説明

積層焼結セラミック配線基板、及び当該配線基板を含む半導体パッケージ

【課題】微細な配線層を有するにもかかわらず、低いオープン不良率を有し、且つ高い高温高湿信頼性を有する、積層セラミック配線基板を提供する。
【解決手段】面内導体の少なくとも一部がファインライン化され、ファインライン化された面内導体の断面形状を台形とし、且つ当該台形状の断面の高さa、下底の長さc及び上底の長さd、並びに基板の主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔bが特定の関係を満たすように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層焼結セラミック配線基板に関する。具体的には、本発明は、ファインライン化された内層配線を有する積層焼結セラミック配線基板に関する。更に、本発明は、当該積層焼結セラミック配線基板を含む半導体パッケージにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばICチップ等の半導体素子を配線基板にフリップチップ実装する等して、例えば樹脂等のモールド剤で封止した、所謂フリップチップBGAパッケージ等の半導体パッケージが多く用いられている。かかる半導体パッケージ用の樹脂配線基板は、配線層と絶縁層とが複数積層された多層基板からなるのが一般的であり、当該配線層と、絶縁層を貫通する貫通導体とによって、基板の一方の面に配設された半導体素子等を実装するための電気端子と、基板の他方の面に配設された当該パッケージを例えばマザーボード等の回路基板に実装するためのボールグリッドアレイ(BGA)型の電気端子との間を電気的に接続している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、半導体素子と樹脂配線基板との間に、例えばシリコンやセラミック等、半導体素子の熱膨張率に近い熱膨張率を有する材質を基材とする中間配線基板(インタポーザ)を用いたパッケージ構成も提案されている。かかる構成により、温度変化に伴って半導体素子と中間基板との間に作用する熱応力を低減することができる。その結果、半導体素子の接合部に作用する熱応力に起因して、半導体素子の接合部が破壊されたり、中間基板が反ったりする問題を軽減することができる。
【0004】
上記のような中間配線基板は、通常、絶縁層と配線層とを積層した多層基板からなるのが一般的であり、当該配線層と、絶縁層を貫通する貫通導体とによって、基板の一方の面に配設された半導体素子等を実装するための電気端子と、基板の他方の面に配設されたパッケージ基板(樹脂配線基板)に中間基板を実装する為の電気端子との間を電気的に接続している(例えば、特許文献2及び3を参照)。
【0005】
ところで、様々な電子機器等において使用される回路素子パッケージ(例えば、ICパッケージ等の半導体パッケージ等)に対する市場からのニーズは、電子機器等の高性能化及び小型化の流れを受け、高速化、小型化、及び低背化(薄型化)の一途を辿っている。その結果、回路素子パッケージを構成する回路素子(例えば、ICチップ等の半導体素子、抵抗素子、容量素子、インダクタ素子等)、特に半導体素子においては、信号伝送の高速化、配線ピッチ(間隔)の微細化、及び素子の薄型化への要求が益々高まっている。具体的には、従来、上記のような半導体パッケージ用の配線基板や中間配線基板の配線層の線幅及び線間隔としては、25〜150μm程度のものが求められていたが、上記のような背景や、例えばICチップ等の半導体素子の端子数の増加に伴い、5〜15μm程度の微細な線幅及び線間隔が要求されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−243330号公報
【特許文献2】特公平2−45357号公報
【特許文献3】特許2010−034403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、当該技術分野においては、半導体素子の配線ピッチ(間隔)の微細化に伴い、半導体パッケージ用の配線基板や中間基板の配線層に対しても5〜15μm程度の微細な線幅及び線間隔が要求されるようになってきている。そこで、本発明者らが、基板における絶縁層の材質としてセラミックを用いて、15μm以下の配線層の線幅及び線間隔を有する配線基板を試作し、評価検討したところ、配線のオープン(断線)が多発したり、高温高湿環境での信頼性が低下したりする等の問題が発生した。
【0008】
本発明は、かかる問題に対処するために為されたものである。即ち、本発明は、微細な配線層を有するにもかかわらず、低いオープン不良率を有し、且つ高い高温高湿信頼性を有する、積層セラミック配線基板を提供することを1つの目的とする。更に、本発明は、かかる配線基板を使用することにより、高速化、小型化、及び低背化された信頼性の高い半導体パッケージを提供することをもう1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記1つの目的は、
セラミックを含んでなる複数の誘電体層からなる基材と、
2つの主面の一方の表面である第1主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第1表面電極と、
2つの主面の他方の表面である第2主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第2表面電極と、
前記基材中に埋設され、且つ導体を含んでなる内層配線と、
を備える積層焼結セラミック配線基板であって、
前記内層配線が、前記第1表面電極の少なくとも一部と前記第2表面電極の少なくとも一部とを電気的に接続し、
前記内層配線が、前記主面に垂直な方向において前記複数の誘電体層の少なくとも1つを貫通して延在する貫通導体、及び前記主面に平行な複数の面内において延在する面内導体を含んでなり、
前記面内導体の少なくとも一部が、延在方向に垂直な断面の形状が、上底及び下底が前記主面に平行な台形であり、当該台形の下底の長さ(c)が15μm以下であり、且つ前記主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が15μm以下である、微細面内配線として構成されており、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)及び前記間隔(b)が下式(1)の関係を満たし、
【0010】
【数1】

【0011】
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(2)の関係を満たす、
【0012】
【数2】

【0013】
積層焼結セラミック配線基板によって達成される。
【0014】
更に、上記もう1つの目的は、
半導体素子とパッケージ基板とを含んでなる半導体パッケージであって、
前記半導体素子と前記パッケージ基板とが、前記半導体素子と前記パッケージ基板との間に介装された中間基板を介して電気的に接続されており、
前記中間基板が、
セラミックを含んでなる複数の誘電体層からなる基材と、
2つの主面の一方の表面である第1主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第1表面電極と、
2つの主面の他方の表面である第2主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第2表面電極と、
前記基材中に埋設され、且つ導体を含んでなる内層配線と、
を備える積層焼結セラミック配線基板であって、
前記内層配線が、前記第1表面電極の少なくとも一部と前記第2表面電極の少なくとも一部とを電気的に接続し、
前記内層配線が、前記主面に垂直な方向において前記複数の誘電体層の少なくとも1つを貫通して延在する貫通導体、及び前記主面に平行な複数の面内において延在する面内導体を含んでなり、
前記面内導体の少なくとも一部が、延在方向に垂直な断面の形状が、上底及び下底が前記主面に平行な台形であり、当該台形の下底の長さ(c)が15μm以下であり、且つ前記主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が15μm以下である、微細面内配線として構成されており、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)及び前記間隔(b)が下式(1)の関係を満たし、
【0015】
【数3】

【0016】
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(2)の関係を満たす、
【0017】
【数4】

【0018】
積層焼結セラミック配線基板である、
半導体パッケージによって達成される。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明に係る積層焼結セラミック配線基板が備える面内導体の少なくとも一部がファインライン化(微細配線化)されており、当該部分における当該面内導体の幅及び当該面内導体と隣り合う面内導体との間隔が所定の値より小さくなるように構成されている。具体的には、本発明に係る積層焼結セラミック配線基板が備える面内導体の少なくとも一部は、延在方向に垂直な断面の形状が、上底及び下底が前記主面に平行な台形であり、当該台形の下底の長さ(c)が15μm以下であり、且つ前記主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が15μm以下である、微細面内配線として構成されている。
【0020】
また、本発明に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)及び隣り合う面内導体の間隔(b)が上記式(1)によって規定される関係を満足する。具体的には、前記微細面内配線を構成する面内導体の高さ(a)の間隔(b)に対する比(a/b)が、0.4以上であり、且つ0.6以下である。
【0021】
更に、本発明に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が上記式(2)によって規定される関係を満足する。具体的には、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が、−3/10×(a/b)+0.75以上であり、且つ−11/20×(a/b)+1.20以下である。
【0022】
本発明に係る積層焼結セラミック配線基板においては、面内導体の少なくとも一部がファインライン化されている。にもかかわらず、上記のようにファインライン化された面内導体の断面形状を台形とし、且つ当該台形状の断面の高さ(a)、下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)、並びに基板の主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が特定の関係を満たすように構成することにより、配線のオープン(断線)が多発したり、高温高湿環境での信頼性が低下したりする等の問題を抑制することができる。即ち、本発明によれば、微細な配線層を有するにもかかわらず、低いオープン不良率及びショート不良率を有し、且つ高い高温高湿信頼性を有する、積層セラミック配線基板が提供される。また、かかる配線基板を使用することにより、高速化、小型化、及び低背化(薄型化)された信頼性の高い半導体パッケージが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の1つの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板が備える微細面内配線を構成する面内導体の断面形状を、従来技術に係る面内導体の断面形状と比較しながら示す、模式図である。
【図2】本発明の幾つかの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板における内層配線のオープン不良及びショート不良の発生率と微細面内配線の構成との関係を調べるための検証用サンプル基板の構成を模式的に表す模式図である。
【図3】微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面における、高さ(a)の間隔(b)に対する比(a/b)と、上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)との組み合わせと、配線基板としての各種不良の発生状況との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述のように、本発明は、微細な配線層を有するにもかかわらず、低いオープン不良率及びショート不良率を有し、且つ高い高温高湿信頼性を有する、積層セラミック配線基板を提供することを1つの目的とする。
【0025】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、前述のように、ファインライン化された面内導体の断面形状を台形とし、且つ当該台形状の断面の高さ(a)、下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)、並びに基板の主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が特定の関係を満たすように構成することにより、配線のオープン(断線)が多発したり、高温高湿環境での信頼性が低下したりする等の問題を抑制することができることを見出すに至ったものである。
【0026】
即ち、本発明の第1の実施態様は、
セラミックを含んでなる複数の誘電体層からなる基材と、
2つの主面の一方の表面である第1主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第1表面電極と、
2つの主面の他方の表面である第2主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第2表面電極と、
前記基材中に埋設され、且つ導体を含んでなる内層配線と、
を備える積層焼結セラミック配線基板であって、
前記内層配線が、前記第1表面電極の少なくとも一部と前記第2表面電極の少なくとも一部とを電気的に接続し、
前記内層配線が、前記主面に垂直な方向において前記複数の誘電体層の少なくとも1つを貫通して延在する貫通導体、及び前記主面に平行な複数の面内において延在する面内導体を含んでなり、
前記面内導体の少なくとも一部が、延在方向に垂直な断面の形状が、上底及び下底が前記主面に平行な台形であり、当該台形の下底の長さ(c)が15μm以下であり、且つ前記主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が15μm以下である、微細面内配線として構成されており、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)及び前記間隔(b)が下式(1)の関係を満たし、
【0027】
【数5】

【0028】
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(2)の関係を満たす、
【0029】
【数6】

【0030】
積層焼結セラミック配線基板である。
【0031】
上記のように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板は、セラミックを含んでなる複数の誘電体層からなる基材を備える。前述のように、セラミックは、半導体素子を構成するシリコンの熱膨張率に近い熱膨張率を有する。従って、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、半導体素子が接合された状態において当該基板が前述のような温度変化に曝されても、半導体素子の寸法変化と当該基板の寸法変化との差が小さい。その結果、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、半導体素子と当該基板との間に作用する熱応力を抑制することができる。
【0032】
上記により、例えば、フリップチップ接合等によって半導体素子を当該基板にはんだ付けする際、BGAリフローによって当該基板を含む半導体パッケージを回路基板(例えば、マザーボード等)にはんだ付けする際等に、半導体素子及び当該基板が被る温度変化に伴って半導体素子と当該基板との間に作用する熱応力に起因して半導体素子と当該基板との間の接合部が破壊される等の問題が低減される。
【0033】
また、前述のように、セラミックは、従来の基板材料(例えば、樹脂等)と比較して、機械的強度が高い。従って、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前述のような回路素子パッケージの低背化等を目的として、当該基板の厚みを薄くした場合においても、十分な剛性を維持することができる。これにより、半導体素子及び当該基板が被る温度変化に伴って半導体素子と当該基板との間に作用する熱応力に起因して当該基板が反る等の問題が低減される。
【0034】
前述のように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、導体を含んでなる1つ以上の第1表面電極が、当該基板の2つの主面の一方の表面である第1主面に露出するように配設され、且つ、導体を含んでなる1つ以上の第2表面電極が、当該基板の2つの主面の他方の表面である第2主面に露出するように配設される。換言すれば、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板の2つの主面(即ち、第1主面及び第2主面)の各々には、それぞれの主面に接合される対象物(例えば、半導体素子やパッケージ基板等)と接合して電気的接続を確立するための表面電極(即ち、それぞれ第1表面電極及び第2表面電極)がそれぞれ1つ以上設けられる。
【0035】
具体的には、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板の第1主面には、第1主面側に接合される対象物(例えば、半導体素子等)が備える電気的接合のための端子又は電極(例えば、バンプ等)に対応する位置において、当該対象物と接合して電気的接続を確立するのに必要な大きさ及び形状を有する導体が露出するように、1つ以上の第1表面電極が設けられる。一方、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板の第2主面には、第2主面側に接合される対象物(例えば、パッケージ基板等)が備える電気的接合のための端子又は電極(例えば、ランド等)に対応する位置において、当該対象物と接合して電気的接続を確立するのに必要な(バンプ等を設けることができる)大きさ及び形状を有する導体が露出するように、1つ以上の第2表面電極が設けられる。
【0036】
上記のように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板の第1主面に複数の第1表面電極が設けられる場合は、第1主面の側に接合される対象物が備える電気的接合のための端子又は電極のピッチに応じたピッチを有する複数の第1表面電極が第1主面に設けられる。同様に、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板の第2主面に複数の第2表面電極が設けられる場合は、第2主面の側に接合される対象物が備える電気的接合のための端子又は電極のピッチに応じたピッチを有する複数の第2表面電極が第2主面に設けられる。
【0037】
尚、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板の第1主面及び第2主面において露出している第1表面電極及び第2表面電極と、それぞれの主面側に接合される対象物との電気的接続は、例えば、はんだ付けによって達成することができるが、これらを電気的に接続する方法は特定の手法に限定されるものではなく、当該技術分野において知られている何れの手法を使用して達成してもよい。かかる手法の例としては、はんだ付けの他にも、例えば、Cu-Cu3Sn-Cu等の金属間化合物接合や、Cu−Cu、W−W等の拡散接合等を挙げることができる。積層焼結セラミック配線基板は、耐熱性と剛性が高いので、従来の樹脂配線基板には適用できなかったような300℃以上の高温や或いは圧力の印加が必要な端子接合プロセスも適用することができ、端子接合方法の選択肢が広くなる。
【0038】
前述のように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、導体を含んでなる内層配線が前記基材中に埋設される。また、前記内層配線は、前記第1表面電極の少なくとも一部と前記第2表面電極の少なくとも一部とを電気的に接続する。更に、前記内層配線は、前記主面に垂直な方向において前記複数の誘電体層の少なくとも1つを貫通して延在する貫通導体(ビア)、及び前記主面に平行な複数の面内において延在する面内導体を含んでなる。
【0039】
尚、前述のように、前記内層配線は、前記第1表面電極の少なくとも一部と前記第2表面電極の少なくとも一部とを電気的に接続する。換言すれば、第1表面に設けられた第1表面電極の中には、第2表面に設けられた第2表面電極の何れにも電気的に接続されていないものがあってもよい。このように第2表面電極と電気的に接続されていない第1表面電極は、内層配線を介して他の第1表面電極と電気的に接続されていてもよい。あるいは、このように第2表面電極と電気的に接続されていない第1表面電極は、他の何れの表面電極にも電気的に接続されていない内層配線の導体にのみ電気的に接続されていてもよい(例えば、オープンスタブを形成させる場合)。また、同様のことが、第2表面に設けられた第2表面電極にも当てはまる。このように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板において、第1表面電極、第2表面電極、及び内層配線の間での電気的接続パターンは、当該基板が使用される回路素子パッケージの設計仕様等に従って、様々な構成とすることができる。
【0040】
ところで、前述のように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、ファインライン化された面内導体の延在方向に垂直な断面の形状を上底及び下底が前記主面に平行な台形とし、且つ当該台形状の断面の高さ(a)、下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)、並びに基板の主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が特定の関係を満たすように構成される。本発明に係る積層焼結セラミック配線基板が備える微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)、並びに基板の主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)のそれぞれが指す部分については、例えば、図1の(A)を参照されたい。
【0041】
図1は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板が備える微細面内配線を構成する面内導体の断面形状を、従来技術に係る面内導体の断面形状と比較しながら示す、模式図である。図1において、左右に延在する破線によって区画される複数の領域の各々は、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板が備える、セラミックを含んでなる複数の誘電体層の各々を表す。
【0042】
図1に示すように、本発明に係る積層焼結セラミック配線基板が備える微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)とは、前記微細面内配線を構成する面内導体の厚みに対応する概念である。従って、当該面内導体の台形状の断面の高さ(a)は、当該面内導体の基板の厚み方向(前記複数の誘電体層の積層方向)における寸法であると言うこともできる。
【0043】
また、基板の主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)とは、前記微細面内配線を構成する隣り合う2つの面内導体の間の隔たり(間隔)に対応する概念である。前記主面に平行な面内とは、基板の厚み方向に対して垂直な面内であり、前記複数の誘電体層の積層方向に対して垂直な面内である。即ち、上記隣り合う2つの面内導体は、基板の厚み方向において同じ位置(深さ)に埋設されている。従って、下底の間隔(b)は、前記微細面内配線を構成する隣り合う2つの面内導体の間に存在する基材(誘電体)の前記主面に平行な面内における寸法であると言うこともできる。
【0044】
更に、(面内導体の)延在方向に垂直な断面であって、上底及び下底が前記主面に平行な台形状の形状を有する断面の下底の長さ(c)は、前記微細面内配線を構成する面内導体の太さ(幅)に対応する概念である。面内導体の延在方向とは、前記微細面内配線を構成する面内導体の長手方向(延びる方向)であり、当該面内導体中を流れる電流の方向であると言うこともできる。また、前記主面に平行な面内とは、上記と同様に、基板の厚み方向に対して垂直な面内であり、前記複数の誘電体層の積層方向に対して垂直な面内である。従って、下底の長さ(c)は、前記微細面内配線を構成する面内導体の断面の前記主面に平行な面内における寸法であると言うこともできる。
【0045】
上記と同様に、(面内導体の)延在方向に垂直な断面であって、上底及び下底が前記主面に平行な台形状の形状を有する断面の上底の長さ(d)は、前記微細面内配線を構成する面内導体の太さ(幅)に対応する概念である。面内導体の延在方向とは、上記と同様に、前記内層配線の少なくとも一部を構成する面内導体の長手方向(延びる方向)であり、当該面内導体中を流れる電流の方向であると言うこともできる。また、前記主面に平行な面内とは、上記と同様に、基板の厚み方向に対して垂直な面内であり、前記複数の誘電体層の積層方向に対して垂直な面内である。従って、上底の長さ(d)は、下底の長さ(c)と同様に、前記微細面内配線を構成する面内導体の断面の前記主面に平行な面内における寸法であると言うこともできる。
【0046】
前述のように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板が備える面内導体の少なくとも一部がファインライン化(微細配線化)されており、当該部分における当該面内導体の幅及び当該面内導体と隣り合う面内導体との間隔が所定の値より小さくなるように構成されている。具体的には、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板が備える面内導体の少なくとも一部は、(面内導体の)延在方向に垂直な断面の形状が、上底及び下底が前記主面に平行な台形であり、当該台形の下底の長さ(c)が15μm以下であり、且つ前記主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が15μm以下である、微細面内配線として構成されている。
【0047】
冒頭で述べたように、様々な電子機器等において使用される回路素子パッケージ(例えば、ICパッケージ等の半導体パッケージ等)に対する市場からのニーズは、電子機器等の高性能化及び小型化の流れを受け、高速化、小型化、及び低背化(薄型化)の一途を辿っている。その結果、回路素子パッケージを構成する回路素子(例えば、ICチップ等の半導体素子、抵抗素子、容量素子、インダクタ素子等)、特に半導体素子においては、信号伝送の高速化、配線ピッチ(間隔)の微細化、及び素子の薄型化への要求が益々高まっている。従って、かかる半導体素子が接合される基板においても、配線ピッチ(間隔)の微細化が求められている。
【0048】
かかる観点から、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板が備える第1表面電極及び第2表面電極、並びに内層配線を構成する配線(導体)のピッチもまた、微細化されていることが望ましい。具体的には、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前述のように、前記面内導体の少なくとも一部が、(面内導体の)延在方向に垂直な断面の形状が、上底及び下底が前記主面に平行な台形であり、当該台形の下底の長さ(c)が15μm以下、より好ましくは10μm以下であり、且つ前記主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が15μm以下、より好ましくは10μm以下である、微細面内配線として構成されていることが望ましい。
【0049】
また、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)及び隣り合う面内導体の間隔(b)が上記式(1)によって規定される関係を満足することが望ましい。具体的には、前記微細面内配線を構成する面内導体の高さ(a)の間隔(b)に対する比(a/b)が、0.4以上、より好ましくは0.45以上であり、且つ0.6以下、より好ましくは0.55以下であることが望ましい。
【0050】
ところで、上記のように高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備える積層焼結セラミック配線基板を得ようとする場合、前述のように、内層配線のオープン不良率が高くなったり、高温高湿環境での信頼性が低下したりする等の問題点があった。
【0051】
ここで、オープン不良とは、設計上は良好な導通が確保されるべき配線経路において導通を確保することができないという問題(例えば、導通不良、断線等の問題)を指す。従って、オープン不良率とは、かかるオープン不良(例えば、導通不良、断線等)の発生率を指す。また、ショート不良とは、設計上は電気的絶縁が確保されるべき異なる配線経路の間において絶縁を確保することができない(導通状態となる)という問題(例えば、絶縁不良、短絡等の問題)を指す。従って、ショート不良率とは、かかるショート不良(例えば、絶縁不良、短絡等)の発生率を指す。
【0052】
更に、高温高湿環境での信頼性とは、所定の温度及び湿度における環境下に所定の期間に亘って暴露された後の、設計上は電気的絶縁が確保されるべき異なる配線経路の間における絶縁抵抗が所定の値以上に維持されることを示す。具体的には、例えば、85±2℃の温度及び80〜90%の湿度を有する環境に500時間に亘って暴露した後の上記端子間の絶縁抵抗が1GΩ(10Ω)以上あるか否かによって、高温高湿環境での信頼性を評価することができる。
【0053】
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、上記のように高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備える、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においても、前記微細面内配線を構成する面内導体の高さ(a)の間隔(b)に対する比(a/b)と、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)とが、所定の関係を満たすように、前記微細面内配線を構成する面内導体の断面の形状及び面内導体の間隔を調節することにより、上述のようなオープン不良、及び高温高湿環境での信頼性低下(絶縁抵抗の低下)を顕著に低減することができることを見出した。
【0054】
具体的には、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が上記式(2)によって規定される関係を満足することが望ましい。より具体的には、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が、−3/10×(a/b)+0.75以上であり、且つ−11/20×(a/b)+1.20以下であることが望ましい。
【0055】
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が、−3/10×(a/b)+0.75未満である場合は、オープン不良率が高くなるので望ましくない。これは、例えば、積層焼結セラミック配線基板を製造する方法として、所謂「ゲルキャスト法」(詳細については後述する)を採用した場合に、面内導体となる導体パターンが埋設された誘電体材料のシート(誘電体層)から保護基材を剥離する際に、導体パターンの断面の上底が過度に短いために導体材料が保護基材側に残ってしまい、当該部分の導体の厚みが薄くなったり、導体が欠落したりするために、オープン不良(導通不良)が生ずるものと考えられる。
【0056】
一方、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が、−11/20×(a/b)+1.20を超える場合は、前記微細面内配線を構成する面内導体の断面の形状が、台形から矩形(長方形や正方形)に近付く。この場合、オープン不良率が高くなったり、高温高湿信頼性が低くなったりするので望ましくない。これは、例えば、積層焼結セラミック配線基板を製造する方法として、所謂「ゲルキャスト法」(詳細については後述する)を採用した場合に、例えば転写法等によって保護基材上に導体パターン(面内導体)を配設し、次いで導体パターンが配設されなかった部分にセラミックを含んでなる誘電体材料のスラリーを注入して、導体パターンが埋設された誘電体材料のシート(誘電体層)を製造する際に、(特に、隣り合う導体パターンの間における)導体パターンの側面と保護基材の表面とによって形成される角の部分へのスラリーの充填性が悪く、当該部分に空隙が発生し易くなるので、高温高湿環境への暴露時等に当該空隙に水分が入り込み、高温高湿環境への暴露後の絶縁抵抗を低下(高温高湿信頼性を低下)させるものと考えられる。
【0057】
また、積層焼結セラミック配線基板を製造する方法として、所謂「ドクターブレード法」を採用した場合も、例えば転写法等によって保護基材やセラミック材料のグリーンシートの上に配設された導体パターン(面内導体)の上に、テープ状に製造された別のセラミック材料のグリーンシートを積層する際に、導体パターンの側面と保護基材やグリーンシートの表面とによって形成される角の部分においてグリーンシートの浮き(積層不良)が生じて、当該部分に空隙が発生し易くなるので、高温高湿環境への暴露時等に当該空隙に水分が入り込み、高温高湿環境への暴露後の絶縁抵抗を低下(高温高湿信頼性を低下)させるものと考えられる。
【0058】
尚、かかるグリーンシートの浮き(積層不良)を抑制することを目的として、グリーンシートを積層する際の積層圧力を高めることも知られているが、積層圧力を過度に高めると、例えば、マイクロクラックが誘電体層に生じて、高温高湿環境への暴露時に当該マイクロクラックを介して水分が入り込み、高温高湿環境への暴露後の絶縁抵抗が低下したり、導体パターンが破壊・断線してオープン不良(導通不良)が生じたりするものと考えられる。
【0059】
更に、積層焼結セラミック配線基板を製造する方法として、あるいは上記のようにセラミック材料のグリーンシートを積層する方法におけるグリーンシートの浮き(積層不良)によって生ずる空隙をセラミック材料で埋めるための方法として、上述のように配設された導体パターン(面内導体)の上に、セラミック材料のペーストを例えばスクリーン印刷法等によって塗布することもできる(以降、「接着ペースト塗布法」と称する場合がある)。しかしながら、かかる方法を採用した場合も、セラミック材料のペーストを塗布する際に、(特に、隣り合う導体パターンの間における)導体パターンの側面と保護基材の表面とによって形成される角の部分へのペーストの充填性が悪く、当該部分に空隙が発生し易くなるので、高温高湿環境への暴露時等に当該空隙に水分が入り込み、高温高湿環境への暴露後の絶縁抵抗を低下(高温高湿信頼性を低下)させるものと考えられる。
【0060】
しかしながら、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が、−3/10×(a/b)+0.75以上であり、且つ−11/20×(a/b)+1.20以下であるように構成される、これにより、上述のような導体パターンの剥がれや欠落、導体パターンの側面と保護基材やグリーンシートの表面とによって形成される角の部分における空隙が生じ難い。その結果、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、オープン不良や高温高湿信頼性の低下等の問題を顕著に低減することができる。加えて、セラミック材料と面内導体との間の空隙や接合不良が少なくなるので、焼結後の基板の機械的強度(剛性)も高まる。
【0061】
以上のように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、半導体素子を構成するシリコンの熱膨張率に近い熱膨張率を有するセラミックを含んでなる複数の誘電体層からなる基材を採用することにより、半導体素子が接合された状態において当該基板が前述のような温度変化に曝されても、半導体素子と当該基板との間に作用する熱応力を抑制することができる。また、セラミックは、従来の基板材料(例えば、樹脂等)と比べて、機械的強度が高いことから、前述のような回路素子パッケージの低背化等を目的として当該基板の厚みを薄くしても、十分な剛性を維持することができる。
【0062】
上記に加えて、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、上述のように、前記微細面内配線を構成する面内導体の高さ(a)の間隔(b)に対する比(a/b)と、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)とが、所定の関係を満たすように、前記微細面内配線を構成する面内導体の断面の形状及び面内導体の間隔を調節することにより、上述のようなオープン不良、及び高温高湿環境下での信頼性低下(絶縁抵抗の低下)を顕著に低減することができる。
【0063】
即ち、本実施態様によれば、内層配線における導通不良や絶縁不良の発生率が低く、且つ高温高湿信頼性が高い、配線基板を提供することができる。具体的には、本実施態様によれば、微細な配線層を有するにもかかわらず、オープン不良率及びショート不良率が共に低く、且つ高温高湿への長期暴露に伴う絶縁抵抗の低下が抑制された、積層セラミック配線基板を提供することができる。
【0064】
尚、本発明のより好ましい実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が、−1/2×(a/b)+0.93以上であり、且つ−1/2×(a/b)+1.10以下であることが望ましい。
【0065】
即ち、本発明の第2の実施態様は、
本発明の前記第1の実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板であって、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(3)の関係を満たす、
【0066】
【数7】

【0067】
積層焼結セラミック配線基板である。
【0068】
上記のように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が、−1/2×(a/b)+0.93以上であり、且つ−1/2×(a/b)+1.10以下であるように構成される、これにより、前述のような導体パターンの剥がれや欠落、導体パターンの側面と保護基材やグリーンシートの表面とによって形成される角の部分における空隙が更に生じ難くなる。その結果、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、オープン不良や高温高湿信頼性の低下等の問題をより一層低減することができる。
【0069】
ところで、前述の各種実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板を製造する方法は、当該方法によって製造される積層焼結セラミック配線基板が前述の要件を満たす限り、如何なる方法であってもよく、当該技術分野においてセラミック製の配線基板の製造に使用される種々の方法から適宜選択することができる。前述の各種実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板を製造する方法の具体例としては、例えば、所謂「ゲルキャスト法」や「ドクターブレード法」等を挙げることができる。
【0070】
上記ゲルキャスト法を採用する場合は、例えば、フィルム状または薄板状の保護基材の表面に、例えばスクリーン印刷法等の印刷法やフィルム転写法等の転写法によって、導体パターンを配設し、導体パターンが配設されなかった部分にはセラミックを含んでなる誘電体材料のスラリーを注入し、当該スラリーを固化させた後に保護基材を剥離して、導体パターンが埋設された誘電体材料のシート(誘電体層)を製造し、斯くして製造された誘電体層を必要な枚数だけ積層して、導体パターンを表面電極や内層配線として構成し、これを焼成することによって、前述の各種実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板を得ることができる。
【0071】
上記保護基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等の樹脂フィルムを用いることが望ましく、また樹脂フィルム以外にも、ガラス板や紙、金属などのフィルム状または板状の種々の材料を用いることができる。但し、保護基材としては、剥離操作の容易性の観点から、可撓性を備えたものを用いることが好ましい。
【0072】
また、例えば、上記誘電体材料のシートを保護基材から容易に剥離することができるようにすること等を目的として、上記保護基材の表面には、例えば、剥離剤等が塗布されていてもよい。かかる剥離剤には、例えば、当該技術分野において離型剤として知られている各種薬剤が含まれる。より具体的には、かかる剥離剤としては、公知のシリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤等を使用することができる。
【0073】
上記導体パターンは、主成分として、例えば、金、銀、銅等から選ばれる少なくとも1種類以上の金属と熱硬化性樹脂前駆体を含んでなる導体ペーストを、例えば、スクリーン印刷法等の印刷法やフィルム転写法等の転写法により上記保護基材の表面上に形成することによって配設されることが望ましい。かかる熱硬化性樹脂前駆体としては、フェノール樹脂、レゾール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等を使用することができる。これらの中では、フェノール樹脂、レゾール樹脂であることが特に好ましい。かかる導体ペーストを上記保護基材の表面上に配設した後、この導体ペーストに含まれるバインダーを硬化させることによって、導体パターンを得ることができる。
【0074】
上記誘電体材料のスラリーとしては、例えば、樹脂、セラミック粉末、及び溶剤を含んでなるスラリーを挙げることができる。ここで、樹脂は所謂「バインダー」として機能するものであり、例えば、フェノール樹脂、レゾール樹脂、若しくはポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、又はポリオール及びポリイソシアネートを含んでなるポリウレタン前駆体等を使用することができる。これらの中では、ポリオール及びポリイソシアネートを含んでなる熱硬化性樹脂前駆体が特に好ましい。
【0075】
セラミック粉末として使用されるセラミック材料としては、酸化物系セラミック又は非酸化物系セラミックの何れを使用してもよい。例えば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、炭化珪素をシリコンと共に焼結した複合材料(Si−SiC)、酸化バリウム(BaO)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ネオジム(Nd)等を使用することができる。また、これらの材料は、1種類単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、スラリーを調製可能な限りにおいて、セラミック材料の粒子径は特に限定されない。
【0076】
但し、前述の各種実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、上述のように高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備える。従って、セラミック材料の粒子径が過度に大きい場合、導体パターンの断線等の問題に繋がる虞がある。かかる観点から、セラミック材料の粒子径は、特定の値より小さくすることが望ましい。例えば、前述の各種実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、セラミック粉末として使用されるセラミック材料の平均粒径は、前記微細面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の下底の長さ(c)が15μm以下である場合には1.8μm未満、下底の長さ(c)が10μm以下である場合には1.5μm未満であることが望ましい
【0077】
また、上記溶剤としては、上記バインダーとしての樹脂(及び、使用する場合には分散剤)を溶解するものであれば特に限定されない。溶剤の具体例としては、例えば、多塩基酸エステル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(例えば、トリアセチン(グリセリルトリアセテート)等)等の、2以上のエステル結合を有する溶剤を挙げることができる。
【0078】
更に、上記誘電体材料のスラリーは、上述の樹脂、セラミック粉末、及び溶剤以外に、分散剤を含んでいてもよい。分散剤の具体例としては、例えば、ポリカルボン酸系共重合体、ポリカルボン酸塩等を挙げることができる。かかる分散剤を添加することにより、成形前のスラリーを低粘度とし、且つ高い流動性を有するものとすることができる。
【0079】
ところで、前述のように、本発明の各種実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板を製造する方法としては、例えば、ゲルキャスト法、ドクターブレード法、及び接着ペースト塗布法等を挙げることができる。これらのうちの何れの方法を採用する場合であっても、オープン不良や高温高湿信頼性の低下等の問題を低減するためには、前述のような(特に、隣り合う導体パターンの間における)導体パターンの側面と保護基材やグリーンシートの表面とによって形成される角の部分(導体パターンの付け根の部分)における空隙の発生を抑制することが重要である。
【0080】
上記角の部分における空隙の発生を抑制するには、隣り合う導体パターンの対向する側面と、これらの導体パターンが配設される保護基材やグリーンシートの表面と、によって形成される空間の開口部が底部よりも広い形状をしている方が望ましい。当該空間がかかる形状を呈するためには、これらの導体パターンの断面が、これらの導体パターンが配設される保護基材やグリーンシートの表面と接する方の辺を下底とする台形の形状を有することが望ましい。換言すれば、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の下底が、当該面内導体が埋設されている基材を構成する誘電体層と、前記主面に垂直な方向において当該誘電体層と隣接する誘電体層との界面に相当する面内に存在することが望ましい。
【0081】
従って、本発明の第3の実施態様は、
本発明の前記第1又は第2の実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板であって、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の下底が、当該面内導体が埋設されている基材を構成する誘電体層と、前記主面に垂直な方向において当該誘電体層と隣接する誘電体層との界面に相当する面内に存在する、
積層焼結セラミック配線基板である。
【0082】
上記のように、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の下底が、当該面内導体が埋設されている基材を構成する誘電体層と、前記主面に垂直な方向において当該誘電体層と隣接する誘電体層との界面に相当する面内に存在するので、隣り合う導体パターンの対向する側面と、これらの導体パターンが配設される保護基材やグリーンシートの表面と、によって形成される空間の開口部が底部よりも広い形状を呈する。これにより、当該空間へのセラミック材料の充填性が高くなり、導体パターンの側面と保護基材やグリーンシートの表面とによって形成される角の部分(導体パターンの付け根の部分)における空隙の発生が抑制され、オープン不良や高温高湿信頼性の低下等の問題が低減される。加えて、セラミック材料と面内導体との間の空隙や接合不良が少なくなるので、焼結後の基板の機械的強度(剛性)も高まる。
【0083】
ところで、上記実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、上述のように高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備える。従って、例えば当該基板を使用する半導体パッケージにおける抵抗損失の低減という観点からは、前記第1表面電極及び第2表面電極、並びに前記内層配線を構成する導体の電気抵抗を可能な限り小さくして、配線抵抗を低くすることが望ましい。従って、上述の導体パターンの主成分としては、低抵抗導体である金、銀、銅、及びこれらの金属を含む合金等を使用することが望ましい。
【0084】
即ち、本発明の第4の実施態様は、
本発明の前記第1乃至第3の実施態様の何れかに係る積層焼結セラミック配線基板であって、
前記導体が、金、銀、及び銅から選ばれる少なくとも1種の金属を含んでなる、
積層焼結セラミック配線基板である。
【0085】
本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、上記のように、前記第1表面電極及び第2表面電極、並びに前記内層配線を構成する導体が、金、銀、及び銅から選ばれる少なくとも1種の金属を含んでなる。これにより、本実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の下底の長さ(c)が15μm以下という、高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備えるにもかかわらず、配線抵抗を抑制して、当該基板を使用する半導体パッケージにおける抵抗損失を低減することができる。
【0086】
ところで、上記のように配線抵抗を低減することを目的として使用される金、銀、銅、及びこれらの金属を含む合金等の低抵抗導体は、他の金属と比較して、相対的に低い融点を有する。このような低い融点を有する金属を含んでなる導体パターンが埋設された誘電体材料のシート(誘電体層)を当該金属の融点以上の温度において焼成すると、当該金属が融解し、導体パターンの所望の形状を維持することが困難となる虞がある。従って、かかる低抵抗導体を前記第1表面電極及び第2表面電極、並びに前記内層配線を構成する導体において使用する場合、使用される低抵抗導体の融点未満の温度において焼成することができるセラミックを使用することが望ましい。
【0087】
尚、上記のように、使用される低抵抗導体の融点未満の温度において焼成することができるセラミックとしては、所謂「低温焼成基板材料(LTCC:Low Temperature Co−fired Ceramics)を使用することが望ましい。LTCCを使用することにより、低抵抗導体である金、銀、銅、及びこれらの金属を含む合金等を前記導体として使用することができる。これにより、前記微細面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の下底の長さ(c)が15μm以下という、高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備える積層焼結セラミック配線基板においても、配線抵抗を抑制して、当該基板を使用する半導体パッケージにおける抵抗損失を低減することができるのみならず、このような低い融点を有する金属を含んでなる導体パターンが埋設された誘電体材料のシート(誘電体層)を焼成する際に、当該金属が融解して、導体パターンの所望の形状を維持することが困難となる問題を回避することができる。
【0088】
具体的には、本発明の第5の実施態様は、
本発明の前記第4の実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板であって、
前記導体が銅を含んでなり、
前記セラミックが、1080℃未満の温度において焼結可能なセラミックである、
配線基板である。
【0089】
また、本発明の第6の実施態様は、
本発明の前記第4の実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板であって、
前記導体が銀を含んでなり、
前記セラミックが、960℃未満の温度において焼結可能なセラミックである、
積層焼結セラミック配線基板である。
【0090】
上述のように、上記2つの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板の基材を構成するセラミックとしては、例えば、LTCCを挙げることができる。かかるLTCCとしては、例えば、ガラス粉末と、例えばアルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、シリカ、ムライト等の無機粉末とを混合したものを原料とするものや、例えば、BaO、Al、SiOを主成分とする無機組成物等を挙げることができる。
【0091】
ガラス粉末と無機粉末の混合物を原料とするものの具体例としては、例えば、B−SiOを主成分とする硼珪酸系ガラスや、当該硼珪酸系ガラスに、例えばCaOやMgO等のアルカリ土類金属元素酸化物、アルカリ金属酸化物を主成分とし、ZnO、ZrO等を副成分として含むものや、SiO及びアルカリ金属酸化物を主成分とし、上記と同様に、ZnO、ZrO等を副成分として含むガラス等を使用することができる。上記ガラスとしては、例えば、ディオプサイド組成系、コージェライト組成系、スポジュメン組成系等の結晶化ガラスを使用してもよい。また、結晶化ガラスについては、結晶化させることにより高い強度を得ることができるので、ガラス粉末を単体で使用する場合もある。
【0092】
上述のように、上記2つの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記第1表面電極及び第2表面電極、並びに前記内層配線を構成する導体として低抵抗導体を選び、且つ当該低抵抗導体の融点未満の温度において焼成することができるセラミックを使用する。これにより、これらの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、前記微細面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の下底の長さ(c)が15μm以下という、高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備えるにもかかわらず、配線抵抗を抑制して、当該基板を使用する半導体パッケージにおける抵抗損失を低減することができる。
【0093】
更に、これらの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板においては、当該基板の基材を構成するセラミックを低抵抗導体の融点未満の温度において焼成することができるので、当該セラミックを含んでなる誘電体層からなる基材を焼成する際に当該金属が融解して導体パターンの所望の形状を維持することが困難となる問題を回避することができる。
【0094】
ところで、前述のように、本発明のもう1つの目的は、温度変化に伴って半導体素子と基板との間に作用する熱応力を低減することができ、且つ(多層配線層を含む)基板全体として高い機械的強度(剛性)を有する配線基板を使用することにより、高速化、小型化、及び低背化(薄型化)された信頼性の高い半導体パッケージを提供することである。
【0095】
上記もう1つの目的は、前述のような本発明の幾つかの実施態様及びその他の実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板を介して、半導体素子とパッケージ基板とが電気的に接続されてなる半導体パッケージによって達成される。そこで、前述のような本発明の幾つかの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板を中間基板として使用する半導体パッケージとしての幾つかの実施態様につき、以下に列挙する。但し、前述のような本発明の幾つかの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板についての説明は、これまでの説明において既に述べたので、半導体パッケージとしての実施態様についての以下の説明においては、前述のような本発明の幾つかの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板についての説明を割愛する場合がある。
【0096】
即ち、本発明の第7の実施態様は、
半導体素子とパッケージ基板とを含んでなる半導体パッケージであって、
前記半導体素子と前記パッケージ基板とが、前記半導体素子と前記パッケージ基板との間に介装された中間基板を介して電気的に接続されており、
前記中間基板が、
セラミックを含んでなる複数の誘電体層からなる基材と、
2つの主面の一方の表面である第1主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第1表面電極と、
2つの主面の他方の表面である第2主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第2表面電極と、
前記基材中に埋設され、且つ導体を含んでなる内層配線と、
を備える積層焼結セラミック配線基板であって、
前記内層配線が、前記第1表面電極の少なくとも一部と前記第2表面電極の少なくとも一部とを電気的に接続し、
前記内層配線が、前記主面に垂直な方向において前記複数の誘電体層の少なくとも1つを貫通して延在する貫通導体、及び前記主面に平行な複数の面内において延在する面内導体を含んでなり、
前記面内導体の少なくとも一部が、延在方向に垂直な断面の形状が、上底及び下底が前記主面に平行な台形であり、当該台形の下底の長さ(c)が15μm以下であり、且つ前記主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が15μm以下である、微細面内配線として構成されており、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)及び前記間隔(b)が下式(1)の関係を満たし、
【0097】
【数8】

【0098】
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(2)の関係を満たす、
【0099】
【数9】

【0100】
積層焼結セラミック配線基板である、
半導体パッケージである。
【0101】
また、より好ましい実施態様として、本発明の第8の実施態様は、
本発明の前記第7の実施態様に係る半導体パッケージであって、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(3)の関係を満たす、
【0102】
【数10】

【0103】
半導体パッケージである。
【0104】
更に、本発明の第9の実施態様は、
本発明の前記第7又は第8の実施態様の何れかに係る半導体パッケージであって、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の下底が、当該面内導体が埋設されている基材を構成する誘電体層と、前記主面に垂直な方向において当該誘電体層と隣接する誘電体層との界面に相当する面内に存在する、
半導体パッケージである。
【0105】
本実施態様に係る半導体パッケージに含まれる半導体素子は、特に限定されるものではないが、具体例としては、例えば、集積回路(IC)及び大規模集積回路(LSI)等の半導体チップを挙げることができる。尚、本明細書においては、集積回路(IC)及び大規模集積回路(LSI)等の半導体チップを「半導体ICチップ」と総称する。
【0106】
かかる半導体ICチップは、冒頭で述べたように、電子機器等の高性能化及び小型化の流れを受け、信号伝送の高速化、配線ピッチ(間隔)の微細化、及び素子の薄型化への要求が益々高まっている。従って、かかる半導体ICチップを含む半導体パッケージにおける中間基板として、本発明に係る積層焼結セラミック配線基板を使用することが非常に望ましい。
【0107】
従って、本発明の第10の実施態様は、
本発明の前記第7乃至第9の実施態様の何れかに係る半導体パッケージであって、
前記半導体素子が半導体ICチップである、
半導体パッケージである。
【0108】
また、パッケージ基板の基材としては、ガラスエポキシ等の樹脂が使用されるのが一般的である。
【0109】
従って、本発明の第11の実施態様は、
本発明の前記第7乃至第10の実施態様の何れかに係る半導体パッケージであって、
前記パッケージ基板の基材が樹脂を含んでなる、
半導体パッケージである。
【0110】
更に、上記実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板を中間基板として使用する半導体パッケージにおいては、当該中間基板が、上述のように高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備える。従って、例えば当該中間基板を使用する半導体パッケージにおける抵抗損失の低減という観点からは、前記第1表面電極及び第2表面電極、並びに前記内層配線を構成する導体の電気抵抗を可能な限り小さくして、配線抵抗を低くすることが望ましい。従って、上述の導体パターンの主成分としては、低抵抗導体である金、銀、銅、及びこれらの金属を含む合金等を使用することが望ましい。
【0111】
従って、本発明の第12の実施態様は、
本発明の前記第7乃至第11の実施態様の何れかに係る半導体パッケージであって、
前記導体が、金、銀、及び銅から選ばれる少なくとも1種の金属を含んでなる、
半導体パッケージである。
【0112】
ところで、上記のように配線抵抗を低減することを目的として使用される金、銀、銅、及びこれらの金属を含む合金等の低抵抗導体は、他の金属と比較して、相対的に低い融点を有する。このような低い融点を有する金属を含んでなる導体パターンが埋設された誘電体材料のシート(誘電体層)を当該金属の融点以上の温度において焼成すると、当該金属が融解し、導体パターンの所望の形状を維持することが困難となる虞がある。従って、かかる低抵抗導体を前記第1表面電極及び第2表面電極、並びに前記内層配線を構成する導体において使用する場合、使用される低抵抗導体の融点未満の温度において焼成することができるセラミックを使用することが望ましい。
【0113】
尚、上記のように、使用される低抵抗導体の融点未満の温度において焼成することができるセラミックとしては、LTCCを使用することが望ましい。LTCCを使用することにより、低抵抗導体である金、銀、銅、及びこれらの金属を含む合金等を前記導体として使用することができる。これにより、前記微細面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の下底の長さ(c)が15μm以下という、高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備える積層焼結セラミック配線基板においても、配線抵抗を抑制して、当該基板を使用する半導体パッケージにおける抵抗損失を低減することができるのみならず、このような低い融点を有する金属を含んでなる導体パターンが埋設された誘電体材料のシート(誘電体層)を焼成する際に、当該金属が融解して、導体パターンの所望の形状を維持することが困難となる問題を回避することができる。
【0114】
具体的には、本発明の第13の実施態様は、
本発明の前記第12の実施態様に係る半導体パッケージであって、
前記導体が銅を含んでなり、
前記セラミックが、1080℃未満の温度において焼結可能なセラミックである、
半導体パッケージである。
【0115】
また、本発明の第14の実施態様は、
本発明の前記第12の実施態様に係る半導体パッケージであって、
前記導体が銀を含んでなり、
前記セラミックが、960℃未満の温度において焼結可能なセラミックである、
半導体パッケージである。
【0116】
上述のように、上記2つの実施態様に係る半導体パッケージにおいては、前記第1表面電極及び第2表面電極、並びに前記内層配線を構成する導体として低抵抗導体を選び、且つ当該低抵抗導体の融点未満の温度において焼成することができるセラミックを使用する。これにより、これらの実施態様に係る半導体パッケージにおいては、中間基板として使用される積層焼結セラミック配線基板が、前記微細面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の下底の長さ(c)が15μm以下という、高度に微細化された内層配線(微細面内配線)を備えるにもかかわらず、配線抵抗を抑制して、当該基板を使用する半導体パッケージにおける抵抗損失を低減することができる。
【0117】
更に、これらの実施態様に係る半導体パッケージにおいては、積層焼結セラミック配線基板の基材を構成するセラミックを低抵抗導体の融点未満の温度において焼成することができるので、当該セラミックを含んでなる誘電体層からなる基材を焼成する際に当該金属が融解して導体パターンの所望の形状を維持することが困難となる問題を回避することができる。
【0118】
以下、本発明の幾つかの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板の構成や特性等につき、添付図面等を参照しつつ説明する。但し、以下に述べる説明はあくまでも例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されるものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0119】
(1)評価用サンプル基板の作成
前述のように、図2は、本発明の幾つかの実施態様に係る積層焼結セラミック配線基板における内層配線のオープン不良及びショート不良の発生率と微細面内配線の構成との関係を調べるための評価用サンプル基板の構成を模式的に表す模式図である。本実施例に係る評価用サンプル基板は、前述のゲルキャスト法によって作成した。
【0120】
図2に示すように、上記評価用サンプル基板においては、一方の主面に設けられた表面パッド(表面電極)と、基板内部に設けられた4層の配線層(内層配線)を有する。即ち、個々の評価用サンプル基板は、図2に示す表面パッド、第1配線層、第2配線層、第3配線層、及び第4配線層が上から順に積層された構成を有する。
【0121】
尚、図2においては8列×5行のビア(貫通導体)と、それらのビアのうち幾つかを相互に接続する配線(面内導体)とが描かれているが、実際には同様のパターンを10行繰り返して配置した。即ち、実際の評価用サンプル基板においては、80個のビアを配置した。従って、実際の評価用サンプル基板においては、端子P1とP2とが40個のビアを含む内層配線によって結線されており、同様に、端子N1とN2とが40個のビアを含む内層配線によって結線されている。
【0122】
図2における第1配線層の平面図に隣接して示したC−C断面図は、図2における表面パッドの平面図に示した破線C−Cを含む当該評価用サンプル基板の主面に垂直な平面による断面図である。C−C断面図に示すように、評価用サンプル基板の中央部(図2における第1配線層の平面図の破線で囲まれている部分)の内層配線(第1配線層及び第2配線層)においては、それぞれの配線層の面内において面内導体が互いに近接して配置されている。
【0123】
上記のように、評価用サンプル基板の中央部においては、第1配線層及び第2配線層のそれぞれの面内において隣り合う面内導体が配置されている。従って、評価用サンプル基板の中央部は、前述の微細面内配線に対応する面内導体を含む領域であると言うことができる。即ち、当該領域に含まれる面内導体の延在方向に垂直な断面の形状は、上底及び下底が当該評価用サンプル基板の主面に平行な台形である。また、図1に示すように、当該台形の高さ、下底の長さ、上底の長さ、及び同じ配線層内で隣り合う面内導体の断面の下底の間隔を、それぞれa、c、d、及びbによって表す。
【0124】
また、図2における第3配線層の平面図に隣接して示したB−B断面図は、図2における表面パッドの平面図に示した破線B−Bを含む当該評価用サンプル基板の主面に垂直な平面による断面図である。破線B−Bは、図2において向かって右端に位置するビアの列から4つめのビアの列に沿った直線である。図2に示すように、評価用サンプル基板のB−B断面図においては、第1配線層、第2配線層、及び第3配線層を貫通する貫通導体としてのビアが5本配置されているが、上述のように、実際の評価用サンプル基板においては、当該ビアは10本配置されている。
【0125】
更に、図2における第4配線層の平面図に隣接して示したA−A断面図は、図2における表面パッドの平面図に示した破線A−Aを含む当該評価用サンプル基板の主面に垂直な平面による断面図である。破線A−Aは、図2において向かって上端に位置するビアの行から2つめのビアの行に沿った直線である。図2に示すように、評価用サンプル基板のA−A断面図においては、第1配線層乃至第3配線層を貫通する貫通導体としてのビアが4本、第1配線層乃至第4配線層を貫通する貫通導体としてのビアが4本、それぞれ配置されている。
【0126】
上記設計通りの配線が良好に形成されている場合は、端子P1と端子P2との間、及び端子N1と端子N2との間は、それぞれ導通が確保され、一方、端子P1と端子N1との間、及び端子P2と端子N2との間は、それぞれ絶縁状態になる筈である。そこで、本実施例においては、以下の表1に示すように、評価用サンプル基板の基材として種々のセラミックを採用し、また、それぞれの基材において、配線に含まれる導体として、銀(Ag)及び銅(Cu)を採用した。また、これら種々の基材と導体との組み合わせにおいて、評価用サンプル基板の中央部に配置される面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の高さ(a)、下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)、並びに基板の主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)を種々に変更して、上述のオープン不良率及びショート不良率の評価を行った。
【0127】
【表1】

【0128】
(2)評価用サンプル基板のオープン不良率及びショート不良率
評価用サンプル基板のオープン不良率の測定においては、個々の評価用サンプル基板において、端子P1と端子P2との間、及び端子N1と端子N2との間の導通状態を検査し、いずれかが導通しないものはオープン不良とした。また、評価用サンプル基板のショート不良率の測定においては、個々の評価用サンプル基板において、端子P1と端子N1との間、端子P2と端子N2との間の絶縁状態を検査し、いずれかが絶縁不良のものはショート不良とした。上記導通状態及び絶縁状態の検査は、例えば、検査対象となる端子間に所定の電圧を印加し、当該端子間における電流の検出の有無を調べることにより行うことができる。
【0129】
尚、オープン不良率及びショート不良率の評価に当たっては、表1に示す基材及び導体の材質の組み合わせ(実験例1乃至3)のそれぞれについて、面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の高さ(a)、下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)、並びに隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)の異なる組み合わせ毎に、100個の評価用サンプル基板を作成した。これらの評価用サンプル基板の導通状態及び絶縁状態を検査し、オープン不良及びショート不良が発生した評価用サンプル基板の評価用サンプル基板の全数(100個)に対する比率をそれぞれオープン不良率及びショート不良率として求めた。オープン不良率及びショート不良率の評価基準としては、それぞれの不良率が1%以下である場合は「良(○)」、1%を超え且つ5%以下である場合は「可(△)」、そして5%を超える場合は「不可(×)」とした。
【0130】
(3)評価用サンプル基板の高温高湿信頼性
評価用サンプル基板の高温高湿信頼性の評価においては、85±2℃の温度及び80〜90%の湿度を有する環境に500時間に亘って個々の評価用サンプル基板を暴露した後の端子P1と端子N1との間、端子P2と端子N2との間の絶縁状態を検査し、これらの端子間の絶縁抵抗が1GΩ(10Ω)以上あるか否かを調べた。上記絶縁抵抗の測定は、例えば、検査対象となる端子間に所定の電圧を印加し、当該端子間における電流の検出の有無を調べることにより行うことができる。
【0131】
尚、高温高湿信頼性の評価に当たっては、表1に示す基材及び導体の材質の組み合わせ(実験例1乃至3)のそれぞれについて、面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の高さ(a)、下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)、並びに隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)の異なる組み合わせ毎に、5個の評価用サンプル基板を作成した。これらの評価用サンプル基板を上記条件における環境下に暴露した後の上記端子間の絶縁抵抗を測定し、1GΩ未満の絶縁抵抗を呈する評価用サンプル基板が5個のうちゼロ(0)個である場合は「良(○)」、5個のうち1個又は2個である場合は「可(△)」、そして5個のうち3個以上である場合は「不可(×)」とした。
【0132】
(4)各種評価項目の評価結果
以上のようにして得られた実験例1乃至3に係る評価用サンプル基板のそれぞれについてのオープン不良率及びショート不良率、並びに高温高湿信頼性についての評価結果を、以下の表2乃至4に列挙する。
【0133】
【表2】

【0134】
【表3】

【0135】
【表4】

【0136】
上記表2乃至4に示すデータからも明らかであるように、本実験例に係る各種評価用サンプル基板の中央部(前述の微細面内配線に対応する面内導体を含む領域に相当)においては、第1配線層及び第2配線層のそれぞれの面内で延在する面内導体の幅(当該面内導体の延在方向に垂直な台形状の断面の下底の長さ)(c)及び第1配線層及び第2配線層のそれぞれの面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)がそれぞれ15μm以下、より好ましくは10μm以下という、高度に微細化された内層配線(前述の微細面内配線に相当)が配設されている。
【0137】
上記表2乃至4に示す評価結果からも明らかであるように、上記のように高度に微細化された内層配線が配設された各種評価用サンプル基板においても、かかる微細な面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)、並びに基板の主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が特定の関係を満たすように構成することにより、オープン不良率及び高温高湿信頼性の低下を顕著に低減することができる。
【0138】
ここで、上記評価結果につき、図3に示すグラフを参照しながら改めて説明する。図3は、前述のように、微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面における、高さ(a)の間隔(b)に対する比(a/b)(横軸)と、上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)(縦軸)との組み合わせと、配線基板としての各種不良の発生状況との関係を示すグラフである。尚、図3に示すグラフにおいて、配線基板としての各種不良の発生状況は、グラフ中のプロットの記号によって表されている。具体的には、各種不良の発生が極めて少ない極めて良好な評価結果が得られた評価用サンプル基板に対応するプロットは丸印(○)、各種不良の発生が許容可能な程度である良好な評価結果が得られた評価用サンプル基板に対応するプロットは三角印(△)、そして各種不良の発生が許容可能な程度を超えており、不良な評価結果が得られた評価用サンプル基板に対応するプロットはバツ印(×)で表されている。
【0139】
図3に示すグラフからも明らかであるように、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が、−3/10×(a/b)+0.75以上、より好ましくは−1/2×(a/b)+0.93以上であり、且つ−11/20×(a/b)+1.20以下、より好ましくは−1/2×(a/b)+1.10以下である場合に、オープン不良率及び高温高湿信頼性の低下を顕著に低減することができた。
【0140】
一方、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が−3/10×(a/b)+0.75未満である場合(図3に示すグラフにおける領域「L」に対応)はオープン不良が多発した。これは、前述のように、例えば、評価用サンプル基板の製造時に導体パターンの剥がれや欠落が発生し、オープン不良(導通不良)に繋がったものと考えられる。
【0141】
逆に、前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の上底の長さ(d)の下底の長さ(c)に対する比(d/c)が−11/20×(a/b)+1.20を超える場合(図3に示すグラフにおける領域「U」に対応)はオープン不良や高温高湿信頼性の低下が多発した。これは、前述のように、例えば、評価用サンプル基板の製造時に(特に、隣り合う導体パターンの間における)導体パターンの側面と保護基材やグリーンシートの表面とによって形成される角の部分へのペーストの充填性が悪く、当該部分に空隙が発生し易くなるので、微細面内配線が断線したり、高温高湿環境への暴露時等に当該空隙に水分が入り込み、高温高湿環境への暴露後の絶縁抵抗を低下(高温高湿信頼性を低下)させたりしたものと考えられる。
【0142】
以上より、上記実験例において説明した各種実施態様を含む本発明に係る積層焼結セラミック配線基板においては、ファインライン化された面内導体を含むにもかかわらず、上記のようにファインライン化された面内導体の断面形状を台形とし、且つ当該台形状の断面の高さ(a)、下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)、並びに基板の主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が特定の関係を満たすように構成することにより、配線のオープン(断線)が多発したり、高温高湿環境での信頼性が低下したりする等の問題を抑制することができる。即ち、本発明によれば、微細な配線層を有するにもかかわらず、低いオープン不良率及びショート不良率を有し、且つ高い高温高湿信頼性を有する、積層セラミック配線基板を提供することができる。また、かかる配線基板を使用することにより、高速化、小型化、及び低背化(薄型化)された信頼性の高い半導体パッケージを提供することができる。
【0143】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成有する幾つかの実施態様について説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができることは言うまでも無い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックを含んでなる複数の誘電体層からなる基材と、
2つの主面の一方の表面である第1主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第1表面電極と、
2つの主面の他方の表面である第2主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第2表面電極と、
前記基材中に埋設され、且つ導体を含んでなる内層配線と、
を備える積層焼結セラミック配線基板であって、
前記内層配線が、前記第1表面電極の少なくとも一部と前記第2表面電極の少なくとも一部とを電気的に接続し、
前記内層配線が、前記主面に垂直な方向において前記複数の誘電体層の少なくとも1つを貫通して延在する貫通導体、及び前記主面に平行な複数の面内において延在する面内導体を含んでなり、
前記面内導体の少なくとも一部が、延在方向に垂直な断面の形状が、上底及び下底が前記主面に平行な台形であり、当該台形の下底の長さ(c)が15μm以下であり、且つ前記主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が15μm以下である、微細面内配線として構成されており、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)及び前記間隔(b)が下式(1)の関係を満たし、
【数1】

前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(2)の関係を満たす、
【数2】

積層焼結セラミック配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の積層焼結セラミック配線基板であって、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(3)の関係を満たす、
【数3】

積層焼結セラミック配線基板。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか1項に記載の積層焼結セラミック配線基板であって、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の下底が、当該面内導体が埋設されている基材を構成する誘電体層と、前記主面に垂直な方向において当該誘電体層と隣接する誘電体層との界面に相当する面内に存在する、
積層焼結セラミック配線基板。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層焼結セラミック配線基板であって、
前記導体が、金、銀、及び銅から選ばれる少なくとも1種の金属を含んでなる、
積層焼結セラミック配線基板。
【請求項5】
請求項4に記載の積層焼結セラミック配線基板であって、
前記導体が銅を含んでなり、
前記セラミックが、1080℃未満の温度において焼結可能なセラミックである、
配線基板。
【請求項6】
請求項4に記載の積層焼結セラミック配線基板であって、
前記導体が銀を含んでなり、
前記セラミックが、960℃未満の温度において焼結可能なセラミックである、
積層焼結セラミック配線基板。
【請求項7】
半導体素子とパッケージ基板とを含んでなる半導体パッケージであって、
前記半導体素子と前記パッケージ基板とが、前記半導体素子と前記パッケージ基板との間に介装された中間基板を介して電気的に接続されており、
前記中間基板が、
セラミックを含んでなる複数の誘電体層からなる基材と、
2つの主面の一方の表面である第1主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第1表面電極と、
2つの主面の他方の表面である第2主面に露出するように配設され、且つ導体を含んでなる、1つ以上の第2表面電極と、
前記基材中に埋設され、且つ導体を含んでなる内層配線と、
を備える積層焼結セラミック配線基板であって、
前記内層配線が、前記第1表面電極の少なくとも一部と前記第2表面電極の少なくとも一部とを電気的に接続し、
前記内層配線が、前記主面に垂直な方向において前記複数の誘電体層の少なくとも1つを貫通して延在する貫通導体、及び前記主面に平行な複数の面内において延在する面内導体を含んでなり、
前記面内導体の少なくとも一部が、延在方向に垂直な断面の形状が、上底及び下底が前記主面に平行な台形であり、当該台形の下底の長さ(c)が15μm以下であり、且つ前記主面に平行な面内において隣り合う面内導体の台形状の断面の下底の間隔(b)が15μm以下である、微細面内配線として構成されており、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)及び前記間隔(b)が下式(1)の関係を満たし、
【数4】

前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(2)の関係を満たす、
【数5】

積層焼結セラミック配線基板である、
半導体パッケージ。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体パッケージであって、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の高さ(a)、前記間隔(b)、前記下底の長さ(c)及び上底の長さ(d)が下式(3)の関係を満たす、
【数6】

半導体パッケージ。
【請求項9】
請求項7又は8の何れか1項に記載の半導体パッケージであって、
前記微細面内配線を構成する面内導体の台形状の断面の下底が、当該面内導体が埋設されている基材を構成する誘電体層と、前記主面に垂直な方向において当該誘電体層と隣接する誘電体層との界面に相当する面内に存在する、
半導体パッケージ。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れか1項に記載の半導体パッケージであって、
前記半導体素子が半導体ICチップである、
半導体パッケージ。
【請求項11】
請求項7乃至10の何れか1項に記載の半導体パッケージであって、
前記パッケージ基板の基材が樹脂を含んでなる、
半導体パッケージ。
【請求項12】
請求項7乃至11の何れか1項に記載の半導体パッケージであって、
前記導体が、金、銀、及び銅から選ばれる少なくとも1種の金属を含んでなる、
半導体パッケージ。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体パッケージであって、
前記導体が銅を含んでなり、
前記セラミックが、1080℃未満の温度において焼結可能なセラミックである、
半導体パッケージ。
【請求項14】
請求項12に記載の半導体パッケージであって、
前記導体が銀を含んでなり、
前記セラミックが、960℃未満の温度において焼結可能なセラミックである、
半導体パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−48211(P2013−48211A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121088(P2012−121088)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】