
3 支持体(支持部)
31 苗植付爪
310 挟持片
50 スクレーパ(除去部)
C 苗トレイ
N 苗
Z 移動軌跡(無端状軌跡)
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗植付爪によって苗トレイから取り出した植物の苗をそのまま直接圃場に植え付ける移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
移植機の苗載台に支持される苗トレイには、玉ネギ、葉ネギ、白ネギ等の植物の苗が収容してあり、一対の苗植付爪が交互に、苗トレイに収容してある苗の根鉢部を苗植付爪で挟持して1株分ずつ取り出す。移植機は、まず苗を挟持した苗植付爪を土中に突入させ、次にこの苗植付爪による苗の挟持を解除し、最後にこの苗植付爪を土中から退避させることによって、圃場に苗を直接的に植え付ける(特許文献1参照)。
【0003】
各苗植付爪は対向する2個の挟持片を備え、この挟持片を閉じることによって苗の根鉢部を挟持する。苗の根鉢部は土を含むため、挟持片の対向する内側には根鉢部の土が付着する。更に、各苗植付爪は、土中に突入した状態で挟持片を開いて苗の挟持を解除するため、挟持片の対向する内側を含む苗植付爪に、土、泥、小石等の異物(以下、泥土という)が付着する。以上の結果、苗を植え付けた苗植付爪には、土中から退避した後も泥土が付着している。
【0004】
苗植付爪、特に、苗の根鉢部を挟持すべき挟持片の対向する内側に泥土が大量に付着したままである場合、付着した大量の泥土が苗植付爪の動作及び挟持すべき苗に悪影響を及ぼし、この結果、苗の取出精度、植付精度等の苗植付性能が悪化する。このため、特許文献1に開示された移植機は、苗植付爪に付着した泥土を除去するスクレーパを備えている。
【特許文献1】特開2003−274710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された移植機は、一対の苗植付爪に共用のスクレーパしか備えていない。この結果、スクレーパに2個分の苗植付爪から除去された泥土が大量に付着し、スクレーパに付着した大量の泥土が苗植付爪に付着した泥土の除去を阻害し、泥土除去効率が低下することがあった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、2個の苗植付爪に対応する2個の除去部が、夫々対応する苗植付爪に接近して夫々の苗植付爪に付着した泥土を除去する構成とすることにより、一対の苗植付爪夫々に付着した泥土の除去効率を向上させることができる移植機を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、2個の除去部が、苗植付爪が通過する所定位置に対し交互に離接する構成とすることにより、一対の苗植付爪夫々に付着した泥土を交互に除去することができる簡易な構成の移植機を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、夫々の苗植付爪を支持する支持部に除去部を配してあり、各支持部が、第1回転部に配された第2回転部に配してあることにより、更に簡易な構成の移植機を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、苗植付爪の2個の挟持片の間を通過する除去部を備えることにより、2個の挟持片を擦ることなく、この挟持片の内側に付着している泥土を除去することができる移植機を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、合成ゴムを用いてなる板状の除去部を備えることにより、簡易な構成で、長期間にわたって高い泥土除去効率を保つことができる移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る移植機は、略同一の無端状軌跡に沿って互いに約180°の位相差を有するサイクルで同一方向へ移動し、苗を収容する苗トレイからの苗の取り出し及び植え付けを交互に行なう2個の苗植付爪を備える移植機において、各苗植付爪に対応して1個ずつ設けられ、苗の植え付け後又は取り出し前に、対応する苗植付爪が前記無端状軌跡の所定位置を通過する場合に、該所定位置へ接近して前記苗植付爪に付着した付着物の除去を行なう除去部を備えることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る移植機は、前記所定位置は前記2個の苗植付爪に共通であり、前記除去部は交互に前記所定位置に対し接近及び退避するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る移植機は、一側にて一方の苗植付爪を支持し、他側にて他方の苗植付爪に対応する除去部を支持する2個の支持部と、一方向に回転する第1回転部と、該第1回転部の回転中心から略等距離の位置に約180°離隔して配してあり、前記第1回転部が1回転する間に前記一方向とは逆方向に2回転し、また、前記支持部が、その偏心位置に夫々揺動自在に配された2個の第2回転部とを備えることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る移植機は、各苗植付爪は前記苗を挟持する2個の挟持片を備え、各除去部は、該除去部に対応する苗植付爪の2個の挟持片の間を通過するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る移植機は、前記除去部は合成ゴムを用いてなる板状物であることを特徴とする。
【0016】
第1発明にあっては、無端状軌跡の所定位置を通過する一方の苗植付爪に対応する除去部が前記所定位置へ接近し、苗植付爪に付着した付着物が除去部によって除去される。また、各除去部は、対応しない苗植付爪には接近せず、このため対応しない苗植付爪の移動を阻害せず、しかも、対応しない苗植付爪に付着した付着物を除去しないため、対応しない苗植付爪に付着した付着物が除去部に付着することはない。
【0017】
第2発明にあっては、2個の苗植付爪は交互に苗を植え付けるため、交互に付着物が付着し、また、交互に所定位置を通過する。一方の苗植付爪に対応する除去部が前記所定位置へ接近して、前記所定位置を通過する苗植付爪に付着した付着物を除去し、前記所定位置から退避する。次に、他方の苗植付爪に対応する除去部が前記所定位置へ接近して、前記所定位置を通過する苗植付爪に付着した付着物を除去し、前記所定位置から退避する。以上の場合、各除去部は所定位置への接近後に前記所定位置から退避するため、対応しない苗植付爪からは常に離隔される。
【0018】
第3発明にあっては、一方向に回転する第1回転部及び第1回転部の1回転中に夫々逆方向に2回転する2個の第2回転部の回転によって、2個の支持部が略同一の特定の軌跡に沿って移動する。更に、特定の軌跡に沿って移動中の支持部が揺動することによって、2個の苗植付爪は、略同一の無端状軌跡に沿って約180°の位相差を有するサイクルで互いに同一方向へ移動する。
【0019】
このような2個の支持部夫々に配してある除去部は、略同一の無端状の移動軌跡に沿って約180°の位相差を有するサイクルで移動する。夫々の除去部の移動軌跡は、無端状軌跡の所定位置に交差し、しかも、一方の支持部に支持された苗植付爪が前記所定位置を通過する場合に、他方の支持部に支持された除去部、即ち一方の苗植付爪に対応する除去部が前記所定位置へ接近し、一方の苗植付爪の付着物を除去して、前記所定位置から退避する。また、各支持部は、一側にて一方の苗植付爪を支持し、他側にて他方の苗植付爪に対応する除去部を支持するため、各除去部は、対応しない苗植付爪から離隔配置される。
【0020】
第4発明にあっては、除去部が、2個の挟持片の間を挟持片に接触せずに通過して、挟持片の対向する内側に付着した付着物の除去を行なう。
【0021】
第5発明にあっては、加工性が高い合成ゴムを用いてなる単純な形状の除去部を備える。また、板状物であるため、例えば苗植付爪の挟持片の間を通過する場合に、除去部が挟持片に対向している時間が長い。更に、トラブルが生じて、除去部と、苗植付爪、移植機の苗植付爪を除く他部、又は移植機外部の他物とが当接した場合、除去部は自動的に変形して当接の衝撃を緩和し、また元の形状に復元する。
【発明の効果】
【0022】
第1発明の移植機によれば、2個の苗植付爪夫々に専用の除去部を備えるため、1個の除去部に2個の苗植付爪から除去された付着物が付着することが抑制され、除去部に付着した付着物が、苗植付爪に付着した付着物の除去を阻害することを抑制することができ、2個の苗植付爪夫々に付着した付着物の除去効率を向上させることができる。このため、苗植付爪に付着したままの付着物が苗植付爪の動作及び苗トレイから取り出すべき苗に悪影響を及ぼすことを抑制することができ、この結果、苗の取出精度、植付精度等の苗植付性能を向上させることができる。
【0023】
第2発明の移植機によれば、2個の苗植付爪に交互に付着する付着物を、2個の除去部が交互に所定位置へ接近して除去し、更に退避することができるため、除去部同士が互いの移動を阻害することを防止することができ、また、除去部が苗植付爪の移動を阻害することを防止することができる。更に、前記所定位置から退避することによって、対応しない苗植付爪の付着物を除去部が除去することを確実に防止することができる。
【0024】
更にまた、2個の苗植付爪は、無端状軌跡の共通の所定位置を、約180°の位相差を有するサイクルで交互に通過するため、2個の除去部は、無端状軌跡の共通の所定位置に対し、約180°の位相差を有するサイクルで交互に接近及び退避すればよく、この結果、2個の除去部を所定位置に対し接近及び退避させる手段は、例えば2個の除去部が約180°離隔して配された回転体を用いて構成すればよいため、簡易に構成する事ができる。
【0025】
第3発明の移植機によれば、2個の支持部が夫々除去部を有するため、2個の支持部の相対移動を利用して、除去部が苗植付爪に付着している付着物を除去することができる。また、対応しない苗植付爪と除去部とを同一の支持部の一側と他側とに離隔配置するため、対応しない苗植付爪の付着物を除去部が除去することを確実に防止することができる。更に、第1回転部、第2回転部及び支持部は、従来の移植機が備える第1回転部、第2回転部及び支持部と同様に簡易に構成する事ができ、各除去部を移動させる移動手段を改めて備える必要がなく、移植機の製造コストを低減させることができる。
【0026】
第4発明の移植機によれば、除去部が挟持片を擦過することなく、挟持片の対向する内側に付着した付着物を除去することができるため、除去部と挟持片との接触によって除去部及び/又は挟持片が磨耗することを防止することができる。また、除去部は、挟持片の対向する内側以外に付着した付着物は積極的に除去しないため、苗植付爪から除去した付着物が除去部に付着することが抑制される。つまり、除去部に付着した付着物が苗植付爪に付着した付着物の除去を阻害することを更に抑制することができ、苗植付爪からの付着物の除去効率を更に向上させることができる。
【0027】
第5発明の移植機によれば、合成ゴムを用いてなる板状の除去部は、原材料の加工性が高く形状が単純であるため、形成工程、取り付け工程等の製造工程が更に簡易である。また、挟持片に対向している時間が長い板状の除去部は付着物を確実に除去することができる。更に、除去部が他物に当接した場合でも、当接の衝撃が緩和されるため、除去部及び他物の破損を防止することができる。つまり、除去部の破損によって付着物の除去効率が低下することを防止することができ、長期間にわたって高い除去効率を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は本発明に係る移植機の全体の構成を示す側面図、図2は移植機本体部分の構成を示す模式的説明図、図3は支持体部分の構成を示す模式的説明図、図4及び図5は第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図、図6は支持体部分の構成を示す概略平面図、図7は第1回転部材と支持体との関係を示す概略説明図である。
【0029】
この移植機は、後植え式の乗用形移植機であり、2つの前輪1a及び2つの後輪1bにより機体1が支持された走行部Aと、該走行部Aの後側に昇降機構2により昇降が可能に支持された移植機本体Bと、該移植機本体Bに支持された金属製の苗植付爪31,31とを備える。
【0030】
走行部Aの機体1には駆動源としてのエンジン4及び該エンジン4が発生した回転動力を変速するミッション5と、該ミッション5に連動連結されたPTO軸6とが設けられており、後輪1bがミッション5に連動連結されている。
【0031】
移植機本体Bは、PTO軸6に連動連結され、PTO軸6と直交的に配置された出力軸7が支持されたフレーム8と、該フレーム8に横移動を可能に支持された苗載台9と、該苗載台9を横方向に往復動させる往復動機構(図示せず)と、苗載台9が往復動方向の終端位置に移動したとき、該苗載台9に支持される苗トレイCを下方に向かって、換言すれば後記する進入位置(a)に向かって1ピッチ縦送りする縦送り機構(図示せず)と、出力軸7に連動連結され、苗載台9の移動方向に離隔して配置された複数本の第1伝動軸10と、その一端がフレーム8に結合され、内部に第1伝動軸10を回転自在に支持した管形状をなす複数の支持フレーム11とを備える。
【0032】
各支持フレーム11の他端には第1伝動軸10に連動連結され、第1伝動軸10と直交的に配置された第2伝動軸12が回転自在に支持されており、該第2伝動軸12に第1回転部材(第1回転部)13が回転自在に支持されており、更に、第1回転部材13の回転中心周りで環状となる揺動用カム14を有するカム板15が固定されている。
【0033】
第1回転部材13はその中央部が第2伝動軸12に結合された長円形のケースからなり、回転中心から長手方向の略等距離の位置に約180°離隔して配された第1筒軸16,16を介して2つの第2回転部材(第2回転部)17,17が回転が自在に支持されており、更に、各第1筒軸16,16内に回転が自在である第3伝動軸18,18が支持されている。
【0034】
第1回転部材13内には、第2伝動軸12の外周りに固定された入力歯車19と、該入力歯車19に噛合し、中間軸20,20に遊転が自在に支持された2つの中間歯車21,21と、該中間歯車21,21に噛合し、各第1筒軸16に固定された2つの出力歯車22,22と、各第3伝動軸18,18に固定された伝動歯車23,23と、該伝動歯車23,23に噛合する部分歯24a,24a及び揺動用カム14に係合する転動輪24b,24bを有し、枢支軸24c,24cにより揺動が自在に支持された2つの揺動アーム24,24とが収容されており、第1回転部材13の回転に連動して第2回転部材17,17が回転し、更に、第1回転部材13の回転に連動して揺動アーム24,24が揺動し、第3伝動軸18,18を正逆回転方向へ角回転させるように構成されている。
【0035】
出力歯車22と入力歯車19とのギヤ比は1:3になっており、第1回転部材13が正回転方向に1回転するとき、第2回転部材17,17が逆回転方向に2回転するように構成されている。
【0036】
揺動アーム24,24はその中央部が第1回転部材13内に枢支された略L字形をなしており、揺動中心がピッチ円の部分歯24aが一端部に設けられ、他端部に転動輪24bが軸支され、第2回転部材17,17が1回転するとき、第3伝動軸18,18が略90度正転及び逆転し、該第3伝動軸18,18に連動連結される支持体(支持部)3を往動/復動させるように構成されている。
【0037】
第2回転部材17,17は、その一端部が第1筒軸16,16に結合された長円形のケースからなり、回転中心に対して長手方向側へ偏心した位置に第2筒軸25,25を介して支持体3,3が上下に揺動が可能に枢支されており、更に、第2筒軸25,25内に角回転が自在である制御軸26,26が支持されている。
【0038】
第2回転部材17,17内には、第3伝動軸18,18の外周りに固定された入力歯車27,27と、該入力歯車27,27に噛合し、中間軸28,28に遊転が自在に支持された中間歯車29,29と、該中間歯車29,29に噛合し、第2筒軸25,25に固定された出力歯車40,40と、制御軸26,26に固定された伝動歯車41,41と、該伝動歯車41,41に噛合し、中間歯車29,29と一体に形成された遊転歯車42,42とが収容されており、第2回転部材17,17が1回転するとき、支持体3,3が上下に略90度往復揺動し、更に、制御軸26,26が角回転するように構成されている。
【0039】
入力歯車27及び中間歯車29は同一歯数であり、伝動歯車41及び遊転歯車42は同一歯数であり、中間歯車29と出力歯車40とのギヤ比は2:3になっており、第2筒軸25,25に設けられた出力歯車40,40と、制御軸26,26に設けられた伝動歯車41,41との回転差が略1回転となるようになっており、第2筒軸25,25と一体に揺動する支持体3,3が揺動するとき、制御軸26,26を支持体3,3に対して一定角度で角回転させるように構成されている。
【0040】
支持体3,3はその中央部が第2筒軸25,25に結合された四角形のケース30,30を備えており、ケース30には、揺動中心に対して偏倚した長手方向一側に、苗植付爪31を構成する一対の挟持片310,310が揺動自在に枢支されており、更に、挟持片310,310を離隔する方向へ開動作させる付勢ばね32と、制御軸26,26に固定された挟持用カム33及び苗押出用カム34と、挟持片310,310の内側面に沿って摺動が自在の苗押出部材35と、苗押出用カム34の動作を苗押出部材35に伝動する伝動アーム36とがケース30,30内に収容されている。
【0041】
挟持片310,310は離隔する2つの枢支軸37,37に遊嵌された筒部31a,31a及び該筒部31a,31aの外側に突設され、互いに当接する第1の凸片31b,31bを有しており、該凸片31b,31bが付勢ばね32により付勢されて略平行となるように開動作している。また、一方の挟持片310の筒部31aには第3の凸片31cが突設されており、第3の凸片31c及び挟持用カム33間に介装された伝動部材38を介して制御軸26,26の角回転を一方の挟持片310に伝動し、付勢ばね32の付勢力に打ち勝って一対の挟持片310,310を閉動作させるように構成されている。
【0042】
図8は苗植付爪31,31の移動軌跡を示す説明図である。以上のように第1回転部材13が正回転方向に1回転するとき、第2回転部材17,17が逆回転方向に2回転し、また、支持体3,3が上下に略90度往復揺動する構成とすることにより、支持体3,3の揺動中心の移動軌跡が図8に示すように略三角形をなす植付基本軌跡Kとなり、且つ、2個の苗植付爪31,31の先端の移動軌跡Zが図8に示すように略三角形をなす無端状軌跡となる。この場合、苗植付爪31,31は移動軌跡Zに沿って互いに約180°の位相差を有するサイクルで、図中の移動軌跡Z上の矢符方向への移動が可能となる。
【0043】
具体的には、各苗植付爪31が苗トレイCの苗収容部C1に進入する進入位置(a)及び該進入位置(a)の下側で圃場の畝に苗Nを植え付ける植付位置(b)並びに前記進入位置(a)から苗植付爪31が後退する側の後退位置(c)で移動転換される移動軌跡Zで移動が可能となる。
【0044】
図9〜図13は苗植付爪31,31の移動過程を示す説明図である。進入位置(a)を、苗植付爪31が移動軌跡Zに沿って移動するサイクルの0°とする場合、後退位置(c)は約240°である。
【0045】
第1回転部材13及び第2回転部材17,17が回転し、支持体3,3が揺動している状態で一方の苗植付爪31が苗トレイCの苗収容部C1に収容された苗Nを取出すとき、一方の苗植付爪31の挟持片310,310は進入始点部分(d)から進入位置(a)にかけて略水平となり(図9参照)、該挟持片310,310が進入位置(a)に進入し、他方の苗植付爪31は移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c)に向けて移動している(図9参照)。この場合、一方の苗植付爪31の挟持片310,310は付勢ばね32の付勢力により開いており、この開状態で進入位置(a)に進入した後、挟持用カム33により挟持片310,310は閉動作し、苗収容部C1の苗Nの根鉢部を挟持する。
【0046】
苗Nの根鉢部を挟持した状態から第1回転部材13が矢印X方向に回転し、第2回転部材17,17が矢印Y方向に回転することにより、一方の苗植付爪31が進入位置(a)から進入始点部分(d)に水平的に後退移動しつつ下側の植付位置(b)に向けて下方へ揺動し、苗植付爪31は水平姿勢から下向き側へ傾斜し(図10〜図12参照)、他方の苗植付爪31は上方へ揺動しつつ後退位置(c)を通過し、進入位置(a)に向けて移動しており、苗植付爪31は下向きの略鉛直状から上向き側へ傾斜方向が変わっている(図10〜図12参照)。この場合、一方の苗植付爪31の挟持片310,310が挟持した苗Nは苗収容部C1から水平的に取出され、挟持片310,310に挟持された状態で根鉢部が下側となるように姿勢が変わる。
【0047】
下降過程を経て一方の苗植付爪31の揺動角度が略90度になると、一方の苗植付爪31は植付位置(b)に移動し、一方の苗植付爪31の挟持片310,310は略鉛直状となり、該挟持片310,310が圃場の畝に突っ込み、他方の苗植付爪31は上方へ揺動しつつ進入始点部分(d)と僅かに離隔した位置を進入位置(a)に向けて、水平状態になりつつ移動している(図13参照)。この場合、一方の苗植付爪31の挟持片310,310は挟持用カム33による拘束が解除され、付勢ばね32の付勢力により開動作し、苗Nの根鉢部を開放し、該苗Nを圃場に植え付ける。
【0048】
また、苗植付爪31には苗押出部材35が設けられているため、苗押出用カム34及び伝動アーム36により苗押出部材35が挟持片310,310の内側面に沿って下方へ摺動し、該苗押出部材35の先端が苗Nの根鉢部上面に当接し、苗Nを挟持片310,310に対して押し出す。従って、苗Nの挟持片310,310による持ち上がりを確実に防ぐことができる。
【0049】
一方の苗植付爪31が苗Nを圃場に植え付けた状態から上方へ揺動しつつ移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c)に向けて移動するとき、他方の苗植付爪31の揺動角度が略90度になり、他方の苗植付爪31の挟持片310,310は進入始点部分(d)から進入位置(a)にかけて略水平となり、該挟持片310,310が進入位置(a)に進入し、一方の苗植付爪31は移動軌跡Zの中央位置を後退位置(c)に向けて移動している(図9参照)。この場合、他方の苗植付爪31の挟持片310,310は付勢ばね32の付勢力により開いており、この開状態で進入位置(a)に進入した後、挟持用カム33により挟持片310,310は閉動作し、苗収容部C1の苗Nの根鉢部を挟持する。
【0050】
以上の(a)〜(d)の過程を繰り返すことにより、苗植付爪31,31は、進入位置(a)における苗トレイCからの苗Nの取り出し、及び植付位置(b)における圃場の畝に対する苗Nの植え付けの動作を交互に行なう。
【0051】
圃場に苗Nを植え付けた後の苗植付爪31には、苗Nの植え付けの際に苗Nの根鉢部を挟持することによって挟持片310,310の内側面に付着した泥土、及び/又は苗植付爪31が土中に突入した状態で挟持片310,310を開くことによって挟持片310,310の内側面に付着した泥土が付着している。苗植付爪31に付着した泥土が苗Nの植え付けを阻害することを防止すべく、次の苗Nを取り出す前に、この苗植付爪31に付着している泥土、特に挟持片310,310の内側面に付着している泥土を除去する必要がある。このために、移植機本体Bは、夫々対応する苗植付爪31,31に付着した泥土を除去する一対のスクレーパ50,50を備える。
【0052】
各スクレーパ50は、2枚の合成ゴム製の矩形をなす板状部材50a,50aを、金属製の矩形をなす芯板50bを介在して貼り合わせてなる板状物であり、貼り合わされた板状部材50a,50aの間から突出する芯板50bの基端部を、金属製の支持台50cが支持してなる。また、スクレーパ50は、ケース30の揺動中心に対して偏心した長手方向他側に支持台50cが固定されることによって、ケース30の一側に支持された苗植付爪31の長手方向に対してスクレーパ50の長手方向が適宜の傾斜角を有するように取り付けてある。
【0053】
更に、スクレーパ50の厚さB5は、開いた状態の挟持片310,310の離隔距離より僅かに小さくしてある。即ち、挟持片310,310間に配された場合に、スクレーパ50の両面と、挟持片310,310の内側面との間は適長離隔してある。以上のようなスクレーパ50は、例えばトラブルが生じて予期せぬ外力が移植機に加えられ、スクレーパ50に、挟持片310、苗押出部材35等のような他物が当接した場合、芯板50b及び板状部材50a,50aが自動的に撓んで当接の衝撃を緩和し、その後、撓んだ芯板50b及び板状部材50a,50aが元の形状に復元する柔軟性と弾性とを有するようにしてある。
【0054】
図9〜図13で示したように、支持体3,3が夫々植付基本軌跡Kに沿って移動しつつ揺動することによって、苗植付爪31,31は移動軌跡Zに沿って約180°の位相差を有するサイクルで互いに同一方向へ移動し、このときスクレーパ50,50は、移動軌跡Zに後退位置(c)で交差する略同一の無端状の移動軌跡(不図示)に沿って約180°の位相差を有するサイクルで移動する。
【0055】
以上のような苗植付爪31,31及びスクレーパ50,50の相対移動によって、図11に示すように、一方の支持体3に支持された苗植付爪31が後退位置(c)を通過する場合に、他方の支持体3に支持されたスクレーパ50、即ち一方の苗植付爪31に対応するスクレーパ50が後退位置(c)へ接近する。このため、後退位置(c)にて、一方の支持体3に支持された苗植付爪31と他方の支持体3に支持されたスクレーパ50とが接近し、挟持片310,310の内側面と板状部材50a,50aの外面とが適長離隔して対向するように、挟持片310,310間をスクレーパ50が通過する。
【0056】
このとき、一方の支持体3に支持された苗植付爪31に付着した泥土、具体的には挟持片310,310の内側面に付着した泥土が他方の支持体3に支持されたスクレーパ50によって除去される。苗植付爪31,31による苗Nの取り出し及び植え付けは交互に行なわれるため、苗植付爪31,31には交互に泥土が付着し、また、苗植付爪31,31は交互に後退位置(c)を通過する。このため、スクレーパ50,50も交互に後退位置(c)に対し接近及び退避し、スクレーパ50,50による泥土の除去も交互に行なわれる。
【0057】
一方の支持体3に支持された苗植付爪31及び他方の支持体3に支持されたスクレーパ50は、後退位置(c)へ接近移動した後、夫々の移動軌跡に沿って後退位置(c)から退避移動する。一方の支持体3に支持された苗植付爪31及びスクレーパ50、即ち対応しない苗植付爪31及びスクレーパ50は同一の支持体3の一側と他側とに離隔配置してあり、互いに接近することはなく、このため対応しないスクレーパ50による苗植付爪31の泥土除去も起こらない。
【0058】
更に、スクレーパ50,50は互いの移動を阻害せず、しかも、各スクレーパ50は、泥土を除去すべき対象である苗植付爪31の移動、及び他の苗植付爪31の移動を阻害しない。
【0059】
スクレーパ50が挟持片310,310間を通過する場合、スクレーパ50と挟持片310,310とは適長離隔しているため、挟持片310,310の内側面にほとんど泥土が付着していないとき、スクレーパ50は泥土の除去を行なわない。しかしながら、挟持片310,310の内側面に多量の泥土が付着しない限りは、苗植付爪31に付着した泥土が苗植付爪31の動作及び苗Nに悪影響を及ぼして苗Nの取出精度、植付精度等の苗植付性能を悪化させることはない。一方、挟持片310,310の内側面に大量の泥土が付着しているとき、内側面に付着している泥土がスクレーパ50の板状部材50a,50aに接触して容易に掻き落とされる。つまり、挟持片310,310の内側面に付着している泥土が除去されずに残留することを抑制する。
【0060】
以上のような移植機にあっては、各スクレーパ50が、対応する苗植付爪31による苗Nの植え付け後、この苗植付爪31による次の苗Nの取り出し前に、この苗植付爪31に付着した泥土のみを除去して、対応しない苗植付爪31に付着した泥土を除去せず、しかも、この苗植付爪31の挟持片310,310の内側面に付着した泥土を除去して、内側面以外に付着した泥土は積極的に除去しない。
【0061】
つまり、このような移植機にあっては、スクレーパ50,50に泥土が付着することを抑制することができ、スクレーパ50,50に付着した泥土が、苗植付爪31,31に付着した泥土の除去を阻害することを抑制することができ、苗植付爪31,31夫々に付着した泥土の除去効率を向上させることができる。以上の結果、苗植付爪31,31に付着したままの泥土が苗植付爪31,31の動作及び/又は苗Nに悪影響を及ぼすことを抑制することができ、苗Nの取出精度、植付精度等の苗植付性能を向上させることができる。
【0062】
仮に、スクレーパ50が常に移動軌跡Z上にある場合、例えば特許文献1に開示された移植機のように、スクレーパ50が移動軌跡Zの所定位置に常に配されるよう移植機本体Bに固定してある場合、スクレーパ50は苗植付爪31,31によって共用され、苗植付爪31,31の両方から掻き取った泥土が大量に付着する。また、苗植付爪31,31には交互に泥土が付着するため、スクレーパ50,50で同時的に除去する必要はない。即ち、苗植付爪31,31に交互に付着する泥土を、対応するスクレーパ50,50で交互に除去する本実施の形態の移植機は、泥土の除去効率が高い。
【0063】
更に、第1回転部材13、第2回転部材17,17及び支持体3,3は、従来の移植機が備える第1回転部材、第2回転部材及び支持体と同様に簡易に構成する事ができ、支持体3,3の相対移動を利用して、苗植付爪31,31及び対応するスクレーパ50,50を適切なタイミングで後退位置(c)に対し接近/離隔させることができる。
【0064】
更にまた、スクレーパ50は、原材料である合成ゴムの加工性が高く、形状が単純な板状部材50a,50aで構成される。このため、スクレーパ50,50の形成工程、取り付け工程等の製造工程は簡易である。つまり、移植機は簡易な構成であり容易に製造できるため、移植機の製造コストを低減させることができる。
【0065】
また、スクレーパ50の厚さB5が、開いた状態の挟持片310,310の離隔距離より小さいため、挟持片310,310に板状部材50a,50aが接触することによる板状部材50a,50aの磨耗を防止することができる。また、スクレーパ50が他物に当接した場合でも、スクレーパ50が当接の衝撃を緩和するため、スクレーパ50及び当接した他物の破損を防止することができる。
【0066】
仮に、スクレーパ50の厚さB5と、開いた状態の挟持片310,310の離隔距離とが略等しい場合、泥土の除去時に合成ゴム製の板状部材50a,50aと金属製の挟持片310,310とが摺動するため、板状部材50a,50aが磨耗して泥土の除去効率が徐々に低下する。更に、スクレーパ50と苗植付爪31とが当接する確率が高くなり、苗植付爪31の円滑な作動を阻害することがある。つまり、本実施の形態のスクレーパ50は、簡易な構成で、必要十分に泥土を除去し、スクレーパ50,50の磨耗又は破損によって泥土の除去効率が低下することを防止することができ、苗植付爪31の円滑な作動を阻害することなく、長期間にわたって高い泥土除去効率を維持することができる。
【0067】
また、挟持片310,310間を通過しているスクレーパ50は、例えば棒状の除去部と比べて板状部材50a,50aが挟持片310,310の内側面と対向している時間が長いため、挟持片310,310の内側面に付着している泥土を確実に除去することができる。また、除去する泥土に石が含まれている場合、石と合成ゴム製の板状部材50a,50aとが衝突した場合でも、大きな異音が生じない。
【0068】
なお、スクレーパ50は合成ゴムを用いてなる板状物に限るものではなく、例えば合成樹脂を用いてなるブラシでもよい。また、スクレーパ50,50を支持体3,3に配する構成に限らず、第1回転部材13、第2回転部材17、苗載台9等、移植機本体Bの他部に配して、各スクレーパ50が、対応する苗植付爪31の移動に応じて移動軌跡Zに対し進入/退避する構成でもよい。更に、スクレーパ50,50に加えて、移動軌跡Zの所定位置に常に配されるよう移植機本体Bに固定されたスクレーパを備えてもよい。
【0069】
本実施の形態においては、後植え式の乗用形の移植機を例示したが、前植え式でもよく、歩行形でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る移植機の全体の構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る移植機の移植機本体部分の構成を示す模式的説明図である。
【図3】本発明に係る移植機の支持体部分の構成を示す模式的説明図である。
【図4】本発明に係る移植機の第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図である。
【図5】本発明に係る移植機の第1回転部材部分の構成を示す模式的説明図である。
【図6】本発明に係る移植機の支持体部分の構成を示す概略平面図である。
【図7】本発明に係る移植機の第1回転部材と支持体との関係を示す概略説明図である。
【図8】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動軌跡を示す説明図である。
【図9】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【図10】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【図11】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【図12】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【図13】本発明に係る移植機の苗植付爪の移動過程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
13 第1回転部材(第1回転部)
17 第2回転部材(第2回転部)
3 支持体(支持部)
31 苗植付爪
310 挟持片
50 スクレーパ(除去部)
C 苗トレイ
N 苗
Z 移動軌跡(無端状軌跡)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略同一の無端状軌跡に沿って互いに約180°の位相差を有するサイクルで同一方向へ移動し、苗を収容する苗トレイからの苗の取り出し及び植え付けを交互に行なう2個の苗植付爪を備える移植機において、
各苗植付爪に対応して1個ずつ設けられ、苗の植え付け後又は取り出し前に、対応する苗植付爪が前記無端状軌跡の所定位置を通過する場合に、該所定位置へ接近して前記苗植付爪に付着した付着物の除去を行なう除去部を備えることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記所定位置は前記2個の苗植付爪に共通であり、
前記除去部は交互に前記所定位置に対し接近及び退避するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
一側にて一方の苗植付爪を支持し、他側にて他方の苗植付爪に対応する除去部を支持する2個の支持部と、
一方向に回転する第1回転部と、
該第1回転部の回転中心から略等距離の位置に約180°離隔して配してあり、前記第1回転部が1回転する間に前記一方向とは逆方向に2回転し、また、前記支持部が、その偏心位置に夫々揺動自在に配された2個の第2回転部と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
各苗植付爪は前記苗を挟持する2個の挟持片を備え、
各除去部は、該除去部に対応する苗植付爪の2個の挟持片の間を通過するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の移植機。
【請求項5】
前記除去部は合成ゴムを用いてなる板状物であることを特徴とする請求項4に記載の移植機。
【請求項1】
略同一の無端状軌跡に沿って互いに約180°の位相差を有するサイクルで同一方向へ移動し、苗を収容する苗トレイからの苗の取り出し及び植え付けを交互に行なう2個の苗植付爪を備える移植機において、
各苗植付爪に対応して1個ずつ設けられ、苗の植え付け後又は取り出し前に、対応する苗植付爪が前記無端状軌跡の所定位置を通過する場合に、該所定位置へ接近して前記苗植付爪に付着した付着物の除去を行なう除去部を備えることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記所定位置は前記2個の苗植付爪に共通であり、
前記除去部は交互に前記所定位置に対し接近及び退避するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
一側にて一方の苗植付爪を支持し、他側にて他方の苗植付爪に対応する除去部を支持する2個の支持部と、
一方向に回転する第1回転部と、
該第1回転部の回転中心から略等距離の位置に約180°離隔して配してあり、前記第1回転部が1回転する間に前記一方向とは逆方向に2回転し、また、前記支持部が、その偏心位置に夫々揺動自在に配された2個の第2回転部と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の移植機。
【請求項4】
各苗植付爪は前記苗を挟持する2個の挟持片を備え、
各除去部は、該除去部に対応する苗植付爪の2個の挟持片の間を通過するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の移植機。
【請求項5】
前記除去部は合成ゴムを用いてなる板状物であることを特徴とする請求項4に記載の移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−238770(P2006−238770A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58096(P2005−58096)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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