説明

複数組電池のセル電圧均等化装置

【課題】高精度に各セルの出力電圧を均等化することが可能な複数組電池のセル電圧均等化装置を提供する。
【解決手段】各セルの出力電圧を測定する電圧検出用ICと、各セル毎に設けられセルの出力電圧を放電する放電回路40と、電圧検出用ICにより測定されるセルの出力電圧に基づいて二次電池13の電圧残存量を求め、この電圧残存量が所定の残存量であるか否かを判定し、電圧検出用ICにて測定された各セルの出力電圧から、所定の基準電圧を減算した差分値を求め、差分値が第1の電圧閾値以上であるセルが存在する場合に放電回路40により出力電圧を均等化するメインマイコン33と、を有し、メインマイコン33は、電圧残存量が所定の残存量でない場合には、前回の均等化処理から第1の待ち時間経過後、均等化処理を実行し、電圧残存量が所定の残存量である場合には、前回の均等化処理から第2の待ち時間経過後、均等化処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを直列に接続して所望の電圧を出力する複数組電池の、各セルの出力電圧を均等化するセル電圧均等化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド車両等では、モータの駆動電源として、高電圧バッテリを備えている。このような高電圧バッテリは、例えば、ニッケル・水素電池やリチウム電池などの二次電池(蓄電式電池)のセルを複数個、直列に接続することにより、高電圧を得ている。
【0003】
また、全ての二次電池を同じ電力で充電、或いは放電するため、各々の二次電池の劣化する状態が異なる場合、二次電池は過充電状態、或いは過放電状態になりやすくなる。そこで、二次電池が過充電状態、或いは過放電状態とならないように、各セル毎の充電状態を確認する必要がある。そのため、複数個(例えば、55個)のセルを、例えば、5個のブロックに分割し(即ち、11個のセルで1ブロック)、各ブロックの電圧を各ブロック毎に設けられた電圧検出用ICにより、リアルタイムで電圧を測定している。
【0004】
更に、高電圧バッテリの充放電を繰り返して長時間使用した場合や、高電圧バッテリを長期間放置した場合には、二次電池の電圧残存量が不均一になることがある。このような場合には、高電圧バッテリの使用容量が減少することになり、高電圧バッテリから十分な電力を得ることができなくなる。そこで、例えば、特開2003−189490号公報(特許文献1)及び特開2002−101565号公報(特許文献2)に記載されているように、各セルの出力電圧を均等化するセル電圧均等化装置が提案されている。
【0005】
このようなセル電圧均等化装置では、電気自動車やハイブリット車等に搭載される二次電池の各セルの出力電圧を均等にするため、イグニッションがオフのときに各セルの出力電圧を検出し、最も出力電圧の低いセルと一致するように出力電圧の高いセルの出力電圧を放電している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−189490号公報
【特許文献2】特開2002−101565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のセル電圧均等化装置では、電圧検出用ICにより検出したセルの出力電圧に基づいて各セルの出力電圧を均等化しているため、電圧検出用ICがセルの出力電圧を検出する精度によって均等化の基準電圧となる値が異なる場合が生ずる。このため、高精度にセルの出力電圧を均等化することができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高精度に各セルの出力電圧を均等化することが可能な複数組電池のセル電圧均等化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、複数のセルを直列に接続して所望の電圧を出力する複数組電池の、前記各セルの出力電圧を均等化するセル電圧均等化装置において、前記各セルの出力電圧を測定する電圧測定手段と、前記各セル毎に設けられ、セルのプラス極、マイナス極間を通電して、当該セルの出力電圧を放電する放電手段と、前記電圧測定手段により測定される少なくとも一つのセルの出力電圧に基づいて、前記複数組電池の電圧残存量を求め、この電圧残存量が予め設定した第1閾値以下となる所定の残存量であるか否かを判定する電圧残存量測定手段と、前記電圧測定手段にて測定された各セルの出力電圧から、予め設定した所定の基準電圧を減算した差分値を求める差分値演算手段と、前記差分値演算手段により求められた差分値が第1の電圧閾値以上であるセルが存在する場合に、このセルに設けられる前記放電手段にて放電することにより、各セルの出力電圧を均等化する均等化制御手段と、を有し、前記均等化制御手段は、前記電圧残存量測定手段で測定される電圧残存量が前記所定の残存量でない場合には、前回の均等化処理から予め設定した第1の待ち時間が経過したことを条件として、前記各セルの均等化処理を実行し、電圧残存量が前記所定の残存量である場合には、前回の均等化処理から前記第1の待ち時間よりも短い第2の待ち時間が経過したことを条件として、前記各セルの均等化処理を実行することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の複数組電池のセル電圧均等化装置において、前記複数組電池の電圧残存量が前記第1閾値以下である場合に加え、前記第1閾値よりも大きく設定した第2閾値以上である場合を前記所定の残存量とすることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の複数組電池のセル電圧均等化装置において、前記均等化制御手段は、前記差分値演算手段にて各セルの出力電圧から前記基準電圧を減算した差分値の全てが、前記第1の電圧閾値よりも小さく設定した第2の電圧閾値以下であることを条件として、前記各セルの均等化処理を終了することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、電圧残存量が第1閾値以下である所定の残存量である場合には、前回の均等化処理から第1の待ち時間よりも短い第2の待ち時間が経過したことを条件として各セルの均等化処理を実行する。このため、所定の電圧残存量の場合には、前回の均等化処理から短い時間内で再度均等化処理を実行することとなり、高精度に各セルの出力電圧を均等化することができる。
【0013】
さらに、電圧残存量が所定の残存量の場合に均等化処理を行うことにより、高精度に検出したセルの出力電圧を基準電圧として均等化処理を実行することができる。このため、電圧測定手段がセルの出力電圧を検出する精度によって均等化処理の基準となる基準電圧の値が異なることがない。
【0014】
従って、高精度に各セルの出力電圧を均等化することが可能な複数組電池のセル電圧均等化装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、電圧残存量が第1の閾値以下である場合に加え、第2の閾値以上である場合を所定の残存量とする。このため、より高精度に各セルの出力電圧を均等化することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、各セルの出力電圧から基準電圧を減算した差分値の全てが、第2の電圧閾値以下であることを条件として、各セルの均等化処理を終了する。このため、複数組電池の過放電状態を防止して、高精度に各セルの出力電圧を均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置の放電回路を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る二次電池の電圧残存量と出力電圧との関係を示す特性図である。
【図5】本発明の実施形態に係るセルの出力電圧を放電した場合の出力電圧及び電圧のバラツキと時間との関係を示す特性図である。
【図6】従来における均等化実施領域を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置の均等化実施領域を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置の均等化処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置について説明する。本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置は、複数のセルを直列に接続して所望の電圧を出力する複数組電池の各セルの出力電圧を均等化する装置である。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10、及び複数のセルBT1〜BT55からなる二次電池(複数組電池)13を示すブロック図である。本実施形態に係る二次電池13は、例えば、蓄電式電池であるリチウム電池等であって、電気自動車やプラグインハイブリット車両等に搭載して車両駆動用のモータを駆動するための高圧バッテリとして用いられる。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10は、絶縁インターフェース32を介して、高電圧側装置11と低電圧側装置12に分離されている。
【0021】
高電圧側装置11は、5個の電圧検出用IC(電圧測定手段)、即ち、第1電圧検出用IC(21−1)〜第5電圧検出用IC(21−5)を備えている。そして、第1電圧検出用IC(21−1)は、第1ブロック61−1として区切られた11個のセルBT1〜BT11の出力電圧を測定する。
【0022】
また、第2電圧検出用IC(21−2)は、第2ブロック61−2として区切られた11個のセルBT12〜BT22の出力電圧を測定し、同様に、第3電圧検出用IC(21−3)は、第3ブロック61−3として区切られた11個のセルBT23〜BT33の出力電圧を測定し、第4電圧検出用IC(21−4)は、第4ブロック61−4として区切られた11個のセルBT34〜BT44の出力電圧を測定し、第5電圧検出用IC(21−5)は、第5ブロック61−5として区切られた11個のセルBT45〜BT55の出力電圧を測定する。すなわち、電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)は、各セルBT1〜BT55の出力電圧を測定する電圧測定手段として機能する。
【0023】
電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)は、それぞれ放電回路(放電手段)40(後述する図2及び図3参照)を備えている。この放電回路40は、各セルBT1〜BT55毎に設けられ、セルBT1〜BT55のプラス極とマイナス極との間を通電して、セルBT1〜BT55の出力電圧を放電する。すなわち、放電回路40は、各セルセルBT1〜BT55毎に設けられ、セルBT1〜BT55のプラス極、マイナス極間を通電して、セルBT1〜BT55の出力電圧を放電する放電手段として機能する。
【0024】
また、電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)は、それぞれ、A/D変換器26(後述する図2参照、「ADC」と記載)を備えており、A/D変換器26用の基準電源71−1〜71−5(図1参照)より出力される基準電圧を用いて、各ブロック(第1ブロック〜第5ブロック)毎に検出した電圧信号をディジタルの電圧信号に変換する。
【0025】
さらに、第2〜第5電圧検出用IC(21−2)〜(21−5)は、通信線31を介して、第1電圧検出用IC(21−1)と接続され、この第1電圧検出用IC(21−1)は、絶縁インターフェース32を介して、低電圧側装置12側に設けられているメインマイコン(電圧残存量測定手段、差分値演算手段、均等化制御手段)33に接続されている。すなわち、メインマイコン33と、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)は、絶縁インターフェース32を介し、デイジーチェーン通信で接続されている。
【0026】
低電圧側装置12には、5Vの直流電圧を出力するレギュレータ52が設けられ、このレギュレータ52は、車両に搭載されるバッテリ(電源)51より出力される電圧(例えば、12V)から、安定した5Vの直流電圧を生成してメインマイコン33に供給する。
【0027】
本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10のメインマイコン33は、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)に電圧検出指令信号を出力して電圧検出信号を取得すると、少なくとも一つのセルの出力電圧(例えば、セルBT1〜BT55のうち最も低い出力電圧)に基づいて、二次電池13のSOC(State of Charge、以下、電圧残存量と称する)を求める。そして、この電圧残存量が所定の残存量(第1閾値以下又は第2閾値以上)であるか否かを判定する。すなわち、メインマイコン33は、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)により測定される少なくとも一つのセルBT1〜BT55の出力電圧に基づいて、二次電池13の電圧残存量を求め、この電圧残存量が予め設定した所定の残存量であるか否かを判定する電圧残存量測定手段として機能する。
【0028】
また、メインマイコン33は、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)に電圧検出指令信号を出力して電圧検出信号を取得すると、この電圧検出信号に基づいて、各セルBT1〜BT55の出力電圧から予め設定した基準電圧(例えば、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した値)を減算した差分値を求める。すなわち、メインマイコン33は、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)にて測定された各セルBT1〜BT55の出力電圧から、予め設定した所定の基準電圧(例えば、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した値)を減算した差分値を求める差分値演算手段として機能する。
【0029】
そして、メインマイコン33は、求めた差分値が第1の電圧閾値以上(例えば、1.5V以上)であるセルが存在する場合に、このセルに設けられる放電回路40(図2及び図3参照)にて放電することにより、各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化する均等化処理を実行する。すなわち、メインマイコン33は、求められた差分値が第1の電圧閾値以上であるセルが存在する場合に、このセルに設けられる放電回路40にて放電することにより、各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化する均等化制御手段として機能する。均等化処理は、差分値の全てが、第2の電圧閾値以下(例えば。0.5V)であることを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を終了する。
【0030】
また、メインマイコン33は、求めた電圧残存量が所定の残存量でない場合には、前回の均等化処理から予め設定した第1の待ち時間(例えば、1時間)が経過したことを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を実行する。
【0031】
一方、求めた電圧残存量が所定の残存量である場合には、前回の均等化処理から第1の待ち時間(例えば、1時間)よりも短い第2の待ち時間(例えば、30分)が経過したことを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を実行する。詳細については後述する。
【0032】
次に、図2を参照して、本発明の実施形態に係る電圧検出用ICの詳細な構成について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る第1電圧検出用IC(21−1)の内部構成を示すブロック図である。なお、第2電圧検出用IC〜第5電圧検出用IC(21−2)〜(21−5)は、第1電圧検出用IC21−1と略同一の構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0033】
図2に示すように、第1電圧検出用IC21−1は、セルBT1〜BT11毎に設けられた放電回路40と、セルBT1〜BT11より出力される電力を入力して、所定の電圧を生成する電源回路23と、ブロック61−1に設けられる各セルBT1〜BT11と放電回路40を介して接続されて、これらの出力電圧検出するセル電圧入力部22と、セル電圧入力部22より出力される各セルの電圧信号を、1系統の時系列的な信号に変換するマルチプレクサ25と、マルチプレクサ25より出力される各単位セルの電圧信号をディジタル信号に変換するA/D変換器26と、を備えている。
【0034】
A/D変換器26は、基準電源71−1(図1参照)より出力される基準電圧を用いて、アナログ信号をディジタル信号に変換する。また、第1電圧検出用IC21−1は、コントロール部27と、2つの通信I/F35a、35bと、を備えている(第1電圧検出用IC21−1は、通信I/F35aのみでも良い)。
【0035】
コントロール部27は、第1電圧検出用IC(21−1)を総括的に制御する。特に、図1に示したメインマイコン33より、セル電圧の電圧検出指令信号が送信された場合には、セル電圧入力部22で検出したセルBT1〜BT11の出力電圧を通信I/F35a、35bを経由して、メインマイコン33に送信する。
【0036】
また、コントロール部27は、図1に示したメインマイコン33より、セルの放電開始指令信号が送信された場合には、放電回路40による放電開始の指令がなされたセルの出力電圧の放電を開始し、セルの放電終了指令信号が送信された場合には、放電回路40による放電を終了する。
【0037】
次に、図3を参照して、本発明の実施形態に係る放電回路について説明する。図3は、本発明の実施形態に係るセルBT1〜BT3に設けられた放電回路の回路図である。なお、セルBT4〜BT55は、セルBT1〜BT3と同一の回路構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0038】
図3に示すように、放電回路40は、各セルBT1〜セルBT3毎に設けられ、セルBT1〜セルBT3のプラス極、マイナス極間を通電してセルの出力電圧を放電する。放電回路40は、それぞれスイッチSW(スイッチSW1〜スイッチSW3)と、抵抗R(抵抗R1〜抵抗R4)と、を備えている。そして、図1に示したメインマイコン33より送信された放電開始指令信号又は放電終了指令信号に基づいて、スイッチSW(スイッチSW1〜スイッチSW3)をON、OFF制御することによりセルBT1〜BT3の出力電圧の放電を制御する。
【0039】
例えば、図1に示したメインマイコン33より、セルBT1の放電開始指令信号が送信された場合には、コントロール部27は(図2参照)、セルBT1に設けられるスイッチSW1をONすることにより、セルBT1の出力電圧の放電を開始する。
【0040】
放電を開始すると、メインマイコン33ではタイマー(図示省略)によりセルBT1を放電している時間を計時する。そして、放電を開始してから所定時間(例えば、3分)経過したときに、セルBT1の放電終了指令信号を送信し、コントロール部27は、セルBT1に設けられるスイッチSW1をOFFすることにより、セルBT1の出力電圧の放電を終了する。
【0041】
次に、本発明の実施形態に係る二次電池の電圧残存量について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る二次電池の電圧残存量と出力電圧との関係を示す特性図である。図5(a)は、本発明の実施形態に係るセルの出力電圧を放電した場合の出力電圧及び電圧のバラツキと時間との関係を示す特性図である。図5(b)は、図5(a)に示した放電終止付近を拡大した拡大図である。図6は、従来における均等化実施領域を示す図である。図7は、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置における均等化実施領域を示す図である。
【0042】
図4に示すように、二次電池13が十分に電荷が蓄えられた状態の満充電付近や、二次電池13が蓄積した電荷を失う放電終止付近になると、電圧残存量(SOC)の変化に対する出力電圧の感度が良くなるため、少しの電圧残存量の変化で大きく出力電圧が変化する。
【0043】
つまり、電圧残存量(例えば、満充電の状態を100%、完全放電状態を0%とした場合、実際に使用できる電池の量)が20%(第1閾値)以下の領域と、電圧残存量が80%(第2閾値)以上の領域では、電圧残存量の変化に対して出力電圧が敏感に変化するため、電圧残存量と出力電圧との関係を示す曲線L1は、満充電付近及び放電終止付近では傾きが大きくなる(電圧残存量に対する出力電圧の変化率が大きい)。
【0044】
一方、電圧残存量が20%以上であって、80%以下の電圧残存量の中間領域では、電圧残存量の変化に対して出力電圧が敏感に変化しないため、電圧残存量と出力電圧との関係を示す曲線L1は、電圧残存量の中間領域では傾きが小さく一定となる。つまり、中間領域では、電圧残存量と出力電圧との関係を示す曲線L1は直線状となる(図4の中間領域参照)。
【0045】
図5(a)及び図5(b)に示すように、二次電池13のセルBT1〜BT55を放電すると(図5(a)及び図5(b)は、7つのセルを放電した場合の図)、放電終止付近では、電圧のバラツキ(各セルBT1〜BT55の出力電圧の差、最も高い出力電圧と最も低い出力電圧との差)が拡大する。電圧のバラツキが拡大している場合、二次電池13は過充電状態、或いは過放電状態になりやすくなる。
【0046】
図6に示すように、従来、ハイブリット車両に搭載して車両駆動用のモータを駆動するための高圧バッテリとして用いられる二次電池は、電圧残存量が中間領域(図4参照)のときに使用されるため、電圧残存量が中間領域(図6の均等化実施領域)にあるときにのみ均等化処理を実行している。そのため、電圧残存量の変化に対する出力電圧を感度が良くなる満充電付近及び放電終止付近、特に、電圧のバラツキが拡大する放電終止付近において均等化処理を実行することができないため、高精度なセル電圧検出精度が求められた。
【0047】
つまり、均等化処理を実行する際、電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)により検出したセルBT1〜BT55の出力電圧に基づいて各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化しているため、電圧残存量の変化に対して出力電圧が敏感に変化しない中間領域(図4参照)では、電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)がセルBT1〜BT55の出力電圧を検出する精度によって均等化の基準電圧となる値が異なる場合が生ずる。
【0048】
特に、電気自動車やプラグインハイブリット車両等は、二次電池の使用領域が中間領域(図4参照)のみならず、満充電付近及び放電終止付近(図4参照)であっても使用することができるため、二次電池を使用する領域が広くなる。
【0049】
そこで、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10は、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良い満充電付近及び放電終止付近、特に、電圧のバラツキが拡大する放電終止付近において均等化処理を実行することにより、高精度に各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化する。
【0050】
つまり、図7に示すように、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良く、電圧のバラツキが拡大する電圧残存量が20%(第1閾値)以下の領域(図7の均等化実施領域)と、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良い電圧残存量が80%(第2閾値)以上の領域(図7の均等化実施領域)においても均等化処理を実行する。
【0051】
そして、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10は、図6に示す均等化実施領域の範囲では、前回の均等化処理から予め設定した第1の待ち時間(例えば、1時間)が経過したことを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を実行する。
【0052】
また、図7に示す均等化実施領域の範囲では、前回の均等化処理から第1の待ち時間よりも短い第2の待ち時間(例えば、30分)が経過したことを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を実行する。
【0053】
このように、図7に示す均等化実施領域の範囲、つまり、電圧残存量が20%(第1閾値)以下の領域と、電圧残存量が80%(第2閾値)以上の領域では、電圧残存量に対する出力電圧の感度が良く、さらに、電圧残存量が20%(第1閾値)以下の領域では電圧のバラツキが拡大するため、短い時間で均等化処理を繰り返すことにより、精度よく各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化することができる。
【0054】
また、電圧残存量が、電圧残存量が第1閾値(例えば、20%)以下の領域(電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良く、電圧のバラツキが拡大する領域)、又は、第2閾値(80%)以上の領域(電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良い領域)の場合に均等化処理を行うことにより、高精度に検出したセルBT1〜BT55の出力電圧を基準電圧として均等化処理を実行することができる。このため、電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)がセルBT1〜BT55の出力電圧を検出する精度によって均等化処理の基準となる基準電圧(例えば、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した値)の値が異なることがない。
【0055】
従って、高精度に各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化することが可能な二次電池13のセル電圧均等化装置10を提供することができる。
【0056】
次に、上記のように構成された本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10の動作について説明する。図8は、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置の均等化処理を示すフローチャートである。
【0057】
はじめに、メインマイコン33は、二次電池13のセルBT1〜BT55の出力電圧が安定するまでの一定期間、作動を停止する(ステップS1)。
【0058】
次に、メインマイコン33は、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)に初期電圧検出指令信号を出力する(ステップS2)。メインマイコン33より指示された各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)は、各ブロックのセルBT1〜BT55の出力電圧を検出し、検出した各セルBT1〜BT55の電圧信号を通信I/F35a、35bを経由して、メインマイコン33に送信する。
【0059】
次に、メインマイコン33は、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)から初期電圧検出信号を取得する(ステップS3)。
【0060】
次に、メインマイコン33は、電圧残存量を算出する(ステップS4)。電圧残存量は、ステップS3において取得した電圧検出信号に基づいて算出する。具体的には、セルBT1〜BT55の出力電圧のうち、最も低い出力電圧に基づいて二次電池13の電圧残存量(例えば、満充電の状態を100%、完全放電状態を0%とした場合、実際に使用できる電池の量)を算出する。
【0061】
次に、メインマイコン33は、初期差分値を算出する(ステップS5)。初期差分値は、ステップS3において取得した電圧検出信号に基づいて算出する。具体的には、セルBT1〜BT55の出力電圧のうち、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した基準電圧(例えば、3V+0.02V=3.02V)を設定し、各セルBT1〜BT55から基準電圧を減算した差分値を求める。
【0062】
このように、最も低い電圧値に所定の電圧値を加算した基準電圧を設定することにより、各セルBT1〜BT55の出力電圧が最も低い電圧値よりも低い出力電圧値になること、すなわち、二次電池13が過放電状態になることを防ぐことができる。
【0063】
次に、メインマイコン33は、初期差分値は第1の電圧閾値以上か否かを判定する(ステップS6)。つまり、ステップS5において算出した初期差分値が第1の電圧閾値(例えば、1.5V)以上であるセルが存在するか否かを判定する。
【0064】
メインマイコン33は、初期差分値が第1の電圧閾値以上であるセルが存在しないと判定したときには(ステップS6:NO)、処理をステップS15に移る。つまり、電圧のバラツキ(各セルBT1〜BT55の出力電圧の差、最も高い出力電圧と最も低い出力電圧との差)が小さいと判定し、放電回路40にてセル(BT1〜BT55)の出力電圧を放電する放電処理(ステップS7〜ステップS14の処理)を実行しない。
【0065】
一方、メインマイコン33は、初期差分値が第1の電圧閾値以上のセルが存在すると判定したときには(ステップS6:YES)、電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)に放電開始指令信号を出力する(ステップS7)。つまり、ステップS5において算出した初期差分値が第1の電圧閾値(例えば、1.5V)以上であるセルが存在する場合には、セルBT1〜BT55の出力電圧にバラツキが大きい(各セルBT1〜BT55の出力電圧の差が大きい、最も高い出力電圧と最も低い出力電圧との差が大きい)と判定し、初期差分値が第1の電圧閾値以上のセルに設けられる放電回路40のスイッチSW(図3参照)をONにするための信号を出力する。
【0066】
メインマイコン33より指示された各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)は、放電開始の指示がなされたセルに設けられた放電回路40のスイッチSW(図3参照)をONにし、セルの出力電圧の放電を開始する。
【0067】
次に、メインマイコン33は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS8)。メインマイコン33は、所定時間が経過していないと判定したときには(ステップS8:NO)、所定の時間が経過するまで待機する。
【0068】
一方、メインマイコン33は、所定の時間が経過したと判定したときには(ステップS8:YES)、電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)に放電終了指令信号を出力する(ステップS9)。つまり、メインマイコン33は、タイマー(図示省略)により、セルの出力電圧を放電している時間を計時する。そして、放電を開始してから所定時間(例えば、3分)経過したときに、放電終了指令信号を送信する。
【0069】
メインマイコン33より指示された各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)は、放電しているセルに設けられた放電回路40のスイッチSW(図3参照)をOFFすることにより、セルの出力電圧の放電を終了する。
【0070】
次に、メインマイコン33は、二次電池13のセルBT1〜BT55の出力電圧が安定するまでの一定期間、作動を停止する(ステップS10)。
【0071】
次に、メインマイコン33は、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)に電圧検出指令信号を出力する(ステップS11)。メインマイコン33より指示された各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)は、各ブロックのセルBT1〜BT55の出力電圧を検出し、検出した各セルBT1〜BT55の電圧信号を通信I/F35a、35bを経由して、メインマイコン33に送信する。
【0072】
次に、メインマイコン33は、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)から電圧検出信号を取得する(ステップS12)。
【0073】
次に、メインマイコン33は、差分値を算出する(ステップS13)。差分値は、ステップS12において取得した電圧検出信号に基づいて算出する。具体的には、セルBT1〜BT55の出力電圧のうち、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した基準電圧(例えば、3V+0.02V=3.02V)を設定し、各セルBT1〜BT55から基準電圧を減算した差分値を求める。
【0074】
次に、メインマイコン33は、差分値は第2の電圧閾値以下か否かを判定する(ステップS14)。つまり、ステップS12において算出した差分値の全てが第1の電圧閾値(例えば1.5V)よりも小さく設定した第2の電圧閾値(例えば、0.5V)以下であるか否かを判定する(各セルBT1〜BT55から基準電圧を減算した差分値が全て第2の閾値以下であるか否かを判定する。)
メインマイコン33は、差分値が全て特定の閾値以下ではないと判定したときには(ステップS14:NO)、ステップS7の処理に戻る。つまり、放電回路40にて、セル(BT1〜BT55)の出力電圧を放電する放電処理(ステップS7〜ステップS14の処理)を差分値の全てが第2の電圧閾値以下となるまで繰り返す(差分値が第2の電圧閾値以上のセルに設けられた放電回路40にて放電を繰り返す)。
【0075】
一方、メインマイコン33は、ステップS6に処理において、差分値が第1の電圧閾値以上であるセルが存在しないと判定したとき(ステップS6:NO)、又は、ステップS14の処理において、差分値が全て第2の電圧閾値以下であると判定したとき(ステップS14:YES)には、電圧残存量が第1閾値以下又は第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS15)。つまり、ステップS4において算出した二次電池13の電圧残存量が、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良く、電圧のバラツキが拡大する電圧残存量が第1閾値(例えば、20%)以下の領域(図7参照)、又は、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良い電圧残存量が第2閾値(例えば、80%)以上の領域(図7参照)であるか否かを判定する。
【0076】
電圧残存量が第1閾値以下又は第2閾値以上であるか否かの判断は、二次電池13の特性に基づいて、電圧残存量と出力電圧との関係を示す曲線L1の傾きが変わる値(電圧残存量に対する出力電圧の変化率が大きい値、図4参照)を閾値(第1閾値及び第2閾値)として予めメモリ(図示省略)に記憶しておき、メインマイコン33は、電圧残存量に対する出力電圧の変化率が大きい値である閾値(第1閾値及び第2閾値)に基づいて判定する。
【0077】
メインマイコン33は、電圧残存量が第1閾値以下又は第2閾値以上ではないと判定したときには(ステップS15:NO)、第1の待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。つまり、電圧残存量が、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良い満充電付近及び放電終止付近ではない場合には、第1の待ち時間(例えば、1時間)が経過したか否かを判定する。
【0078】
メインマイコン33は、第1の待ち時間が経過していないと判定したときには(ステップS16:NO)、第1の待ち時間が経過するまで待機する。
【0079】
一方、メインマイコン33は、第1の待ち時間が経過したと判定したときには(ステップS16:YES)、ステップS2の処理に戻る。つまり、前回の均等化処理(ステップS2〜ステップS14の処理)から第1の待ち時間を経過したことを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を実行する。
【0080】
一方、メインマイコン33は、電圧残存量が第1閾値以下又は第2閾値以上であると判定したときには(ステップS15:YES)、第2の待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS17)。つまり、電圧残存量が、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良い満充電付近及び放電終止付近である場合には、第1の待ち時間よりも短い第2の待ち時間が経過したか否かを判定する。
【0081】
メインマイコン33は、第2の待ち時間が経過していないと判定したときには(ステップS17:NO)、第2の待ち時間が経過するまで待機する。
【0082】
一方、メインマイコン33は、第2の待ち時間が経過したと判定したときには(ステップS17:YES)、ステップS2の処理に戻る。つまり、前回の均等化処理(ステップS2〜ステップS14の処理)から第1の待ち時間よりも短い第2の待ち時間を経過したことを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を実行する。
【0083】
このようにして、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10は、複数のセルBT1〜BT55を直列に接続して所望の電圧を出力する二次電池13の、各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化するセル電圧均等化装置10であって、各セルBT1〜BT55の出力電圧を測定する各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)と、各セルBT1〜BT55毎に設けられ、セルBT1〜BT55のプラス極、マイナス極間を通電して、セルBT1〜BT55の出力電圧を放電する放電回路40と、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)により測定される少なくとも一つのセルの出力電圧(例えば、セルBT1〜BT55のうち、一番低い出力電圧値)に基づいて、二次電池13の電圧残存量を求め、この電圧残存量が予め設定した第1閾値(例えば、20%)以下となる所定の残存量であるか否かを判定し、各電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)にて測定された各セルBT1〜BT55の出力電圧から、予め設定した所定の基準電圧(例えば、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した値)を減算した差分値を求め、求められた差分値が第1の電圧閾値(例えば、1.5V)以上であるセルが存在する場合に、このセルに設けられる放電回路40にて放電することにより、各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化するメインマイコン33と、を有し、メインマイコン33は、電圧残存量が所定の残存量でない場合には、前回の均等化処理から予め設定した第1の待ち時間(例えば、1時間)が経過したことを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を実行し、電圧残存量が所定の残存量である場合には、前回の均等化処理から第1の待ち時間よりも短い第2の待ち時間(例えば、30分)が経過したことを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を実行する。
【0084】
また、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10は、二次電池13の電圧残存量が第1閾値(例えば、20%)以下である場合に加え、第1閾値よりも大きく設定した第2閾値(例えば、80%)以上である場合を所定の残存量とする。
【0085】
さらに、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10は、メインマイコン33は、各セルBT1〜BT55の出力電圧から基準電圧(例えば、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した値)を減算した差分値の全てが、第1の電圧閾値(例えば、1.5V)よりも小さく設定した第2の電圧閾値(例えば、0.5V)以下であることを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を終了する。
【0086】
そして、本発明の実施形態に係るセル電圧均等化装置10によれば、二次電池13の電圧残存量が、第1閾値(例えば、20%)以下の領域(電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良く、電圧のバラツキが拡大する領域)の場合に均等化処理を実行するため、高精度に均等化することができる。
【0087】
また、二次電池13の電圧残存量が、電圧残存量が第1閾値(例えば、20%)以下の領域(電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良く、電圧のバラツキが拡大する領域)の場合には、前回の均等化処理(ステップS2〜ステップS14の処理)から第1の待ち時間(例えば、1時間)よりも短い第2の待ち時間(例えば、30分)が経過したことを条件として各セルBT1〜BT55の均等化処理を実行する。このため、二次電池13の電圧残存量が、高精度に均等化することができる電圧残存量の場合には、前回の均等化処理から短い時間内で再度均等化処理を実行することとなり、高精度に各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化することができる。
【0088】
さらに、二次電池13の電圧残存量が、電圧残存量が第1閾値(例えば、20%)以下の領域(電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良く、電圧のバラツキが拡大する領域)の場合に均等化処理(ステップS2〜ステップS14の処理)を行うことにより、高精度に検出したセルBT1〜BT55の出力電圧を基準電圧として均等化処理を実行することができる。このため、電圧検出用IC(21−1)〜(21−5)がセルBT1〜BT55の出力電圧を検出する精度によって均等化処理の基準となる基準電圧(例えば、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した値)が異なることがない。
【0089】
従って、高精度に各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化することが可能な二次電池13のセル電圧均等化装置10を提供することができる。
【0090】
また、二次電池13の電圧残存量が、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良く、電圧のバラツキが拡大する電圧残存量が第1閾値(例えば、20%)以下の領域(図7参照)である場合に加え、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良い電圧残存量が第2閾値(例えば、80%)以上の領域(図7参照)である場合を所定の残存量として均等化処理(ステップS2〜ステップS14の処理)を実行する。このため、より高精度に各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化することができる。
【0091】
さらに、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良く、電圧のバラツキが拡大する電圧残存量が第1閾値以下の領域(図7参照)、又は、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良い電圧残存量が第2閾値以上の領域(図7参照)で均等化処理を実行することにより、高精度な電圧検出用ICを使用しなくとも、セルBT1〜BT55の出力電圧を高精度に均等化することができる。また、高精度な電圧検出用ICが不要なため、電圧監視システムのコストを低減することができる。
【0092】
また、各セルBT1〜BT55の出力電圧から基準電圧(例えば、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した値)を減算した差分値の全てが、第2の電圧閾値以下(例えば、0.5V)であることを条件として、各セルBT1〜BT55の均等化処理を終了する。このため、二次電池13の過放電状態を防止して、高精度に各セルBT1〜BT55の出力電圧を均等化することができる。
【0093】
さらに、セルの出力電圧を検出する精度を向上するために高精度な電圧検出用ICを使用することに伴い、構成部品が多く、構成部品を管理する工程が増え製造コストが高くなるという問題が生ずることがなく、高精度な電圧検出用ICを使用する場合と比較して、構成部品を減らして軽量化を図ることができる。
【0094】
また、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良く、電圧のバラツキが拡大する電圧残存量が第1閾値以下の領域(図7参照)、又は、電圧残存量の変化に対する出力電圧の感度が良い電圧残存量が第2閾値以上の領域(図7参照)で均等化処理を実行することにより、効率の良い均等化処理を実行することができるため、消費電力が少なくなり、無駄な充電を低減して電力を有効活用することができる。
【0095】
以上、本発明の二次電池のセル電圧均等化装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0096】
例えば、上記した実施形態では、二次電池13の電圧残存量は、最も低い出力電圧に基づいて算出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、出力電圧の平均値に基づいて算出しても良いし、特定のセルに基づいて算出しても良い。
【0097】
また、上述した実施形態では、基準電圧は、セルBT1〜BT55の出力電圧のうち、最も低い出力電圧(例えば、3V)に所定の電圧値(例えば、0.02V)を加算した値(例えば、3.02V)を設定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、基準電圧は、セルBT1〜BT55の出力電圧のうち、最も低い出力電圧(所定の電圧値を加算しない)値であっても良いし、セルBT1〜BT55の出力電圧の平均値であっても良い。
【0098】
さらに、上述した実施形態では、放電を開始すると、メインマイコン33がタイマーにより放電している時間を計時する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、コントロール部27がタイマー等により放電している時間を計時し、所定時間経過後に、放電回路40のスイッチをOFFしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、高精度に各セルの出力電圧を均等化することが可能な複数組電池のセル電圧均等化装置を提供する上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0100】
10 セル電圧均等化装置
11 高電圧側装置
12 低電圧側装置
13 二次電池
21−1〜21−5 第1〜第5電圧検出用IC
23 電源回路
25 マルチプレクサ
26 A/D変換器
27 コントロール部
31 通信線
32 絶縁インターフェース
33 メインマイコン
40 放電回路
51 バッテリ
52 レギュレータ
35 通信I/F
61−1〜61−5 第1〜第5ブロック
71−1〜71−5 基準電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを直列に接続して所望の電圧を出力する複数組電池の、前記各セルの出力電圧を均等化するセル電圧均等化装置において、
前記各セルの出力電圧を測定する電圧測定手段と、
前記各セル毎に設けられ、セルのプラス極、マイナス極間を通電して、当該セルの出力電圧を放電する放電手段と、
前記電圧測定手段により測定される少なくとも一つのセルの出力電圧に基づいて、前記複数組電池の電圧残存量を求め、この電圧残存量が予め設定した第1閾値以下となる所定の残存量であるか否かを判定する電圧残存量測定手段と、
前記電圧測定手段にて測定された各セルの出力電圧から、予め設定した所定の基準電圧を減算した差分値を求める差分値演算手段と、
前記差分値演算手段により求められた差分値が第1の電圧閾値以上であるセルが存在する場合に、このセルに設けられる前記放電手段にて放電することにより、各セルの出力電圧を均等化する均等化制御手段と、を有し、
前記均等化制御手段は、
前記電圧残存量測定手段で測定される電圧残存量が前記所定の残存量でない場合には、前回の均等化処理から予め設定した第1の待ち時間が経過したことを条件として、前記各セルの均等化処理を実行し、
電圧残存量が前記所定の残存量である場合には、前回の均等化処理から前記第1の待ち時間よりも短い第2の待ち時間が経過したことを条件として、前記各セルの均等化処理を実行することを特徴とする複数組電池のセル電圧均等化装置。
【請求項2】
前記複数組電池の電圧残存量が前記第1閾値以下である場合に加え、前記第1閾値よりも大きく設定した第2閾値以上である場合を前記所定の残存量とすることを特徴とする請求項1に記載の複数組電池のセル電圧均等化装置。
【請求項3】
前記均等化制御手段は、前記差分値演算手段にて各セルの出力電圧から前記基準電圧を減算した差分値の全てが、前記第1の電圧閾値よりも小さく設定した第2の電圧閾値以下であることを条件として、前記各セルの均等化処理を終了することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複数組電池のセル電圧均等化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−65469(P2012−65469A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208108(P2010−208108)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】