説明

電力変換回路

【課題】半導体を使用した電力変換回路において、L成分を含む負荷が接続された際に半導体のフライホイールダイオードに流れる環流電流や、昇圧チョッパ回路のトランジスタがオフ状態時にダイオードに流れる電流により、順方向電圧と通流電流で決定される損失が増大し、放熱のために装置全体が大型化するという課題がある。フライホイールダイオードに流れる電流を双方向スイッチのトランジスタにて通流させて損失を低減し、装置を小型化することができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電力変換装置に双方向に電流を遮断、順方向のみ通流、逆方向のみ通流、あるいは双方向に通流させることができる双方向スイッチ2を備えることで、アーム短絡防止と、ダイオードを通流する期間を短くして最終的にはトランジスタ側を通流するように制御し、低損失化を図ることができ、冷却フィンや冷却ファンの小型化を図ることができる効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート信号に制御により4つの状態を有する双方向スイッチを利用した電力変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の普及がさらに拡大傾向にあるが、同時に電子機器の消費電力増加、引いては地球温暖化などが発生しており、社会的な問題と認識されている。このような社会的背景から、電子機器の低消費電力化の要求も高くなっており、根幹となる電源回路、あるいは電子機器の主たる機能を実現するためのアクチュエータなど待機電力、運転のための電力の何れの電力消費についても技術革新による消費削減が期待されている。
【0003】
従来、この種の低消費電力化のための技術としては、使用する電圧に応じて、適宜半導体デバイスをMOSFETあるいはIGBTの使い分けを行なっているのが現状である。また、スイッチング技術としては、ZVSやZCSなどスイッチングの際の損失を低減する技術の導入が図られている。以下、特許文献1および2を一例として説明する。
【0004】
近年、電子機器の普及がさらに拡大傾向にあるが、同時に電子機器の消費電力増加、引いては地球温暖化などが発生しており、社会的な問題と認識されている。このような社会的背景から、電子機器の低消費電力化の要求も高くなっており、根幹となる電源回路、あるいは電子機器の主たる機能を実現するためのアクチュエータなど待機電力、運転のための電力の何れの電力消費についても技術革新による消費削減が期待されている。
【0005】
従来、この種の低消費電力化のための技術としては、使用する電圧に応じて、適宜半導体デバイスをMOSFETあるいはIGBTの使い分けを行なっているのが現状である。また、スイッチング技術としては、ZVSやZCSなどスイッチングの際の損失を低減する技術の導入が図られている。以下、特許文献1および2を一例として説明する。
【0006】
図11に示すように、特許文献1では、第1スイッチング素子29の導通により、第1インダクタ30と第1スイッチング素子29とに投入電流が流れ、低圧電源端子31と高圧電源端子32のうち一方から第1インダクタ30に電磁エネルギーが蓄積され、第1整流素子33の導通により低圧電源端子31と高圧電源端子32のうち他方へ放出されるようになっている。第1スイッチング素子29の非導通期間は、先立つ導通時に第1スイッチング素子29の電流経路端子間にコンデンサが並列接続されていれば、そのコンデンサは放電状態に、第1整流素子34の電流経路端子間にコンデンサが並列接続されていれば、そのコンデンサは充電状態にあることにより、接続点の電圧変化は緩やかに行なわれる。そのため、第1スイッチング素子29は、電流経路端子間の電圧差が僅少の状態で非導通となる(ZVS)。その後の第1スイッチング素子29の再導通に先立ち、第2スイッチング素子35の導通(ZCS)により補助電流経路が形成される。ここで、この時の電流経路はダイオードを介しており、順方向電圧Vfに通流電流を乗じた損失が発生することになる。
【0007】
次に図12に示すように、特許文献2では、高電位側主電極端子が直流電源36の正極端子に接続される上アームの電源側スイッチング素子37と、直列接続されて低電位側主電極端子が直流電源36の負極端子に接続される下アームの電源側スイッチング素子38からなる電源側ハーフブリッジ回路39と、高電位側主電極端子が負荷40の高電位端子に接続される上アームの負荷側スイッチング素子41と、直列接続されて低電位側主電極端子が負荷40の低電位端子および直流電源36の負極端子に接続される下アームの負荷側スイッチング素子42からなる負荷側ハーフブリッジ回路43と、二つのハーフブリッジ回路の出力端を接続するリアクトル44と、各スイッチング素子を運転モードに応じて断続制御して負荷に交流電圧を印加する制御回路45を備えている。この回路により、リアクトルの磁気エネルギーの蓄積、放出を双方向に相互に行なうことで、直列に経由するスイッチング素子数を低減して回路損失を低減している。ここで、この回路でも特許文献1と同様に電流経路にはダイオードが介在しており、順方向電圧Vfと通流電流を乗じた損失が発生することになる。
【特許文献1】特開2005−261059号公報
【特許文献2】特開2005−295671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の一般的な電力変換回路においては、一方向スイッチを組み合わせて構成しているため、モータなどのインダクタンス成分のある負荷が接続された場合、環流電流がフライホイールダイオードを流れて、変換回路における損失が大きくなり、そのため冷却フィン、あるいは冷却ファンなど装置が大型化するという課題があった。
【0009】
また、双方向スイッチを用いて構成した場合には、同様にインダクタンス成分のある負荷(例えばモータなど)が接続された場合、環流電流を流すための閉ループの形成が困難であった。すなわち、双方向スイッチを上下アームに配置した場合、アーム短絡を防止するためのデッドタイムを設ける必要があるため、上下の双方向スイッチが同時オフしている期間が存在するためである。
【0010】
さらに、通常の昇圧チョッパ回路においては、入力に対してリアクタに電荷を蓄積した後、ダイオードを経由して出力側に電力が供給される。この時、ダイオードのVfと通流電流による損失が大きくなり、そのための前述同様の大掛かりな冷却フィンあるいは冷却ファンを用いた冷却が必要となるため、装置が大型化するという課題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、上下アームの短絡を防止し、デッドタイムの過渡期の環流電流を流すループを形成しつつ、環流電流による損失を低減することができる電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電力変換回路は上記目的を達成するために、第一ゲート端子、第二ゲート端子、ドレイン端子、ソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、ドレイン端子からソース端子間に双方向デバイスのオン状態と逆方向ダイオードのカソード側が直列接続された双方向デバイスのオン状態として動作し、前記第二ゲート端子のみをオンすると、ドレイン端子からソース端子間に順方向ダイオードと前記順方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、前記第一ゲート端子および第二ゲート端子をオンすると、ドレイン端子からソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作し、前記第一ゲート端子および第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する特性を有した双方向スイッチを有する構成としたものである。
【0013】
この手段により、4つの動作モードを有する双方向スイッチを有しているため、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、アーム短絡防止とオンオフの状態切り替え時の過渡期における意図しない環流電流を通流する電流経路を形成することができることとなる。
【0014】
また、双方向スイッチ、および単方向スイッチと逆並列したダイオードとを直列接続し、接続した中間から入出力を取り出したハーフブリッジ回路を有する構成としたものである。
【0015】
この手段により、4つの動作モードを有する双方向スイッチをハーフブリッジ回路の上下(すなわちインバータ回路の各アーム)の何れかに有しており、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、特に三相を含む複数相を有するブリッジ回路の上アームのみをPWM変調する方式において駆動した際に、上下アームを各ダイオード動作から各トランジスタ動作させるように切り替えることで、双方向スイッチと単方向スイッチと逆並列したダイオードとの直列接続点からの環流電流がダイオードを流れる期間を短縮することができることとなる。
【0016】
さらに、双方向スイッチを直列に接続し、接続した中間から入出力を取り出した第二ハーフブリッジ回路を有する構成としたものである。
【0017】
この手段により、4つの動作モードを有する双方向スイッチをブリッジ回路の上下(すなわちインバータ回路の各アーム)に有しており、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、特に三相を含む複数相を有するブリッジ回路の上下アームをすべてPWM変調にて駆動した際に、上下アームを各ダイオード動作から各トランジスタ動作させるように切り替えることで、双方向スイッチの直列接続点からの環流電流がダイオードを流れる期間を短縮することができることとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第一ゲート端子、第二ゲート端子、ドレイン端子、ソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、ドレイン端子からソース端子間に双方向デバイスのオン状態と逆方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、前記第二ゲート端子のみをオンすると、ドレイン端子からソース端子間に順方向ダイオードと前記順方向ダイオードのカソード側が直列接続された双方向デバイスのオン状態として動作し、前記第一ゲート端子および第二ゲート端子をオンすると、ドレイン端子からソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作し、前記第一ゲート端子および第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する特性を有した双方向スイッチを有する構成とすることで、4つの動作モードを有する双方向スイッチを有しているため、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、アーム短絡防止とオンオフの状態切り替え時の過渡期において発生する環流電流をタイミングよく通流する電流経路を形成することができ、環流電流がダイオードを通流する期間を短くして最終的にはトランジスタ側を通流することとなるため、双方向スイッチで消費される電力は、トランジスタ側のオン抵抗分となり、低損失化を図ることができ、冷却フィンや冷却ファンの小型化を図ることができる電力変換回路を提供できる。
【0019】
また、双方向スイッチ、および単方向スイッチと逆並列したダイオードとを直列接続し、接続した中間から入出力を取り出した第二ハーフブリッジ回路を有する構成とすることで、4つの動作モードを有する双方向スイッチを第二ハーフブリッジ回路の上下(すなわちインバータ回路の各アーム)に有しており、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、特に三相を含む複数相を有するブリッジ回路の上アームのみをPWM変調する方式において駆動した際に、環流電流がダイオードを流れる期間を短縮することができると同時に、双方向スイッチで消費される電力はトランジスタ側のオン抵抗分となり、低損失化を図ることができ、冷却フィンや冷却ファンの小型化を図ることができる電力変換回路を提供できる。
【0020】
さらに、双方向スイッチを直列に接続し、接続した中間から入出力を取り出したハーフブリッジ回路を有する構成とすることで、4つの動作モードを有する双方向スイッチをハーフブリッジ回路の上下に配置して、インバータ回路の各アームを構成することで、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、特に三相を含む複数相を有するブリッジ回路の上下アームをすべてPWM変調にて駆動した際に、環流電流がダイオードを流れる期間を短縮することができ、双方向スイッチの相補動作時のデッドタイムにおける過渡制御が行なえると同時に、双方向スイッチで消費される電力は、トランジスタ側のオン抵抗分となり、低損失化を図ることができ、冷却フィンや冷却ファンの小型化を図ることができる電力変換回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の請求項1記載の発明は、第一ゲート端子、第二ゲート端子、ドレイン端子、ソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、ドレイン端子からソース端子間に双方向デバイスのオン状態と逆方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、前記第二ゲート端子のみをオンすると、ドレイン端子からソース端子間に順方向ダイオードと前記順方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、前記第一ゲート端子および第二ゲート端子をオンすると、ドレイン端子からソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作し、前記第一ゲート端子および第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する特性を有した双方向スイッチを有する構成とすることで、4つの動作モードを有する双方向スイッチを有しているため、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、アーム短絡防止とオンオフの状態切り替え時の過渡期における意図しない環流電流を通流する電流経路を形成することができ、環流電流がダイオードを通流する期間を短くして最終的にはトランジスタ側を通流することとなるため、双方向スイッチで消費される電力は、トランジスタ側のオン抵抗分のみとなり、低損失化を図ることができ、冷却フィンや冷却ファンの小型化を図ることができるという作用を有する。
【0022】
また、双方向スイッチ、および単方向スイッチと逆並列したダイオードとを直列接続し、接続した中間から入出力を取り出したハーフブリッジ回路を有する構成としたものであり、4つの動作モードを有する双方向スイッチをハーフブリッジ回路の上下(すなわちインバータ回路の各アーム)に有しており、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、特に三相を含む複数相を有するブリッジ回路の上アームのみをPWM変調する方式において駆動した際に、環流電流がダイオードを流れる期間を短縮することができると同時に、双方向スイッチで消費される電力は、トランジスタ側のオン抵抗分のみとなり、低損失化を図ることができ、冷却フィンや冷却ファンの小型化を図ることができるという作用を有する。
【0023】
さらに、双方向スイッチを直列に接続し、接続した中間から入出力を取り出した第二ブリッジ回路を有する構成としたものであり、4つの動作モードを有する双方向スイッチを第二ブリッジ回路の上下(すなわちインバータ回路の各アーム)に有しており、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、特に三相を含む複数相を有するブリッジ回路の上下アームをすべてPWM変調にて駆動した際に、環流電流がダイオードを流れる期間を短縮することができ、双方向スイッチの相補動作時のデッドタイムにおける過渡制御が行なえると同時に、双方向スイッチで消費される電力は、トランジスタ側のオン抵抗分のみとなり、低損失化を図ることができ、冷却フィンや冷却ファンの小型化を図ることができるという作用を有する。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
(実施の形態1)
まずは、電力変換回路としての後述する双方向チョッパ回路1に使用する双方向スイッチ2について、図1を参照しながら構成について説明する。図1に示すように、双方向スイッチ2は、第一ゲート端子3と第二ゲート端子4とドレイン端子5とソース端子6により構成されている。双方向スイッチ2は、シリコン(Si)からなる基板7の上に厚さが10nm窒化アルミニウム(AlN)と厚さが10nmの窒化ガリウム(GaN)とが交互に積層されてなる厚さが1μmのバッファ層8が形成され、その上に半導体層積層体9が形成されている。半導体層積層体9は、第1の半導体層とこの第1の半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の半導体層とが基板側から順次積層されている。第1の半導体層は、厚さが2μmのGaN(アンドープの窒化ガリウム)層10であり、第2の半導体層は、厚さが20nmのn型のAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)層11である。GaN層10のAlGaN層11とのヘテロ界面近傍には、自発分極及びピエゾ分極による電荷が生じる。これにより、シートキャリア濃度が1×1013cm―2以上で且つ移動度が1000cm2V/sec以上の2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域が生成されている。半導体層積層体9の上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極12Aと第2のオーミック電極12Bとが形成されている。第1のオーミック電極12A及び第2のオーミック電極12Bは、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とが積層されており、チャネル領域とオーミック接合を形成している。また、コンタクト抵抗を低減するために、AlGaN層11の一部を除去すると共にGaN層10を40nm程度掘り下げて、第1のオーミック電極12A及び第2のオーミック電極12BがAlGaN層11とGaN層10との界面に接するように形成した例を示している。なお、第1のオーミック電極12A及び第2のオーミック電極12Bは、AlGaN層11の上に形成してもよい。n型のAlGaN層11の上における第1のオーミック電極12Aと第2のオーミック電極12Bとの間の領域には、第1のp型半導体層13A及び第2のp型半導体層13Bが互いに間隔をおいて選択的に形成されている。第1のp型半導体層13Aの上には第1のゲート電極14Aが形成され、第2のp型半導体層13Bの上には第2のゲート電極14Bが形成されている。第1のゲート電極14A及び第2のゲート電極14Bは、それぞれパラジウム(Pd)と金(Au)とが積層されており、第1のp型半導体層13A及び第2のp型半導体層13Bとオーミック接触している。AlGaN層11及び第1のp型半導体層13A及び第2のp型半導体層13Bを覆うように窒化シリコン(SiN)からなる保護膜15が形成されている。保護膜15を形成することで、いわゆる電流コラプスの原因となる欠陥を保障し、電流コラプスを改善することが可能となる。第1のp型半導体層13A及び第2のp型半導体層13Bは、それぞれ厚さが300nmで、マグネシウム(Mg)がドープされたp型のGaNからなる。第1のp型半導体層13A及び第2のp型半導体層13Bと、AlGaN層11とによりPN接合がそれぞれ形成される。これにより、第1のオーミック電極12Aと第1のゲート電極14Aとの間の電圧が例えば0Vでは、第1のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、同様に、第2のオーミック電極12Bと第2のゲート電極14Bとの間の電圧が例えば0V以下のときには、第2のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、いわゆるノーマリーオフ動作をする半導体素子を実現している。第1のオーミック電極12Aの電位をV1、第1のゲート電極14Aの電位をV2、第2のゲート電極14Bの電位をV3、第2のオーミック電極12Bの電位をV4とする。この場合において、V2がV1より1.5V以上高ければ、第1のp型半導体層13Aからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小するため、チャネル領域に電流を流すことができる。同様にV3がV4より1.5V以上高ければ、第2のp型半導体層13Bからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができる。つまり、第1のゲート電極14Aのいわゆる閾値電圧及び第2のゲート電極14Bのいわゆる閾値電圧は共に1.5Vである。以下においては、第1のゲート電極14Aの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第1のゲート電極14Aの閾値電圧を第1の閾値電圧とし、第2のゲート電極14Bの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第2のゲート電極14Bの閾値電圧を第2の閾値電圧とする。また、第1のp型半導体層13Aと第2のp型半導体層13Bとの間の距離は、第1のオーミック電極12A及び第2のオーミック電極12Bに印加される最大電圧に耐えられるように構成する。第1のオーミック電極12Aと第1のゲート電極14Aとの間にゲート駆動信号(すなわち、第一ゲート端子3への制御信号)を入力するようになっている。第2のオーミック電極12Bと第2のゲート電極14Bとの間も同様である。なお、ソース端子6は第1のオーミック電極12Aに接続され、ドレイン端子5は第2のオーミック電極12Bに接続され、第一ゲート端子3は第1のゲート電極14Aに接続され、第二ゲート端子4は第2のゲート電極14Bに接続されている。
【0026】
次に、双方向スイッチ2の動作について説明する。説明のため、第1のオーミック電極の電位を0Vとし、第一ゲート端子3に印加する電圧をVg1、第二ゲート端子4に印加する電圧をVg2、第2のオーミック電極12Bと第1のオーミック電極12Aとの間の電圧をVs2s1、第2のオーミック電極12Bと第1のオーミック電極12Aとの間に流れる電流をIs2s1とする。
【0027】
V4がV1よりも高い場合、例えば、V4が+100Vで、V1が0Vの場合において、第一ゲート端子3と第二ゲート端子4の入力電圧であるVg1及びVg2をそれぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧以下の電圧、例えば0Vとする。これにより、第1のp型半導体層13Aから広がる空乏層が、チャネル領域中を第2のp型GaN層の方向へ向けて広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。従って、V4が正の高電圧であっても、第2のオーミック電極12Bから第1のオーミック電極12Aへ流れる電流を遮断する遮断状態を実現できる。一方、V4がV1よりも低い場合、例えばV4が−100Vで、V1が0Vの場合においても、第2のp型半導体層13Bから広がる空乏層が、チャネル領域中を第1のp型半導体層13Aの方向へ向けて広がり、チャネルに流れる電流を遮断することができる。このため、第2のオーミック電極12Bに負の高電圧が印加されている場合においても、第1のオーミック電極12Aから第2のオーミック電極12Bへ流れる電流を遮断することができる。すなわち、双方向スイッチ2の双方向の電流を遮断することが可能となる。
【0028】
以上のような構造及び動作において、耐圧を確保するためのチャネル領域を第1のゲート電極14Aと第2のゲート電極14Bとが共有する。この素子は、1素子分のチャネル領域の面積で双方向スイッチ2が実現可能であり、双方向スイッチ2全体を考えると、2つのダイオードと2つのノーマリーオフ型のAlGaN/GaN−HFETとを用いた場合と比べてチップ面積をより少なくすることができ、双方向スイッチ2の低コスト化及び小型化が可能となる。
【0029】
次に、第一ゲート端子3、第二ゲート端子4の入力電圧であるVg1及びVg2が、それぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧よりも高い電圧、例えば5Vの場合には、第1のゲート電極14A及び第2のゲート電極14Bに印加される電圧は、共に閾値電圧よりも高くなる。従って、第1のp型半導体層13A及び第2のp型半導体層13Bからチャネル領域に空乏層が広がらないため、チャネル領域は第1のゲート電極14Aの下側においても、第2のゲート電極14Bの下側においてもピンチオフされない。その結果、第1のオーミック電極12Aと第2のオーミック電極12Bとの間に双方向に電流が流れる導通状態を実現できる。
【0030】
次に、Vg1を第1の閾値電圧よりも高い電圧とし、Vg2を第2の閾値電圧以下とした場合の動作について説明する。第一ゲート端子3、第二ゲート端子4を備えた双方向スイッチ2を等価回路で表すと図2(a)に示すように第1のトランジスタ16と第2のトランジスタ17とが直列に接続された回路とみなすことができる。この場合、第1のトランジスタ16のソース(S)が第1のオーミック電極12A、第1のトランジスタ16のゲート(G)が第1のゲート電極14Aに対応し、第2のトランジスタ17のソース(S)が第2のオーミック電極12B、第2のトランジスタ17のゲート(G)が第2のゲート電極14Bに対応する。このような回路において、例えば、Vg1を5V、Vg2を0Vとした場合、Vg2が0Vであるということは第2のトランジスタ17のゲートとソースが短絡されている状態と等しいため、双方向スイッチ2は図2(b)に示すような回路とみなすことができる。
【0031】
さらに、図2(b)に示す第2のトランジスタ17のソース(S)をA端子、ドレイン(D)をB端子、ゲート(G)をC端子として説明を行う。図に示すB端子の電位がA端子の電位よりも高い場合には、A端子がソースでB端子がドレインであるトランジスタとみなすことができ、このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ソース)との間の電圧は0Vであり、閾値電圧以下のため、B端子(ドレイン)からA端子(ソース)に電流は流れない。一方、A端子の電位がB端子の電位よりも高い場合には、B端子がソースでA端子がドレインのトランジスタとみなすことができる。このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ドレイン)との電位が同じであるため、A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以下の場合にはA端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を通電しない。A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以上となると、ゲートにB端子(ソース)を基準として閾値電圧以上の電圧が印加され、A端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を流すことができる。つまり、トランジスタのゲートとソースとを短絡させた場合、ドレインがカソードでソースがアノードのダイオードとして機能し、その順方向立上り電圧はトランジスタの閾値電圧となる。そのため、図2(a)に示す第2のトランジスタ17の部分は、ダイオードとみなすことができ、図2(c)に示すような等価回路となる。図2(c)に示す等価回路において、双方向スイッチ2のドレイン端子5の電位がソース端子6の電位よりも高い場合、第1のトランジスタ16の第一ゲート端子3に5Vが印加されている場合には、第1のトランジスタ16はオン状態であり、S2からS1へ電流を流すことが可能となる。ただし、ダイオードの順方向立上り電圧によるオン電圧が発生する。また、双方向スイッチ2のS1の電位がS2の電位よりも高い場合、その電圧は第2のトランジスタ17からなるダイオードが担い、双方向スイッチ2のS1からS2へ流れる電流を阻止する。つまり、第一ゲート端子3に閾値電圧以上の電圧を与え、第二ゲート端子4に閾値電圧以下の電圧を与えることにより、いわゆる双方向素子をオンした状態とドレイン側にダイオードのカソード側を直列接続した動作が可能なスイッチが実現できる。
【0032】
図3は、双方向スイッチ2のVs2s1とIs2s1との関係であり、(a)は、Vg1とVg2とを同時に変化させた場合を示し、(b)はVg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を変化させた場合を示し、(c)はVg1を第1の閾値電圧以下の0VとしてVg2を変化させた場合を示している。なお、図3において横軸であるS2−S1間電圧(Vs2s1)は、第1のオーミック電極12Aを基準とした電圧であり、縦軸であるS2−S1間電流(Is2s1)は第2のオーミック電極12Bから第1のオーミック電極12Aへ流れる電流を正としている。図3(a)に示すように、Vg1及びVg2が0Vの場合及び1Vの場合には、Vs2s1が正の場合にも負の場合にもIs2s1は流れず、半導体素子10は遮断状態となる。また、Vg1とVg2とが共に閾値電圧よりも高くなると、Vs2s1に応じてIs2s1が双方向に流れる導通状態となる。一方、図3(b)に示すように、Vg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を第1の閾値電圧以下の0Vとした場合には、Is2s1は双方向に遮断される。しかし、Vg1を第1の閾値電圧以上の2V〜5Vとした場合には、Vs2s1が1.5V未満の場合にはIs2s1が流れないが、Vs2s1が1.5V以上になるとIs2s1が流れる。つまり、第2のオーミック電極12Bから第1のオーミック電極12Aにのみに電流が流れ、第1のオーミック電極12Aから第2のオーミック電極12Bには電流が流れない逆阻止状態となる。また、Vg1を0Vとし、Vg2を変化させた場合には図3(c)に示すように、第1のオーミック電極12Aから第2のオーミック電極12Bにのみに電流が流れ、第2のオーミック電極12Bから第1のオーミック電極12Aには電流が流れない逆阻止状態となる。
【0033】
以上より、双方向スイッチ2は、そのゲートバイアス条件により、双方向の電流を遮断・通電する機能を有すると共に、ダイオード動作も可能であり、そのダイオードの電流が通電する方向も切り換えることができる。以上、説明したように双方向スイッチ2の第一ゲート端子3と第二ゲート端子4のオンあるいはオフ条件に応じて、4つの動作モード(図4)で動作することができる。本構造はJFETに類似しているが、キャリア注入を意図的に行うという点で、ゲート電界によりチャネル領域内のキャリア変調を行うJFETとは全く異なった動作原理により動作する。具体的には、ゲート電圧が3VまではJFETとして動作するが、pn接合のビルトインポテンシャルを超える3V以上のゲート電圧が印加された場合には、ゲートに正孔が注入され、前述したメカニズムにより電流が増加し、大電流且つ低オン抵抗の動作が可能となる。
【0034】
また、双方向スイッチ2は、第1のゲート電極14Aがp型の導電性を有する第1のp型半導体層13Aの上に形成され、第2のゲート電極14Bがp型の導電性を有する第2のp型半導体層13Bの上に形成されている。このため、第1の半導体層と第2の半導体層との界面領域に生成されるチャネル領域に対して、第1のゲート電極14A及び第2のゲート電極14Bから順方向のバイアスを印加することにより、チャネル領域内に正孔を注入することができる。窒化物半導体においては正孔の移動度は、電子の移動度よりもはるかに低いため、チャネル領域に注入された正孔は電流を流す担体としてほとんど寄与しない。このため、第1のゲート電極14A及び第2のゲート電極14Bから注入された正孔は同量の電子をチャネル領域内に発生させるので、チャネル領域内に電子を発生させる効果が高くなり、ドナーイオンのような機能を発揮する。つまり、チャネル領域内においてキャリア濃度の変調を行うことが可能となるため、動作電流が大きいノーマリオフ型の窒化物半導体層双方向スイッチを実現することが可能となる。
【0035】
次に、電力変換回路である昇圧チョッパ回路としての双方向チョッパ回路1について、図5を参照しながら説明する。
【0036】
図に示すように、双方向チョッパ回路1は、リアクタ18と、このリアクタ18を介してPN間をショートする単方向スイッチと逆並列したダイオードとしてのMOSFET19と、整流ダイオードの代用として双方向スイッチ2と、出力のリプル電圧を抑制するコンデンサ20を備えている。この回路構成では、双方向スイッチ2を有する回路構成であり、また、双方向スイッチ2、および単方向スイッチと逆並列ダイオードとしてのMOSFET19を直列接続し、接続した中間から入出力(入力または出力)を取り出すハーフブリッジ回路21に相当するものである。
【0037】
次に双方向チョッパ回路1の動作の説明として、図6に入力端子Viから出力端子Voに電力が搬送される場合の双方向スイッチ2とMOSFET19の状態についてのタイミングチャートを示し、図7に状態遷移の説明図を示す。図7に示すように、昇圧チョッパ回路として双方向チョッパ回路1を駆動して、入力端子側から出力端子側へ電力を出力する場合には、図7(a)のように一般に双方向スイッチ2は等価的にダイオードとして機能させる。しかし、ダイオードの状態を継続した場合、順方向電圧に通流電流を乗じた電力分の損失が発生するため、同図(b)のように双方向のトランジスタのオン状態とすることで損失を低減する。但し、双方向スイッチ2を使用した場合、図に示す中間電圧Vdの電圧が出力端子側の電圧Voと双方向スイッチ2のオン抵抗と通流電流から計算できる降下電圧を加算した電圧よりも高い場合、電力は入力端子側から出力端子側へと搬送できるが、電圧が低下して出力端子側の電圧Voが中間電圧Vdよりも高くなった場合において、双方向スイッチが双方向にオンしていた際には所望の特性が得られず、逆方向に電力が搬送されることとなり、出力電圧が安定しないこととなる。従って、昇圧チョッパ回路として動作した時に、中間電圧Vdが出力端子側の電圧Voよりも低い状態の際には、双方向スイッチ2をオフの状態か、もしくは入力端子側をアノード、出力端子側をカソードとしたダイオード動作とする必要がある。しかし、MOSFET19がオン状態からターンオフする際に、リアクタ18に蓄積した電気エネルギー分が出力端子側の電圧Voとして出力されるようにする必要があるため、その時点において双方向スイッチ2はダイオード動作あるいは双方向に導通可能な状態とする必要がある。従って、MOSFET19がターンオフする前に、図4に示した状態(2)の状態とし、ダイオード動作するようにしている。その後に、ダイオード動作による双方向スイッチ2の損失を低減するために、第一ゲート端子3、第二ゲート端子4共にオン状態に切り換えて双方向にトランジスタのオン状態としている。また、双方向スイッチ2のオンが継続すると、昇圧チョッパ回路の動作をしている場合、リアクタ18に蓄積された電荷を放出により、中間電圧Vdが低下し出力側から入力側に電流が流れることになるため、第二ゲート端子4をターンオフしてダイオード動作に戻す必要があることから、図6に示すタイミングチャートのようなオンオフ制御となっている。
【0038】
具体的には、MOSFET19がターンオフする前に第一ゲート端子3をターンオンして、双方向スイッチ2をダイオード動作、すなわち図4に示す状態(1)とする。この状態(1)において、双方向スイッチ2はドレイン端子5とソース端子6との間に逆方向のダイオードと双方向にトランジスタのオン状態とした半導体となっているため、出力側から入力側に逆流することはない。その後、MOSFET19がターンオフすると、中間電圧Vdは上昇し、出力側の電圧と双方向スイッチ2の順方向電圧を超えると、双方向スイッチ2を通して順方向に電流が通流する。しかし、双方向スイッチ2をこの状態(1)で保持した場合、ダイオードで順方向電圧と通流電流により決定する電力損失が発生する。そのため、次のステップとして第二ゲート端子4をターンオンさせる。これにより、双方向スイッチ2は、図4に示す状態(3)と遷移するため、ダイオードを通流させることなく、損失の少ないトランジスタ側から供給することができる。さらに、次のステップでは、中間電圧Vdが出力電圧Voよりも低い状態となる前に、双方向スイッチ2が入力Vi側をアノード、Vo側にカソードとしたダイオード動作する状態(1)となるように第二ゲート端子4をターンオフさせている。本サイクルを反復することで、通常双方向スイッチ2に位置するダイオードで、オン期間中に常時順方向電圧と通流電流で決定される損失を低減する。
【0039】
以上のように、第一ゲート端子3、第二ゲート端子4、ドレイン端子5、ソース端子6を備え、第一ゲート端子3のみをオンすると、ドレイン端子5からソース端子6との間に双方向デバイスのオン状態と逆方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、第二ゲート端子4のみをオンすると、ドレイン端子5からソース端子6との間に順方向ダイオードと順方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、第一ゲート端子3および第二ゲート端子4をオンすると、ドレイン端子5からソース端子6との間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作し、第一ゲート端子3および第二ゲート端子4をオフすると順逆双方向に電流を遮断する特性を有した双方向スイッチ2を備える構成とすることで、4つの動作モードを有する双方向スイッチ2を有しているため、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、ダイオードを通流する期間を短くしてトランジスタ側を通流することとなるため、双方向スイッチ2で消費される電力は、トランジスタ側のオン抵抗分となり、低損失化を図ることができ、冷却フィンや冷却ファンの小型化を図ることができる。
【0040】
なお、本実施の形態1では、双方向チョッパ回路を電力変換回路の例として記載したが、昇圧チョッパ回路などその他の回路であっても作用効果に差異はない。
【0041】
また、双方向スイッチと直列に接続する単方向デバイスとしてMOSFETを例として記載したが、IGBTなどその他の回路であっても作用効果に差異はない。
【0042】
さらに、第一ゲート端子、第二ゲート端子のオンオフ順序は回路構成に応じて入れ替える構成であっても良い。
【0043】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2について、図8を参照しながら電力変換回路の構成について説明する。
【0044】
なお、実施の形態1と同一機能を有するものは、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
図8に示すように。電力変換回路としてのコンバータ回路22は、双方向スイッチ2を直列に接続した第二ブリッジ回路として2対の第一アーム23(双方向スイッチ2A、2B)、第二アーム24(双方向スイッチ2C、2D)を並列に接続し、第一アーム23、第二アーム24の上下をコンデンサ25に接続し、さらに、第一アーム23、第二アーム24の中間点にはリアクタ26、27を通して交流電源に接続されるように構成している。さらに、第一アーム23、第二アーム24の双方向スイッチの第一ゲート端子3a、3b、3c、3dと第二ゲート端子4a、4b、4c、4dのオンあるいはオフ制御を行なう制御部28を備えている。
【0046】
次に、制御部28の動作について、図9に示すタイミングチャートと、図10に示すコンバータ回路22の状態遷移を参照しながら説明する。なお、本実施例では交流電源のピーク電圧よりも高い直流電圧に変換するAC/DCコンバータ回路を例として記載する。
【0047】
図10に示すように、通常のコンバータ回路は、交流電源の電力を直流電力に変換(コンデンサ25へ充電あるいは負荷へ供給)する際に、図10(a)に示すように正の半サイクルでは双方向スイッチ2Dに位置するトランジスタをオン状態として、リアクタ26、27に電荷を蓄えて、2Dがターンオフすると同図(b)に示すように双方向性スイッチ2Cに位置するフライホイールダイオードを経由してコンデンサ25あるいは負荷へ電力が供給される。負の半サイクルは双方向スイッチ2Bに位置するトランジスタをオン、オフを切り換えて2Aに位置するフライホイールダイオード経由で電力供給される。本実施例でフライホイールダイオードの部分に電流が通流する期間の間、トランジスタ動作させるようにゲート端子に制御信号を出力するが、コンバータ回路22の第一アーム23と第二アーム24がそれぞれ上下アーム短絡しないように双方向共にトランジスタ動作させる必要がある。そのため、本構成における制御部28では、第一ゲート端子のみオン、あるいは第二ゲート端子のみオンすることで、双方向スイッチ2Aから2Dをダイオード動作させる中間の状態を経由させる構成としている。
【0048】
まず、交流電源が正の半サイクルにおいて、リアクタ26、27に電荷を蓄積する期間では、電流の経路として、交流電源からリアクタ26、双方向スイッチ2D、双方向スイッチ2B、リアクタ26、交流電源となるループを形成する。このとき、上下アーム短絡防止のため、双方向スイッチ2Aの第一ゲート端子3a、第二ゲート端子4aは共にオフ状態とする。従って、双方向スイッチ2Aが順逆共に電流を遮断した状態となるため、双方向スイッチ2Bは順逆共にオン状態であっても問題はない。よって、双方向スイッチ2Bは両方向オン状態で、双方向にトランジスタのオン動作した状態となる。この状態で双方向スイッチ2Dを状態(2)のモードを経由して状態(3)のモードへ移行(すなわちターンオン)させることで、トランジスタのオン状態で入力線間ショート状態とすることができ、リアクタ26、27に電荷を蓄積することができる。
【0049】
次に蓄積した電荷を放出する期間では、電流の経路として、交流電源からリアクタ26、双方向スイッチ2C、コンデンサ25あるいは負荷、双方向スイッチ2B、リアクタ26、交流電源となるループを形成する。このとき、双方向スイッチ2Bはオン状態を継続しており、第二アーム24のみ状態が遷移する。第二アーム24の双方向スイッチ2Dは、リアクタ26、27による電流を流すために状態(2)のモードを経由して状態(4)、すなわち双方向に電流遮断する。この双方向スイッチ2Dを状態(2)に遷移させると同時に双方向スイッチ2Cを状態(1)へ遷移させる。これにより、アーム短絡は発生しないが、リアクタ26、27からの電流は次のステップとして状態(4)としても双方向スイッチ2Cがダイオード動作しているため、問題とならない。
【0050】
さらに、次のステップでは、双方向スイッチ2Cを状態(1)から状態(3)へ移行させて、コンデンサ25あるいは負荷に対して電流を流すためのループを保持する。但し、ダイオード動作からトランジスタのオン状態へと変化しているため、双方向スイッチ2Cによる損失は低減されている。
【0051】
また、次のステップでは、双方向スイッチ2Cを状態(3)から状態(1)を経由して状態(4)へと戻し、最終的には双方向の電流遮断状態へと移行させる。
【0052】
以上の動作を反復させて交流電源の正の半サイクルの制御が行なうことになる。また、負の半サイクルについては、同様の処理のため、説明は省略する。
【0053】
なお、アーム短絡防止については、各アームの上下の双方向スイッチ2Aおよび2B、あるいは双方向スイッチ2Cおよび2Dを上アームから下アームに短絡電流が流れないように制御する必要があるため、各状態が第二ゲート端子4を同時オンしないように制御することで行なう。すなわち、各上下アームに該当する双方向スイッチ2A〜2Dの何れかの組合せにおいて、上下アーム共に状態(2)あるいは状態(3)とならないように制御する。具体的には、インダクタンス26,27に電荷を蓄積するサイクルにおいては,双方向スイッチ2Aを状態(4),2Bを状態(1),2Cを状態(4),2Dを状態(2),あるいは双方向スイッチ2Aを状態(4),2Bを状態(3),2Cを状態(4),2Dを状態(3),あるいは双方向スイッチ2Aを状態(4),2Bを状態(3),2Cを状態(1),2Dを状態(2),あるいは双方向スイッチ2Aを状態(4),2Bを状態(1),2Cを状態(4),2Dを状態(4)の順で切り替えることで行なう。また,コンデンサ25あるいは出力側へ出力するサイクルにおいては,双方向スイッチ2Aを状態(4),2Bを状態(3),2Cを状態(1),2Dを状態(4),あるいは双方向スイッチ2Aを状態(4),2Bを状態(3),2Cを状態(3),2Dを状態(4),あるいは双方向スイッチ2Aを状態(4),2Bを状態(1),2Cを状態(1),2Dを状態(2)の順で切り替えることにより行なう。
【0054】
以上のように、第一ゲート端子3、第二ゲート端子4、ドレイン端子5、ソース端子6を備え、第一ゲート端子3のみをオンすると、ドレイン端子5からソース端子6との間に双方向デバイスのオン状態と逆方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、第二ゲート端子4のみをオンすると、ドレイン端子5からソース端子6との間に順方向ダイオードと順方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、第一ゲート端子3および第二ゲート端子4をオンすると、ドレイン端子5からソース端子6との間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作し、第一ゲート端子3および第二ゲート端子4をオフすると順逆双方向に電流を遮断する特性を有した双方向スイッチ2を直列に接続し、接続した中間から入出力を取り出した第二ブリッジ回路を2組有するコンバータ回路22を構成することで、4つの動作モードを有する双方向スイッチ2を有しているため、順方向のみオン状態、逆方向のみオン状態、双方向オン状態、双方向オフ状態とすることができ、ダイオードを通流する期間を短くしてトランジスタ側を通流することとなるため、双方向スイッチ2で消費される電力は、トランジスタ側のオン抵抗分となり、低損失化を図ることができ、冷却フィンや冷却ファンの小型化を図ることができる。
【0055】
なお、本実施の形態2では、コンバータ回路(交流直流コンバータ回路)を電力変換回路の例として記載したが、インバータ回路などその他の回路であっても作用効果に差異はない。
【0056】
また、リアクタに電荷を蓄積する期間で、双方向スイッチ2B、2Dをオンオフして電流経路を形成するとしたが、双方向スイッチ2Aから2Dのオン時間比率のバランスをとるために(各双方向スイッチの発熱量の平準化のために)、双方向スイッチ2A、2Cをオンオフさせることで電流経路を形成するとしてもよい。
【0057】
さらに、双方向スイッチ2B、2Dは交流電源の電圧が正の半サイクル、負の半サイクルで常時オン状態としたが、電流経路を形成する時間のみオン状態とする構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ゲート信号に制御により4つの状態を有する双方向スイッチを利用した電力変換回路としてDC−DCコンバータ装置、AC−DC変換装置、インバータ装置のスイッチング回路に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態1の双方向スイッチの構成図
【図2】同双方向スイッチの等価回路図
【図3】同双方向スイッチの電圧・電流の相関図
【図4】同双方向スイッチの動作モードを示す図
【図5】同双方向チョッパ回路1の構成図
【図6】同双方向スイッチの動作タイミングを示す図
【図7】同双方向スイッチの状態遷移の説明図((a)ダイオードとして機能させた場合の等価的な回路図、(b)双方向スイッチの状態遷移を示す図)
【図8】本発明の実施の形態2における電力変換回路の構成図
【図9】同タイミングチャート
【図10】同コンバータ回路の状態遷移の説明図((a)正の半サイクルにおける電流の流れを示す図、(b)下側の双方向スイッチがターンオフしたときの還流電流の流れを示す図、(c)正の半サイクルにおける状態遷移の説明図、(d)下側の多方向スイッチがターンオフしたときの状態遷移の説明図)
【図11】従来の特許文献1における電力変換回路(電流双方向コンバータ)の構成図
【図12】従来の特許文献2における電力変換回路(DC−DCコンバータ)の構成図
【符号の説明】
【0060】
1 双方向チョッパ回路
2 双方向スイッチ
2A 双方向スイッチ
2B 双方向スイッチ
2C 双方向スイッチ
2D 双方向スイッチ
3 第一ゲート端子
3a 第一ゲート端子
3b 第一ゲート端子
3c 第一ゲート端子
3d 第一ゲート端子
4 第二ゲート端子
4a 第二ゲート端子
4b 第二ゲート端子
4c 第二ゲート端子
4d 第二ゲート端子
5 ドレイン端子
6 ソース端子
7 基板
8 バッファ層
9 半導体層積層体
10 GaN層
11 AlGaN層
12A 第1のオーミック電極
12B 第2のオーミック電極
13A 第1のp型半導体層
13B 第2のp型半導体層
14A 第1のゲート電極
14B 第2のゲート電極
15 保護膜
16 第1のトランジスタ
17 第2のトランジスタ
18 リアクタ
19 MOSFET
20 コンデンサ
21 ハーフブリッジ回路
22 コンバータ回路
23 第一アーム
24 第二アーム
25 コンデンサ
26 リアクタ
27 リアクタ
28 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ゲート端子、第二ゲート端子、ドレイン端子、ソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、ドレイン端子からソース端子間に双方向デバイスのオン状態と逆方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、前記第二ゲート端子のみをオンすると、ドレイン端子からソース端子間に順方向ダイオードと前記順方向ダイオードのカソード側が直列接続された双方向デバイスのオン状態として動作し、前記第一ゲート端子および第二ゲート端子をオンすると、ドレイン端子からソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作し、前記第一ゲート端子および第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する特性を有した双方向スイッチを有したことを特徴とする電力変換回路。
【請求項2】
双方向スイッチ、および単方向スイッチと逆並列したダイオードとを直列接続し、接続した中間から入出力を取り出したハーフブリッジ回路を有することを特徴とする請求項1記載の電力変換回路。
【請求項3】
双方向スイッチを直列に接続し、接続した中間から入出力を取り出した第二ハーフブリッジ回路を有することを特徴とする請求項1記載の電力変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−148106(P2009−148106A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324355(P2007−324355)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】