説明

貯湯式給湯装置

【課題】貯湯タンク内に備えた風呂熱交換器で追い焚きを行う時の火傷防止制御を、確実に且つ短時間に行うようにした貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】湯水を貯湯する貯湯タンク2と、該貯湯タンク2内の上部に備えられた風呂熱交換器8と、該風呂熱交換器8と浴槽7とを連通し、浴槽水を循環させる風呂循環ポンプ10を備えた風呂循環回路12とを備え、更に風呂循環回路12には風呂熱交換器8をバイパスするバイパス管14と、浴槽水の流路を風呂熱交換器8側とバイパス管14側とで調節する流路調節手段13を備えたもので、保温或いは追い焚き開始時には風呂熱交換器8側とバイパス管14側がそれぞれ半開状態で、風呂熱交換器8側の全開に向かって、循環温度センサ15による浴槽水温度の検知と流路調節手段13の駆動を複数回行うので、火傷防止が確実で追い焚きも短時間に完了出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯タンクの貯湯温水を用いて浴槽の追い焚きを行う貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の給湯装置では、貯湯タンク内に備えた風呂熱交換器に、浴槽水を循環させることで、風呂の追い焚きや保温を行うものであるが、貯湯タンク内に風呂熱交換器が入っていることから、該風呂熱交換器内の残湯が貯湯タンク内の温水で加熱され80℃〜90℃となり、この高温水が風呂の追い焚きや保温運転の開始時に、浴槽内に流入しての火傷や不快感を防止する為に、風呂循環回路に風呂熱交換器をバイパスするバイパス管と三方弁を備え、追い焚きや保温運転の開始時に、風呂熱交換器からの高温水に浴槽水を混入するようにしたものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2003−194397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの従来のものでは、三方弁を時間や混合後の湯水温度が所定温度以下に低下することで、1回のみ流路を切換るものであった為、浴槽水温度が低く混合が不十分な場合には、高温水が流出する危険があり、確実に防止することが出来ず、又十分な混合を行えば良いのであるが、時間が掛かり過ぎて追い焚きや保温運転の時間が長くなる不具合が発生するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、この発明は上記課題を解決する為、特にその構成を、請求項1では、湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンク内の上部に備えられた風呂熱交換器と、該風呂熱交換器と浴槽とを連通し、浴槽水を循環させる風呂循環ポンプを備えた風呂循環回路とを備え、更に風呂循環回路には風呂熱交換器をバイパスするバイパス管と、浴槽水の流路を風呂熱交換器側とバイパス管側とで調節する流路調節手段を備えたものに於いて、前記流路調節手段は、流路調節後の浴槽水温度を検知する循環温度センサの検知温度によって調節されるもので、保温或いは追い焚き開始時には風呂熱交換器側とバイパス管側がそれぞれ半開状態で、風呂熱交換器側の全開に向かって、循環温度センサによる浴槽水温度の検知と流路調節手段の駆動を複数回行うものである。
【0005】
又請求項2では、前記流路調節手段による流路調節は、浴槽への入浴を検知しない時或いは、自動運転の沸き上がり完了前には、調節回数を減少させたり、或いは調節せずに最初から風呂熱交換器側を全開としたり、或いは循環温度センサによる検知温度の切換判定温度を高くするものである。
【0006】
更に請求項3では、前記流路調節手段は、三方弁或いはミキシング弁で構成したものである。
又請求項4では、前記三方弁或いはミキシング弁の駆動速度を、浴槽への入浴を検知しない時或いは、自動運転の沸き上がり完了前の保温或いは追い焚き運転時には、早くしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の請求項1によれば、流路調節手段の半開状態から風呂熱交換器側の全開への切換を、全開方向へ向かって段階的に複数回行うので、高温水と浴槽水の混合が良好に行われると共に、時間も短縮されて、高温水の浴槽への流出を確実に防止出来、常に安心して使用出来るものである。
【0008】
又請求項2によれば、高温水が流出しても危険がない状態では、時間短縮を優先するように制御するので、その状況に応じた制御が可能であり、無駄のない効率の良い運転が行われるものである。
更に請求項3及び4によれば、流路調節手段を三方弁或いはミキシング弁で構成し、高温水が流出しても危険がない状態では、駆動速度を早くすることで、更に時間短縮を図ることが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次にこの発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
この貯湯式給湯装置は、時間帯別契約電力の電力単価が安価な深夜時間帯に湯水を沸き上げて貯湯し、この貯湯した湯水を給湯に用いるもので、1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を備えた貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2内の下部に備えられ湯水を加熱する下部ヒータ、4は貯湯タンク2内の上部に備えられ湯水を加熱する上部ヒータ、この下部ヒータ3と上部ヒータ4とで加熱手段を構成しており、5は台所や洗面所等に設けられた給湯栓、6はこの貯湯式給湯装置を遠隔操作するリモコン、7は浴槽である。
【0010】
8は前記浴槽7の湯水を加熱するためのステンレス製の蛇管よりなる風呂熱交換器で、貯湯タンク2内の上部に配置されていると共に、この風呂熱交換器8には風呂戻り管9及び風呂循環ポンプ10を備えた風呂往き管11よりなる風呂循環回路12が接続されて浴槽7の湯水が循環可能にされ、浴槽7内の湯水が貯湯タンク2内の高温水により加熱されて保温或いは追い焚きが行われるものである。
【0011】
13は風呂循環回路12途中で風呂熱交換器8を、バイパスするバイパス管14の一方に備えられた流路調節手段を構成する三方弁で、通常時は風呂熱交換器8側を全開としており、保温或いは追い焚き開始時にはバイパス管14側を半開、風呂熱交換器8側を半開状態として、風呂熱交換器8内の高温残湯に低温の浴槽水を混合して温度を下げるようにするものである。
【0012】
15は風呂循環回路12のバイパス管14接続部分より浴槽7側の風呂往き管11に備えられた循環温度センサで、保温或いは追い焚き開始時には風呂熱交換器8内の高温残湯と浴槽水の混合水温度を検知し、所定温度以下ここでは55℃以下を検知することで、三方弁13を駆動させて風呂熱交換器8側を最終的には全開とするものであるが、先ず半開位置から30秒経過後、所定温度以下を検知することで三方弁13を風呂熱交換器8全開方向に向かって0.3秒駆動した位置とし、その後再び所定温度以下を検知して始めて風呂熱交換器8側を全開位置とするものである。
【0013】
16は貯湯タンク2上部に連通した出湯管17からの湯と、貯湯タンク2底部に連通した給水管18から分岐された給水バイパス管19からの低温水を混合する電動ミキシング弁より構成された給湯混合弁であり、その下流の給湯管20に設けた給湯温度センサ21で検出した湯温がリモコン6でユーザーが設定した給湯設定温度になるように混合比率が制御されるものである。
【0014】
22は給湯管20から分岐されて風呂戻り管9に連通された湯張り管で、この湯張り管22には、風呂設定温度で湯張りを行う為に、温水と給水をミキシングする風呂混合弁23、浴槽7への湯張りの開始/停止を行う湯張り弁24と、浴槽7への湯張り量をカウントする風呂流量カウンタ25と、浴槽水が給湯管20へ逆流するのを防止する2つの逆止弁26とが設けられているものである。
【0015】
27は貯湯タンク2の上下方向に複数個配置された貯湯温度センサで、この実施形態では5つの貯湯温度センサが配置され上から27a、27b、27c、27d、27eと呼び、この貯湯温度センサ27が検出する温度情報によって、貯湯タンク2内にどれだけの熱量が残っているかを検知し、そして貯湯タンク2内の上下方向の温度分布を検知するものである。
【0016】
前記リモコン6には、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ28、及び風呂設定温度を設定する風呂温度設定スイッチ29がそれぞれ設けられていると共に、浴槽7へ風呂設定温度の湯をリモコン6の湯張り量設定スイッチ(図示せず)で設定された湯張り量だけ湯張りし所定時間保温及び、浴槽6内の水位が所定量低下すると設定された水位まで所定温度の補水を行わせる風呂自動スイッチ30と、浴槽水を追い焚きさせる追い焚きスイッチ31が設けられているものである。
【0017】
32は貯湯タンクユニット1内の各センサの入力を受け各アクチュエータの駆動を制御するマイコンを有し制御部を構成する給湯制御部である。この給湯制御部32に前記リモコン6が無線または有線により接続されユーザーが任意の給湯設定温度および風呂設定温度を設定できるようにしているものである。
【0018】
33は風呂往き管11途中に備えられた圧力センサから成る水位センサで、設置時等予め浴槽7の丁度良い湯張り量を設定し、この湯張り量の2/3を湯張り後の水位を水位センサ33で検知し、これを基準水位として給湯制御部32に記憶し残りの1/3を湯張りして設定水位とするものである。
【0019】
34は給水の圧力を減圧する減圧弁、35は給湯する湯水の量をカウントする給湯流量カウンタ、36は風呂往き管11に備えられた循環口37より上に湯水があることを検知するフローセンサ、38は湯温センサ、39は循環電動弁、40は給水の温度を検出する給水温度センサである。
【0020】
次にこの一実施形態の作動を説明する。
先ず、深夜電力時間帯になって貯湯温度センサ27が貯湯タンク2内に翌日に必要な熱量が残っていないことを検出すると、給湯制御部32は下部ヒータ3と上部ヒータ4に対して沸き上げ開始指令を発する。指令を受けた下部ヒータ3と上部ヒータ4は通電を開始して、貯湯タンク2内の湯水を朝の所定時間までに高温に沸き上げて貯湯する。
【0021】
次に給湯運転について説明すると、給湯栓5を開くと、給水管18からの給水が貯湯タンク2内に流れ込む。そして貯湯タンク2に貯められた高温水が出湯管17を介して給湯混合弁16へ流入し、給水バイパス管19からの低温水と混合され、給湯制御部32により給湯混合弁16の混合比率が調整されて給湯設定温度の湯が給湯栓5から給湯される。そして、給湯栓5の閉止によって給湯が終了するものである。
【0022】
次に風呂の追い焚き運転について図2のフローチャートで説明すると、風呂温度を設定後にリモコン6の追い焚きスイッチ31を押圧することで、ステップ41で追い焚き運転が開始され、ステップ42で三方弁13を風呂熱交換器8側全閉、バイパス管14側全開状態とし、ステップ43に進んで風呂循環ポンプ10をONし、そしてステップ44で30秒経過したか判断し、YESでステップ45に進んでフローセンサ36がONしたかを判断するものである。
【0023】
浴槽7内に浴湯がある場合には、YESでステップ46で湯温センサ38で現在の浴湯温度を検知し、この温度が風呂設定温度より低いかを判断し、低くてYESではステップ47で三方弁13を駆動させて風呂熱交換器8側を半開、バイパス管14側を半開状態とし、風呂熱交換器8内で貯湯タンク2内の高温水で加熱された高温の残湯に、バイパス管14を介して低温の浴湯を混合させて、その温度を下げて浴槽7に流入させて火傷や不快感を防止しようとするものである。
【0024】
この状態で浴槽7内の浴湯が順次風呂熱交換器8に循環して追い焚きが行われるものであるが、前記ステップ47の次はステップ48で30秒経過したかを判断し、YESでステップ49に進み循環温度センサ15による混合後の検知温水温度が所定温度以下かを判断し、55℃以下の場合はYESでステップ50に進んで三方弁13を風呂熱交換器8全開方向に向かって0.3秒駆動した位置とし、ステップ51に進んでフローセンサ36がON状態かを判断し、YESではステップ52で湯温センサ38による湯温検知で風呂設定温度以下かを判断し、YESでステップ53に進み循環温度センサ15による混合後の検知温水温度が所定温度以下かを判断し、再び55℃以下の時はYESでステップ54に進み三方弁13を駆動させて、風呂熱交換器8側を全開にすると共にバイパス管14側を全閉とし、本格的な追い焚き運転に移行するものである。
【0025】
従って、風呂熱交換器8内に高温水がなくなったことを検知して直ぐに三方弁13を全開側に切換るのではなく、一旦全開側に少し移動させてから、再度温度検知して最終確認をして切換るので、浴水温度に影響されることなく、確実に高温水の浴槽7への流出を防止出来るものであり、更に一度全開側に移動してから全開するので、全開までの時間の短縮が行え追い焚きも早く完了出来るものである。
【0026】
次にステップ54で風呂熱交換器8側を全開とした後は、ステップ55に進みフローセンサ36で継続した流れを検知したならば、YESでステップ56で風呂設定温度になるまで浴槽7の浴水を風呂熱交換器8で加熱する追い焚き運転を行うもので、風呂設定温度に達するとステップ57に進んで風呂循環ポンプ10をOFFし、ステップ58で三方弁13を風呂熱交換器8側全閉、バイパス管14側全開状態とし、ステップ59で追い焚き運転を終了させるものである。
【0027】
一方、ステップ45で流水がなくNOの場合は、ステップ60に進んで5分経過を待って、それでも流水がない時には、ステップ61で風呂循環ポンプ10をOFFし、ステップ62でフローセンサ36の断線エラーを表示させるものである。
【0028】
更に追い焚き運転中に浴槽7への入浴の有無を、該浴槽7水位の変動と言うことで水位センサ33が検知し、入浴されていない時には、火傷防止ようの三方弁13の制御は不用として、即風呂熱交換器8側を全開としたり、確認の為に2段階で行っている三方弁13の切換を1回で行うようにしたり、循環温度センサ15の判定温度55℃以下を60℃以下に高くし、入浴者がいない時には火傷の危険がないので、追い焚き運転を優先させるようにして使用勝手を良くするものであり、自動運転の沸き上がり完了前の追い焚き運転でも、沸き上がり前であるので入浴者の存在はなく、同様な追い焚き運転優先制御が行われるものである。
【0029】
又追い焚き運転優先のもう一つの方法としては、三方弁13の駆動速度を入浴者がいない時には、通常のいる時に比べて早くして、追い焚き運転時間の短縮を図るものである。
【0030】
又この実施形態では、電気ヒータを加熱源とした電気温水器を例に上げて説明したが、ヒートポンプ回路を加熱源として備え深夜電力や契約電力等を利用して、貯湯するヒートポンプ式給湯機でも良いことは勿論である
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態を示す貯湯式給湯装置の概略構成図。
【図2】同自動運転を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0032】
2 貯湯タンク
7 浴槽
8 風呂熱交換器
10 風呂循環ポンプ
12 風呂循環回路
13 三方弁(流路調節手段)
14 バイパス管
15 循環温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンク内の上部に備えられた風呂熱交換器と、該風呂熱交換器と浴槽とを連通し、浴槽水を循環させる風呂循環ポンプを備えた風呂循環回路とを備え、更に風呂循環回路には風呂熱交換器をバイパスするバイパス管と、浴槽水の流路を風呂熱交換器側とバイパス管側とで調節する流路調節手段を備えたものに於いて、前記流路調節手段は、流路調節後の浴槽水温度を検知する循環温度センサの検知温度によって調節されるもので、保温或いは追い焚き開始時には風呂熱交換器側とバイパス管側がそれぞれ半開状態で、風呂熱交換器側の全開に向かって、循環温度センサによる浴槽水温度の検知と流路調節手段の駆動を複数回行う事を特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記流路調節手段による流路調節は、浴槽への入浴を検知しない時或いは、自動運転の沸き上がり完了前には、調節回数を減少させたり、或いは調節せずに最初から風呂熱交換器側を全開としたり、或いは循環温度センサによる検知温度の切換判定温度を高くする事を特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記流路調節手段は、三方弁或いはミキシング弁で構成した事を特徴とする請求項1又は2記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記三方弁或いはミキシング弁の駆動速度を、浴槽への入浴を検知しない時或いは、自動運転の沸き上がり完了前の保温或いは追い焚き運転時には、早くした事を特徴とする請求項3記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−64335(P2006−64335A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250002(P2004−250002)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】