説明

緩衝器

【課題】減衰力特性を一層詳細に制御可能な緩衝器の提供。
【解決手段】シリンダ1内をロッド側室6とボトム側室7とに区画するピストン5と、ピストン5に一端が連結されると共に他端がシリンダ1の外部に延出されたピストンロッド10と、ピストンロッド10の一端側に設けられたハウジング85と、ハウジング85内に摺動自在に挿入されたフリーピストン87と、ロッド側室6とハウジング85内の圧力室130とを連通するロッド通路127と、ロッド側室6とボトム側室7とを連通する通路40a,40bに設けられた減衰バルブ41a,41bと、ハウジング85内でフリーピストン87が一側に移動したときにフリーピストン87の移動を抑制する移動抑制機構135と、ハウジング内85でフリーピストン87が他側に移動したときにフリーピストン87の移動を規制する弾性体89とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器には、振動状態に応じて減衰力特性が可変となる緩衝器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−19642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、減衰力特性を一層詳細に制御することが求められている。
【0005】
したがって、本発明は、減衰力特性を一層詳細に制御可能な緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、前記ピストンに一端が連結されると共に他端が前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンロッドの一端側に設けられたハウジングと、前記ハウジング内に摺動自在に挿入されたフリーピストンと、前記ロッド側室と前記ハウジング内の前記フリーピストンによって画成された圧力室とを連通するロッド通路と、前記ロッド側室とボトム側室とを連通する通路に設けられた減衰バルブとからなる緩衝器において、前記ハウジングおよび前記フリーピストンに、前記ハウジング内で前記フリーピストンが一側に移動したときに、該フリーピストンの移動を抑制する移動抑制機構を設け、前記フリーピストンと前記ハウジングとの間に、該ハウジング内で前記フリーピストンが他側に移動したときに、該フリーピストンの移動を規制する弾性体を設けた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、減衰力特性を一層詳細に制御可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の緩衝器のフリーピストンのハウジングに対する位置とオリフィスの通路面積との関係を示す特性線図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
【図5】本発明に係る第3実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
【図6】本発明に係る第4実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
【図7】本発明に係る第5実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で説明の実施の形態は、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載した内容に止まること無くその他にもいろいろな課題を解決し、効果を呈している。以下の実施の形態が解決する課題の主なものを、上述の欄に記載した内容をも含め、次に列挙する。
〔特性改善〕
振動状態に応じて減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力)を変更する際に、より滑らかに変更する等の特性設定が求められている。これは、小さな減衰力が発生する特性と、大きな減衰力が発生する特性の切り替わりが唐突に起こると、実際に発生する減衰力も唐突に切り替わるので、車両の乗り心地が悪化し、さらには減衰力の切り替わりが車両の操舵中に発生すると、車両の挙動が不安定となり、運転者が操舵に対して違和感を招く恐れがあるためである。そのため、先に示した特許文献1に示すようにより滑らかに変更する特性設定が検討されているが、さらなる特性改善が望まれている。
〔大型化の抑制〕
先に示した特許文献1に示されるように、シリンダ内の2室を仕切り、減衰力を発生する機構を有するピストンに加え、ピストンの一端側に設けられ、ハウジング内を上下動するフリーピストンを備えることにより、振動周波数の広い領域に対応した減衰力特性が得られるように改善が図られたシリンダ装置は種々開発されている。これらのシリンダ装置に共通する課題として、フリーピストンが上下動する領域が必要であるため、軸方向に長くなるということがあげられる。シリンダ装置が大型化すると、車体への取付け自由度が低下するため、シリンダ装置の軸方向長の増加は、大きな課題である。また、フリーピストンが上下動する領域を確保し、シリンダ装置の軸方向長を従来どおりとすると、ピストンのストローク範囲が短くなり、乗り心地、操縦安定性に影響が出るという課題がある。さらには、外部から減衰力を調整する機構を付けるとその分の大型化がさせられないため、周波数感応部の小型化は、強い要求がある。
〔部品数の低減〕
先に示した特許文献1に示されるように、ピストンに加え、ハウジングやフリーピストンなどの構成部品が備えられるため、部品数は増えることになる。部品数が増えると、生産性、耐久性、信頼性などに影響がでるため、所望の特性、つまり振動周波数の広い領域に対応した減衰力特性が得られるような特性を出しつつ、部品数の低減が望まれている。
以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側とし、逆に図の上側を他方側として定義する。
【0011】
第1実施形態の緩衝器は、図1に示すように、いわゆる複筒式の油圧緩衝器で、円筒状のシリンダ1と、このシリンダ1よりも大径でシリンダ1を覆うように同心状に設けられる外筒2とを有し、これらシリンダ1と外筒2との間にリザーバ室3が形成されている。
【0012】
シリンダ1内には、ピストン5が摺動可能に嵌装されている。このピストン5は、シリンダ1内を上室(ロッド側室)6と下室(ボトム側室)7とに区画している。シリンダ1内の上室6および下室7内には、作動流体としての油液が封入され、シリンダ1と外筒2との間のリザーバ室3内には、作動流体としての油液と、高圧(20〜30気圧程度)のガスとが封入される。
【0013】
シリンダ1内には、一端がシリンダ1の外部へと延出されるピストンロッド10の他端が挿入されており、ピストン5は、このピストンロッド10のシリンダ1内の他端部に連結されている。ピストンロッド10は、シリンダ1の一端開口部に装着されたロッドガイド11、カップシール12およびオイルシール13等に挿通されてシリンダ1の外部へ延出されている。ロッドガイド11は、外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしており、下部においてシリンダ1の上端の内周部に嵌合し上部において外筒2の上端の内周部に嵌合する。これにより、シリンダ1の上部が外筒2に対して位置決めされる。外筒2の上端部は、内側に加締められており、オイルシール13およびロッドガイド11をシリンダ1とで挟持する。
【0014】
ピストンロッド10は、シリンダ1内への挿入先端側に、ピストン5を取り付けるための取付軸部15が形成されており、他の部分が取付軸部15よりも大径の主軸部16となっている。この主軸部16には、径方向外側に広がるリテーナ23が固定されている。
【0015】
リテーナ23のピストン5とは反対には円環状のバネ受25が配置されており、バネ受25のリテーナ23とは反対にコイルスプリングからなるリバウンドスプリング26が配置されている。また、リバウンドスプリング26のバネ受25とは反対には円環状のバネ受27が配置されており、このバネ受27のリバウンドスプリング26とは反対に円環状の弾性材料からなる緩衝体28が設けられている。
【0016】
ここで、ピストンロッド10がシリンダ1から突出する方向に移動する伸び行程では、ピストンロッド10に固定されたリテーナ23とともにバネ受25、リバウンドスプリング26、バネ受27および緩衝体28がロッドガイド11側に移動することになり、所定の位置で緩衝体28がロッドガイド11に当接する。さらにピストンロッド10が突出方向に移動すると、緩衝体28およびバネ受27が、ロッドガイド11およびシリンダ1に対して停止状態となり、その結果、移動するリテーナ23およびバネ受25と、バネ受27とが近接する。これにより、バネ受25とバネ受27とが、これらの間のリバウンドスプリング26を縮長させることになる。このようにして、シリンダ1内に設けられたリバウンドスプリング26が、ピストンロッド10に弾性的に作用することになり、ピストンロッド10の伸び切りを抑制することになる。なお、このようにリバウンドスプリング26がピストンロッド10の伸び切りの抵抗となることで、車両旋回時の内周側の車輪の浮き上がりを抑制して車体のロール量を抑えることになる。
【0017】
ピストン5には、上室6と下室7とを連通させ、ピストン5の上室6側への移動、つまり伸び行程において上室6から下室7に向けて油液が流れ出す複数(図1では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路40aと、ピストン5の下室7側への移動、つまり縮み行程において下室7から上室6に向けて油液が流れ出す複数(図1では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路40bとが設けられている。
【0018】
これらのうち半数を構成する通路40aは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路40bを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン5の軸方向一側(図1の上側)が径方向外側に、軸方向他側(図1の下側)が径方向内側に開口している。そして、これら半数の通路40aに、減衰力を発生する減衰バルブ41aが設けられている。減衰バルブ41aは、ピストン5の軸線方向の下室7側に配置されている。通路40aは、ピストンロッド10がシリンダ1外に伸び出る伸び側にピストン5が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰バルブ41aは、伸び側の通路40aの油液の流動を規制して減衰力を発生させる伸び側の減衰バルブとなっている。
【0019】
また、残りの半数を構成する通路40bは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路40aを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン5の軸方向他側(図1の下側)が径方向外側に、軸方向一側(図1の上側)が径方向内側に開口している。そして、これら残り半数の通路40bに、減衰力を発生する減衰バルブ41bが設けられている。減衰バルブ41bは、ピストン5の軸線方向の上室6側に配置されている。通路40bは、ピストンロッド10がシリンダ1内に入る縮み側にピストン5が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰バルブ41bは、縮み側の通路40bの油液の流動を規制して減衰力を発生させる縮み側の減衰バルブとなっている。
【0020】
ピストンロッド10には、そのシリンダ1内にある一端側の取付軸部15のピストン5よりもさらに端側に減衰力可変機構45が取り付けられている。
【0021】
外筒2は、円筒状の円筒部材47と、円筒部材47の下端に嵌合してその下端の開口部を閉塞する底蓋部材48とからなっている。底蓋部材48は、外周部で円筒部材47の内周部に嵌合されることになり、この状態で中央側ほど下側に位置するように段差状をなしている。底蓋部材48は円筒部材47に溶接により密閉状態となるように固定されている。底蓋部材48の外側には、取付部材49が溶接により固定されている。
【0022】
シリンダ1の下端部には、シリンダ1内の下室7と、上記したリザーバ室3とを画成するボトムバルブ53が設けられている。ボトムバルブ53には、伸び行程においてリザーバ室3から下室7内に実質的に減衰力を発生させずに油液を流すサクションバルブ51aと、縮み行程において下室7からリザーバ室3側に、減衰力を発生させながら油液を流す減衰バルブ51bとを有している。
【0023】
ボトムバルブ53は、シリンダ1内に嵌装されてシリンダ1内を下室7およびリザーバ室3の2室に仕切る略円板状のボトムバルブ部材55を有している。ボトムバルブ部材55は、上部が下部よりも小径となる段差状をなしており、上部においてシリンダ1の下端の内周部に嵌合し下部において外筒2に当接して、シリンダ1の下部を外筒2に対して位置決めする。
【0024】
ボトムバルブ部材55には、径方向の外側において軸方向に貫通する流路57aが周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。また、径方向の内側において軸方向に貫通する流路57bが、周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。これら流路57a,57bによって下室7とリザーバ室3との間で油液が流通可能となっている。
【0025】
ボトムバルブ53には、ボトムバルブ部材55の軸方向の下室7側に、外側の流路57aを開閉可能となるように上記したサクションバルブ51aが設けられており、ボトムバルブ部材76の軸方向の下室7とは反対側に、内側の流路57bを開閉可能となるように上記した減衰バルブ51bが設けられている。
【0026】
下室7側のサクションバルブ51aは、ピストンロッド10が伸び側に移動しピストン5が上室6側に移動して下室7の圧力が下降するとボトムバルブ部材55から離座して流路57aを開く。つまり、流路57aには、ピストンロッド10が伸び側に移動したときに油液がリザーバ室3から下室7に向け流通することになる。なお、サクションバルブ51aは、ピストン5に設けられた伸び側の減衰バルブ41aとの関係から、主としてピストンロッド10のシリンダ1からの突出に伴う油液の不足分を補うようにリザーバ室3から下室7に油液を実質的に抵抗なく(減衰力が出ない程度に)流す機能を果たす。
【0027】
下室7とは反対側の減衰バルブ51bは、ピストンロッド10が縮み側に移動しピストン5が下室7側に移動して下室7の圧力が上昇すると、ボトムバルブ部材55から離座して内側の流路57bを開く。つまり、流路57bには、ピストンロッド10が縮み側に移動したときに油液が下室7からリザーバ室3に向け流通することになり、減衰バルブ51bは、この流路57bを開閉し減衰力を発生する縮み側の減衰バルブとなっている。なお、減衰バルブ51bは、ピストン5に設けられた縮み側の減衰バルブ41bとの関係から、主としてピストンロッド10のシリンダ1への進入により生じる液の余剰分を排出するように下室7からリザーバ室3に液を流す機能を果たす。
【0028】
上述の緩衝器の例えば一方側は車体により支持され、上記緩衝器の他方側に車輪側が固定される。具体的には、ピストンロッド10にて車体側に連結され、シリンダ1のピストンロッド10の突出側とは反対側の底部に取り付けられた取付部材49にて車輪側に連結される。なお、上記とは逆に、緩衝器の他方側が車体により支持され緩衝器の一方側に車輪側が固定されるようにしても良い。
【0029】
車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ1とピストンロッド10との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン5に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン5に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ1とピストンロッド10との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ1とピストンロッド10との間に作用する。以下で説明するとおり、本実施形態の緩衝器は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
【0030】
図2に示すように、ピストン5は、略円板状のピストン本体61と、ピストン本体61の外周面に装着されて、シリンダ1内を摺接する摺接部材62とを有している。ピストン本体61には、径方向の中央に、ピストンロッド10の取付軸部15を挿通させる挿通穴63が軸方向に貫通するように形成されている。また、このピストン本体61に、上記した通路40a,40bが形成されている。
【0031】
ピストン本体61の軸方向の下室7側の端部には、伸び側の通路40aの一端開口位置に、減衰バルブ41aを構成するシート部71aが、円環状に形成されている。ピストン本体61の軸方向の上室6側の端部には、縮み側の通路40bの一端の開口位置に、減衰バルブ41bを構成するシート部71bが、円環状に形成されている。
【0032】
ピストン本体61において、シート部71aの挿通穴63とは反対側は、シート部71aよりも軸線方向高さが低い環状の段差部72bとなっており、この段差部72bの位置に縮み側の通路40bの他端が開口している。また、同様に、ピストン本体61において、シート部71bの挿通穴63とは反対側は、シート部71bよりも軸線方向高さが低い環状の段差部72aとなっており、この段差部72aの位置に伸び側の通路40aの他端が開口している。
【0033】
減衰バルブ41aは、上記したシート部71aと、シート部71aの全体に同時に着座可能な環状のディスク75aとからなっており、ディスクバルブとなっている。ディスク75aは複数枚の環状の単体ディスクが重ね合わせられることで構成されている。ディスク75aのピストン本体61とは反対側には、ディスク75aよりも小径の環状のバルブ規制部材77aが配置されている。
【0034】
減衰バルブ41aには、シート部71aとディスク75aとの間に、これらが当接状態にあっても通路40aを下室7に連通させる固定オリフィス78aが、シート部71aに形成された溝あるいはディスク75aに形成された開口によって形成されている。ディスク75aは、シート部71aから離座することで通路40aを開放し、その際に、バルブ規制部材77aはディスク75aの開方向への規定以上の変形を規制する。減衰バルブ41aは、通路40aに設けられ、ピストン5の上室6側への摺動によって通路40aに生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
【0035】
同様に、減衰バルブ41bは、上記したシート部71bと、シート部71bの全体に同時に着座可能な環状のディスク75bとからなっており、ディスクバルブとなっている。ディスク75bも複数枚の環状の単体ディスクが重ね合わせられることで構成されている。ディスク75bのピストン本体61とは反対側には、ディスク75bよりも小径の環状のバルブ規制部材77bが配置されている。バルブ規制部材77bは、ピストンロッド10の主軸部16の取付軸部15側の端面に当接している。
【0036】
減衰バルブ41bには、シート部71bとディスク75bとの間に、これらが当接状態にあっても通路40bを上室6に連通させる固定オリフィス78bが、シート部71bに形成された溝あるいはディスク75bに形成された開口によって形成されている。ディスク75bは、シート部71bから離座することで通路40bを開放し、その際に、バルブ規制部材77bはディスク75bの開方向への規定以上の変形を規制する。減衰バルブ41bは、通路40bに設けられ、ピストン5の下室7側への摺動によって通路40bに生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
【0037】
第1実施形態では、減衰バルブ41a,41bが内周クランプのディスクバルブである例を示したが、これに限らず、減衰力を発生する機構であればよく、例えば、ディスクバルブをコイルバネで付勢するリフトタイプのバルブとしてもよく、また、ポペット弁であってもよい。
【0038】
ピストンロッド10の取付軸部15の先端には、オネジ80が形成されており、このオネジ80に、周波数(振動状態)により外部から制御されることなく減衰力を可変とする周波数感応部である減衰力可変機構45が螺合されている。
【0039】
減衰力可変機構45は、ピストンロッド10のオネジ80に螺合されるメネジ81が形成された蓋部材82と、この蓋部材82にその一端開口側が閉塞されるように取り付けられる略円筒状のハウジング本体83とからなるハウジング85と、このハウジング85内に摺動自在に挿入されるフリーピストン87と、フリーピストン87とハウジング85のハウジング本体83との間に介装されてフリーピストン87がハウジング85に対し蓋部材82とは反対側へ移動したときに圧縮変形する弾性体であるOリング89とで構成されている。なお、図2(後述する図4〜図7も同様)においては便宜上自然状態のOリング89を図示している。このOリング89は、シールとしても機能するので、取り付けられた状態で常時、変形(断面非円形)しているように配置されることが望ましい。Oリング89は、フリーピストン87が他方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっている。
【0040】
蓋部材82は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状の蓋内筒部91と、この蓋内筒部91の軸方向の端部から径方向外側に延出する円板状の蓋基板部92と、蓋基板部92の径方向の中間位置から蓋内筒部91と同方向に延出する略円筒状の蓋外筒部93と、蓋内筒部91の蓋基板部92とは反対側を覆うとともにオリフィス94が径方向の中央に形成された蓋先板部95とを有している。蓋外筒部93の外周面には、オネジ98が形成されている。また、蓋内筒部91および蓋先板部95の境界位置の外側には、面取り99が形成されている。
【0041】
オリフィス94は、軸方向の蓋基板部92とは反対側にあって蓋基板部92側ほど小径となるテーパ穴94Aと、テーパ穴94Aの蓋基板部92側に連続し、蓋基板部92側ほど大径となるテーパ穴94Bとを有している。テーパ穴94Aとテーパ穴94Bとの間が、オリフィス94において最小径となる最小径部94Cとなっている。テーパ穴94Aのテーパとテーパ穴94Bのテーパとは同等になっており、テーパ穴94Aの軸方向長さはテーパ穴94Bの軸方向長さよりも長くなっている。
【0042】
ハウジング本体83は、切削加工を主体として形成されるもので、軸方向一側に径方向内方に突出する内側環状突起100が形成された略円筒状をなしている。ハウジング本体83の内周面には、軸方向一側から順に、小径円筒面部101、曲面部102、大径円筒面部103およびメネジ104が形成されている。小径円筒面部101は一定径をなしており、小径円筒面部101に繋がる曲面部102は、小径円筒面部101から離れるほど大径の円環状となっており、曲面部102に繋がる大径円筒面部103は、小径円筒面部101より大径の一定径をなしている。曲面部102はハウジング本体83の中心軸線を含む断面が円弧状をなしており、小径円筒面部101と曲面部102とが、内側環状突起100に形成されている。なお、ハウジング本体83を円筒状と記述しているが、内周面は断面円形となることが望ましいが、外周面は、多角形等断面非円形であってもよい。
【0043】
このようなハウジング本体83のメネジ104に、蓋部材82のオネジ98が螺合されることでこれらが一体化されてハウジング85となる。
【0044】
フリーピストン87は、鍛造および切削加工を主体として形成される一体成形品で、略円筒状のピストン筒部106と、このピストン筒部106の軸方向の一端側を閉塞するピストン閉板部107とを有している。ピストン筒部106には、軸方向のピストン閉板部107とは反対側に、径方向外方に突出する円環状の外側環状突起108が形成されている。また、ピストン閉板部107の径方向の中央に、軸方向にピストン筒部106と同側に突出するシャッタ部109が形成されている。ここで、シャッタ部109は鍛造によりピストン閉板部107から突出するように形成されており、ピストン閉板部107のシャッタ部109とは反対には鍛造時に生じる凹部110が形成されている。
【0045】
ピストン筒部106の外周面には、軸方向のピストン閉板部107側から順に、小径円筒面部111、曲面部112および大径円筒面部113が形成されている。曲面部112および大径円筒面部113は、外側環状突起108に形成されている。ピストン筒部106の内周面には、ピストン閉板部107側から順に、円筒面部115およびテーパ面部116が形成されている。
【0046】
小径円筒面部111は一定径となっており、この小径円筒面部111に繋がる曲面部112は小径円筒面部111から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部112に繋がる大径円筒面部113は、小径円筒面部111より大径の一定径をなしている。曲面部112はフリーピストン本体106の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。円筒面部115は一定径となっており、この円筒面部115に繋がるテーパ面部116は円筒面部115から離れるほど大径のテーパ状をなしている。
【0047】
シャッタ部109は棒状をなしており、ピストン閉板部107から軸方向に離れるほど小径となるテーパ面部117と、テーパ面部117のピストン閉板部107とは反対側に連続しピストン閉板部107から軸方向に離れるほど小径となるテーパ面部118と、テーパ面部118のテーパ面部117とは反対側に連続し一定径をなす円筒面部119と、円筒面部119のテーパ面部118とは反対側に連続し、円筒面部119から軸方向に離れるほど小径となるテーパ状の先端テーパ面部120とを有している。先端テーパ面部120のテーパは、テーパ面部117のテーパより大きく、テーパ面部118のテーパより小さくなっている。
【0048】
フリーピストン87は、シャッタ部109がハウジング85のオリフィス94に進入可能となる向きで、ハウジング85内に配置されることになり、この状態で、大径円筒面部113においてハウジング本体83の大径円筒面部103に摺動可能に嵌挿され、小径円筒面部111がハウジング本体83の小径円筒面部101に摺動可能に嵌挿されることになる。このようにフリーピストン87がハウジング85内に配置された状態で、フリーピストン87の曲面部112と、ハウジング本体83の曲面部102とが、これらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、ハウジング本体83の曲面部102と、フリーピストン87の曲面部112とがフリーピストン87の移動方向で対向する。
【0049】
そして、フリーピストン87の小径円筒面部111および曲面部112と、ハウジング本体83の曲面部102および大径円筒面部103との間に、言い換えれば、フリーピストン87の外側環状突起108とハウジング85の内側環状突起100との間に、Oリング89(図2において自然状態を図示)が配置されている。このOリング89は、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなし、内径がフリーピストン87の小径円筒面部111よりも小径で、外径がハウジング本体83の大径円筒面部103よりも大径となっている。つまり、Oリング89は、フリーピストン87およびハウジング85の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
【0050】
Oリング89は、フリーピストン87のハウジング85に対する軸方向両方向の移動を許容するとともに、フリーピストン87の蓋部材82とは反対側への移動時に圧縮変形して抵抗力を発生させ、最終的にはフリーピストン87の移動を規制する。
【0051】
フリーピストン87においては、Oリング89が小径円筒面部111および曲面部112に接触することになり、これらのうち曲面部112は、フリーピストン87の移動方向に対し傾斜している。また、ハウジング85においては、Oリング89が大径円筒面部103および曲面部102に接触することになり、これらのうち曲面部102は、フリーピストン87の移動方向に対し傾斜している。
【0052】
言い換えれば、フリーピストン87の外周部に外側環状突起108を設け、この外側環状突起108の軸方向一面は、曲面部112を構成し、ハウジング85の内周における、外側環状突起108の一側の位置に、曲面部102を有する内側環状突起100を設け、外側環状突起108と内側環状突起100との間にOリング89を設けている。
【0053】
そして、フリーピストン87の小径円筒面部111および曲面部112において、Oリング89に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング85の大径円筒面部103および曲面部102において、Oリング89に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン87の移動によってOリング89に接触している部分のOリング89の中心を通る最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン87のフリーピストン接触面と、ハウジング85のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング89が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部111および曲面部112と大径円筒面部103および曲面部102との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の上室6側(図2の上側)に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング89が接触している部分の最短距離は大径円筒面部103と小径円筒面部111との半径差である(大径円筒面部103と小径円筒面部111との半径差よりもOリング89の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング89がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の下室7側(図2の下側)に移動すると、Oリング89との接触部分は曲面部112と曲面部102となり、最もOリング89が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
【0054】
なお、減衰力可変機構45は、例えばハウジング本体83内に曲面部102の位置までOリング89を挿入し、これらハウジング本体83およびOリング89の内側にフリーピストン87を嵌合して、蓋部材82をハウジング本体83に螺合させることにより、組み立てられることになる。そして、このように予め組み立てられた減衰力可変機構45がピストンロッド10の取付軸部15のオネジ80にメネジ81を螺合させて取り付けられることになり、その際に、ハウジング85の蓋基板部92がバルブ規制部材77aに当接することになる。減衰力可変機構45の外径つまりハウジング85の外径は、シリンダ1の内径よりも流路抵抗とならない程度に小さく設定されている。
【0055】
ピストンロッド10には、主軸部16のピストン5の近傍位置に、径方向に沿う通路穴125が形成されており、この通路穴125に連通し取付軸部15側の先端部に開口する、通路穴125より大径の通路穴126が軸方向に沿って形成されている。通路穴125,126が、ピストンロッド10に設けられるロッド通路127を構成している。このロッド通路127は、ピストンロッド10、蓋内筒部91および蓋先板部95で囲まれた室128と、オリフィス94とを介して、上室6をハウジング85内に形成された圧力室130に連通させる。ハウジング85に形成されたオリフィス94は、ロッド通路127の圧力室側開口129に、室128を介して連通することになり、その最小径部94Cで規定される通路面積が、ロッド通路127および室128のいずれの位置の通路面積よりも狭くなっている。圧力室130は、ハウジング85とOリング89とフリーピストン87とによって画成されている。
【0056】
そして、第1実施形態において、フリーピストン87の中心にあるシャッタ部109は、ハウジング85の中心にあるオリフィス94と中心軸を一致させており、オリフィス94内に進入可能となっている。図2に示すようにフリーピストン87がハウジング85に対する移動範囲の中央である移動中央位置に位置するとき、シャッタ部109は、円筒面部119の先端テーパ面部120側の端部と、オリフィス94の最小径部94Cとの軸方向位置を合わせている。
【0057】
フリーピストン87がハウジング85内で摺動し、蓋部材82側に移動すると、フリーピストン87のシャッタ部109がオリフィス94に進入する。シャッタ部109が、円筒面部119の軸方向位置をオリフィス94の最小径部94Cに合わせた状態では、ロッド通路127を一定の最小通路面積に狭める。また、この状態からフリーピストン87が蓋部材82とは反対側に移動すると、円筒面部119と先端テーパ面部120との境界の軸方向位置をオリフィス94の最小径部94Cと一致させた後に、フリーピストン87は、その移動距離に応じてシャッタ部109の先端テーパ面部120をオリフィス94のテーパ穴94Aの内周面から離間させオリフィス94の通路面積を広げながら移動する。そして、シャッタ部109は、オリフィス94から所定距離以上離間すると、オリフィス94を最小径部94Cによる一定の最大通路面積で開口させる。このように、シャッタ部109は、フリーピストン87のハウジング85に対する位置によってオリフィス94の通路面積を調整することになる。
【0058】
よって、シャッタ部109およびオリフィス94は、ハウジング85内でフリーピストン87が軸方向の一側である蓋部材82側に移動しシャッタ部109をオリフィス94に進入させた状態で、圧力室130および上室6のロッド通路127を介しての連通の通路面積を狭めることになる。この状態では、圧力室130と上室6との油液の流通が制限されることになり、フリーピストン87のハウジング85に対する移動が抑制される。つまり、ハウジング85のオリフィス94とフリーピストン87のシャッタ部109とが、ハウジング85内でフリーピストン87が軸方向の一側である蓋部材82側に移動したときに、フリーピストン87の移動を抑制する移動抑制機構135を構成している。移動抑制機構135は、上記したようにフリーピストン87のハウジング85に対する位置によってオリフィス94の通路面積を調整することになり、ロッド通路127に連通するオリフィス94の通路面積を可変とする可変オリフィスとしても機能する。
【0059】
ここで、オリフィス94の通路面積は、フリーピストン87のハウジング85に対する位置を横軸に、通路面積を縦軸にとると、図3に示す特性となっている。つまり、フリーピストン87のハウジング85に対する可動範囲Aのうち、フリーピストン87がピストンロッド10から所定距離以上離れ、シャッタ部109をオリフィス94から所定距離以上離す一端領域a1〜a2では、オリフィス94の通路面積は、全開の最小径部94Cで規定される最大の一定値となる。そして、移動中央位置a3を含む、中間領域a2〜a4では、フリーピストン87がピストンロッド10に近接し、シャッタ部109をオリフィス94に近接させるほど、比例的にオリフィス94の通路面積が小さくなるように変化する。さらに、フリーピストン87がピストンロッド10に所定距離以下まで近接し、シャッタ部109をその円筒面部119が最小径部94Cに軸方向に重なるまでオリフィス94に挿入させる他端領域a4〜a5では、オリフィス94の通路面積は、円筒面部119と最小径部94Cとの径差で規定される最小の一定値となる。図2に示す移動抑制機構135は、フリーピストン87のハウジング85に対する変位が大きくなる、緩衝器への低周波振動の入力時に、オリフィス94の通路面積が最小となる縮み行程から伸び行程への反転前後でフリーピストン87のハウジング85に対する移動を抑制する。
【0060】
以上を言い換えれば、フリーピストン87には、ロッド通路127に連通するオリフィス94の開口面積をフリーピストン87の移動に応じて調整するシャッタ部109が設けられている。また、シャッタ部109は、フリーピストン87から突出し、オリフィス94に進入可能な形状となっている。
【0061】
上記したロッド通路127は、上室6および下室7のうちの一方である上室6に連通されて、ピストン5の上室6側への移動によりシリンダ1内の上室6から油液を、室128およびオリフィス94を介して圧力室130に流す。そして、移動抑制機構135は、この圧力室130と直列に設けられている。フリーピストン87とハウジング85との間に設けられたOリング89は、このときのフリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する。つまり、Oリング89は、フリーピストン87がハウジング85に対し圧力室130を拡大する伸び側に移動するときに弾性力を発生する。
【0062】
ここで、ピストンロッド10が伸び側に移動する伸び行程では、上室6から通路40aを介して下室7に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、上室6から通路40aに導入された油液が、基本的に、シート部71aとシート部71aに当接するディスク75aとの間に形成された常時開口の固定オリフィス78aを介して下室7に流れ、その際にオリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、上室6から通路40aに導入された油液が、基本的にディスク75aを開きながらディスク75aとシート部71aとの間を通って下室7に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0063】
ピストンロッド10が縮み側に移動する縮み行程では、下室7から通路40bを介して上室6に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、下室7から通路40bに導入された油液が、基本的に、シート部71bとシート部71bに当接するディスク75bとの間に形成された常時開口の固定オリフィス78bを介して上室6に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、下室7から通路40bに導入された油液が、基本的にディスク75bを開きながらディスク75bとシート部71bとの間を通って上室6に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0064】
ここで、ピストン速度が遅いとき、つまり微低速域(例えば0.05m/s)の周波数が比較的高い領域(例えば7Hz以上)は、例えば路面の細かな表面の凹凸から生じる振動であり、このような状況では減衰力を下げるのが好ましい。また、同じくピストン速度が遅いときであっても、上記とは逆に周波数が比較的低い領域(例えば2Hz以下)は、いわゆる車体のロールによるぐらつき等の振動であり、このような状況では減衰力を上げるのが好ましい。
【0065】
これに対応して、上記した減衰力可変機構45が、ピストン速度が同じように遅い場合でも、周波数に応じて減衰力を可変とする。つまり、ピストン速度が遅い時、ピストン5の往復動の周波数が高くなると、その伸び行程では、上室6の圧力が高くなって、ピストンロッド10のロッド通路127を介して減衰力可変機構45の圧力室130に上室6から油液を導入させながら、フリーピストン87が軸方向の下室7側にあるOリング89の付勢力に抗してハウジング85に対して軸方向の下室7側に移動する。このようにフリーピストン87が軸方向の下室7側に移動することにより、オリフィス94の通路面積に応じて圧力室130に上室6から油液を導入することになり、上室6から通路40aに導入され減衰バルブ41aを通過して下室7に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。このように、フリーピストン87は、ピストン5の移動により圧力室130の容積を可変にする。
【0066】
続く縮み行程では、下室7の圧力が高くなるため、オリフィス94の通路面積に応じて、ロッド通路127を介して圧力室130から上室6に油液を排出させながら、それまで軸方向の下室7側に移動していたフリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の上室6側に移動する。このようにフリーピストン87が軸方向の上室6側に移動することにより、下室7の容積を拡大することになり、下室7から通路40bに導入され減衰バルブ41bを通過して上室6に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
【0067】
ピストン5の周波数が高い領域では、フリーピストン87の移動の周波数も追従して高くなり、その結果、上記した伸び行程の都度、上室6から圧力室130に油液が流れ、縮み行程の都度、下室7の容積がフリーピストン87の移動の分拡大することになって、上記のように、減衰力が下がった状態に維持されることになる。
【0068】
他方で、ピストン速度が遅い時、ピストン5の周波数が低くなると、フリーピストン87の移動の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、上室6から圧力室130に油液が流れるものの、その後はフリーピストン87がOリング89を圧縮してハウジング85に対して軸方向の下室7側で停止し、上室6から圧力室130に油液が流れなくなるため、上室6から通路40aに導入され減衰バルブ41aを通過して下室7に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
【0069】
続く縮み行程でも、その初期に、下室7の容積がハウジング85に対するフリーピストン87の移動の分拡大することになるものの、その後はフリーピストン87がハウジング85に対し軸方向の上室6側で停止し、下室7の容積に影響しなくなるため、下室7から通路40bに導入され減衰バルブ41bを通過して上室6に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
【0070】
そして、本実施形態においては、上記したように、フリーピストン87に付勢力を与える部品としてゴム材料からなるOリング89を用いており、フリーピストン87がハウジング85に対する移動中央位置にあるとき、Oリング89が、ハウジング本体83の大径円筒面部103と、フリーピストン87の小径円筒面部111との間に位置する。
【0071】
この移動中央位置から例えば伸び行程では、上室6の圧力上昇によりロッド通路127を介して上室6から圧力室130に油液が流れ、フリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の下室7側に移動する。すると、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部111とがOリング89を、相互間で転動つまり内径側と外径側とが逆方向に移動するように回転させてハウジング85に対して軸方向の下室7側に移動させることになり、その後、ハウジング85の曲面部102の軸方向の上室6側と、フリーピストン87の曲面部112の軸方向の下室7側とが、Oリング89を転動させながらフリーピストン87の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング85の曲面部102の軸方向の下室7側と、フリーピストン87の曲面部112の軸方向の上室6側とが、Oリング89をフリーピストン87の軸方向および径方向に圧縮する。Oリング89の弾性力によって、フリーピストン87は、ハウジング85に対する移動が抑制される。つまり、ハウジング85内でフリーピストン87が軸方向の他側である下室7側に移動したときに、フリーピストン87とハウジング85との間のOリング89がフリーピストン87の移動を抑制し、その後に規制する。
【0072】
このとき、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部111との間でOリング89を転動させる領域と、ハウジング85の曲面部102とフリーピストン87の曲面部112との間でOリング89を転動させる領域とが、フリーピストン87の移動領域のうち下流側端部から離間した位置において、Oリング89が転動する転動領域であり、下流側端部から離間した位置において、Oリング89がフリーピストン87の移動方向にハウジング85とフリーピストン87と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング89の少なくともフリーピストン移動方向下流端位置(図2における下端位置)が移動することを言う。
【0073】
また、ハウジング85の曲面部102とフリーピストン87の曲面部112との間でOリング89を圧縮する領域が、フリーピストン87の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング89をフリーピストン87の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング89のフリーピストン移動方向上流端位置(図2における上端位置)が移動し、下流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。以上により、Oリング89は、移動方向変形領域において移動方向につぶされる。
【0074】
続く縮み行程では、下室7の圧力上昇によりロッド通路127を介して圧力室130から上室6に油液が流れ、フリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の上室6側に移動すると、ハウジング85の曲面部102の軸方向の下室7側と、フリーピストン87の曲面部112の軸方向の上室6とが、Oリング89の圧縮を解除し、続いて、ハウジング85の曲面部102の軸方向の上室6側と、フリーピストン87の曲面部112の軸方向の下室7側とが、Oリング89を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部111とがOリング89を、相互間で転動させながらハウジング85に対して軸方向の上室6側に移動させることになる。
【0075】
このフリーピストン87の軸方向の上室6側への移動の中間期から後期に、シャッタ部109がオリフィス94を徐々に狭め、最終的にはオリフィス94を最小面積に狭めることになって、ロッド通路127を介する圧力室130から上室6への油液の流れを抑制し、その結果、フリーピストン87のハウジング85に対する移動を抑制する。
【0076】
上記に続く伸び行程では、上室6の圧力上昇によりロッド通路127を介して上室6から圧力室130に油液が流れ、フリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の下室7側に移動する。この移動初期に、フリーピストン87がハウジング85に対して所定位置に移動するまでは、シャッタ部109がオリフィス94を最小面積に狭めた状態を維持しており、移動抑制機構135がフリーピストン87のハウジング85に対する移動を抑制している。その後、シャッタ部109がオリフィス94を徐々に広げ、所定位置からは最大面積に広げることになって移動抑制機構135によるフリーピストン87のハウジング85に対する移動抑制を解除する。よって、行程反転後の伸び行程の初期は、移動抑制機構135によってフリーピストン87がハウジング85に対し移動が抑制された状態が維持される。この伸び行程においては、Oリング89を、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部111とが、相互間で転動させてハウジング85に対して軸方向の下室7側に移動させることになる。
【0077】
ここで、ゴム材料からなるOリング89によるフリーピストン87の変位に対する荷重の特性は、非線形の特性となる。つまり、フリーピストン87の移動中央位置の前後の所定範囲では線形に近い特性となり、この範囲を超えると、変位に対して滑らかに荷重の増加率が増大するようになる。上記のように、ピストン5の作動周波数が高い領域では、ピストン5の振幅も小さいため、フリーピストン87の変位も小さくなり、移動中央位置前後の線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン87は動きやすくなり、ピストン5の振動に追従して振動して減衰バルブ41a,41bの発生する減衰力の低減に寄与する。
【0078】
他方で、ピストン5の作動周波数が低い領域では、ピストン5の振幅が大きくなるため、フリーピストン87の変位が大きくなり、伸び行程においては非線形の特性範囲で動作することになる。これにより、伸び行程においてフリーピストン87は徐々に滑らかに、動き難くなり、減衰バルブ41aの発生する減衰力を低減し難くなる。また、縮み行程においてフリーピストン87の変位が大きくなるとシャッタ部109がロッド通路127に連通するオリフィス94を狭めることになり、フリーピストン87は徐々に滑らかに、動き難くなり、減衰バルブ41bの発生する減衰力を低減し難くなる。
【0079】
第1実施形態においては、減衰力可変機構45に、上記したように、フリーピストン87のハウジング85に対する変位が大きくなる、緩衝器への低周波振動の入力時の縮み行程から伸び行程への反転前後でオリフィス94の通路面積を狭めるシャッタ部109を含む移動抑制機構135が設けられている。このため、シャッタ部109が設けられていない場合と比べて、縮み行程から伸び行程への反転初期において減衰力が高い状態を維持できるようになっている。
【0080】
つまり、移動抑制機構135は、フリーピストン87がピストンロッド10側に移動する縮み行程の後期に、シャッタ部109の先端テーパ面部120をオリフィス94のテーパ穴94Aの内周面に徐々に近接させてロッド通路127を狭め、所定位置からは最小面積に狭めることになる。このため、続く伸び行程の初期においては、シャッタ部109がロッド通路127に連通するオリフィス94を最小面積に狭めた状態となっており、その後、伸び行程の進行に所定位置からテーパ穴94Bの内周面から離れ、オリフィス94を徐々に最大通路面積まで開くことになる。その結果、伸び行程の初期において、上記のようにロッド通路127に連通するオリフィス94が狭められていることから、上室6から圧力室130への油液の流れが抑制されることになり、フリーピストン87のハウジング85に対する移動が抑制され遅れを生じることになる。
【0081】
よって、行程反転後の伸び行程の初期においては、相対的に、上室6から通路40aに導入され減衰バルブ41aを通過して下室7に流れる油液の流量が増えることになって、減衰力が上がる。そして、伸び行程がさらに進行すると、シャッタ部109が離間してオリフィス94は最大の通路面積となり、減衰力可変機構45は、移動抑制機構135を設けない状態と同様に作動する。
【0082】
以上に述べた第1実施形態によれば、シリンダ1内の上室6と、ハウジング85内のフリーピストン87によって画成された圧力室130とを連通するロッド通路127を形成し、フリーピストン87によって圧力室130の容量を可変とすることで減衰力を可変とし、その上で、フリーピストン87に、ロッド通路127に連通するオリフィス94の開口面積をフリーピストン87の移動に応じて調整するシャッタ部109を設けている。このため、減衰力特性を一層詳細に制御可能となる。特に、ハウジング85およびフリーピストン87に、ハウジング85内でフリーピストン87が軸方向の一側である上室6側に移動したときに、フリーピストン87の移動を抑制する移動抑制機構135が設けられているため、この移動抑制機構135が、縮み行程から伸び行程への行程反転時にロッド通路127に連通するオリフィス94の開口面積をシャッタ部109によって狭めることで、行程反転後のフリーピストン87のハウジング85に対する変位を遅らせて、伸び行程への反転初期の減衰力を高めることができる。したがって、シャッタ部109を設けない場合に生じる、減衰力の行程反転初期の立ち上がり悪化に起因したハンドリングの応答性の悪化を防止し、縮み行程から伸び行程への行程反転時の応答性を高めることができ、ハンドリングの応答性向上と、操縦安定性向上とを図ることができる。
【0083】
また、ハウジング85およびフリーピストン87に、ハウジング85内でフリーピストン87が一側に移動したときに、フリーピストン87の移動を抑制する移動抑制機構135が設けられ、フリーピストン87とハウジング85との間には、ハウジング85内でフリーピストン87が軸方向の他側である下室7側に移動したときに、フリーピストン87の移動を規制するOリング89が設けられている。よって、ピストン5の作動周波数に感応して減衰力を変化させる場合に円滑に変化させることができる。
【0084】
さらに、移動抑制機構135が、ハウジング85に形成されロッド通路127の圧力室側開口129と連通するオリフィス94と、フリーピストン87に設けられオリフィス94の開口面積をフリーピストン87の移動に応じて調整するシャッタ部109とからなり、開口面積で変化する流体の流動性を利用してフリーピストン87のハウジング85に対する移動を抑制する。このため、弾性体を設けなくても、フリーピストン87がハウジング85に対し蓋部材82側に移動した場合のフリーピストン87の蓋部材82への当接の衝撃を緩和することができる。よって、過渡的な減衰力波形となることを抑制でき、メタルタッチの衝突に起因する異音の発生を抑制できる。その結果、フリーピストン87が蓋部材82側に移動したときにフリーピストン87の移動を規制するOリングとこれを圧縮する構造部とが不要となるため、部品点数の低減と軸方向長さの短縮化とが図れる。
【0085】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図4に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0086】
第2実施形態においては、図4に示すように、第1実施形態に対し部分的変更を行った減衰力可変機構45が用いられている。
【0087】
第2実施形態の減衰力可変機構45は、まず、ハウジング85の蓋部材82が一部相違している。つまり、第2実施形態の蓋部材82は、蓋基板部92と蓋内筒部91との間に、外径が蓋基板部92よりも小径の段部140が形成されており、この段部140の外周面に、ハウジング本体83のメネジ104に螺合するオネジ98が形成されている。そして、段部140の軸方向の蓋基板部92とは反対側に円環状の凸部141が形成されている。
【0088】
また、第2実施形態の減衰力可変機構45は、フリーピストン87が一部相違している。つまり、第2実施形態のフリーピストン87は、ピストン筒部106の内周側に第1実施形態のテーパ面部116が形成されず、全長にわたって円筒面部115が形成されている。軸方向の外側環状突起108側の端面に、上記凸部141を進入可能とする円環状の凹部142が形成されており、凹部142の底部にはさらに凹む円環状の保持溝143が形成されている。そして、保持溝143には、角リング状のストッパリング144が嵌合固定されている。ストッパリング144は、ゴム材料からなる弾性体であり、凹部142の底面よりも突出している。ストッパリング144は、フリーピストン87の凸部141に当接して、フリーピストン87の蓋部材82へのメタルタッチでの当接を規制する。
【0089】
移動抑制機構135によるフリーピストン87の蓋部材82側への移動の抑制は、フリーピストン87の移動速度に依存し、微低速かつ低周波の入力の場合に、フリーピストン87が蓋部材82に当接してしまう可能性がある。これに対し、上記した第2実施形態によれば、ストッパリング144によってフリーピストン87の蓋部材82への当接を規制することができる。したがって、フリーピストン87の移動速度によらず、フリーピストン87の蓋部材82への当接時の衝撃を緩和することができる。よって、過渡的な減衰力波形となることを一層抑制でき、メタルタッチの衝突に起因する異音の発生を一層抑制できる。
【0090】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図5に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0091】
第3実施形態においては、図5に示すように、第1実施形態に対し部分的変更を行った減衰力可変機構45が用いられている。
【0092】
第3実施形態の減衰力可変機構45では、Oリングからなるストッパリング150が、ハウジング本体83の大径円筒面部103に嵌合するように、蓋部材82の蓋外筒部93とフリーピストン87の外側環状突起108との間に配置されている。ストッパリング150は、蓋部材82の蓋外筒部93に接触するように配置されている。そして、このストッパリング150の分、ハウジング本体83の軸方向長さが長くされており、蓋部材82も蓋内筒部91の軸方向長さが長くされている。ストッパリング150は、フリーピストン87の外側環状突起108に当接して、フリーピストン87の蓋部材82へのメタルタッチの当接を規制する。
【0093】
このような第3実施形態によれば、ストッパリング150によって、第2実施形態と同様、フリーピストン87の蓋部材82への当接を規制することができる。したがって、フリーピストン87の移動速度によらず、フリーピストン87の蓋部材82への当接時の衝撃を緩和することができる。よって、過渡的な減衰力波形となることを一層抑制でき、メタルタッチの衝突に起因する異音の発生を一層抑制できる。
【0094】
「第4実施形態」
次に、第4実施形態を主に図6に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0095】
第4実施形態においては、図6に示すように、第1実施形態に対し部分的変更を行った減衰力可変機構45が用いられている。
【0096】
第4実施形態の減衰力可変機構45は、蓋部材82に第1実施形態のオネジ98がなく、ハウジング本体83のメネジ104もない。代わりに、ハウジング85の蓋部材82の蓋基板部92の蓋外筒部93よりも外側部分をハウジング本体83の内側環状突起100とは反対側に嵌合させて、ハウジング本体83を加締めることで、ハウジング本体83に蓋部材82を固定している。このため、固定構造部の軸方向長さが螺合よりも短くなり、その結果、ハウジング本体83の蓋内筒部91および蓋外筒部93の軸方向長さが短く、シャッタ部109の軸方向長さも短くなっている。
【0097】
このような第4実施形態によれば、ハウジング本体83に蓋部材82を加締めにより固定しているため、上記したように、減衰力可変機構45の軸方向長さを短縮できる。また、ハウジング本体83および蓋部材82の固定に要するコストを低減できるとともに、これらの固定時の状態を良好に維持することができる。
【0098】
「第5実施形態」
次に、第5実施形態を主に図7に基づいて第4実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第4実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0099】
第5実施形態においては、図7に示すように、第4実施形態に対し部分的変更を行った減衰力可変機構45が用いられている。
【0100】
第5実施形態の減衰力可変機構45は、フリーピストン87の内周側の円筒面部115とテーパ面部116との間に、円筒面部115の軸方向のピストン閉板部107とは反対側に繋がるテーパ面部160と、テーパ面部160の軸方向のピストン閉板部107とは反対側に繋がるテーパ面部161とを有している。テーパ面部160のテーパは、テーパ面部116のテーパよりも小さく、テーパ面部161のテーパは、テーパ面部116のテーパよりも大きくなっている。
【0101】
また、蓋内筒部91の蓋基板部92とは反対の外側には、第4実施形態の面取り99が形成されていない。加えて、オリフィス94は、一定径となっている。そして、蓋内筒部91の円筒状の外周面と、フリーピストン87の内周側のテーパ面部160および円筒面部115とによって移動抑制機構163が形成されている。移動抑制機構163は、フリーピストン87が蓋部材82から所定距離以上離れると、上室6と圧力室130とをオリフィス94の通路面積で連通させることになり、フリーピストン87が蓋部材82に所定距離以下まで近づくと、蓋内筒部91の外周面とフリーピストン87のテーパ面部160との径差による通路面積を、フリーピストン87が蓋部材82に近づくほど狭めるようになっており、第1実施形態の移動抑制機構135と同様に作動する。
【0102】
このような第5実施形態によれば、第4実施形態の軸状のシャッタ部109を設ける必要がなくなるため、フリーピストン87の製造が容易となり、コストを低減できる。
【0103】
上記各実施の形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、シリンダの外周に外筒を設けないモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。
【0104】
なお、上記実施の形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
さらに、上記各実施形態では、抵抗要素である弾性体としてOリングを1個の例を示したが、必要に応じて同様の技術思想で、2個以上としてもよい。
また、上記各実施形態では、抵抗要素である弾性体としてゴム(樹脂)製のリングを用いた例を示したが、ゴム製の球を周方向に間隔をもって複数も設けてもよく、また、本発明に用いることのできる弾性体は、一の軸方向に弾性を有するものではなく、複数の軸方向に対して弾性を有するものであれば、ゴムでなくともよい。例えば、金属製のばねとすれば、耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 シリンダ
5 ピストン
6 上室(ロッド側室)
7 下室(ボトム側室)
10 ピストンロッド
40a,40b 通路
41a,41b 減衰バルブ
85 ハウジング
87 フリーピストン
89 Oリング(弾性体)
94 オリフィス
109 シャッタ部
127 ロッド通路
129 圧力室側開口
130 圧力室
135,163 移動抑制機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、
前記ピストンに一端が連結されると共に他端が前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの一端側に設けられたハウジングと、
前記ハウジング内に摺動自在に挿入されたフリーピストンと、
前記ロッド側室と前記ハウジング内の前記フリーピストンによって画成された圧力室とを連通するロッド通路と、
前記ロッド側室と前記ボトム側室とを連通する通路に設けられた減衰バルブとからなる緩衝器において、
前記ハウジングおよび前記フリーピストンには、前記ハウジング内で前記フリーピストンが一側に移動したときに、該フリーピストンの移動を抑制する移動抑制機構が設けられ、
前記フリーピストンと前記ハウジングとの間には、該ハウジング内で前記フリーピストンが他側に移動したときに、該フリーピストンの移動を規制する弾性体が設けられていることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記移動抑制機構は、
前記ハウジングに形成され、前記ロッド通路の圧力室側開口と連通するオリフィスと、
前記フリーピストンに設けられ、前記オリフィスの開口面積を前記フリーピストンの移動に応じて調整するシャッタ部と、からなることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50177(P2013−50177A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188781(P2011−188781)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】