説明

組電池の電池パック

【課題】 部品点数を極力増やさずシンプルな構成で、且つ、簡易な手順で、組電池の電
池パック内に格納される単電池の振動抑制効果を高めた組電池の電池パック、及びその組
電池の固定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 組電池の電池パックであって、ラミネートフィルムで密閉封止してなる複
数の単電池10と、積層された単電池10を格納するケース2と、単電池10を並列もし
くは直列に接続してケース2外部と接続する組電池1の正極端子4a及び負極端子4bと
、ケース2に格納された複数の単電池10の積層最上表面から、単電池10の積層方向と
対向する方向にケース2内に押圧する蓋部材5と、所定の押圧力の位置で、蓋部材5をケ
ース2に固定する固定手段とを備えたことを特徴とする組電池の電池パック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートフィルムで外装された単電池を複数積層してなる組電池の電池パ
ックに係り、特に、組電池が受ける振動や衝撃などの外力に対して機械的に固定された構
造の組電池の電池パック、及びその組電池の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池パックは、1つの単電池からなり、小容量で、振動や衝撃の少ない用途に限
定して用いられることが多かった。近年、携帯機器、電気自動車などを対象として、複数
の単電池からなる軽量小型、且つ、大容量のリチウム電池などの組電池が開発されている

【0003】
これらの用途に使用されるリチウム電池等の単電池(正極、負極の一対の電極端子を備
え、組電池の最小出力単位を構成する電池を、ここでは単電池と呼ぶことにする)の構造
は、平板状の形状の単電池の電極端子部を、封止性を維持するラミネートフィルムムとの
間にポリエチレンなどのシール材で挟んで、外周縁部と合わせて熱融着させ、電解質が漏
れないように封止している。
【0004】
そして、携帯機器や電気自動車等に使用される組電池の場合には、大容量のものが要求
されることから、このような単電池を多数積層して使用するため、組電池の質量も大きく
なる。
【0005】
また、この組電池の使用環境は、従来よりも振動振幅が大きく、且つ、振動周波数帯域
も広くなるので、単電池の電極端子部、単電池の電極端子間の溶着接続部、及び単電池の
電極端子と、組電池としたときの電池端子との溶着接続部の疲労破壊や、単電池の熱融着
部の破損が起こりやすくなることが予測される。
【0006】
そのため、このような平板状の単電池を複数積層して、所定の出力が得られるように構
成された組電池の電池パックにおいては、封止手段の表面を押圧する押え部材と、押え部
材を支持して固定するバネなどの弾性体とからなる固定手段とによって、積層された組電
池の個々の単電池を固定し、組電池の外部から印加される振動に対して、電極端子の溶着
接続部の疲労破損、及び単電池の熱融着部の剥離による電解液の漏れを抑制する技術が開
示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−55346号公報(図8、第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2004−55346号公報に開示された固定手段は、単電池と押え部材との接触
面の重心位置をバネなどの弾性体で支持して押圧する振動抑制方法で、単電池の固有振動
を抑制しようとする固定方法である。
【0009】
したがって、積層された単電池を弾性体で支持している以上、振動による変位は常に生
じているので、各単電池の位置ずれ、電極端子の溶着接続部の疲労破損、及び単電池の熱
融着部の破損は、依然として発生する恐れがある。
【0010】
また、このような弾性体による重心位置の支持方法では、固定手段の部品点数が増える
ことで構造が複雑になる問題、また、弾性体のバネ変位の為のスペースを確保する必要が
あることなどから、デッドスペースが増え組電池の電池パックが大型化するなどの問題が
ある。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたもので、組電池の電池パ
ックにおいて、部品点数を極力増やさずシンプルな構成で、且つ、簡易な手順で、組電池
の電池パック内に格納される単電池の位置ズレ防止と振動抑制効果を高めた組電池の電池
パック、及びその組電池の固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本組電池の電池パックは、ラミネートフィルムで密閉封止
してなる複数の平板状の単電池からなる組電池と、
各前記単電池を置載し、前記ケースに内接する複数のトレイと、
前記トレイに置載された状態で、前記単電池をその厚さ方向に積層して収納し、少なくと
もその一端に開口部を有するケースと、
前記トレイに置載され、積層された前記単電池を、開口部の一端から積層方向に押圧する
蓋部材と、
前記ケースまたは前記蓋部材のいずれかに変形部位を備え、当該変形部位を変形させて、
前記蓋部材による前記積層された単電池を押圧する力が所定の押圧力になる位置で、前記
蓋部材を前記ケースに固定する固定手段とを備え、
前記トレイは、少なくとも前記単電池の置載位置を案内し、及び前記ケースの対向する内
側壁面に接触する接触部位を有し、
前記トレイの接触部位は、前記ケースの内側壁面と線接触もしくは面接触する複数の薄板
ばねで成形され、前記ケース内側壁面に圧接する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、積層された複数の単電池からなる組電池が剛体
と見なせる様に、ケースと蓋部材とで組電池挟み、その両端面を所定の圧力で押圧し、即
ち、ラミネートフィルムに発生する張力が、ラミネートフィルムの強度及びラミネートフ
ィルムの接着強度を越えない、且つ、外部からの振動で各単電池がずれない摩擦力を得ら
れる押圧力の範囲に設定し、この押圧範囲で蓋部材とケースとの位置を固定して、積層さ
れた各単電池を固定するようにしたので、部品点数を極力増やさずシンプルな構成で、且
つ、簡易な手順で、組電池の電池パック内に格納される単電池の振動抑制効果を高めた組
電池の電池パック、及びその組電池の固定方法を提供することができる。
【0014】
また、各単電池を置載するトレイを設けて各単電池を積層し、このトレイにケースの対
向する内壁側面と接触する接触部位を設け、この接触部位を薄板ばねで成形してケースの
内側壁面に圧接しするようにしたので、振動で位置ずれがしにくい組電池の電池パックを
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の組電池の電池パックの実施例1の構造を説明する分解斜視図。
【図2】本発明の組電池の電池パックの概観構造を説明する図。
【図3】本発明の組電池の電池パックの実施例1の蓋部材の押圧力の設定の説明図。
【図4】本発明の組電池の電池パックの蓋部材を固定するケースの塑性変形部位の実施例。
【図5】従来のリチウム単電池の構造図。
【図6】本発明の組電池の電池パックの実施例2の構造を説明する断面図。
【図7】本発明の実施例2のトレイの構造を説明する斜視図。
【図8】本発明の実施例2のトレイに単電池を置載した斜視図。
【図9】本発明の組電池の電池パックの実施例3の構造を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0017】
(実施例1)
以下、本発明の実施例について図1乃至図5面を参照して説明する。
【0018】
図1は、図2に示す組電池1の電池パックの正面ケース2の一面を破断し、また、その
ケースカバー3を取り外した状態での分解斜視図である。
【0019】
本発明による組電池1の電池パックは、z軸方向に積層された平板状の複数の単電池1
0からなる組電池1と、組電池1を格納するケース2と、単電池10の正電極端子12a
及び負電極端子12bをC部に示すように直列(または、並列)に接続し、組電池1とし
たときの一方の電極端子と他方の電極端子とをD部に示すように接続してケース外2に取
り出す電池端子4a及び電池端子4bと、ケース2に内接して組電池1の最上部の単電池
10の表面を押圧する蓋部材5とから成る。
【0020】
次に、各部の詳細構成について説明する。図5は、リチウム電池場合の単電池10の構
造を示し、図に示すように、上部ラミネートフィルム14aと下部ラミネートフィルム1
4bからなるシート状の封止手段によって外周縁部Bを融着接合して、内部に垂直軸(z
軸)方向に複数の積層された発電要素端子11a、発電要素端子11b及び図示しない電
解質を含む発電要素11を封止すると共に、この発電要素11に接続された正電極端子1
2a及び負電極端子12bが封止された外周縁部Bの対向する水平軸(x軸)方向の両端
部から導出するように構成されている。
【0021】
上部ラミネートフィルム14a及び下部ラミネートフィルム14bは、図示しない最内
層に位置する熱融着性樹脂フィルム、アルミニウム箔のような金属箔および剛性を有する
有機樹脂フィルムをこの順序で積層した複合フィルム材から構成されている。
【0022】
この熱融着性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロ
ピレン(PP)フィルム、ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体フィルム、アイオノマ
ーフィルム、エチレンビニルアセテート(EVA)フィルム等を用いることができる。
【0023】
また、この剛性を有する有機樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレー
ト(PET)フィルム、ナイロンフィルム等を用いることができる。
【0024】
このような単電池10の電極端子部Aは、封止性を維持するラミネートフィルム14a
及び下部ラミネートフィルム14bとの間にポリエチレンなどのシール材16を挟んで、
他の外周縁部と合わせて熱融着させて、電解質が漏れないように封止している。
【0025】
このようなシール材16としては、電極端子12(正電極端子12a及び負電極端子1
2bを言う)に対向する面と、ラミネートフィルム14(上部ラミネートフィルム14a
及び下部ラミネートフィルム14bを言う)に対向する面で異なる特性を持った多層構造
の絶縁樹脂フィルムであることが好ましい。
【0026】
例えば、2層構造の絶縁樹脂フィルムにおいては、(a)酸変性ポリエチレン層とポリ
エチレン層とからなり、電極端子12と接する側に酸変性ポリエチレン層を配置するか、
(b)酸変性ポリプロピレン層とポリプロピレン層とからなり、電極端子12と接する側
に酸変性ポリプロピレン層を配置することが好ましい。
【0027】
例えば、3層構造の絶縁樹脂フィルムにおいては、(a)中間にポリエチレン層を配置
し、このポリエチレン層の両面に酸変性ポリエチレン層をそれぞれ配置するか、または(
b)中間にポリプロピレン層を配置し、このポリプロピレン層の両面に酸変性ポリプロピ
レン層をそれぞれ配置することが好ましい。
【0028】
この酸変性ポリエチレンとしては、例えば、酸変性低密度直鎖状ポリエチレンまたは酸
変性直鎖状ポリエチレンであることが好ましい。
【0029】
また、ポリエチレンとしては、例えば、中密度または高密度ポリエチレンであること、
ポリプロピレンとして、例えば、はホモポリマーベースのポリプロピレンであること、酸
変性ポリプロピレンとしては、例えばランダムコポリマーベースのポリプロピレンである
ことが好ましい。
【0030】
この単電池10は、組電池1を構成する場合は、要求される電気容量及び電圧から、そ
の数と接続方式が予め設定される。
【0031】
また、平板状の薄型形状の単電池10は、電解質を含む発電要素11を、金属層や合成
樹脂層等の補強材を挟んで一体成型されたポリマー系の封止体であるラミネートフィルム
14a、14bで封止する。
【0032】
ケース2は、後述する予め設定される押圧力で単電池10を固定する場合に歪まないよ
うに、所定の機械的強度を有する厚みを備えたアルミ等の金属で作られる。
【0033】
また、ケース2の上部には、詳細を後述する蓋部材5をケース2の上部から押圧し、所
定の押圧力となった位置で、ケース2に蓋部材5の位置を固定するための変形部位2aを
備えておく。
【0034】
ケースカバー3は、電池パックとしたときの外装となるもので、封止機能と外観美を備
えたものであれば良く、樹脂やアルミなどの材質で構成されるが、電池端子4a、4bの
周囲は樹脂等の絶縁物を介して絶縁する。
【0035】
次に、蓋部材5は、ケース2の内径と嵌合するようにしておき、組電池1の上部表面を
所定の押圧力で押圧したときに歪を生じない十分な機械的強度を備えたアルミ等の金属板
で構成する。
【0036】
また、正電極端子12a及び負電極端子12b、電池端子4a及び電池端子4bは、詳
細を省略するがアルミまたは銅などの高導電性の金属で、所定の形状に成型され、ケース
2と絶縁してケース2に固定される。
【0037】
また、これらの単電池10の正電極端子12aと負電極端子12bとの接合部C、電池
端子4aと組電池1の正電極端子12a及び電池端子4bと負電極端子12bとの接合部
Dは、例えば、溶接等で溶着しておく。
【0038】
次に、このように構成された組電池の電池パックの押圧力の設定について、図3乃至図
5を参照して説明する。
【0039】
図3は、組電池1を蓋部材5とケース2とで挟み、蓋部材5を押圧した時の押圧力と、
外周縁部Bの熱融着部の応力またはラミネートフィルム14a、14b引っ張り応力及び
組電池1の各単電池10表面の摩擦力との関係を図示したものである。
【0040】
横軸を単電池10の平板状表面を押圧した時の押圧力とし、縦軸をラミネートフィルム
14a、14bの外周縁部Bの熱融着部の応力またはラミネートフィルム14a、14b
引っ張り応力としたときの押圧力と応力の関係を実線で示す。
【0041】
この実線で示すように、押圧力とその応力の関係は、押圧力が増加するにつれて比例し
て応力も増加し、その後、押圧力が増加しても応力上昇の度合が低下し、更に押圧してゆ
くと、最後には破断する。
【0042】
また、横軸を単電池10の平板状表面を押圧したときの押圧力とし、縦軸を蓋部材5と
単電池10との接触面、単電池10相互の接触面、及び単電池10とケース2低表面との
各接触面の摩擦力としたときの押圧力と摩擦力の関係を1点破線で示す。
【0043】
この1点破線に示すように、押圧力と摩擦力とは比例関係で示される。
【0044】
蓋部材5で押圧する押圧力は、予測される外部からの振動で各単電池10及び、各単電
池10の内部の各要素が位置ずれしない摩擦力が得られる押圧力を下限値Fとし、その
上限値Fは、各単電池10が破損しない押圧力を上限値Fとして、上限値Fと下限
値Fの範囲で設定される。
【0045】
一般に、単電池10の平板状の表面に力を加えてゆくと、ラミネートフィルム14a及
びラミネートフィルム14bで封止された単電池10の内圧は徐々に高くなり、やがて単
電池10の弱い部分が破損される。
【0046】
この単電池10の内の弱い部分は、ラミネートフィルム14a及びラミネートフィルム
14b(以後、上部、下部のラミネートフィルムの総称は14で示す)自身、及びラミネ
ートフィルム14の外周縁部Bの熱融着部が考えられるが、通常、ラミネートフィルム1
4は金属層を挟んで一体成型されるので、ラミネートフィルム14の外周縁部Bの熱融着
部の方が弱く、この熱融着部の弱い部分の剥離または破損することが考えられる。
【0047】
したがって、図3に示すように、押圧力の上限値F以下で設定する必要があるが、下
限値Fは、組電池1の各単電池10が振動で位置ずれしない、また、単電池10の内部
の各要素が位置ずれしない押圧力以上としておく。
【0048】
このラミネートフィルム14の熱融着部の接着強度は、引張試験、引張及び圧縮時のせ
ん断応力を破壊実験で予め試験によって求めておく。
【0049】
また、下限値Fは下記のようにして求められる。例えば、ラミネートフィルム14の
摩擦係数をμとし、組電池1の質量をW、蓋部材5の押圧による垂直荷重N、組電池1の
電池パックの平板表面に平行な平面での最大加速度をGMAXとすると、N>W×GMA
/μ である必要がある。
【0050】
このようにして予め、試験して求めた熱融着部の接着強度と予め予測される振動の上限
値から求められた摩擦力とから、予め設定される押圧力の範囲が求められる。
【0051】
即ち、図3に示すように、予測された加速度時に必要とされる摩擦力から下限値F
、また、ラミネートフィルム14の熱融着部の接着強度から上限値Fが、予め求められ
る。
【0052】
次に、図4(a)に示すように、ケース2の上部から複数の積層された単電池10から
なる組電池1を挿入して、予め求められた押圧力を設定する方法について説明する。
【0053】
次に、予め設定される押圧力を電池パック内で得るためには、以下のような方法で組立
を行なう。
【0054】
先ず、蓋部材5の固定は、ケース2の上部に金属リブ等の変形部位2aを設けておき、
蓋部材5をケース2に圧入して行き、この圧入力が望ましい押圧力となった位置で、図4
(b)に示すように、この変形部位2aを折り曲げて変形させ、図示しない点付け溶接など
で固定する。
【0055】
この蓋部材5の圧力の監視には、図示しない蓋部材5を加圧する圧力装置の測定値で監
視したり、圧入した寸法量を測定して監視したりする方法で行う。
【0056】
このようにすることで、予め可能な押圧力範囲を求めておき、蓋部材5をこの押圧力の
範囲内で固定することで、部品点数が削減され、短時間で押圧力の設定が可能となる。
【0057】
組電池1の位置ずれを固定する方法には、単電池10の平板状表面と裏面に、予め既知
の接着力を有する接着剤を塗布または両面接着テープを張って固定する簡易的な固定方法
もあるが、単電池10内部の構成要素を固定するように蓋部材5で押圧する方法が望まし
い。
【0058】
(実施例2)
図6乃至図8を参照して、実施例2について説明する。この実施例2の各部について、
図1乃至図5に示した、実施例1の各部と同一部分は、同一の符号を付しその説明を省略
する。
【0059】
この実施例2が、実施例1と異なる点は、実施例1においては各単電池10をそのまま
積層して、蓋部材5で押圧して固定したが、実施例2においては単電池10を夫々トレイ
1aに置載して、各単電池10がトレイ1a置載された状態で積層して、積層された単電
池の一端を蓋部材5で厚さ方向に押圧し固定するようにしたことにある。
【0060】
図6は、積層された3つの単電池10からなる組電池の電池パックの断面図である。各
単電池10は、トレイ1aに置載され、ケース2内の内壁側面に対向する接触部位が圧接
して積層され、その一端の上部を蓋部材5で押圧し、変形部位2aを押し曲げ蓋部材5を
ケース2に固定している。
【0061】
次に、このトレイ1aの詳細構造について説明する。図7(a)は、平板状の厚さtc
の単電池10の外観斜視図で、x軸方向の両端部から正電極端子12a及び負電極端子1
2bが導出される。
【0062】
図7(b)は、図7(a)に示すような平板状の単電池10を置載するトレイ1aの外
観斜視図である。このトレイ1aは、例えば、熱伝導性の良い薄板の金属板等で成形され
る。
【0063】
この接触部位Bは、平板状の厚さtpのトレイ1aの両端部を複数箇所、対向する垂直
方向にL字型に対向する方向に折り曲げ、その折り曲げ高さhで成形される。接触部位B
の個数は、例えば、折り曲げられた接触部位Bは、対向する一端中央に幅F1の接触部位
Bが一つ、他端にこの幅F1と嵌合する2つの接触部位Bが、距離F1離間して設けられ
る。
【0064】
そして、図7(b)に示す接触部位Bのx-z軸平面と平行な端面Sxz、及びy-z軸
平面と平行な端面Syzは、後述する各トレイ1aを積相して嵌合させる場合に必要な所
定の精度で予め加工しておく。
【0065】
尚、この接触部位Bは、積層する場合に嵌合し易い構造であれば、その個数及びその嵌
合寸法は、適宜選択することが可能である。
【0066】
図8は、このように構成されたトレイ1aの積層方法の外観斜視図で、図8(a)及び
図8(b)は、積層する単電池10の極性を異なる方向で置載した状態を示し、例えば、
図8(b)の単電池10の上部に、図8(a)の単電池10を置載したトレイ1aが、そ
の接触部位Bを嵌合させて積層される。
【0067】
図8(c)は嵌合部の断面図を示す。ここで、トレイ1aの接触部位Bの折り曲げ高さ
hは、下記の関係式を満足するように予め成形される。
tp+ts<h<2(tp+ts)
このような構成とすると、トレイ1aと単電池10を積層した時にトレイ1aの接触部
位Bが,ひとつ上の層のトレイ1aの接触部位Bが無い部分に挿入された状態となる。し
たがって、y軸方向においては下のトレイ1aの接触部位Bと上のトレイ1aの接触部位
Bが接触することにより、相互にトレイ1aが移動することがなくなる。また、x軸方向
においては、下のトレイ1aの接触部位Bと上のトレイ1aの無い部分の端部が接触する
ことにより、相互にトレイ1aが移動することがなくなる。
【0068】
このように構成された接触部位Bをそなえるトレイ1aを使用して単電池10を積層す
ることによって、組電池の電池パックの外部からの振動があっても、上下に配置されるト
レイの接触部位Bが嵌合することによりx軸方向、y軸方向のいずれの方向にもトレイ1
aが相互にずれることがない。また、トレイ1aが相互にずれることがないため、トレイ
1aに載せる単電池10の移動も抑制することができる。
【0069】
また、ケース2の底部に最下層に配置されたトレイ1aの接触部位Bの無い部分に嵌合
する凸部を設けることにより、ケース2とトレイ1aのトレイ1aの面方向のずれを抑制
することもできる。
【0070】
また、単電池10をトレイ1aに載せる時に、トレイ1aの接触部位Bとの関係で単電
池10の極性を同じ方向に載せるようにする。
【0071】
このような構成とすれば、単電池10を載せたトレイ1aを積層する場合には、単電池
10の極性が逆になる方向にトレイ1aを向けなければ、上下のトレイ1aの接触部位B
が嵌合することができないため、必ず単電池10の電極の極性は交互になるように積層さ
れる。したがって、単電池10を載せたトレイ1aの積層作業において単電池10の極性
を配慮することなく、確実に単電池10を直列に接続する積層が行なうことができる。
【0072】
以上のべたように、本実施例2による各単電池10を置載するトレイ1aに嵌合部位を
設けることで、外部からの振動に対しても位置ずれしにくく、且つ、積層する単電池10
の組み立て時の作業のミスを防止できる組電池の電池パックを提供できる。
【0073】
(実施例3)
図9を参照して、実施例2について説明する。この実施例2の各部について、図1乃至
図8に示した、実施例1及び実施例2の各部と同一部分は、同一の符号を付しその説明を
省略する。
【0074】
図9(a)は、電池パックの蓋部材5を除き、その上部からみた平面図、図9(b)は
、同図(b)のx-x断面図、また、図9(c)は、同図(c)のy-y断面図である。
【0075】
例えば、本実施例3のトレイ1aは、y軸方向の対向するケース2の内壁側面に圧接す
る接触部位Bを8個備える。そして、これらの接触部位Bは、4個ずつがy軸上で対向す
る方向に曲げられている。
【0076】
例えば、この接触部位Bの先端部は、図9(a)E部の拡大図である図9(d)に示す
ように、ナイフエッジ状の鋭利な形状とし、ケース2の金属より硬い、例えば銅等で成形
しておく。
【0077】
そして、ケース2をトレイ1aよりも軟らかいアルミ等で成形しておき、ケース2の上
部から単電池10を置載したトレイ1aを挿入したとき、その先端部が図9(d)に示す
ように、ケース2の内壁に食い込んで圧入されるようにしておく。
【0078】
このようなトレイ1aを備えることで、電池パックの外部からの振動が、y軸上の左右
いずれの方向に加わっても、対向して設けられたいずれかの接触部位Bの先端部がケース
2の内壁側面に引っかかってトレイ1aのy軸方向の動きが抑制される。また、y軸方向
においては接触部位Bとケースが接触しているため、トレイ1aのy軸方向の動きが抑制
される。
【0079】
また、図9(b)に示すように、トレイ1aの平板を、例えば、緩やかな凸曲面として
おき、単電池10を積層した状態で、上部から蓋部材5で押圧し固定する。
【0080】
このようなトレイ1aの平板部が湾曲していることで、電池パックの外部からの直線振
動に対して、単電池10とトレイ1aの湾曲が障害となって、相互にずれることが抑制さ
れる。
【0081】
トレイ1aの湾曲の周方向への振動に対しては、その形状によるずれの抑制効果はない
が、このような方向への振動が発生することは少ないため、単電池10とトレイ1aのず
れ防止作用は一般的には十分である。
【0082】
なお、トレイ1aの平板の凸曲面の曲率を部分的に変化させておけば、どのような振動
に対してもずれの抑制効果を得ることができる。曲率の変化としては楕円の一部の円弧を
用いることができる。
【0083】
また、トレイ1aの湾曲は、面内のいずれの方向に対しても設けることができるが、単
電池10の電極の方向(x軸方向)に対しては、図9(c)の接触部位B取り付けられた
部分のようにトレイ1aの端を、単電池10を載せた方向へ折り曲げ、その折り曲げ部と
単電池10が接触することによりずれ防止とするような構成を設けることが難しいため、
特に有効である。
【0084】
このような接触部位Bと凹凸部とを備えたトレイ1aを備えることで、電池パックが振
動した場合、トレイ1a及びこれに置載された単電池10がずれにくい組電池の電池パッ
クを提供することができる。
【0085】
本発明は上述したような各実施例に何ら限定されるものでなく、ケースと蓋部材を剛体
と見なせるように機械的強度の強い構成とし、組電池をケースと蓋部材とで挟み、所定の
押圧力で固定する方法であれば良く、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、単電池の平板状
表面と接触する表面に接着テープを介在させ、この接着テープの形状を微調整することで
、単電池10内部の構成要素をより最適に固定するように、種々変形して実施することが
可能で有る。
【0086】
また、トレイ及びその接触部位Bの嵌合部位の形状は、単電池とそのケースの形状に合
わせて、トレイ上での単電池の位置決めと位置ずれがしにくい形状に種々変形して実施す
ることが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 組電池
1a トレイ
B 接触部位
Bm、Br 薄板ばね
2 ケース
2a 変形部位
3 ケースカバー
4a、4b 電池端子
5 蓋部材
10 単電池
11 発電要素
11a、11b 発電要素端子
12a 正電極端子
12b 負電極端子
14a 上部ラミネートフィルム
14b 下部ラミネートフィルム
16 シールフイルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネートフィルムで密閉封止してなる複数の平板状の単電池からなる組電池と、
各前記単電池を置載し、前記ケースに内接する複数のトレイと、
前記トレイに置載された状態で、前記単電池をその厚さ方向に積層して収納し、少なくと
もその一端に開口部を有するケースと、
前記トレイに置載され、積層された前記単電池を、開口部の一端から積層方向に押圧する
蓋部材と、
前記ケースまたは前記蓋部材のいずれかに変形部位を備え、当該変形部位を変形させて、
前記蓋部材による前記積層された単電池を押圧する力が所定の押圧力になる位置で、前記
蓋部材を前記ケースに固定する固定手段とを備え、
前記トレイは、少なくとも前記単電池の置載位置を案内し、及び前記ケースの対向する内
側壁面に接触する接触部位を有し、
前記トレイの接触部位は、前記ケースの内側壁面と線接触もしくは面接触する複数の薄板
ばねで成形され、前記ケース内側壁面に圧接する組電池の電池パック。
【請求項2】
ラミネートフィルムで密閉封止してなる複数の平板状の単電池からなる組電池と、
各前記単電池を置載し、前記ケースに内接する複数のトレイと、
前記トレイに置載された状態で、前記単電池をその厚さ方向に積層して収納し、少なくと
もその一端に開口部を有するケースと、
前記トレイに置載され、積層された前記単電池を、開口部の一端から積層方向に押圧する
蓋部材と、
前記ケースまたは前記蓋部材のいずれかに変形部位を備え、当該変形部位を変形させて、
前記蓋部材による前記積層された単電池を押圧する力が所定の押圧力になる位置で、前記
蓋部材を前記ケースに固定する固定手段とを備え、
前記トレイは、少なくとも前記単電池の置載位置を案内し、及び前記ケースの対向する内
側壁面に接触する接触部位を有し、
前記トレイの接触部位は、前記単電池を積層方向と直交する方向において、異なる方向に
曲げた複数の薄板ばねで構成した組電池の電池パック。
【請求項3】
ラミネートフィルムで密閉封止してなる複数の平板状の単電池からなる組電池と、
各前記単電池を置載し、前記ケースに内接する複数のトレイと、
前記トレイに置載された状態で、前記単電池をその厚さ方向に積層して収納し、少なくと
もその一端に開口部を有するケースと、
前記トレイに置載され、積層された前記単電池を、開口部の一端から積層方向に押圧する
蓋部材と、
前記ケースまたは前記蓋部材のいずれかに変形部位を備え、当該変形部位を変形させて、
前記蓋部材による前記積層された単電池を押圧する力が所定の押圧力になる位置で、前記
蓋部材を前記ケースに固定する固定手段とを備え、
前記トレイは、少なくとも前記単電池の置載位置を案内し、及び前記ケースの対向する内
側壁面に接触する接触部位を有し、
前記トレイの接触部位には、前記トレイ相互が嵌合する嵌合部位を備えた組電池の電池パ
ック。
【請求項4】
ラミネートフィルムで密閉封止してなる複数の平板状の単電池からなる組電池と、
各前記単電池を置載し、前記ケースに内接する複数のトレイと、
前記トレイに置載された状態で、前記単電池をその厚さ方向に積層して収納し、少なくと
もその一端に開口部を有するケースと、
前記トレイに置載され、積層された前記単電池を、開口部の一端から積層方向に押圧する
蓋部材と、
前記ケースまたは前記蓋部材のいずれかに変形部位を備え、当該変形部位を変形させて、
前記蓋部材による前記積層された単電池を押圧する力が所定の押圧力になる位置で、前記
蓋部材を前記ケースに固定する固定手段とを備え、
前記トレイは、前記単電池を積層する平板を湾曲させた組電池の電池パック。
【請求項5】
ラミネートフィルムで密閉封止してなる複数の平板状の単電池からなる組電池と、
各前記単電池を置載し、前記ケースに内接する複数のトレイと、
前記トレイに置載された状態で、前記単電池をその厚さ方向に積層して収納し、少なくと
もその一端に開口部を有するケースと、
前記トレイに置載され、積層された前記単電池を、開口部の一端から積層方向に押圧する
蓋部材と、
前記ケースまたは前記蓋部材のいずれかに変形部位を備え、当該変形部位を変形させて、
前記蓋部材による前記積層された単電池を押圧する力が所定の押圧力になる位置で、前記
蓋部材を前記ケースに固定する固定手段とを備え、
前記ケースの底部の角部に、この底部表面と接触する最下層の前記トレイと嵌合する部位
を備えた組電池の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−58498(P2013−58498A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281743(P2012−281743)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2005−162429(P2005−162429)の分割
【原出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】