説明

金属膜材料の製造方法、及びそれを用いた金属膜材料

【課題】インクジェット記録装置上における放置回復性に優れ、かつエッチング耐性が高く、得られるパターン形状の精度を向上することができる金属膜材料の製造方法、及びこれを用いた金属膜材料を提供すること。
【解決手段】インクジェット法によるインク付与工程と、インク組成物に露光、又は加熱の少なくともいずれかを行い、硬化膜を形成する硬化膜形成工程と、硬化膜にめっき触媒、又はその前駆体を付与する触媒付与工程と、めっき触媒、又はその前駆体にめっきを行うめっき処理工程とを含み、インク組成物は、シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、を有する第1のモノマーと、多官能性を有する第2のモノマーと、重合開始剤とを含み、前記インク組成物中におけるモノマーの合計含有量が85質量%以上である金属膜材料の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法を用いた金属膜材料の製造方法、及びそれを用いた金属膜材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品、半導体素子等を配線する金属配線基板として、表面に金属膜を有する基板(金属膜材料)が用いられており、例えば、表面の金属膜を処理液でパターン状にエッチングすることで、所望の金属パターン(導電性パターン)を形成することが行われている。
前記金属膜材料の製造方法として、基板上にポリマー層を設け、このポリマー層にめっきを施して金属膜を形成する検討がなされており、ポリマー層として、ポリマーとモノマーとの混合物を用い、かつポリマー、又はモノマーの少なくとも一方に、金属と相互作用を形成する基を導入して、基板と金属膜との密着性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、形成した金属パターンの基板との密着性や絶縁性を向上する技術として、(メタ)アクリレート化合物と、キレート化剤とを含む無電解めっきパターン形成用組成物をインクジェット法に適用することが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−263707号公報
【特許文献2】特開2004−353027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の各技術では、生産性の向上を目指した検討、特にインクジェット記録装置上でインク組成物の吐出を止めて一定の時間放置し、その後吐出を再開した場合の吐出安定性(放置回復性)を向上することは、何ら検討されていない。
【0006】
さらに、上記各技術では、金属膜材料のエッチング耐性、すなわち、金属膜の下部に位置する下塗り層(特許文献1におけるポリマー層)のエッチング処理液に対する耐溶解性を向上させ、形成する金属パターンの形状精度を向上させることは何ら検討されておらず、更なる改良が求められていた。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、特にインクジェット記録装置上でインク組成物の吐出を止めて一定の時間放置し、その後吐出を再開した場合でも吐出安定性(放置回復性)において優れた効果が得られ、かつエッチング耐性が高く、得られるパターン形状の精度を向上することができる金属膜材料の製造方法、及びこれを用いた金属膜材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
【0009】
<1> インク組成物をインクジェット法により基板上に吐出するインク付与工程と、付与した前記インク組成物に露光、又は加熱の少なくともいずれかを行い、硬化膜を形成する硬化膜形成工程と、前記硬化膜にめっき触媒、又はその前駆体を付与する触媒付与工程と、付与した前記めっき触媒、又はその前駆体に対してめっきを行うめっき処理工程とを含み、前記インク組成物は、シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基から選択される少なくとも1つの基を有する第1のモノマーと、多官能性を有する第2のモノマーと、重合開始剤とを含み、前記インク組成物中におけるモノマーの合計含有量が85質量%以上である金属膜材料の製造方法である。
<2> 前記第1のモノマーは、単官能モノマーであることを特徴とする<1>に記載の金属膜材料の製造方法である。
<3> 前記第1のモノマーは、下記一般式(M1−1)で表される<1>又は<2>に記載の金属膜材料の製造方法である。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(M1−1)において、Rは、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。また、Wは、シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択される少なくとも1つの基を表す。nは1〜3の整数を表し、nが2以上のときYは互いに異なっていてもよい。
【0012】
<4> 前記第2のモノマーの含有量は、前記インク組成物中に含まれるモノマー全量の1質量%以上20質量%以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法である。
<5> 前記第2のモノマーは、インク組成物中における重合性基の含有量が0.5mmοl/g以上2.0mmοl/g以下である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法である。
<6> 前記インク組成物は、分子量1500以上の重合性化合物の含有量が2.5質量%以下である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法である。
<7> 前記一般式(M1−1)において、Rが水素原子、又はメチル基であり、Xが−COO−、又は−CONH−であり、Yが炭素数1〜3のアルキレン基であることを特徴とする<3>に記載の金属膜材料の製造方法である。
<8> 前記第2のモノマーは、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルオキシ基、及びN−ビニル基よりなる群から選択されるエチレン性不飽和二重結合基を2以上有する多官能モノマーである<1>〜<7>のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法である。
【0013】
<9> 前記硬化膜形成工程を酸素濃度が10%以下の環境で行うことを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法である。
<10> 前記インク付与工程は、前記インク組成物をパターン状に吐出する工程を含む<1>〜<9>のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法である。
<11> <1>〜<10>のいずれか1項に記載の方法により得られる金属膜材料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特にインクジェット記録装置上でインク組成物の吐出を止めて一定の時間放置し、その後吐出を再開した場合でも吐出安定性(放置回復性)において優れた効果が得られ、かつエッチング耐性が高く、得られるパターン形状の精度を向上することができる金属膜材料の製造方法、及びこれを用いた金属膜材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の金属膜材料の製造方法、及びこれを用いた金属膜材料について詳細に説明する。
【0016】
本発明の金属膜材料の製造方法、及びこれを用いた金属膜材料は、特定のインク組成物をインクジェット法により基板上に吐出するインク付与工程(A)、付与した前記インク組成物に露光、又は加熱の少なくともいずれか一方を行い、硬化膜を形成する硬化膜形成工程(B)、前記硬化膜にめっき触媒、又はその前駆体を付与する触媒付与工程(C)、付与した前記めっき触媒、又はその前駆体に対してめっきを行うめっき処理工程(D)を含む。各工程の詳細については、後述するが、まず、本発明に用いるインク組成物について詳述する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートのうち少なくとも1種をいう。
【0017】
<インク組成物>
本発明におけるインク組成物は、いわゆる、インクジェット用インク組成物であり、シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、及び環状エーテル残基、から選択される少なくとも1つの基を有する第1のモノマーと、多官能性を有する第2のモノマーと、重合開始剤とを含み、前記インク組成物中におけるモノマーの合計含有量が85質量%以上である構成を有する。また、本発明のインク組成物は、必要に応じてその他の成分を含有して構成される。
【0018】
本発明は、かかる構成のインク組成物を用いることで、インクジェット記録装置上でインク組成物の吐出を止めて一定の時間放置し、その後吐出を再開した場合の吐出安定性(放置回復性)に優れ、かつ得られる金属膜材料のエッチング耐性を向上することができる。金属膜材料のエッチング耐性を向上することによって、パターン形成時に形状が変形することを抑止し、精度の高いパターンを形成することができる。
【0019】
本発明のメカニズムは明らかではないが、本発明のインク組成物は、重合開始剤に加え、複数種のモノマー、すなわち、シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択される少なくとも1つの基を有する第1のモノマーと、多官能性を有する第2のモノマーとを含み、かつ前記インク組成物中におけるモノマー全量の合計含有量を85質量%以上の比較的高い割合で含むことから、架橋密度が最適な範囲にコントロールされて緻密な硬化膜を形成することができ、薬剤等を用いたエッチング処理に対する耐性を高められるものと考えられる。
さらに、前記インク組成物中におけるモノマー全量の合計含有量を比較的高い範囲に設定することにより、インク組成物中に含まれるモノマーの物性変化の影響を小さくすることが可能であり、インクジェット記録装置上でインク組成物の吐出を止めて一定の時間放置し、その後吐出を再開した場合でも吐出安定性(放置回復性)において優れた効果が得られるものと考えられる。
【0020】
(第1のモノマー)
本発明におけるインク組成物に使用される第1のモノマーは、シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択する少なくとも1つの基を有する。本発明において、これらの基は、後述する触媒付与工程(C)で付与する、めっき触媒又はその前駆体と相互作用(吸着)を形成する基として使用し、以下、これらの基を「相互作用性基」とも称する。本発明において、前記相互作用性基を含むことにより、後述するめっき触媒又はその前駆体に対する優れた吸着性が得られ、結果としてめっき処理の際に十分な厚さの金属膜(めっき膜)を得ることができる。
【0021】
アルキルスルファニル基(−SR基(Rはアルキル基))としては、炭素数1〜4であることが好ましく、環状エーテル残基としては、フラン残基、テトラヒドロフルフリル基を好ましい例としてあげることができる。
これらのなかでも、極性が高く、めっき触媒又はその前駆体への吸着能(相互作用性)が高いことから、アルキルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜5)、又は、シアノ基がより好ましく、シアノ基がさらに好ましい。
【0022】
また、本発明のインク組成物に使用される第1のモノマーは、単官能モノマーであることが好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合を含み、ラジカル重合性を有するモノマーであることがより好ましい。
【0023】
より具体的には、前記第1のモノマーは、下記の式(M1−1)で表される単官能モノマーであることが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
式(M1−1)中、Rは、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Rで表される置換又は無置換のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましい。より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0026】
としては、水素原子、又はメチル基、であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0027】
及びYは、それぞれ独立に、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す
。二価の有機基としては、置換、若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜11)、置換、若しくは無置換の環状炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3))、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。該有機基は、発明の効果を損なわない範囲で、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜3)、ヒドロキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0028】
置換又は無置換の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基)としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、又は、これらの基がメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたものを例示することができる。
置換又は無置換の環状炭化水素基としては、シクロブチレン基、シクロへキシレン基、ノルボルニレン基、無置換のアリーレン基(フェニレン基)、又は、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたフェニレン基等を例示することができる。
【0029】
としては、好ましくは、単結合、−COO−、又は−CONHであり、より好ましくは、−COO−、又は−CONH−、最も好ましくは、−COO−である。
【0030】
は、単結合、置換又は無置換のアルキレン基、環状炭化水素基又はこれらを組み合わせた基であることが好ましく、具体的には、置換又は無置換のアルキレン基(好ましくは、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜3)、アルキレンオキシド基(好ましくは、炭素数1〜4、より好ましくは、炭素数1〜2)、−R−O−R’−(R及びR’:各々独立に炭素数1〜3のアルキレン基)を例示することができる。中でも、Yは、総炭素数が1〜6、より好ましくは総炭素数が1〜3であることが好ましく、かつ無置換であることが好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、Yで表される置換又は無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
また、nは、1〜3の整数を表し、nが2以上のときYは互いに異なっていてもよい。
【0031】
は、シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基(−SR基(Rはアルキル基))、又は環状エーテル残基、から選択する少なくとも1つの基を表す。これらの基の中で好ましい範囲は、前述の相互作用性基の説明で記載したとおりであり、アルキルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜5)、又は、シアノ基がより好ましく、シアノ基がさらに好ましい。
【0032】
これらの中で、一般式(M1−1)において、Rが水素原子、又はメチル基であり、Xが−COO−、又は−CONH−であり、Yが炭素数1〜3のアルキレン基である組み合わせが好ましく、さらに、n=1、Wがシアノ基である組み合わせが特に好ましい。また、これらの中でも、Rが水素原子、Xが−COO−である組み合わせが最も好ましい。
【0033】
前記第1のモノマーの具体例としては、例えば以下に示す化合物をあげることができる。
【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
なお、前記第1のモノマーは、2種以上を併用してもよい。
【0037】
(第2のモノマー)
本発明のインク組成物に使用される第2のモノマーは、多官能性を有する。また、エチレン性不飽和結合を2以上含み、ラジカル重合性を有するモノマーであることが好ましい。多官能性を有する第2のモノマーを使用することで、膜強度の高い画像を提供できるインク組成物が得られる。
【0038】
第2のモノマーとしては、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルオキシ基、及びN−ビニル基よりなる群から選択されるエチレン性不飽和二重結合基を2以上有する多官能モノマーを例示することができる。
より具体的には、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、環状構造を有していない非環状多官能モノマーが好ましい。これらの中でも、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート系、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート系の多官能モノマーが好ましい。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0039】
また、前記第2のモノマーは、1種のみを単独で用いても、複数種を併用してもよい。第2のモノマーは、重合性基の含有量が、好ましくは、0.5mmοl/g以上2.0mmοl/g以下、より好ましくは、0.6mmοl/g以上1.6mmοl/g以下、さらに好ましくは0.8mmοl/g以上1.2mmοl/g以下、の範囲となるように添加することが好ましい。第2のモノマーのインク組成物中における重合性基の含有量をこの範囲とすることで、モノマーを硬化膜(ポリマー膜)化したときの架橋密度をより好ましい範囲に設定することができる。
ここで、前述の重合性基の含有量は、インク組成物1g中に含まれる第2のモノマーのモル数に対して、第2のモノマーの構造中に含まれる重合性基の数を乗じて算出することが出来る。
【0040】
すなわち、例えば、第2のモノマーとして複数種の多官能モノマーを併用する場合には、各モノマーに含まれるエチレン性不飽和二重結合の数(官能数とも称する)を考慮して、用いるモノマー種の割合を適宜調整し、インク組成物中における重合性基の含有量を上記の範囲とすればよい。
【0041】
(第3のモノマー)
本発明のインク組成物は、前記第1のモノマー以外の単官能モノマー、すなわち、前記相互作用性基(シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択する少なくとも1つの基)を含まない単官能モノマーを第3のモノマーとしてさらに併用してもよい。なお、第3のモノマーとしては、1種のみを単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
このような単官能モノマーとしては、例えば、2−フェニルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリデシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、サイクリックトリメチロールプロパンフォルマールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性アクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラクトン変性アクリレート等のアクリレート化合物;メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート等のメタクリレート化合物;アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物等が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、アクリレート化合物が好ましい。中でも環状炭化水素構造を分子内に有するアクリレートが好ましい。
【0043】
また、単官能ビニルエーテル化合物も好適に挙げられる。単官能ビニルエーテル化合物の具体例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、等が挙げられる。
【0044】
(モノマー含有量)
本発明におけるインク組成物は、インク組成物中に含まれるモノマーの合計含有量、すなわち、前記第1のモノマーと前記第2のモノマーとの合計含有量に、さらに、必要により添加される第3のモノマーの含有量を加えた総和が、85質量%以上であることに特徴がある。また、インク組成物中におけるモノマーの合計含有量は、87質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。モノマーの合計含有量をこの範囲とすることで、本発明の効果をより向上することができる。
【0045】
また、前記第1のモノマー(相互作用性基を有するモノマー)の含有量は、インク組成物中に含まれるモノマー全量の10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、15質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
また、前記第2のモノマー(多官能性を有するモノマー)の含有量は、インク組成物中に含まれるモノマー全量の1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
さらに、前記第3のモノマー(前記第1のモノマー以外の単官能モノマー)を併用する場合には、その含有量をインク組成物中に含まれるモノマー全量の50質量%以下とすることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
(重合開始剤)
本発明におけるインク組成物は、重合開始剤を含有する。使用する重合開始剤としては、公知の重合開始剤から適宜選択することができる。本発明のインク組成物に使用する重合開始剤は、活性エネルギー線により重合開始種であるラジカルを生成する化合物が好ましく、活性エネルギー線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、又は赤外線等が例示できる。例えば、いわゆる、光重合開始剤は本発明で使用できる好ましい重合開始剤である。
【0049】
重合開始剤としては、公知の化合物が使用できるが、本発明で使用し得る好ましい重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィンオキシド化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0050】
これらの重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を単独もしくは組み合わせて使用してもよい。本発明における重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0051】
(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィンオキシド化合物、及び、(e)チオ化合物の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」,J.P.FOUASSIER,J.F.RABEK(1993)、pp.77〜117記載のベンゾフェノン骨格又はチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。また、特開2008−105379号公報、特開2009−114290号公報に記載の重合開始剤も好ましい。
【0052】
これらのなかでも、本発明において、重合開始剤として芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物を使用することが好ましく、1−シクロヘキシルフェニルケトン、p−フェニルベンゾフェノン(和光純薬工業社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(Irgacure 819:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(Darocur TPO:チバジャパン社製、Lucirin TPO:BASF社製)などが好ましい。
【0053】
重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
インク組成物における重合開始剤の合計含有量は、インク組成物に対して、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%である。
【0054】
(その他の成分)
本発明におけるインク組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。以下、含んでいてもよいその他の成分について説明する。
【0055】
−水−
本発明の効果を損なわない範囲であれば、極微量の水を含んでいてもよいが、本発明におけるインク組成物は実質的に水を含有しない、非水性インク組成物であることが好ましい。具体的には、インク組成物全量に対して、水の含有量は3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。これにより、保存安定性を向上することができる。
【0056】
−溶剤−
本発明におけるインク組成物には、インク粘度の調整等を目的に、極微量の非硬化性の有機溶剤を添加してもよい。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピレンカーボネートなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
本発明において、溶剤の添加量はインク組成物全体に対し0.1質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜3質量%の範囲である。
【0057】
−高分子化合物−
本発明におけるインク組成物は分子量1500以上の高分子化合物を実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、分子量1500以上の高分子化合物の含有量は、インク組成物全量に対して、2.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。これにより、放置回復性(インクジェット記録装置上でインク組成物の吐出を止めて一定の時間放置し、その後吐出を再開した場合の吐出安定性)をより向上することができる。
【0058】
本発明の効果を損なわない範囲であれば、極微量の高分子化合物を添加することは可能である。使用可能な高分子化合物としては油溶性であることが好ましく、油溶性高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等を例示できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子化合物の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0059】
−界面活性剤−
本発明におけるインク組成物は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含む場合、インクジェット吐出安定性、着弾時のレベリング性の点で好ましい。
界面活性剤の例として、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤、有機酸アニオンを対イオンとするカチオン系界面活性剤などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルのベタイン類が挙げられる。アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキル硫酸アンモニウム塩、アルキルアリール硫酸アンモニウム塩、アルキルアリールスルホン酸アンモニウム塩、アルキルリン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸系高分子のアンモニウム塩などが挙げられる。
【0060】
インク組成物中の界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、インク全量に対して、0質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、インクの他物性を損ねること無く、好ましい表面張力を得られる点で好ましい。
【0061】
この他にも、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、重合禁止剤、ワックス類、染料、顔料等を含有することもできる。
【0062】
(インク組成物の物性値)
本発明におけるインク組成物の物性値としては、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されないが、インク粘度は安定吐出の観点から、25℃において50mPa・s以下であることが好ましく、2〜20mPa・sであることがより好ましく、2〜15mPa・sであることが特に好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェットインクの温度を20〜80℃の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましく、該温度範囲で粘度が20mPa・s以下となることがより好ましい。装置の温度を高温に設定すると、インクの粘度が低下し、より高粘度のインクを吐出可能となる。しかし、温度が高くなることにより、熱によるインクの変性や熱重合反応がヘッド内で発生したり、インクを吐出するノズル表面で溶剤が蒸発したりして、ノズル詰まりが起こりやすくなる為、50℃以下である事が好ましい。
【0063】
なお、上記粘度は、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いることにより測定される値である。
【0064】
また、インクジェットインクの25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性の基板に対する濡れ性の向上、及び吐出安定性の点で、20〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。
【0065】
上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
【0066】
<金属膜材料の製造方法>
本発明の金属膜材料の製造方法は、上述のインク組成物をインクジェット法により基板上に吐出する工程(A)、付与した前記インク組成物に露光、又は加熱を行い、硬化膜を形成する硬化膜形成工程(B)、前記硬化膜にめっき触媒、又はその前駆体を付与する触媒付与工程(C)、付与した前記めっき触媒、又はその前駆体に対してめっきを行うめっき処理工程(D)を含む。以下、各工程の詳細について説明する。
【0067】
(インク吐出工程(A))
本工程は、前記インク組成物をインクジェット法により、基板上に吐出して付与する工程である。
インクジェット法は、液体吐出孔から記録信号(デジタルデータ)に応じたピコリットルオーダーの液体を基板に向けて吐出するものであり、パターン状にインクを付与して微細なパターンが形成可能である。本工程で使用されるインクジェット法は特に限定されず、帯電したインク組成物を連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクジェットインクを噴射する方法、インクジェットインクを加熱してその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の、各種の従来公知の方法を採用できる。つまり、インクジェット法による描画は、ピエゾインクジェット方式や、熱インクジェット方式等、従来公知のいずれの方式によって行なってもよい。また、通常のインクジェット描画装置はもちろん、ヒーター等を搭載した描画装置なども使用できる。
【0068】
使用されるインクジェットヘッドとしては、コンティニュアス型やオンデマンド型のピエゾ方式、サーマル方式、ソリッド方式、静電吸引方式等の種々の方式のインクジェットヘッド(吐出ヘッド)を用いることができる。また、インクジェットヘッドの吐出部(ノズル)は、単列配置に限定されず、複数列としても千鳥格子状に配置としてもよい。
【0069】
上記インクジェット方式により、本発明のインク組成物を基板上の金属膜を形成すべき場所に吐出する。このとき、インク組成物を基板の全面に付与してもよいし、所望のパターン状に付与してもよい。すなわち、基板上の全面に付与すれば、表面全面に金属膜を有する金属膜材料が得られ、インク組成物をパターン状に吐出して選択的に付与すれば、所望のパターン状に金属膜を有する金属膜材料(金属パターン材料)を得ることができる。
なお、前記インク組成物を基板上に吐出した後、必要に応じて乾燥処理を施してもよい。このような乾燥処理は、例えば、ホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行うこともできる。
【0070】
(硬化膜形成工程(B))
硬化膜形成工程(B)は、付与した前記インク組成物に露光、又は加熱の少なくともいずれかを行い、インク組成物中のモノマー成分を重合硬化させて、硬化膜を形成する工程である。前記インク組成物を硬化することができれば、露光、又は加熱のいずれでもよいが、パターン像の形成容易性の観点からは、露光が好ましい。
露光には、活性エネルギー線(紫外線、γ線、β線、電子線、可視光線、又は赤外線等)の照射を用いることができる。光源としては、例えば、紫外線照射ランプ、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー、LED、電子線照射装置などを採用することができる。
【0071】
活性エネルギー線の波長としては、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線の出力としては、その積算照射量が5000mJ/cm以下であることが好ましく、10〜4000mJ/cmであることがより好ましく、20〜3000mJ/cmであることがさらに好ましい。
【0072】
なお、加熱を用いる場合、送風乾燥機、オーブン、赤外線乾燥機、加熱ドラムなどを用いることができる。温度条件は特に限定されないが、通常、100〜300℃で、5〜120分間の加熱条件で行われる。
上記のような加熱又は露光といったエネルギー付与が行われると、前記インク組成物が付与された領域でモノマー成分の重合反応が生じ硬化膜が形成される。
【0073】
形成する硬化膜の厚みは特に制限されないが、後述する金属膜との密着性がより優れるという観点から、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.3μm以上5μm以下がより好ましい。硬化膜の厚みはインク吐出工程(A)において付与するインク組成物の量を適宜設定することにより、調整することができる。
【0074】
また、硬化膜形成工程(B)を酸素濃度が10%以下、より好ましくは、酸素濃度を8%以下、さらに好ましくは、5%以下の環境で行うことにより、エッチング耐性をより向上することができる。
【0075】
硬化膜形成工程(B)において、酸素濃度を制御するには窒素パージ式UV照射装置(例えば、(株)ジーエスユアサ社製 CSN2−40)を用いることが出来る。また、酸素濃度は、例えば、コスモテクターXP−3180(新コスモス電機(株)社製)等の酸素濃度計によって測定することができる。
【0076】
−基板−
本工程で用いられる基板としては、形状保持性を有するものであればよく、寸度的に安定な板状物であることが好ましい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート又は蒸着された、紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基板としては、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が好ましい。
【0077】
また、本発明の金属膜材料の製造方法により得られた金属膜材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができるが、このような用途に用いる場合は、絶縁性樹脂からなる基板、又は、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0078】
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁性樹脂としては、例えば、特開2008−108791号公報の段落[0024]〜[0025]に記載の樹脂を使用することができる。
【0079】
(触媒付与工程(C))
触媒付与工程は、硬化膜形成工程(B)で形成された硬化膜にめっき触媒、又はその前駆体を付与する工程である。本工程においては、インク組成物に含まれる前記第1のモノマーが有する相互作用性基(シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択する少なくとも1つの基)が、その機能に応じて、付与されためっき触媒又はその前駆体を吸着する。
ここで、めっき触媒又はその前駆体としては、後述するめっき処理工程(D)における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。したがって、めっき触媒又はその前駆体は、めっき処理工程(D)におけるめっきの種類により適宜決定される。
なお、本工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体であることが好ましい。
【0080】
−無電解めっき触媒−
本発明に適用可能な無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができる。具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(例えば、Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0081】
−無電解めっき触媒前駆体―
本工程に適用可能な無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンを付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0082】
実際には、無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて前記硬化膜上に付与される。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)Pd(OAc)n(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。
金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Pdイオンが好ましい。
【0083】
本発明で用いられる無電解めっき触媒又はその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)又はその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されない。例えば、パラジウム塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0084】
無電解めっき触媒である金属、又は、無電解めっき前駆体である金属塩を前記硬化膜上に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、又は、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液若しくは溶液を硬化膜上に塗布するか、又は、その分散液若しくは溶液中に硬化膜が形成された基板を浸漬すればよい。
【0085】
上記のように無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させることで、インク組成物中の第1のモノマーが有する相互作用性基(シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択する少なくとも1つの基)に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用等を利用して、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0086】
また、めっき触媒又はその前駆体を含有する液(めっき触媒液)には、有機溶剤を含有することができる。この有機溶剤を含有することで、前記硬化膜に対するめっき触媒又はその前駆体の浸透性が向上し、相互作用性基(シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択する少なくとも1つの基)に効率よくめっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
めっき触媒液の調製に用いられる溶剤としては、ポリマー層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、めっき触媒液の主たる溶媒(分散媒)として一般に水が用いられることから、水溶性の有機溶剤が好ましい。
【0087】
前記水溶性の有機溶剤としては、水に1質量%以上溶解する溶剤であれば、特に限定されない。例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などの水溶性の有機溶剤が挙げられる。
【0088】
−その他の触媒−
本発明において、後述のめっき処理工程(D)において、前記硬化膜に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、相互作用性基(最も好ましくはシアノ基)に対する吸着性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0089】
以上説明した触媒付与工程(C)を経ることで、硬化膜化した前記第1のモノマーが有する相互作用性基(シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択する少なくとも1つの基)とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。めっき触媒が付与された硬化膜は、めっき処理が施されるめっき受容性層として用いられる。
【0090】
(めっき処理工程(D))
めっき処理工程(D)は、前記触媒付与工程(C)で無電解めっき触媒又はその前駆体が付与された硬化膜に対し、めっき処理を施すことで、めっき膜(金属膜)を形成する工程である。形成されためっき膜は、優れた導電性、及び硬化膜との間で優れた密着性を有する。
本工程に適用可能なめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記触媒付与工程(C)において、硬化膜との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、適宜選択することができる。
中でも、本発明においては、密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。以下、本工程において好適に行われるめっき処理について説明する。
【0091】
−無電解めっき−
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属など)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が硬化膜に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、還元剤の濃度は液全量に対して0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%が好ましい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0092】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、公知の添加物が含まれていてもよい。
【0093】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0094】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、導電性の観点から、銅、金が好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO4、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤で
あるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH3)4)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0095】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜(金属膜)の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、又は、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性、密着性の観点からは、0.2〜2.0μmであることが好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0096】
―電気めっき−
本工程おいては、前記触媒付与工程(C)において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与された硬化膜に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0097】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0098】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、又は電流密度などを調整することで制御することができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、1.0〜30μmであることが好ましい。
【0099】
<金属膜材料>
本発明の金属膜材料は、上述した金属膜材料の製造方法の各工程を経ることで得ることができる。この金属膜材料は、例えば、電気配線用材料、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL(Copper Clad Laminate)材料、装飾材料等の種々の用途に適用することができる。
ここで、前記インク付与工程(A)において、インク組成物を所望のパターン状に吐出して選択的に付与すれば、前記めっき処理工程(D)を経ることで、直ちに、パターン状の金属膜を有する金属膜材料(金属パターン材料)を得ることができるが、まず、インク組成物を基板の全面に付与して、基板の表面全面に金属膜を有する金属膜材料を形成し、別途、エッチング工程を設けて金属膜を所望のパターン状に形成してもよい。
このエッチング工程について以下に詳述する。
【0100】
(エッチング工程)
本工程は、前記めっき処理工程(D)で形成された金属膜(めっき膜)をパターン状にエッチングする工程である。即ち、本工程では、基板表面に形成された金属膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望の金属パターンを形成することができる。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0101】
サブトラクティブ法とは、形成された金属膜上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液で金属膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などの簡便性の点で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0102】
また、セミアディティブ法とは、形成された金属膜上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジソトパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジソトパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、金属膜をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジスト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては上記記載の手法が使用できる。
【0103】
以上のエッチング工程を経ることにより、所望の金属パターンを有する金属膜材料を形成することができる。
【0104】
なお、本発明による金属膜材料を多層配線基板として構成する場合、金属膜材料の表面に、さらに絶縁樹脂層(層間絶縁膜)を積層して、その表面にさらなる配線(金属パターン)を形成してもよく、又は、金属膜材料表面にソルダーレジストを形成してもよい。
【0105】
本発明に用いうる層間絶縁膜としては、エポキシ樹脂、アラミド樹脂、結晶性ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂など挙げられる。
これらの中でも、上述したポリマー層との密着性、寸法安定性、耐熱性、電気絶縁性等の観点から、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、又は液晶樹脂を含有するものであることが好ましい。
【0106】
また、金属膜材料表面における配線保護のために用いられるソルダーレジストとしては、公知の材料を使用でき、例えば、特開平10−204150号公報や、特開2003−222993公報等に詳細に記載される。ソルダーレジストは市販品を用いてもよく、具体的には、例えば、太陽インキ製造(株)製PFR800、PSR4000(商品名)、日立化成工業(株)製SR7200G、などが挙げられる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
なお、後述する重量平均分子量の測定は、ポリマーをNMPに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて行った。なお、分子量はポリスチレン換算で計算した。また、ポリマーの構造は、1H−NMR(ブルカー製 400MHz)を用いて特定した。
【0108】
(合成例1:モノマーM−15(シアノプロピルアクリレート;第1のモノマー)の合成)
200mlの三口フラスコに、ジメチルスルホキシドを33g、水を33g、炭酸水素カリウム14.8g、4−ブロモブチロニトリル10g、4−ヒドロキシTEMPO(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル)10mgを加えた。その後、アクリル酸を9.8g滴下した。その後、80℃まで加熱し4時間撹拌した、その後、室温まで、反応溶液を冷却した。上記の反応溶液を水洗後、カラムクロマトグラフィーにて精製し、3−シアノプロピルアクリレートを9g得た。
【0109】
実施例で用いたM−15以外の第1のモノマーの詳細は以下の通りである。
(モノマーM−3(第1のモノマー))
2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート(Sigma−Aldrich社製)
(モノマーM−6(第1のモノマー))
シアノエチルアクリレート (東京化成工業(株)社製)
(モノマーM−9(第1のモノマー))
1−ビニル−2−ピロリドン (Sigma−Aldrich社製)
(モノマーM−10(第1のモノマー))
1−ビニルイミダゾール (Sigma−Aldrich社製)
【0110】
<インク組成物の製造>
上記の第1のモノマーを用いて、下記表1の組成比に従って、各インク組成物を調製した。なお、表1中の%は質量%を表す。
インク調製に用いた各材料の詳細を以下に示す。
【0111】
(多官能性を有するモノマー(第2のモノマー))
・ジプロピレングリコールジアクリレート(2官能)(SR508、SARTOMER社製)
・ジエチレングリコールジアクリレート(2官能)(SR230、SARTOMER社製)
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート(4官能)(V#400、大阪有機化学工業(株)社製)
【0112】
(その他の単官能モノマー(第3のモノマー))
・フェノキシエチルアクリレート(SR339、SARTOMER社製)
【0113】
(重合開始剤)
・1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184、BASF社製)
・2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(TPO)(Lucirin TPO、BASF社製)
【0114】
(界面活性剤)
・シリコーン系界面活性剤(BYK−307、BYK Chemie社製)
・シリコーン系界面活性剤(BYK−323、BYK Chemie社製)
・フッ素系界面活性剤(F−781F、DIC(株)社製)
【0115】
【表1】

【0116】
<放置回復性(インクジェット記録装置上でインク組成物の吐出を止めて一定の時間放置し、その後吐出を再開した場合の吐出安定性)>
上記で調製したインクを用いて、以下の方法に従って放置回復性について評価した。
富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、10ノズルを使用して4kHzの周波数で各インクの吐出を行い吐出性を確認し、吐出を止め、60分放置した。その後、加圧パージとヘッドクリーニングを行い、再び同様の条件で吐出を行い放置回復性を評価した。10ノズル全てで異常なく吐出がされている場合を「A」、1〜2ノズルにおいて不吐出又は飛翔曲がりが生じている場合を「B」、3〜5ノズルにおいて不吐出又は飛翔曲がりが生じている場合を「C」、6ノズル以上で不吐出又は飛翔曲がりが生じている場合、又は、すべてのノズルで吐出開始自体が不可能な場合を「D」と評価した。結果を表1に示す。
【0117】
<金属膜材料の製造>
(基板の作製)
ガラスエポキシ基材上に、密着補助層として9質量%のABS樹脂(Aldrich社製)のシクロヘキサン溶液を厚さ3μmとなるようにスピンコート法(条件:250rpmで5秒、その後、750rpmで20秒)にて塗布し、乾燥して基板を得た。
【0118】
(硬化膜の作製)
−ライン状描画−
上記で調製したインク組成物を用いて、以下の方法に従って硬化膜を作製した。
前記基板の上に富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用いて、線幅100μm、長さ5cmの直線(ライン)パターンを描画し、露光工程を行い、ライン状パターンからなる硬化膜を形成した。露光工程では、メタルハライド光源露光機:U―0272((株)ジーエスユアサ社製)を用いて、発光波長全体の光量累計が2000mJ/cm2の露光を行った。
【0119】
〜めっき触媒の付与〜
水:アセトン=80:20(質量比)の混合溶液に対し、溶液全量に対して0.5質量%の硝酸パラジウムを溶解させ、未溶解物をろ紙にて除去した溶液に、上記ライン状の硬化膜を有する基板(被めっき体)を、15分間浸漬した。
その後、そのライン状の硬化膜を有する被めっき体を、水:アセトン=80:20(質量比)の混合溶液中に15分間浸漬して洗浄した。
【0120】
〜無電解めっき〜
上記めっき触媒を付与した基板に対して、さらに上村工業(株)製のめっき浴であるスルカップPGT(A液、B液、C液)を用い、下記組成の無電解めっき浴を使用した。
なお、無電解めっき浴の温度を30℃、pHを水酸化ナトリウム及び硫酸で13.0に調整し、これを用いて無電解めっきを行った。めっき浴への浸漬時間は60分であり、これにより、膜厚が3μmのライン状の金属膜が得られた。
【0121】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水:79.2質量%
・PGT−A液:9.0質量%
・PGT−B液:6.0質量%
・PGT−C液:3.5質量%
・ホルムアルデヒド(和光純薬工業(株)社製):2.3質量%
【0122】
得られた金属膜を目視で観察したところ、均一な膜が形成され、良好なライン状の金属膜が得られた。
【0123】
−ベタ状描画−
前記ライン状描画と同様の条件で基板上に富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831を用いて、50mm×50mmの四角状にベタ状パターンを描画し、露光工程を行った。また、めっき触媒付与、及び無電解めっき工程についても、前記ライン状描画と同様の条件でおこなった。さらに、無電解めっき処理後に下記の電解めっき処理を行ってベタ状の金属膜(膜厚8〜10μm)を得た。
【0124】
〜電解めっき〜
無電解めっき処理により形成された、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電解銅めっき浴を用い、3A/dm2の条件で、電解めっきを15分間行った。
【0125】
(電解めっき浴の組成)
・硫酸銅(和光純薬工業(株)社製)38g
・硫酸(和光純薬工業(株)社製)95g
・塩酸(和光純薬工業(株)社製)1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス社製)3mL
・水500g
【0126】
前記電解めっき工程を経て形成されたベタ状の金属膜に対して、下記の工程によりパターン状の金属膜を形成(いわゆる、サブトラクティブ法)し、エッチング耐性を評価した。
【0127】
〜パターン形成とエッチング耐性の評価〜
前記電解めっき工程を経て形成された金属膜(めっき膜)表面に、金属パターン(配線パターン)として残すべき領域にドライフィルムレジスト(商品名:フォテック RY3315(日立化成工業(株)社製)をラミネートし、ライン・アンド・スペース=100μm/100μmの櫛形配線の描かれたフォトマスクを重ね、紫外線を120mJ/cm照射露光し、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像して、エッチングレジストを形成した。さらに、レジストのない領域のめっき膜を、FeCl/HClからなるエッチング液により除去した。その後、エッチングレジストを3%NaOH液からなるアルカリ剥離液にて除去し、ライン・アンド・スペース=100μm/100μmの櫛形配線(金属パターン材料)を形成した。
【0128】
上記で得られた 櫛形配線の欠けと導通性から、エッジング耐性を評価した。金属膜材料のエッチング耐性が低く、櫛形配線(形成パターン)の精度が低い場合には、櫛形配線(形成パターン)上に欠陥や断線が生じて、電気の導通性も低下する。したがって、目視による形成パターンの観察とあわせて、導通性を測定することによって、エッチング耐性を評価することができる。
【0129】
櫛形配線(形成パターン)の形状は、走査型電子顕微鏡を用いて2万倍の倍率で観察して評価した。このとき、得られる形成パターンの理想の線幅である100μmに対して、線幅50μm以下に目減りしたラインが存在すれば「欠陥あり」とし、存在しなければ「欠陥なし」と評価した。
【0130】
また、櫛形配線(形成パターン)の導通性は、導通テスター(エレスターET2010:(株)アイデン製)を用いて、得られた形成パターンの導通性(通電性)を確認することで評価した。
【0131】
上記で得られた形成パターン、及び導通性の測定結果をまとめて、下記基準で評価した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
櫛形配線に欠陥がなく、導通性が良好なもの:A
櫛形配線にわずかな欠陥があるが、導通性は良好なもの:B
櫛形配線に欠陥があり、導通性が不良なもの:C
【0132】
〜異なる露光条件下におけるエッチング耐性の評価〜
表1に記載のインク6を用い、露光工程における酸素濃度を20%、15%、10%、5%の4つの環境下で各々実施した以外は同一の条件で金属膜を形成した。
窒素パージ小形コンベア式UV照射装置「CSN2−40」((株)ジーエスユアサ社製)を用いて酸素濃度を調整し、露光を行った。
得られた金属膜について、各々前記ベタ描画の場合と同様にエッチング耐性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0133】
【表2】

【0134】
前記表1に示すように、実施例では、インク組成物の吐出を止めて一定の時間放置し、その後吐出を再開した場合でも吐出安定性(放置回復性)において優れた効果が得られ、かつエッチング耐性が高く、得られる金属パターン形状の精度を向上することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物をインクジェット法により基板上に吐出するインク付与工程と、
付与した前記インク組成物に露光、又は加熱の少なくともいずれかを行い、硬化膜を形成する硬化膜形成工程と、
前記硬化膜にめっき触媒、又はその前駆体を付与する触媒付与工程と、
付与した前記めっき触媒、又はその前駆体に対してめっきを行うめっき処理工程とを含み、
前記インク組成物は、シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択される少なくとも1つの基を有する第1のモノマーと、多官能性を有する第2のモノマーと、重合開始剤とを含み、前記インク組成物中におけるモノマーの合計含有量が85質量%以上である
金属膜材料の製造方法。
【請求項2】
前記第1のモノマーは、単官能モノマーである請求項1に記載の金属膜材料の製造方法。
【請求項3】
前記第1のモノマーは、下記一般式(M1−1)で表されるモノマーである請求項1又は請求項2に記載の金属膜材料の製造方法。
【化1】


(一般式(M1−1)において、Rは、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。また、Wは、シアノ基、アルキルオキシ基、アミノ基、ピリジン残基、ピロリドン残基、イミダゾール残基、アルキルスルファニル基、又は環状エーテル残基、から選択される少なくとも1つの基を表す。nは1〜3の整数を表し、nが2以上のときYは互いに異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記第2のモノマーの含有量は、前記インク組成物中に含まれるモノマー全量の1質量%以上20質量%以下であるこ請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法。
【請求項5】
前記第2のモノマーは、インク組成物中における重合性基の含有量が0.5mmοl/g以上2.0mmοl/g以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法。
【請求項6】
前記インク組成物は、分子量1500以上の重合性化合物の含有量が2.5質量%以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法。
【請求項7】
前記一般式(M1−1)において、Rが水素原子、又はメチル基であり、Xが−COO−、又は−CONH−であり、Yが炭素数1〜3のアルキレン基である請求項3に記載の金属膜材料の製造方法。
【請求項8】
前記第2のモノマーは、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルオキシ基、及びN−ビニル基よりなる群から選択されるエチレン性不飽和二重結合基を2以上有する多官能モノマーである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法。
【請求項9】
前記硬化膜形成工程を酸素濃度が10%以下の環境で行う請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法。
【請求項10】
前記インク付与工程は、前記インク組成物をパターン状に吐出する工程を含む請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の金属膜材料の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の方法により得られる金属膜材料。

【公開番号】特開2012−72469(P2012−72469A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219421(P2010−219421)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】