説明

電力変換装置

【課題】強力なばね部材を不要にすることができるとともにハンドリングが容易な電力変換装置を提供する。
【解決手段】液冷式冷却容器31,32,33には冷却液供給パイプ40と冷却液排出パイプ50が連結され、ばね部材61,62,63,64,65,66は、一対の挟持部67,68および当該一対の挟持部67,68をつなぐ連結部69を有する。一対の挟持部67,68は、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と液冷式冷却容器31,32,33とが当接して構成される積層体に対して、積層体のスイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と液冷式冷却容器31,32,33とが向かい合っている面と反対側の面にそれぞれ配置される。スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と液冷式冷却容器31,32,33とが少なくとも1つのばね部材61,62,63,64,65,66により圧接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に電力変換装置の製造方法が開示されている。電力変換装置は、冷却管部とその両端部に設けた連結管部とに冷媒流路を連通させた冷却管を複数用い、複数の冷却管同士を連結管部において連結させ、冷却管同士の間に半導体モジュールを挟持した状態で、ケース内に収納している。電力変換装置を製造する際には、まず、複数の冷却管同士を連結管部において仮状態で連結してなる仮組体を、ケース内に配置する。そして、仮組体における冷却管同士の間に半導体モジュールを配置する。また、複数の冷却管のうち一方側端部に位置する一方側冷却管をケースにおける一方の壁面に対面させ、複数の冷却管のうち他方側端部に位置する他方側冷却管を加圧治具によって加圧し、連結管部同士を嵌合させて、複数の冷却管同士の間に半導体モジュールを挟持した組付体を形成する。さらに、加圧治具によって加圧した際に、他方側冷却管とケースにおける他方の壁面との間に形成された空間に、組付体における挟持状態を保持する押圧ばねを配置する。これにより、ケースのサイズを極力小さくすることができ、かつ冷却管に対する半導体モジュールの挟持位置を安定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−259203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、仮固定から本固定すべく強制変形を維持するため、より強力なばね部材が必要になる。また、ハンドリングに余分な工数がかかる。
本発明の目的は、強力なばね部材を不要にすることができるとともにハンドリングが容易な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、スイッチング用電子部品と、前記スイッチング用電子部品を冷却するための液冷式冷却容器と、前記液冷式冷却容器に連結され、前記液冷式冷却容器に冷却液を供給する冷却液供給パイプと、前記液冷式冷却容器に連結され、前記液冷式冷却容器から冷却液を排出する冷却液排出パイプと、前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが当接して構成される積層体に対して、当該積層体の前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが向かい合っている面と反対側の面の一方に配置される密接部と、他方に配置される支持部と、前記密接部と前記支持部とをつなぐ連結部と、を有するばね部材と、を備え、前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが少なくとも1つの前記ばね部材により圧接されることを要旨とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、スイッチング用電子部品を冷却するための液冷式冷却容器に対し冷却液供給パイプが連結され、冷却液供給パイプにより、液冷式冷却容器に冷却液が供給される。また、液冷式冷却容器に連結された冷却液排出パイプにより、液冷式冷却容器から冷却液が排出される。
【0007】
スイッチング用電子部品と液冷式冷却容器とが当接して構成される積層体に対して、積層体のスイッチング用電子部品と液冷式冷却容器とが向かい合っている面と反対側の面の一方に、ばね部材における密接部が配置されるとともに他方にばね部材における支持部が配置される。そして、少なくとも1つのばね部材によりスイッチング用電子部品と液冷式冷却容器とが圧接される。よって、強力なばね部材を不要にすることができるとともにハンドリングが容易となる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、スイッチング用電子部品と、前記スイッチング用電子部品を冷却するための液冷式冷却容器と、前記液冷式冷却容器に連結され、前記液冷式冷却容器に冷却液を供給する冷却液供給パイプと、前記液冷式冷却容器に連結され、前記液冷式冷却容器から冷却液を排出する冷却液排出パイプと、前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが当接して構成される積層体に対して、当該積層体の前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが向かい合っている面と反対側の面にそれぞれ配置される一対の挟持部および当該一対の挟持部をつなぐ連結部を有するばね部材と、を備え、前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが少なくとも1つの前記ばね部材により圧接されることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、スイッチング用電子部品を冷却するための液冷式冷却容器に対し冷却液供給パイプが連結され、冷却液供給パイプにより、液冷式冷却容器に冷却液が供給される。また、液冷式冷却容器に連結された冷却液排出パイプにより、液冷式冷却容器から冷却液が排出される。
【0010】
スイッチング用電子部品と液冷式冷却容器とが当接して構成される積層体に対して、ばね部材における一対の挟持部が積層体のスイッチング用電子部品と液冷式冷却容器とが向かい合っている面と反対側の面にそれぞれ配置される。そして、少なくとも1つのばね部材によりスイッチング用電子部品と液冷式冷却容器とが圧接される。よって、強力なばね部材を不要にすることができるとともにハンドリングが容易となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電力変換装置において、前記積層体は、前記液冷式冷却容器を挟んで一対の前記スイッチング用電子部品を配してなり、前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが少なくとも1つの前記ばね部材で圧接されることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、液冷式冷却容器を挟んで一対のスイッチング用電子部品を配した積層体に対し、少なくとも1つのばね部材でスイッチング用電子部品と液冷式冷却容器とを圧接することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、前記ばね部材は、ばね鋼板を屈曲形成または引き抜き加工してなることを要旨とする。
請求項4に記載の発明によれば、ばね鋼板を屈曲形成または引き抜き加工することによりばね部材を容易に構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強力なばね部材を不要にすることができるとともにハンドリングが容易な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における電力変換装置の斜視図。
【図2】電力変換装置の側面図。
【図3】電力変換装置の縦断面図。
【図4】(a)はスイッチング用電子部品の平面図、(b)はスイッチング用電子部品の正面図、(c)はスイッチング用電子部品の側面図。
【図5】(a)は冷却機構の平面図、(b)は冷却機構の正面図、(c)は冷却機構の側面図。
【図6】(a)はばね部材の平面図、(b)はばね部材の正面図、(c)はばね部材の側面図。
【図7】別例の電力変換装置の側面図。
【図8】別例の電力変換装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
なお、図面において、水平面を、直交するX,Y方向で規定するとともに、上下方向をZ方向で規定している。
【0017】
図1,2に示すように、電力変換装置10は、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と、液冷式冷却容器31,32,33と、冷却液供給パイプ40と、冷却液排出パイプ50と、ばね部材61,62,63,64,65,66と、固定部材70を備えている。
【0018】
本実施形態では電力変換装置10はハイブリッド車に搭載され、車載用電池の電圧を昇圧するDC/DCコンバータ(昇圧用コンバータ)と走行用モータを駆動するインバータを構成している。なお、これに限らず、DC/DCコンバータあるいはインバータに適用してもよい。
【0019】
スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26は、DC/DCコンバータやインバータにおける上アームや下アームを構成するパワートランジスタであり、スイッチング動作に伴い発熱する。スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26を冷却するための冷却機構Cが、液冷式冷却容器31,32,33と冷却液供給パイプ40と冷却液排出パイプ50とにより構成されている。
【0020】
スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26は同一構成となっている。本実施形態では、各スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26は、図4に示すようにパワーモジュールである。パワーモジュールは、複数のパワートランジスタ(チップ)を樹脂材にてモールドすることにより長方形の板状をなしている。長方形の板状をなす本体部28における上面から制御用のピン29が突出し、ピン29は上方に直線的に延びている。
【0021】
図1,2の液冷式冷却容器31,32,33は同一構成となっている。各液冷式冷却容器31,32,33は、扁平で、かつ、左右方向に長い長方形状をなしている。また、各液冷式冷却容器31,32,33は、内部に冷却液通路が形成されている。詳しくは、各液冷式冷却容器31,32,33は、図3に示すように、2枚のプレート35,36を用いて構成され、一対のプレート35,36を重ね合わせてロウ付けすることにより内部に冷却液通路が形成されている。つまり、一方の外殻プレート35と他方の外殻プレート36は外周縁部が鍔状に形成され、この外周縁部(鍔部)において接合され、一方の外殻プレート35と他方の外殻プレート36との間に冷却液通路が形成されている。また、プレート35,36間の冷却液通路には波板(放熱フィン)37がロウ付けされている。
【0022】
図5に示すように、左右に長い長方形状をなす各液冷式冷却容器31,32,33は立設され、右側部分には、1本の冷却液供給パイプ40が連結されている。冷却液供給パイプ40は水平方向(X方向)に延びている。また、左右に長い長方形状をなす各液冷式冷却容器31,32,33における左側部分には、1本の冷却液排出パイプ50が連結されている。冷却液排出パイプ50は水平方向(X方向)に延びている。冷却液供給パイプ40と冷却液排出パイプ50とはY方向に一定の距離を保った状態で平行に配置されている。液冷式冷却容器31と液冷式冷却容器32、液冷式冷却容器32と液冷式冷却容器33とは、X方向において一定の距離だけ離間している。
【0023】
冷却液供給パイプ40の内部と各液冷式冷却容器31,32,33の冷却液通路とは連通している。同様に、冷却液排出パイプ50の内部と各液冷式冷却容器31,32,33の冷却液通路とは連通している。そして、冷却液供給パイプ40により各液冷式冷却容器31,32,33の冷却液通路に冷却液(例えば水)が供給される。また、各液冷式冷却容器31,32,33の冷却液通路を通過した冷却液が冷却液排出パイプ50により液冷式冷却容器31,32,33の冷却液通路から排出される。
【0024】
図6に示すように、ばね部材61,62,63,64,65,66は、同一構成となっている。各ばね部材61,62,63,64,65,66は、帯板状のばね鋼板を曲げ加工して形成したものである。ばね部材61,62,63,64,65,66は、スイッチング用電子部品と液冷式冷却容器との積層体の両側に配置される一対の挟持部67,68および一対の挟持部67,68をつなぐ連結部69を有する。連結部69は、水平方向(X方向)に延びている。連結部69の一端において挟持部67が下方に屈曲しているとともに連結部69の他端において挟持部68が下方に屈曲している。下方に延びる挟持部67,68は、下端側の途中の部位において互いに接近する方向に「く」の字状に屈曲形成されている。
【0025】
図1,2に示すように、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と、スイッチング用電子部品21〜26を冷却するための液冷式冷却容器31,32,33とが当接して積層されている。そして、この積層体がばね部材61,62,63,64,65,66により挟持されている。
【0026】
つまり、積層体のスイッチング用電子部品(21〜26)と液冷式冷却容器(31〜33)とが向かい合っている面と反対側の面にそれぞれ一対の挟持部67,68が配置されている。そして、スイッチング用電子部品(21〜26)と液冷式冷却容器(31〜33)とが少なくとも1つのばね部材(61〜66)により圧接される。
【0027】
詳しくは、図3において、液冷式冷却容器31におけるX方向の一方の面にスイッチング用電子部品21が当接しているとともにX方向の他方の面にスイッチング用電子部品22が当接している。スイッチング用電子部品21と液冷式冷却容器31とスイッチング用電子部品22との積層体は、X方向における両側からばね部材61,64により自身のばね性にて挟持されている。つまり、図1のY方向において離間して配したばね部材61,64によりスイッチング用電子部品21と液冷式冷却容器31とスイッチング用電子部品22との積層体が挟持されている。
【0028】
同様に、図3の液冷式冷却容器32におけるX方向の一方の面にスイッチング用電子部品23が当接しているとともにX方向の他方の面にスイッチング用電子部品24が当接している。スイッチング用電子部品23と液冷式冷却容器32とスイッチング用電子部品24との積層体は、X方向における両側からばね部材62,65により自身のばね性にて挟持されている。つまり、図1のY方向において離間して配したばね部材62,65によりスイッチング用電子部品23と液冷式冷却容器32とスイッチング用電子部品24との積層体が挟持されている。
【0029】
また、図3の液冷式冷却容器33におけるX方向の一方の面にスイッチング用電子部品25が当接しているとともにX方向の他方の面にスイッチング用電子部品26が当接している。スイッチング用電子部品25と液冷式冷却容器33とスイッチング用電子部品26との積層体は、X方向における両側からばね部材63,66により自身のばね性にて挟持されている。つまり、図1のY方向において離間して配したばね部材63,66によりスイッチング用電子部品25と液冷式冷却容器33とスイッチング用電子部品26との積層体が挟持されている。
【0030】
なお、スイッチング用電子部品(21,22,23,24,25,26)と液冷式冷却容器(31,32,33)との当接面においては位置決めのための凹凸が形成され、凹部に凸部が嵌め込まれることにより両者の位置が決められるようになっている。例えば、液冷式冷却容器(31,32,33)の表面に凸部を形成するとともにスイッチング用電子部品(21,22,23,24,25,26)の本体部28の表面に凹部を形成する。
【0031】
このようにして、図3の冷却機構Cは複数の冷却部(液冷式冷却容器31,32,33)と、これを連通して連結する2本のパイプ部(冷却液供給パイプ40、冷却液排出パイプ50)とからなる。そして、発熱部(スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26)は、冷却部(液冷式冷却容器31,32,33)の両側に冷却部(液冷式冷却容器31,32,33)を挟み込むように配置されている。ばね部材61,62,63,64,65,66で冷却部(液冷式冷却容器31,32,33)と発熱部(スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26)とが圧接されている。これにより、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と液冷式冷却容器31,32,33とが熱的に結合する状態で支持されている。
【0032】
また、図1に示すように、固定部材70は、長方形状をなし、水平状態に配置される四角枠部71と、四角枠部71の一方の長辺から延びるアーム部72,73と、四角枠部71の他方の長辺から延びるアーム部74,75とから構成されている。各アーム部72,73,74,75は同一構成となっている。アーム部72,73は四角枠部71から下方に延びるとともに下端から水平方向に延びている。アーム部72,73における水平部の先端部は図2に示すケース80における載置部81,82に締結される。このとき、アーム部72,73における水平部においては、冷却液供給パイプ40を挟持するように半円弧形状に形成されているとともに、ケース80の載置部81,82についても半円弧形状に形成されており、この部位において冷却液供給パイプ40を支持している。
【0033】
同様に、アーム部74,75は四角枠部71から下方に延びるとともに下端から水平方向に延びている。アーム部74,75における水平部の先端部は図2に示すケース80における載置部に締結される。このとき、アーム部74,75における水平部においては、冷却液排出パイプ50を挟持するように半円弧形状に形成されているとともに、ケース80の載置部についても半円弧形状に形成されており、この部位において冷却液排出パイプ50を支持している。
【0034】
このようにして、電力変換装置10はケース80の内部において所定の位置に支持されている。
図2に示すように、固定部材70の四角枠部71の上面には制御基板90が搭載され、制御基板90に対しスイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26における制御用のピン29が貫通した状態ではんだ付けされている。そして、制御基板90に搭載したドライブ回路等によりスイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26が駆動されるようになっている。
【0035】
次に、このように構成した電力変換装置10の作用を説明する。
まず、組み付けについて説明する。
図4のスイッチング用電子部品(パワーモジュール)21,22,23,24,25,26と、図5の冷却機構C(液冷式冷却容器31,32,33に冷却液供給パイプ40および冷却液排出パイプ50を連結したもの)と、図6に示すばね部材61,62,63,64,65,66を用意する。
【0036】
そして、液冷式冷却容器31の両側にスイッチング用電子部品(パワーモジュール)21,22を配した状態でばね部材61,64を上から下に挿入してばね部材61,64により挟持する。同様に、液冷式冷却容器32の両側にスイッチング用電子部品(パワーモジュール)23,24を配した状態でばね部材62,65を上から下に挿入してばね部材62,65により挟持する。また、液冷式冷却容器33の両側にスイッチング用電子部品(パワーモジュール)25,26を配した状態でばね部材63,66を上から下に挿入してばね部材63,66により挟持する。
【0037】
引き続き、ばね部材61〜66を用いて冷却機構Cにスイッチング用電子部品21〜26を組み付けたものを、ケース80の内部に配置する。さらに、固定部材70をケース80の内部に配置して、固定部材70によりケース80に固定する。つまり、固定部材70のアーム部72,73,74,75の先端部をケース80側に締結することにより冷却機構Cのパイプ40,50をケース80に固定する。また、固定部材70の四角枠部71の上に制御基板90を装着する。
【0038】
このように組み付けた後において電力変換装置10は以下のように動作する。
各液冷式冷却容器31,32,33(内部の冷却液通路)に対し冷却液供給パイプ40から冷却液が供給される。この冷却液は各液冷式冷却容器31,32,33の内部の冷却液通路を通過する。そして、各液冷式冷却容器31,32,33から冷却液が冷却液排出パイプ50を通して排出される。
【0039】
一方、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26はコンバータやインバータの上下アームを構成するパワートランジスタであり、スイッチング動作に伴い発熱する。このとき、ばね部材61,62,63,64,65,66により、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と液冷式冷却容器31,32,33との積層体が挟持されており、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と液冷式冷却容器31,32,33とが熱的に結合する状態で支持されている。
【0040】
よって、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26において発生する熱は液冷式冷却容器31,32,33の内部を流れる冷却液との間で熱交換が行われてスイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26が冷却される。
【0041】
以上のごとく本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ばね部材61,62,63,64,65,66は、一対の挟持部67,68および当該一対の挟持部67,68をつなぐ連結部69を有する。一対の挟持部67,68は、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と液冷式冷却容器31,32,33とが当接して構成される積層体に対して、当該積層体のスイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と液冷式冷却容器31,32,33とが向かい合っている面と反対側の面にそれぞれ配置される。そして、スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26と液冷式冷却容器31,32,33とが少なくとも1つのばね部材61,62,63,64,65,66により圧接される。よって、強力なばね部材を不要にすることができるとともにハンドリングが容易な電力変換装置を提供することができる。
【0042】
詳しく説明する。特許文献1に開示の構造においては、発熱部(半導体モジュール)を冷却機構(冷却管)で挟み込む構造をとる電力変換装置において、発熱部が冷却機構と確実に圧接するようにするため、全体をケース壁等を利用して板ばねで一括押し付けしている。さらに、発熱部(半導体モジュール)を冷却機構(冷却管)にセットした後もその状態を維持する治具(加圧治具も含む)が必要になる。これに対し、本実施形態ではその必要がない。
【0043】
また、特許文献1においては仮固定から本固定するために冷却機構(冷却管)の強制(塑性)変形が必要であったが、本実施形態では1本の冷却液供給パイプ40と、1本の冷却液排出パイプ50を用いており、強制変形させない。そのため、強制変形に伴う破損の心配がない。よって、冷却機構をより安価に製作することが可能になる。さらに、本実施形態では強制変形を維持する必要がないため、押し付け力の小さいばね(ばね部材61,62,63,64,65,66)が利用でき、組み付けに加圧治具を必要としない。つまり、特許文献1では仮固定から本固定するために強制変形を維持するため、より強力なばね部材が必要になるとともにハンドリングなどに余分な工数がかかる。本実施形態では本固定等のための治具を不要にでき、また、強力なばね部材は不要であるとともに、ハンドリングが容易である。特許文献1では複数の発熱部と冷却機構をすべて同時に圧をかけなければならないため、仮位置決めを行うための治具が大がかりになるが、本実施形態では大がかりな治具を不要にすることができる。特許文献1ではケース壁などを利用するためケース設計が制約されてしまうが、本実施形態ではモジュールの圧接にケース壁が不要となり、ケース設計の制約が受けにくくなる。さらに、本実施形態では全体をばねで押さえるのではなく、個別に押さえることができる。
【0044】
(2)積層体は、液冷式冷却容器(31,32,33)を挟んで一対のスイッチング用電子部品(21,22、23,24、25,26)を配してなり、スイッチング用電子部品(21〜26)と液冷式冷却容器(31〜33)とが少なくとも1つのばね部材(61〜66)で圧接される。よって、液冷式冷却容器(31〜33)を挟んで一対のスイッチング用電子部品(21,22、23,24、25,26)を配した積層体に対し、少なくとも1つのばね部材(61〜66)でスイッチング用電子部品(21〜26)と液冷式冷却容器(31〜33)とを圧接することができる。
【0045】
(3)ばね部材61,62,63,64,65,66は、ばね鋼板を屈曲形成してなるので、ばね鋼板を屈曲形成することによりばね部材61,62,63,64,65,66を容易に構成することができる。
【0046】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・図2の構成に代わり図7に示すように構成してもよい。図2においては発熱部(スイッチング用電子部品21,22,23,24,25,26)の数は「6」であり、冷却部(液冷式冷却容器31,32,33)の数は「3」であり、ばね部材61,62,63,64,65,66の数は「6」であった。図7においては、スイッチング用電子部品(パワーモジュール)101と液冷式冷却容器111とスイッチング用電子部品(パワーモジュール)102との積層体がばね部材61,64で挟持されている。同様に、スイッチング用電子部品(パワーモジュール)103と液冷式冷却容器112とスイッチング用電子部品(パワーモジュール)104との積層体がばね部材62,65で挟持されている。スイッチング用電子部品(パワーモジュール)105と液冷式冷却容器113とスイッチング用電子部品(パワーモジュール)106との積層体がばね部材63,66で挟持されている。スイッチング用電子部品(パワーモジュール)107と液冷式冷却容器114とスイッチング用電子部品(パワーモジュール)108との積層体がばね部材121,122で挟持されている。
【0047】
よって、図7では発熱部(スイッチング用電子部品101〜108)の数は「8」であり、冷却部(液冷式冷却容器111〜114)の数は「4」であり、ばね部材61,62,63,64,65,66,121,122の数は「8」である。
【0048】
このようにして、図2の構成に比べ図7の構成において、発熱部および冷却部の数が異なっている。よって、圧接にケース壁等を利用しない構造のため、このように数が変わっても容易に対応が可能となる。
【0049】
・ばね部材61,62,63,64,65,66は、ばね鋼板を屈曲形成して構成したが、これに限ることなく、例えば、銅板を曲げ加工して構成してもよい。
・ばね部材は、ばね鋼板を引き抜き加工して構成してもよい。この場合、ばね部材を容易に構成することができ、ばね部材を大量生産する場合、安価になる。
【0050】
・図8に示すように、ばね部材160は、密接部161と支持部162と連結部163を有する構成としてもよい。密接部161は直線的に延びている。支持部162は「く」の字状をなし、密接部161に接近する方向に屈曲している。連結部163は、密接部161と支持部162とをつないでいる。
【0051】
図8において積層体は、液冷式冷却容器151を挟んで一対のスイッチング用電子部品150,152を配してなる。ばね部材160の密接部161と支持部162とは、スイッチング用電子部品150,152と液冷式冷却容器151とが当接して構成される積層体に対して、積層体のスイッチング用電子部品150,152と液冷式冷却容器151とが向かい合っている面と反対側の面の一方と、他方に配置される。即ち、密接部161はスイッチング用電子部品150に接し、支持部162はスイッチング用電子部品152に接する。ここで、密接部161は積層体(スイッチング用電子部品150)に密接する。また、支持部162は積層体(スイッチング用電子部品152)に対し一点を支点として加圧している。そして、スイッチング用電子部品150,152と液冷式冷却容器151とが少なくとも1つのばね部材160により圧接される。なお、電力変換装置についての他の構成については図1〜6を用いて説明したものと同様である。
【0052】
図8の構成とした場合にも、強力なばね部材を不要にすることができるとともにハンドリングが容易な電力変換装置を提供することができる。この場合、ばね部材の構成が簡略化され、容易に作成することができる。
【0053】
・図1等では1つの液冷式冷却容器とスイッチング用電子部品の積層体に対し2個のばね部材を用いたが、これに限るものではない。例えば、1つの液冷式冷却容器とスイッチング用電子部品の積層体を1個のばね部材で挟持してもよいし、他にも、1つの液冷式冷却容器とスイッチング用電子部品の積層体に対し3個以上のばね部材を用いてもよい。
【0054】
・図1等では3個の液冷式冷却容器31,32,33を具備する3連式であり、図7では4個の液冷式冷却容器111,112,113,114を具備する4連式であったが、これに限ることはない。具体的には、2個の液冷式冷却容器を具備する2連式でも、5個以上の液冷式冷却容器を具備する方式でも、1個の液冷式冷却容器を具備する方式でもよい。
【0055】
・液冷式冷却容器を挟んで一対のスイッチング用電子部品を配した積層体を、ばね部材により挟持したが、これに限らず、液冷式冷却容器の片側にスイッチング用電子部品を配した積層体を、ばね部材により挟持してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…電力変換装置、21…スイッチング用電子部品、22…スイッチング用電子部品、23…スイッチング用電子部品、24…スイッチング用電子部品、25…スイッチング用電子部品、26…スイッチング用電子部品、31…液冷式冷却容器、32…液冷式冷却容器、33…液冷式冷却容器、40…冷却液供給パイプ、50…冷却液排出パイプ、61…ばね部材、62…ばね部材、63…ばね部材、64…ばね部材、65…ばね部材、66…ばね部材、101…スイッチング用電子部品、102…スイッチング用電子部品、103…スイッチング用電子部品、104…スイッチング用電子部品、105…スイッチング用電子部品、106…スイッチング用電子部品、107…スイッチング用電子部品、108…スイッチング用電子部品、111…液冷式冷却容器、112…液冷式冷却容器、113…液冷式冷却容器、114…液冷式冷却容器、121…ばね部材、122…ばね部材、160…ばね部材、161…密接部、162…支持部、163…連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング用電子部品と、
前記スイッチング用電子部品を冷却するための液冷式冷却容器と、
前記液冷式冷却容器に連結され、前記液冷式冷却容器に冷却液を供給する冷却液供給パイプと、
前記液冷式冷却容器に連結され、前記液冷式冷却容器から冷却液を排出する冷却液排出パイプと、
前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが当接して構成される積層体に対して、当該積層体の前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが向かい合っている面と反対側の面の一方に配置される密接部と、他方に配置される支持部と、前記密接部と前記支持部とをつなぐ連結部と、を有するばね部材と、
を備え、
前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが少なくとも1つの前記ばね部材により圧接されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
スイッチング用電子部品と、
前記スイッチング用電子部品を冷却するための液冷式冷却容器と、
前記液冷式冷却容器に連結され、前記液冷式冷却容器に冷却液を供給する冷却液供給パイプと、
前記液冷式冷却容器に連結され、前記液冷式冷却容器から冷却液を排出する冷却液排出パイプと、
前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが当接して構成される積層体に対して、当該積層体の前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが向かい合っている面と反対側の面にそれぞれ配置される一対の挟持部および当該一対の挟持部をつなぐ連結部を有するばね部材と、
を備え、
前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが少なくとも1つの前記ばね部材により圧接されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記積層体は、前記液冷式冷却容器を挟んで一対の前記スイッチング用電子部品を配してなり、前記スイッチング用電子部品と前記液冷式冷却容器とが少なくとも1つの前記ばね部材で圧接されることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記ばね部材は、ばね鋼板を屈曲形成または引き抜き加工してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−244821(P2012−244821A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113984(P2011−113984)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】