説明

積層板の製造方法

【課題】金属箔を除去するという余分な工程を経ずに、ガラス転移温度と引っ張り弾性率を維持しつつ、平滑な絶縁層表面に剥離強度に優れる導体層が形成される積層板の製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁層のガラス転位温度が150℃以上270℃以下、引っ張り弾性率が10GPa以上35GPa以下の硬化性樹脂組成物に、無機充填材を40質量%以上80質量%以下含有するプリプレグを支持体の間に配置し、減圧下で加熱及び加圧して硬化させた後、支持体を除去し、絶縁層表面を粗化処理し、無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する積層板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の積層板の製造方法、更には得られた該積層板を用いた回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コア材の回路形成方法としては、金属張積層板の余分な金属箔部分をエッチングし、残った金属箔部分を利用してそのまま回路を形成するサブトラクティブ法や、金属張積層板の金属箔をすべて除去し絶縁層上に形成された金属箔由来の凹凸をアンカーとして利用して、無電解めっきを行い、電気めっきにより導体層を形成するセミアディティブ法がある(特許文献1)。しかし、絶縁層表面にこのような凹凸を形成させると、回路形成時に不要な導体層及びめっきシード層をエッチングで除去する際、凹凸中の金属が除去され難く、一方、十分に除去し得る条件でエッチングした場合には、必要な部分の導体層の溶解が顕著化し、微細配線化の妨げになる問題が生じていた。また、Bステージ樹脂組成物シートを挟むため、基板の小型化には不利となってしまう。
【0003】
また、金属箔上に接着補助剤層を形成した接着補助剤付金属箔を用いた銅張積層板が開発されている(特許文献2)。しかし、接着補助剤層を設けているため、基板の小型化には不利となってしまい、金属箔を除去する工程も必要となり、さらに信頼性試験後にめっき界面と接着補助剤層との界面で膨れが発生したり、または接着補助剤層とプリプレグ層との界面で膨れが発生したりと、十分な信頼性が確保できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−332734号公報
【特許文献2】特開2006−218855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、金属箔を除去するという余分な工程を経ずに、ガラス転移温度と引っ張り弾性率を維持しつつ、平滑な絶縁層表面に剥離強度に優れる導体層が形成される積層板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の積層板の製造方法により、上記課題が達成できることを見出した。
【0007】
本発明の特徴は以下の通りである。
【0008】
[1](A)支持体の間に1枚以上のプリプレグを配置し、減圧下で加熱及び加圧することで、プリプレグを硬化させて絶縁層を形成する工程、
(B)支持体を除去する工程、
(C)絶縁層表面を粗化処理する工程、
(D)無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する工程、
を含むことを特徴とする積層板の製造方法であって、
前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、無機充填材を40質量%以上80質量%以下含有し、
前記絶縁層のガラス転移温度が150℃以上270℃以下、引っ張り弾性率が10GPa以上35GPa以下であり、
前記(C)絶縁層表面を粗化処理する工程の後の絶縁層の表面粗さが0.1nm以上600nm以下であり、
前記(D)無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する工程の後の絶縁層と金属膜層とのピール強度が0.45kgf/cm以上10kgf/cm以下となることを特徴とする積層板の製造方法。
[2]支持体が離型プラスチックフィルムであることを特徴とする、上記[1]に記載の積層板の製造方法。
[3]プリプレグが硬化性樹脂組成物とシート状繊維基材で構成されている上記[1]又は[2]に記載の積層板の製造方法。
[4]プリプレグ中のシート状繊維基材がガラス繊維、有機繊維、ガラス不織布、有機不織布から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記[3]に記載の積層板の製造方法。
[5]シート状繊維基材が厚さ1〜200μmのガラス繊維であることを特徴とする、上記[4]に記載の積層板の製造方法。
[6]プリプレグ中の硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂及び硬化剤を含有することを特徴とする、上記[1]〜[5]に記載の積層板の製造方法。
[7]プリプレグ中の硬化性樹脂組成物がナフタレン型エポキシ樹脂及びナフトール系硬化剤を含有することを特徴とする、上記[6]に記載の積層板の製造方法。
[8]プリプレグを150〜250℃、60〜150分で硬化させることを特徴とする、上記[1]〜[7]のに記載の積層板の製造方法。
[9]更に、(E)スルーホールを形成する工程を含むことを特徴とする、上記[1]〜[8]に記載の積層板の製造方法。
[10](B)支持体を除去する工程の前に、(E)スルーホールを形成する工程を行うことを特徴とする、上記[9]に記載の積層板の製造方法。
[11]更に、(F)電解めっきにより導体層を形成する工程を含むことを特徴とする、上記[1]〜[10]に記載の積層板の製造方法。
[12]上記[1]〜[11]に記載の製造方法で得た積層板を用いた多層プリント配線板。
[13]上記[1]〜[11]に記載の製造方法で得た積層板を用いた半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の特定の積層板の製造方法により、金属箔を除去するという余分な工程を経ずに、ガラス転移温度と引っ張り弾性率を維持しつつ、平滑な絶縁層表面に剥離強度に優れる導体層が形成される積層板を得ることができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0011】
本発明は、
(A)支持体の間に1枚以上のプリプレグを配置し、減圧下で加熱及び加圧することで、プリプレグを硬化させて絶縁層を形成する工程、
(B)支持体を除去する工程、
(C)絶縁層表面を粗化処理する工程、
(D)無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する工程、
を含むことを特徴とする積層板の製造方法である。
【0012】
[(A)工程]
<プリプレグ>
本発明で使用するプリプレグは、硬化性樹脂組成物とシート状繊維基材で構成されていることが好ましく、シート状繊維基材に硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱乾燥させて得ることができる。硬化性樹脂組成物は、特に限定なく使用できる。中でも、(a)エポキシ樹脂を含有する組成物が好ましく、(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤、(c)熱可塑性樹脂を含有する組成物がより好ましい。
【0013】
(a)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0014】
これらの中でも、耐熱性、絶縁信頼性、金属膜との密着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、例えば、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「エピコート828EL」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D])、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4700」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、三菱化学(株)製「YX4000」)などが挙げられる。
【0015】
(b)硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもの、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル樹脂等を挙げることができる。めっきの剥離強度を向上させる観点から、硬化剤としては分子構造中に窒素原子を有するものが好ましく、中でも、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤が好ましく、特にトリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0016】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、TD2090(DIC(株)製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤の具体例としては、LA3018(DIC(株)製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤の具体例としては、LA7052、LA7054、LA1356(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0017】
活性エステル系硬化剤には、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル化合物は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。活性エステル化合物は1種又は2種以上を使用することができる。活性エステル化合物としては、特開2004−277460号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとして、EXB−9451、EXB−9460(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(三菱化学(株)製)、などが挙げられる。
【0018】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体的例としては、F−a、P−d(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられる。
【0019】
(a)エポキシ樹脂と(b)硬化剤の配合比率は、フェノール系硬化剤またはナフトール系硬化剤の場合、エポキシ樹脂のエポキシ基数を1としたときに硬化剤のフェノール性水酸基数が0.4〜2.0の範囲となる比率が好ましく、0.5〜1.0の範囲となる比率がより好ましい。反応基の比率がこの範囲外であると、硬化物の機械強度や耐水性が低下する傾向にある。
【0020】
(c)熱可塑性樹脂は、硬化後の組成物に適度な可撓性を付与する等の目的で配合されるものであり、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。当該熱可塑性樹脂は硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.5〜60質量%の割合で配合するのが好ましく、3〜50質量%がより好ましい。熱可塑性樹脂の配合割合が0.5質量%未満の場合、樹脂組成物粘度が低いために、均一な硬化性樹脂組成物層を形成しにくくなる傾向となり、60質量%を超える場合、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて、基板上の配線パターンを埋め込みにくくなる傾向となる。
【0021】
フェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、東都化成(株)製FX280、FX293、三菱化学(株)製YX8100、YL6954、YL6974、YL7213、YL6794、YL7553、YL7482等が挙げられる。
【0022】
ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール樹脂が好ましく、ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0023】
ポリイミドの具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0024】
ポリアミドイミドの具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0025】
ポリエーテルスルホンの具体例としては、住友化学(株)製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。
【0026】
ポリスルホンの具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0027】
当該硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂や硬化剤を効率良く硬化させるという観点から、(d)硬化促進剤をさらに含有させることができる。このような硬化促進剤としては、イミダゾール系化合物、ピリジン系化合物、有機ホスフィン系化合物等が挙げられ、具体例としては、例えば、2−メチルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィンなどを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。(d)硬化促進剤を用いる場合、エポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲で用いるのが好ましい。
【0028】
当該硬化性樹脂組成物には、絶縁層の熱膨張率を低下させるという観点から、(e)無機充填材をさらに含有させることができる。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、シリカ、アルミナが好ましく、特に無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等のシリカが好ましい。シリカとしては球状のものが好ましいこれらは1種又は2種以上を使用することができる。誘電率、誘電正接、熱膨張率を低くするという観点から、中空シリカを用いることが好ましい。中空シリカは、シェル部及び中空部からなり、平均空隙率が30〜80体積%であることが好ましい。
【0029】
無機充填材の平均粒径の上限値は、絶縁信頼性を向上させるという観点から、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましく、2μm以下が更に一層好ましく、1.5μm以下が殊更好ましく、1μm以下が特に好ましい。一方、無機充填材の平均粒径の下限値は、分散性を向上させるという観点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0030】
硬化性樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限値は、硬化物の機械強度の低下を防止するという観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、65質量%以下が更に一層好ましい。一方、硬化性樹脂組成物中の無機充填剤の含有量の下限値は、熱膨張率を低下させるという観点、プリプレグに剛性を付与するという観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上が好ましい。
【0031】
無機充填材は、耐湿性、分散性等の向上のため、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメテルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリーn−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニル
チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートのチタネート系カップリング剤などの表面処理剤で処理されているのが好ましい。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0032】
当該硬化性樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果が発揮される範囲で、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、アクリル樹脂、マレイミド化合物、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ブロックイソシアネート化合物などのエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を配合することもできる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。マレイミド樹脂としてはBMI1000、BMI2000、BMI3000、BMI4000、BMI5100(大和化成工業(株)製)、BMI、BMI−70、BMI−80(ケイ・アイ化成(株)製)、ANILIX−MI(三井化学ファイン(株)製)、ビスアリルナジイミド化合物としてはBANI−M、BANI−X(丸善石油化学工業(株)製)ビニルベンジル樹脂としてはV5000(昭和高分子(株)製)、ビニルベンジルエーテル樹脂としてはV1000X、V1100X(昭和高分子(株)製)が挙げられる。
【0033】
当該硬化性樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果が発揮される範囲で、難燃剤を含有することができる。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルアミド化合物、大塚化学(株)製のSPB100、SPE100等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0034】
当該硬化性樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果が発揮される範囲で、硬化物の機械強度を高める、応力緩和効果等の目的で固体状のゴム粒子を含有することができる。固体状のゴム粒子は、樹脂組成物を調製する際の有機溶媒にも溶解せず、エポキシ樹脂等の樹脂組成物中の成分とも相溶せず、樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものが好ましい。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマーは例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N、(ガンツ化成(株)商品名)、メタブレンKW-4426(三菱レイヨン(株)商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER-91(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK-500(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.5μm)(三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。
【0035】
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0036】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラス繊維、有機繊維、ガラス不織布、有機不織布から選択される1種又は2種以上を使用することができる。なかでもガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のシート状繊維基材を好ましく用いることができ、ガラスクロスがより好ましい。シート状繊維基材の厚さは、1〜200μmが好ましく、5〜175μmがより好ましく、10〜150μmが更に好ましく、20〜125μmが更に一層好ましく、30〜100μmが殊更好ましい。シート状繊維基材の具体的な例としては、ガラスクロスとして、例えば、旭シュエーベル(株)製のスタイル1027MS(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量20g/m、厚さ19μm)、旭シュエーベル(株)製のスタイル1037MS(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布重量24g/m、厚さ28μm)、(株)有沢製作所製の1078(経糸密度54本/25mm、緯糸密度54本/25mm、布重量48g/m、厚さ43μm)、(株)有沢製作所製の2116(経糸密度50本/25mm、緯糸密度58本/25mm、布重量103.8g/m、厚さ94μm)などが挙げられる。また液晶ポリマー不織布としては、(株)クラレ製のポリアリレート系液晶ポリマーからメルトブローン方式で製造された不織布であるベクルス(目付け量6〜15g/m2)や(株)クラレ製のベクトランを繊維素材とする不織布などが挙げられる。
【0037】
本発明で使用するプリプレグの製造方法は、特に制限されないが、以下の方法が好適である。
【0038】
プリプレグは、公知のホットメルト法、ソルベント法などにより製造することができる。ホットメルト法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、樹脂組成物と剥離性の良い離型紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコータにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。また、ソルベント法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂組成物ワニスにシート状繊維基材を浸漬することにより、樹脂組成物ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。また、支持体上に積層された硬化性樹脂組成物からなる接着フィルムをシート状補強基材の両面から加熱、加圧条件下、連続的に熱ラミネートすることで調製することもできる。
【0039】
ワニスを調製する場合の有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0040】
ワニスの乾燥条件は特に限定されないが、プレス工程において、硬化性樹脂組成物が流動性(フロー性)及び接着性を有する必要がある。一方、プリプレグ内に有機溶剤が多く残留すると、硬化後に膨れが発生する原因となる。このため、硬化性樹脂組成物中への有機溶剤の含有割合は5質量%以下とするのが好ましく、2質量%以下とするのがより好ましい。具体的な乾燥条件は、硬化性樹脂組成物の硬化性やワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスにおいては、80〜180℃で3〜13分乾燥させるのが好ましい。なお、簡単な実験によって、適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0041】
プリプレグの厚さは、シート状繊維基材のコスト及びプリプレグとして所望される剛性の観点から、20〜250μmの範囲が好ましく、40〜180μmの範囲がより好ましく、60〜150μmの範囲が更に好ましい。なお、プリプレグの厚さは、硬化性樹脂組成物の含浸量を調整することにより、容易にコントロールすることが出来る。また、プリプレグはプレスでボイドなく積層可能な流動性を持つことが必要であり、プリプレグにおける硬化性樹脂組成物はその最低溶融粘度が200〜30000poiseの範囲であることが好ましく、1000〜20000poiseの範囲であることがより好ましい。
【0042】
<支持体>
本発明の方法では、金属箔の代わりに支持体を用いてプリプレグを硬化させるため、金属箔を除去するという余分な工程を行う必要がなく、積層板の生産性に優れ、環境面にとっても廃液が減るという優れた点があり、さらには金属箔と比較し低コスト且つ容易に除去可能という優れた点もある。本発明で使用する支持体は、自己支持性を有するフィルムであり、プラスチックフィルムが好適に用いられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、安価であるという観点からポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。またプラスチックフィルムは、硬化後の剥離性を向上させる目的で、マット処理、コロナ処理等の表面処理を施した離型プラスチックフィルムや、支持体表面にシリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂等の他の離型層が存在している離型プラスチックフィルムが好ましい。また、支持体の両面に表面処理を施してもよい。プリプレグと接する側の支持体表面は、プリプレグと接する際にプリプレグ表面を平滑に保つという観点から、表面粗さ(Ra値)は50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、35nm以下が更に好ましく、30nm以下が更に一層好ましく、25nm以下が殊更好ましい。表面粗さ(Ra値)の下限値は特に限定されるものではないが、支持体の実用性の観点から、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましい。表面粗さ(Ra値)の測定は、公知の方法を用いることができ、例えば、非接触型表面粗さ計(例えば、ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300等)などの装置を用いて測定することができる。支持体は市販のものを用いることもでき、例えば、T60(東レ(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)、A4100(東洋紡(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム、)、Q83(帝人デュポンフィルム(株)製、ポリエチレンナフタレートフィルム)、リンテック(株)製のアルキッド型離型剤(AL−5)付きポリエチレンテレフタレートフィルム、ダイアホイルB100(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、ポリエチレ
ンテレフタレートフィルム)等が挙げられる。
【0043】
支持体の厚みは、10〜70μmが好ましく、15〜70μmがより好ましい。厚みが小さすぎると、取り扱い性に劣る傾向や、支持体層の剥離性低下の傾向がある。また、厚みが大きすぎると、コストパフォーマンスが劣る傾向となる。
【0044】
<プリプレグを硬化させて絶縁層を形成する工程>
【0045】
(A)工程では、支持体の間に1枚以上のプリプレグを配置し、減圧下で加圧及び加熱することで、プリプレグを硬化させて絶縁層を形成する。2枚以上のプリプレグを用いる場合は、同じプリプレグを用いてもよく、異なるプリプレグを用いてもよい。異なるプリプレグを用いる場合、硬化性樹脂組成物の組成、シート状繊維基材の材料、シート状繊維基材の厚み等のうちの一つ又は全部が互いに異なるものを用いることができる。本発明の絶縁層は接着剤層を設けることなく、そのまま積層板の製造に供する事ができる。
【0046】
また、作業性の観点より、支持体表面にプリプレグを貼り合わせた支持体付きプリプレグを用いても良い。支持体とプリプレグの貼り合わせは、プレス、バッチ式ラミネータ、ロール式ラミネータ等で加熱、圧着して行うことができる。加熱温度は、支持体とプリプレグの接着性の観点から、60〜140℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。圧着の圧力は、バッチ式ラミネータの場合、1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)の範囲が好ましく、2〜7kgf/cm(19.6×10〜68.6×10N/m)の範囲がより好ましい。圧着時間は、5秒〜3分の範囲が好ましい。ロール式ラミネータの場合、線圧が1〜15Kgf/cmが好ましく、1〜10kgf/cmがより好ましい。圧力が小さすぎると、樹脂組成物の流動性が不十分となり支持体との密着性が低下する傾向にあり、圧力が大きすぎると、樹脂のしみだしにより、膜厚が維持しにくい傾向となる。真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製 バッチ式真空加圧ラミネーター MVLP−500、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製 真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0047】
支持体付きプリプレグを用いる場合、プリプレグ層面を相対させて重ねるか又は支持体付きプリプレグ2枚のプリプレグ層間に別のプリプレグを1枚以上配置して重ねた後、減圧下で加圧及び加熱して、プリプレグを硬化させて絶縁層を形成する。なお、上記で説明したとおり、挿入するプリプレグは支持体付きプリプレグのプリプレグ層に使用したプリプレグと同種のものを用いてもよく、または異なるものを用いてもよい。
【0048】
減圧下で加圧及び加熱することで、プリプレグを硬化させて絶縁層を形成する工程は、真空ホットプレス機を用いて行うことができる。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体側両面からプレスすることにより行うことができる。
【0049】
プレス条件は、1×10−2MPa以下の減圧下で行うのが好ましい。加圧及び加熱は、1段階で行うことが出来る。樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。1段階目のプレスは、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cmの範囲、時間が15〜45分の範囲で行うのが好ましい。2段階目のプレスは、温度が150〜250℃、圧力が1〜40kgf/cmの範囲、時間が60〜150分の範囲で行うのが好ましく、温度が160〜240℃、圧力が1〜40kgf/cmの範囲、時間が75〜130分の範囲で行うのがより好ましい。
【0050】
市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0051】
絶縁層のガラス転移温度の下限値は、スルーホール端部のクラックを防止し、樹脂組成物と導体層との間の密着信頼性を向上させ、高温時の反り低減によるチップ等の実装性向上という観点から、150℃以上が好ましく、155℃以上がより好ましい。そして、絶縁層のガラス転移温度の上限値は、高ければ高いほど良いという観点から、175℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、190℃以下が更に好ましく、200℃以下が更に一層好ましく、230℃以下が殊更好ましく、250℃以下が特に好ましく、270℃以下がとりわけ好ましい。
【0052】
絶縁層の引っ張り弾性率は、電子部品実装時の剛性の確保という観点、低反り及び製品の耐衝撃性向上という観点から、10GPa以上が好ましく、15GPa以上がより好ましい。そして、絶縁層の引っ張り弾性率は、高ければ高いほど良いという観点から、25GPa以下がより好ましく、30GPa以下が更に好ましく、35GPa以下が更に一層好ましい。
【0053】
[(B)工程]
(B)支持体を除去する工程は、一般に、手動または自動剥離装置により機械的に剥離することによって行われる。支持体はプリプレグを硬化させて絶縁層を形成した後に剥離するのが好ましい。なお、後述の(E)スルーホールを形成する工程が行われる場合、(B)支持体を除去する工程の前又は後に、(E)スルーホールを形成する工程を行うことができ、スルーホール形成時に絶縁層表面を保護できるという観点から、(B)支持体を除去する工程の前に、(E)スルーホールを形成する工程を行うことが好ましい。
【0054】
[(C)工程]
(C)工程はプラズマ等のドライ法、アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤処理によるウエット法など公知の方法を用いることができる。特に、酸化剤によるデスミアは、絶縁層表面を粗化し、めっきの密着強度を向上させることができる点で好ましい。(C)工程を酸化剤で行う場合は、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に行うのが好ましい。膨潤液としては特に制限はないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。膨潤液による膨潤処理は、特に制限はないが、具体的には、30〜90℃の膨潤液を1分〜15分付すことで行われる。作業性、樹脂が膨潤されすぎないようにする点から、40〜80℃の膨潤液に5秒〜10分浸漬する方法が好ましい。酸化剤としては、特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液を挙げることができる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に10分〜30分付すことで行うのが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ド−ジングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(中和液)が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面に30〜80℃の中和液を5分〜30分付す方法を用いることができる。作業性等の点から、酸化剤溶液による粗化処理がなされた対象物を、40〜70℃の中和液に5分〜20分浸漬する方法が好ましい。(C)工程は、(E)スルーホールを形成する工程により生じた壁面残渣を除去することができ、壁面の粗化処理を行うことができるという観点から、(E)スルーホールを形成する工程の後に行うことが好ましい。
【0055】
当該(C)工程の後の絶縁層の表面粗さ(Ra値)の上限値は、高い平滑性により微細配線形成を可能にするという観点から、600nm以下が好ましく、570nm以下がより好ましく、540nm以下が更に好ましく、510nm以下が更に一層好ましく、480nm以下が殊更好ましく、450nm以下が特に好ましい。一方、絶縁層の表面粗さ(Ra値)の下限値は、高い剥離強度を得るという観点から、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましく、1nm以上が更に好ましく、10nm以上が更に一層好ましく、50nm以上が殊更好ましく、100nm以上が特に好ましい。
【0056】
[(D)工程]
(D)無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する工程は、公知の方法により行うことができ、例えば、絶縁層表面を界面活性剤等で処理し、パラジウム等のめっき触媒を付与した後、無電解めっき液に含浸することで金属膜を形成することができる。銅、ニッケル、金、パラジウム等が挙げられる、なかでも銅が好ましい。金属膜層の厚みは、樹脂表面の十分な被覆を行いうること、コストパフォーマンスの観点から、0.1〜5.0μmが好ましく、0.2〜2.5μmがより好ましく、0.2〜1.5μmが更に好ましい。なお、金属膜層は、無電解めっきの一種であるダイレクトプレーティング法によって形成してもよい。
【0057】
当該(D)工程の後の絶縁層と金属膜層とのピール強度の上限値は、高ければ高いほど良いという観点から、0.8kgf/cm以下が好ましく、1kgf/cm以下がより好ましく、3kgf/cm以下が更に好ましく、5kgf/cm以下が更に一層好ましく、10kgf/cm以下が殊更好ましい。一方、絶縁層と金属膜層とのピール強度の下限値は、絶縁信頼性を保つという観点から、0.45kgf/cm以上が好ましい。
【0058】
[(E)工程]
本発明の方法では、更に(E)スルーホールを形成する工程を行うことができる。(E)工程は、目的が達成されれば特に制限はないが、公知の方法によりスルーホールの形成を行うことができ、機械ドリル、あるいは炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーを用いても良い。
【0059】
(E)スルーホールを形成する工程は、スルーホール形成時に絶縁層表面を保護できるという観点から、(B)支持体を除去する工程の前に行うことが好ましい。また、絶縁層表面が粗化されるのを防止するという観点から、(D)無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する工程の後に行うことが好ましい。なお、支持体上からレーザーによりスルーホールを形成する場合、レーザー加工性を向上させるため、支持体にレーザー吸収性成分を含有させることができる。レーザー吸収性成分としては、金属化合物粉、カーボン粉、金属粉、黒色染料等が挙げられる。レーザーエネルギー吸収性成分の配合量は、該成分が含まれる層を構成する全成分中、0.05〜40質量%が好ましく 、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%である。カーボン粉としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、アントラセンブラック等のカーボンブラックの粉末、黒鉛粉末、またはこれらの混合物の粉末などが挙げられる。金属化合物粉としては、酸化チタン等のチタニア類、酸化マグネシウム等のマグネシア類、酸化鉄等の鉄酸化物、酸化ニッケル等のニッケル酸化物、二酸化マンガン、酸化亜鉛等の亜鉛酸化物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、希土類酸化物、酸化コバルト等のコバルト酸化物、酸化錫等のスズ酸化物、酸化タングステン等のタングステン酸化物、炭化珪素、炭化タングステン、窒化硼素、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、希土類酸硫化物、またはこれらの混合物の粉末などが挙げられる。金属粉としては、銀、アルミニウム、ビスマス、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、アンチモン、ケイ素、錫、チタン、バナジウム、タングステン、亜鉛、またはこれらの合金若しくは混合物の粉末などが挙げられる。黒色染料としては、アゾ(モノアゾ、ジスアゾ等)染料、アゾ−メチン染料、アントラキノン系染料キノリン染料、ケトンイミン染料、フルオロン染料、ニトロ染料、キサンテン染料、アセナフテン染料、キノフタロン染料、アミノケトン染料、メチン染料、ペリレン染料、クマリン染料、ペリノン染料、トリフェニル染料、トリアリルメタン染料、フタロシアニン染料、インクロフェノール染料、アジン染料、またはこれらの混合物などが挙
げられる。黒色染料は水溶性樹脂中への分散性を向上させるため溶剤可溶性の黒色染料であるのが好ましい。これらは1種又は2種以上を使用することができる。レーザーエネルギー吸収性成分は、レーザーエネルギーの熱への変換効率や、汎用性等の観点から、カーボン粉が好ましく、特にカーボンブラックが好ましい。
【0060】
[(F)工程]
本発明の方法では、更に(F)電解めっきにより導体層を形成する工程を行うことができる。(D)無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する工程の後、該金属膜層を利用して、(F)電解めっきにより導体層を形成する工程を行うことが好ましい。かかる導体層形成はセミアディティブ法等の公知の方法により行うことができる。例えば、めっきレジストを形成し、(D)工程で形成した金属膜層をめっきシード層として、電解めっきにより導体層を形成する。電解めっきによる導体層は銅が好ましい。その厚みは所望の回路基板のデザインにもよるが、3〜35μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。電解めっき後、めっきレジストをアルカリ性水溶液等のめっきレジスト剥離液で除去し、めっきシード層の除去も行い、配線パターンが形成される。めっきシード層の除去の方法は、エッチング液を用いることができ、例えば、銅であれば塩化第二鉄水溶液、ペルオキソ二硫酸ナトリウムと硫酸の水溶液などの酸性エッチング液、メック(株)製のCF−6000、メルテックス(株)製のE−プロセス―WL等のアルカリ性エッチング液を用いることができる。ニッケルの場合には、硝酸/硫酸を主成分とするエッチング液を用いることができ、市販品としては、メック(株)製のNH−1865、メルテックス(株)製のメルストリップN−950等が挙げられる。なお導体層形成後、150〜200℃、20〜90分のアニール処理をすることにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。
【0061】
(F)電解めっきにより導体層を形成する工程は、(E)スルーホールを形成する工程の後に行うことが好ましく、(E)スルーホールを形成する工程、(C)絶縁層表面を粗化処理する工程の後に行うことがより好ましく、(E)スルーホールを形成する工程、(C)絶縁層表面を粗化処理する工程、(D)無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する工程の後に行うことが更に好ましい。
【0062】
厚みの小さいプリプレグに、(E)スルーホールを形成する工程を行った場合、(F)電解めっきにより導体層を形成する工程と同時にスルーホールの内部をめっきで充填することができる。これは、スルーホールフィリングめっきといい、これにより回路基板の製造工程が短縮されるという利点がある。
【0063】
[多層プリント配線板]
本発明の積層板を用いて本発明の多層プリント配線板を製造する方法について説明する。支持体上に硬化性樹脂組成物を層形成した接着フィルムの硬化性樹脂組成物層を積層板に直接接するように、積層板の片面又は両面にラミネートする。接着フィルムを真空ラミネート法により減圧下で積層板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び積層板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0064】
ラミネートの条件は、温度を70〜140℃とするのが好ましく、圧力を1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とするのが好ましく、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下とするのが好ましい。真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0065】
このように接着フィルムを積層板にラミネートした後、支持フィルムを剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより積層板に絶縁層を形成することができる。加熱硬化の条件は150℃〜220℃、20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃、30〜120分である。絶縁層を形成した後、硬化前に支持フィルムを剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次に絶縁層に穴あけを行いビアホールを形成する。穴あけは、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により行うことができる。次いで、前述の方法と同様の酸化剤を使用した方法で絶縁層表面の粗化処理を行い、粗化処理により凸凹のアンカーが形成された絶縁層表面に、無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で導体層を形成する。導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。
【0066】
[半導体装置]
さらに本発明の多層プリント配線板を用いることで本発明の半導体装置を製造することができる。多層プリント配線板上の接続用電極部分に半導体素子を接合することにより、半導体装置を製造する。半導体素子の搭載方法は、特に限定されないが、例えば、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装、異方性導電フィルム(ACF)による実装、非導電性フィルム(NCF)による実装などが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
【0068】
まず、本明細書での物性評価における測定方法・評価方法について説明する。
【0069】
<導体層の剥離強度(ピール強度)の測定>
導体層の剥離強度をJIS C6481に準拠して測定した。実施例および比較例において得られた回路基板を150mm×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターで幅10mm、長さ100mmの切込みをいれ、銅箔の一端をはがして掴み具で掴み、インストロン万能試験機を用いて室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重を測定し、剥離強度とした。導体層の厚みは約30μmとした。
【0070】
<絶縁層の表面粗さ(Ra値)の測定>
回路基板上の無電解銅めっき層及び電解銅めっき層を銅エッチング液で除去し、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして、絶縁層の表面を測定して、表面粗さ(Ra値)を求めた。なお、Ra値は、無作為に測定箇所を10点設定し、それらの測定値の平均値を採用した。
【0071】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
実施例および比較例で作製した絶縁層を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、(株)リガク製熱機械分析装置(Thermo Plus TMA8310)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における寸法変化シグナルの傾きが変化する点からガラス転移温度(℃)を算出した。
【0072】
<引っ張り弾性率の測定>
日本工業規格(JIS K7127)に準拠し、実施例および比較例で作製した絶縁層をテンシロン万能試験機((株)エー・アンド・デイ製)を用いて引っ張り試験し、引っ張り弾性率を測定した。
【0073】
<金属箔除去工程の有無評価>
実施例及び比較例で作成した積層板において、金属箔除去工程の無いものを「○」とし、金属箔除去工程の有るものを「×」と評価した。
【0074】
(実施例1)
<プリプレグの作製>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「エピコート828EL」)28部と、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC(株)製「HP4700」)28部と、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX6954BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とを、MEK15部とシクロヘキサノン15部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、固形分60質量%のMEK溶液)27部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分50%のMEK溶液27部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」)70部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「KS−1」)をエタノールとトルエンの質量比が1:1の混合溶媒に溶解した固形分15%の溶液30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。該ワニスを、(株)有沢製作所製2116ガラスクロス(厚み94μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて140℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグの残留溶剤量はガラスクロスを含まない硬化性樹脂組成物中0.1〜1wt%、プリプレグの厚みは120μmであった。
【0075】
<絶縁層の形成>
上記作製したプリプレグをそれぞれ340mm×500mmの大きさに裁断機で裁断した。その後、2枚のテトラフルオロエチレンフィルム(旭硝子(株)製、「アフレックス」50μm)の間に2枚のプリプレグを設置し、(株)名機製作所製真空プレス機(MNPC−V−750−750−5−200)によって、減圧度を1×10−3MPa、圧力が10kgf/cm、昇温速度3℃/分で室温から130℃迄上昇させて30分保持した後、圧力を30kgf/cmとし、昇温速度3℃/分で190℃まで昇温させて90分保持することで、絶縁層を形成した。
【0076】
<回路基板の作成>
テトラフルオロエチレンフィルムを剥離し、絶縁層表面をアトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)により、60℃、5分間で膨潤処理を行った。水洗後、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP(アルカリ性過マンガン酸溶液)により、80℃、20分間で粗化処理を行った。水洗後、アトテックジャパン(株)製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(中和液)により、40℃、5分間で中和処理を行った。その後、無電解銅めっき(下記に詳述のアトテックジャパン(株)製の薬液を使用した無電解銅めっきプロセスを使用)を行って積層板を作製した。無電解銅めっきの膜厚は1μmであった。その後、電解銅めっきを行って計30μm厚の導体層を形成して回路基板を得た。
【0077】
<アトテックジャパン(株)製薬液を使用した無電解銅めっきプロセス>
1.アルカリクリーニング(樹脂表面の洗浄と電荷調整)
商品名:Cleaning cleaner Securiganth 902
条件:60℃で5分
2.ソフトエッチング
硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液
条件:30℃で1分
3.プレディップ(次工程のPd付与のための表面の電荷の調整が目的)
商品名:Pre. Dip Neoganth B
条件:室温で1分
4.アクティヴェーター(樹脂表面へのPdの付与)
商品名:Activator Neoganth 834
条件:35℃で5分
5.還元(樹脂に付いたPdを還元する)
商品名:Reducer Neoganth WA
:Reducer Acceralator 810 mod.の混合液
条件:30℃で5分
6.無電解銅めっき(Cuを樹脂表面(Pd表面)に析出させる)
商品名:Basic Solution Printganth MSK-DK
:Copper solution Printganth MSK
:Stabilizer Printganth MSK-DK
:Reducer Cu の混合液
条件:35℃で20分
【0078】
(実施例2)
<プリプレグの作製>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「エピコート828EL」)13部と、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC(株)製「HP4700」)6部と、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量275、日本化薬(株)製「NC3000L」)18部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製、「YX4000H」)10部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX6954BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部とを、MEK15部とシクロヘキサノン15部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、固形分60質量%のMEK溶液)15部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分60%のMEK溶液15部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」)135部、フェナントリレン型リン化合物(三光(株)製「HCA−HQ」平均粒径2μm)6部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「KS−1」)をエタノールとトルエンの質量比が1:1の混合溶媒に溶解した固形分15%の溶液15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。該ワニスを、(株)有沢製作所製2116ガラスクロス(厚み94μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて140℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグの残留溶剤量はガラスクロスを含まない硬化性樹脂組成物中0.1〜1wt%、プリプレグの厚みは120μmであった。
【0079】
その後実施例1と同様にして、絶縁層を形成し、回路基板を作製した。
【0080】
(比較例1)
<プリプレグの作製>
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、DIC(株)製「N−680」)の固形分75%のMEK溶液30部と、クレゾールノボラック樹脂(水酸基当量119、DIC(株)製「KA−1165」)の60%のMEK溶液16.5部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.05部、水酸化アルミニウム(平均粒径3.0μm、巴工業(株)製「UFE−20」)30部、MEK40部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。該ワニスを、(株)有沢製作所製2116ガラスクロス(厚み94μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて140℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグの残留溶剤量はガラスクロスを含まない硬化性樹脂組成物中0.1〜1wt%、プリプレグの厚みは約120μmであった。
【0081】
その後実施例1と同様して、絶縁層を形成し、回路基板を作製しようとしたが、絶縁層上にめっきが形成されず、剥離強度の測定は行うことが出来なかった。表1には「×」と示した。
【0082】
(比較例2)
実施例1で作製したプリプレグを用い、実施例1の2枚のテトラフルオロエチレンフィルムの変わりに、2枚の電解銅箔((株)日鉱マテリアルズ製「JTC箔」、18μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして絶縁層を形成した。その後、FeCl3水溶液に30分間浸漬させ、銅箔を除去し、実施例1と同様にして回路基板を作製した。
【0083】
測定結果を、下記表に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例1、2により、本発明の方法によれば、金属箔を除去するという余分な工程を経ずに、ガラス転移温度と引っ張り弾性率を維持しつつ、平滑な絶縁層表面に剥離強度に優れる導体層が形成される積層板を得ることができた。比較例1では、本発明のプリプレグを用いていないため剥離強度が全く得られていないことが分かる。比較例2は本発明の方法を用いるのではなく銅箔を用いているため、表面粗さの制御が非常に困難であり、更に金属箔除去という余分な工程を必要としてしまう結果になった。実際に銅箔を使用した場合には、銅箔の凹凸による影響により積層板の表面粗さが大きくなり、微細配線形成が困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、金属箔を除去するという余分な工程を経ずに、ガラス転移温度と引っ張り弾性率を維持しつつ、平滑な絶縁層表面に剥離強度に優れる導体層が形成される積層板を製造することができるようになった。該積層板は、エッチングによるめっきシード層の除去を温和な条件で行え、配線パターンの溶解を抑制することができるため、特に、微細配線形成が要求される回路基板の製造に適したものとなる。更にこれらを搭載した、多層プリント配線板、半導体装置、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機、等の乗物も提供できるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)支持体の間に1枚以上のプリプレグを配置し、減圧下で加熱及び加圧することで、プリプレグを硬化させて絶縁層を形成する工程、
(B)支持体を除去する工程、
(C)絶縁層表面を粗化処理する工程、
(D)無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する工程、
を含むことを特徴とする積層板の製造方法であって、
前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、無機充填材を40質量%以上80質量%以下含有し、
前記絶縁層のガラス転移温度が150℃以上270℃以下、引っ張り弾性率が10GPa以上35GPa以下であり、
前記(C)絶縁層表面を粗化処理する工程の後の絶縁層の表面粗さが0.1nm以上600nm以下であり、
前記(D)無電解めっきにより絶縁層表面に金属膜層を形成する工程の後の絶縁層と金属膜層とのピール強度が0.45kgf/cm以上10kgf/cm以下となることを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項2】
支持体が離型プラスチックフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の積層板の製造方法。
【請求項3】
プリプレグが硬化性樹脂組成物とシート状繊維基材で構成されている請求項1又は2に記載の積層板の製造方法。
【請求項4】
プリプレグ中のシート状繊維基材がガラス繊維、有機繊維、ガラス不織布、有機不織布から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項3に記載の積層板の製造方法。
【請求項5】
シート状繊維基材が厚さ1〜200μmのガラス繊維であることを特徴とする、請求項4に記載の積層板の製造方法。
【請求項6】
プリプレグ中の硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂及び硬化剤を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
【請求項7】
プリプレグ中の硬化性樹脂組成物がナフタレン型エポキシ樹脂及びナフトール系硬化剤を含有することを特徴とする、請求項6に記載の積層板の製造方法。
【請求項8】
プリプレグを150〜250℃、60〜150分で硬化させて絶縁層を形成することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
【請求項9】
更に、(E)スルーホールを形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
【請求項10】
(B)支持体を除去する工程の前に、(E)スルーホールを形成する工程を行うことを特徴とする、請求項9に記載の積層板の製造方法。
【請求項11】
更に、(F)電解めっきにより導体層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法で得た積層板を用いた多層プリント配線板。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法で得た積層板を用いた半導体装置。

【公開番号】特開2012−39021(P2012−39021A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179966(P2010−179966)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】