説明

電力変換装置

【課題】リセット信号の生成に関連する手段が故障したり誤動作したりしてもスイッチング素子の過熱による故障を抑えられ、入力電圧が急激に上昇しても出力電圧の上昇を抑えられる電力変換装置を提供する。
【解決手段】リセット信号の生成に関連する、マイクロコンピュータ170内のブロック等が故障したり誤動作したりしても、制限信号生成部170lと信号選択回路173が駆動信号のパルス幅を制限する。そのため、IGBT10をオフできる。従って、過電流に伴って発生するIGBT10の過熱による故障を抑えられる。また、制限信号生成部170lと信号選択回路173は駆動信号のパルス幅を入力電圧に基づいて制限する。そのため、入力電圧が上昇しても、マイクロコンピュータ170内のブロック等やコンパレータ171の応答遅れの影響を受けることなく駆動信号を即座に調整できる。従って、入力電圧が急激に上昇しても出力電圧の上昇を抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力電圧に基づいて電流指令を決定するとともに、電流指令と入力電流に基づいてスイッチング素子を駆動するための駆動信号を生成する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出力電圧に基づいて電流指令を決定するとともに、電流指令と入力電流に基づいてスイッチング素子を駆動するための駆動信号を生成する電力変換装置として、例えば特許文献1に開示されているスイッチングレギュレータがある。
【0003】
このスイッチングレギュレータは、発振器と、エラーアンプと、コンパレータと、RSフリップフロップと、スイッチとを備えている。発振器は、所定周期毎にセット信号を出力する。エラーアンプは、出力電圧指令に相当する基準電圧と出力電圧に基づいて電流指令を生成し出力する。具体的には、基準電圧と出力電圧の偏差を電流指令として出力する。コンパレータは、エラーアンプの出力する電流指令と入力電流に基づいてリセット信号を生成し出力する。具体的には、入力電流が電流指令によって指示された電流に達するとリセット信号を出力する。RSフリップフロップは、セット信号に同期してオンし、スイッチをオンするとともに、その後入力されるリセット信号に同期してオフし、スイッチをオフする駆動信号を生成し出力する。スイッチは、駆動信号に基づいてスイッチングする。これにより、入力電圧が出力電圧指令によって指示された電圧に変換され出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−033958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したスイッチングレギュレータにおいて、エラーアンプやコンパレータが故障したり誤動作したりすると、リセット信号が正しく出力されなくなる。出力されるべきタイミングでリセット信号が出力されなかった場合、オフすべきタイミングでスイッチをオフできず、オン状態が継続してしまう。この場合、過電流によってスイッチが過熱し故障してしまうという問題があった。
【0006】
また、前述したスイッチングレギュレータにおいて、入力電圧が上昇すると、それに伴って出力電圧も上昇する。出力電圧が上昇すると、エラーアンプ、コンパレータ及びRSフリップフロップによって、出力電圧の上昇を抑えるように駆動信号が調整される。そのため、入力電圧が上昇しても、出力電圧の上昇を抑えることができる。しかし、エラーアンプ、コンパレータ及びRSフリップフロップには、それぞれ応答遅れがある。駆動信号を生成するまでに、これらの応答遅れが積算される。しかも、駆動信号を生成するに際して入力電圧を考慮していない。そのため、入力電圧が急激に上昇した場合、駆動信号を即座に調整することができない。この場合、出力電圧が上昇してしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、リセット信号の生成に関連する手段が故障したり誤動作したりしてもスイッチング素子の過熱による故障を抑えることができ、入力電圧が急激に上昇しても出力電圧の上昇を抑えることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、この課題を解決すべく、入力電圧と出力電圧、又は、入力電圧と出力電圧指令に基づいて駆動信号のパルス幅を制限するパルス幅制限手段を設けることで、リセット信号の生成に関連する手段が故障したり誤動作したりしてもスイッチング素子の過熱による故障を抑えることができ、入力電圧が急激に上昇しても出力電圧の上昇を抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の電力変換装置は、所定周期毎にセット信号を生成し出力するセット信号生成手段と、出力電圧指令と出力電圧に基づいて電流指令を生成し出力する電流指令生成手段と、電流指令と入力電流に基づいてリセット信号を生成し出力するリセット信号生成手段と、セット信号に同期してオンし、スイッチング素子をオンするとともに、その後に入力されるリセット信号に同期してオフし、スイッチング素子をオフする駆動信号を生成し出力する駆動信号生成手段と、を備えた電力変換装置において、入力電圧と出力電圧、又は、入力電圧と出力電圧指令に基づいて駆動信号のパルス幅を制限するパルス幅制限手段を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、リセット信号の生成に関連する電流指令生成手段やリセット信号生成手段が故障したり誤動作したりしても、パルス幅制限手段が、駆動信号のパルス幅を制限する。そのため、スイッチング素子をオフすることができる。従って、過電流に伴って発生するスイッチング素子の過熱による故障を抑えることができる。また、パルス幅制限手段は、電流指令生成手段及びリセット信号生成手段を介して生成された駆動信号のパルス幅を、入力電圧に基づいて制限する。そのため、入力電圧が上昇しても、電流指令生成手段やリセット信号生成手段の応答遅れの影響を受けることなく、駆動信号を即座に調整することができる。従って、入力電圧が急激に上昇しても、出力電圧の上昇を抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の電力変換装置は、パルス幅制限手段は、入力電圧と出力電圧、又は、入力電圧と出力電圧指令に基づいてパルス幅の制限値を決定し、セット信号に同期してオンし、パルス幅が制限値となる制限信号を生成し出力する制限信号生成手段と、駆動信号と制限信号のうちパルス幅の小さい信号を、スイッチング素子を駆動するための新たな駆動信号として出力する信号選択手段と、を有することを特徴とする。この構成によれば、入力電圧と出力電圧、又は、入力電圧と出力電圧指令に基づいて駆動信号のパルス幅を確実に制限することができる。
【0012】
請求項3に記載の電力変換装置は、信号選択手段は、パルス幅が所定値以下の駆動信号を除いて、駆動信号と制限信号のうちパルス幅の小さい信号を、スイッチング素子を駆動するための新たな駆動信号として出力することを特徴とする。ところで、スイッチング素子がオンすると、その直後にスイッチングノイズが発生する。リセット信号にこのスイッチングノイズが重畳されると、駆動信号生成手段は、スイッチングノイズをリセット信号と見なし、スイッチングノイズに同期して駆動信号をオフする。そのため、駆動信号のパルス幅が本来より小さくなってしまう。しかし、この構成によれば、信号選択手段は、スイッチングノイズの影響を受けたパルス幅が所定値以下の駆動信号を除いて、駆動信号と制限信号のうちパルス幅の小さい信号を新たな駆動信号として出力する。そのため、スイッチングノイズの影響を受けることなく、新たな駆動信号を出力することができる。
【0013】
請求項4に記載の電力変換装置は、パルス幅制限手段は、入力電圧と出力電圧、又は、入力電圧と出力電圧指令に基づいてパルス幅の制限値を決定し、セット信号を基準として制限値経過時に制限信号を生成し出力する制限信号生成手段と、リセット信号と制限信号を合成し、駆動信号を生成するための新たなリセット信号として出力する信号合成手段と、を有することを特徴とする。この構成によれば、入力電圧と出力電圧、又は、入力電圧と出力電圧指令に基づいて駆動信号のパルス幅を確実に制限することができる。
【0014】
請求項5に記載の電力変換装置は、信号合成手段は、セット信号を基準として所定時間内に出力されたリセット信号を除いて、リセット信号と制限信号を合成し、駆動信号を生成するための新たなリセット信号として出力することを特徴とする。ところで、スイッチング素子がオンすると、その直後にスイッチングノイズが発生する。従来のように、リセット信号に同期して駆動信号をオフした場合、リセット信号にこのスイッチングノイズが重畳されると、駆動信号のパルス幅が本来より小さくなってしまう。しかし、この構成によれば、信号合成手段は、スイッチングノイズによる、セット信号を基準として所定時間内に出力されたリセット信号を除いて、リセット信号と制限信号を合成し、新たなリセット信号として出力する。そのため、スイッチングノイズの影響を受けることなく、新たなリセット信号を出力することができる。従って、スイッチングノイズの影響を受けることなく、駆動信号を出力することができる。
【0015】
請求項6に記載の電力変換装置は、車両に搭載されることを特徴とする。この構成によれば、車両に搭載された電力変換装置において、リセット信号の生成に関連する電流指令生成手段やリセット信号生成手段が故障したり誤動作したりしても、スイッチング素子の過熱による故障を抑えることができ、入力電圧が急激に上昇しても出力電圧の上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。
【図2】図1における制御回路の回路図である。
【図3】第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】コンパレータの出力にスイッチングノイズが重畳された場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】故障や誤動作によりリセット信号の出力タイミングが遅れた場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】故障や誤動作によりリセット信号が出力されなかった場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】入力電圧が急激に上昇した場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】第2実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の制御回路の回路図である。
【図9】第2実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】コンパレータの出力にスイッチングノイズが重畳された場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】故障や誤動作によりリセット信号の出力タイミングが遅れた場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図12】故障や誤動作によりリセット信号が出力されなかった場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図13】入力電圧が急激に上昇した場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、車両に搭載され、高電圧バッテリの電圧を降圧し低電圧バッテリを充電するDC−DCコンバータ装置に適用した例を示す。
(第1実施形態)
次に、第1実施形態のDC−DCコンバータ装置について説明する。まず、図1及び図2を参照して第1実施形態のDC−DCコンバータ装置の構成について説明する。ここで、図1は、第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。図2は、図1における制御回路の回路図である。
【0018】
図1に示すDC−DCコンバータ装置1(電力変換装置)は、高電圧バッテリB10の出力する直流高電圧を降圧して低電圧バッテリB11を充電する装置である。DC−DCコンバータ装置1は、IGBT10(スイッチング素子)と、コイル11と、コンデンサ12と、ダイオード13と、入力電圧検出回路14と、入力電流検出回路15と、出力電圧検出回路16と、制御回路17とを備えている。
【0019】
IGBT10は、オン、オフすることでコイル11にエネルギーを蓄積、放出させるための素子である。IGBT10のコレクタは、高電圧バッテリB10の正極端子に接続されている。また、エミッタは、コイル11に接続されている。さらに、ゲートは、制御回路17に接続されている。
【0020】
コイル11は、電流が流れることでエネルギーを蓄積、放出するとともに電圧を誘起する素子である。コイル11の一端は、IGBT10のエミッタに接続されている。また、他端は、コンデンサ12に接続されている。
【0021】
コンデンサ12は、コイル11の他端の電圧を平滑化する素子である。コンデンサ12の正極端子は、コイル11の他端に接続されている。負極端子は、高電圧バッテリB10の負極端子に接続されている。また、正極端子及び負極端子は、低電圧バッテリB11の正極端子及び負極端子にそれぞれ接続されている。
【0022】
ダイオード13は、IGBT10がオフし、コイル11に蓄積されたエネルギーが放出されるときに発生するフライホイール電流を流すための素子である。ダイオード13のアノードは、コンデンサ12の負極端子に接続されている。また、カソードは、IGBT10とコイル11の接続点、具体的には、IGBT10のエミッタとコイル11の一端に接続されている。
【0023】
入力電圧検出回路14は、DC−DCコンバータ装置1の入力電圧を検出する回路である。入力電圧検出回路14は、DC−DCコンバータ装置1の入力電圧を制御回路17の入力可能な電圧に変換して出力する。入力電圧検出回路14の一方の入力端子は、IGBT10のコレクタに接続されている。また、他方の入力端子は、コンデンサ12の負極端子とダイオード13のアノードに接続されている。さらに、出力端子は、制御回路17に接続されている。
【0024】
入力電流検出回路15は、DC−DCコンバータ装置1の入力電流を検出する回路である。入力電流検出回路15は、DC−DCコンバータ装置1の入力電流を制御回路17の入力可能な電圧に変換して出力する。ここで、DC−DCコンバータ装置1の入力電流は、IGBT10がオンしたときにIGBT10やコイル11に流れる電流である。入力電流検出回路15は、クランプ式の電流センサからなり、コンデンサ12の負極端子とダイオード13のアノードを高電圧バッテリB10に接続する配線に設けられている。入力電流検出回路15の出力端子は、制御回路17に接続されている。
【0025】
出力電圧検出回路16は、DC−DCコンバータ装置1の出力電圧を検出する回路である。出力電圧検出回路16は、DC−DCコンバータ装置1の出力電圧を制御回路17の入力可能な電圧に変換して出力する。出力電圧検出回路16の一方の入力端子は、コンデンサ12の正極端子に接続されている。また、他方の入力端子は、コンデンサ12の負極端子にそれぞれ接続されている。さらに、出力端子は、制御回路17に接続されている。
【0026】
制御回路17は、DC−DCコンバータ装置1の入力電圧、入力電流及び出力電圧に基づいて、降圧動作をするようにIGBT10の駆動を制御する回路である。図2に示すように、制御回路17は、マイクロコンピュータ170と、コンパレータ171(リセット信号生成手段)と、RSフリップフロップ172(駆動信号生成手段)と、信号選択回路173(パルス幅制限手段、信号選択手段)とを備えている。
【0027】
マイクロコンピュータ170は、DC−DCコンバータ装置1の入力電圧、入力電流及び出力電圧に基づいて、IGBT10を駆動するための信号の生成に必要とされる各種信号等を生成し出力する素子である。マイクロコンピュータ170は、発振器170aと、出力電圧指令部170bと、A/Dコンバータ170cと、偏差部170d(電流指令生成手段)と、PID補償部170e(電流指令生成手段)と、D/Aコンバータ170f(電流指令生成手段)と、スロープ補償部170gと、A/Dコンバータ170hと、加算部170iと、D/Aコンバータ170jと、A/Dコンバータ170kと、制限信号生成部170l(パルス幅制限手段、制限信号生成手段)とを備えている。ここで、発振器170a、A/Dコンバータ170c、170h、170k及びD/Aコンバータ170f、170jは、回路として構成されている。これに対し、出力電圧指令部170b、偏差部170d、PID補償部170e、スロープ補償部170g、加算部170i及び制限信号生成部170lは、プログラムによって構成されている。
【0028】
発振器170aは、周期T0毎(所定周期毎)にハイレベルになるパルス状のセット信号を出力する。発振器170aの出力端子は、RSフリップフロップに接続されている。
【0029】
出力電圧指令部170bは、出力電圧指令をデジタル値として出力するブロックである。具体的には、低電圧バッテリB11を充電するために最適な電圧を出力電圧指令として出力する。出力電圧指令部170bは、偏差部170dに接続されている。
【0030】
A/Dコンバータ170cは、出力電圧検出回路16の出力する電圧をデジタル値に変換する回路である。A/Dコンバータ170cの入力端子は、出力電圧検出回路16の出力端子に接続されている。また、出力端子は、偏差部170dと制限信号生成部170lにそれぞれ接続されている。
【0031】
偏差部170dは、出力電圧指令部170bの出力とA/Dコンバータ170cの出力の偏差をデジタル値として出力するブロックである。偏差部170dは、出力電圧指令部170bとA/Dコンバータ170cにそれぞれ接続されている。また、PID補償部170eに接続されている。
【0032】
PID補償部170eは、偏差部170eの出力を比例、積分、微分演算し、デジタル値として出力するブロックである。PID補償部170eは、偏差部170dに接続されている。また、D/Aコンバータ170fに接続されている。
【0033】
D/Aコンバータ170fは、PID補償部170eの出力をアナログ値である電圧に変換し、電流指令として出力する回路である。D/Aコンバータ170fは、PID補償部170eに接続されている。また、コンパレータ171に接続されている。
【0034】
A/Dコンバータ170hは、入力電流検出回路15の出力する電圧をデジタル値に変換する回路である。A/Dコンバータ170hの入力端子は、入力電流検出回路15の出力端子に接続されている。また、出力端子は、加算部170iに接続されている。
【0035】
スロープ補償部170gは、サブハーモニック発振を防止するためのスロープ補償値をデジタル値として出力するブロックである。スロープ補償部170gは、加算部170iに接続されている。
【0036】
加算部170iは、スロープ補償部170gの出力とA/Dコンバータ170hの出力を加算し、デジタル値として出力するブロックである。加算部170iは、スロープ補償部170gとA/Dコンバータ170hにそれぞれ接続されている。また、D/Aコンバータ170jに接続されている。
【0037】
D/Aコンバータ170jは、加算部170iの出力をアナログ値である電圧に変換し、入力電流として出力する回路である。D/Aコンバータ170jの入力端子は、加算部170iに接続されている。また、出力端子は、コンパレータ171に接続されている。
【0038】
A/Dコンバータ170kは、入力電圧検出回路14の出力する電圧をデジタル値に変換する回路である。A/Dコンバータ170kの入力端子は、入力電圧検出回路14の出力端子に接続されている。また、出力端子は、制限信号生成部170lに接続されている。
【0039】
制限信号生成部170lは、A/Dコンバータ170c、170kの出力に基づいて、IGBT10をオンするパルス信号のパルス幅の制限値を決定し、セット信号に同期してオンし、パルス幅が制限値となる制限信号を生成し出力するブロックである。具体的には、A/Dコンバータ170c、170kの出力と、予め設定されている、DC−DCコンバータ装置1の入出力電圧とIGBT10をオンするパルス信号として許容可能な最大パルス幅の関係をDC−DCコンバータ装置1の出力電圧毎に規定したマップに基づいてパルス幅の制限値を決定する。そして、セット信号に同期してオンし、パルス幅が制限値となる制限信号を生成し出力する。制限信号生成部170lは、発振器170aとA/Dコンバータ170c、170kにそれぞれ接続されている。また、信号選択回路173に接続されている。
【0040】
コンパレータ171は、D/Aコンバータ170fの出力とD/Aコンバータ170jの出力に基づいてリセット信号を出力する素子である。具体的には、D/Aコンバータ170jの出力がD/Aコンバータ170fの出力を達するとハイレベルになるパルス状のリセット信号を出力する。コンパレータ171の反転入力端子は、D/Aコンバータ170fの出力端子に接続されている。また、非反転入力端子は、D/Aコンバータ170jの出力端子に接続されている。さらに、出力端子は、RSフリップフロップ172に接続されている。
【0041】
RSフリップフロップ172は、セット信号に同期してオンし、IGBT10をオンするととともに、その後にコンパレータ171から入力されるリセット信号に同期してオフし、IGBT10をオフする駆動信号を生成し出力する素子である。具体的には、セット信号の立ち上りに同期してオンするとともに、リセット信号の立ち上りに同期してオフする駆動信号を生成し出力する。RSフリップフロップ172のセット信号入力端子は、発振器170aの出力端子に接続されている。また、リセット信号入力端子は、コンパレータ171の出力端子に接続されている。さらに、出力端子は、信号選択回路173に接続されている。
【0042】
信号選択回路173は、パルス幅がW0以下(所定値以下)の駆動信号を除いて、駆動信号と制限信号のうちパルス幅の小さい信号を、IGBT10を駆動するための新たな駆動信号として出力する回路である。ここで、W0は、IGBT10がオンしてから、IGBT10のオンに伴って発生するスイッチングノイズの影響が収まるまでの時間である。信号選択回路173の一方の入力端子は、RSフリップフロップ172の出力端子に接続されている。また、他方の入力端子は、制限信号生成部170lに接続されている。さらに、出力端子は、IGBT10のゲートに接続されている。
【0043】
次に、図1〜図7を参照してDC−DCコンバータ装置の動作について説明する。ここで、図3は、第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図4は、コンパレータの出力にスイッチングノイズが重畳された場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図5は、故障や誤動作によりリセット信号の出力タイミングが遅れた場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図6は、故障や誤動作によりリセット信号が出力されなかった場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図7は、入力電圧が急激に上昇した場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0044】
図2に示す発振器170aは、図3に示すように、周期T0毎にハイレベルになるパルス状のセット信号を出力する。
【0045】
図2に示す出力電圧指令部170bは、出力電圧指令をデジタル値として出力する。A/Dコンバータ170cは、出力電圧検出回路15の出力する、DC−DCコンバータ装置1の出力電圧に相当する電圧をデジタル値に変換する。偏差部170dは、出力電圧指令部170bの出力とA/Dコンバータ170cの出力の偏差をデジタル値として出力する。そして、PID補償部170eは、偏差部170dの出力を比例、積分、微分演算し、デジタル値として出力する。その後、D/Aコンバータ170fは、PID補償部170eの出力をアナログ値である電圧に変換し、電流指令として出力する。つまり、出力電圧指令と出力電圧に基づいて電流指令を生成し、電流指令に相当する電圧として出力する。
【0046】
A/Dコンバータ170hは、入力電流検出回路15の出力する、DC−DCコンバータ装置1の入力電流に相当する電圧をデジタル値に変換する。スロープ補償部170gは、サブハーモニック発振を防止するためのスロープ補償値をデジタル値として出力する。そして、加算部170iは、スロープ補償部170gの出力とA/Dコンバータ170hの出力を加算し、デジタル値として出力する。その後、D/Aコンバータ170jは、加算部170iの出力をアナログ値である電圧に変換し、DC−DCコンバータ装置1の入力電流に相当する電圧として出力する。つまり、スロープ補償した入力電流を、DC−DCコンバータ装置1の入力電流に相当する電圧として出力する。
【0047】
コンパレータ171は、図3に示すように、D/Aコンバータ170jの出力する電流指令に相当する電圧が、D/Aコンバータ170fの出力する入力電流に相当する電圧を達するとハイレベルになるパルス状のリセット信号を出力する。
【0048】
図2に示すRSフリップフロップ172は、図3に示すように、セット信号の立ち上りに同期してオンし、IGBT10をオンするととともに、その後にコンパレータ171から入力されるリセット信号の立ち上りに同期してオフし、IGBT10をオフする駆動信号を生成し出力する。
【0049】
図2に示すA/Dコンバータ170kは、入力電圧検出回路14の出力する、DC−DCコンバータ装置1の入力電圧に相当する電圧をデジタル値に変換する。制限信号生成部170lは、A/Dコンバータ170cの出力する、DC−DCコンバータ装置1の出力電圧に相当する電圧と、A/Dコンバータ170kの出力する、DC−DCコンバータ装置1の入力電圧に相当する電圧と、予め設定されている、DC−DCコンバータ装置1の入力電圧とIGBT10をオンするパルス信号として許容可能な最大パルス幅の関係をDC−DCコンバータ装置1の出力電圧毎に規定したマップに基づいてパルス幅の制限値を決定する。そして、図3に示すように、セット信号に同期してオンし、パルス幅が制限値となる制限信号を生成し出力する。
【0050】
図2に示す信号選択回路173は、図3に示すように、駆動信号と制限信号のうちパルス幅の小さい信号を、IGBT10を駆動するための新たな駆動信号として出力する。リセット信号の生成に関連するブロックや回路が正常に動作している場合、駆動信号のパルス幅が、制限信号のパルス幅より大きくなることはない。そのため、駆動信号がIGBT10を駆動するための新たな駆動信号として出力される。
【0051】
図1に示すIGBT10は、信号選択回路173の出力する新たな駆動信号に基づいてオン、オフする。IGBT10がオンすると、高電圧バッテリB10からコイル11にエネルギーが蓄積される。その後、IGBT10がオフすると、コイル11に蓄積されたエネルギーが放出される。このとき、コイル11は、IGBT10に接続される一端に対して、コンデンサ12に接続される他端が高電位となる。つまり、コイル11の他端が、高電圧バッテリB10の電圧より低くなる。IGBT10がオフ状態であるため、コイル11に蓄積されたエネルギーの放出に伴う電流は、ダイオード13を介して低電圧バッテリB11に流れ、低電圧バッテリB11が充電される。以降、同様の動作が繰り返され、低電圧バッテリB11の電圧が出力電圧指令によって指示される電圧に保持される。
【0052】
ところで、図1に示すIGBT10がオンすると、その直後にスイッチングノイズが発生する。図4に示すように、リセット信号にこのスイッチングノイズが重畳されると、図2に示すRSフリップフロップ172は、スイッチングノイズをリセット信号と見なし、スイッチングノイズに同期して駆動信号をオフする。そのため、駆動信号のパルス幅が本来より小さくなってしまう。しかし、図2に示す信号選択回路173は、スイッチングノイズの影響を受けたパルス幅がW0以下の駆動信号を除いて、駆動信号と制限信号のうちパルス幅の小さい信号を、IGBT10を駆動するための新たな駆動信号として出力する。図4に示すように、スイッチングノイズによって駆動信号のパルス幅がW0より小さくなると、図2に示す信号選択回路173は、制限信号を新たな駆動信号として出力する。従って、IGBT10のスイッチングノイズの影響を受けることなく、新たな駆動信号を出力することができる。
【0053】
また、図5に示すように、リセット信号の生成に関連するブロックや回路の故障や誤動作により、本来時刻t3で出力されるべきリセット信号の出力タイミングが遅れ、時刻t4で出力された場合、駆動信号のパルス幅が制限信号のパルス幅より大きくなる。従来のように、駆動信号に従ってIGBT10をオン、オフしていた場合、破線で示すように、入力電流が大きくなってしまう。しかし、この場合、図2に示す信号選択回路173は、図5に示すように、駆動信号に比べパルス幅の小さい制限信号を新たな駆動信号して出力する。そのため、実線で示すように、入力電流を抑えることができる。
【0054】
また、図6に示すように、リセット信号の生成に関連するブロックや回路の故障や誤動作により、本来時刻t5で出力されるべきリセット信号が出力されなかった場合、駆動信号は次のリセット信号が出力される時刻t6までオン状態を継続する。従来のように、駆動信号に従ってIGBT10をオン、オフしていた場合、破線で示すように、入力電流が非常に大きくなってしまう。しかし、この場合、図2に示す信号選択回路173は、図6に示すように、駆動信号に比べパルス幅の小さい制限信号を新たな駆動信号として出力する。そのため、実線で示すように、入力電流を抑えることができる。
【0055】
また、図7に示すように、時刻t7〜t8の期間において、入力電圧が急激に上昇すると、リセット信号の生成に関連するブロックや回路の応答遅れにより、駆動信号のパルス幅がすぐに小さくはならないことがある。そのため、従来のように、駆動信号に従ってIGBT10をオン、オフしていた場合、破線で示すように、出力電圧が上昇してしまう。しかし、図2に示す制限信号生成部170lは、入力電圧が上昇すると、マップに基づいてパルス幅の制限値を即座に小さくする。そして、パルス幅が制限値となる制限信号を生成し出力する。つまり、図7に示すように、入力電圧の上昇に伴って制限信号のパルス幅を即座に小さくする。図2に示す信号選択回路173は、図7に示すように、応答遅れによりパルス幅が小さくなっていない駆動信号に比べ、パルス幅が小さくなった制限信号を新たな駆動信号として出力する。そのため、実線で示すように、出力電圧の上昇を抑えることができる。
【0056】
次に、効果について説明する。第1実施形態によれば、リセット信号の生成に関連する、マイクロコンピュータ170内のブロックや回路が故障したり誤動作したりしても、制限信号生成部170lと信号選択回路173が、駆動信号のパルス幅を制限する。そのため、IGBT10をオフすることができる。従って、車両に搭載されたDC−DCコンバータ装置1において、過電流に伴って発生するIGBT10の過熱による故障を抑えることができる。また、制限信号生成部170lと信号選択回路173は、電流指令を生成するマイクロコンピュータ170内のブロックや回路、及び、リセット信号を出力するコンパレータ171を介して生成された駆動信号のパルス幅を、入力電圧に基づいて制限する。そのため、入力電圧が上昇しても、マイクロコンピュータ170内のブロックや回路、及び、コンパレータ171の応答遅れの影響を受けることなく、駆動信号を即座に調整することができる。従って、車両に搭載されたDC−DCコンバータ装置1において、入力電圧が急激に上昇しても、出力電圧の上昇を抑えることができる。
【0057】
また、第1実施形態によれば、制限信号生成部170lは、入力電圧と出力電圧に基づいてIGBT10をオンするパルス信号のパルス幅の制限値を決定する。そして、セット信号に同期してオンし、パルス幅が制限値となる制限信号を生成し出力する。信号選択回路173は、駆動信号と制限信号のうちパルス幅の小さい信号を、IGBT10を駆動するための新たな駆動信号として出力する。そのため、入力電圧と出力電圧に基づいて駆動信号のパルス幅を確実に制限することができる。
【0058】
ところで、IGBT10がオンすると、その直後にスイッチングノイズが発生する。リセット信号にこのスイッチングノイズが重畳されると、RSフリップフロップ172は、スイッチングノイズをリセット信号と見なし、スイッチングノイズに同期して駆動信号をオフする。そのため、駆動信号のパルス幅が本来より小さくなってしまう。しかし、第1実施形態によれば、信号選択回路173は、スイッチングノイズの影響を受けたパルス幅がW0以下の駆動信号を除いて、駆動信号と制限信号のうちパルス幅の小さい信号を新たな駆動信号として出力する。そのため、スイッチングノイズの影響を受けることなく、新たな駆動信号を出力することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のDC−DCコンバータ装置について説明する。第2実施形態のDC−DCコンバータ装置は、第1実施形態のDC−DCコンバータ装置が、パルス幅が制限値となる制限信号と駆動信号から新たな駆動信号を生成していたのに対して、パルス幅の制限値経過時に出力される制限信号とリセット信号から新たなリセット信号を生成し、新たなリセット信号に基づいて駆動信号を生成するようにしたものである。第2実施形態のDC−DCコンバータ装置は、制御回路を除いて第1実施形態のDC−DCコンバータ装置と同一構成である。
【0060】
まず、図8を参照して制御回路の構成について説明する。ここで、図8は、第2実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の制御回路の回路図である。
【0061】
図8に示すように、制御回路27は、マイクロコンピュータ270と、コンパレータ271(リセット信号生成手段)と、信号合成回路272(パルス幅制限手段、信号合成手段)と、RSフリップフロップ273(駆動信号生成手段)とを備えている。
【0062】
マイクロコンピュータ270は、発振器270aと、出力電圧指令部270bと、A/Dコンバータ270cと、偏差部270d(電流指令生成手段)と、PID補償部270e(電流指令生成手段)と、D/Aコンバータ270f(電流指令生成手段)と、スロープ補償部270gと、A/Dコンバータ270hと、加算部270iと、D/Aコンバータ270jと、A/Dコンバータ270kと、制限信号生成部270l(パルス幅制限手段、制限信号生成手段)とを備えている。ここで、発振器270a、A/Dコンバータ270c、270h、270k及びD/Aコンバータ270f、270jは、回路として構成されている。これに対し、出力電圧指令部270b、偏差部270d、PID補償部270e、スロープ補償部270g、加算部270i及び制限信号生成部270lは、プログラムによって構成されている。発振器270a、出力電圧指令部270b、A/Dコンバータ270c、偏差部270d、PID補償部270e、D/Aコンバータ270f、スロープ補償部270g、A/Dコンバータ270h、加算部270i、D/Aコンバータ270j及びA/Dコンバータ270kは、第1実施形態の発振器170a、出力電圧指令部170b、A/Dコンバータ170c、偏差部170d、PID補償部170e、D/Aコンバータ170f、スロープ補償部170g、A/Dコンバータ170h、加算部170i、D/Aコンバータ170j及びA/Dコンバータ170kと同一構成である。
【0063】
制限信号生成部270lは、A/Dコンバータ270c、270kの出力に基づいて、IGBTをオンするパルス信号のパルス幅の制限値を決定し、セット信号を基準として制限値経過時に制限信号を生成し出力するブロックである。具体的には、A/Dコンバータ270c、270kの出力と、予め設定されている、DC−DCコンバータ装置の入出力電圧とIGBTをオンするパルス信号として許容可能な最大パルス幅の関係をDC−DCコンバータ装置の出力電圧毎に規定したマップに基づいてパルス幅の制限値を決定する。そして、セット信号を基準として制限値経過時にパルス状の制限信号を生成し出力する。制限信号生成部270lは、発振器270aとA/Dコンバータ270c、270kにそれぞれ接続されている。また、信号選択回路273に接続されている。
【0064】
コンパレータ271は、第1実施形態のコンパレータ171と同一構成である。
【0065】
信号合成回路272は、セット信号を基準として時間T1内(所定時間内)に出力されたリセット信号を除いて、リセット信号と制限信号を合成し、駆動信号を生成するための新たなリセット信号として出力する回路である。ここで、時間T1は、IGBTがオンしてから、IGBTのオンに伴って発生するスイッチングノイズの影響が収まるまでの時間である。信号合成回路272の一方の入力端子は、コンパレータ271の出力端子に接続されている。また、他方の入力端子は、制限信号生成部270lに接続されている。さらに、出力端子は、RSフリップフロップ273に接続されている。
【0066】
RSフリップフロップ273は、セット信号に同期してオンし、IGBTをオンするととともに、その後に信号合成回路272から入力される新たなリセット信号に同期してオフし、IGBTをオフする駆動信号を生成し出力する素子である。具体的には、セット信号の立ち上りに同期してオンするとともに、新たなリセット信号の立ち上りに同期してオフする駆動信号を生成し出力する。RSフリップフロップ273のセット信号入力端子は、発振器270aの出力端子に接続されている。また、リセット信号入力端子は、信号合成回路272の出力端子に接続されている。さらに、出力端子は、IGBTのゲートに接続されている。
【0067】
次に、図8〜図13を参照してDC−DCコンバータ装置の動作について説明する。
ここで、図9は、第2実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図10は、コンパレータの出力にスイッチングノイズが重畳された場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図11は、故障や誤動作によりリセット信号の出力タイミングが遅れた場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図12は、故障や誤動作によりリセット信号が出力されなかった場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図13は、入力電圧が急激に上昇した場合におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0068】
図8に示す発振器270aは、第1実施形態の発振器170aと同様に動作する。そして、図9に示すように、周期T0毎にハイレベルになるパルス状のセット信号を出力する。
【0069】
図8に示す出力電圧指令部270b、A/Dコンバータ270c、偏差部270d、PID補償部270e及びD/Aコンバータ270fは、第1実施形態の出力電圧指令部170b、A/Dコンバータ170c、偏差部170d、PID補償部170e及びD/Aコンバータ170fと同様に動作する。そして、電流指令に相当する電圧として出力する。
【0070】
スロープ補償部270g、A/Dコンバータ270h、加算部270i及びD/Aコンバータ270jは、第1実施形態のスロープ補償部170g、A/Dコンバータ170h、加算部170i及びD/Aコンバータ170jと同様に動作する。そして、スロープ補償した入力電流をDC−DCコンバータ装置の入力電流に相当する電圧として出力する。
【0071】
コンパレータ271は、第1実施形態のコンパレータ171と同様に動作する。そして、図9に示すように、D/Aコンバータ270jの出力する電流指令に相当する電圧が、D/Aコンバータ270fの出力する入力電流に相当する電圧を達するとハイレベルになるパルス状のリセット信号を出力する。
【0072】
図8に示すA/Dコンバータ270kは、第1実施形態のA/Dコンバータ170kと同様に動作する。そして、入力電圧検出回路の出力する、DC−DCコンバータ装置の入力電圧に相当する電圧をデジタル値に変換する。制限信号生成部270lは、A/Dコンバータ270cの出力する、DC−DCコンバータ装置の出力電圧に相当する電圧と、A/Dコンバータ270kの出力する、DC−DCコンバータ装置の入力電圧に相当する電圧と、予め設定されている、DC−DCコンバータ装置の入力電圧とIGBT10をオンするパルス信号として許容可能な最大パルス幅の関係をDC−DCコンバータ装置の出力電圧毎に規定したマップに基づいてパルス幅の制限値を決定する。そして、図9に示すように、セット信号を基準として制限値経過時にパルス状の制限信号を生成し出力する。
【0073】
図8に示す信号合成回路272は、図9に示すように、駆動信号と制限信号を合成し、駆動信号を生成するための新たなリセット信号として出力する。
【0074】
図8に示すRSフリップフロップ273は、図9に示すように、セット信号の立ち上りに同期してオンし、IGBTをオンするととともに、その後に信号合成回路272から入力される新たなリセット信号の立ち上りに同期してオフし、IGBTをオフする駆動信号を生成し出力する。リセット信号の生成に関連するブロックや回路が正常に動作している場合、リセット信号の出力タイミングが、制限信号の出力タイミングより遅くなることはない。そのため、セット信号の立ち上りに同期してオンするとともに、リセット信号の立ち上りに同期してオフする駆動信号が出力される。
【0075】
IGBTは、RSフリップフロップ273の出力する駆動信号に基づいてオン、オフする。そして、第1実施形態の場合の同様に、高電圧バッテリB10の出力する直流高電圧が降圧され、低電圧バッテリB11が充電される。以降、同様の動作が繰り返され、低電圧バッテリの電圧が出力電圧指令によって指示される電圧に保持される。
【0076】
ところで、IGBTがオンすると、その直後にスイッチングノイズが発生する。従来のように、リセット信号に同期して駆動信号をオフしていた場合、リセット信号にこのスイッチングノイズが重畳されると、駆動信号のパルス幅が本来より小さくなってしまう。しかし、図8に示す信号合成回路272は、図10に示すように、スイッチングノイズである、セット信号を基準として時間T1内に出力されたリセット信号を除いて、リセット信号と制限信号を合成し、駆動信号を生成するための新たなリセット信号として出力する。そのため、IGBTのスイッチングノイズの影響を受けることなく、新たなリセット信号を出力することができる。従って、IGBTのスイッチングノイズの影響を受けることなく、駆動信号を出力することができる。
【0077】
また、図11に示すように、リセット信号の生成に関連するブロックや回路の故障や誤動作により、本来時刻t11で出力されるべきリセット信号の出力タイミングが遅れ、時刻t12で出力された場合、リセット信号の出力タイミングが制限信号の出力タイミングより遅くなる。従来のように、セット信号及びリセット信号に同期して生成した駆動信号に従ってIGBTをオン、オフしていた場合、破線で示すように、駆動信号のパルス幅が大きくなり、入力電流が大きくなってしまう。しかし、この場合、図8に示すRSフリップフロップ273は、図11に示すように、リセット信号に比べ出力タイミングの早い制限信号に同期して駆動信号をオフすることになる。そのため、実線で示すように、駆動信号のパルス幅を抑え、入力電流を抑えることができる。
【0078】
また、図12に示すように、リセット信号の生成に関連するブロックや回路の故障や誤動作により、本来時刻t13で出力されるべきリセット信号が出力されなかった場合、次の周期における時刻t14までリセット信号が出力されることはない。従来のように、セット信号及びリセット信号に同期して生成した駆動信号に従ってIGBTをオン、オフしていた場合、破線で示すように、駆動信号のパルス幅が非常に大きくなり、入力電流が非常に大きくなってしまう。しかし、この場合、図8に示すRSフリップフロップ273は、図12に示すように、時刻t13でリセット信号が出力されないので、制限信号に同期して駆動信号をオフすることになる。そのため、実線で示すように、駆動信号のパルス幅を抑え、入力電流を抑えることができる。
【0079】
また、図13に示すように、時刻t15〜t16の期間において、入力電圧が急激に上昇すると、リセット信号の生成に関連するブロックや回路の応答遅れにより、リセット信号の出力タイミングがすぐに早くはならないことがある。そのため、従来のように、セット信号及びリセット信号に同期して生成した駆動信号に従ってIGBTをオン、オフしていた場合、破線で示すように、駆動信号のパルス幅が小さくならず、出力電圧が上昇してしまう。しかし、図8に示す制限信号生成部270lは、入力電圧が上昇すると、マップに基づいてパルス幅の制限値を即座に小さくする。そして、セット信号を基準として制限値経過時に制限信号を生成し出力する。つまり、図13に示すように、入力電圧の上昇に伴って制限信号の出力タイミングを即座に早くする。図8に示すRSフリップフロップ273は、図13に示すように、応答遅れにより出力タイミングが早くなっていないリセット信号に比べ、出力タイミングが早い制限信号に同期して駆動信号をオフすることになる。そのため、実線で示すように、駆動信号のパルス幅を抑え、出力電圧の上昇を抑えることができる。
【0080】
次に、効果について説明する。第2実施形態によれば、リセット信号の生成に関連する、マイクロコンピュータ270内のブロックや回路が故障したり誤動作したりしても、制限信号生成部270lと信号合成回路272が、駆動信号のパルス幅を制限する。そのため、第1実施形態と同様に、過電流に伴って発生するIGBTの過熱による故障を抑えることができる。また、入力電圧が急激に上昇しても、出力電圧の上昇を抑えることができる。
【0081】
また、第2実施形態によれば、制限信号生成部270lは、入力電圧と出力電圧に基づいて、IGBTをオンするパルス信号のパルス幅の制限値を決定する。そして、セット信号を基準として制限値経過時に制限信号を生成し出力する。信号合成回路272は、リセット信号と制限信号を合成し、駆動信号を生成するための新たなリセット信号として出力する。そのため、入力電圧と出力電圧に基づいて駆動信号のパルス幅を確実に制限することができる。
【0082】
ところで、IGBTがオンすると、その直後にスイッチングノイズが発生する。従来のように、リセット信号に同期して駆動信号をオフしていた場合、リセット信号にこのスイッチングノイズが重畳されると、駆動信号のパルス幅が本来より小さくなってしまう。しかし、第2実施形態によれば、信号合成回路272は、スイッチングノイズである、セット信号を基準として時間T1内に出力されたリセット信号を除いて、リセット信号と制限信号を合成し、新たなリセット信号として出力する。そのため、スイッチングノイズの影響を受けることなく、新たなリセット信号を出力することができる。従って、スイッチングノイズの影響を受けることなく、駆動信号を出力することができる。
【0083】
なお、第1及び第2実施形態では、制限信号生成部が、入力電圧と出力電圧に基づいてパルス幅の制限値を決定する例を挙げているが、これに限られるものではない。出力電圧指令によって指示された電圧になるように出力電圧が制御されていることから、制限信号生成部が、入力電圧と出力電圧指令に基づいてパルス幅の制限値を決定するようにしてもよい。
【0084】
また、第1及び第2実施形態では、制限信号生成部が、予め設定されているマップに基づいてパルス幅の制限値を決定する例を挙げているが、これに限られるものではない。DC−DCコンバータ装置の入出力電圧から演算によって求めるようにしてもよい。
【0085】
また、第1及び第2実施形態では、DC−DCコンバータ装置が、高電圧バッテリの出力する直流高電圧を降圧して低電圧バッテリを充電する装置である例を挙げているが、これに限られるものではない。DC−DCコンバータ装置は、直流低電圧を昇圧する装置であってもよい。また、直流低電圧と直流高電圧を双方向に昇降圧する装置であってもよい。さらに、スイッチング素子をスイッチングさせることによって電圧を変換するものであれば、非絶縁型、絶縁型等の構成を問わず適用することができる。
また、第1及び第2実施形態では、フライホイール電流を流すための素子が、ダイオードで構成されている例を挙げているが、これに限られるものではない。ダイオードをスイッチング素子に置き換えてもよい。この場合、置き換えたスイッチング素子を、IGBTと相補的にオン、オフさせることで、同様の動作を実現することができる。つまり、複数のスイッチング素子を備えている場合にも適用できる。
さらに、第1及び第2実施形態では、入力電流検出回路が、コンデンサの負極端子とダイオードのアノードを高電圧バッテリに接続する配線に設けられている例を挙げているが、これに限られるものではない。入力電流検出回路は、IGBTの一端又は他端に接続される配線に設けられ、コイルに流れる電流を入力電流として検出するようにしてもよい。
加えて、第1及び第2実施形態では、入力電流値とスロープ補償を、マイクロコンピュータ内においてデジタル値として加算する例を挙げているが、これに限られるものではない。入力電流値とスロープ補償値を、マイクロコンピュータ外でアナログ値して加算し、
その後、マイクロコンピュータ内でデジタル値に変換するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1・・・DC−DCコンバータ装置(電力変換装置)、10・・・IGBT(スイッチング素子)、11・・・コイル、12・・・コンデンサ、13・・・ダイオード、14・・・入力電圧検出回路、15・・・入力電流検出回路、16・・・出力電圧検出回路、17、27・・・制御回路、170a、270a・・・発振器(セット信号生成手段)、170b、270b・・・出力電圧指令部、170c、270c・・・A/Dコンバータ、170d、270d・・・偏差部(電流指令生成手段)、170e、270e・・・PID補償部(電流指令生成手段)、170f、270f・・・D/Aコンバータ(電流指令生成手段)、170g、270g・・・スロープ補償部、170h、270h・・・A/Dコンバータ、170i、270i・・・加算部、170j、270j・・・D/Aコンバータ、170k、270k・・・A/Dコンバータ、170l、270l・・・制限信号生成部(パルス幅制限手段、制限信号生成手段)、171、271・・・コンパレータ(リセット信号生成手段)、172、273・・・RSフリップフロップ(駆動信号生成手段)、173・・・信号選択回路(パルス幅制限手段、信号選択手段)、272・・・信号合成回路(パルス幅制限手段、信号合成手段)、B10・・・高電圧バッテリ、B11・・・低電圧バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周期毎にセット信号を生成し出力するセット信号生成手段と、
出力電圧指令と出力電圧に基づいて電流指令を生成し出力する電流指令生成手段と、
電流指令と入力電流に基づいてリセット信号を生成し出力するリセット信号生成手段と、
前記セット信号に同期してオンし、スイッチング素子をオンするとともに、その後に入力される前記リセット信号に同期してオフし、前記スイッチング素子をオフする駆動信号を生成し出力する駆動信号生成手段と、
を備えた電力変換装置において、
入力電圧と出力電圧、又は、入力電圧と出力電圧指令に基づいて前記駆動信号のパルス幅を制限するパルス幅制限手段を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記パルス幅制限手段は、
入力電圧と出力電圧、又は、入力電圧と出力電圧指令に基づいてパルス幅の制限値を決定し、前記セット信号に同期してオンし、パルス幅が前記制限値となる制限信号を生成し出力する制限信号生成手段と、
前記駆動信号と前記制限信号のうちパルス幅の小さい信号を、前記スイッチング素子を駆動するための新たな駆動信号として出力する信号選択手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記信号選択手段は、パルス幅が所定値以下の前記駆動信号を除いて、前記駆動信号と前記制限信号のうちパルス幅の小さい信号を、前記スイッチング素子を駆動するための前記新たな駆動信号として出力することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記パルス幅制限手段は、
入力電圧と出力電圧、又は、入力電圧と出力電圧指令に基づいてパルス幅の制限値を決定し、前記セット信号を基準として前記制限値経過時に制限信号を生成し出力する制限信号生成手段と、
前記リセット信号と前記制限信号を合成し、前記駆動信号を生成するための新たなリセット信号として出力する信号合成手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記信号合成手段は、前記セット信号を基準として所定時間内に出力された前記リセット信号を除いて、前記リセット信号と前記制限信号を合成し、前記駆動信号を生成するための前記新たなリセット信号として出力することを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
車両に搭載されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−74657(P2013−74657A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210269(P2011−210269)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】