説明

自動焦点調節装置

【課題】 例えばデジタルカメラ等の電子スチルカメラに設けられる自動焦点調節装置において、蛍光灯等の周期的雑音の影響による合焦点の誤検出を防止して、高精度にかつ高速に合焦点を検出する
【解決手段】 フォーカスレンズをサンプリング距離Ds毎に移送させ、検出された画像信号の高域周波数成分の積算値であるサンプルデータをサンプリング周期毎に取得する。現在取得されたサンプルデータP3 と、画像信号に重畳する雑音信号の周期とサンプリング周期とに基づいて算出された公倍サンプル数分だけ過去に取得されたサンプルデータP0 とを比較することによりフォーカスレンズの合焦点が高精度にかつ高速に検出される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子スチルカメラに設けられる自動焦点調節装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来撮像素子により検出された画像信号が輝度信号に変換され、この輝度信号の高域周波数成分が最大となるようにレンズ位置を調節する自動焦点調節装置として、特開平5−145826号公報に開示された装置が知られている。この公報の装置では、蛍光灯等の照明光源による周期的雑音が画像信号に重畳して、レンズの合焦点の検出精度が低下するのを防止するために、レンズ位置を変位させて、輝度信号の高域周波数成分の積算値(サンプルデータ)を取得するサンプリング周期と、周期的雑音の周期との最小公倍数が求められ、この最小公倍数の周期内に得られるサンプルデータの相加平均が算出される。例えば最小公倍数の周期内に3つのサンプルデータが取得されるとき、3つのサンプルデータが取得されて、その相加平均値が算出され、この相加平均値の算出の後、さらに3つのサンプルデータが取得され、その相加平均値が算出される。この前者の相加平均値と後者の相加平均値とを比較することにより、相加平均値の最大となる位置、すなわち合焦点が検出されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような自動焦点調節装置では、3つのサンプルデータが取得され、相加平均値が算出された後、3つのサンプルデータが取得されるまで、相加平均値の比較、すなわち合焦点の検出は行なわれず、1つのサンプルデータの取得毎に合焦点の検出を行うことは不可能である。したがって合焦点の検出に時間がかかってしまい、デジタルカメラ等の電子スチルカメラのように迅速な合焦点検出を要求される装置には適さないという問題があった。
【0004】本発明は、例えばデジタルカメラ等の電子スチルカメラに設けられる自動焦点調節装置において、蛍光灯等の周期的雑音の影響による合焦点の誤検出を防止して、高精度にかつ高速に合焦点を検出することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る自動焦点調節装置は、撮像素子により検出された画像信号から、サンプリング周期毎に得られるサンプルデータに基づいてレンズの焦点調節を行う自動焦点調節装置であって、現在得られた現在サンプルデータを、公倍サンプル数分だけ過去に得られた過去サンプルデータと比較して、合焦点を検出する合焦点検出手段を備え、サンプリング周期をTf、画像信号に重畳する雑音の雑音周期をTnとしたとき、M・Tf=N・Tnこの関係式の関係を満たす整数Mと整数Nを用いて、公倍サンプル数が定められることを特徴としている。
【0006】好ましくは、サンプルデータを記憶するための記憶手段が設けられ、公倍サンプル数に1だけ加算した数である比較可能数のサンプルデータが記憶手段に記憶されると、合焦点検出手段が現在サンプルデータと過去サンプルデータとを比較して、合焦点を検出する。
【0007】好ましくは、合焦点検出手段は現在サンプルデータと過去サンプルデータの大小関係が転じて、現在サンプルデータが過去サンプルデータより小さくなったことにより合焦点を検出する。さらに好ましくは、公倍サンプル数は整数Mである。また好ましくは、整数Mと整数Nは関係式を満たす最小の正の整数である。特に好ましくは、サンプリング周期としてNTSC方式のフィールド周期を用いるとき、整数Mは「3」に定められる。
【0008】好ましくは、雑音の雑音周期を検出する雑音周期検出手段が設けられ、雑音周期検出手段により検出された雑音周期に応じて、整数Mが変更可能である。さらに好ましくは、雑音周期検出手段により雑音周期が検出不可能である場合、または雑音周期検出手段により検出された雑音周期が標準範囲外であるとき、整数Mが「1」に定められる。
【0009】好ましくは、撮像素子とレンズとの相対位置を変位させるための相対位置変位手段が設けられ、この相対位置変位手段がサンプリング周期毎にサンプリング距離分だけ相対位置を変位させる。
【0010】好ましくは、相対位置変位手段は画像信号を検出するために撮像素子を露光する露光時間の間以外で、サンプリング距離分だけ相対位置を変位させる。さらに好ましくは、相対位置変位手段がサンプルデータが得られた後、サンプリング距離分だけ相対位置を変位させる。特に好ましくは、相対位置変位手段はパルスモータを有し、所定のパルス数をサンプリング距離に対応させ、パルスモータをパルス制御することにより相対位置を変位させる。
【0011】好ましくは、相対位置変位手段は撮像素子またはレンズを搬送することにより相対位置を変位させ、撮像素子またはレンズが配置される初期位置が撮像素子またはレンズが移動可能な範囲の略中心に定められる。さらに好ましくは、相対位置変位手段はレンズを移送するレンズ移送手段であり、レンズ移送手段によりレンズの移送される方向が反転されたとき、その反転の後、現在サンプルデータが過去サンプルデータより小さくなったことによって合焦点検出手段が合焦点を検出する。好ましくは、撮像素子またはレンズが配置される初期位置を選択するための初期位置選択手段が設けられる。
【0012】好ましくは、合焦点検出手段は合焦点を検出したとき、相対位置変位手段は撮像素子またはレンズを戻り距離だけ戻す。さらに好ましくは、戻り距離はサンプリング距離の戻りサンプリング数倍である。例えば戻りサンプリング数は戻りサンプリング数をRとし、整数Mを用いたとき、R=(M+1)/2この式の関係を満たす。
【0013】好ましくは、相対位置変位手段は戻りサンプリング数にサンプリング距離に対応する所定のパルス数を乗じた数以下の最大の整数個のパルス数分だけ、パルスモータを駆動することにより撮像素子またはレンズを戻り距離だけ戻す。また好ましくは、撮像素子またはレンズが移動可能な範囲はレンズの有効範囲より戻り距離の2倍だけ広い範囲である。特に好ましくは、現在サンプルデータが過去サンプルデータより大きく、相対位置変位手段が撮像素子またはレンズを広移動範囲の端部まで搬送しても、合焦点検出手段が合焦点を検出しなかったとき、相対位置変位手段が広移動範囲の端部から戻り距離だけ撮像素子またはレンズを戻す。好ましくは、サンプルデータが画像信号を変換することにより得られる輝度信号の高域周波数成分の積算値である。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の本実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の自動焦点調節装置であるデジタルカメラを示す斜視図である。
【0015】デジタルカメラ10は自動焦点調節機能を有している。デジタルカメラ10の正面10aには、レンズ鏡筒13が設けられ、レンズ鏡筒13には、変倍レンズ等の撮影レンズ群21が保持されている。デジタルカメラ10の内部で変倍レンズ群21には、後述する焦点調節を行うためのフォーカスレンズが組付けられている。このレンズ鏡筒13の近傍には、蛍光灯等の照明光源による雑音(フリッカ)を検出するための受光素子12が設けられる。
【0016】デジタルカメラ10の上面10bには、撮影した画像を表示するための液晶表示装置(LCD)11と、操作パネル15とが配設され、パネル15には、例えば撮影モード切替ボタン等のデジタルカメラ10を操作するための種々のスイッチボタンが設けられる。
【0017】図2を参照してデジタルカメラ10の電気的構成について説明する。図2はデジタルカメラ10を示すブロック図である。この自動焦点調節装置の動作は操作パネル15に設けられる種々のスイッチボタンを切替えることにより選択され、中央演算処理装置(CPU)40により制御される。
【0018】撮像素子(CCD)30の受光面に光学像を結像するための撮影光学系がデジタルカメラ10に設けられる。この撮影光学系は、撮影レンズ群21と、合焦点を調節するためのフォーカスレンズ22とにより構成される。フォーカスレンズ22はラック23aの形成されたステージ23に固定され、ラック23aに噛合するピニオン24がパルスモータ25に連結される。モータ駆動回路26のパルス制御によりパルスモータ25が駆動されるのに伴い、ステージ23が矢印A方向(無限端方向)または矢印B方向(至近端方向)に駆動され、フォーカスレンズ22が光軸方向に移送される。この移送によりフォーカスレンズ22とCCD30との相対位置が変位せしめられる。
【0019】なおフォーカスレンズ22の初期位置は、このレンズ22の移動可能な範囲の中心に定められる。ただし操作パネル15に設けられる撮影モード切替ボタンを切替えることにより選択された撮影モード(例えば遠景モード、人物モード等)に応じて、フォーカスレンズ22の初期位置は変更可能な構成としてもよい。
【0020】タイミング発生回路50の制御により、サンプリング周期毎に、フォーカスレンズ22がサンプリング距離分だけ移送され、CCD30により画像信号が読取られる。読取られた画像信号からサンプルデータが取得され、サンプルデータ値の変化傾向を検出することにより焦点が調節される。
【0021】詳述すると、被写体からの光は、撮影レンズ群21とフォーカスレンズ22とを介してCCD30により検出され、1画像分の画像に対応する画像信号に変換される。この画像信号は相関二重サンプリング(CDS)回路32においてリセット雑音を除去され、アンプ34により増幅され、アナログ/デジタル(A/D)変換器44においてアナログ画像信号からデジタル画像信号に変換される。デジタル画像信号は信号処理回路45においてシェーディング補正等の所定の処理を施され、信号処理回路45に設けられるバッファメモリに一旦格納される。
【0022】デジタル画像信号は信号処理回路45に設けられるバッファメモリから読み出され、このデジタル画像信号に基づく画像がLCD11に表示される。
【0023】またデジタルの画像信号は信号処理回路45に設けられるバッファメモリから読み出され、信号処理回路45において、デジタル輝度信号とデジタル色差信号とに変換され、色補正、ガンマ補正等の所定の処理を施される。このデジタル輝度信号の高域周波数成分が帯域通過フィルタ(BPF)により抽出され、積分回路42において、デジタルの輝度信号を構成する画素データのうち、画像の中央付近の画素データのみが累積加算され、サンプルデータが得られる。
【0024】以上のように高域周波数成分の画素データの積算値、すなわちサンプルデータがサンプリング周期毎に取得される。サンプルデータが最大となるとき、すなわち輝度信号の高域周波数成分が最も高い値を有するとき、フォーカスレンズ22は合焦点に位置するため、現在得られたサンプルデータ(現在サンプルデータ)と、過去に得られたサンプルデータ(過去サンプルデータ)との大小比較を行うことにより、フォーカスレンズ22の合焦点が検出される。
【0025】一方CCD30により検出された画像信号には、蛍光灯等の照明光源による周期的な雑音、すなわちフリッカが重畳されている。この周期的雑音が測光回路56に設けられる受光素子12(図1参照)により検出され、検出された雑音信号はA/D変換器57において、アナログ雑音信号からデジタル雑音信号に変換され、CPU40の制御に従って、雑音周期が算出される。この雑音周期に基づいて、周期的雑音信号の影響による合焦点の誤検出を防止するための公倍サンプル数(後述)が求められる。
【0026】なお信号処理回路45の出力信号であるデジタルの輝度信号とデジタルの色差信号とはエンコーダ41により例えばNTSC方式のビデオ信号に変換され、デジタル/アナログ(D/A)変換器44においてデジタルのビデオ信号からアナログのビデオ信号に変換され、家庭用テレビ等の外部装置へ出力される。
【0027】レンズ22が合焦点に配置された後、被写体からの光は、撮影レンズ群21とフォーカスレンズ22とを介してCCD30により検出され、1画像分の画像に対応する画像信号に変換される。この画像信号はCDS回路32においてリセット雑音を除去され、アンプ43により増幅され、A/D変換器44においてアナログ画像信号からデジタル画像信号に変換される。デジタルの画像信号は信号処理回路45においてシェーディング補正等の所定の処理を施され、信号処理回路45に設けられるバッファメモリに一旦格納される。さらにデジタルの画像信号は信号処理回路45に設けられるバッファメモリから読出され、記録回路46によりPCカード47に格納される。
【0028】図2、図3を参照して、先ず周期的雑音がサンプルデータに及ぼす影響について説明する。
【0029】雑音信号は、CCD30により検出される画像信号に重畳する雑音信号である。フィールドインデックス信号は、例えば家庭用テレビにビデオ信号を出力するためにデジタルカメラ10が有するNTSC方式のフィールドを示す信号であり、ハイレベル(符号F1)またはローレベル(符号F2)の周期TfがNTSC方式のフィールド周期である。
【0030】商用交流電源の周期がTA であるとき、雑音周期すなわち、雑音信号の周期Tnは周期TA の1/2である。サンプルデータを取得するためのサンプリング周期は、フィールドインデックス信号の周期の1/2であり、フィールド周期Tfである。
【0031】CCD露光信号はCCD30の露光を制御するための信号であり、フィールドインデックス信号が変化する毎にハイレベル(例えば符号E-2、E-1)になる信号である。この信号に基づいてCCD30が駆動される。すなわちCCD露光信号がフィールド周期Tf毎にハイレベル(例えば符号E-2、E-1)である間だけ、すなわち時間Te の間だけCCD30は露光され、CCD30により画像信号が検出される。
【0032】サンプリング周期Tfと雑音周期Tnとは異なるため、CCD30により検出される雑音信号(例えば斜線部L1、L2、L3)は、CCD30が露光された時刻(例えば符号t-2、t-1、t0 )に対応して周期的に変化する。したがってCCD30により検出された画像信号から抽出したサンプルデータが雑音信号の影響を受け変動する。このため雑音信号の影響を受けないように、上述のフォーカスレンズ22の合焦点を検出する必要がある。
【0033】雑音信号の影響を受けないようにするために、雑音周期をTn、サンプリング周期をTfとしたとき、(1)式を満たす最小の整数M、Nが求められる。
M・Tf=N・Tn ・・・(1)
すなわち雑音周期Tnとサンプリング周期Tfとの最小公倍数の周期M・Tfが求められる。この最小公倍数の周期M・Tf毎に、CCD30により検出される雑音信号(例えば斜線部L1、L4)が同一になる。したがって最小公倍数の周期M・Tf毎のサンプルデータを比較することにより、雑音信号の影響を受けずにフォーカスレンズ22の合焦点が検出される。ここでサンプルデータが周期Tf毎に得られるため、現在得られた現在サンプルデータと、現在サンプルデータより整数M(すなわち公倍サンプル数M)分だけ過去に得られた過去サンプルデータとが比較される。
【0034】なお商用交流信号が50Hzであるとき、雑音周期Tnは10msecである。NTSC方式のフィールド周期Tfは1/60sec である。この雑音周期Tnとフィールド周期Tfとから(1)式を満たす公倍サンプル数Mを算出すると、公倍サンプル数Mは「3」である。以下公倍サンプル数Mが「3」である場合を例に説明する。
【0035】次に図1、図3、図4を参照して、合焦点の検出方法について説明する。図4はサンプリング距離毎に取得されるサンプルデータの値を示す図であり、フォーカスレンズ22の合焦点が初期位置D0 に対して無限端側にある場合の一例を示す図である。曲線X1は例えば斜線部L1、L4の雑音信号が重畳されているときのサンプルデータの値を示し、曲線X2は例えば斜線部L2、L5の雑音信号が重畳されているときのサンプルデータの値を示し、曲線X3は例えば斜線部L3、L6の雑音信号が重畳されているときのサンプルデータの値を示す。なお各曲線X1、X2、X3の最大となる位置が合焦点である。
【0036】CCD露光信号、画素データ算出信号、サンプルデータ取得信号およびフォーカスレンズ駆動信号は、タイミング発生回路50により発生される。CCD露光信号はフィールド周期Tf毎に露光時間Teの間だけCCD30を露光するための信号である。画素データ積算信号は画素データの積算値を算出するための信号であり、積分回路42を駆動するための信号である。サンプルデータ取得信号はフィールド周期Tf毎にサンプルデータを取得するための信号である。フォーカスレンズ駆動信号はフォーカスレンズ22を移送するための信号であり、この信号に基づいてCPU40がモータ駆動回路26を駆動させる。
【0037】自動焦点調節を開始すると、フォーカスレンズ駆動信号がハイレベル(符号R0 )となり、フォーカスレンズ22が移動され、図4に示すフォーカスレンズ22の移動可能な範囲Daの中心、すなわち初期位置D0 に配置される。
【0038】CCD露光信号がハイレベル(符号E0 )になると、この信号がハイレベルの間TeだけCCD30が露光され、画像信号が検出される。検出された画像信号がBPF43により高域周波数成分を抽出され、画素データ積算信号がハイレベル(符号S0 )になったとき、積分回路42において画素データが積算される。画素データ積算信号がフィールドインデックス信号により示されるフィールドの中央付近でハイレベル(符号S0 )になるため、抽出信号を構成する画素データのうち、中央付近の画素データのみが積算される。画素データの積算が行なわれた直後、サンプルデータ取得信号がハイレベル(例えば符号A0 )になり、中央付近の画素データの積算値がサンプルデータP0 としてCPU40に取込まれる。
【0039】サンプルデータP0 が取得された後、次にCCD露光信号がハイレベル(符号E1 )になるまでの間に、フォーカスレンズ駆動信号がハイレベル(符号R1 )になり、モータ駆動回路26が駆動され、所定のパルス数分だけパルスモータ25が回動され、フォーカスレンズ22が図4に示す無限端方向にサンプリング距離Dsだけ移送される。すなわちフォーカスレンズ22は位置D1 に配置される。
【0040】フォーカスレンズ22が位置D1 に配置された状態で、再びCCD露光信号がハイレベル(符号E1 )になると、上述のように、この信号がハイレベルの間TeだけCCD30が露光され、画像信号が検出され、この信号の高域周波数成分がBPF43により抽出され、画素データ積算信号がハイレベル(符号S1 )になると、積分回路42において抽出信号を構成する画素データのうち、中央付近の画素データのみが積算される。画素データの積算が行なわれた直後、サンプルデータ取得信号がハイレベル(例えば符号A1 )になり、中央付近の画素データの積算値がサンプルデータP1 としてCPU40に取込まれる。
【0041】現在得られた現在サンプルデータP1 と過去に得られた過去サンプルデータP0 とでは、CCD30により検出される雑音信号(斜線部L1、L2)が異なるため、このサンプルデータP1 とサンプルデータP0 とは比較されない。
【0042】サンプルデータP1 が取得された後、サンプルデータP1 の取得と同様に、サンプルデータP2 、P3 が取得される。ここで図3に示すフォーカスレンズ駆動信号のハイレベル(符号R2 、R3 )、CCD露光信号のハイレベル(符号E2、E3 )、画素データ積算信号のハイレベル(符号S2 、S3 )、サンプルデータ取得信号(符号A2 、A3 )については、サンプルデータP1 の取得と同様であるため説明は省略する。
【0043】サンプルデータP3 が取得されたとき、現在得られた現在サンプルデータP3より公倍サンプル数M分だけ過去に得られた過去サンプルデータP0 が存在し、現在サンプルデータP3 と、過去サンプルデータP0 とは重畳される雑音信号(斜線部L1と斜線部L4)が同一である。したがってサンプルデータP3 が取得されると、サンプルデータ比較信号がハイレベル(符号C1)になり、現在サンプルデータP3 と過去サンプルデータP0 とが大小比較される。
【0044】一方フォーカスレンズ22が合焦点に近づくとき、サンプルデータは増加する傾向があり、フォーカスレンズ22が合焦点から遠ざかるとき、サンプルデータは減少する傾向がある。ここで現在サンプルデータP3 は過去サンプルデータP0 より大きいので、フォーカスレンズ22は合焦点に近づいている。したがってサンプルデータP0 、P3 の比較が行われた後、次にCCD露光信号がハイレベル(符号E4 )になるまでの間に、フォーカスレンズ駆動信号がハイレベル(符号R4)になり、フォーカスレンズ22が無限端方向にサンプリング距離Dsだけ移送され、フォーカスレンズ22が位置D4 に配置される。
【0045】フォーカスレンズ22が位置D4 に配置された状態で、上述のようにサンプルデータP4 が取得され、サンプルデータ比較信号がハイレベル(符号C2 )になり、現在サンプルデータP4 と過去サンプルデータP1 とが比較される。ここでCCD露光信号のハイレベル(符号E4 )、画素データ信号のハイレベル(符号S4 )、サンプルデータ取得信号(符号A4 )については、サンプルデータP1の取得と同様であるので省略する。
【0046】図4に示すように現在サンプルデータP4 は過去サンプルデータP1 より大きいため、フォーカスレンズ駆動信号がハイレベル(符号R5 )になり、フォーカスレンズ22が無限端方向にサンプリング距離Dsだけ移送され、フォーカスレンズ22が位置D5 に配置される。
【0047】フォーカスレンズ22が位置D5 に配置された状態で、サンプルデータP1 の取得と同様に、CCD露光信号がハイレベル(符号E5 )になり、CCD30が露光され、画像信号が検出された後、サンプルデータ算出信号がハイレベル(符号S5 )になると、積分回路42において検出された画像信号を構成する画素データの積算が行なわれ、その直後、サンプルデータ取得信号がハイレベル(例えば符号A5 )になり、中央付近の画素データの積算値がサンプルデータP5 としてCPU40に取込まれる。
【0048】サンプルデータP5 が得られると、サンプルデータ比較信号がハイレベル(符号C3 )になり、現在サンプルデータP5 と過去サンプルデータP2 とが大小比較される。図4に示すように現在サンプルデータP5 は過去サンプルデータP2より小さくなり、サンプルデータの大小関係が反転する。すなわちフォーカスレンズ22は合焦点を通過した状態である。したがってフォーカスレンズ駆動信号が、ハイレベル(符号R6 )になり、フォーカスレンズ22が戻り距離Drだけ至近端方向に移送される。
【0049】戻り距離Drは、サンプリング距離Dsの戻りサンプリング数倍である。戻りサンプリング数をR、公倍サンプル数をMとしたとき、(2)式により求められる。
R=((M+1)/2) ・・・(2)
この戻り距離は種々の公倍サンプル数Mについて模式図によるシュミレーションに基づき定められた。図4では、公倍サンプル数Mが「3」であるので、戻りサンプリング数は「2」であり、フォーカスレンズ22は位置D5 から位置D3 (すなわち合焦点)まで移送される。
【0050】なおフォーカスレンズ22の合焦点の検出において、フォーカスレンズ22の合焦点通過が検出され、フォーカスレンズ22が戻り距離Drだけ戻されることによりフォーカスレンズ22が合焦点に配置されるため、フォーカスレンズ22の移動可能な範囲Daは、フォーカスレンズ22がCCD30の受光面上に結像可能な有効焦点範囲Dbの両端から戻り距離Dsずつ広げた範囲である。
【0051】図5、図6、図7には、フォーカスレンズ22の合焦点が図4に示す合焦点と異なる位置にあるものの一例が示してある。以下図4に示す例と異なる点についてのみ説明する。
【0052】図5に示すようにフォーカスレンズ22の合焦点、すなわちサンプルデータが最大となる点が略フォーカスレンズ22の初期位置D0 である場合、上述のように各信号に応じて、サンプルデータP0 、P1 、P2 、P3 が取得された後、現在サンプルデータP3 と過去サンプルデータP0 とが比較される。現在サンプルデータP3 は過去サンプルデータP0 より小さい、すなわちフォーカスレンズ22は合焦点から遠ざかっている。したがってフォーカスレンズ駆動信号がハイレベルになり、フォーカスレンズ22が至近端方向に移送され、初期位置D0 に再び配置される。
【0053】フォーカスレンズ22が初期位置D0 に配置された状態で、サンプルデータP'0が取得される。サンプルデータP'0はサンプルデータP0 とは異なる雑音信号の重畳したデータである。
【0054】さらにサンプルデータP'1、P'2、P'3が取得された後、現在サンプルデータP'3と過去サンプルデータP'0とが比較される。現在サンプルデータP'3は過去サンプルデータP'0より小さい、すなわちフォーカスレンズ22は合焦点から遠ざかっており、合焦点を通過した状態である。したがってフォーカスレンズ駆動信号がハイレベルになり、フォーカスレンズ22は戻り距離Drだけ無限端方向へ移送され、フォーカスレンズ22は合焦点D'1に配置される。
【0055】図6に示すようにフォーカスレンズ22の合焦点が初期位置D0 に対して至近端側にある場合、上述のように各信号に応じて、サンプルデータP0 、P1 、P2 、P3 が取得された後、現在サンプルデータP3 と過去サンプルデータP0 とが比較される。現在サンプルデータP3 が過去サンプルデータP0 より小さい、すなわちフォーカスレンズ22は合焦点から遠ざかっているため、フォーカスレンズ駆動信号がハイレベルになり、フォーカスレンズ22が至近端方向に移送され、初期位置D0 に再び配置される。
【0056】フォーカスレンズ22が初期位置D0 に配置された状態で、サンプルデータP'0が取得される。さらにサンプルデータP'1、P'2、P'3が取得された後、現在サンプルデータP'3と過去サンプルデータP'0とが比較される。現在サンプルデータP'3は過去サンプルデータP'0より大きく、フォーカスレンズ22は合焦点に近づいている。したがってフォーカスレンズ駆動信号がハイレベルになり、フォーカスレンズ22は至近端方向へ移送される。さらにサンプルデータP'4、P'5が取得される。この間、現在サンプルデータと公倍サンプル数分だけ過去に得られた過去サンプルデータとの比較が行われ、現在サンプルデータが過去サンプルデータより大きいので、フォーカスレンズ22がサンプリング距離Dsずつ至近端方向に移送される。
【0057】さらにサンプルデータP'6が取得され、現在サンプルデータP'6と過去サンプルデータP'3とが比較される。現在サンプルデータP'6は過去サンプルデータP'3より小さくなったため、フォーカスレンズ22が合焦点より遠ざかっている。すなわち現在サンプルデータと過去サンプルデータの大小関係が反転したので、フォーカスレンズ22が合焦点を通過しており、フォーカスレンズ22が戻り距離Drだけ戻される。すなわちフォーカスレンズ22は位置D'6から位置D'4まで移送され、合焦点に配置される。
【0058】図7に示すようにフォーカスレンズ22の移動可能範囲Da内に合焦点がない場合、上述のようにサンプルデータP0 、P1 、P2 、P3 が取得された後、現在サンプルデータP3 と過去サンプルデータP0 とが比較される。現在サンプルデータP3 は過去サンプルデータP0 より大きいため、フォーカスレンズ22はサンプリング距離Dsだけ無限端方向に移送され、さらにサンプルデータP4 、P5 、P6 が取得される。この間、現在サンプルデータと現在サンプルデータより公倍サンプル数分だけ過去に得られた過去サンプルデータとが比較され、現在サンプルデータが過去サンプルデータより大きいので、フォーカスレンズ22がサンプリング距離Dsずつ無限端方向に移送される。
【0059】現在サンプルデータP6 と過去サンプルデータP3 が比較され、現在サンプルデータP6 が過去サンプルデータP3 より大きいことが検出される。このとき、フォーカスレンズ22は移動可能範囲Daの一端D6 に配置されており、フォーカスレンズ22の合焦点は移動可能範囲Da内にない。したがってフォーカスレンズ22は戻り距離Drだけ戻され、フォーカスレンズ22の有効焦点範囲Dbの一端D4 に配置される。
【0060】以上のようにフォーカスレンズ22の合焦点が現在サンプルデータと現在サンプルデータより公倍サンプル数分だけ過去に得られた過去サンプルデータとを大小比較することにより検出される。
【0061】図1、図3、図8から図10を参照して自動焦点調節の制御について説明する。図8は自動焦点調節を行う自動焦点調節ルーチンを示すフローチャートである。図9は図8の自動焦点調節ルーチンの続きを示すフローチャートである。図10はCPUに設けられるメモリを示す図である。自動焦点調節ルーチンはCPU40により制御される。
【0062】自動焦点調節ルーチンを開始すると、ステップ100において、Rフラグが初期値「0」に設定される。このRフラグはフォーカスレンズ22の移動方向を反転させるときに「1」となるフラグである。
【0063】ステップ110において、フォーカスレンズ駆動信号がハイレベル(符号R0)になり、モータ駆動回路26によりパルスモータ25が駆動され、フォーカスレンズ22が図4に示す初期位置D0 まで移送される。ステップ120において、パラメータnが初期値「0」に設定される。このパラメータnは取得されたサンプルデータの数を計数するためのものである。
【0064】ステップ130からステップ140までは、フォーカスレンズ22が初期位置D0 に配置された状態でCCD30が露光されるように、フォーカスレンズ22の移送が確実に終了した後、CCD露光信号がハイレベル(符号E0 )になるまで待機するための処理である。すなわちステップ130において、フィールドインデックス信号が変化したか否かが判定され、フィールドインデックス信号が変化した(図3に示す例えば時刻t-1)と判定されると、ステップ140において、再びフィールドインデックス信号が変化したか否かが判定される。
【0065】ステップ140において、フィールドインデックス信号が変化したと判定されたとき、すなわちCCD露光信号がハイレベル(符号E0 )になり、CCD30が露光されたとき、ステップ150において、画素データの積算が終了したか否かが判定され、画素データの積算が終了するまで待機状態となる。待機状態の間、CCD30により順次読み出された画像信号は輝度信号に変換され、この信号の高域周波数成分が抽出される。その後、画素データ積算信号がハイレベル(符号S0 )になり、抽出信号を構成する画素データが積算される。
【0066】ステップ150において、画素データの積算が終了したと判定されたとき、ステップ160において、サンプルデータ取得信号がハイレベル(符号A0 )になり、サンプルデータPnがCPU40に取込まれ、CPU40に設けられるメモリに格納される。図10にCPU40に設けられるメモリを示す。このメモリには、比較可能数、すなわち公倍サンプル数Mに1を加算した数(例えば公倍サンプル数Mが「3」のとき、「4」)のサンプルデータが格納可能であり、1つのサンプルデータが押し込まれると、過去に格納されたサンプルデータが順次押出される。
【0067】再び図8を参照する。ステップ170において、Rフラグが「1」であるか否かが判定される。すなわちフォーカスレンズ22が移動方向をすでに反転せしめられたか否かが判定される。Rフラグが「1」ではないと判定されたとき、すなわちフォーカスレンズ22が移動方向をまだ反転せしめられていないとき、ステップ173において、所定のパルス数のパルス信号によりパルスモータ25が駆動され、フォーカスレンズ22が移動方向、すなわち図4に示す無限端方向に所定のパルス数に対応するサンプリング距離Dsだけ移送される。ここではフォーカスレンズ22は初期位置D0 から先ず無限端方向に移送される。
【0068】これに対しステップ170において、Rフラグが「1」であると判定されたとき、すなわちフォーカスレンズ22が移動方向をすでに反転せしめられたと判定されたとき、ステップ177において、所定のパルス数のパルス信号によりパルスモータ25が駆動され、フォーカスレンズ22が図4に示す至近端方向に所定のパルス数に対応するサンプリング距離Dsだけ移送される。
【0069】ステップ173またはステップ177において、フォーカスレンズ22の移送が終了すると、ステップ180において、サンプルデータが1つ取得されたので、パラメータnが「1」だけ加算される。
【0070】ステップ190において、取得されたサンプルデータの数を計数するためのパラメータnがカウント数H(例えば「4」)になったか否か、すなわち取得されたサンプルデータの数が比較可能数(M+1:例えば「4」)になったか否かが判定される。パラメータnがカウント数Hになっていないと判定されたとき、ステップ140の処理が再び実行される。一方パラメータnがカウント数Hになったと判定されたとき、ステップ200の処理が実行される。
【0071】ステップ200において、サンプルデータの比較が行われる。すなわち現在取得された現在サンプルデータPn-1 が現在サンプルデータPn-1 よりも公倍サンプル数M分だけ過去に取得された過去サンプルデータPn-1-M 以上であるか否かが判定される。現在サンプルデータPn-1 が過去サンプルデータPn-1-M より小さいと判定されたとき、ステップ205において、Rフラグが「1」であるか否かが判定される。Rフラグが「1」であると判定されたときは、フォーカスレンズ22が移動方向をすでに反転せしめられており、フォーカスレンズ22が合焦点を通過したときである。このときステップ280の処理が実行される。一方ステップ205において、Rフラグが「1」ではないと判定されたとき、すなわちフォーカスレンズ22が移動方向をまだ反転せしめられていないとき、ステップ206において、Rフラグが「1」に設定され、ステップ110の処理が実行される。
【0072】これに対し、ステップ200において、現在サンプルデータPn-1 が過去サンプルデータPn-1-M 以上であると判定されたとき、ステップ210において、Rフラグが「1」であるか否かが判定される。Rフラグが「1」ではないとき、すなわちフォーカスレンズ22が移動方向をまだ反転せしめられていないとき、ステップ213において、所定のパルス数のパルス信号によりパルスモータ25が駆動され、フォーカスレンズ22が図4に示す無限端方向にサンプリング距離Dsだけ移送される。一方ステップ210において、Rフラグが「1」であると判定されたとき、すなわちフォーカスレンズ22が移動方向をもう反転せしめられているとき、ステップ217において、所定のパルス数のパルス信号によりパルスモータ25が駆動され、フォーカスレンズ22が図4に示す至近端方向にサンプリング距離Dsだけ移送される。
【0073】ステップ220において、フィールドインデックス信号が変化したか否かが判定される。フィールドインデックス信号が変化したと判定されるまで待機状態となる。フィールドインデックス信号が変化したと判定されたとき、すなわちCCD露光信号がハイレベル(例えば図3に示す符号E4)になり、CCD30が露光されたとき、ステップ230の処理が実行される。
【0074】ステップ230において、画素データの積算が終了したか否かが判定され、画素データの積算が終了するまで待機状態となる。待機状態の間、CCD30により順次読み出された画像信号が輝度信号に変換され、この信号の高域周波数成分が抽出される。その後、画素データ積算信号がハイレベル(符号S4 )になり、抽出信号を構成する画素データが積算される。
【0075】ステップ230において、画素データの積算が終了したと判定されたとき、ステップ240において、サンプルデータ取得信号がハイレベル(図4に示す例えば符号A4 )になり、サンプルデータPnがCPU40に取込まれ、CPU40に設けられるメモリに格納され、過去のサンプルデータがメモリから押出される。
【0076】ステップ250において、現在サンプルデータPnが現在サンプルデータPnより公倍サンプル数だけ過去に取得された過去サンプルデータPn-M 以上であるか否かが判定される。現在サンプルデータPnが過去サンプルデータPn-M より小さいと判定されたとき、ステップ270の処理が実行される。一方現在サンプルデータPnが過去サンプルデータPn-M 以上であると判定されたとき、すなわちフォーカスレンズ22が合焦点に近づいているとき、ステップ260において、フォーカスレンズ22が図4に示す移動可能範囲Daの最端部に配置されているか否かが判定される。フォーカスレンズ22が移動可能範囲Daの最端部に配置されていないとき、ステップ265において、サンプルデータが1つ取得されたのでパラメータnが「1」だけ加算され、ステップ210の処理が再び実行される。
【0077】一方ステップ260において、フォーカスレンズ22が移動可能範囲Daの最端部に配置されていると判定されたとき、ステップ270において、Rフラグが「1」であるか否かが判定される。Rフラグが「1」であると判定されたときは、フォーカスレンズ22が図6に示す移動可能範囲Daの最端部D'6に配置されているか、またはフォーカスレンズ22が至近端方向に移動中に合焦点が検出されたとき(例えば図5)である。このとき、ステップ280において、フォーカスレンズ22が戻り距離Drだけ無限端方向に移送される。一方ステップ270において、Rフラグが「1」ではないと判定されたときは、すなわちフォーカスレンズ22が図7に示す移動可能範囲Daの最端部D6 に配置されているか、またはフォーカスレンズ22が無限端方向に移動中に合焦点が検出されたとき(例えば図4)である。このとき、ステップ275において、フォーカスレンズ22が戻り距離Drだけ至近端方向に移送される。
【0078】ステップ275またはステップ280において、フォーカスレンズ22の移送が終了し、フォーカスレンズ22が合焦点または有効焦点範囲Dbの最端部に配置されると、この自動焦点調節ルーチンは終了する。
【0079】以上の自動焦点調節ルーチンは、フォーカスレンズ22の初期位置がこのレンズの移動可能範囲Daの中間にあるときの制御である。なおフォーカスレンズ22の初期位置は、例えば操作パネル15に設けられる撮影モード切替ボタン等を押下することにより切替えられた撮影モードに応じて変更可能な構成としてもよい。この構成では、フォーカスレンズ22が移動可能範囲Daの両端部に配置されるときは、フォーカスレンズ22の移動方向の変化がないので、現在サンプルデータと過去サンプルデータの大小比較のみにより合焦点が検出可能となる。
【0080】図2、図11から図13を参照して周期的雑音の周期を検出して、公倍サンプル数Mを算出する公倍サンプル数算出ルーチンについて説明する。図11は公倍サンプル数Mを算出するための公倍サンプル数算出ルーチンを示すフローチャートである。図12は図11の公倍サンプル数算出ルーチンの続きを示すフローチャートである。図13は周期的雑音を示す図である。
【0081】図11、図12に示す公倍サンプル数算出ルーチンはCPU40により制御され、例えば図2に示す操作パネル15に設けられるシャッタボタン(2段スイッチ)が半分押下されると、開始する。また、このとき被写体に対する測光も行なわれている。
【0082】ステップ400において、パラメータnが雑音をサンプリングすべき数Nに設定される。このパラメータnは雑音サンプルの数を計数するためのものである。
【0083】ステップ410において、測光回路56により検出された雑音信号がA/D変換器57によりアナログ雑音信号からデジタル雑音信号に変換される。ステップ420において、A/D変換されたデジタル雑音信号を構成するn番目の雑音データVnが取得され、ステップ430において、所定の時間、すなわち雑音信号をサンプリングする周期だけ待機される。この雑音信号をサンプリングする周期は蛍光灯のフリッカ周期より短い時間に設定されている。
【0084】ステップ440において、雑音サンプル数を計数するためのパラメータnが「1」だけ減算され、ステップ450において、パラメータnが「0」になったか否かが判定される。パラメータnが「0」になっていないと判定されたとき、すなわちまだ取得された雑音サンプル数が雑音をサンプリングすべき数Nに満たないとき、ステップ410の処理が再び実行される。
【0085】これに対しステップ450において、パラメータnが「0」になったと判定されたとき、すなわちサンプリングすべき数Nの雑音サンプルが取得されたとき、ステップ460において、Uフラグが初期値「0」に設定される。Uフラグは雑音信号が増加傾向にあるとき、「1」となるフラグである。
【0086】ステップ470において、雑音サンプル数を計数するためのパラメータnが「1」に設定される。ステップ480において、(n+1)番目の雑音データVn+1 がn番目の雑音データVn以上であるか否かが判定される。(n+1)番目の雑音データVn+1 がn番目の雑音データVnより小さいと判定されたとき、すなわち雑音信号が減少傾向にあるとき、ステップ483において、Uフラグが「1」であるか否かが判定される。Uフラグが「1」であると判定されたとき、ステップ520の処理が実行される。一方Uフラグが「1」ではないと判定されたとき、すなわち雑音信号の変化が減少傾向から始まったとき、ステップ490の処理が実行される。
【0087】これに対しステップ480において、(n+1)番目の雑音データVn+1 がn番目の雑音データVn以上であると判定されたとき、すなわち雑音信号が増加傾向にあるとき、ステップ487において、Uフラグが「1」に設定される。
【0088】ステップ489において、図13に示すように雑音信号が最大となる点n1 が「n」に設定され、ステップ490において、パラメータnが「1」だけ加算される。ステップ500において、パラメータnが雑音サンプル総数Nになったか否かが判定される。パラメータnが雑音サンプル総数Nになっていないと判定されたとき、ステップ480の処理が再び実行される。一方ステップ500において、パラメータnが雑音サンプル総数Nになったと判定されたとき、すなわち全ての雑音サンプルの比較が終了し、かつ雑音信号が最大となる点n1 が検出されなかったとき、ステップ510において、公倍サンプル数Mが「1」に設定される。雑音信号の最大となる点が検出されないということは、雑音信号の周期が長く、この雑音信号は自動焦点調節に影響を及ぼさない。したがって公倍サンプル数Mが「1」に設定され、この公倍サンプル数算出ルーチンは終了する。
【0089】ステップ483において、Uフラグが「1」であると判定されたとき、すなわち雑音信号の最大となる点n1 が検出されたとき、ステップ520において、(n+1)番目の雑音データVn+1 がn番目の雑音データVnより小さいか否かが判定される。雑音データVn+1 が雑音データVn以上であると判定されたとき、ステップ570の処理が実行される。一方雑音データVn+1 が雑音データVnより小さいと判定されたとき、ステップ530において、図13に示す雑音信号の最小となる点n2 が「n」に設定される。
【0090】ステップ540において、パラメータnが「1」だけ加算され、ステップ550において、パラメータnが雑音サンプル総数Nになったか否かが判定される。パラメータnが雑音サンプル総数Nになっていないとき、ステップ520の処理が再び実行される。一方パラメータnが雑音サンプル総数Nになったと判定されたとき、すなわち雑音信号の周期が長いため、雑音信号の最小となる点が検出されないとき、ステップ560において、雑音信号は自動焦点調節に影響を及ぼさないので、公倍サンプル数Mが「1」に設定され、この公倍サンプル数算出ルーチンは終了する。
【0091】ステップ520において、雑音データVn+1 が雑音データVn以上であると判定されたとき、すなわち図13に示す雑音信号の最小となる点n2 が検出されたとき、ステップ570において、(n+1)番目の雑音データVn+1 がn番目の雑音データVn以上であるか否かが判定される。雑音データVn+1 が雑音データVnより小さいとき、ステップ620の処理が実行される。一方雑音データVn+1 が雑音データVn以上であると判定されたとき、ステップ580において、図13に示す雑音信号の2番目に最大となる点n3 が「n」に設定される。ステップ590において、パラメータnが「1」だけ加算され、ステップ600において、パラメータnが雑音サンプル総数Nになったか否かが判定される。パラメータnが雑音サンプル総数Nになっていないと判定されたとき、ステップ570の処理が再び実行される。一方パラメータnが雑音サンプル総数Nになったと判定されたとき、すなわち雑音信号が周期的に変化していないため、雑音信号の2番目に最大となる点n3 が検出されなかったとき、ステップ610において、雑音信号は自動焦点調節に影響を及ぼさないので、公倍サンプル数Mが「1」に設定される。
【0092】ステップ570において、雑音データVn+1 が雑音データVnより小さいとき、すなわち雑音信号の2番目に最大となる点n3 が検出されたとき、ステップ620において、雑音信号の最大値Vn1と最小値Vn2との差、すなわち雑音信号の振幅が所定値k1より小さいか否かが判定される。雑音信号の最大値Vn1と最小値Vn2との差が所定値k1より小さいとき、すなわち雑音信号が自動焦点調節に影響を及ぼさないとき、ステップ647において、公倍サンプル数Mが「1」に設定され、この公倍サンプル数ルーチンは終了する。
【0093】これに対しステップ720において、雑音信号の最大値Vn1と最小値Vn2との差が所定値k1以上であると判定されたとき、ステップ630において、雑音信号の周期Tnが(n3 −n1 )×(雑音信号のサンプリング周期)により算出される。
【0094】ステップ640において、雑音信号の周期Tnが(10−k2)msecから(10+k2)msecまでの範囲、すなわち標準範囲内であるか否かが判定される。この範囲は商用交流信号が50Hzであるときの蛍光灯の雑音信号の周期に基づいて定められ、k2は誤差を示す値である。雑音信号の周期Tnが標準範囲内であるとき、ステップ645において、公倍サンプル数Mが「3」に設定され、一方ステップ640において雑音信号の周期Tnが標準範囲内にないとき、ステップ647において、公倍サンプル数Mが「1」に設定される。ステップ645またはステップ647において、公倍サンプル数Mが設定されると、この公倍サンプル数ルーチンは終了する。
【0095】以上のように、図2に示す測光回路により雑音信号を検出して、その雑音信号の周期から公倍サンプル数Mが設定される。これにより商用交流信号の周波数が変化して、蛍光灯等の照明光源による雑音信号の周期が変化しても、最適な公倍サンプル数Mが設定され、自動焦点調節が高精度にかつ、高速に行なわれる。なお公倍サンプル数Mが「1」であるときの雑音信号は、公倍サンプル数Mを「3」として自動焦点調節を行っても、雑音信号の影響は除去できるので、公倍サンプル数Mを「3」に固定することも可能である。また図2に示す操作パネル15に公倍サンプル数Mを切替えるための切替ボタンを設け、手動で公倍サンプル数Mが切替えられてもよい。
【0096】以上の本実施形態によれば、自動焦点調節において、雑音周期Tnとサンプリング周期Tfとに基づいて誤検出防止サンプル数が設定され、現在取得した現在サンプルデータと、このデータより誤検出防止サンプル数だけ過去に取得された過去サンプルデータとの大小比較により、合焦点が検出される。これにより画像信号に重畳する雑音信号の影響で合焦点が誤検出されるのを防止することが可能であり、フォーカスレンズ22は高精度に合焦せしめられる。またサンプルデータが取得される毎に、現在サンプルデータと過去サンプルデータとが比較可能であり、従来のように複数のサンプルデータを取得して、平均値を算出する必要がなく、より高速に自動焦点調節が行われる。
【0097】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、例えばデジタルカメラ等の電子スチルカメラに設けられる自動焦点調節装置において、蛍光灯等の周期的雑音の影響による合焦点の誤検出が防止され、高精度にかつ高速に合焦点が検出される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の本実施形態の自動焦点調節装置であるデジタルカメラを示す斜視図である。
【図2】自動焦点調節装置であるデジタルカメラを示すブロック図である。
【図3】自動焦点調節装置のタイミングチャートである。
【図4】サンプリング距離毎に取得されるサンプルデータ値を示す図の一例である。
【図5】サンプリング距離毎に取得されるサンプルデータ値を示す図の一例である。
【図6】サンプリング距離毎に取得されるサンプルデータ値を示す図の一例である。
【図7】サンプリング距離毎に取得されるサンプルデータ値を示す図の一例である。
【図8】自動焦点調節を行う自動焦点調節ルーチンのフローチャートの前半部である。
【図9】自動焦点調節を行う自動焦点調節ルーチンのフローチャートの後半部である。
【図10】CPUに設けられるメモリを示す図である。
【図11】公倍サンプル数を算出する公倍サンプル数算出ルーチンのフローチャートの前半部である。
【図12】公倍サンプル数を算出する公倍サンプル数算出ルーチンのフローチャートの後半部である。
【図13】周期的雑音信号を示す図である。
【符号の説明】
22 フォーカスレンズ(レンズ)
30 CCD(撮像素子)
Tf サンプリング周期
Tn 雑音周期
M 公倍サンプル数

【特許請求の範囲】
【請求項1】 撮像素子により検出された画像信号から、サンプリング周期毎に得られるサンプルデータに基づいてレンズの焦点調節を行う自動焦点調節装置であって、現在得られた現在サンプルデータを、公倍サンプル数分だけ過去に得られた過去サンプルデータと比較して、合焦点を検出する合焦点検出手段を備え、前記サンプリング周期をTf、前記画像信号に重畳する雑音の雑音周期をTnとしたとき、M・Tf=N・Tnこの関係式の関係を満たす整数Mと整数Nを用いて、前記公倍サンプル数が定められることを特徴とする自動焦点調節装置。
【請求項2】 前記サンプルデータを記憶するための記憶手段が設けられ、前記公倍サンプル数に1だけ加算した数である比較可能数の前記サンプルデータが前記憶手段に記憶されると、前記合焦点検出手段が前記現在サンプルデータと前記過去サンプルデータとを比較して、前記合焦点を検出することを特徴とする請求項1に記載の自動焦点調節装置。
【請求項3】 前記合焦点検出手段が、前記現在サンプルデータと前記過去サンプルデータの大小関係が転じて、前記現在サンプルデータが前記過去サンプルデータより小さくなったことにより前記合焦点を検出することを特徴とする請求項2に記載の自動焦点調節装置。
【請求項4】 前記公倍サンプル数が前記整数Mであることを特徴とする請求項3に記載の自動焦点調節装置。
【請求項5】 前記整数Mと前記整数Nが前記関係式を満たす最小の正の整数であることを特徴する請求項4に記載の自動焦点調節装置。
【請求項6】 前記サンプリング周期としてNTSC方式のフィールド周期を用いるとき、前記整数Mが「3」に定められることを特徴とする請求項4に記載の自動焦点調節装置。
【請求項7】 前記雑音の前記雑音周期を検出する雑音周期検出手段が設けられ、前記雑音周期検出手段により検出された前記雑音周期に応じて、前記整数Mが変更可能であることを特徴とする請求項4に記載の自動焦点調節装置。
【請求項8】 前記雑音周期検出手段により前記雑音周期が検出不可能である場合、または前記雑音周期検出手段により検出された前記雑音周期が標準範囲外であるとき、前記整数Mが「1」に定められることを特徴とする請求項7に記載の自動焦点調節装置。
【請求項9】 前記撮像素子と前記レンズとの相対位置を変位させるための相対位置変位手段が設けられ、この相対位置変位手段が前記サンプリング周期毎にサンプリング距離分だけ前記相対位置を変位させることを特徴とする請求項4に記載の自動焦点調節装置。
【請求項10】 前記相対位置変位手段が前記画像信号を検出するために前記撮像素子を露光する露光時間の間以外で、前記サンプリング距離分だけ前記相対位置を変位させることを特徴とする請求項9に記載の自動焦点調節装置。
【請求項11】 前記相対位置変位手段が、前記サンプルデータが得られた後、前記サンプリング距離分だけ前記相対位置を変位させることを特徴とする請求項10に記載の自動焦点調節装置。
【請求項12】 前記相対位置変位手段がパルスモータを有し、所定のパルス数を前記サンプリング距離に対応させ、前記パルスモータをパルス制御することにより前記相対位置を変位させることを特徴とする請求項11に記載の自動焦点調節装置。
【請求項13】 前記相対位置変位手段が前記撮像素子または前記レンズを搬送することにより前記相対位置を変位させ、前記撮像素子または前記レンズが配置される初期位置が前記撮像素子または前記レンズが移動可能な範囲の略中心に定められることを特徴とする請求項9または請求項12に記載の自動焦点調節装置。
【請求項14】 前記相対位置変位手段がレンズを移送するレンズ移送手段であり、前記レンズ移送手段によりレンズの移送される方向が反転されたとき、その反転の後に、前記現在サンプルデータが前記過去サンプルデータより小さくなったことによって前記合焦点検出手段が合焦点を検出することを特徴とする請求項13に記載の自動焦点調節装置。
【請求項15】 前記撮像素子または前記レンズが配置される前記初期位置を選択するための初期位置選択手段が設けられることを特徴とする請求項13に記載の自動焦点調節装置。
【請求項16】 前記合焦点検出手段が前記合焦点を検出したとき、前記相対位置変位手段が前記撮像素子または前記レンズを戻り距離だけ戻すことを特徴とする請求項14に記載の自動焦点調節装置。
【請求項17】 前記戻り距離が前記サンプリング距離の戻りサンプリング数倍であることを特徴とする請求項16に記載の自動焦点調節装置。
【請求項18】 前記戻りサンプリング数が、前記戻りサンプリング数をRとし、前記整数Mを用いたとき、R=(M+1)/2この式の関係を満たすことを特徴とする請求項17に記載の自動焦点調節装置。
【請求項19】 前記相対位置変位手段が前記戻りサンプリング数に前記サンプリング距離に対応する所定のパルス数を乗じた数以下の最大の整数個のパルス数分だけ、前記パルスモータを駆動することにより前記撮像素子または前記レンズを前記戻り距離だけ戻すことを特徴とする請求項18に記載の自動焦点調節装置。
【請求項20】 前記撮像素子または前記レンズが移動可能な範囲が、前記レンズの有効範囲より前記戻り距離の2倍だけ広い範囲であることを特徴とする請求項19に記載の自動焦点調節装置。
【請求項21】 前記現在サンプルデータが前記過去サンプルデータより大きく、前記相対位置変位手段が前記撮像素子または前記レンズを前記広移動範囲の端部まで搬送しても、前記合焦点検出手段が前記合焦点を検出しなかったとき、前記相対位置変位手段が前記広移動範囲の端部から前記戻り距離だけ前記撮像素子または前記レンズを戻すことを特徴とする請求項20に記載の自動焦点調節装置。
【請求項22】 前記サンプルデータが前記画像信号を変換することにより得られる輝度信号の高域周波数成分の積算値であることを特徴とする請求項1に記載の自動焦点調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図13】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図7】
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【図9】
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【図12】
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【公開番号】特開2000−28912(P2000−28912A)
【公開日】平成12年1月28日(2000.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−194568
【出願日】平成10年7月9日(1998.7.9)
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】