説明

防護柵兼用収納ベンチ

【課題】使用時の水平状態から常態の起立状態に自動復帰する時の座部の速度を容易に略一定とすることができると共に、付勢力の低下時にも容易に付勢力を調整する事ができる防護柵兼用収納ベンチを提供する。
【解決手段】座部2を自動的に使用状態から常態に戻す付勢手段の付勢力が付勢手段毎に異なっていても、付勢手段の1端を係止する調整ネジ9を、付勢手段の付勢力が強過ぎる場合には緩め、弱過ぎる場合には締め込み調整を行いさえすれば、付勢手段の付勢力を容易に略一定になすことができ、更には、防護柵兼用収納ベンチ10が繰り返し使用され、付勢手段の付勢力が低下した場合においても、防護柵兼用収納ベンチ10を分解することなく、付勢手段の付勢力の調整を実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道、バス停、公園等に設置して使用される防護柵にベンチ機能を持たせた可倒式の防護柵兼用収納ベンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
公園や歩道の路肩等には、防護柵にベンチ機能をもたせ、高齢者等が疲れた時に着座できるようになされた防護柵兼用ベンチが設置されている。従来、係る防護柵兼用ベンチとして、例えば特許文献1には、常態においてはベンチを構成する座部が防護柵の枠内に格納保持されて、人を車両の進入から守り安全を確保する防護柵として機能すると共に、使用時に際して座部を水平に展開して簡易なベンチを構成する防護柵兼用ベンチであって、一対の支柱間に装着された支軸に取着され前記支柱に対して回動しうる座部が、支軸の先端に外嵌した付勢手段であるトーションバネの付勢力により、使用時の水平状態から常態の格納状態に自動復帰し、且つ座部が勢いよく跳ね上がることを抑えて静かに格納状態に復帰させるための油圧ポンプ式トルクダンパー機構を内装した防護柵兼用ベンチが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−78543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし係る防護柵兼用ベンチでは、トーションバネの付勢力を各々同一に揃えるのが難しく、油圧ポンプ式トルクダンパー機構を内装したとしても、使用時の水平状態から常態の起立状態に自動復帰する座部の速度が一定になりづらい。また、起立状態に自動復帰する座部の速度を一定になるようにトーションバネの付勢力を調整して防護柵兼用ベンチを形成しても、繰り返しの使用によってトーションバネの付勢力が低下するので、その都度、防護柵兼用ベンチを分解しトーションバネの付勢力を調整する必要があった。
【0005】
本発明は上記の如き課題を解決するためになされたものであり、使用時の水平状態から常態の起立状態に自動復帰する時の座部の速度を容易に略一定とすることができると共に、付勢力の低下時にも容易に付勢力を調整する事ができる防護柵兼用収納ベンチを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる防護柵兼用収納ベンチは、地上に立設される2本の支柱間に支持フレームが取着されてなる柵体と、前記支持フレームに回動可能に取着された枢軸と、枢軸が係合されたダンパーと、枢軸に取着された座部と、枢軸に係止され座部が上方へ回動する付勢力を付与する付勢手段とからなり、前記座部は常態において前記付勢手段の付勢力により、前記柵体の支柱と支持フレームで構成される枠内に起立状態で格納保持され、使用時において前記付勢手段の付勢力を超える力により下方へ回動して水平状態に展開され、使用時にかかる力が除された時に付勢手段の付勢力により座部が常態に戻る速度をダンパーによって低く抑えると共に、前記付勢手段の1端を係止する調整ネジにより、付勢手段の付勢力が外部から調整可能となされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る防護柵兼用収納ベンチによれば、座部を自動的に使用状態から常態に戻す付勢手段の付勢力が付勢手段毎に異なっていても、付勢手段の1端を係止する調整ネジを、付勢手段の付勢力が強過ぎる場合には緩め、弱過ぎる場合には締め込み調整を行いさえすれば、付勢手段の付勢力を容易に略一定になすことができ、更には、防護柵兼用収納ベンチが繰り返し使用され、付勢手段の付勢力が低下した場合においても、防護柵兼用収納ベンチを分解することなく、付勢手段の付勢力の調整を実施することができる。よって、付勢手段の付勢力及びダンパーの減衰力を精密に設計、製作することなく、防護柵兼用収納ベンチが常態に復帰する時に所望の速度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る最良の実施の形態について、図1〜4を用いて以下に具体的に説明する。
図1は、本発明に係る防護柵兼用収納ベンチの実施の一形態を示すもので、防護柵兼用収納ベンチの正面斜視図である。1は地面に立設した左右一対の支柱11の上部が上段横杆12で一体結合され逆U字形になされると共に、支柱11間に下段横杆13が差し渡されて結合され、上段横杆12の中央部と下段横杆13の中央部に縦ビーム14が差し渡された支柱防護柵兼用収納ベンチ10を構成する柵体である。縦ビーム14で2分された下段横杆13の上面には夫々1個ずつ回動部Kが固着されており、各回動部Kには人が着座するための座部2が回動可能に取着されている。また、座部2は回動部Kに回動可能に取着されているアーム22と該アーム22に固着され略平面を有する座板21が、柵体1で形成される枠内に起立状態で格納保持されている状態で常態となされている。
【0009】
ここで、支柱11と上段横杆12は別体のものを結合してもよいし、1本の管を曲げて作成してもよい。また、支柱11、上段横杆12、下段横杆13の材質は、防護柵としての強度を満足するものであれば特に限定されず、鉄鋼、アルミニウム、ステンレス、チタン、亜鉛等、構造用の金属材料の中から好適に用いてよい。また、その形状は、図1に示す如く断面が矩形に限定されるものでなく、円形であってもよい。
また、座板21は3本の矩形板材を略等間隔にアーム22に取着しており、座板21の材質は、人が着座したり荷物を置いたりした時の荷重に耐えうるものであれば、特に限定されるものではないが、木材の切り粉等を合成樹脂と混練、成型した合成木材は、耐候性に優れ、且つ触感や見栄えが自然木と同様であるため、好適に用いられる。
【0010】
図2は、図1に示した防護柵兼用収納ベンチ10の座部2の使用状態を示す正面斜視図である。座板21に外力をかけ、手前に引き倒すことで、座部2は地面と水平な位置まで回動し、人が着座することにより、座部2が水平な状態に保持されるようになされており、人が立ち上がり外力が除かれると、後述する回動部Kの構造により、座部2は柵体1で形成される枠内に自動的に格納される。よって、柵体1から張り出す部分がないため通行の邪魔になる事はなく、人が座部2を持ち上げて起立(格納)状態に戻す手間もかからない。
【0011】
図3は図1の背面側から見た部分斜視図であり、図1に記載の回動部Kの外装である回動部カバーK1を取り外した状態を示しており、図4a)、b)は、図3の要部の背面図及び正面図である。この図3及び図4a)、b)を用いて、回動部Kの構造と座部2の回動機構について説明する。
【0012】
回動部Kは、断面C型の支持フレーム3が上方に開口した状態で下段横杆13の上面に取着されており、支持フレーム3の両端部には、軸受(図示せず)を介して枢軸4を支持する支持プレート5が固着されている。支持プレート5に両端を挿通、支持された枢軸4の中央部には、棒状の係止部42が枢軸4と平行に固着されたフランジ41が固着されており、枢軸4の端部には、枢軸4の回動速度を抑制するダンパー6が係合されると共に、ダンパー6は支持プレート5に取着されている。また、枢軸4には付勢手段である捻りバネ7が巻装されており、捻りバネ7の一端は、前述のフランジ41に固着された係止部42で係止され、他端は、支持フレーム3に直交するよう固着された2枚の平板81、81とその平板81、81に差し渡され固着された平板82からなる捻りバネ保持部8により、摺動可能に挟持されている。支持フレーム3の捻りバネ保持部8が固着されている側面には切欠が設けられており、平板82に螺着された調整ネジ9のネジ頭部が外方から覗いており、調整ネジ9の先端は捻りバネ7の端部に当接されている。尚、上述の座部2を構成するアーム22の根元部は、枢軸4に固着されている。更に、アーム22の回動を起立位置及び略水平位置で停止させるためのアームストッパー51が支持プレート5に固着されている。
【0013】
常態において、座部2は起立状態で保持されており、捻りバネ7の付勢力を超える外力が働いた時、回動して略水平状態まで展開され、座板21に人等が着座し、使用状態となる。そして、人が立ち上がると、捻りバネ7の付勢力により常態である座部2が起立した状態に自動的に戻る。その際、座部2が常態に戻る速度が早過ぎると、人に接触したり、指等が挟まれたりして危険であるため、座部2が常態に戻る速度を低く抑えるために、ダンパー6を取着している。
更に、座部2の使用回数を重ねるに従い、捻りバネ7の付勢力は徐々に弱くなっていくため、自動的に状態まで戻らなくなる事が想定される。その際、外方からネジ頭部が覗いている調整ネジ9を締め込みさえすれば、捻りバネ7の付勢力を調整する事ができるため、回動部Kを下段横杆13から取り外す作業等を省く事ができ、短時間で捻りバネの付勢力を調整する事ができ、好ましい。尚、防護柵兼用収納ベンチ10を製作する時においても、座部2の使用(略水平)状態から常態(起立状態)に自動的に戻る速度が各々の防護柵兼用収納ベンチ10で違っている場合に、外方から調整ネジ9を緩めたり締めたりすることで、それらの速度を略同一に調整する事ができるのは言うまでも無い。
【0014】
これまで説明した防護柵兼用収納ベンチ10の実施形態では、下段横杆13と支持フレーム3とは別体となされ、下段横杆13の上面に支持フレーム3が固着されたものであるが、本発明は特にこの実施形態に限定されるものではない。例えば、下段横杆13上面に支持プレート5、捻りバネ保持部8を直接固着し、下段横杆13と支持フレーム3とを一体となし、上述の実施形態と同様の機能を持たせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係わる防護柵兼用収納ベンチの実施例を示す正面斜視図である。
【図2】本発明に係わる防護柵兼用収納ベンチの使用状態を示す正面斜視図である。
【図3】図1の背面側から見た部分省略斜視図である。
【図4】図3の要部の背面図及び正面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 柵体
11 支柱
12 上段横杆
13 下段横杆
14 縦ビーム
2 座部
21 座板
22 アーム
3 支持フレーム
4 枢軸
41 フランジ
42 係止部
5 支持プレート
51 アームストッパー
6 ダンパー
7 捻りバネ
8 捻りバネ保持部
81 平板
82 平板
9 調整ネジ
10 防護柵兼用収納ベンチ
K 回動部
K1 回動部カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に立設される2本の支柱間に支持フレームが取着されてなる柵体と、前記支持フレームに回動可能に取着された枢軸と、枢軸が係合されたダンパーと、枢軸に取着された座部と、枢軸に係止され座部が上方へ回動する付勢力を付与する付勢手段とからなり、前記座部は常態において前記付勢手段の付勢力により、前記柵体の支柱と支持フレームで構成される枠内に起立状態で格納保持され、使用時において前記付勢手段の付勢力を超える力により下方へ回動して水平状態に展開され、使用時にかかる力が除された時に付勢手段の付勢力により座部が常態に戻る速度をダンパーによって低く抑えると共に、前記付勢手段の1端を係止する調整ネジにより、付勢手段の付勢力が外部から調整可能となされていることを特徴とする防護柵兼用収納ベンチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−152544(P2006−152544A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340016(P2004−340016)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】