説明

遠隔操作式農業用トラクター

【課題】本発明は、実際に農圃でトラクターに搭乗せずとも、離れた場所からトラクターを遠隔操作することによって、快適かつ安全に作業をすることができ、また、トラクターの過去の運転状態を記憶させることによって、同じ農圃であれば、無人で自動的に反復して農作業をすることができる遠隔操作式トラクターを提供するものである。
【解決手段】エンジンを動力とする走行装置と、前記エンジン駆動により作業機に回転動力を伝達する装置と、前記作業機を牽引しかつ昇降できる作業機用昇降機と、を有する農業用トラクターにおいて、前記農業用トラクターと離れた位置にある遠隔送信機の操作信号を受信し、前記操作信号により前記農業用トラクターの走行速度と走行方向と作業機への伝達回転と作業機の昇降とを制御する指令を出す制御装置を有することを特徴とする遠隔操作式農業用トラクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田起こし、代掻き、田植え、稲刈り等の農作業を機械化し、快適かつ安全に行なうことができる遠隔操作式農業用トラクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
穀物等のような農業生産物は、狩猟のように不確定要素を多く含むものと違い、収穫において比較的不確定要素が少なく人々が安定した食生活を送る上で、はるか昔から必要不可欠のものであった。しかし、農業生産物を得るために、農作業を人力で行なう場合には、長時間にわたり、力作業をしたり、腰をかがめた無理な姿勢をしなければならず、さらに、直射日光にも長時間さらされるため、農作業は、非常な重労働であった。
【0003】
そこで、従来から、その農作業を行なう者の肉体的、時間的な負担を軽減させ、農作業を効率的に行って能力を増大するために農作業に用いる機械、例えば、トラクター、耕運機、田植え機、コンバイン等が、開発されて広く普及している。
【0004】
しかし、農作業が、機械化されて農作業の負担が人力の場合よりも減少したが、農業機械のオペレーターは、トラクターの走行と操舵のほかに、作業機用昇降機の上下や、作業機用の回転動力の変速等の多くの動作を実行することが求められる。これらの仕事が多岐にわたり、その複雑さによりオペレーターが疲労して、運転操作をミスしてしまうことが、特にオペレーターが高齢者の場合には、多々あった。
【0005】
上述の問題を解決する方法として、学習モードを有するトラクターが発明され、農業用トラクターが、最低速度以上で前進した場合に、オペレータが操作した内容を移動距離との関係で記憶させ、記憶させた時と同じ移動距離の中で、記憶した動作を再現する車輌管理システムが、先行技術として開示されている〔参考文献1〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−1845公報(〔0002〜0030〕、〔図1〜3〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記先行技術における車輌管理システムは、オペレーターによるトラクターの操作をトラクターの移動距離と関連させて記憶させ、後にトラクターの移動距離と関連させた記憶を再現させて、オペレーターの操作を自動的に行うことが開示されている。しかし、オペレーターが実際にトラクターに搭乗して運転せねばならず、屋外にいて炎暑や厳冬期でも、また雨天でも運転を行なう必要があり、また、トラクターの振動等もあり、この運転作業は、快適性を損ね、さらに、トラクターの転倒事故やトラクターによる巻き込まれ事故の危険性がある等の問題があった。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決するために、なしたものであって、実際に農圃でトラクターに搭乗せずとも、離れた場所からトラクターを遠隔操作することによって、快適かつ安全に作業をすることができる。また、トラクターの過去の運転状態を記憶させることによって、同じ農圃であれば、無人で自動的に反復して農作業をすることができ、さらに、その自動運転を利用して、一人で二台以上のトラクターを操作することも可能な遠隔操作式トラクターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る遠隔操作式農業用トラクターは、エンジンを動力とする走行装置と、前記エンジン駆動により作業機に回転動力を伝達する装置と、前記作業機を牽引しかつ昇降できる作業機用昇降機と、を有する農業用トラクターにおいて、前記農業用トラクターと離れた位置にある遠隔送信機の操作信号を受信し、前記操作信号により前記農業用トラクターの走行速度と走行方向と作業機への伝達回転と作業機の昇降とを制御する指令を出す制御装置を有することを特徴とする。
【0010】
この構成を採用することにより、オペレーターが農業用トラクターから離れた位置から遠隔送信機を用いて、遠隔操作で、エンジンの回転数を上下したり、クラッチの入切を行ない、前後進の切替や変速を行って、農業用トラクターの走行速度を制御し、また、走行タイヤを操舵して農業用トラクターの走行方向を制御して運転をすることができる。また、農業用トラクターから回転動力を変速して、ロータリやプラウ等の作業機へ回転動力を伝達させて、さらに、作業機用の昇降装置を昇降させる制御をして、作業機に農作業をさせることができる。
【0011】
これらの構成によって、オペレーターは、安全な場所から、トラクターを遠隔操作することができ、実際に作業者が農圃で農業用トラクターに搭乗して作業する必要がなく、農業用トラクターの転倒による挟まれ事故や、牽引された作業機による巻き込まれ事故に遭遇する危険性がなくなる。また、オペレーターは、空調や屋根のある小屋等から遠隔操作することも可能で、夏の炎天下に屋外に出る必要もなく、熱中症をも防ぐことができ、さらに雨天での作業も可能となる。また、遠隔操作ができるので、トラクターに搭乗しないので、振動によるオペレーターの疲労を極力抑えることができる。さらに、農圃に監視カメラを設置し、農圃から隔離された場所、例えば、監視小屋から遠隔操作もできる。また、通常の乗用タイプの農業用トラクターと異なり、運転席が不要であって、農業用トラクターを小型化することができるので、製作費用も低く抑えることができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る遠隔操作式農業用トラクターは、前記制御装置が、該農業用トラクターの位置情報を得るGPS機能と、前記GPS位置情報から該農業用トラクターが移動した過去の軌跡情報と、その際の前記走行速度と前記走行方向と前記作業機への伝達回転と前記作業機の昇降とを制御する指令情報が記憶できると共に、必要に応じて、前記記憶した情報に基づいた制御信号を再出力することができることを特徴とする。
【0013】
この構成を採用することにより、GPS機能と制御装置から農業用トラクターの現在位置が把握でき、その位置情報と、その時のエンジンの回転、クラッチの入切及び走行変速から農業用トラクターの走行速度を、また、操舵から走行方向を、さらに、作業機への伝達回転と作業機を昇降させるための作業機用昇降の昇降を刻々制御装置に記憶させることができ、後日、同じ農圃で農業用トラクターによる農作業を反復する場合には、その農業用トラクターの記憶された走行位置情報に基づいたエンジンの回転、クラッチの入切、走行変速、操舵、作業機への伝達回転、作業機昇降を制御装置から再び取り出し、記憶させた走行順路に倣って農業用トラクターを走行及び農作業させることができる。これによって、一度農作業をした農圃については、後日再び農作業をする場合でもオペレーターが送信機により農業用トラクターを操作しなくとも無人で自動で農作業が可能となり(以下、自動農作業という。)、省力化に繋がる。特に、圃場整備され、長方形に広く区画された田畑において、本発明に係る遠隔操作式農業用トラクターを用いることで、無人で効率よい作業が可能となる。また、別々の農圃にそれぞれ、遠隔操作式農業用トラクターを配置する場合でも、それぞれの農圃に設けられた監視カメラで監視ができるので、自動農作業を利用することによって、2台以上の農業用トラクターを、一人のオペレーターによって同時に操作することも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1に記載の遠隔操作式農業用トラクターによれば、オペレーターは、農業用トラクターから離れた安全で、環境のよい場所で遠隔操作をすることが可能で、実際に作業者が農圃上で農業用トラクターに搭乗して作業する必要がなく、農業用トラクターの転倒による挟まれ事故や、作業機による巻き込まれ事故に遭遇する危険性がなくなり、オペレーターの安全及び作業環境が確保できる。また、炎暑、厳冬など季節を問わず、さらに風雨の場合でも、トラクター作業が可能である。また、運転室、運転操作盤などを省くこともできるので、製作費用も低く抑えることが可能である。
【0015】
本発明に係る請求項2に記載の遠隔操作式農業用トラクターによれば、一度農作業をした農圃については、後日農作業を反復する場合でもオペレーターが農業用トラクターを操作しなくとも無人で、自動農作業を行なうことが可能となり、省力化に繋がる。また、反復作業の事例を多く記憶させることにより、本農業用トラクターの効率的運用が可能となる。また、2台以上の農業用トラクターを一人のオペレーターによって同時に操作することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施するための形態に係る遠隔操作式農業用トラクターの模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施するための形態に係る遠隔操作式農業用トラクターにおける制御装置のブロック線図である。
【図3】図3は、本発明の実施するための形態に係る遠隔操作式農業用トラクターであって、農圃で作業する場合の模式的斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施するための形態に係る遠隔操作式農業用トラクターであって、オペレーターが、監視小屋で遠隔操作する場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る遠隔操作式農業用トラクターを実施するための形態について図1、2、3、4を用いて説明する。図1は、本発明の実施するための形態に係る遠隔操作式農業用トラクターの模式図である。図2は、本発明の実施するための形態に係る遠隔操作式農業用トラクターにおける制御装置のブロック線図である。図3は、本発明の実施するための形態に係る遠隔操作式農業用トラクターであって、農圃で作業する場合の模式的斜視図である。図4は、本発明の実施するための形態に係る遠隔操作式農業用トラクターであって、オペレーターが、監視小屋で遠隔操作する場合の模式図である。
【0018】
図1は、遠隔操作式農業用トラクターの模式図である。遠隔操作式農業用トラクターは、農業用トラクター本体1と、農業用トラクター本体1に操作信号を送り農業用トラクター本体1の走行と作業機1−2への動力伝達と作業機1−2の昇降とをコントロールするための遠隔送信機2と、から構成されている。農業用トラクター本体1は、エンジン1−1と、エンジン1−1の動力をクラッチを通じて、前進又は後進の切替えと変速可能な走行変速装置3−6と、走行変速装置3−6から最終的に動力が伝達される走行タイヤ1−3と、走行タイヤ1−3の走行方向を操舵する操舵装置3−7と、エンジン1−1の動力を走行変速装置3−6から分岐させた回転動力を作業機1−2に伝達する動力変速伝達装置3−8と、作業機1−2を牽引かつ昇降させる作業機用昇降装置3−9と、遠隔送信機2からの操作信号を受信して、エンジン1−1の回転数、走行変速の切替、操舵方向の調整、作業機への回転動力を調整、作業機の昇降をする指令信号を出力する制御装置3と、前記各装置を装架するシャーシ1−4とから構成される。前記制御装置3には、遠隔送信機2からの操作信号を受信装置3−1で受け、エンジン制御装置3−4、クラッチ入切装置3−5、走行変速装置3−6、操舵装置3−7、動力変速伝達装置3−8、作業機用昇降装置3−9に操作信号を出力する処理装置3−2に加えて、GPS装置4から走行軌跡情報と、前記エンジン制御装置3−4、前記クラッチ入切装置3−5、前記走行変速装置3−6、前記操舵装置3−7、前記動力変速伝達装置3−8、前記作業機用昇降装置3−9の運転の操作信号情報とを記憶して、必要に応じて、前記操作信号を再出力する記憶装置3−3が設けられる。なお、本発明に係る農業用トラクター本体1は、遠隔から無人で操作できるので、運転席やそれに附属するメーターパネルやオペレーターを守る安全フレームを、不要とすることができ、それによって、該農業用トラクターを軽量化でき、かつ、製作費用も安く抑えることができる。
【0019】
また、遠隔送信機2には、農業用トラクター本体1のエンジンの回転数の増減、走行変速装置の変速切替、操舵方向の調整、作業機への回転動力(回転数)の調整(変速切替)、作業機の昇降等の操作信号を送信する機能、また、GPS機能に基づく位置情報や、エンジンの回転数の増減、走行変速装置の変速切替、操舵方向の調整、作業機への回転動力(回転数)の調整(変速切替)、作業機の昇降の操作信号及び作動に関する状態を記憶し、また、再出力する操作信号を送信する機能を有している。
【0020】
次に、本発明に係る遠隔操作式農業用トラクターの使用方法について説明する。まず、農作業をする現場において、農業用トラクター本体1のエンジン1−1をスタートさせた後、遠隔送信機2で農業用トラクター本体1を操作するオペレーター11は、農作業する農圃12から離れた場所で、農業用トラクターのエンジン1−1の回転数、クラッチの入切、走行変速装置の変速切替、操舵方向の調整、作業機への動力変速伝達装置の変速切替、作業機昇降装置の昇降、GPS機能の作動、及びGPSによる位置情報と農業用トラクターの指令情報の記憶について、操作信号を送信して農業用トラクター本体1を操作する。詳しくは、遠隔送信機2からのエンジン1−1の回転を制御する操作信号に従い、エンジン1−1の回転数が調整され、エンジン1−1の回転数を、順次、クラッチ3−5、走行変速装置3−6、走行タイヤ1−3等に回転力を伝達させ走行させる。また同時に、遠隔送信機2から、走行変速装置3−6の変速及び前後進を指示して、所定の速度やトルク及び前後進の方向を調整する。これによって、平地において適切な速度を維持し、或いは上りの傾斜地において走行に必要なトルクを確保して、農作業に適した走行速度で移動できる。また、走行タイヤ1−3の向きを変える操作信号を遠隔送信機2から送信して、農業用トラクター本体1の操舵装置3−7を作動させることによって移動方向を変えることができる。このことによって、オペレーター11の意のままに農業用トラクター1を移動させて農作業をすることができる。一方、農作業を行なう作業機1−2は、農業用トラクターのエンジン1−1の回転をクラッチ3−5を通じて、走行変速装置3−6で分岐して作業機への動力伝達装置3−8に回転力を伝達し、作業機1−2の、例えば、ロータリ等を回転させて田畑を耕す作業を行なうことができる。なお、作業機1−2は、通常用いられているロータリ、プラウ等の作業具を選択して採用すればよい。なお、作業機1−2は、作業機用昇降装置3−9で農業用トラクター本体1から吊り下げられて牽引されており、農作業を行なわない移動時又は旋回時には、作業機1−2は、作業機昇降装置3−8によって上昇し地面から離される。このことによって、農業用トラクターは、移動時に地面からの抵抗を軽減し、かつ、バランスのよい安定した旋回行動をとることができ転倒を防ぐことができる。
【0021】
図2は、農業用トラクター本体1に備えられた制御装置3のブロック線図である。遠隔操作機2から送信された操作信号は、制御装置3内の受信装置3−1で受信され、その信号を処理装置3−2に送り、その信号を基に目的別の装置である、エンジン制御装置3−4、クラッチ入切装置3−5、走行変速装置3−6、操舵装置3−7、動力変速伝達装置3−8、作業機用昇降装置3−9に分配して、装置を作動させる。エンジンの回転数を制御する操作信号の場合は、エンジン制御装置3−4に操作信号を送り、エンジンの回転数を調整して、走行タイヤ1−3や作業機1−2であるローターリー等の刃の回転数の調整をする。クラッチの入切を切替える操作信号の場合は、クラッチ入切装置3−5に操作信号を送り、クラッチ入切装置3−5によってクラッチの入切を切替えて、農業用トラック本体1−1からの回転動力の伝達の入切を行なう。このことによって、走行変速装置3−6の変速の切替えや、作業機への動力変速伝達装置3−8の変速の切替えをスムーズに行うことができる。走行変速操作信号の場合は、走行変速装置3−6に操作信号を送り変速を行なって、上り勾配や平地を走行するのに適した速度やトルクに調整する。操舵装置3−7を制御する操作信号の場合は、操舵装置3−7に操作信号を送り、操舵方向を変えて、農業用トラクター本体1−1の走行方向を制御する。また、作業機への動力変速操作信号の場合は、作業機への動力変速伝達装置3−8に操作信号を送り変速を行なって、作業機1−2の作業深さ等による負荷の程度に見合った、その農作業するのに適した回転速度やトルクに調整する。作業機用昇降装置3−9を制御する操作信号の場合は、作業機昇降装置3−9に操作信号を送り、昇降装置を上昇又は下降させ、それに連結された作業機1−2を上昇又は下降させる。さらに、作業機昇降装置3−9は、作業機1−2の耕作深さも調整する。
【0022】
また、遠隔送信機2から記憶装置3−3とGPS装置4を作動する操作信号を送り、上述の農業用トラクター本体1のエンジン1−1の回転数、クラッチの入切、走行変速、操舵、作業機への回転動力変速の伝達、作業機用昇降機の昇降状況、の運転に関する制御信号の情報と、GPS機能を用いた農業用トラクター本体1の位置を連続的に把握することにより走行軌跡情報として、両情報を関連付けて記憶装置3−3に記憶することができる。後日、農作業の関連情報を記憶させた農圃において、再び同じ農作業をする場合には、遠隔送信機2から、記憶を出力する操作信号を農業用トラクター本体1に送信して、記憶装置3−3に記憶してある運転操作情報と走行軌跡情報を呼起こす。その情報は処理装置3−2を経て、再びそれぞれの装置に対応する操作信号となりエンジン制御装置3−4、クラッチ入切装置3−5、走行変速装置3−6、操舵装置3−7、動力変速伝達装置3−8、作業機用昇降装置3−9を制御する。これらのことによって、農業用トラクター本体1は、記憶した運転作業を再現して農作業をすることができるので、いちいち農業用トラクター本体1を操作することなく、自動農作業をすることが可能となる。
【0023】
図3は、農圃12で作業する場合の模式的斜視図である。また、図4は、オペレーターが、監視小屋21で遠隔操作する場合の模式図である。作業する農圃12に監視カメラ13を設置することで、遠隔送信機2からの信号を受信できる範囲なら、直接、農業用トラクター本体1が見えない農圃12においても、その映像を監視モニター22で確認しながら操作できる。そのことによって、本発明の遠隔操作式農業用トラクターを用いれば、夏の炎天下や冬の激寒期において、また、雨天でも、例えば図4のように、監視小屋21の中から農業用トラクターを操作でき、安全でかつ空調の効いた快適な場所で操作できる。また、オペレーター11は、農業用トラクターに長時間搭乗することで振動等による疲労もなくなる。また、この農業用トラクターを用いて無人の農圃12での農作業をするので、農業用トラクター本体1の旋回時に、仮にバランスを崩して転倒したとしても、オペレーター11は、農業用トラクター本体1の下敷きになって死亡することや負傷することもなくなる。さらに、農業用トラクター本体1に作業中は近付かないので、オペレーター11は、作業機の巻き込まれる心配もなくなる。
【0024】
次に、農圃12における農業用トラクター1の自動農作業について説明する。初めて農業用トラクター1で農作業をするオペレーター11は、遠隔送信機2から記憶装置3−3とGPS装置4を作動する操作信号を送った後、本発明に係る農業用トラクター1の通常行なっている遠隔操作を行なう。これによって、この農作業におけるエンジンの回転、クラッチの入切、走行変速、操舵、動力変速伝達、作業機昇降に関する制御信号の情報と、GPS機能を用いた農業用トラクター本体1の位置を連続的に把握することによる走行軌跡情報として両情報を関連付けて記憶装置3−3に記憶することができる。例えば、一年後に、再び同じ農圃12で同じ農作業をする場合には、オペレーター11は、前回、農作業をした農圃12において、遠隔送信機2から前回記憶させた作業を呼び出す信号を、農業用トラクター本体1に送信する。すると、農業用トラクター本体1は、記憶装置3−3に記憶させた運転操作情報と走行軌跡情報を呼び起こし、その情報は処理装置3−2を経て、再びそれぞれの操作信号となりエンジン制御装置3−4、クラッチ入切装置3−5、走行変速装置3−6、操舵装置3−7、動力変速伝達装置3−8、作業機用昇降装置3−9を制御して、前回と同じ農作業を無人で自動で行なうことができる。従って、農業用トラクターによる農作業を一度記憶させた農圃12においては、無人で作業を行なえることが可能で、また、複数の農圃での、トラクターの農作業を無人で同時に行なうことも可能であり、農作業の処理能力を増大することができる。なお、この場合、単に監視に重点を置いた作業のみでよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
農業用トラクターだけでなく、田植え機、コンバインなどの農作業機械等に利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1:農業用トラクター本体 1−1:エンジン 1−2:作業機
1−3:走行タイヤ 1−4:シャーシ
2:遠隔送信機
3:制御装置 3−1:受信装置 3−2:処理装置
3−3:記憶装置 3−4:エンジン制御装置 3−5:クラッチ入切装置
3−6:走行変速装置 3−7:操舵装置 3−8:動力変速伝達装置
3−9:作業機昇降装置
4:GPS装置
11:オペレーター
12:農圃
13:監視カメラ
21:監視小屋
22:監視モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを動力とする走行装置と、前記エンジン駆動により作業機に回転動力を伝達する装置と、前記作業機を牽引しかつ昇降できる作業機用昇降機と、を有する農業用トラクターにおいて、前記農業用トラクターと離れた位置にある遠隔送信機の操作信号を受信し、前記操作信号により前記農業用トラクターの走行速度と走行方向と作業機への伝達回転と作業機の昇降とを制御する指令を出す制御装置を有することを特徴とする遠隔操作式農業用トラクター。
【請求項2】
前記制御装置が、該農業用トラクターの位置情報を得るGPS機能と、前記GPS位置情報から該農業用トラクターが移動した過去の軌跡情報と、その際の前記走行速度と前記走行方向と前記作業機への伝達回転と前記作業機の昇降とを制御する指令情報が記憶できると共に、必要に応じて、前記記憶した情報に基づいた制御信号を再出力することができることを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作式農業用トラクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−155938(P2011−155938A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21940(P2010−21940)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(510158200)株式会社 ダイツウ (17)
【Fターム(参考)】