説明

金属プリント基板

【課題】基板シートに形成した分断用溝の部分で折り割りして金属プリント基板となる各個片に分離しても、各個片が撓んで該個片に実装した電子部品が撓みストレスを受けることのない金属プリント基板を提供する。
【解決手段】導体パターンが形成されると共に電子部品21が実装された個片11を複数個形成した基板シート1から前記個片11を分離することで得られる金属プリント基板2である。基板シート1の各個片11と該個片以外の部分10との接続部分10aに分断用溝3を形成し、前記個片11の分断用溝3と該個片11に実装した電子部品21との間に該個片11を貫通する貫通穴4を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属で基板の主体が構成される金属プリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりプリント基板が用いられているが、この中で、基板からの放熱性をよくするため、金属板の表面に絶縁層を貼着し、絶縁層の表面に導体パターンを形成した金属プリント基板が知られている。この種の金属プリント基板を含め一般的にプリント基板は、生産性を高めるために、一枚の基板シート上に各プリント基板となる複数の個片を形成して、前記プリント基板となる各個片に電子部品を実装後、基板シートから各々の個片に分離する方法で生産されている。
【0003】
このようなプリント基板にあっては、基板シートから各々の個片に分離するにあたり、ルータにより各個片を基板シートから切り離す分離方法や、基板シートに厚みを薄くしてなる分断用溝を形成して分断用溝の部分で折り割りして切り離す分離方法があるが、金属プリント基板にあってはルータにより切断する方法は不適であった。例えば紙フェノールやガラスエポキシ等の樹脂系のプリント基板にあっては、分断用溝の部分で折り割りする際に、基板シートや各個片が大きく撓んで各個片に実装してある電子部品に大きな撓みストレスがかかってしまうため、このような大きな撓みストレスがかかるのを回避するため上記ルータによる分断方法が好適に採られているが、金属プリント基板にあっては、粘りがあるためルータの刃に絡みついてしまい、うまく切り離すことができなかった。
【0004】
このため金属プリント基板においては、分断用溝を形成して折り割りする分離方法が採られているが(例えば特許文献1参照)、金属プリント基板の場合でも、基板シートの個片や個片以外の部分が撓んで、個片に実装してある電子部品に撓みストレスがかかってしまうのは避けられないものであった。
【特許文献1】特開2005−191149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基板シートに形成した分断用溝の部分で折り割りして金属プリント基板となる各個片に分離しても、各個片が撓んで該個片に実装した電子部品が撓みストレスを受けることのない金属プリント基板を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、導体パターンが形成されると共に電子部品21が実装された個片11を複数個形成した基板シート1から前記個片11を分離することで得られる金属プリント基板2であって、各個片11と基板シート1の該個片以外の部分10との接続部分10aに厚みを薄くしてなる分断用溝3を形成し、個片11の前記分断用溝3と該個片11に実装された電子部品21との間に該個片11を貫通する貫通穴4を形成して成ることを特徴とするものである。
【0007】
このような構成とすることで、分断用溝3に沿って折り割りして個片11を基板シート1から分離する際、前記貫通穴4を形成してあることで貫通穴4の周囲に応力集中が生じ、この部分に個片11の撓みが集中してそれ以外の部分、すなわち個片11の貫通穴4よりも中央側の電子部品21を実装した部分が撓むのを抑えることができ、個片11に実装した電子部品21に撓みストレスがかかるのを抑えることが可能となる。
【0008】
また、請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、個片11に形成した貫通穴4を、金属プリント基板2としての前記個片11を樹脂でモールドする際の位置決め穴と兼用して成ることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成とすることで、位置決め穴と貫通穴4とを別々に形成するのを回避して、個片11の電子部品21を実装可能な面積を広く確保することができる。
【0010】
また、請求項3に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、個片11に形成した貫通穴4を、金属プリント基板2としての前記個片11を固定する固定穴と兼用して成ることを特徴とするものである。
【0011】
このような構成とすることで、位置決め穴と貫通穴4とを別々に形成するのを回避して、個片11の電子部品21を実装可能な面積を広く確保することができる。
【0012】
また、請求項4に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、個片11に形成した貫通穴4を、電子部品21を実装する桟のガイド穴又は金属プリント基板2検査用ガイド穴と兼用して成ることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成とすることで、位置決め穴と貫通穴4とを別々に形成するのを回避して、個片11の電子部品21を実装可能な面積を広く確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、基板シートの個片と該個片以外の部分との接続部分に形成した分断用溝に沿って折り割りすることで個片を基板シートから分離する際、前記貫通穴を形成してあることで、個片の貫通穴の周囲に応力集中が生じ、この部分に個片の撓みが集中してそれ以外の部分、すなわち個片の貫通穴よりも中央側の電子部品を実装した部分が撓むのを抑えることができ、個片に実装した電子部品に撓みストレスがかかるのを抑えて、電子部品が破損されるのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0016】
金属プリント基板2は、基板からの放熱性をよくするため金属板の表面に絶縁層を形成し、この絶縁層の表面に導体パターンを形成したもので、一枚の基板シート1上に各金属プリント基板2となる複数の個片11を形成して、各金属プリント基板2となる個片11にチップコンデンサをはじめチップ状の電子部品21を実装後、基板シート1に形成した分断用溝3の部分で折り割りして金属プリント基板2となる各個片11に分離する。
【0017】
基板シート1上の金属プリント基板2となる個片11への電子部品21の実装は、一般的には、基板シート1の個片11上にクリームハンダを塗布して複数の電子部品21を実装した後、リフロー炉に通してクリームハンダを硬化させることで行うが、特に限定されない。
【0018】
本実施形態では、板厚1.5mmのアルミニウムからなる金属板の表面に厚さ0.1mmの絶縁層を形成し、絶縁層上に導体パターンとして銅箔からなるプリント配線を形成する。なお、金属板は上記のようなアルミニウム製ではなく、アルミニウムよりも熱伝導性の高い銅製でもよいものである。
【0019】
図2に基板シート1の全体図を示し、図1に、前記基板シート1の個片11一個の周辺部分の拡大図を示す。図2に示すように、個片11は、基板シート1に列をなすように配設され、本実施例では二列に配列されている。基板シート1は、一枚の金属板からなり、この金属板に絶縁層を形成し、各個片11となる部分に導体パターンを形成すると共に電子部品21を実装してある。そして、個片11となる部分と、個片以外の部分10(以下、基板シート1本体という)との接続部分10aで分断して個片11を基板シート1から分離して、金属プリント基板2とするものである。
【0020】
個片11は、個片11全周と基板シート1本体と接続されているのではなく部分的に接続されている。本実施形態では、個片11は矩形状をしており、複数の個片11が短手方向に並設されていて、各個片11の長手方向の両端部において基板シート1本体と接続されており、それ以外の部分は基板シート1本体と個片11との間に形成された分離溝12によって分離されている。基板シート1本体と個片11との接続部分10aは、本実施形態では個片11の長手方向の両端部の短辺の略半部において形成されており、短辺の残りの略半部においては上記分離溝12が位置していて分離された状態となっている。なお本実施形態では、個片11の長手方向の両側で、個片11の短辺における接続部分10aが形成される側が互いに反対側となっている。すなわち、図1では、図面上側では短辺の右側の略半部に接続部分10aが形成されていて、図面下側では短辺の左側の略半部に接続部分10aが形成されている。
【0021】
そして、この接続部分10aに厚みを薄くしてなる分断用溝3が形成してある。分断用溝3は接続部分10aの全長に亘って形成されるもので、本実施形態では断面V字状をした溝を基板シート1の表裏両面に形成したあるが、断面形状は限定されないと共に表裏両面ではなくいずれか片側に形成するものであってもよい。これにより、分断用溝3の底部の厚みが基板シート1の他の部分よりも薄くなって、図3に示すようにこの分断用溝3の底部の薄くなった部分の両側(すなわち個片11と基板シート1本体)を互いに折り曲げて該薄くなった部分を破断により分断させる所謂折り割りをすることができる。なお、折り割りするにあたって、分断用溝3の両側の個片11と基板シート1本体とを互いに折り曲げるのに一度に大きな角度を為すように曲げるよりも、初めは小さな角度で折り曲げ、徐々に折り曲げ角度を大きくして複数回折り曲げるようにすれば、分断用溝3の底部の薄くなった部分のみを集中的に金属疲労させて破断させることができ、一度に大きな角度で折り曲げようとする時に他の部分にも大きな力がかかって撓みストレスが生じるのを防止することができる。またなお分断用溝3は、部分的に貫通するものであってもよく、これにより分断用溝3の底部の薄くなった部分を容易に金属疲労させて折り割りが一層し易くなる。
【0022】
そして本発明では、各個片11において、分断用溝3と該個片11に実装された電子部品21との間の部分に、個片11を上下に貫通する貫通穴4を形成するものである。本実施形態では、個片11の短手方向の両半部にそれぞれ電子部品21を長手方向に一列ずつ計二列配列してあり、また、上述したように接続部分10aは、一方の短辺の左右一方側(図1では上側の短辺の右側)と他方の短辺の左右他方側(図1では下側の短辺の左側)の略半部にそれぞれ形成されていて、一方の短辺の左右一方側(図1では上側の短辺の右側)の電子部品21の列とこの側の接続部分10aの分断用溝3との間に貫通穴4を形成すると共に、他方の短辺の左右他方側(図1では下側の短辺の左側)の電子部品21の列とこの側の接続部分10aの分断用溝3との間に貫通穴4を形成する。貫通穴4は円形状をしたもので、これにより、折り割りして個片11を基板シート1から分離する際、個片11の貫通穴4の周囲に応力集中を生じさせ、この応力集中が生じた部分に個片11の撓みを集中させることができて、それ以外の部分、すなわち貫通穴4よりも個片11の中央側の電子部品21を実装した部分が撓むのを抑えることができ、個片11に実装した電子部品21に撓みストレスがかかるのを抑えて、電子部品21が破損されるのを防止することができるものである。なお、電子部品21以外の部品を実装する場合でも、上記のようにすることでこの部品が破損されるのを防止することができるのはいうまでもない。
【0023】
また、上記のような貫通穴4を、前記個片11を樹脂でモールドする際の位置決め穴と兼用してもよい。これは、図4に示すように、金属製の上型51と下型52との間に個片11を配置し、上型51と下型52との間に樹脂を注入し金属プリント基板2(個片11)をモールドしたユニットを形成するにあたり、個片11を金型5内の所定の位置に固定するため位置決めピン53を個片11に形成した位置決め穴に挿通させて位置決めを行うのであるが、これにあたり、位置決め穴と上記貫通穴4とを兼用することで、位置決め穴と貫通穴4とを別々に形成するのを回避するものである。このように位置決め穴と貫通穴4とを別々に形成するのを回避して同一の穴を共用することで、個片11に形成する穴の面積の合計を小さくすることができ、個片11の電子部品21を実装可能な面積を広く確保することができる。
【0024】
また同様に、特に図示して説明しないが、個片11に形成した貫通穴4を、金属プリント基板2としての前記個片11を固定する固定穴と兼用したり、あるいは、電子部品21を実装する桟のガイド穴又は金属プリント基板2の検査用ガイド穴と兼用することで、固定穴や電子部品21を実装する桟のガイド穴や金属プリント基板2の検査用ガイド穴と貫通穴4とを別々に形成するのを回避して、個片11の電子部品21を実装可能な面積を広く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の金属プリント基板となる個片を形成した基板シートの要部の平面図である。
【図2】基板シートの全体平面図である。
【図3】基板シートから金属プリント基板となる個片を折り割りにて分離する際の説明図である。
【図4】同上の金属プリント基板となる個片を樹脂でモールドする際の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 基板シート
10 個片以外の部分
10a 接続部分
11 個片
12 分離溝
2 金属プリント基板
21 電子部品
3 分断用溝
4 貫通穴
5 金型
51 上型
52 下型
53 位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンが形成されると共に電子部品が実装された個片を複数個形成した基板シートから前記個片を分離することで得られる金属プリント基板であって、各個片と基板シートの該個片以外の部分との接続部分に厚みを薄くしてなる分断用溝を形成し、個片の前記分断用溝と該個片に実装された電子部品との間に該個片を貫通する貫通穴を形成して成ることを特徴とする金属プリント基板。
【請求項2】
個片に形成した貫通穴を、金属プリント基板としての前記個片を樹脂でモールドする際の位置決め穴と兼用して成ることを特徴とする請求項1記載の金属プリント基板。
【請求項3】
個片に形成した貫通穴を、金属プリント基板としての前記個片を固定する固定穴と兼用して成ることを特徴とする請求項1記載の金属プリント基板。
【請求項4】
個片に形成した貫通穴を、電子部品を実装する桟のガイド穴又は金属プリント基板検査用ガイド穴と兼用して成ることを特徴とする請求項1記載の金属プリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−135475(P2008−135475A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319061(P2006−319061)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】