説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、セキュリティ性を向上させることにある。
【解決手段】メカニカルキー18を通じた機械的照合にて車両ドアが解錠された、若しくは不正に車両ドアが解錠された旨判断された場合には警戒モードに移行される。このモードにおいては、イモビライザシステムにおける電気的照合が成立したときにのみエンジンの始動が行われる。ここで、イモビライザシステムにおいては、キー操作フリーシステムと異なって中継器を使用した不正な通信が行われるおそれはない。これにより、電子キーシステム全体としてのセキュリティ性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子キーシステムは、電子キー及び車両間での無線通信を通じて電気的照合が成立したとき車両ドアの施解錠、エンジン始動等が可能となる。具体的には、電子キーは、固有のIDコードを含む無線信号を車両に送信する。車両は、受信した無線信号に含まれるIDコードと、自身に予め記憶されるIDコードとの照合を通じて電気的照合を行う。
【0003】
また、上記電子キーシステムとは別に車両は、メカニカルキーのキーパターンと、車両ドアのキーシリンダとの間での機械的照合が成立したとき、車両ドアの施解錠状態の切り替えが可能に構成される機械的キーシステムを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−293247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、機械的キーシステムにおける機械的照合は、電子キーシステムにおける電気的照合と比較して、そのキーパターンが少ない。また、メカニカルキーが偽造されたり、キーシリンダがピッキングされたりすることも考えられる。このように、機械的照合は、電気的照合と比較してセキュリティ性が低い。しかし、機械的照合及び電気的照合の何れを通じて車両ドアが解錠された場合であっても、エンジンの始動に要求される照合は同一のものであった。よって、照合方法によって車両としてのセキュリティレベルが異なっていた。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セキュリティ性を向上させた電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、メカニカルキーのキーパターンを通じた機械的照合を行い、当該照合が成立したとき車両ドアの解錠を許可する機械的キーシステムを備えた車両に搭載される電子キーシステムにおいて、電子キーは車載装置からその車内外に送信されるリクエスト信号を受信するとIDコードを含むレスポンス信号を送信し、前記車載装置は受信した前記レスポンス信号に含まれるIDコードの電気的照合を行い、この電気的照合が成立したときには車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可するキー操作フリーシステムと、前記電子キーは前記車載装置から局所的に送信される駆動信号を受信すると同じく局所的にIDコードを含むトランスポンダ応答信号を送信し、前記車載装置は受信した前記トランスポンダ応答信号に含まれるIDコードの電気的照合を行い、この電気的照合が成立したときにはエンジンの始動を許可するイモビライザシステムと、を備え、前記車載装置は、前記機械的照合にて車両ドアが解錠された、若しくは不正に車両ドアが解錠された旨判断した場合には警戒モードに移行して、前記イモビライザシステムにおける電気的照合が成立したときにのみエンジンの始動を許可することをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、機械的照合にて車両ドアが解錠された、若しくは不正に車両ドアが解錠された旨判断された場合には警戒モードに移行される。ここで、不正に車両ドアが解錠された場合とは、例えば車両ドアがこじ開けられた場合や、擬似的な解錠要求指令信号が車載装置に送信された場合が考えられる。このような場合、車両ドアの解錠にあたって何らの照合も行っておらず、車両のセキュリティ性が低い状態となる。また、機械的照合は電気的照合に比してキーパターンが少ない。このため、メカニカルキーを通じて車両ドアが解錠された場合には、キー操作フリーシステムが利用された場合に比べてセキュリティ性が低い。このようにセキュリティ性の確保が難しい場合には警戒モードに移行する。このモードにおいては、イモビライザシステムにおける電気的照合が成立したときにのみエンジンの始動が行われる。すなわち、キー操作フリーシステムやメカニカルキーを通じたエンジンの始動が規制される。
【0009】
ここで、キー操作フリーシステムにおいては、車載装置及び電子キー間に中継器を介在させることで、電子キーが車両から遠く離れて位置するにも関わらず、電子キー及び車載装置間で無線通信を成立させて、不正に車両ドアの解錠やエンジンの始動を行うことが懸念されている。一方、イモビライザシステムにおいては、上記中継器を使用した不正な通信が行われるおそれはない。これは、駆動信号及びトランスポンダ応答信号は局所的に送信される信号だからである。
【0010】
以上の点を考慮して、車両ドアの解錠時においてセキュリティ性の確保が難しい場合、エンジンの始動時にセキュリティ性の高いイモビライザシステムにおける電気的照合を要求する。これにより、電子キーシステム全体としてのセキュリティ性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記電子キーに設けられるスイッチの操作に基づき同電子キーからIDコードを含む制御要求信号が送信され、前記車載装置は受信した前記制御要求信号に含まれるIDコードの照合が成立したとき車両ドアの施解錠を行うワイヤレスキーシステムを備え、前記車載装置は、前記警戒モードにおいて、受信した前記制御要求信号に含まれるIDコードの照合が成立したとき同警戒モードを解除して、前記イモビライザシステム又は前記キー操作フリーシステムにおけるIDコードの電気的照合が成立したときエンジンの始動を許可することをその要旨としている。
【0012】
ワイヤレスキーシステムにおいては中継器を使用した不正な通信が行われるおそれはない。これは、当該システムにおいてはユーザによるスイッチ操作をトリガとして制御要求信号が送信されるところ、上記キー操作フリーシステムのように、リクエスト信号を通じてユーザの意図なく電子キーから信号を発信させることはできないからである。
【0013】
上記構成によれば、受信した制御要求信号に含まれるIDコードの照合が成立したとき、中継器を使用した不正な通信の可能性はないとして警戒モードが解除される。この場合、車載装置は、イモビライザシステム又はキー操作フリーシステムにおけるIDコードの電気的照合が成立したときエンジンを始動する。これにより、例えばメカニカルキーを通じて車両ドアが解錠された場合であれ、キー操作フリーシステムを利用してエンジンを始動させることができる。よって、利便性を向上させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、車両ドアの解錠時に中継器を使用した不正な通信のおそれがあるか否かの判断を行う判断部を備え、前記車載装置は、前記判断部を通じて前記中継器を使用した不正な通信の可能性がある旨判断したとき、前記警戒モードに移行することをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、中継器を使用して車両ドアの解錠が実行されたおそれがある場合に、警戒モードに移行してキー操作フリーシステムを使用したエンジンの始動が規制される。これにより、中継器を使用したエンジンの始動が行われることが抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、セキュリティ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1及び第2の実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図2】第1及び第2の実施形態における車載制御部の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムに具体化した第1の実施形態について図1及び図2を参照して説明する。車両には電子キーシステムとして、キー操作フリーシステムと、ワイヤレスキーシステムと、イモビライザシステムとが搭載されている。
【0019】
<電子キー>
まず、電子キー10におけるキー操作フリーシステムに関する構成について説明する。
電子キー10は、コンピュータユニットによって構成される電子キー制御部11と、LF(low frequency)帯の無線信号を受信するLF受信部12と、UHF(Ultra High Frequency)帯の無線信号を送信するUHF送信部13とを備える。
【0020】
LF受信部12は、受信アンテナ12aを介して車載装置20から送信されるLF帯の無線信号であるリクエスト信号を受信する。そして、LF受信部12は、このリクエスト信号をパルス信号に復調し、それを電子キー制御部11へ出力する。
【0021】
電子キー制御部11は、不揮発性のメモリ11aを備え、同メモリ11aには電子キー10に固有のIDコードが記憶されている。電子キー制御部11は、LF受信部12からのリクエスト信号を認識すると、メモリ11aに記憶されたIDコードを含むレスポンス信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、レスポンス信号を変調し、これを送信アンテナ13aを介してUHF帯の無線信号として送信する。
【0022】
次に、電子キー10におけるイモビライザシステムに関する構成について説明する。
電子キー10はトランスポンダ14を備える。トランスポンダ14は、コイル及びICチップ等からなるとともに、車両のエンジンスイッチの近傍に局所的に送信される駆動電波を受けると自身のコイルに誘起電力が生じる。トランスポンダ14は、この電力に基づき自身のIDコードを含むトランスポンダ応答信号を送信する。トランスポンダ14は、駆動電波に基づき電力を誘起するため、電子キー10の電池切れの際にもトランスポンダ応答信号を送信することができる。
【0023】
次に、電子キー10におけるワイヤレスキーシステムに関する構成について説明する。なお、ワイヤレスキーシステムにおいては、電子キー制御部11及びUHF送信部13が上記キー操作フリーシステムと共用される。
【0024】
電子キー10は、解錠スイッチ16と、施錠スイッチ17とを備える。
解錠スイッチ16及び施錠スイッチ17は、電子キー10の表面に操作可能に配置されるとともに、操作されるとその旨を示す操作信号を電子キー制御部11へ出力する。
【0025】
電子キー制御部11は、解錠スイッチ16が操作された旨の操作信号を受けると、車両2に対してドアの解錠を要求する旨のIDコードを含む解錠要求信号を生成し、これをUHF送信部13に出力する。UHF送信部13は、電子キー制御部11から入力された解錠要求信号を変調し、それを送信アンテナ13aを介してUHF帯の無線信号として送信する。電子キー制御部11は、施錠スイッチ17が操作された旨の操作信号を受けた場合も、上記と同様に、ドアの施錠を要求する旨のIDコードを含む施錠要求信号を、UHF送信部13を介して無線送信する。
【0026】
また、車両2には機械的キーシステムが搭載されている。
詳しくは、電子キー10の本体には、メカニカルキー18が収納されている。例えば、電子キー10の電池切れの際、ユーザはメカニカルキー18を取り出して、メカニカルキー18を車両ドアに設けられるキーシリンダ(図示略)に挿入する。そして、その状態でメカニカルキー18を回動させる。これにより、車両ドアの施解錠状態が切り替わる。
【0027】
<車載装置>
次に、車載装置20におけるキー操作フリーシステムに関する構成を中心に説明する。
図1に示すように、車載装置20は、コンピュータユニットにて構成される車載制御部21と、車外にLF帯の無線信号を送信する車外送信部22と、車内にLF帯の無線信号を送信する車内送信部23と、車内外から送信されるUHF帯の無線信号を受信する車載受信部24と、を備える。
【0028】
また、車載制御部21には、ドアハンドルセンサ32と、エンジンスイッチ33と、ドアロック装置34と、エンジン装置35と、ロックスイッチ36とが電気的に接続されている。
【0029】
ドアハンドルセンサ32は、車外側のドアハンドル(図示略)に設けられてユーザの同ドアハンドルへの接触の有無を検出する。ドアハンドルセンサ32は、その検出結果を車載制御部21に出力する。
【0030】
また、ロックスイッチ36は、同じくドアハンドルに設けられて車両ドアの施解錠時に押し操作される。そして、ロックスイッチ36は、自身が操作された旨の操作信号を車載制御部21に出力する。
【0031】
また、エンジンスイッチ33は、運転席の近傍に設けられてエンジンの始動時に押し操作される。そして、エンジンスイッチ33は、自身が操作された旨の操作信号を車載制御部21に出力する。
【0032】
車載制御部21は、不揮発性のメモリ21aを備え、そのメモリ21aには電子キー10のIDコードと同一のIDコードが記憶されている。車載制御部21は、一定周期毎にリクエスト信号を生成し、それを車外送信部22又は車内送信部23に送信する。
【0033】
車外送信部22は、例えば、車外側のドアハンドルの内部に設けられる。車外送信部22は、車載制御部21からリクエスト信号が入力されると、そのリクエスト信号を変調し、これを車外送信アンテナ22aを介してLF帯の無線信号として車外に送信する。
【0034】
車内送信部23は車内に設けられるとともに、車載制御部21からリクエスト信号が入力されると、そのリクエスト信号を変調して、これを車内送信アンテナ23aを介して車内に送信する。
【0035】
車載受信部24は、受信アンテナ24aを介して電子キー10から送信されるレスポンス信号を受信すると、この信号をパルス信号に復調し、これを車載制御部21へ出力する。
【0036】
車載制御部21は、レスポンス信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記憶されるIDコードとの照合を行う。車載制御部21は、電子キー10から送信されたレスポンス信号が車外送信部22及び車内送信部23のどちらから送信されたリクエスト信号に応答したものであるかに基づいて、車外照合又は車内照合の何れが成立したかを判断する。車外照合とは車外送信部22を介して車外に存在する電子キー10との間でIDコードの照合を行うことをいう。車内照合とは、車内送信部23を介して車内に存在する電子キー10との間でIDコードの照合を行うことをいう。
【0037】
車載制御部21は、車両ドアの施錠状態において車外照合が成立した場合には、車両ドア解錠許可状態となる。この解錠許可状態において、車載制御部21は、ユーザがドアハンドル(図示略)に触れたことを、ドアハンドルセンサ32を通じて認識したとき、ドアロック装置34を介して車両ドアを解錠する。また、車載制御部21は、車両ドアの解錠状態において車外照合が成立した場合、ロックスイッチ36が操作された旨認識すると、ドアロック装置34を介して車両ドアを施錠する。
【0038】
また、車載制御部21は、車内照合が成立した場合、エンジン始動許可状態となる。車載制御部21は、エンジン始動許可状態においてエンジンスイッチ33が操作された旨認識すると、エンジン装置35を通じてエンジンを始動する。
【0039】
次に、車載装置20におけるイモビライザシステムに関する構成について説明する。なお、イモビライザシステムにおいては、車載制御部21等が上記キー操作フリーシステムと共用される。
【0040】
車載装置20はイモビライザ通信機25を備える。イモビライザ通信機25は、エンジンスイッチ33に内蔵される。車載制御部21は、例えばエンジン停止状態においてブレーキペダルが踏み込まれたとき、指令信号をイモビライザ通信機25に出力する。イモビライザ通信機25は、車載制御部21からの指令信号に基づき駆動電波を送信する。この駆動電波は、エンジンスイッチ33の近傍に局所的に発信される。電子キー10がエンジンスイッチ33にかざされると、電子キー10のトランスポンダ14は駆動電波を受けて起動する。そして、トランスポンダ14はIDコードを含むトランスポンダ応答信号を送信する。イモビライザ通信機25は、トランスポンダ応答信号を受信すると、この信号をパルス信号に復調し、これを車載制御部21へ出力する。車載制御部21は、トランスポンダ応答信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合を行う(トランスポンダ照合)。車載制御部21は、このトランスポンダ照合が成立したときエンジン始動許可状態となる。そして、車載制御部21は、エンジン始動許可状態において、エンジンスイッチ33が操作された旨認識すると、エンジン装置35を通じてエンジンを始動する。
【0041】
次に、車載装置20におけるワイヤレスキーシステムに関する構成について説明する。なお、ワイヤレスキーシステムにおいては、車載制御部21及び車載受信部24が上記キー操作フリーシステムと共用される。
【0042】
車載受信部24は、自身の受信アンテナ24aを通じて受信した解錠要求信号又は施錠要求信号を復調して、それを車載制御部21に出力する。車載制御部21は、車載受信部24からの解錠要求信号を認識すると、解錠要求信号に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合を行う(ワイヤレス照合)。車載制御部21は、このワイヤレス照合が成立した旨判断したとき、車両ドアを解錠する。また、車載制御部21は、施錠要求信号についてのワイヤレス照合が成立した旨判断したとき車両ドアを施錠する。
【0043】
なお、車内及び車外照合、トランスポンダ照合、並びにワイヤレス照合は何れも電気的照合である。
上記各電子キーシステムにおいて、キー操作フリーシステムは、ユーザがキー操作を行う必要がないことから利便性が高い。しかしながら、当該システムは、電子キー10が車両から遠く離れているにも関わらず、車外及び車内照合を成立させる中継器を使用した不正な通信が懸念されている。具体的には、中継器は、その第1の送受信ユニットにてリクエスト信号を受信する。その信号はケーブルを通じて第2の送受信ユニットから送信される。第2の送受信ユニットからのリクエスト信号を車両から離れたユーザの所持する電子キー10に送信する。これを受けた電子キー10は、レスポンス信号を中継器を介して、若しくは直接に車載装置20に送信する。これにより、車両において車外照合が成立して車両ドアの解錠が行われるおそれがある。車内照合も同様にして行われるおそれがある。
【0044】
上記中継器を使用した不正な通信は、ワイヤレスキーシステムにおいては行われるおそれはない。これは、当該システムにおいては、解錠スイッチ16又は施錠スイッチ17の操作をトリガとして解錠要求信号又は施錠要求信号が送信されるところ、上記キー操作フリーシステムのように、リクエスト信号を通じてユーザの意図なく電子キー10から信号を発信させることはできないからである。
【0045】
また、中継器を使用した不正な通信は、イモビライザシステムにおいても行われるおそれはない。これは、駆動電波及びトランスポンダ応答信号は局所的に送信されるものであって、それを中継することはできないからである。
【0046】
車載制御部21は、通常、車内照合又はトランスポンダ照合が成立したとき、エンジン始動許可状態となって、この状態においてエンジンスイッチ33が操作された旨判断するとエンジンを始動する。
【0047】
車載制御部21は、車両ドアの解錠時にキー操作フリーシステム及びワイヤレスキーシステム以外が利用された場合には警戒モードに移行する。キー操作フリーシステム及びワイヤレスキーシステム以外が利用された場合とは、具体的にはメカニカルキー18を通じて車両ドアが解錠された場合、物理的に車両ドアがこじ開けられた場合、及びドアロック装置34に擬似的な解錠要求指令信号が送信されて車両ドアが解錠された場合がある。車載制御部21は、警戒モードに移行すると、トランスポンダ照合が成立したときにのみエンジンの始動を許可する。すなわち、キー操作フリーシステムにおける車内照合の成立を通じたエンジンの始動が規制される。
【0048】
また、車載制御部21は、警戒モードにおいて施錠要求信号又は解錠要求信号を受けてワイヤレス照合が成立すると、車両の周辺に電子キー10を所持するユーザが存在するとして警戒モードを解除する。
【0049】
すなわち、車両ドアの解錠時に車外照合又はワイヤレス照合が行われていない場合、例えばメカニカルキー18を通じて車両ドアの解錠が行われた場合には警戒モードに移行してエンジンを始動するにあたってトランスポンダ照合を要求する。
【0050】
ここで、メカニカルキー18は、そのキー溝(キーパターン)を通じて、車両ドアのキーシリンダとの間で機械的照合を行う。しかし、この機械的照合は、上記各電子キーシステムにおける電気的照合に比べてキーパターンが少ないためセキュリティ性が低い。従って、電気的照合を経ることなく、車両ドアが解錠された場合には、よりセキュリティ性の高い電子キーシステム、具体的にはイモビライザシステムにてエンジンの始動を可能とする。これにより、電子キーシステムとしてのセキュリティ性を向上させることができる。
【0051】
また、解錠スイッチ16又は施錠スイッチ17が操作されることで警戒モードが解除される。このため、車両ドアの解錠時に車外照合又はワイヤレス照合を行っていない場合であっても、通常時に使用されるキー操作フリーシステムを利用してエンジンを始動させることができる。これにより、利便性を向上させることができる。
【0052】
次に、車載制御部21の処理手順を図2のフローチャートに従って説明する。このフローチャートは所定の周期で実行される。
まず、車両ドアの解錠が実行されると(S101)、当該解錠が車外照合又はワイヤレス照合の成立を通じて行われたか否かが判断される(S102)。車両ドアの解錠が車外照合又はワイヤレス照合の成立を通じて行われた旨判断されたとき(S102でYES)、通常通り、キー操作フリーシステム及びイモビライザシステムを利用したエンジンの始動が許可される。詳しくは、車内照合が成立するか否かが判断される(S103)。車内照合が成立する旨判断された場合(S103でYES)、エンジンスイッチ33が操作された旨認識されたとき(S105)、エンジンが始動される(S106)。これにて、車載制御部21の処理が終了する。例えば電子キー10の電池切れにより車内照合が成立しない旨判断されたとき(S103でNO)、トランスポンダ照合が成立するか否かが判断される(S104)。トランスポンダ照合が成立する旨判断された場合であって(S104でYES)、エンジンスイッチ33が操作された旨認識されたとき(S105)、エンジンが始動される(S106)。これにて、車載制御部21の処理が終了する。トランスポンダ照合が成立しない旨判断された場合(S104でNO)、エンジンが始動されることなく、車載制御部21の処理が終了する。
【0053】
一方、車両ドアの解錠が車外照合又はワイヤレス照合の成立を通じて行われていない旨判断された場合(S102でNO)、警戒モードに移行される(S107)。そして、トランスポンダ照合が成立するか否かが判断される(S108)。トランスポンダ照合が成立する旨判断された場合であって(S108でYES)、エンジンスイッチ33が操作された旨認識されたとき(S105)、エンジンが始動される(S106)。これにて、車載制御部21の処理が終了する。トランスポンダ照合が成立しない旨判断された場合(S108でNO)、ワイヤレス照合が成立するか否かが判断される(S109)。ワイヤレス照合が成立しない旨判断された場合(S109でNO)、再びステップS108に処理に移行される。また、ワイヤレス照合が成立する旨判断されたとき(S109でYES)、換言すると解錠スイッチ16又は施錠スイッチ17が操作されたとき、警戒モードが解除される(S110)。そして、ステップS103に処理が移行されることで、キー操作フリーシステムを利用したエンジンの始動が可能となる。
【0054】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)メカニカルキー18を通じて機械的照合にて車両ドアが解錠された、若しくは不正に車両ドアが解錠された旨判断された場合には警戒モードに移行される。このモードにおいては、イモビライザシステムにおける電気的照合が成立したときにのみエンジンの始動が行われる。ここで、イモビライザシステムにおいては、キー操作フリーシステムと異なって上記中継器を使用した不正な通信が行われるおそれはない。これにより、電子キーシステム全体としてのセキュリティ性を向上させることができる。
【0055】
(2)車載装置20は、受信した施錠要求信号又は解錠要求信号に含まれるIDコードの照合が成立したとき、中継器を使用した不正な通信の可能性はないとして警戒モードを解除する。この場合、車載装置20は、キー操作フリーシステムにおける電気的照合が成立したときにもエンジンを始動する。これにより、例えばメカニカルキー18を通じて車両ドアが解錠された場合であれ、キー操作フリーシステムを利用してエンジンを始動させることができる。よって、利便性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態の電子キーシステムは、キー操作フリーシステムにおいて中継器を使用した不正な通信の可能性があるか否かが判断される点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0056】
図1に破線で示すように、LF受信部12はRSSI検出回路19を備える。一方、車載制御部21は、車外送信部22を介して信号強度が一定値以上異なる2つのリクエスト信号を連続的に送信する。RSSI検出回路19は、2つのリクエスト信号のRSSIを検出し、その検出結果を電子キー制御部11に出力する。電子キー制御部11は、その検出結果をレスポンス信号に含ませてUHF送信部13を通じて送信する。
【0057】
車載制御部21は、車載受信部24を通じて受信したレスポンス信号に含まれるRSSI検出回路19の検出結果である2つのリクエスト信号のRSSIを認識する。車載制御部21は、両リクエスト信号のRSSIの差が一定値以上であるとき、中継器を使用した不正な通信の可能性がない旨判断する。また、車載制御部21は、両リクエスト信号のRSSIの差が一定値未満であるとき、中継器を使用した不正な通信の可能性がある旨判断する。ここで、中継器において、第1の送受信ユニットを介して信号強度の異なる2つのリクエスト信号を受けても、第2の送受信ユニットから送信する2つのリクエスト信号の信号強度は同一である。このため、車載装置20及び電子キー10間に中継器が存在する場合には、両リクエスト信号のRSSIの差は一定値未満となる。このことから、上記のような判断が可能となる。
【0058】
本実施形態における車載制御部21の処理手順について説明する。
図2において破線で示すように、車両ドアの解錠が車外照合又はワイヤレス照合の成立を通じて行われた旨判断されたとき(S102でYES)、中継器を使用した不正な通信の可能性があるか否かの判断が行われる(S201)。車外照合において中継器を使用した不正な通信の可能性がある旨判断されたとき(S201でYES)、警戒モードに移行される(S107)。以下、第1の実施形態と同様に処理が行われる。また、中継器を使用した不正な通信の可能性がない旨判断されたとき(S201でNO)、車内照合が成立するか否かが判断される(S103)。以下、第1の実施形態と同様に処理が行われる。
【0059】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)及び(2)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(3)中継器を使用して車両ドアの解錠が実行された可能性がある場合に、警戒モードに移行してキー操作フリーシステムを利用したエンジンの始動が規制される。従って、中継器を使用してエンジンの始動が車両ドアの解錠と連続的に行われることが抑制される。
【0060】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、ワイヤレスキーシステムを通じたエンジンの始動はできなかった。しかし、電子キー10にエンジンスタートスイッチを設けてもよい。この場合、そのスイッチが操作されると、電子キー10からIDコードを含むエンジンの始動を要求する旨の無線信号が送信される。車載装置20は、受信した前記無線信号に含まれるIDコードと、自身のメモリ21aに記憶されるIDコードとの照合が成立したとき、エンジンを始動する。このエンジンスタートスイッチの操作を通じたエンジンの始動は、警戒モードにおいても可能とされる。これは、上述のようにワイヤレスキーシステムにおいては、中継器を使用した不正な通信のおそれがないからである。
【0061】
・上記両実施形態において警戒モードに移行したとき、その旨を例えばインジゲータや音声等を通じてユーザに通知してもよい。これにより、ユーザは警戒モードに移行したことを認識して、トランスポンダ照合やワイヤレス照合を行うことができる。
【0062】
・上記両実施形態においては、車内照合が成立した旨判断されたとき(S103)、若しくはトランスポンダ照合が成立した旨判断されたとき(S104)、エンジンスイッチ33の操作(S105)によりエンジンが始動されていた(S106)。しかし、メカニカルキー18を通じてエンジンを始動可能としてもよい。この場合、メカニカルキー18をステアリングコラムに設けられるキーシリンダに挿入する。そして、この状態でメカニカルキー18を回動させる。これにより、エンジンが始動する。このメカニカルキー18を通じたエンジンの始動は警戒モードにおいて規制される。
【0063】
・第2の実施形態においては、車載制御部21が中継器を使用した不正な通信の可能性があるか否かを判断していた。しかし、電子キー制御部11がこの判断を行ってもよい。この場合、電子キー制御部11は、判断結果を例えばレスポンス信号に含ませて送信する。車載制御部21は、レスポンス信号に含まれる判断結果に基づき、ステップS103及びS104の判断を行う。さらに、リクエスト信号と同様に、2つのレスポンス信号を連続的に送信して、それら信号の信号強度を異ならせてもよい。この場合、RSSI検出回路19は、車載受信部24に設けられる。
【0064】
・また、リクエスト信号とは別に信号強度の異なる複数のRSSI測定用信号を送信してもよい。これらRSSI測定用信号のRSSIを通じて、第2の実施形態と同様に、中継器を使用した不正な通信の可能性があるか否かの判断が行われる。
【0065】
・第2の実施形態においては、2つのリクエスト信号のRSSIに基づき、中継器を使用した不正な通信の可能性があるか否かの判断が行われていた。しかし、この判断ができれば、第2の実施形態の手法に限らない。例えば、中継器を介在させることによるレスポンス信号の受信タイミングの遅延を通じて、中継器を使用した不正な通信の可能性があるか否かの判断を行ってもよい。
【0066】
・第2の実施形態における中継器を使用した不正な通信の可能性があるか否かの判断(S201)は、ステップS103において車内照合が成立したときに行ってもよい。この場合、車内送信部23を介して信号強度が一定値以上異なる2つのリクエスト信号が連続的に車室内に送信される。本構成においても、中継器を使用した不正な通信の可能性がある旨判断されたとき(S201でYES)、警戒モードに移行される(S107)。
【0067】
・上記両実施形態においては、ワイヤレス照合が成立したとき、警戒モードが解除されていた。しかし、ワイヤレス照合に限らず、例えば指紋認証等の生体認証が成立したとき、警戒モードが解除されてもよい。
【0068】
・上記両実施形態におけるワイヤレスキーシステムを省略してもよい。この場合、図2のステップS109,S110は省略されて、警戒モードにおいてはトランスポンダ照合が成立したとき(S108でYES)にのみ、エンジンの始動が可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1…電子キーシステム、2…車両、10…電子キー、11…電子キー制御部、14…トランスポンダ、18…メカニカルキー、20…車載装置、21…車載制御部(判断部)、25…イモビライザ通信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカニカルキーのキーパターンを通じた機械的照合を行い、当該照合が成立したとき車両ドアの解錠を許可する機械的キーシステムを備えた車両に搭載される電子キーシステムにおいて、
電子キーは車載装置からその車内外に送信されるリクエスト信号を受信するとIDコードを含むレスポンス信号を送信し、前記車載装置は受信した前記レスポンス信号に含まれるIDコードの電気的照合を行い、この電気的照合が成立したときには車両ドアの解錠又はエンジンの始動を許可するキー操作フリーシステムと、
前記電子キーは前記車載装置から局所的に送信される駆動信号を受信すると同じく局所的にIDコードを含むトランスポンダ応答信号を送信し、前記車載装置は受信した前記トランスポンダ応答信号に含まれるIDコードの電気的照合を行い、この電気的照合が成立したときにはエンジンの始動を許可するイモビライザシステムと、を備え、
前記車載装置は、前記機械的照合にて車両ドアが解錠された、若しくは不正に車両ドアが解錠された旨判断した場合には警戒モードに移行して、前記イモビライザシステムにおける電気的照合が成立したときにのみエンジンの始動を許可する電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電子キーに設けられるスイッチの操作に基づき同電子キーからIDコードを含む制御要求信号が送信され、前記車載装置は受信した前記制御要求信号に含まれるIDコードの照合が成立したとき車両ドアの施解錠を行うワイヤレスキーシステムを備え、
前記車載装置は、前記警戒モードにおいて、受信した前記制御要求信号に含まれるIDコードの照合が成立したとき同警戒モードを解除して、前記イモビライザシステム又は前記キー操作フリーシステムにおけるIDコードの電気的照合が成立したときエンジンの始動を許可する電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
車両ドアの解錠時に中継器を使用した不正な通信のおそれがあるか否かの判断を行う判断部を備え、
前記車載装置は、前記判断部を通じて前記中継器を使用した不正な通信の可能性がある旨判断したとき、前記警戒モードに移行する電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−144149(P2012−144149A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4067(P2011−4067)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】