説明

配線基板の製造方法、及び電子機器

【課題】 微細な配線パターンを種々の基板上に正確かつ安定に形成する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の配線基板の製造方法は、基体上に、第1の液体材料を平面視枠状に配して枠状絶縁膜を形成する枠状絶縁膜工程と、前記枠状絶縁膜に囲まれた前記基体上の領域に、絶縁膜を形成するための第2の液体材料を、前記枠状絶縁膜に対し間隙を空けて配する液体材料配置工程と、前記基体上の表面領域を親液処理することで前記第2の液体材料を前記基体上で流動させ、前記枠状絶縁膜に囲まれる領域を前記第2の液体材料で満たす親液処理工程と、前記第2の液体材料を硬化させて下地絶縁膜を形成する硬化工程と、前記下地絶縁膜上に配線形成材料を配して配線パターンを形成する配線形成工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器を構成する配線パターンの形成には、例えばフォトリソグラフィ法が用いられている。ところが、フォトリソグラフィ法は、真空装置などの大がかりな設備と複雑な工程を必要とするだけでなく、材料使用効率が数%程度で材料のほとんどを廃棄せざるを得ず、製造コストが高い。さらに、配線パターンの微細化に限界がある。
【0003】
そこで、フォトリソグラフィ法に代わるプロセスとして、機能性材料を含む液体を基材に吐出して、配線パターンを直接的に描画形成する方法(液滴吐出方式)が検討されている。この方法は、まず導電性微粒子を分散させた液体を液滴吐出ヘッドから基板に吐出して、液状ラインを形成する。次に、熱処理やレーザー照射により液状ラインを焼成し、配線パターンを形成するものである(例えば、特許文献1参照)。この液滴吐出方式によれば、製造工程が簡略化され、材料使用効率も高いので、製造コストを低減することができる。また、配線パターンを微細化することができる。
【特許文献1】米国特許第5132248号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では電子機器を構成する回路の高密度化がますます進み、回路を構成する配線パターンについてもさらなる微細化、細線化が要求されている。しかしながら、このような微細な配線パターンを前記の液滴吐出方式による方法によって形成する場合、吐出した液滴が基板に着弾した後濡れ広がってしまうため、微細な配線パターンを正確かつ安定に形成するには適切な表面制御が必要である。そして、このような表面制御は基板の種類に応じて適切に行われねばならないため、基板の材質変更が大幅なプロセス変更につながり、製造コストの上昇を招く可能性がある。
本発明の目的は、上記課題を解決し、微細な配線パターンを種々の基板上に正確かつ安定に形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、基体上に、第1の液体材料を平面視枠状に配して枠状絶縁膜を形成する枠状絶縁膜工程と、前記枠状絶縁膜に囲まれた前記基体上の領域に、絶縁膜を形成するための第2の液体材料を、前記枠状絶縁膜に対し間隙を空けて配する液体材料配置工程と、前記基体上の表面領域を親液処理することで前記第2の液体材料を前記基体上で流動させ、前記枠状絶縁膜に囲まれる領域を前記第2の液体材料で満たす親液処理工程と、前記第2の液体材料を硬化させて下地絶縁膜を形成する硬化工程と、前記下地絶縁膜上に配線形成材料を配して配線パターンを形成する配線形成工程とを含むことを特徴とする。
この製造方法によれば、まず、上記各工程により基体上に形成された下地絶縁膜上に前記配線パターンを形成するので、前記下地絶縁膜によって基体の表面状態による影響を排除することができ、基体の種類によらず微細な配線パターンを正確かつ安定に形成することができる。次に、下地絶縁膜を形成するに際して、基体上に下地絶縁膜の形成領域を区画する枠状絶縁膜を設けることとしているので、下地絶縁膜を形成するための第2の液体材料が基体上で流動することによる下地絶縁膜の平面形状や膜厚のばらつきが生じるのを防止することができる。さらに、前記第2の液体材料は、枠状絶縁膜と間隔を空けて配置されるので、基体上に配置した際に枠状絶縁膜を乗り越えてしまうこともなく、均一な膜厚にて基体上に形成される。次に、上記枠状絶縁膜は第1の液体材料を基体上に配して形成されるので、任意の平面形状に形成することができ、複雑な形状の下地絶縁膜も極めて容易にかつ安定に形成することができる。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法では、前記親液処理工程が、前記基体上に配された第2の液体材料に対して紫外線を照射する工程であることが好ましい。光照射による親液処理によれば、被処理面を均一に親液化することができ、また被処理面の汚染も防止できるため、処理手段として好ましい。
【0007】
本発明の配線基板の製造方法では、前記枠状絶縁膜を、前記下地絶縁膜の膜厚以上の膜厚に形成することもできる。この製造方法によれば、前記枠状絶縁膜が下地絶縁膜の周縁で凸条を成して形成されるので、後段の工程で配線パターン等を液相法により形成する場合に、下地絶縁膜上に配された液体材料が外側へ溢れ出るのを防止することができ、配線基板を構成する配線パターンや絶縁膜の電気的信頼性向上に有利な製造方法となる。
なお、枠状絶縁膜の膜厚は、下地絶縁膜を形成するための液体材料が枠状絶縁膜の外側へ溢れ出るのを防止できる範囲で薄くすることもでき、この場合には、枠状絶縁膜形成工程の迅速化、材料の節約等の利点が得られる。
【0008】
本発明の配線基板の製造方法では、前記枠状絶縁膜形成工程において、前記枠状絶縁膜に囲まれる領域内に、該枠状絶縁膜と平面的に離間された他の枠状絶縁膜を形成し、前記液体材料配置工程において、前記複数の枠状絶縁膜の間の領域に前記第2の液体材料を配することもできる。枠状絶縁膜は液相法を用いて形成されるので、複雑な形状であっても極めて容易にかつ迅速に形成することができる。そして、本製造方法のように、1つの枠状絶縁膜の内側に、他の枠状絶縁膜を形成することもできる。このような製造方法とすれば、その平面領域内に開口部を有した下地絶縁膜を形成することができるので、例えば前記開口部をICチップ等の実装領域として利用でき、回路基板の設計自由度を向上させることができる。
【0009】
本発明の配線基板の製造方法では、前記配線形成工程と、前記配線パターンを覆う層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、を繰り返し行うことで前記基体上に多層配線構造を形成することもできる。すなわち、本発明に係る配線基板の製造方法は多層配線構造を具備した配線基板にも好適に用いることができる。その場合において、前記枠状絶縁膜は、最下層(基体側に最も近い層)の下地絶縁膜の形成にのみ用いるのがよい。配線パターンや層間絶縁膜の形成領域における平坦性を確保し、配線パターンや層間絶縁膜の電気的信頼性を向上させるためである。
【0010】
本発明の配線基板の製造方法では、前記配線形成工程が、前記配線パターンの表面に液体材料を吐出配置して導体ポストを形成する導体ポスト形成工程を含む工程であってもよい。すなわち、層間絶縁膜等を介して積層された配線パターンを、上記導体ポストにより電気的に接続した構成についても本発明の製造方法は適用することができる。このような製造方法とすれば、層間の導電接続構造についても液相法を用いて形成することができ、安価に高集積の配線基板を製造することができる。
【0011】
本発明の電子機器は、先に記載の本発明に係る製造方法により得られた配線基板を具備したことを特徴とする。この構成によれば、電気的信頼性に優れる配線基板により電気的接続がなされ、優れた信頼性を具備した電子機器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
(液滴吐出装置)
まず、配線基板の製造方法の実施形態で用いる液滴吐出装置について説明する。図1は、液滴吐出装置の一例を示す斜視構成図である。図1に示す液滴吐出装置20は、基板(基体)11に対して機能材料を含む液体材料を液滴状にして吐出し配置するものであり、1つ又は複数の吐出ヘッドを具備したキャリッジ1と、キャリッジ1をX方向に移動自在に支持するX方向ガイド軸2と、X方向ガイド軸2を回転駆動するX方向駆動モータ3とを備えている。基板11を載置するための載置台4と、載置台4をY方向に移動自在に支持するY方向ガイド軸5と、Y方向ガイド軸5を回転駆動するY方向駆動モータ6とを備えている。前記X方向ガイド軸2及びY方向ガイド軸5は、基台7の所定位置にそれぞれ固定され、基台7の下部には、制御装置8が配設されている。さらに、クリーニング機構部14及びヒータ15を備えたものとなっている。
【0014】
キャリッジ1は、導電性微粒子を含有する分散液等の液体材料をノズル(吐出口)から吐出して所定間隔で基板に付与することができる複数の吐出ヘッド(吐出ヘッド)を備えている。これら複数の吐出ヘッドの各々から、制御装置8から供給される吐出電圧に応じて個別に前記液体材料を吐出できるようになっている。
キャリッジ1はX方向ガイド軸2に固定され、X方向ガイド軸2には、X方向駆動モータ3が接続されている。X方向駆動モータ3は、ステッピングモータ等であり、制御装置8からX軸方向の駆動パルス信号が供給されると、X方向ガイド軸2を回転駆動する。そして、X方向ガイド軸2の回転動作に伴いキャリッジ1が基台7に対してX軸方向に移動するようになっている。
【0015】
ここで、キャリッジ1に装着される吐出ヘッドの詳細について説明する。図2は、吐出ヘッド30を示す図であり、(a)は吐出ヘッド30の要部を分解的に示す斜視構成図、(b)は吐出ヘッド30の部分断面構成図である。
吐出ヘッド30は、図2(a)に示すように例えばステンレス製のノズルプレート32と振動板33とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)34を介して接合したものである。ノズルプレート32と振動板33との間には、仕切部材34によって複数のキャビティ35とリザーバ36とが形成されている。各キャビティ35とリザーバ36の内部は液体材料で満たされ、各キャビティ35は、供給口37を介してリザーバ36と連通している。また、ノズルプレート32には、キャビティ35から外部へ液体材料を噴射するためのノズル孔38が縦横に配列されている。一方、振動板33には、リザーバ36に液体材料を供給するための導入口39が形成されている。
【0016】
また、振動板33のキャビティ35に対向する面と反対側の面上には、図2(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)40が接合されている。この圧電素子40は、一対の電極41に挟まれた状態で配設されており、これらの電極41,41に通電することで外側(図示上側)に突出するように弾性変形するようになっている。このような構成のもと、圧電素子40が接合された振動板33は、圧電素子40の変形により、圧電素子40と一体に外側へ撓曲するようになっており、この変形に伴いキャビティ35の容積が増大する。したがって、キャビティ35内の容積の増大分に相当する液体材料が、リザーバ36から供給口37を介してキャビティ35に流入する。そして、圧電素子40への通電を解除すると、圧電素子40及び振動板33が元の形状に戻る際の圧力によってキャビティ35内部の液体材料がノズル孔38側へ押圧され、ノズル孔38から基板に向けて液体材料の液滴42が吐出される。
【0017】
なお、上記構成を備えた吐出ヘッド30は、その底面形状が略矩形状のもので、図3に示すようにノズルN(ノズル孔38)が縦に等間隔で整列した状態で矩形状に配置されたものである。そして、本例では、これら各ノズルN(N1,N2,…)には、それぞれに対応して独立の圧電素子40が設けられ、各圧電素子40への制御信号により各ノズルに係る吐出動作をそれぞれ独立に制御できるようになっている。すなわち、このような圧電素子40に送る電気信号としての吐出波形を制御することにより、各ノズルNからの液滴の吐出量を調整し、変化させることができるようになっている。ここで、前記吐出波形の制御は制御装置8によるものとすることができ、制御装置8は各ノズルNからの液滴吐出量を変化させる吐出量調整手段としても機能するようになっている。
なお、吐出ヘッド30の方式としては、前記の圧電素子40を用いたピエゾジェット方式に限定されるものではなく、例えばサーマル方式を採用することもでき、その場合には加熱時間の長短を変化させる等の手段により液体材料の吐出量を変化させることができる。
【0018】
図1に戻り、載置台4は、この液滴吐出装置20を用いた液滴吐出法に供される基板11を載置固定するもので、載置された基板11を所定位置に固定する機構を備えている。載置台4はY方向ガイド軸5に支持され、Y方向ガイド軸5には、Y方向駆動モータ6、16が接続されている。Y方向駆動モータ6、16は、ステッピングモータ等であり、制御装置8からY軸方向の駆動パルス信号が供給されるとY方向ガイド軸5を回転駆動する。そして、Y方向ガイド軸5の回転に伴い、載置台4が基台7に対してY軸方向に移動するようになっている。
【0019】
クリーニング機構部14は、キャリッジ1の吐出ヘッド30クリーニングする機構を備えている。クリーニング機構部14は、Y方向の駆動モータ16によってY方向ガイド軸5に沿って移動するようになっている。クリーニング機構部14の移動も、制御装置8によって制御されている。
【0020】
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板11を熱処理する手段であり、基板上に吐出された液体の蒸発・乾燥を行うとともに導電膜に変換するための熱処理を行うようになっている。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置8によって制御されるようになっている。
【0021】
本実施形態の液滴吐出装置20において、所定の配線形成領域に分散液を吐出するためには、制御装置8から所定の駆動パルス信号をX方向駆動モータ3及び/又はY方向駆動モータ6とに供給し、キャリッジ1及び/又は載置台4を移動させることにより、キャリッジ1と基板11(載置台4)とを相対移動させる。そして、この相対移動の間にキャリッジ1における所定の吐出ヘッド30に制御装置8から吐出電圧を供給し、当該吐出ヘッド30から分散液を吐出させる。
【0022】
本実施形態の液滴吐出装置20において、キャリッジ1の各吐出ヘッド30からの液滴の吐出量は、制御装置8から供給される吐出電圧の大きさによって調整できる。また、基板11に吐出される液滴のピッチは、キャリッジ1と基板11(載置台4)との相対移動速度、及び吐出ヘッド30における吐出周波数(吐出電圧供給の周波数)によって決定される。
【0023】
(配線基板の製造方法)
次に、本発明に係る配線基板の製造方法について、図4から図6、並びに表1を参照して詳細に説明する。図4及び図5は、実施形態に係る配線基板の製造方法を説明するための断面工程図であり、図5には、図4に続く製造工程が示されている。また図6は、図4に示す工程のうち、特に下地形成工程を示す平面工程図である。また表1は、同配線基板の製造方法の工程表である。以下には、表1の左端欄のステップ番号の順に、各工程を説明する。
【0024】
本実施形態は、図5(e)に示すように、フィルム基板11上に下地絶縁膜110を介して複数層の配線パターン116,118が積層された多層配線構造を備える配線基板を製造する方法である。また本実施形態の配線基板の製造方法は、後述するように、下地形成工程(枠状絶縁膜形成工程、液体材料配置工程、親液処理工程、硬化工程)、第1の表面処理工程、配線形成工程、導体ポスト形成工程、第2の表面処理工程、絶縁膜形成工程、及び層間絶縁膜形成工程を有するものである。
【0025】
【表1】

【0026】
<下地形成工程>
まず、図4(a)に示すフィルム基板11の表面(成膜面)を洗浄する(ステップ1)。具体的には、波長172nmのエキシマUVを、フィルム基板11の表面に300秒程度照射する。なお、水などの洗浄液を用いてフィルム基板11を洗浄してもよく、その際超音波を併用することもできる。
【0027】
[枠状絶縁膜形成工程]
次に、フィルム基板11の表面に下地絶縁膜110を形成する前提として、下地絶縁膜110の位置制御を行うための枠状絶縁膜110aを描画形成する(ステップ2)。この描画は、液滴吐出方式(インクジェット方式)によって行う。すなわち、図6(a)に示すように、先の液滴吐出装置20を用いて、下地絶縁膜110の形成材料と同一の液体材料である硬化前の樹脂材料(第1の液体材料)を、下地絶縁膜110の成膜領域11aの周縁部に沿う枠状に塗布形成する。なお、枠状絶縁膜110aの形成材料は、下地絶縁膜110の形成材料と異なっていてもよい。
次に、フィルム基板11上に塗布された前記枠状絶縁膜110aを形成する樹脂材料を硬化させる(ステップ3)。具体的には、波長365nmのUVを4秒程度照射して、枠状絶縁膜110aの形成材料であるUV硬化性樹脂を硬化させる。これにより、下地絶縁膜110が形成されるフィルム基板11上の成膜領域11aを取り囲む枠状絶縁膜(堰)110aが形成される。
【0028】
[液体材料配置工程]
次に、図6(b)に示すように、フィルム基板11上に形成された枠状絶縁膜110aの内側に下地絶縁膜110を描画形成する(ステップ4)。この描画も、液滴吐出方式によって行う。具体的には、液滴吐出装置20の吐出ヘッド30を枠状絶縁膜110aに囲まれた成膜領域11aの内側のほぼ全体に走査させつつ、吐出ヘッド30のノズルNから下地絶縁膜110の形成材料である硬化前の樹脂材料(第2の液体材料)110sを吐出し配置する。ここで、本実施形態の製造方法では、図6(b)に示すように、枠状絶縁膜110aとの間に隙間を設けて前記樹脂材料110sをフィルム基板11上に吐出配置する。
なお、(b)図に示す状態において、フィルム基板11上に吐出された樹脂材料110sが流動して周縁部に設けられた枠状絶縁膜110aと一部接触しても特に問題はない。また、このように樹脂材料110sが流動しても枠状絶縁膜110aによって堰き止められるので、下地絶縁膜110の形成領域を越えて濡れ広がることはない。
【0029】
[親液処理工程]
次に、樹脂材料110sの塗布領域を含む成膜領域11aに対して親液処理を施す(ステップ5)。具体的には、波長172nmのエキシマUVを10秒程度照射して、樹脂材料110sと枠状絶縁膜110aとの間の領域(隙間)の基板表面を親液化する。この親液処理により、図6(c)に示すように、枠状絶縁膜110aに囲まれる領域内の樹脂材料110sが外周側へ流動し、成膜領域11a内に充たされるようになっている。このように樹脂材料110sを吐出配置する際は枠状絶縁膜110aと隙間を空けて配置しておくことで、樹脂材料110sの吐出配置時に樹脂材料が枠状絶縁膜110aを乗り越えて外側へ漏れ出すのを防止することができる。これにより、均一な膜厚の下地絶縁膜110を得られ、また所定量の樹脂材料110sを所定領域(成膜領域11a)に対して配置できるので、膜厚の再現性を良好なものとすることができるという利点が得られる。
【0030】
[硬化工程]
次に、吐出された樹脂材料を硬化させる(ステップ6)。具体的には、波長365nmのUVを60秒程度照射して、下地絶縁膜110の形成材料であるUV硬化性樹脂を硬化させる。これにより、図4(b)に示すように、フィルム基板11の表面に下地絶縁膜110が形成される。
【0031】
<第1の表面処理工程>
次に、下地絶縁膜110の表面に配線パターンを形成する前提として、下地絶縁膜110の表面の接触角を調整する(ステップ7)。すなわち、配線パターンの成膜領域である下地絶縁膜110の表面を、配線パターンの形成に適した状態となるように表面処理を施す。
配線パターンの形成材料を含む液滴を吐出した場合に、下地絶縁膜110の表面の接触角が大きすぎると、吐出された液滴が玉状になって弾かれ、所定位置に所定形状の電気配線を形成することが困難になる。一方、下地絶縁膜110の表面の接触角が小さすぎると、吐出された液滴が濡れ広がって配線パターンの微細化が困難になる。
具体的な表面処理方法としては、硬化した下地絶縁膜110の表面が撥液性を呈するので、その表面に波長172nmのエキシマUVを15秒程度照射することにより下地絶縁膜110表面の撥液性を緩和し、後段の工程で下地絶縁膜110上に吐出される配線パターン形成用の液体材料との親和性の程度を調整する。この表面処理は、紫外光の照射時間で調整できるが、紫外光の強度、波長、熱処理(加熱)等との組み合わせによっても調整することが可能である。なお、表面処理の他の方法としては、酸素を反応ガスとするプラズマ処理や、基板をオゾン雰囲気に曝す処理が挙げられる。
【0032】
<配線形成工程>
次に、図4(c)に示すように、下地絶縁膜110の表面に配線パターンを形成するための液状体パターン111を描画形成する(ステップ8)。なお、図4(c)以降の断面工程図では、下地絶縁膜110を取り囲む枠状絶縁膜110aは図示を省略している。
上記液状体パターン111の描画は、液滴吐出装置20を用いた液滴吐出方式によって行う。ここで吐出するのは、配線の形成材料である導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液である。その導電性微粒子として、銀が好適に用いられる。その他にも、金、銅、パラジウム、ニッケルの何れかを含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などを用いることができる。
【0033】
導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えば立体障害や静電反発を誘発するようなポリマーが挙げられる。また、導電性微粒子の粒径は5nm以上、0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、ノズルの目詰まりが起こりやすく、吐出ヘッド30による吐出が困難になるからである。また5nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となるからである。
【0034】
使用する分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、又はエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を挙げることができる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また、液滴吐出方式への適用のし易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、特に好ましい分散媒としては水、炭化水素系化合物を挙げることができる。これらの分散媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。
【0035】
導電性微粒子を含有する液体の分散媒としては、室温での蒸気圧が0.001mmHg以上、200mmHg以下(約0.133Pa以上、26600Pa以下)であるものが好ましい。蒸気圧が200mmHgより高い場合には、吐出後に分散媒が急激に蒸発してしまい、良好な膜を形成することが困難になるためである。
また、分散媒の蒸気圧は、0.001mmHg以上、50mmHg以下(約0.133Pa以上、6650Pa以下)であることがより好ましい。蒸気圧が50mmHgより高い場合には、液滴吐出方式で液滴を吐出する際に乾燥によるノズル詰まりが起こり易く、安定な吐出が困難となるためである。一方、室温での蒸気圧が0.001mmHgより低い分散媒の場合、乾燥が遅くなり膜中に分散媒が残留しやすくなり、後工程の熱及び/又は光処理後に良質の導電膜が得られにくい。
【0036】
上記導電性微粒子を分散媒に分散する場合の分散質濃度は、1質量%以上、80質量%以下であり、導電膜の所望膜厚に応じて調整することができる。80質量%を超えると凝集をおこしやすくなり、均一な膜が得にくい。
【0037】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は、0.02N/m以上、0.07N/m以下の範囲に入ることが好ましい。液滴吐出方式にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、吐出に供される液体材料のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じ易くなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量、吐出タイミングの制御が困難になるためである。
【0038】
表面張力を調整するため、上記分散液には、下地絶縁膜110との接触角を過度に低下させない範囲で、フッ素系、シリコン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加することができる。ノニオン系表面張力調節剤は、下地絶縁膜110への濡れ性を良好化し、膜のレベリング性を改良し、塗膜表面での突起物の発生、ゆず肌の発生などの防止に役立つものである。上記分散液は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでいても差し支えない。
【0039】
上記分散液の粘度は、1mPa・s以上、50mPa・s以下であることが好ましい。
液滴吐出方式にて吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合には、ノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また、粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となるためである。
【0040】
本実施形態では、上記分散液の液滴を吐出ヘッド30から吐出して、配線パターンを形成すべき位置に滴下する。このとき、液だまり(バルジ)が生じないように、続けて吐出する液滴の重なり程度を調整することが望ましい。
以上により、下地絶縁膜110の表面に液状体パターン111が形成される。
【0041】
次に、液状体パターン111を仮乾燥させて、図4(c)に示すような液状体パターンの仮乾燥体112を得る(ステップ9)。この仮乾燥は、少なくとも液状体パターン111の表面を乾燥させる程度に行う。具体的には、湿度が低い空気や不活性ガス等のドライエアを、液状体パターン111に向かって吹き付ける。ドライエアの温度は、常温(約25℃)であっても、高温であってもよい。また、ドライエアを吹き付ける代わりに、先の液滴吐出装置20に設けられた赤外線ランプ等からなるヒータ15を用いて、赤外線を液状体パターン111に対して照射してもよい。このように、仮乾燥の具体的な方法としてドライエアの吹き付けや赤外線の照射を採用することにより、簡単な製造設備及び製造工程によって仮乾燥を行うことができるので、設備コスト及び製造コストの上昇を抑制することができる。また、仮乾燥のため一時的に温度が上昇しても、直ちに常温に戻すことができるので、製造時間を短縮することができる。
【0042】
<導体ポスト形成工程>
次に、図4(d)に示すように、上記仮乾燥体112上の一部に、導体ポストとなる液状サブポスト113sを描画形成する(ステップ10)。この描画も、ステップ8の液状体パターン111の描画と同様に、液滴吐出装置20を用いた液滴吐出方式によって行う。ここで吐出するのは、導体ポストの形成材料である導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液であり、具体的には液状体パターン111の描画に用いる液体材料と同じものである。すなわち、液状体パターン111を描画した後に、同じ液滴吐出ヘッドを用いて、導体ポストの形成位置に液体材料を吐出すればよい。
【0043】
導体ポストは、層間絶縁膜を介した配線層間の電気的接続に用いられるので、相応の高さに形成する必要がある。そのためには、液滴吐出方式により多数の液滴を同位置に吐出配置して相当高さの液状ポストを形成する必要がある。ところが、一度に多数の液滴を吐出配置しても、液状ポストの高さを確保することは困難であり、逆にフィルム基板11上で液状ポストが濡れ広がり、隣接する配線や導体ポストと短絡するおそれがある。そこで、液滴の吐出を複数回に分けて行う。そして、その一回の液滴吐出では、必要な液状ポストの高さより低い液状サブポストを形成する。例えば、一回に10滴程度の液滴を吐出して、まず第1層の液状サブポスト113sを描画形成する。
【0044】
次に、液状サブポスト113sを仮乾燥させる(ステップ11)。この仮乾燥は、少なくとも液状サブポスト113sの表面が乾燥するように行う。その具体的な方法として、ステップ8で液状体パターン111を仮乾燥させるのに用いた方法と同様に、ドライエアの吹き付けや赤外線の照射を採用することが望ましい。
【0045】
その後、ステップ10及びステップ11を繰り返して行う(ステップ12)。上記のように第1層の液状サブポスト113sは仮乾燥されているので、その表面に新たな液滴を吐出しても、下地絶縁膜110の表面に広がることはない。そこで、新たに10滴程度の液滴を吐出すれば、図4(f)に示すように、第1層の液状サブポスト113sの上に第2層の液状サブポスト113sを積層することができる。このように、ステップ10及びステップ11を繰り返して行うことにより、複数層(図示では2層)の液状サブポスト113sがフィルム基板11上に積層され、相当高さの液状ポスト113を得ることができる。
【0046】
次に、液状体パターンの仮乾燥体112と液状ポスト113との本焼成を行う(ステップ13)。上記した各工程により、仮乾燥体112及び液状ポスト113がいずれも仮乾燥された状態で形成されているので、これらの全体を一括して本焼成する。具体的には、仮乾燥体112及び液状ポスト113が形成されたフィルム基板11を、150℃のホットプレートで30分程度加熱する。
【0047】
本焼成は、通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。なお、本焼成の処理温度を150℃としたが、仮乾燥体112及び液状ポスト113に含まれる分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して、適当に設定することが望ましい。
【0048】
このような焼成処理は、通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上、5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では、100W以上、1000W以下の範囲で十分である。
【0049】
このような本焼成により、仮乾燥体112及び液状ポスト113に含まれる分散媒が揮発し、金属微粒子間の電気的接触が確保される。これにより、図5(a)に示すように、配線パターン116及び導体ポスト117が下地絶縁膜110上に形成される。
【0050】
<第2の表面処理工程>
次に、配線パターン116の形成層に層内絶縁膜114(図5(b)参照)を形成する前提として、下地絶縁膜110の表面の接触角を調整する(ステップ13)。先に記載のように、硬化した下地絶縁膜110の表面は撥液性を示しており、先の第1の表面処理工程である程度親液化されてはいるものの、配線パターンを形成するために好適な表面特性と、層内絶縁膜の形成に好適な表面特性は異なっており、具体的には、層内絶縁膜114を形成するための液体材料は、下地絶縁膜110上で良好に流動することが好ましいため、係る液体材料と下地絶縁膜110の表面との親和性を高めるべく、下地絶縁膜110にさらなる親液性を付与することを目的として、波長172nmのエキシマUVを60秒程度照射する。
【0051】
<絶縁膜形成工程>
続いて、図5(b)に示すように、配線パターン116の周囲に層内絶縁膜114を描画形成する(ステップ15)。本発明に係る絶縁膜形成工程である層内絶縁膜114の形成も、下地絶縁膜110の描画と同様に、液滴吐出方式により行う。ここで、層内絶縁膜の形成材料である液体樹脂材料を、導体ポスト117と接触するように吐出すると、樹脂材料が導体ポスト117の上端に濡れ上がって、上層の配線パターンとの接続部において導通不良を生じるおそれがある。そこで、導体ポスト117及び配線パターン116の周囲に隙間を空けて、その外側に樹脂材料を吐出する。
【0052】
次に、導体ポスト116及び配線パターン117の周囲の隙間に、波長172nmのエキシマUVを照射して、親液処理を施す(ステップ16)。これにより、導体ポスト117及び配線パターン116の周囲の隙間に親液性が付与される結果、その隙間に前記樹脂材料が流動して配線パターン116と接触する。この場合、樹脂材料が配線パターン116の表面に一部濡れ上がる場合もあるが、配線パターン116上に突設された導体ポスト117の上端にまで達することはない。したがって、導体ポスト117と、後段の工程で形成される上層の配線パターンとの導通を確保することができる。
そして、吐出された樹脂材料を硬化させる(ステップ17)。具体的には、波長365nmのUVを4秒程度照射して、層内絶縁膜の形成材料であるUV硬化性樹脂を硬化させる。これにより、層内絶縁膜が形成される。
【0053】
<層間絶縁膜形成工程>
次に、図5(c)に示すように、主に配線パターン116の表面に、層間絶縁膜115を描画する(ステップ17)。この描画も、下地絶縁膜110の描画と同様に、液滴吐出装置を用いて行う。ここでも、導体ポスト117の周囲に隙間を空けて、樹脂材料を吐出することが望ましい。
次に、吐出された樹脂材料を硬化させる(ステップ18)。具体的には、波長365nmのUVを60秒程度照射して、層間絶縁膜の形成材料であるUV硬化性樹脂を硬化させる。これにより、層間絶縁膜115が形成される。
【0054】
次に、図5(d)に示すように、層間絶縁膜115の表面に、上層の配線パターン118を形成する。その具体的な方法は、下層の配線パターン116を形成するためのステップ7から9の一連の工程と同様である。
次に、図5(e)に示すように、上層側の配線パターン118の形成層に層内絶縁膜119を形成する。その具体的な方法は、配線パターン116の形成層に層内絶縁膜を形成するためのステップ15から17の一連の工程と同様である。さらに、ステップ18及びステップ19を行うことで、図5(e)に示すように、上層側の配線パターン118の表面に層間絶縁膜120を形成することができる。
【0055】
このように、ステップ7から19の一連の工程を繰り返すことにより、配線パターンをフィルム基板11上に積層配置することができる。なお、最上層の電気配線の表面には、ステップ17及びステップ18と同様の方法により、保護膜を形成すればよい。
以上の工程により、多層配線構造を具備した配線基板を製造することができる。
【0056】
上述したように、本実施形態の配線基板の製造方法では、液滴吐出方式により液状体パターン111を描画形成する工程(ステップ7)に先立って、下地形成工程(ステップ1〜ステップ6)を有している。すなわち、配線パターン116や層内絶縁膜114が形成される領域のフィルム基板11表面に、下地絶縁膜110を形成する工程を有しており、さらに下地絶縁膜110を形成するに先立って、その形成領域を区画する枠状絶縁膜110aを形成するようになっている。このように、フィルム基板11表面の所定領域に下地絶縁膜110を形成しておくことで、配線パターン116や層内絶縁膜114に対するフィルム基板11の表面状態の影響を排除することができ、フィルム基板11の材質等によらず安定に微細な配線パターンを形成することができる。また、下地絶縁膜110を液滴吐出方式によって形成するに際して、フィルム基板11上に形成した枠状絶縁膜110aを用いるので、フィルム基板11上に所定量の樹脂材料を所定領域に吐出配置することができ、その結果、膜厚が均一で電気的信頼性に優れ、またその膜厚の再現性にも優れた下地絶縁膜110を形成することができる。
【0057】
さらに、下地絶縁膜110を形成するための樹脂材料をフィルム基板11上に吐出配置するに際して、枠状絶縁膜110aと間隔を空けて配置し、後段の親液処理工程(ステップ5)により基板表面を親液化することで樹脂材料を流動させ、枠状絶縁膜110aに囲まれる成膜領域11aに樹脂材料110sを満たすようになっているので、樹脂材料110sが枠状絶縁膜110aを乗り越えて外側へ漏れ出すのを効果的に防止でき、成膜領域11aに均一な膜厚の下地絶縁膜110を形成することができる。
【0058】
本実施形態では、図4(b)に示したように、下地絶縁膜110の膜厚と、枠状絶縁膜110aの膜厚とがほぼ同一の厚さであるとして説明したが、枠状絶縁膜110aの膜厚は、前記樹脂材料110sが枠状絶縁膜110aの外側へ溢れ出るのを防止できる範囲で薄くすることができ、また下地絶縁膜110より厚く形成しても構わない。特に、枠状絶縁膜110aの膜厚を下地絶縁膜110の膜厚より十分厚く形成しておけば、後段の工程で下地絶縁膜110上に配される層内絶縁膜114を形成するための樹脂材料が外側へ溢れ出るのも効果的に防止できる。
【0059】
さらに、上記実施形態では、平面視矩形枠状の枠状絶縁膜110aをフィルム基板11上に1つのみ設ける場合について説明したが、この枠状絶縁膜には、図7に示すような形態も適用することができる。図7は、本発明に係る枠状絶縁膜の変形例を示す平面構成図である。
図7に示すように、変形例に係る構成においては、フィルム基板11上に、平面視矩形枠状の枠状絶縁膜110aが形成され、この枠状絶縁膜110aの内側に、さらに2つの枠状絶縁膜110b、110cが形成されている。枠状絶縁膜は先に記載のように液滴吐出方式を用いて形成される(ステップ2)ので、任意の形状と個数で形成することができる。そして、図7に示すような配置で形成した場合には、枠状絶縁膜110aの内側であって、枠状絶縁膜110b、110cの外側の領域を下地絶縁膜110の成膜領域11aとし、枠状絶縁膜110b、110cの内側の領域には下地絶縁膜を設けないものとして配線基板を製造することができる。上記枠状絶縁膜110b、110cの内側の領域は、例えばICチップやコンデンサ等の実装領域として利用することができる。
【0060】
また、フィルム基板11上に形成した液状体パターン111を仮乾燥した後、続けて液滴吐出方式により仮乾燥体112上の一部に液状ポストを描画形成する工程(ステップ10〜12)と、液状体パターンの仮乾燥体112及び液状ポスト113を本焼成する工程(ステップ13)とを行うようになっている。すなわち、仮乾燥状態の液状体パターン111の表面に液状ポスト113を描画形成するので、両者を界面で融合させることができる。そして、液状体パターンの仮乾燥体112と液状ポストとを一括して本焼成することにより、配線パターン116と導体ポスト117とを一体的に形成することができる。これにより、配線パターン116と導体ポスト117との界面におけるクラックの発生を防止することができ、導通接続の信頼性に優れた配線パターン116を具備した配線基板を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態の配線基板の製造方法では、配線パターンや導体ポスト、各種絶縁膜の形成に液滴吐出方式を採用しているので、材料使用効率を向上させることが可能になり、製造コストを低減することができる。さらに、配線パターンの多層化及び微細化が可能になる。一例を挙げれば、複数の配線パターンのライン×スペースの幅を、従来の50μm×50μmから、30μm×30μm程度に微細化することができる。これにより、配線基板の小型化、高集積化を実現でき、その配線基板を採用した電子機器の小型化に寄与する。
【0062】
なお、本実施形態では多層配線構造の配線基板の製造方法を例示して説明したが、硬質の基板における配線パターン(回路配線)の形成方法として本発明を適用することも可能である。また、本実施形態では配線パターン上に導体ポストを形成する場合について説明したが、配線パターンの電極ランド上に導体ポストを形成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
また上記実施形態では、下地絶縁膜110上の同層に配線パターン116と層内絶縁膜114とを形成する場合について説明したが、配線パターン116の厚さ等によっては、配線パターン116を覆うように層内絶縁膜114を形成することもできる。この場合には、層内絶縁膜114が層間絶縁膜115を兼ねる構成となるので、層間絶縁膜115の形成工程を省略することができ、工数の削減による低コスト化を図ることができる。
【0064】
また、上記実施形態では、製造する配線基板を、基板11上に下層側配線パターン116と上層側配線パターン118と、これら配線間を導通させる導体ポスト117とを有した2層構造のものとしたが、本発明はこれに限定されることなく、3層構造、あるいは4層以上の構造を有する多層配線構造の配線基板の製造にも適用することができる。また、このような配線基板の製造方法によって得られた配線基板は、例えば半導体素子等を備えて構成される各種の電子機器に用いられるが、このような多層配線基板を備えた各種の電子機器は、全て本発明の電子機器となる。
【0065】
(電気光学装置)
上記実施の形態では、積層された配線パターンを具備した配線基板を例示して説明した。そこで、図8を参照して、上記実施形態の配線基板が採用された電気光学装置の一例である液晶モジュールについて説明する。
【0066】
図8は、COF(Chip On Film)構造の回路基板を具備した液晶モジュールの分解斜視図である。液晶モジュール901は、大別すると、カラー表示用の液晶パネル902と、液晶パネル902に接続される回路基板903と、回路基板903に実装される液晶駆動用IC900とを備えて構成されている。なお必要に応じて、バックライト等の照明装置やその他の付帯機器が、液晶パネル902に付設される。
【0067】
液晶パネル902は、シール材904によって接着された一対の基板905a及び基板905bを有し、これらの基板905bと基板905bとの間に形成される間隙、所謂セルギャップに液晶が封入される。つまり、液晶は基板905aと基板905bとによって挟持されている。これらの基板905a及び基板905bは、一般には、例えばガラス、合成樹脂等の透光性材料により形成される。基板905a及び基板905bの外側表面には偏光板906aが貼り付けられている。
【0068】
また、基板905aの内側表面には電極907aが形成され、基板905bの内側表面には電極907bが形成されている。これらの電極907a,907bは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性導電材料によって形成されている。基板905aは基板905bに対して面方向に一部張り出して配置されており、この張り出し部に形成された複数の端子908を有している。これらの端子908は、基板905a上に電極907aを形成する際に電極907aとともに形成されるものである。したがって、これらの端子908は、例えばITOによって形成されたものとなっている。これらの端子908には、電極907aを基板端部まで延出して形成されたものや、他の導電材(不図示)を介して電極907bに接続されたものが含まれる。
【0069】
一方、回路基板903には、先の実施形態の製造方法により得られた配線基板が用いられており、配線基板909上の所定位置に液晶駆動用IC900が実装されている。なお、図示は省略しているが、液晶駆動用IC900が実装された領域以外の部位には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品を実装することもできる。配線基板909は、ポリイミド等の可撓性を有するフィルム基板911上に、銀等を用いて形成された配線パターン912を形成したものとなっている。
【0070】
また、基板の両短辺の端部から延びる配線パターン912,912の先端部が配された液晶駆動用IC900の実装領域において、各配線パターン912の端部には図示略の電極パッドが形成されている。そして、複数の電極パッドに対して、液晶駆動用IC900の能動面に形成された複数のバンプ電極が、図示略のACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)を介して電気的に接続されている。この上記ACFは、熱可塑性又は熱硬化性の接着用樹脂の中に、多数の導電性粒子を分散させたものであり、実装された液晶駆動用IC900のバンプ電極と配線パターン912の電極パッドとの間に介在する上記導電性粒子により両者を電気的に接続するようになっている。
【0071】
そして、液晶駆動用IC900が実装された回路基板903が、液晶パネル902の基板905aに接続されている。具体的には、回路基板903の配線パターン912が、図示略のACFを介して、基板905aの端子908と電気的に接続されている。なお、回路基板903は可撓性を有するので、自在に折りたたんで省スペース化を実現しうるようになっている。
【0072】
上記のように構成された液晶モジュール901では、回路基板903の外側に延びる配線パターン912を介して、液晶駆動用IC900に信号が入力され、液晶駆動用IC900から出力された駆動信号が、液晶パネル側に延びる配線パターン912を介して液晶パネル902に入力され、液晶パネル902の表示駆動が行われるようになっている。
【0073】
なお、本発明の電気光学装置には、電界により物質の屈折率が変化して光の透過率を変化させる電気光学効果を有する装置の他、電気エネルギーを光学エネルギーに変換する装置等も含まれている。すなわち、本発明は、上記した液晶表示装置だけでなく、有機EL(Electro-Luminescence)装置や無機EL装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた表示装置(Field Emission Display 及び Surface-Conduction Electron-Emitter Display 等)などの発光装置等に対しても、広く適用することが可能である。例えば、上記実施形態の配線基板を用いた回路基板を有機ELパネルに接続して、有機ELモジュールを構成することも可能である。
【0074】
(電子機器)
次に、本実施形態の膜形成方法を使用して製造した電子機器につき、図9を用いて説明する。図9は、携帯電話の斜視図である。図9において符号1000は携帯電話を示し、符号1001は表示部を示している。この携帯電話1000の表示部1001には、先の実施形態の配線基板を備えた電気光学装置が採用されている。したがって、電気的接続の信頼性に優れた小型の携帯電話1000を提供することができる。
本発明は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル等の電子機器の画像表示手段として好適に用いることができ、いずれの場合でも、電気的接続の信頼性に優れた小型の電子機器を提供することができる。
【0075】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】液滴吐出装置の斜視構成図。
【図2】(a)は吐出ヘッドの分解斜視図、(b)は側断面構成図。
【図3】吐出ヘッドの平面構成図。
【図4】実施形態に係る配線基板の製造方法の断面工程図。
【図5】実施形態に係る配線基板の製造方法の断面工程図。
【図6】実施形態に係る下地形成工程を示す平面工程図。
【図7】枠状絶縁膜の変形例を示す平面構成図。
【図8】実施形態に係る配線基板を具備した電気光学装置の一例を示す図。
【図9】電子機器の一例を示す斜視構成図。
【符号の説明】
【0077】
11…基板(フィルム基板、基体)、11a…成膜領域、110…下地絶縁膜、110a〜110c…枠状絶縁膜、110s…樹脂材料(第1の液体材料)、111…液状体パターン、112…仮乾燥体、113,119…層内絶縁膜、115,120…層間絶縁膜、116,119…配線パターン、117…導体ポスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、第1の液体材料を平面視枠状に配して枠状絶縁膜を形成する枠状絶縁膜工程と、
前記枠状絶縁膜に囲まれた前記基体上の領域に、絶縁膜を形成するための第2の液体材料を、前記枠状絶縁膜に対し間隙を空けて配する液体材料配置工程と、
前記基体上の表面領域を親液処理することで前記第2の液体材料を前記基体上で流動させ、前記枠状絶縁膜に囲まれる領域を前記第2の液体材料で満たす親液処理工程と、
前記第2の液体材料を硬化させて下地絶縁膜を形成する硬化工程と、
前記下地絶縁膜上に配線形成材料を配して配線パターンを形成する配線形成工程と
を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記親液処理工程が、前記基体上に配された第2の液体材料に対して紫外線を照射する工程であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記枠状絶縁膜を、前記下地絶縁膜の膜厚以上の膜厚に形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記枠状絶縁膜形成工程において、前記枠状絶縁膜に囲まれる領域内に、該枠状絶縁膜と平面的に離間された他の枠状絶縁膜を形成し、
前記液体材料配置工程において、前記複数の枠状絶縁膜の間の領域に前記第2の液体材料を配することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記配線形成工程と、前記配線パターンを覆う層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、を繰り返し行うことで前記基体上に多層配線構造を形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法により得られた配線基板を具備したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−100400(P2006−100400A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282222(P2004−282222)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】