説明

通信端末及びデータ通信システム

【課題】通信端末が電源として備え持つ電池の長寿命化を図ることができる通信端末及びデータ通信システムを提供する。
【解決手段】スマート通信を実行しない通常時は、第1スイッチ25をオフして通信制御回路12を電池19から切り離して、通信制御回路12を電源オフ状態とする。車両1の発信機8(9)から発信された電力電波Svcを電子キー2が受信すると、この電力電波Svcは充電回路21で充電される。そして、充電回路21の充電値が閾値を超えると、第1スイッチ25がオンに切り換わり、通信制御回路12が電池19と電気的に繋がった状態になり、電源オン状態に切り換わる。これにより、電子キー2が起動し、車両1とのスマート通信が実行可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種データを無線通信により外部に発信可能な通信端末及びデータ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のキーシステムとしては、キーが固有に持つキーコードを無線で発信する電子キーを車両キーとして使用する電子キーシステム(特許文献1等参照)が広く使用されている。電子キーシステムは、電子キーから発信されたキーコードを車両が受信すると、車両がID照合を行い、電子キーのキーコードが車両と一致してID照合が成立すれば、車両ドアロック施解錠やエンジン始動を許可又は実行する。この種の電子キーシステムには、キーコード発信にキー側でボタン操作を必要とするワイヤレスキーシステムや、車両から出されたリクエストに応答して自動でキーコードを車両に返信するキー操作フリーシステム等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、電子キーは、キー内部に収納した電池を電源として動く。ところで、電池はキーの各種電子部品に対し、例えばプリント基板上の配線を介して常時繋がった状態をとっているので、キーの電気回路には、通信を実行していない間も電流が流れる、いわゆる待機電流が流れる状態をとってしまう。このように、キーの電気回路に待機電流が流れると、その分だけ電池の電力を余計に消費することになるので、これが電池寿命を悪化させる要因となっていた。
【0005】
特に、この種の電子キーの通信は、車両のドアロック施解錠やエンジン始動の操作という例えば1日に数回のみ実行されるものであることから、電子キーは、殆どの時間帯において待機状態をとる現状がある。このため、電子キーの電池寿命は、待機電流によって大きく影響を受ける現状があるので、待機電流を極力少なくすることは、電子キーの長寿命化に非常に効果が高いということも、待機電流抑制は非常に意味がある。また、キー操作フリーシステムは、リクエストを探査してキーコードを発信する動作をとるので、大きな電力が必要となり、この場合は電池の電力浪費が顕著になる現状もあった。
【0006】
本発明の目的は、通信端末が電源として備え持つ電池の長寿命化を図ることができる通信端末及びデータ通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、データ通信の実行動作を管理する制御回路が、自身が持つ電池の電力によって動作することにより、データ発信及びデータ受信の少なくとも一方のデータ通信動作を実行する通信端末において、前記制御回路及び前記電池の間に設けられ、通常は前記電池を前記制御回路から電気的に切り離して、前記制御回路を電源オフするスイッチ手段と、電力になり得る電波として外部から発信された電力電波をアンテナで受信すると、当該電力電波を充電するとともに、この充電値が設定値を超えると、前記電池と前記制御回路とが電気的に繋がる状態に前記スイッチ手段を切り換えて前記制御回路を電源オンすることにより、前記制御回路のデータ通信動作を可能とする充電手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、外部から発信された電力電波を通信端末が受信すると、この電波が充電手段によって充電される。そして、この充電値が設定値を超えると、それまで電気的に切り離されていた制御回路と電池とが繋がり、この電池を電源として制御回路が電源オンし、データ通信の実行動作、即ちデータ通信動作が実行可能となる。よって、本構成の場合は、データ通信動作を実行しない間は、電池を制御回路から切り離して通信端末の電気回路をオープン回路とするので、通信端末の電気回路に待機電流を流さずに済む。このため、待機電流を要因とする電力消費の問題が生じず、電池の長寿命化を図ることが可能となる。また、このようにデータ通信しないとき、制御回路を電源オフで待機するようにしても、外部から得る電力電波によって制御回路を起動させるので、制御回路を電池から切り離して待機させる動作をとらせても、データ通信を実行したい電力必要時には、制御回路を問題なく起動させることが可能となる。
【0009】
本発明では、電源オンした前記制御回路によるデータ発信動作が完了したか否かを監視する監視手段と、前記データ発信動作が完了した際、前記充電手段に充電された電力を外部に放電することにより、前記スイッチ手段を元のスイッチ状態に戻して、前記制御回路を元の電源オフに戻す放電手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、通信端末のデータ発信動作が完了すると、スイッチ手段を動作状態(即ち、電池を制御回路に繋げる状態)に切り換えるのに必要とした充電電圧を、放電手段により放電して、スイッチ手段を元の非動作状態(即ち、電池を制御回路から切り離した状態)に戻す動作がとられる。このため、データ発信動作完了後は、スイッチ手段を動作前の元の状態に直ちに戻すことが可能となる。
【0011】
本発明では、データ受信及びデータ発信の両通信を可能とするデータ送受信手段と、前記充電によって前記制御回路を前記電池に繋げた後、前記データ送受信手段で受信する通信データのデータ内容を確認し、当該通信データが正常でない場合に、前記放電手段により前記充電手段を強制的に放電して、前記スイッチ手段を元の状態に直ちに復帰させる復帰手段とを備えたことを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、例えば仮に電力電波としてノイズを受信して、このノイズによって制御回路が電池と繋がって動作可能となっても、このときは正規データを受信できないので、制御回路は電池から直ちに切り離される。このため、仮に制御回路がノイズによって電源オン状態をとっても、この電源オン状態のまま放置されないので、電池の長寿命化を図る上で非常に効果が高くなる。
【0013】
本発明では、データ通信を管理する制御回路が、端末の電源である電池の電力によって動作することにより、データ発信及びデータ受信の少なくとも一方のデータ通信動作を実行する通信端末と、当該通信端末の通信相手として通信機とを備えたデータ通信システムであって、前記制御回路及び前記電池の間に設けられ、通常は前記電池を前記制御回路から電気的に切り離して、前記制御回路を電源オフするスイッチ手段と、電力になり得る電波として前記通信機から発信された電力電波をアンテナで受信すると、当該電力電波を充電するとともに、この充電値が設定値を超えると、前記電池と前記制御回路とが電気的に繋がる状態に前記スイッチ手段を切り換えて前記制御回路を電源オンすることにより、前記制御回路のデータ通信動作を可能とする充電手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通信端末が電源として備え持つ電池の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態における電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】無線電力伝送システムを応用した電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図3】電力電波により通信制御回路が電池に繋がった状態を示すブロック図。
【図4】充電回路が放電されて通信制御回路が電池から切り離された状態を示すブロック図。
【図5】電力電波及びリクエスト電波の具体的な波形を示す波形図。
【図6】充電回路の充電時間と充電値との関係を示すグラフ。
【図7】別例における電子キーシステムの車両側の他構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した通信端末及びデータ通信システムの一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両キーとして使用される電子キー2との間でキーコードによりキー照合を行う電子キーシステム3と、車両ドア(座席ドア及びラッゲージドアも含む)のドアロックを施解錠するドアロックシステム4と、車両1の電源状態(電源ポジション)及びエンジン始動停止を管理するエンジンシステム5とが設けられている。なお、電子キー2は、車両1との間で狭域無線通信が可能であって、電子キー2が固有に持つIDコードを無線通信により車両1に発信して車両1にキー照合を行わせることが可能なキーのことをいう。なお、車両1が通信機に相当し、電子キー2が通信端末に相当する。
【0017】
電子キーシステム3には、電子キー2がIDコードを発信するときに個別のキー操作が不要であるキー操作フリーシステム6がある。キー操作フリーシステム6には、ドアロック施解錠操作の際にキー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステムがある。このスマートエントリーシステムでは、車両1に、電子キー2との間でキー照合(ID照合)を行う照合ECU(Electronic Control Unit)7が設けられている。照合ECU7には、車外にRF帯(Radio Frequency:約312MHz)の信号を発信すべく例えば車両ドア等に設置された車外発信機8と、車内に同じRF帯の信号を発信すべく車内床等に設置された車内発信機9と、RF帯の信号を受信可能な車両チューナ10とが接続されている。また、照合ECU7は、車内の一ネットワークである車内LAN(Local Area Network)11を介してドアロックシステム4及びエンジンシステム5に接続されている。
【0018】
また、電子キー2には、電子キー2の各種動作を統括制御する通信制御回路(制御IC:Integrated Circuit)12が設けられている。この通信制御回路12は、CPU(Central Processing Unit)13やメモリ14等の各種デバイスを持ち、電子キー2が持つ固有のキーコードとしてIDコードがメモリ14に登録されている。通信制御回路12には、RF帯の無線信号を受信可能なキー受信機15と、RF帯の無線信号を発信可能なキー発信機16とが接続されている。通信制御回路12は、キー受信機15でどの種の無線信号を受け付けたか否かを逐次監視するとともに、キー発信機16からの信号発信の動作を管理する。なお、通信制御回路12が制御回路及びデータ送受信手段を構成し、キー受信機15及びキー発信機16もデータ受信機を構成する。
【0019】
車両1が駐車状態の際、照合ECU7は、車外発信機8からRF帯のリクエスト信号Srqを断続的に発信させ、車両周辺にリクエスト信号Srqの車外通信エリアを形成して、狭域無線通信(以降、スマート通信と記す)の成立を試みる。電子キー2がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ14に登録されたIDコードを乗せたID信号SidをRF帯の信号で返信する。照合ECU7は、チューナ10でID信号Sidを受信してスマート通信(車外通信)が確立すると、自身のメモリ17に登録されたIDコードと電子キー2のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車外照合)を行う。照合ECU7は、この車外照合が成立したことを確認すると、ドアロックシステム4によるドアロック施解錠動作を許可又は実行する。なお、リクエスト信号Srqが通信データに相当する。
【0020】
また、キー操作フリーシステム6には、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なる車両1でのスイッチ操作のみでエンジン(図示略)の始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。このワンプッシュエンジンスタートシステムでは、例えばカーテシスイッチ(図示略)により運転者の車内への乗車が確認されると、照合ECU7はそれまでの車外発信機8からではなく、今度は車内発信機9からリクエスト信号Srqを発信して、車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU7は、電子キー2がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたID信号Sidをチューナ10で受信してスマート通信(車内通信)が確立すると、自身に登録されたIDコードと電子キー2のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車内照合)を行う。照合ECU7は、この車内照合が成立したことを確認すると、エンジンシステム5による電源状態切り換えを許可する。
【0021】
これにより、エンジンが停止状態の際、ブレーキペダルが踏み込まれた状態でプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ(図示略)がプッシュ操作されると、停止状態であったエンジンが起動状態に切り換わる。また、エンジンが可動状態の際、セレクトレバーのレンジ位置が駐車位置(Pレンジ)の状態でエンジンスイッチがプッシュ操作されると、今度はエンジンが停止状態に切り換わる。更に、エンジンが停止状態の際、ブレーキペダルは踏み込み操作されずにエンジンスイッチのみがプッシュ操作されると、このプッシュ操作の度に電源状態が電源オフ→ACCオン(アクセサリオン)→IGオン(イグニッションオン)の順に繰り返し切り換わる。
【0022】
図2に示すように、電子キーシステム3には、電子キー2の電源になり得る電力電波Svcを車両1から発信させ、この電力電波Svcによって電子キー2を動作させることにより電子キー2にスマート通信を実行させる無線電力伝送システム18が設けられている。本例の無線電力伝送システム18は、車両1からのリクエスト信号Sr qの発信の際に、電子キー2の駆動電源となり得る電波として電力電波Svcも同時に発信し、この電力電波Svcの無線電力によって、電子キー2の電池接続をオン状態、即ち電子キー2が自身の駆動源として持つ電池19を通信制御回路12と電気的に繋げる状態に切り換えて、電子キー2によるスマート通信を実行可能とするシステムである。
【0023】
この場合、車両1の車外発信機8(車内発信機9)には、リクエスト信号Srqの発信に際してこれに電力電波Svcを付加して発信させる電力伝送処理部20が設けられている。電力伝送処理部20は、発信機8,9がリクエスト信号Srqを電子キー2に発信するに先んじて、電力電波SvcをRF帯の周波数により車両1に向けて発信する。この電力電波Svcは、電子キー2の電源のための電波として使用できればよいものであるので、特別なデータ内容を含むものではなく、RF帯の周期に沿う波形を持った電波である。車外発信機8(車内発信機9)は、リクエスト信号Srqを電子キー2に発信するに際して、まずは最初に電力伝送処理部20で電力電波Svcを発信し、この発信に続けてリクエスト信号Srqを発信する動作をとってスマート通信を実行する。また、スマート通信の通信規格には、例えばRFID(Radio Frequency Identification)が採用されている。
【0024】
電子キー2には、車両1から発信された電力電波Svcの無線電力を充電する充電回路21が設けられている。この充電回路21は、電力電波Svcの受信アンテナ22と、電力充電箇所としてダイオード23及びコンデンサ24の直列回路とが設けられている。充電回路21は、受信アンテナ22で電力電波Svcを受信した際、この電力電波Svcから生じ得る電力成分をコンデンサ24に電荷として貯めることにより、電力電波Svcが持っている無線電力を充電する。なお、ダイオード23は、充電回路21において電流の逆流を防ぐ素子として働くものである。また、充電回路21が充電手段に相当し、受信アンテナ22がアンテナに相当する。
【0025】
また、通信制御回路12と電池19との間には、これら2者の電気的な接続のオンオフを切り換える第1スイッチ25が設けられている。この第1スイッチ25は、通信制御回路12を電池19に電気接続された状態とするのか、或いは電池19から電気的に切り離された状態にするのかを設定するものである。本例の第1スイッチ25は、例えばバイポーラ等のトランジスタが使用され、エミッタ端子が通信制御回路12に接続され、ベース端子がダイオード23及びコンデンサ24の中間端子(ノード)に接続され、コレクタ端子が電池19を介してGND(グランド)に接続されている。第1スイッチ25により通信制御回路12が電池19から電気的に切り離されると、電子キー2内の電気回路、即ち通信制御回路12を含む周辺回路がオープン回路となって、電源オフ状態をとる。なお、第1スイッチ25がスイッチ手段に相当する。
【0026】
本例において、第1スイッチ25のオンオフは、充電回路21の充電値(充電量)によって管理されている。即ち、充電回路21の充電値が閾値Vk(図6参照)を超えると、充電回路21から第1スイッチ25のベース端子に高電圧が供給され、第1スイッチ25がそれまでのオフ状態からオン状態に動作が切り換わる。これにより、図3に示すように、電池19から通信制御回路12に駆動電流が流れ、通信制御回路12がそれまでの電源オフから電源オンに動作状態が切り換わる。第1スイッチ25のオンにより通信制御回路12が電池19と電気的に繋がって電源オン状態になると、通信制御回路12によるデータ通信(例えば、データ受信やデータ発信)の各種動作が実行可能となる。以上により、本例の電子キー2(通信制御回路12)は、スマート通信を実行していない通信実行を待つ通常時、動作が休止した電源オフ状態をとり、スマート通信を実行するタイミングで電源オン状態に切り換わる動作推移をとる。なお、閾値Vkが設定値に相当する。
【0027】
電子キー2には、充電回路21に充電された電力を放電する放電回路26が設けられている。放電回路26は、充電回路21に貯められた電荷を放電することにより、オン状態に入った第1スイッチ25を元のオフ状態に切り換えるものである。本例の放電回路26は、第2スイッチ27及び抵抗28の直列回路からなる。第2スイッチ27は、例えばバイポーラ等のトランジスタが使用され、エミッタ端子が抵抗28を介してGNDに接続され、ベース端子が通信制御回路12に接続され、コレクタ端子が充電回路21及び第1スイッチ25の中間端子(ノード)に接続されている。なお、放電回路26が放電手段に相当する。
【0028】
通信制御回路12には、放電回路26の動作を管理する放電回路制御部29が設けられている。放電回路制御部29は、電池19を電源として通信制御回路12により実行されたスマート通信が完了したか否かを監視し、スマート通信が完了したことを確認すると、第2スイッチ27をオンする。これにより、図4に示すように、充電回路21に充電された電力が放電電流としてGND側に流れて充電回路21が放電され、暫くすると第1スイッチ25がオフに切り換わる。よって、通信制御回路12が電池19に対して電気的に切り離された電源オフ状態となって、電子キー2が通信不可の状態をとる。なお、放電回路制御部29が監視手段に相当する。
【0029】
また、通信制御回路12には、電源オンの起動後にキー受信機15で受信するデータが正規データか否かを確認するデータ確認部30が設けられている。データ確認部30は、第1スイッチ25がオンして通信制御回路12が電源オン状態となった際に起動し、この後にキー受信機15で受信する受信データが正常なものか否かを確認する。そして、データ確認部30は、受信データが正常なものであることを確認すると、通信動作を継続し、受信データが正常でないことを確認すると、直ちに放電回路26を作動させて充電回路21の電力を放電し、第1スイッチ25を強制的にオフに切り換えて通信制御回路12をオフし、通信動作を強制終了する。なお、データ確認部30が復帰手段に相当する。
【0030】
次に、本例の無線電力伝送システム18を用いた電子キーシステム3が実行するスマート通信の動作を図3〜図6に従って説明する。
照合ECU7は、キー操作フリーシステム6で行う動作として、スマート通信(車外照合、車内照合)の通信エリア内に電子キー2が存在するか否かを確認すべく、車外発信機8(車内発信機9)からリクエスト信号Srqを断続的に発信させて、リクエスト信号Srqの通信エリアを形成する。例えば、車外照合を行う際は、車外発信機8からリクエスト信号Srqを車外周囲に断続的に発信して、車両周囲にリクエスト信号Srqの通信エリアを形成する。また、車内照合を行う際は、車内発信機9からリクエスト信号Srqを車内全域に発信して、車内全域にリクエスト信号Srqの通信エリアを形成する。なお、以降の説明では、車外照合の例を挙げることとする。
【0031】
照合ECU7は、車外照合を実行するに際して、図5に示すように、リクエスト信号Srqを発信するのに先立ち、まずは電力伝送処理部20を動作させて、車外発信機8から電力電波SvcをRF帯の信号で発信させる。そして、照合ECU7は、電力電波Svcの発信後、この電力電波Svcに続けて、電力電波Svcと同じRF帯の信号でリクエスト信号Srqを発信する。即ち、照合ECU7は、電力電波Svc→リクエスト信号Srqの順に、これら無線信号を連続的にRF帯の信号で発信し、この発信動作を間欠的に実行して、車両周囲にリクエスト信号Srqの通信エリアを形成する。
【0032】
そして、電子キー2を所持したユーザが車両1に近づき、この車外通信エリアに電子キー2が入り込むと、電子キー2は、車両1から発信された2電波のうち、まずは電力電波Svcを充電回路21の受信アンテナ22で受信する状態をとる。このとき、受信した電力電波Svcによって充電回路21が充電状態に入り、電力電波Svcの継続受信に伴って、充電回路21が徐々に充電されていく。そして、充電回路21の充電値が閾値Vkを超えると、第1スイッチ25のベース電圧が高電圧をとり、第1スイッチ25がオン(図3の状態)する。これにより、通信制御回路12が電池19と電気的に繋がり、動作するのに必要な電源を得た電源オン状態をとる。これにより、通信制御回路12が作動可能状態となり、スマート通信動作の実行が可能となる。
【0033】
車両1からは、電力電波Svcに引き続いてリクエスト信号Srqが発信されているので、電力電波Svcによって起動状態をとった通信制御回路12は、電力電波Svcの受信の後に引き続いて、今度はキー受信機15でリクエスト信号Srqを受信する。通信制御回路12は、電源オン状態で受信データを受け付けると、この受信データをデータ処理し、受信データがリクエスト信号Srqであることを確認すると、このリクエスト信号Srqに応答してスマート通信の動作を実行する。この場合、通信制御回路12は、ID信号Sidを車両1に返信し、車両1にID照合を実行させる。そして、車両1との間のID照合が成立すれば、ドアロック施解錠やエンジン始動が許可又は実行される。
【0034】
放電回路制御部29は、電子キー2がスマート通信の実行下に入ると、このスマート通信がいつ終了するのかを監視する。そして、放電回路制御部29は、スマート通信のデータ転送が全て終了したことを確認すると、実行中であったスマート通信が終了したと認識し、放電回路26の第2スイッチ27をオン(図4の状態)する。これにより、充電回路21に蓄えられた電力が放電回路26を通ってGNDに流れ、充電回路21が放電される。そして、充電回路21の電力が閾値以下となると、それまでオン状態をとっていた第1スイッチ25がオフし、通信制御回路12が電池19から電気的に切り離された状態となる。これにより、通信制御回路12は電源オフ状態に戻り、待機電流を発生しない状態に戻る。また、通信制御回路12が電源オフ状態になると、通信制御回路12が休止に入るので、この休止動作に伴って放電動作も終了する。
【0035】
また、通信制御回路12が電池19と電気的に繋がった電源オン状態をとった際、データ確認部30は、このときに電子キー2が受け付けている受信データが正規データか否かを確認する。データ確認部30は、例えば受信データの先頭に存在するスタートビットを参照することにより、受信データが正規データか否かを確認する。データ確認部30は、受信データが正規データであることを確認できれば、通信動作を継続する。一方、受信データが正規データでないことを確認すると、通信制御回路12が例えばノイズ等の他の電波によって起動してしまったと判断する。よって、データ確認部30は、直ちに放電回路26の第2スイッチ27をオンして充電回路21の電力を放電し、通信制御回路12を元の電源オフ状態に強制的に戻す動作をとる。
【0036】
よって、本例においては、スマート通信を実行しない通常時、通信制御回路12を第1スイッチ25のオフ状態によって電池19から電気的に切り離して電源オフで待機させる。これにより、電子キー2内の電気回路がオープン回路となって電子キー2に待機電流が流れずに済むので、その分だけ電池19の長寿命化を図ることが可能となる。また、車両1から発信された電力電波Svcを電子キー2が受信すると、この電力電波Svcの電力によって第1スイッチ25がオン状態に切り換わり、通信制御回路12が電池19と電気的に繋がった状態になり、データ通信の実行動作が可能となる。よって、スマート通信を実行しない通常時に電子キー2を電源オフとしても、外部から受け付ける無線電力によって電子キー2は起動するので、通常時に電子キー2を休止させても、通信実行時には電子キー2を問題なく起動させることが可能となる。
【0037】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)スマート通信を実行しない通常時、通信制御回路12を電池19から切り離して電子キー2を電源オフしておき、電子キー2がスマート通信の通信エリアに入って電力電波Svcを受信すると、この電力電波Svcによって通信制御回路12を電池19に繋げて電子キー2を電源オンし、スマート通信を実行させる。このため、スマート通信を実行しない電源不必要時には、電子キー2の電源が切られるので、電子キー2内の電気回路に待機電流が流れずに済み、その分だけ電池19の長寿命化を図ることができる。また、通常時に電子キー2を電源オフさせても、車両1から発信される電力電波Svcによって電子キー2を起動させるので、通常時に電子キー2を休止させても、通信時には問題なく電子キー2を動作させることができる。
【0038】
(2)電子キーシステム3は1日に例えば数回のみ実行されるものであるので、電子キー2は1日において殆どの時間が通信実行待ちの待機状態をとる現状がある。このため、本例のように、電子キー2が通信を実行しない間、通信制御回路12を電池19から切り離して電子キー2の電源をオフするようにすれば、その長時間の間に亘って電子キー2に待機電流を流させずに済むので、電子キーシステム3に本例の無線電力伝送システム18を応用すれば、電池19の長寿命化に非常に効果が高いといえる。
【0039】
(3)電子キー2に、スマート通信に沿うデータ発信が完了した際に充電回路21の充電電力を放電する放電回路26を設けた。このため、スマート通信のデータ発信が完了した際に、通信制御回路12を電池19から切り離された元の電源オフ状態に直ちに戻すことができる。
【0040】
(4)充電回路21の充電電力により第1スイッチ25がオンし、通信制御回路12が電池19と電気的に繋がって電子キー2が電源オンした際、このときにキー受信機15で受信する受信データが正規データでなければ、放電回路26により充電回路21の充電電力を放電して、通信制御回路12を元の電源オフ状態に直ちに戻す動作をとる。このため、もし仮にノイズによって通信制御回路12が電池19に繋がって電子キー2が電源オンしても、直ちに通信制御回路12を電池19から切り離した元の電源オフ状態に戻すことができる。このため、ノイズで電子キー2が起動するという通信を実行しない状況下で、電子キー2内の電気回路に待機電流が流れてしまう状況が生じなくなり、電池19の長寿命化に効果が高くなる。
【0041】
(5)リクエスト信号SrqにRF帯を使用したので、リクエスト信号Srqを車両1の遠くの位置まで飛ばすことができる。
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
【0042】
・ リクエスト信号Srqと電力電波Svcとは、必ずしも同じ周波数をとることに限定されず、例えば図7に示すように、例えばリクエスト信号SrqがLF(Low Frequency)帯で電力電波SvcがRF帯というように、各々が異なる周波数をとっていてもよい。この場合は、発信機8,9には、LFのリクエスト信号Srqを発信する専用の発信回路(リクエスト発信部41)と、電力電波Svcを発信する専用の発信回路(電力伝送処理部20)とを各々個別に設け、キー受信機15をLF受信用とする。そして、これら発信回路を選択的に動作させることで、リクエスト信号Srqと電力電波Svcとを各々異なる周波数で発信させ、リクエスト信号SrqをLFのキー受信機15で、電力電波SvcをRFの受信アンテナ22で受けさせることで対応する。
【0043】
・ 電力電波Svcの周波数は、必ずしもRFであることに限定されず、例えばLF等の他の周波数を採用してもよい。即ち、リクエスト信号Srq及び電力電波Svcの周波数は、RFやLFに限定されず、種々の周波数が採用可能である。
【0044】
・ 充電回路21の受信アンテナ22は、必ずしも充電専用のアンテナとして設ける必要はなく、例えばキー受信機15のアンテナを共用してもよい。
・ 充電回路21は、ダイオード23及びコンデンサ24からなる構成に限らず、電力電波Svcを充電できれば、その回路構成は特に限定されない。
【0045】
・ 放電回路25は、必ずしもスイッチ27及び抵抗28から構成されることに限定されず、充電回路21の電力を放電できれば、どのような構成のものでもよい。
・ 放電回路26は、必ずしも必要ではなく、これを省略してもよい。
【0046】
・ 電子キー2が持つ種々のアンテナは、必ずしも機能ごとに個別に設けられるものに限らず、複数の機能間で共用されてもよい。
・ 電子キーシステム3は、必ずしもキー操作フリーシステム6に限定されず、ワイヤレスキーシステムを採用してもよい。即ち、電子キー2はデータ受信及びデータ送信の両方が可能な双方向式に限定されず、例えばキー上のボタン操作によってデータ発信のみが可能な単方向式でもよい。また、1つの電子キー2に、両方のシステムが組み込まれていてもよい。
【0047】
・ スイッチ25,27で使用するトランジスタは、必ずしもバイポーラトランジスタに限定されず、電界降下トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を使用してもよい。また、スイッチ25,25は、必ずしもトランジスタに限定されず、例えばコイルの電磁誘導でスイッチ接点を切り換えるものなど、他の種類のものを採用してもよい。
【0048】
・ 通信端末は、必ずしもデータ発信の動作をとるものに限らず、例えばデータ通信としてデータ受信のみを実行可能な端末でもよい。
・ 受信データが正常か否かの確認は、受信データ先頭のスタートビットを見て判断する方式に限定されない。例えば、データそのものが読み取れるか否かで見たり、或いは一定時間内に全データを読み取れるかを見たりする方式を採用してもよい。
【0049】
・ 通信端末は、必ずしも電子キー2に限らず、データ通信が可能な端末であれば、その種類は特に限定されない。また、データ通信システムも必ずしも電子キーシステム3(車両1に採用されるもの)であることに限定されず、データを無線でやり取りするシステムであればよい。
【0050】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)請求項1〜3のいずれかにおいて、データ受信及びデータ発信の両通信を可能とするデータ送受信手段を備え、前記制御回路は、前記電池と接続状態となると、当該電池によって前記データ送受信手段におけるデータ受信動作を開始し、この受信データのデータ処理を実行しつつ、当該受信データの応答として、前記データ送受信手段からのデータ発信動作を実行する。この構成によれば、通信端末をデータ送受信可能な端末として使用することが可能となる。
【0051】
(2)前記技術的思想(1)において、前記データ受信のアンテナと、前記データ発信のアンテナとは、各々別部材として個別に設けられている。この構成によれば、アンテナの動作管理を簡素なものとすることが可能となる。
【0052】
(3)請求項1〜3のいずれかにおいて、データ発信動作が可能なデータ発信手段を備え、前記制御回路は、接続された前記電池によって前記データ発信手段におけるデータ発信動作を実行する。この構成によれば、通信端末をデータ発信のみ可能な単方向通信の端末として応用可能となる。
【0053】
(4)通信端末がその通信相手である通信機とデータ発信及びデータ受信の少なくとも一方のデータ通信動作を実行する際、当該通信端末においてデータ通信を管理する制御回路が、同端末の電源である電池の電力によって動作することにより、前記データ通信を実行するデータ通信方法において、前記制御回路及び前記電池の間に、通常は前記電池を前記制御回路から電気的に切り離して前記制御回路を電源オフとしておくスイッチ手段を設け、電力になり得る電波として前記通信機から発信された電力電波を前記電子キーがアンテナで受信すると、当該電力電波を充電手段で充電するとともに、この充電値が設定値を超えると、前記電池と前記制御回路とが電気的に繋がる状態に前記スイッチ手段を切り換えて前記制御回路を電源オンすることにより、前記制御回路のデータ通信動作を可能とするデータ通信方法。
【符号の説明】
【0054】
1…通信機としての車両、2…通信端末としての電子キー、12…制御回路及びデータ送受信手段を構成する通信制御回路、15…データ送受信手段を構成するキー受信機、16…データ送受信手段を構成するキー発信機、19…電池、21…充電手段としての充電回路、22…アンテナとしての受信アンテナ、25…スイッチ手段としての第1スイッチ、26…放電手段としての放電回路、29…監視手段としての放電回路制御部、30…復帰手段としてのデータ確認部、Svc…電力電波、Vk…設定値としての閾値、Srq…通信データとしてのリクエスト信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ通信の実行動作を管理する制御回路が、自身が持つ電池の電力によって動作することにより、データ発信及びデータ受信の少なくとも一方のデータ通信動作を実行する通信端末において、
前記制御回路及び前記電池の間に設けられ、通常は前記電池を前記制御回路から電気的に切り離して、前記制御回路を電源オフするスイッチ手段と、
電力になり得る電波として外部から発信された電力電波をアンテナで受信すると、当該電力電波を充電するとともに、この充電値が設定値を超えると、前記電池と前記制御回路とが電気的に繋がる状態に前記スイッチ手段を切り換えて前記制御回路を電源オンすることにより、前記制御回路のデータ通信動作を可能とする充電手段と
を備えたことを特徴とする通信端末。
【請求項2】
電源オンした前記制御回路によるデータ発信動作が完了したか否かを監視する監視手段と、
前記データ発信動作が完了した際、前記充電手段に充電された電力を外部に放電することにより、前記スイッチ手段を元のスイッチ状態に戻して、前記制御回路を元の電源オフに戻す放電手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
データ受信及びデータ発信の両通信を可能とするデータ送受信手段と、
前記充電によって前記制御回路を前記電池に繋げた後、前記データ送受信手段で受信する通信データのデータ内容を確認し、当該通信データが正常でない場合に、前記放電手段により前記充電手段を強制的に放電して、前記スイッチ手段を元の状態に直ちに復帰させる復帰手段と
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の通信端末。
【請求項4】
データ通信を管理する制御回路が、端末の電源である電池の電力によって動作することにより、データ発信及びデータ受信の少なくとも一方のデータ通信動作を実行する通信端末と、当該通信端末の通信相手として通信機とを備えたデータ通信システムであって、
前記制御回路及び前記電池の間に設けられ、通常は前記電池を前記制御回路から電気的に切り離して、前記制御回路を電源オフするスイッチ手段と、
電力になり得る電波として前記通信機から発信された電力電波をアンテナで受信すると、当該電力電波を充電するとともに、この充電値が設定値を超えると、前記電池と前記制御回路とが電気的に繋がる状態に前記スイッチ手段を切り換えて前記制御回路を電源オンすることにより、前記制御回路のデータ通信動作を可能とする充電手段と
を備えたことを特徴とするデータ通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−200415(P2010−200415A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39877(P2009−39877)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】