説明

車両の操作特性制御装置

【課題】 煩雑な作業を要することなく、乗員の操作に対して最適な状態に車両が制御されるような車両の操作特性制御装置を提供すること。
【解決手段】 乗員の体重を検知する荷重センサ11と、乗員によって操作される操舵ハンドル12と、操舵ハンドル12の操作に基づいて作動するとともに、この作動によって車両の進行方向を変化させる操舵輪13と、操舵ハンドル12に付与される操作力と操舵輪13にアシストされる操舵力との関係を示す特性を、荷重センサ11が検知した乗員の体格に応じて設定する制御回路15とを備える車両の操作特性制御装置10。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗員の手動による操作に基づいて制御される車両の様々な状態が、乗員個々の能力に応じて適切に制御されるような車両の操作特性制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の技術として、特開平2−24269号公報に開示される技術がある。この公報には、ハンドルの操舵方向に応じてステアリングバルブを切換え、パワーシリンダへの供給流量を制御するパワーステアリング装置において、パワーシリンダへの供給流量を制御する電磁流量制御弁への通電量をドライバーの腕力に応じて制御する技術が開示されている。
【0003】この技術によると、腕力に応じて操舵アシスト力を選択することができ、ドライバーの腕力にあった操舵アシスト力を制御できるので、操舵が安定するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述した従来技術では、ドライバーの腕力を測定する腕力測定装置は、ドライバーの腕に筋肉の緊張度を測定する筋力センサを貼り付け、エンジンを駆動する以前にステアリングホイールを回転させたときの舵角と筋肉の緊張度で腕力の度合いを測定するものであり、ドライバーが代わる度にこのような腕力測定をしなければならず、非常に煩雑であった。
【0005】そこで本発明は、上記した問題点を解決すべく、煩雑な作業を要することなく、乗員の操作に対して最適な状態に車両が制御されるような車両の操作特性制御装置を提供することを技術的課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために請求項1の発明は、乗員の体格を検知する体格検知手段と、乗員によって操作される操作手段と、該操作手段の操作に基づいて作動するとともに、この作動によって車両の状態を変化させる被操作手段と、前記操作手段に付与される操作力と前記被操作手段の作動によって変化する車両の状態との関係を示す特性を、前記体格検知手段が検知した乗員の体格に応じて変更する操作特性設定手段とを備えるようにした。
【0007】請求項1によると、操作特性設定手段は、乗員の腕力ではなく体格に応じて操作手段の操作力と被操作手段の作動によって変化する車両の状態との関係を示す特性(以下、操作特性と称す)を変更するようにしているので、従来技術に示した腕力測定装置のような煩雑な作業を要する装置を用いる必要がない。したがって、煩雑な作業を要することなく、乗員の操作に対して適切な状態に車両を制御することができる。尚、本発明における乗員の体格とは、乗員の体重、乗員の体の大きさ、あるいはそれらと同等のことを意味する。また、本発明における乗員とは、車両を運転する運転者及び車両の助手席や後部座席に乗っているものも含むものとする。
【0008】ここで、体格検知手段は、エアバックを作動可能な状態にするか否かの判断、或いはエアバックが作動可能な状態におけるエアバックの作動具合の制御に用いられている。したがって、エアバックの作動の制御に用いる体格検知手段を本発明の車両の操作特性制御装置に流用すれば、ハードウェアを増やす必要がなく、好適である。
【0009】具体的には、請求項2に示すように、前記操作特性設定手段が、前記操作手段を所定量だけ操作する際に必要な操作力の大きさを乗員の体格に応じて変更することにより前記特性を変更すると、好適である。
【0010】ここで、一般的には乗員の体格が小さいほど腕力は小さいと想定されるので、体格の小さい乗員に対しては、車両の状態を変化させる際に操作手段の操作に要する操作力は小さくしたほうが好適である。そこで、請求項3に示すように、前記操作特性設定手段は、前記体格検知手段が検知する乗員の体格が大きくなるにつれて、前記操作手段に付与された操作力に対する車両の状態の変化の割合が小さくなるように、前記特性を変更することで、乗員の体格に応じた適切な操作力で車両の状態を制御することが可能になる。
【0011】本発明における体格検知手段は、請求項4に具体的に説明されるように、乗員の体重を検知する体重検知センサ、乗員の着座位置を検出する着座位置センサ、超音波により乗員の体格を検知する超音波センサ、或いは画像により乗員の体格を認識する画像認識センサとすることが考えられる。このようなセンサを用いることにより、基本的には乗員がシートに座るだけでその体格を検知することができ、好適である。ここで、画像認識センサを用いる際には、乗員の外郭(体格)を認識するだけでなく、乗員の性別や乗員の目の位置等、体格以外の乗員の特徴も認識することが可能であり、乗員に応じたより精度の高い車両の状態の制御が可能になる。
【0012】請求項5から請求項9は、本発明における操作手段及び被操作手段を具体的に説明したものであり、請求項5においては、前記操作手段は操舵ハンドルであり、前記被操作手段は操舵ハンドルの操舵角度に基づいて操舵される車両の操舵輪であり、前記操作特性設定手段は、操舵輪を所定角度だけ操舵させるのに必要なハンドルの操作力を運転者の体格に応じて変更するようにしたことである。請求項6は請求項5を更に具体的に説明したものであり、前記車両の操作特性制御装置は、前記操舵ハンドルの操作に伴って前記操舵輪を操舵させる力を発生するパワーステアリング装置を有し、前記操作特性設定手段は、前記パワーステアリング装置が発生する操舵力を運転者の体格に応じて変更するようにしたことである。
【0013】請求項7においては、前記操作手段は車両のブレーキペダルであり、前記被操作手段は車輪に制動力を付与するブレーキ装置であり、前記操作特性設定手段は、ブレーキペダルの操作力に対してブレーキ装置が発生する制動力を、運転者の体格に応じて変更するようにしたことである。
【0014】請求項8においては、前記操作手段は車両のアクセルペダルであり、前記被制御手段は車両に駆動力を付与する駆動力発生装置であり、前記操作特性設定手段は、アクセルペダルの操作力に対して前記駆動力発生装置が発生する駆動力を、運転者の体格に応じて変更するようにしたことである。
【0015】また、請求項9においては、前記操作手段は切換スイッチであり、前記被操作手段は前記切換スイッチが切換操作されることによって作動される作動部材であり、前記操作特性設定手段は、前記切換スイッチを切換えるのに要する操作力を、乗員の体格に応じて変更するようにしたことである。
【0016】請求項5から請求項8に関しては、運転者による操作手段の操作力或いは操作量に応じて、被操作手段による車両の状態の変化を任意に制御する場合の具体例を示している。請求項5から請求項8によると、操作特性設定手段によって、運転者によるハンドル、ブレーキペダル或いはアクセルペダルの操作に対する車輪の舵角、車両の制動力、車両の駆動力が適切な値に制御される。
【0017】請求項9によると、操作特性設定手段により、乗員が切換スイッチを操作するのに必要な操作力、すなわち切換スイッチを切換えるのに要する操作力が乗員の体格に応じて変更されるので、乗員は切換スイッチを円滑に操作して作動部材を作動させることができる。
【0018】尚、請求項9における切換スイッチとしては、例えばウィンカーを作動させるウィンカースイッチ、ワイパーを作動させるワイパースイッチ、パワーウィンドウを開閉させるウィンドウスイッチ、サンルーフを開閉させるサンルーフスイッチ、電動でシートの位置を調整するパワーシートスイッチ等が考えられる。また、これら切換スイッチに対応する作動部材としては、車両のウィンカー、ワイパー、窓、サンルーフ、パワーシート等が考えられる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、第1の実施形態における車両の操作特性制御装置10を示す概略図である。
【0020】第1の実施形態における車両の操作特性制御装置10は、乗員の体格を検知する体格検知手段11と、乗員によって操作される操作手段である操舵ハンドル12と、操舵ハンドル12の操作に基づいて作動される被操作手段である車両の操舵輪13と、操舵ハンドル12の操作に伴って操舵輪13を操舵させる力を発生するパワーステアリング装置14と、乗員によって操舵ハンドル12に付与される操作力とパワーステアリング装置14によって操作される車両の操舵輪13との関係を示す特性を、体格検知手段11が検知した乗員の体格に応じて変更するようにパワーステアリング装置14を制御する操作特性設定手段である制御回路15とを備えている。
【0021】第1の実施形態におけるパワーステアリング装置14は、操舵ハンドル12と操舵輪13とが機械的に接続されるとともに操舵輪13を操舵可能な電動モータ14Aを備えており、運転者が操舵ハンドル12に付与した操舵トルク(操作力)に電動モータ14の駆動トルクを足し合わせて操舵輪を操舵する力を発生させる、いわゆるトルクアシスト式のパワーステアリング装置である。そして、トルクセンサ18により運転者の操作による操舵ハンドル12の操舵トルクを電気信号に変換し、この電気信号に基づいて電動モータ14Aを回転駆動して操舵輪13を操舵するように動作する。操舵輪13の操舵をアシストする力は、電動モータ14Aに供給される電流値の大きさによって変化する。
【0022】第1の実施形態における体格検知手段11は、シート16をスライド可能に支持するシートレール17に取り付けられた荷重センサ11によって構成されている。荷重センサ11は歪みゲージにより構成され、1つのシート16に対してシートの前後方向に形成される2本のシートレール(図示は1本のみ)の前後方向にそれぞれ2個ずつ、合計4個設けられている。つまり、シート16の前後左右の4箇所にかかる荷重を各荷重センサ11にて検出し、これらの荷重センサ11の検出値から乗員の乗車によってシート16全体にかかる荷重、すなわち乗員の体重を検出している。このように検出された乗員の体重が、本発明における乗員の体格に相当する。
【0023】尚、操作特性設定手段である制御回路15は、電動パワーステアリング装置14への通電を制御する以外にも図示しない車両の各種センサと電気的に接続しており、各種センサの検出値に応じて、エンジン制御、ブレーキ制御、更には変速機の変速制御などを行っている。
【0024】このように構成された車両の操作特性制御装置10による本発明の主旨に係る制御について、図2のフロ−チャートを用いて説明する。先ず、ステップ101で荷重センサ11によって検知された運転者の体重を読み込む。次に、ステップ102に進み、読み込んだ体重が予め記憶された領域A、B、Cのうち、どの領域に属するかを判断する。そして、ステップ103にて、ステップ102で判断した運転者の体重の領域から、操舵ハンドル12に付与される操舵トルクに対するパワーステアリング装置14が操舵輪13を操舵する力の割合を設定する。つまり、操舵トルクと電動モータ14Aに供給する電流値の関係を示す特性マップを運転者の体重が属する領域に応じて設定する。この特性マップの設定は、制御回路15内に予め記憶されている表1にしたがって行われる。
【0025】
【表1】


ステップ103で選択される特性マップ1から3を、図3R>3に示す。図3からわかるように、第1の実施形態では、運転者の体重が大きくなるにつれ、操舵トルクに対する電動モータ14Aへの供給電流値が小さくなるように、特性マップ1から3のいずれかが選択される。特性マップが選択されるとステップ104に進み、トルクセンサ18にて検出される操舵ハンドル12の操舵トルクを読み込む。次に、ステップ105に進んで操舵トルクが発生しているか否かを判別し、操舵トルクが発生していればステップ106に進み、選択したマップにしたがって読み込んだ操舵トルクに応じた電流値を電動モータ14Aに供給する。ステップ105で操舵トルクが発生していないと判別された場合には、電動モータ14Aへの電流の供給を行うことなく、本制御を終了する。このように、操舵ハンドル12に付与される操舵トルクに対してパワーステアリング装置14がアシストする操舵輪13の作動の大きさは、運転者の体重に応じて設定されるので、運転者によらず車両の操舵が安定する。
【0026】上述した第1の実施形態の変形例として、操舵ハンドルと操舵輪とが機械的には接続されずに、パワーステアリング装置の駆動のみにより操舵輪を操舵する力を発生する形式のものや、電磁クラッチ等により操舵ハンドルと操舵輪とを機械的に接続・切離する形式のものを採用してもよい。
【0027】次に、本発明の第2の実施形態における車両の操作特性制御装置について説明する。第2の実施形態における車両の操作特性制御装置20の概略図を図4に示す。第2の実施形態における車両の操作特性制御装置20は、乗員の体格を検知する体格検知手段21と、乗員によって操作される操作手段であるブレーキペダル22と、ブレーキペダル22の操作に基づいて作動される被操作手段であるブレーキ装置23と、乗員によるブレーキペダル22の踏込み力とブレーキ装置23によって発生する車両の制動力との関係を示す特性を、体格検知手段21が検知した乗員の体格に応じて変更するように制御する操作特性設定手段である制御回路24とを備えている。第2の実施形態では、ブレーキペダル22の踏込み力とブレーキペダル22のストロークとの関係は一定であり、制動力の制御には、踏込み力の検知にはストロークセンサ25にて検知されるブレーキペダル22のストロークをパラメータとして用いている。
【0028】ブレーキ装置23について説明する。第2の実施形態のブレーキ装置23は、乗員によるブレーキペダル22のストローク(踏込み力に相当)を電気的信号に変換して、この電気的信号に基づいて車両に制動力を付与する、いわゆるバイワイヤ式のブレーキ装置である。このようなブレーキ装置23は、以下のようにして車両を制動する。
【0029】先ず、ブレーキペダル22が踏込まれていない状態からブレーキペダル22が踏込まれると、ブレーキペダル22のストロークに応じた電流が電動モータ26に供給されて電動モータ26が駆動する。電動モータ26が駆動すると、電動モータ26と連結するポンプ27も駆動する。ポンプ27の吐出口とホイールシリンダ28との間の液圧路には電磁弁29Aが、ポンプ27の吸入口とホイールシリンダ28との間には電磁弁29Bがそれぞれ配設されており、電磁弁29Aを開くとともに電磁弁29Bと閉じることでポンプ27から吐出されるブレーキ液圧がホイールシリンダ28に供給される。ホイールシリンダ28内にブレーキ液圧が供給されると、ブレーキ液圧の大きさに応じた制動力が車両に付与される。運転者が一定のストロークでブレーキペダル22を踏みつづけた場合には、一定の制動力で車両を制動させるべく、ホイールシリンダ28内のブレーキ液圧は一定の値に維持する必要がある。このときには、電磁弁29Aと電磁弁29Bをともに閉じることでホイールシリンダ28内のブレーキ液圧を一定の値に維持する。尚、このときには電動モータ26は駆動していない。また、ホイールシリンダ28内のブレーキ液圧は液圧センサ32によって検知されており、その検出信号は制御回路24に送られている。
【0030】次に、車両の制動力を消尽させるときには、ポンプ27の吸入口とホイールシリンダ28との間に配設される電磁弁29Bを切換えてポンプ27の吸入口とホイールシリンダ28との間を連通させることで、ホイールシリンダ28内のブレーキ液圧がストレーナ30に戻される。ストレーナ30に戻されたブレーキ液圧は、ポンプ27が駆動することによって吸入口から吸入され、再び吐出口から吐出される。ここで、車両の制動力はホイールシリンダ28に供給されるブレーキ液圧に相当し、ホイールシリンダ28に供給されるブレーキ液圧は、電磁弁29Aが開いている時にはポンプ27の駆動力に略比例する。ポンプ27は電動モータ26の駆動に伴って駆動され、電動モータ26の駆動力は電動モータ26に供給される電流値に比例する。つまり、車両の制動力は電動モータ26に供給される電流値に相当する。したがって、第2の実施形態のブレーキ装置23は、ブレーキペダル22のストロークと電動モータ26に供給する電流値との関係を示す特性マップを用いてストロークに応じた電流値を電動モータ26に供給することで、ブレーキペダル22のストロークに応じた制動力で車両を制動するようになっている。
【0031】体格検知手段21は、画像により乗員の体格を認識する画像認識センサであり、シート31に座っている運転者を撮像し、運転者の体の大きさ(体格)を検出するものである。更に、画像認識センサ21は、運転者の体の大きさのみならず運転者の性別や目の位置なども認識することも可能であるので、運転者に応じたより精度の高い車両の状態の制御が可能になる。
【0032】このように構成された車両の操作特性制御装置20による本発明の主旨に係る制御について、図5のフロ−チャートを用いて説明する。先ず、ステップ201で画像認識センサ21によって検知された運転者の体の大きさを読み込む。次に、ステップ202に進み、読み込んだ体の大きさが予め記憶された領域a、b、cのうち、どの領域に属するかを判断する。そして、ステップ203にて、ステップ202で判断した運転者の体の大きさの領域から、ブレーキペダル22の踏込み力に対するブレーキ装置23による車両の制動力の割合を設定する。この実施形態では踏込み力とストロークの関係は一定なので、ストロークに対するホイールシリンダ28内のブレーキ液圧の関係を示す特性を、運転者の体の大きさに応じて設定する。この設定は、制御回路24内に予め記憶されている表2にしたがい、特性マップ11から13のいずれかを選択することによって行われる。
【0033】
【表2】


ステップ203で選択される特性マップ11から13を、図6に示す。図6からわかるように、第2の実施形態では、運転者の体が大きくなるにつれて、ストロークに対するホイールシリンダ28のブレーキ液圧が小さくなるように、特性マップ11から13のいずれかが選択される。そして、ステップ204で、ブレーキペダル22のストロークを読み込み、ステップ205に進んでストロークが0より大きいか否か、つまりブレーキペダル22が踏込まれているか否かを判別する。ステップ205にてストロークが0より大きいと判別された場合には、ステップ206に進み、液圧センサ32により検出されるホイールシリンダ28内のブレーキ液圧が選択された特性マップに示されるブレーキ液圧となるように、電動モータ26、電磁弁29A及び電磁弁29Bの少なくとも1つへの通電を制御する。ステップ205にてストロークが0以下と判別された場合にはブレーキペダル22は踏込まれていないので、電動モータ26等への通電を行わない。このように、ブレーキペダル22のストロークに対してブレーキ装置23が発生する制動力の大きさは、運転者の体の大きさによって設定されるので、運転者の体格によらず車両の制動力が安定する。
【0034】ここで、第2の実施形態では、ブレーキペダル22の踏込み力とブレーキペダル22のストロークとの関係は変化させず、ストロークに対するホイールシリンダ28内のブレーキ液圧を運転者の体格に応じて変化させることで、ブレーキペダル22の踏込み力と車両の制動力との関係を示す特性を変化させていた。しかしながら、第2の実施形態の変形例として、ストロークに対するホイールシリンダ内のブレーキ液圧は変化させずに、ブレーキペダルの踏込み力とブレーキペダルのストロークとの関係を示す特性を運転者の体格に応じて変化させることで、結果としてブレーキペダルの踏込み力と車両の制動力との関係を示す特性を変化させてもよい。この変形例では、ストロークとブレーキ液圧との関係を示す特性マップは1つでよい。その代わり、ブレーキペダルの踏込み力とブレーキペダルのストロークとの関係を示す特性マップは、運転者の体格に応じて予め複数記憶する必要がある。
【0035】更に、第2の実施形態の別の変形例として、操作手段をアクセルペダル、被操作手段を車両に駆動力を付与する駆動力発生装置とし、操作特性設定手段によって、運転者がアクセルペダルを踏込む力に対して駆動力発生装置が発生する駆動力との関係を示す特性を、運転者の体格に応じて設定するようにしてもよい。また、操作手段をクラッチペダル、被操作手段を変速機とエンジンとを連結・切離可能なクラッチ装置とし、操作特性設定手段によって、運転者がクラッチペダルを踏込む力に対してクラッチ装置が変速機とエンジンとが切離される位置との関係を示す特性を、運転者の体格に応じて設定するようにしてもよい。これら変形例においては、バイワイヤ式の駆動力発生装置、クラッチ装置を採用することが好ましい。
【0036】次に、本発明の第3の実施形態における車両の操作特性制御装置について説明する。第3の実施形態における車両の操作特性制御装置40の概略図を図7に示す。第3の実施形態における車両の操作特性制御装置40は、乗員の体格を検知する体格検知手段41と、乗員によって操作される操作手段である切換スイッチ42と、切換スイッチ42の切換操作に基づいて作動される被操作手段である作動部材43と、切換スイッチ42を切換えるのに要する操作力を乗員の体格に応じて設定する操作特性設定手段である制御回路44とを備えている。
【0037】第3の実施形態において、切換スイッチ42は車両の窓を開閉するためのパワーウィンドウスイッチであり、作動部材43は窓である。パワーウィンドウスイッチ42が操作されると、ウィンドウレギュレータ45が駆動して窓43が開閉する。図8はパワーウィンドウスイッチ42近傍の拡大図である。パワーウィンドウスイッチ42は、窓43を開閉操作する際に乗員が押すスイッチ本体421と基板422とを有し、スイッチ本体421の下部には開側部421Aと閉側部421Bとが形成されている。また、基板422の上面には開側端子422A及び閉側端子422Bが形成されている。
【0038】乗員によるスイッチ本体421の操作により開側部421Aが開側端子422Aに接触すると、電動モータ423が正転して窓43が開く。また、乗員によるスイッチ本体421の操作により閉側部421Bが閉側端子422Bに接触すると、電動モータ423が逆転して窓43が閉まる。そして、乗員による操作が行われないときには開側部421A及び閉側部421Bと開側端子422A及び閉側端子422Bとが接触しないように、開側部421A及び閉側部421Bと開側端子422A及び閉側端子422Bとの間にはそれぞれコイルスプリング424A、424Bが配設されている。ここで、乗員の操作によって開側部421Aと開側端子422A、及び閉側部421Bと閉側端子422Bとが同時に接触することがないように、基板422の上面には上方に向けて突出する突出部422Cが形成されている。基板422は車両ドア本体46と別体に構成され、スイッチ本体421との上下方向の距離が変化するように移動可能である。基板422の上下方向の移動は電動モータ423の駆動によって行われ、電動モータ423の駆動は制御回路44によって制御される。尚、体格検知手段41は先述した第1の実施形態で示した荷重センサ11と同一として、説明を省略する。
【0039】このように構成された車両の操作特性制御装置40による本発明の主旨に係る制御について、図9のフロ−チャートを用いて説明する。先ず、ステップ301で荷重センサ41によって検知された運転者の体重を読み込む。次に、ステップ302に進み、ステップ301にて読み込んだ運転者の体重から、パワーウィンドウスイッチ42を切換えるのに要する操作力を、乗員の体格に応じて設定する。つまり、パワーウィンドウスイッチ42の開側部421A或いは閉側部421Bを開側端子422A或いは閉側端子422Bに接触させるのに必要な操作力を運転者の体重に応じて設定する。そして、ステップ303で、ステップ302で設定した操作力で実際にパワーウィンドウスイッチ42が操作されるように、電動モータ423を駆動させて基板422を移動させる。ここで、開側部421A及び閉側部421Bが開側端子422A及び閉側端子422Bに近づくように基板422が移動すると、開側部421A或いは閉側部421Bを開側端子422A或いは閉側端子422Bに接触させるまでにコイルスプリング424A或いは424Bが撓む量が小さくなるので、パワーウィンドウスイッチ42を操作するのに要する力は小さくなる。これとは逆に、開側部421A及び閉側部421Bが開側端子422A及び閉側端子422Bから離れるように基板422が移動すると、開側部421A或いは閉側部421Bを開側端子422A或いは閉側端子422Bに接触させるまでにコイルスプリング424A或いは424Bが撓む量が大きくなるので、パワーウィンドウスイッチ42を操作するのに要する力は大きくなる。
【0040】このように、パワーウィンドウスイッチ42を操作するのに要する操作力を乗員の体重に応じて設定するようにしたので、乗員に応じた節度感でスイッチ42を操作して窓43を開閉することができる。ここで、乗員とは、運転者に限らず助手席や後部座席に座っているものも考慮される。
【0041】第3の実施形態の変形例としては、切換スイッチにウィンカーを作動させるウィンカースイッチ、ワイパーを作動させるワイパースイッチ、サンルーフを開閉させるサンルーフスイッチ、電動でシートの位置を調整するパワーシートスイッチを採用することが考えられる。このような切換スイッチに対応する作動部材は、車両のウィンカー、ワイパー、サンルーフ、パワーシートである。これらの変形例においても、第3の実施形態と同様に端子を形成する基板をモータ等で駆動させてスイッチとの距離を変化させることにより、乗員の体格に応じてスイッチの節度感を設定することが可能である。
【0042】上述した第1から第3の実施形態の変形例として、体格検知手段として、例えばシートの人体と隣接する箇所に静電容量コンデンサを配して、静電容量の変化によって乗員の着座位置を検知する体重センサや、シート内に配されて、フィルム内に複数の導線を形成し、負荷のかかった箇所の導線同士を電気的に接続して乗員の体格(大きさ)を検知する着座位置センサを用いてもよい。更に、超音波により乗員の体格を検知する超音波センサを用いてもよい。
【0043】上述した第1から第3の実施形態に関して、乗員の体格に応じて操作特性を設定するようにしたので、従来技術のように煩雑な作業を要することなく、車両の状態を安定して制御することができる。更に、エアバックを作動可能な状態にするか否かの判断のために既に体格検知手段を備えている車両においては、本発明の車両の操作特性制御装置を実施するにあたりハードウェアを増やす必要がなく、好適である。
【0044】
【発明の効果】本発明によると、煩雑な作業を要することなく、乗員の操作に対して適切な状態に車両を制御することができる。すなわち、各乗員の体格に応じて操作力が適切に設定されることで、車両の状態を安定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における車両の操作特性制御装置を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態における車両の操作特性制御装置のフローチャートである。
【図3】第1の実施形態における特性マップを示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における車両の操作特性制御装置を示す概略図である。
【図5】第2の実施形態における車両の操作特性制御装置のフローチャートである。
【図6】第2の実施形態における特性マップを示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における車両の操作特性制御装置を示す概略図である。
【図8】図7の一部拡大図である。
【図9】第3の実施形態における車両の操作特性制御装置のフローチャートである。
【符号の説明】
10、20、40・・・車両の操作特性制御装置
11、41・・・荷重センサ(体格検知手段)
12・・・操舵ハンドル(操作手段)
13・・・操舵輪(被操作手段)
14・・・パワーステアリング装置
14A、26、423・・・電動モータ
15、24、44・・・制御回路(操作特性設定手段)
16、31・・・シート
17・・・シートレール
21・・・画像認識センサ(体格検知手段)
22・・・ブレーキペダル
23・・・ブレーキ装置
25・・・ストロークセンサ
27・・・ポンプ
28・・・ホイールシリンダ
29A、29B・・・電磁弁
30・・・ストレーナ
42・・・パワーウィンドウスイッチ(切換スイッチ)
421・・・スイッチ本体
422・・・基板
424・・・コイルスプリング
43・・・窓(作動部材)
45・・・ウィンドウレギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 乗員の体格を検知する体格検知手段と、乗員によって操作される操作手段と、該操作手段の操作に基づいて作動するとともに、この作動によって車両の状態を変化させる被操作手段と、前記操作手段に付与される操作力と前記被操作手段の作動によって変化する車両の状態との関係を示す特性を、前記体格検知手段が検知した乗員の体格に応じて設定する操作特性設定手段と、を備えることを特徴とする車両の操作特性制御装置。
【請求項2】 前記操作特性設定手段は、前記操作手段を所定量だけ操作する際に必要な操作力の大きさを乗員の体格に応じて設定することにより、前記特性を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の操作特性制御装置。
【請求項3】 前記操作特性設定手段は、前記体格検知手段が検知する乗員の体格が大きくなるにつれて、前記操作手段に付与された操作力に対する車両の状態の変化の割合が小さくなるように、前記特性を設定することを特徴とする請求項1或いは請求項2のいずれか1項に記載の車両の操作特性制御装置。
【請求項4】 前記体格検知手段は、乗員の体重を検知する体重検知センサ、乗員の着座位置を検出する着座位置センサ、超音波により乗員の体格を検知する超音波センサ、画像により乗員の体格を認識する画像認識センサであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の操作特性制御装置。
【請求項5】 前記操作手段は操舵ハンドルであり、前記被操作手段は操舵ハンドルの操舵角度に基づいて操舵される車両の操舵輪であり、前記操作特性設定手段は、操舵輪を所定角度だけ操舵させるのに必要なハンドルの操作力を運転者の体格に応じて設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の操作特性制御装置。
【請求項6】 前記車両の操作特性制御装置は、前記操舵ハンドルの操作に伴って前記操舵輪を操舵させる力を発生するパワーステアリング装置を有し、前記操作特性設定手段は、前記パワーステアリング装置が発生する操舵力を運転者の体格に応じて設定することを特徴とする請求項5に記載の車両の操作特性制御装置。
【請求項7】 前記操作手段は車両のブレーキペダルであり、前記被操作手段は車輪に制動力を付与するブレーキ装置であり、前記操作特性設定手段は、運転者がブレーキペダルを踏込む力に対してブレーキ装置が発生する制動力を、運転者の体格に応じて設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の操作特性制御装置。
【請求項8】 前記操作手段は車両のアクセルペダルであり、前記被制御手段は車両に駆動力を付与する駆動力発生装置であり、前記操作特性設定手段は、運転者がアクセルペダルを踏込む力に対して前記駆動力発生装置が発生する駆動力を、運転者の体格に応じて設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の操作特性制御装置。
【請求項9】 前記操作手段は切換スイッチであり、前記被操作手段は前記切換スイッチが切換操作されることによって作動される作動部材であり、前記操作特性設定手段は、前記切換スイッチを切換えるのに要する操作力を、乗員の体格に応じて設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の操作特性制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2003−212143(P2003−212143A)
【公開日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−16205(P2002−16205)
【出願日】平成14年1月24日(2002.1.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】