説明

種芋植付機、肥料と薬品との混合搬送装置、及び肥料類の局部施肥装置

【課題】
種芋植付機において、植え付けられる種芋の近辺のみに肥料、薬品等の肥料類を落下させる局部施肥を可能にすることである。
【解決手段】
機体18の走行と同期させて無端状の搬送ベルト14を周回走行させて、当該搬送ベルト14の対向走行部において作業者Uによって、当該搬送ベルト14に一定間隔をおいて取付けられた各搬送板15に載せられた種芋Kを、当該搬送ベルト14の反対向走行部の下端の落下部まで搬送して一個ずつ落下させて植え付ける構成の種芋植付機Aにおいて、前記落下部から落下される種芋Kを一個ずつ検出する種芋落下検出装置Bと、当該種芋落下検出装置Bによる種芋Kの検出と同期作動して、圃場の植付部に落下された種芋Kの近辺に肥料及び/又は薬品を所定量ずつ落下させるための施肥・施薬装置Dとを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の植付部に種芋を一定間隔で直線状に落下させた後に覆土して植え付けるための種芋植付機に関し、更に詳しくは、植え付けられる種芋の近辺のみに肥料、薬品等の肥料類を施す局部施肥を可能にした種芋植付機、肥料と薬品との混合搬送装置、及び肥料類の局部施肥装置に関するものである。なお、本明細書における「局部施肥」とは、肥料のみならず、薬品等の肥料以外のものを種芋に対して局部的に施すことを意味する。
【背景技術】
【0002】
種芋植付機の基本構成は、トラクターの後部に装着される機体の幅方向に沿った同一位置において斜上下方向に沿って配置された少なくとも2つのプーリーの間に、多数の搬送板を一定間隔をおいて取付けた搬送ベルトが掛装され、前記搬送ベルトは、前記機体に乗り込んだ作業者と対向する対向走行部が斜上方に向けて走行するように、側面視において周回走行され、前記機体の走行と同期させて前記搬送ベルトを周回走行させて、前記対向走行部において作業者によって前記搬送板に載せられた種芋を、該搬送ベルトの反対向走行部の下端の落下部まで搬送して一個ずつ落下させて植え付ける構成である(特許文献1)。
【0003】
一方、植付部に対して施肥する装置は種々開発されているが、いずれも定量ずつ連続的に施肥するものであって、植付部に植え付けられる種芋、種子等の植付位置との関係において当該種芋等の近辺のみに局部的に施肥するものであった(特許文献2,3)。
【0004】
従って、上記した種芋植付機において、種芋を一定間隔で直線状に植え付けて覆土する場合において、この植え付けられた種芋に対して施肥、施薬等を行うには、覆土前の直線状の植付部に連続して施肥等を行う作業と、前記植付部に種芋を落下させる作業とを別々に行った後に種芋に対して覆土させるか、或いは圃場のほぼ全体に施肥しておいて、植付部に種芋を落下させて植え付けた後に覆土するかのいずれかの方法で行っていた。
【0005】
このため、いずれの方法であっても、種芋が植え付けられていない部分に対しても肥料・薬品が施されるために、無駄となる肥料・薬品が発生して、種芋に対する施肥・施薬効率が悪いと共に、種芋の植付けとは別に施肥・施薬作業を行うために、施肥・施薬、及び種芋の植付けを含めた全体としての作業能率も悪かった。
【特許文献1】特開2002−14号公報
【特許文献2】特開2006−230293号公報
【特許文献3】特開2004−141020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記構成の種芋植付機において、植え付けられる種芋の近辺のみに肥料、薬品等の肥料類を落下させる局部施肥を可能にすることであり、更に種芋に対する局部施肥の前後方向(当該種芋の植付方向)に沿った位置を調整可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、トラクターの後部に装着される機体の幅方向に沿った同一位置において斜上下方向に沿って配置された少なくとも2つのプーリーの間に、多数の搬送板を一定間隔をおいて取付けた搬送ベルトが掛装され、前記搬送ベルトは、前記機体に乗り込んだ作業者と対向する対向走行部が斜上方に向けて走行するように、側面視において周回走行され、前記機体の走行と同期させて前記搬送ベルトを周回走行させて、前記対向走行部において作業者によって前記搬送板に載せられた種芋を、当該搬送ベルトの反対向走行部の下端の落下部まで搬送して一個ずつ落下させて植え付ける構成の種芋植付機において、前記落下部から落下される種芋を一個ずつ検出する種芋落下検出装置と、当該種芋落下検出装置による種芋の検出と同期作動して、圃場の植付部に落下された種芋の近辺に肥料及び/又は薬品を所定量ずつ落下させるための施肥・施薬装置とを備えていることを特徴としている。
【0008】
機体の走行と同期して、搬送ベルトが周回走行することにより、当該搬送ベルトの対向走行部において、機体に乗り込んだ作業者により種芋が一個ずつ搬送ベルトに供給されて搬送板により反対向走行部に搬送されて、当該反対向走行部の下端の落下部において種芋は一個ずつ直下の植付部に落下される。搬送ベルトは、機体の走行と同期して当該機体の速度に比例した速度で周回走行すると共に、当該搬送ベルトには多数の搬送板が一定間隔で取付けられているので、圃場の植付部に落下された前後の種芋の間隔はほぼ一定となる。請求項1の発明によれば、上記のように種芋が一定間隔を保って植付部に落下される状態において、種芋落下検出装置により、前記落下部から落下される種芋は一個ずつ検出され、施肥・施薬装置は、前記種芋落下検出装置による種芋の検出と同期作動して、圃場の植付部に落下された種芋の近辺に肥料及び/又は薬品を所定量ずつ落下させるように作動するので、植付部に落下して定置された種芋の近辺のみに肥料、及び/又は薬品が落下される。即ち、植付部に落下した種芋の植付方向に沿った当該種芋に対する局部施肥が可能となって、無駄な肥料・薬品の使用量が激減し、減肥・減薬が実現できる。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記種芋落下検出装置は、前記多数の搬送板を搬送ベルトに取付けている金属製の各取付ボルトを検出するために、前記搬送ベルトの内側に当該搬送ベルトの裏面と対向配置された金属センサであることを特徴としている。
【0010】
例えば、搬送ベルトを樹脂、帆布等の非金属で形成すると共に、当該搬送ベルトに取付けられる搬送板を金属板で形成して、当該搬送ベルトに金属製の取付ボルトを介して搬送板を取付けた場合には、無端状の搬送ベルトの内側の面(裏面)に露出している金属部は、取付ボルトの部分のみとなるので、搬送ベルトの周回走行中において当該取付ボルトを金属センサで検出すれば、搬送ベルトの反対向走行部の下端である落下部から落下される種芋を直接に検出するのと同様の結果となる。即ち、相前後する取付ボルトを金属センサで検出する時間差は、前記落下部から直接に落下する種芋を検出する場合の時間差と同一となって、直接に落下途中の種芋を検出しなくても、同等の検出を確実に行えて検出精度が高められる。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記金属センサは、前記機体に固定したフレームに取付けられ、前記機体に対する前記フレームの搬送ベルトの周回方向に沿った固定位置が調整可能になっていることを特徴としている。
【0012】
搬送ベルトに多数の搬送板を取付けている各取付ボルトが金属センサにより検出する検出タイミングと、圃場の植付部に落下された種芋の近辺に肥料及び/又は薬品を所定量ずつ落下させる施肥・施薬装置が作動を開始する作動タイミングとは同期しているが、前記検出タイミングは、落下部から落下する種芋を直接に検出するものではなくて、間接的に検出するものであるので、現実に搬送ベルトの反対向走行部の下端の落下部から種芋が落下するタイミングとは、一致していなくてずれる場合がある。この結果、搬送ベルトの反対向走行部の下端である落下部の高さ方向の位置、施肥・施薬装置の高さ方向の位置、前記落下部から落下される種芋の初速度、当該施肥・施薬装置から植付部に落下される肥料類の初速度等の相対関係によって、植付部に落下された種芋に対する前後方向に沿った肥料類の落下位置(施肥位置)は、相対的に定められる。そこで、請求項3の発明のように、金属センサを取付けているフレームの機体に対する固定位置を、搬送ベルトの周回方向に沿って調整可能にすると、植付部に落下された種芋に対する前後方向に沿った肥料類の落下位置(施肥位置)が調整可能となる。よって、植付部に落下された種芋に対する前後方向に沿った施肥位置を調整できて、当該種芋に対して前後方向に沿った望みの位置に施肥等することが可能となる。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記種芋落下検出装置は、落下途中の種芋が光線を遮ることにより当該種芋を検出する光センサであることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明によれば、搬送ベルトの反対向走行部の下端の落下部から落下する種芋を直接に検出する構成であるので、光センサによる種芋の検出タイミングと、施肥・施薬装置の作動タイミングとのタイミング合せが容易となる。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記施肥・施薬装置は、肥料及び/又は薬品を供給する肥料類供給ホースと、当該肥料類供給ホースの排出開口に開閉可能に設けられていて、前記種芋落下検出装置による種芋の落下の検出により開くシャッターとを備えていることを特徴としている。
【0016】
請求項5の発明によれば、種芋落下検出装置により検出された信号により、肥料類供給ホースの排出開口に設けられたシャッターが設定時間だけ開いた後に閉じることにより、種芋の落下に対応したタイミングでもって、設定量の肥料類が落下されるため、植付部に落下された種芋の前後方向に沿って定められた位置に肥料類が落下されて、局部施肥が可能となる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記施肥・施薬装置は、プロペラの回転による送風により、斜配管された前記肥料類供給ホースの排出口から排出された肥料類をほぼ水平に送るために、前記肥料類供給ホースの排出口の部分にほぼ水平となって取付けられた送風筒と、当該送風筒内においてほぼ水平に送られた肥料類を衝突させてほぼ直下に落下させるための整流板とを備えていることを特徴としている。
【0018】
請求項6の発明によれば、肥料類供給ホースの排出口から送風筒内に排出された肥料類は、当該送風筒内においてプロペラの回転により軸方向にほぼ水平に送られた後に、整流板に衝突することにより、進行方向を直下に変更されて落下する。このように、送風筒に設けられたプロペラの回転による送風作用によって整流板に衝突した肥料類は、必要な初速度を持って直下に落下するので、植付部の目的落下位置(局部施肥位置)に高い精度でもって落下して、植付部に落下した種芋に対して前後方向の正しい位置に肥料類が局部的に落下させられて、精度の高い局部施肥が可能となる。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項1に記載の種芋植付機に使用されて、肥料と薬品とを混合させて、植付部に落下定置された種芋の近辺に施す際に、前記肥料と薬品とを混合させて搬送するための装置であって、肥料タンクから定量排出された肥料を気流搬送させるための肥料ホースと、当該肥料ホース内において肥料を気流搬送させるために、当該肥料ホースの上流側の端部に設けられた肥料送風装置と、薬品タンクから定量排出された肥料を重力作用により供給させるための薬品ホースと、前記肥料ホースと薬品ホースとを合流させて肥料と薬品との混合物を供給するための合流ホースとを備え、前記肥料ホースにおける薬品ホースとの合流部の手前側に、気流のみを排出させて重力作用により下流側に肥料を供給可能とする気流分離器が組み込まれていることを特徴としている。
【0020】
請求項7の発明によれば、肥料と薬品とが合流される直前である肥料ホースにおける薬品ホースとの合流部の手前側に組み込まれた気流分離器によって、肥料の気流搬送のために使用されていた気流のみが大気中に排出されて、肥料のみが肥料ホース内に残って、下流側にそのまま重力作用により供給される。即ち、気流搬送に使用されていた気流と肥料とが分離され、その後に肥料は、重力作用を主体にして薬品との合流部まで搬送されるので、当該合流部に気流圧力が作用しなくなって、肥料と薬品との混合がスムーズに行われる。
【0021】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記気流分離器は、肥料ホースの断面積に対して急激に断面積が大きくなるような密閉箱状をしていて、肥料の搬送方向と直交する少なくとも一方の側面が、肥料の通過のみを阻止して気流の通過を許容する網目を有する網体で覆われた構成であることを特徴としている。
【0022】
請求項8の発明によれば、肥料の通過のみを阻止して気流の通過を許容する網目を有する網体の使用という極めて簡単な構成によって、肥料を搬送している気流のみを大気中に排出させて、肥料と気流とを容易に分離できる。
【0023】
また、請求項9の発明は、圃場に所定間隔をおいて植え付けられている作物に対して肥料・薬品等の肥料類を局部的に施肥するための施肥装置であって、前記肥料類を供給するための肥料ホースと、当該肥料ホースの排出開口に開閉可能に設けられたシャッターと、前記肥料ホースが連結されて、プロペラの回転による送風により前記肥料類供給ホースの排出口から排出された肥料類を気流搬送させて、前記作物の根元部に向けて吹き付けるための送風筒とを備えていることを特徴としている。
【0024】
請求項9の発明によれば、肥料ホースの排出開口のシャッターを断続的に開閉して、当該肥料ホースに滞留されている肥料類を定量ずつ送風筒に供給すると、当該供給筒内には、プロペラの回転による搬送気流が常時発生していて、送風筒内に供給された所定量の肥料類は、当該送風筒内の搬送気流により高速度で噴出されて、圃場の作物の根元部に吹き付けることが可能となる。このため、肥料類を定量ずつ作物の根元部に噴射により吹き付けることが可能となるので、作物の根元部のみに肥料類を断続して吹き付けられるので、作物の根元部から離れた部分に肥料が施されて無駄になるのを防止できて、減肥が実現できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る種芋植付機は、種芋が一定間隔を保って植付部に落下される状態において、種芋落下検出装置により、前記落下部から落下される種芋は一個ずつ検出され、施肥・施薬装置は、前記種芋落下検出装置による種芋の検出と同期作動して、圃場の植付部に落下された種芋の近辺に肥料及び/又は薬品を所定量ずつ落下させるように作動するので、植付部に落下して定置された種芋の近辺のみに肥料、及び/又は薬品が落下される。即ち、植付部に落下した種芋の植付方向に沿った当該種芋に対する局部施肥が可能となって、施肥効率が高められる。
【0026】
また、本発明に係る肥料と薬品との混合搬送装置は、肥料ホース内に気流分離器を設けることにより、薬品との混合の直前において肥料を気流搬送させている気流のみを大気中に排出させて、肥料ホース内に肥料を残存させた後に、重力作用を主体にして肥料を薬品との合流部まで搬送する構成であるので、肥料を気流搬送させているにもかかわらず、肥料と薬品とを良好に混合させられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、後方にマルチ作業機Eが連設された種芋植付機Aに本発明を実施した例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。最初に、種芋植付機Aの基本構成について説明し、その後に、本発明に係る種芋落下検出装置B及び施肥・施薬装置Dの部分について詳細に説明する。図1は、ロータリー耕耘装置Rに組み込まれた種芋植付機Aの側面図であり、図2は、同じく平面図であり、図3は、種芋植付機Aと施肥・施薬装置Dと種芋供給テーブルTとの配置関係を示す斜視図であり、図4は、種芋植付機Aの縦断面図であり、図5は、種芋植付機Aの動力伝動機構を示す図である。図1及び図2において、ロータリー耕耘装置Rの前部には、上側の1本の連結具1と、下側の一対(2本)の連結具2とが設けられ、各連結具1,2には、トラクター(図示せず)の後部に装着されたトップリンク3及びロワーリンク4がそれぞれ連結されて、ロータリー耕耘装置Rは、前記各リンク3,4を介してトラクターの後部に連結される。ロータリー耕耘装置Rは、横軸回転する耕耘軸5を備えており、該耕耘軸5に多数の耕耘刃6が軸方向に所定間隔をおき、しかも隣接する耕耘刃6どうしの周方向に沿って位相がずれた状態で取付けられている。ロータリー耕耘装置Rを牽引するトラクターのPTO軸(いずれも図示せず)の動力は、ユニバーサルジョイント7を介して耕耘装置R内の伝動装置(図示せず)に伝達されて、前記耕耘軸5が回転される構成になっている。
【0028】
また、図1ないし図5において、ロータリー耕耘装置Rには、種芋植付機Aが一体に組み込まれている。即ち、図4に示されるように、ロータリー耕耘装置Rの機体8の幅方向(横方向)の中央部であって、しかもロータリーカバー9(図4参照)よりも上方の部分には、左右一対のフレーム11a,11bが横方向に沿って所定間隔をおいて、機体8の進行方向Nに対して前傾姿勢で取付けられていて、各フレーム11a,11bの斜上端部及び斜下端部には、それぞれ上プーリー12及び下プーリー13が前記各フレーム11a,11bの間に配置されて、回転可能に支持されている。また、図3及び図4に示されるように、無端状の搬送ベルト14には、一定間隔をおいて多数の搬送板15が取付けられていて、該搬送ベルト14は、前記した上下の各プーリー12,13の間に掛装されている。また、図7に示されるように、搬送板15は、搬送ベルト14の幅方向に配置される主搬送板部15aの幅方向の両端部に、それぞれ側板部15bが周回方向に向けて一体に設けられ、前記主搬送板部15aの基端部に反周回方向に向けて取付板部15cが設けられて、当該取付板部15cの両端部が金属製の一対の取付ボルト16を介して搬送ベルト14に取付けられることにより、当該搬送ベルト14に対して多数の搬送板15が取付けられる。取付ボルト16は、無端状の搬送ベルト14の内側から当該搬送ベルト14及び搬送板15の取付板部15cを貫通して、ナット17と螺合される。搬送板15は金属製であるが、搬送ベルト14は樹脂製であるため、無端状をした搬送ベルト14の内側(裏面側)には、金属部としては、金属製の取付ボルト16の頭部16aのみが露出しており、本発明では、金属製の取付ボルト16の頭部16aを金属センサSで検出することにより、搬送ベルト14の反対向走行部の下端の落下部から落下される種芋Kの落下タイミングを間接的に検出する構成になっている。
【0029】
また、種芋植付機Aの後方には、これと対峙して作業椅子21が設置されており、前記搬送ベルト14は、前記下プーリー13が駆動プーリーとなって、前記作業椅子21に座って種芋供給作業を行う作業者Uと対向する対向走行部(手前側走行部)が斜上方に向けて走行するように、周回走行を行う。そして、搬送ベルト14の対向走行部において、その搬送板15の主搬送板部15aと左右一対の側板部15bとで形成される空間部に一個ずつ供給されて搬送ベルト14の上に載せられた種芋Kは、この状態で、搬送ベルト14の周回走行によって、上プーリー12の部分まで搬送された後に、当該上プーリー12の部分において搬送方向を逆方向に変えられて、作業者Uと対向しない反対向走行部(奥側走行部)において、下プーリー13の部分まで搬送される。
【0030】
また、図3及び図4に示されるように、前記搬送ベルト14の反対向走行部の前方及び両側方には、当該部分において斜後下方に向けて搬送される種芋Kの前方及び側方への落下を防止するための奥側落下防止カバー22が設けられている。また、搬送ベルト14の対向走行部の両側には、当該部分において搬送ベルト14に載せられて搬送板15で支持された種芋Kが側方から落下するのを防止するための手前側落下防止カバー23が設けられている。このため、搬送ベルト14の手前側部分で搬送板15に載せられた種芋Kは、上プーリー12の部分で反転されることにより、斜後下方に走行する直前の搬送板15の主搬送板部15aの背面に載せ変えられて、前記奥側落下防止カバー22に接触した状態で、そのまま下プーリー13の部分まで搬送される。そして、図3ないし図5に示されるように、下プーリー13のほぼ直下の部分であって、前記耕耘軸5の長手方向の中央部のやや後方には、種芋落下案内管24が、前記ロータリーカバー9を貫通し、しかも前記奥側落下防止カバー22に接続された状態で、ほぼ垂直に配置されている。よって、下プーリー13の部分まで搬送された種芋Kは、搬送板15に対する支持を失って落下し、前記種芋落下案内管24に案内されて落下し、この場合、種芋Kは耕耘されて、内側にはね飛ばされた土を種芋落下案内管24で避けることができるので、植付部に定置される。
【0031】
また、図1ないし図3に示されるように、前記種芋植付機Aを構成する搬送ベルト14の両側には、それぞれ種芋供給テーブルTが、作業者Uの側が低くなるように傾斜して配置され、ロータリー耕耘装置Rの機体8の進行方向Nを基準にして、各種芋供給テーブルTの手前側(作業者Uを基準にすると、奥側)には、それぞれ種箱設置枠25が設けられ、各種箱設置枠25には、それぞれ種箱26が、前記種芋供給テーブルTと略同一角度だけ傾斜して挿入設置される。前記種芋供給テーブルTは、その斜下端に、収容された多数の種芋Kが落下するのを防止するフランジ状の落下防止板27が、左右の各テーブルTに連続した状態で設けられている。また、左右の各種芋供給テーブルTは、これを一つのテーブルと見た場合に、その落下防止板27の部分である斜下端縁は、該テーブルTに収容された種芋Kが中央の搬送ベルト14の部分に達し易いように、その両端よりも中央が低くなっていて、左右の各テーブルTの中央に形成された供給開口28の部分において、各搬送板15は斜後下方から斜前上方に向けて順次繰り出てくる構成になっている。
【0032】
次に、図4及び図5を参照にして、上記した種芋植付機Aの駆動機構について簡単に説明する。ロータリー耕耘装置Rの機体8の左右両端であって、しかも後端の部分には、ゲージホイール31を支持するための一対のフレーム32a,32bが、僅かに前傾姿勢となって連結されて、各フレーム32a,32bの下端部に、それぞれゲージホイール軸33が回転可能に支持されている。そして、ゲージホイール軸33と、一方のフレーム32aに支持された第1中間軸34の一端部とにそれぞれ取付けた鎖歯車35,36に無端鎖37が掛装され、前記下プーリー13の斜上方に前記搬送ベルト14の間を貫通する形態で配置された第2中間軸38の一端部と、前記第1中間軸34の他端部とにそれぞれ鎖歯車39,41が取付けられて、各鎖歯車39,41に無端鎖42が掛装され、更に、第2中間軸38の他端部に取付けられた鎖歯車43と、下プーリー軸44に取付けられた鎖歯車45との間に無端鎖46が掛装されている。よって、ゲージホイール31の回転力が前記鎖歯車伝動装置によって下プーリー13に伝達されて、当該下プーリー13を駆動回転させる。
【0033】
また、図1及び図2において、上記ロータリー耕耘装置Rの後方には、左右一対の畦成形板47と、マルチ作業機Eとが装着されている。即ち、左右一対の畦成形板47は、ロータリー耕耘装置Rの左右の中心線に対して対称となって、前記耕耘刃6の後方に配置される。そして、直前の耕耘刃6により膨軟にされた土は、両側方から中央部に向けて寄せられ、種芋落下案内管24により寄せられる土を避けて植付部(図示せず)に落下した種芋Kが覆土されると共に、畦立が行われ、その後に、畦立てされた畦の表面は、左右一対の前記畦成形板47により所定形状に成形される。一方、マルチ作業機Eは、前記作業椅子21のほぼ直下に設置されたフィルムロール48と、該フィルムロール48のほぼ直下に配置された2本のフィルム案内ロール51,52と、成形畦の表面を覆った直後のフィルム両端を押し付けるための一対の鎮圧輪53と、これの後方に配置されて、フィルム両端に覆土するための覆土輪54とを備えている。
【0034】
次に、本発明に係る種芋落下検出装置Bと施肥・施薬装置Dとについて説明する。図6は、種芋落下検出装置Bと施肥・施薬装置Dとの組み合わせに係る装置の全体概念図である。図1ないし図4、及び図6に示されるように、種芋落下検出装置Bは、無端状の搬送ベルト14の内側であって、反対向走行部の裏面に対向して配置され、搬送ベルト14の反対向走行部の部分において当該搬送ベルト14に対して搬送板15を取付けている取付ボルト16の通過を金属センサSで検出することにより、搬送ベルト14の反対向走行部の下端である落下部から落下する種芋Kの落下タイミングを間接的に検出する装置である。即ち、前記落下部から相前後して落下する2個の種芋Kの落下時間差は、搬送ベルト14の反対向走行部において相前後して通過する2個の取付ボルト16の通過時間差に等しいという性質を利用して、前記搬送ベルト14の反対向走行部を走行する前記取付ボルト16の検出タイミングにより、種芋Kの落下タイミングを間接的に検出できる。一方、施肥・施薬装置Dは、種芋植付機Aの機体18を構成していて、当該機体18の進行方向Nに対して前傾姿勢で配置された前記搬送ベルト14の下端よりも下方に水平に配置された支持テーブル19の上面に、一部が前記種芋落下案内管24の内部に入り込んだ形態で配置されていて、前記種芋落下検出装置Bによる前記取付ボルト16の検出タイミングと同期作動して、肥料と薬品の混合物を前記種芋落下案内管24内に断続的に送り込んで落下させることにより、搬送ベルト14の反対向走行部の下端の落下部から落下して植付部に定置される種芋Kに対して局部的に施肥・施薬する装置である。
【0035】
種芋落下検出装置Bは、図7ないし図10に詳細に示されている。図7は、種芋落下検出装置Bが組み込まれた搬送ベルト14の斜視図であり、図8は、種芋落下検出装置Bの分解斜視図であり、図9は、同じく側面拡大図であり、図10は、図9のX矢視図である。種芋落下検出装置Bは、先端の折れ曲がり部61aに案内ローラ62が取付けられて、搬送ベルト14の反対向走行部と平行に配置されるセンサ取付板部61と、搬送ベルト14の裏面側のベルト面に対して垂直となるように前記センサ取付板部61に取付けられる金属センサSと、前記案内ローラ62を搬送ベルト14の裏面に当接可能にすべく、前記センサ取付板部61の折れ曲がり部61aと反対側の端部に当該センサ取付板部61の板面と平行な回動軸63を中心に回動可能に連結された中間連結具64と、配置状態において搬送ベルト14の反対向走行部の走行方向(搬送ベルトの周回方向)Qに沿った前記金属センサSの配置位置を調整可能にするための長孔65が形成された固定板部66と、当該固定板部66との間で機体18の被固定板部67を挟持して前記固定板部66を前記被固定板部67に固定するための挟持板部68とから成る。中間連結具64と固定板部66とは、当該中間連結具64の連結板部64aに一体に設けられたボルト69を前記固定板部66の長孔65に挿通して、当該ボルト69と蝶ナット71との螺合により連結され、固定板部66と挟持板部68とは、当該固定板部66に設けられた2本のボルト72を挟持板部68に設けられたボルト挿通孔68aに挿通して、前記各ボルト72と各ナット73との螺合により連結される。
【0036】
上記構成の種芋落下検出装置Bは、図7ないし図10に示されるように、無端状の搬送ベルト14の内部であって、しかも当該搬送ベルト14の幅方向の端部に当該搬送ベルト14の反対向走行部の走行方向Qに沿って配置される。種芋落下検出装置Bの配置状態では、センサ取付板部61が回動軸63を中心にして回動するため、案内ローラ62を常に搬送ベルト14の裏面に当接させて、金属センサSを搬送ベルト14の裏面に最接近させ、かつその状態を維持している。搬送ベルト14の反対向走行部の側において取付ボルト16の頭部16aを検出するのは、反対向走行部では、被搬送物である種芋Kが奥側落下防止カバー22に当接して搬送ベルト14から離間する結果、当該部分における搬送ベルト14の波打ちが無くなって、安定して取付ボルト16の頭部16aの検出が可能となるためである。なお、センサ取付板部61と中間連結具64とは回動軸63を介して回動可能に連結されているが、この「回動可能」とは、相当に大きな回動力を付与して初めて回動することを意味し、通常の状態では回動せずに連結されている状態を意味する。
【0037】
そして、金属センサSによる取付ボルト16の検出タイミングと、搬送ベルト14の反対向走行部の下端の落下部における種芋Kが落下を開始する落下タイミングとの調整により、落下して植付部に定置される種芋Kと、当該種芋Kの定置位置に対する機体18の進行方向Nに沿った肥料・薬品の施肥位置とを最適にして目的とする局部施肥を可能にできる。具体的には、種芋Kの定置位置に対して施肥位置をほぼ同一位置にするか、種芋Kの定置位置に対して施肥位置を前後のいずれにするかの選択である。この種芋Kの定置位置に対する施肥位置の調整は、固定板部66に設けられた長孔65を利用して、金属センサSの配置位置を搬送ベルト14の反対向走行部の走行方向Qに沿って調整することにより、金属センサSによる取付ボルト16の検出タイミングの調整により容易に行える。
【0038】
次に、図1ないし図4、図6、図11ないし図13を参照して、施肥・施薬装置Dについて詳細に説明する。図11は、気流搬送された肥料と重力落下された薬品との混合を可能にするための気流分離器Jの部分を主体に示す斜視図であり、図12は、施肥・施薬装置Dの斜視図であり、図13(a),(b)は、それぞれ肥料類の非供給状態、及び供給状態における施肥・施薬装置Dの断面図である。後部に種芋植付機Aが連結されているトラクタ(図示せず)の前部には肥料タンク74が搭載されていると共に、種芋植付機Aの機体18における作業椅子21の斜右前側方には薬品タンク75が搭載され、肥料タンク74から排出された肥料は、第1肥料ホース76内を気流の作用により気流分離器Jの部分まで気流搬送された後に、第2肥料ホース78によって、薬品ホース79により搬送される薬品と合流して混合された状態で、合流ホース80により施肥・施薬装置Dを構成する送風筒81の部分まで搬送される。肥料タンク74内の肥料は、肥料供給モータM3 により回転バルブ82を回転させると共に、肥料送風装置83を構成する肥料用送風モータM4 によりプロペラ84を回転させて発生する気流により、送風筒85の部分に達した肥料を当該気流と一緒に搬送する構成にしてある。全く同様に、薬品タンク75内の薬品は、薬品供給モータM5 により回転バルブ86を回転させて、直下に垂直配置された薬品ホース79内に落下させて供給する構成になっている。
【0039】
肥料と薬品の混合は、当該肥料が送風による気流搬送であると共に、当該薬品は直下に重力落下させて、第2肥料ホース78と薬品ホース79との合流部において肥料と薬品が合流して混合される。このため、前記合流部に気流搬送の気流がそのまま達したのでは、当該合流部において薬品との混合ができなくて、気流搬送される肥料のみが施肥・施薬装置Dに供給されてしまう。このため、前記気流分離器Jの部分において、気流を消滅させて、当該気流分離器Jにより下流側(第2肥料ホース78の側)は、薬品の供給と同様に重力作用を主体にして供給することにより、第2肥料ホース78と薬品ホース79との合流部において、肥料と薬品との混合を可能にした。前記気流分離器Jにおける気流消滅構造は、図11に示されるように、第1肥料ホース76の断面積に対して急激に断面積が大きくなるような箱状をした分離器本体87の気流が流れる方向と直交する一方又は双方の側面に、肥料の通過は阻止するが、気流の通過は許容する大きさの網目を有する網体88を組み込んで、当該網体88の部分から気流のみを外部に排出させて、肥料をそのまま重力作用を主体にして第2肥料ホース78内に落下させて、即ち気流と肥料とを分離させて肥料のみが前記合流部に供給される構成にしてある。なお、図11において、89は、分離器本体87と、上端部が垂直配置された第2肥料ホース78とを連結しているホッパーを示し、91は、気流分離器Jを固定するために、薬品タンク75の側面に固定された固定体を示す。
【0040】
肥料供給モータM3 、肥料用送風モータM4 及び薬品供給モータM5 は、それぞれコントローラC3 〜C5 により回転数を制御されて、肥料、及び薬品の供給量、並びに肥料を気流搬送するための送風量の調整を行えるようになっている。前記各コントローラC3 〜C5 は、主コントローラC0 により制御されて、当該主コントローラC0 により前記各モータM3 〜M5 のON・OFF等の制御を行っている。
【0041】
また、施肥・施薬装置Dは、図3、図6、図12及び図13に示されるように、前記支持テーブル19の上面に種芋植付機Aの進行方向Nに沿って固定配置された送風筒92と、当該送風筒92の後部に設けられて、送風モータM2 により駆動されるプロペラ93と、前記送風筒92の背面部に前記進行方向Nに対して後傾姿勢で一体に取付けられたシャッター筒94の開口を開閉するシャッター95と、前記送風筒92の前方に前記種芋落下案内管24の内部に入り込んだ状態で取付けられたわん曲板状の整流板96とを備えている。前記シャッター95は、シャッター開閉モータM1 の駆動軸(図示せず)の正逆回転(回動)により、シャッター筒94の開口を開閉する。即ち、シャッター開閉モータM1 の駆動軸(図示せず)には、周方向に沿って異なる位置に複数のアーム部97が一体に取付けられていて、特定のアーム部97と、シャッター95の背面に連結されたクランク状の連結棒98とが連結ワイヤ99を介して連結されていて、シャッター開閉モータM1 の正逆回転(回動)により、シャッター筒94に対して回動軸101を支点として回動可能に連結された前記シャッター95の回動により、シャッター筒94の開口を開閉させる。シャッター筒94には、前記合流ホース80の下端部が差し込まれていて、第2肥料ホース78と薬品ホース79との合流部で混合された肥料と薬品との混合物は、シャッター筒94を通って送風筒92内に供給される。なお、図12において、104は、支持テーブル19に対して送風筒92を固定している一対の固定板を示す。
【0042】
また、図13に示されるように、シャッター筒94の後部には、当該シャッター筒94と同幅であって、背丈の高いプロペラ収容筒部102が連続して設けられ、当該プロペラ収容筒部102内に送風モータM2 が配置されている。送風モータM2 は、その駆動軸103がプロペラ収容筒部102の開口側に向いた状態で配置されていて、送風モータM2 の駆動軸103に前記プロペラ93が取付けられている。このため、送風モータM2 によりプロペラ93が所定方向に回転すると、プロペラ収容筒部102及び送風筒92の内部において整流板96の側に向かう気流が発生する。また、送風モータM2 は連続回転していて、コントローラC2 により回転数が制御されているため、気流速度(送風量)の調整が可能となっている。シャッター開閉モータM1 及び送風モータM2 のON・OFFは、主コントローラC0 により制御される。
【0043】
ここで、送風モータM2 は連続回転していて、送風筒92内には整流板96に向かう気流が連続して流れていて、当該気流は、整流板96に衝突することにより、気流の流れは垂直下方に変換される。一方、シャッター開閉モータM1 は、種芋落下検出装置Bを構成する金属センサSによって、搬送板15を搬送ベルト14に取付けている取付ボルト16の検出と同期して作動するようになっている。即ち、金属センサSによって取付ボルト16の頭部16aが検出されると、その検出信号によりシャッター開閉モータM1 が所定方向への回転(回動)を開始してシャッター筒94の開口を閉塞しているシャッター95が設定時間だけ開かれて、シャッター筒94内に貯留されている肥料と薬品との混合物Fが送風筒92内に供給され、当該送風筒92内に供給された前記混合物Fは、当該送風筒92内に流れる気流に乗って整流板96の部分まで気流搬送され、当該整流板96に衝突した後に、流れる方向を垂直下方に変換されて、種芋落下案内管24に案内されて、植付部に先に定置されている種芋K、或いは後に、又はほぼ同時に定置される種芋Kの近辺の定められた位置に施される。シャッター95が開いている時間によって肥料と薬品とが混合された混合物Fの一回の供給量が定められ、シャッター95が開いてから設定時間経過後には、シャッター開閉モータM1 は、逆方向に回転(回動)して、シャッター筒94の開口を閉塞する。金属センサSの検出信号に基づくシャッター開閉モータM1 の正転開始タイミング、正転開始後の停止時間(シャッター95が開いている時間)、逆転開始タイミングは、いずれも主コントローラC0 により制御される。
【0044】
引き続いて、上記した種芋植付機Aの作用について説明する。ロータリー耕耘装置Rに一体に組み込まれた種芋植付機Aの両側の各種箱設置枠25には、それぞれ多数の種芋Kが収容された種箱26が設置され、種芋植付機Aに種芋Kを一個ずつ供給する作業者Uは、ロータリー耕耘装置Rに乗り込んでいる。この状態で、ロータリー耕耘装置Rは、トラクターにより牽引されて、ユニバーサルジョイント7を介して前記トラクターから前記耕耘装置Rに伝達された動力によって、耕耘軸5が回転する。これにより、ロータリー耕耘装置Rが前進すると、土面に接地しているゲージホイール31が回転して、その回転力が前記鎖歯車伝動装置によって、種芋植付機Aの下プーリー13に伝達され、該下プーリー13と上プーリー12とに掛装されている搬送ベルト14が上記方向に周回走行する。
【0045】
上記したように、無端状の搬送ベルト14の取付ボルト16の頭部16aが、当該搬送ベルト14の内側から種芋落下検出装置Bを構成する金属センサSにより検出されるのと同期して、施肥・施薬装置Dを構成するシャッター開閉モータM1 が起動してシャッター95が開かれることにより、シャッター筒94が開口して、当該シャッター筒94内に貯留されていた肥料と薬品との混合物Fが送風筒92内に供給され、当該混合物Fは、プロペラ93の回転による送風により整流板96に向けて気流搬送され、当該整流板96に衝突して直下に方向を変えて種芋落下案内管24に案内されて、植付部に先に定置されている種芋K、或いは後に、又は同時に定置される種芋Kの近辺の定められた位置に施される。
【0046】
ここで、種芋落下検出装置Bの金属センサSの走行方向Qに沿った配置位置を調整することにより、金属センサSによる取付ボルト16の検出タイミングと、搬送ベルト14の反対向走行部の下端の落下部から落下して整流板96の側方を通過する種芋の通過タイミングとを一致させた場合には、種芋Kと、肥料と薬品との混合物Fとが種芋植付機Aの進行方向Nに沿ったほぼ同一位置に落下されて、植付部における種芋Kの定置位置とほぼ同一位置に前記混合物Fが施された状態で、種芋Kに対して「局部施肥」される〔図14(a)参照〕。上記現象の発生は、整流板96の位置における種芋Kの落下速度と、前記混合物Fの落下速度とが同一であることが条件であるが、前記混合物Fは、初速度を有して落下を開始するために、送風モータM2 の回転数の調整によりプロペラ93の回転数を調整することにより、前記混合物Fの落下初速度を調整できるので、上記現象の発生は、理論上可能である。
【0047】
また、金属センサSによる取付ボルト16の検出タイミングと、搬送ベルト14の反対向走行部の下端の落下部から落下して整流板96の側方を通過する種芋の通過タイミングとをずらすことにより、落下して植付部に定置された種芋Kの僅かに前方又は後方に前記混合物Fを施することが可能となる〔図14(b),(c)参照〕。なお、図14において、Pは、種芋Kの植付間隔(ピッチ)又は肥料と薬品との混合物Fの施肥間隔を示す。
【0048】
また、前記混合物Fの落下初速度が大きい程、当該混合物Fが飛散しなくなって「局部施肥」の効果が高まるので、前記混合物Fの落下初速度が、整流板96の側方を通過する種芋Kの落下速度よりも大きい場合について考察する。図15〜図17は、いずれも上記の場合において、時間に対する種芋K及び混合物Fの落下距離を示すグラフであって、図15は、種芋Kと同一位置に混合物Fが落下して施される場合、図16及び図17は、それぞれ種芋Kの前後に混合物Fが落下して施される場合を示している。図15〜図17においてH1 ,H2 は、それぞれ種芋Kの落下開始位置、及び混合物Fの落下開始位置を示し、T0 は、金属センサSによる取付ボルト16の検出間隔時間(施肥・施薬装置Dの作業開始の時間差に等しい)を示し、T1 ,T2 ,T3 は、それぞれ種芋Kの定置位置に混合物Fが施される場合、その前方に施される場合、その後方に施される場合における種芋Kの落下開始と施肥・施薬装置Dの作動開始との時間差を示し、ΔT2 ,ΔT3 は、それぞれ種芋Kの定置位置の前方及び後方に混合物Fが施される場合における種芋Kと混合物Fとの着地時刻の僅少時間差を示す。図15〜図17に示されるように、種芋Kの落下開始のタイミングと施肥・施薬装置Dの作動開始タイミング、即ち混合物Fの落下開始タイミングとを調整することにより、定置される種芋Kに対して混合物Fが施される位置を自在に調整できる。施肥・施薬装置Dの作業開始時は、金属センサSによる取付ボルト16の検出時と必ずしも一致させる必要はなく、同期しておれば十分である。なお、図6において、121は、種芋Kの高さ方向に沿った定置位置を示す。
【0049】
植付部に落下された種芋Kは、耕耘刃6により膨軟にされた土が両側方から中央部に向けて寄せられることにより覆土されると共に、畦立が行われ、その後に、畦立てされた畦111の表面は、左右一対の畦成形板47により所定形状に成形される。その後に、フィルムロール48から引き出されたフィルム112によって、成形された畦111の表面が被覆される(図18参照)。なお、ゲージホイール31の回転と、搬送ベルト14の周回走行は、同期しているので、植付部に植え付けられる種芋Kの植付間隔(ピッチ)Pは、トラクターにより牽引されるロータリー耕耘装置Rの走行速度とは無関係に一定となり、前記第2中間軸38の一端に取付けられる鎖歯車39を歯数の異なるものと交換すると、前記植付間隔Pの変更を行える。
【0050】
なお、上記実施例では、肥料と薬品との双方を植付部に定置された種芋の近辺に局部施肥する場合であるが、肥料又は薬品のいずれか一方のみを種芋の近辺に局部施肥することも可能である。
【0051】
また、上記実施例の種芋落下検出装置Bは、搬送ベルト14に搬送板15を取付けている既存の取付ボルト16を金属センサSにより検出する構成であるが、前記搬送ベルト14に多数の搬送板15の取付ピッチと同一間隔をおいて多数のドッグを設けておき、当該ドッグをリミットスイッチにより検出する構成にすることも可能である。
【0052】
更に、上記実施例では、無端状の搬送ベルト14の内側に露出している搬送板15の金属製の取付ボルト16を金属センサSで検出することにより、前記搬送ベルト14の反対向走行部の下端の落下部から落下する種芋Kの落下タイミングを間接的に検出する構成であって、前記金属センサSによる取付ボルト16を検出する検出タイミングと、現実の種芋Kの落下タイミングとのずれは、前記金属センサSを前記搬送ベルト14の反対向走行部の走行方向Qに沿ってずらすことにより調整している。この間接検出方式は、連続する2個の種芋Kの落下開始の時間差と、連続する2本の取付ボルト16が金属センサSの部分を通過する時間差とは等しいことを利用した間接検出であって、落下開始、或いは落下中の種芋Kを直接に検出するのに比較して、取付ボルト16を検出する方式は、検出精度が高い利点がある。
【0053】
しかし、本発明では、例えば整流板96よりも上方の種芋落下案内管24の上端部に水平方向にセンサ光を放つように光センサを設置して、当該光センサにより落下途中の種芋を直接に検出し、当該検出と同期させて施肥・施薬装置Dを作動させて、植付部に定置される種芋に対して肥料類を局部施肥することも可能である。
【0054】
また、上記した施肥・施薬装置Dを単体で使用して、圃場に所定間隔で植え付けられている作物の根元部のみに局部施肥することが可能となる。例えば、機体に上記した施肥・施薬装置Dと、圃場の作物の根元部を検出可能なセンサとを装備されて、施肥する作物が植え付けられている畦の側方において機体を当該畦に沿って走行させながら、前記センサにより作物の根元部を検出する毎に、シャッター95を所定時間だけ開いて、所定量の肥料類を作物の根元部に高速気流により吹き付けるように構成する。施肥・施薬装置Dによる肥料類の噴射角度は、水平に対して下方を向いていることが好ましく、更に作物の根元部に対する肥料類の吹き付けの適格性を高めるために、施肥・施薬装置Dの送風筒92の先端部に噴出案内筒を設けることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ロータリー耕耘装置Rに組み込まれた種芋植付機Aの側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】種芋植付機Aと施肥・施薬装置Dと種芋供給テーブルTとの配置関係を示す斜視図である。
【図4】種芋植付機Aの縦断面図である。
【図5】種芋植付機Aの動力伝動機構を示す図である。
【図6】種芋落下検出装置Bと施肥・施薬装置Dとの組み合わせに係る装置の全体概念図である。
【図7】種芋落下検出装置Bが組み込まれた搬送ベルト14の斜視図である。
【図8】種芋落下検出装置Bの分解斜視図である。
【図9】同じく側面拡大図である。
【図10】図9のX矢視図である。
【図11】気流搬送された肥料と重力落下された薬品との混合を可能にするための気流分離器Jの部分を主体に示す斜視図である。
【図12】施肥・施薬装置Dの斜視図である。
【図13】(a),(b)は、それぞれ肥料類の非供給状態、及び供給状態における施肥・施薬装置Dの断面図である。
【図14】(a),(b),(c)は、それぞれ種芋Kに対する肥料と薬品との混合物Fの局部施肥の位置が異なる場合を示す。
【図15】種芋Kと同一位置に混合物Fが施される場合における時間に対する種芋K及び混合物Fの落下距離を示すグラフである。
【図16】種芋Kの前方に混合物Fが施される場合における時間に対する種芋K及び混合物Fの落下距離を示すグラフである。
【図17】種芋Kの後方に混合物Fが施される場合における時間に対する種芋K及び混合物Fの落下距離を示すグラフである。
【図18】種芋Kと肥料と薬品との混合物Fが覆土されて形成された畦111にフィルム112が被覆された状態の断面図である。
【符号の説明】
【0056】
A:種芋植付機
B:種芋落下検出装置
D:施肥・施薬装置
F:肥料と薬品との混合物
J:気流分離器
K:種芋
S:金属センサ
U:作業者
12:上プーリー
13:下プーリー
14:搬送ベルト
15:搬送板
16:取付ボルト
18:種芋植付機の機体
61:センサ取付板部(フレーム)
64:中間連結具(フレーム)
65:固定板部の長孔
66:固定板部(フレーム)
76:第1肥料ホース(肥料供給ホース)
78:第2肥料ホース(肥料供給ホース)
79:薬品ホース
80:合流ホース
88:網体
92:送風筒
93:プロペラ
95:シャッター
96:整流板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクターの後部に装着される機体の幅方向に沿った同一位置において斜上下方向に沿って配置された少なくとも2つのプーリーの間に、多数の搬送板を一定間隔をおいて取付けた搬送ベルトが掛装され、前記搬送ベルトは、前記機体に乗り込んだ作業者と対向する対向走行部が斜上方に向けて走行するように、側面視において周回走行され、
前記機体の走行と同期させて前記搬送ベルトを周回走行させて、前記対向走行部において作業者によって前記搬送板に載せられた種芋を、当該搬送ベルトの反対向走行部の下端の落下部まで搬送して一個ずつ落下させて植え付ける構成の種芋植付機において、
前記落下部から落下される種芋を一個ずつ検出する種芋落下検出装置と、当該種芋落下検出装置による種芋の検出と同期作動して、圃場の植付部に落下された種芋の近辺に肥料及び/又は薬品を所定量ずつ落下させるための施肥・施薬装置と、を備えていることを特徴とする種芋植付機。
【請求項2】
前記種芋落下検出装置は、前記多数の搬送板を搬送ベルトに取付けている金属製の各取付ボルトを検出するために、前記搬送ベルトの内側に当該搬送ベルトの裏面と対向配置された金属センサであることを特徴とする請求項1に記載の種芋植付機。
【請求項3】
前記金属センサは、前記機体に固定したフレームに取付けられ、前記機体に対する前記フレームの搬送ベルトの周回方向に沿った固定位置が調整可能になっていることを特徴とする請求項2に記載の種芋植付機。
【請求項4】
前記種芋落下検出装置は、落下途中の種芋が光線を遮ることにより当該種芋を検出する光センサであることを特徴とする請求項1に記載の種芋植付機。
【請求項5】
前記施肥・施薬装置は、肥料及び/又は薬品を供給する肥料類供給ホースと、当該肥料類供給ホースの排出開口に開閉可能に設けられていて、前記種芋落下検出装置による種芋の落下の検出により開くシャッターとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の種芋植付機。
【請求項6】
前記施肥・施薬装置は、プロペラの回転による送風により、斜配管された前記肥料類供給ホースの排出口から排出された肥料類をほぼ水平に送るために、前記肥料類供給ホースの排出口の部分にほぼ水平となって取付けられた送風筒と、当該送風筒内においてほぼ水平に送られた肥料類を衝突させてほぼ直下に落下させるための整流板とを備えていることを特徴とする請求項5に記載の種芋植付機。
【請求項7】
請求項1に記載の種芋植付機に使用されて、肥料と薬品とを混合させて、植付部に落下定置された種芋の近辺に施す際に、前記肥料と薬品とを混合させて搬送するための装置であって、
肥料タンクから定量排出された肥料を気流搬送させるための肥料ホースと、当該肥料ホース内において肥料を気流搬送させるために、当該肥料ホースの上流側の端部に設けられた肥料送風装置と、薬品タンクから定量排出された肥料を重力作用により供給させるための薬品ホースと、前記肥料ホースと薬品ホースとを合流させて肥料と薬品との混合物を供給するための合流ホースとを備え、
前記肥料ホースにおける薬品ホースとの合流部の手前側に、気流のみを排出させて重力作用により下流側に肥料を供給可能とする気流分離器が組み込まれていることを特徴とする肥料と薬品との混合搬送装置。
【請求項8】
前記気流分離器は、肥料ホースの断面積に対して急激に断面積が大きくなるような密閉箱状をしていて、肥料の搬送方向と直交する少なくとも一方の側面が、肥料の通過のみを阻止して気流の通過を許容する網目を有する網体で覆われた構成であることを特徴とする請求項7に記載の肥料と薬品との混合搬送装置。
【請求項9】
圃場に所定間隔をおいて植え付けられている作物に対して肥料・薬品等の肥料類を局部的に施肥するための施肥装置であって、
前記肥料類を供給するための肥料ホースと、当該肥料ホースの排出開口に開閉可能に設けられたシャッターと、前記肥料ホースが連結されて、プロペラの回転による送風により前記肥料類供給ホースの排出口から排出された肥料類を気流搬送させて、前記作物の根元部に向けて吹き付けるための送風筒とを備えていることを特徴とする肥料類の局部施肥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−99021(P2010−99021A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274158(P2008−274158)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000183967)鋤柄農機株式会社 (20)
【Fターム(参考)】