説明

電子キーシステム

【課題】無線信号の授受を通じて電子機器を円滑に作動させることができる電子キーシステムを提供する。
【解決手段】車両10は、自身からの要求信号をトリガとして電子キー20との間で無線信号の授受を行い、当該授受が成立した状態で、自身に設けられるセンサが操作された場合に、ドアロック装置14を作動させるスマート通信機能と、自身からの要求信号をトリガとしない電子キー20から送信されるワイヤレス信号を間欠的に受信できる待機状態となる受信機を介して受信したワイヤレス信号の照合が成立する場合に、ドアロック装置14を作動させるワイヤレス通信機能とを備えた電子キーシステムにおいて、車両10は、閾値回数だけセンサが操作されてもドアロック装置14が作動しない場合に作動するタイマ11bを備え、当該タイマ11bが作動している間は、受信機を連続的に受信待機状態とする電子キーシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車においては、利便性の向上を目的として、ユーザに所持される電子キーと車載装置との間で無線通信を行い、当該無線通信が成立したことを条件としてドア錠の施解錠を許可又は実行する電子キーシステムが搭載されている。電子キーシステムには、特許文献1に示されるように、先の無線通信を電子キーを所持したユーザが車両に近づくだけで自動的に実行するスマートシステムと、電子キーに設けられたスイッチが操作されたことを契機として実行するワイヤレスシステムとがある。多くの自動車には、これら両方のシステムが搭載されている。この場合、ユーザは、自身のおかれた状況に応じてスマートシステムとワイヤレスシステムとを選択して使用することができるので、使用勝手がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−2111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、電子キーには、交換可能とされた電池(一次電池)が搭載されている。電子キーは、電池の電力を消費することで無線信号を生成し、車両との無線通信(スマート通信及びワイヤレス通信)を行う。こうした電子キーにおいては、電池が消耗して電力が少なくなると、スマートシステム及びワイヤレスシステムの両方が使用できなくなる。
【0005】
そこで、電子キーに、一次電池の他に、例えば太陽光パネル等の発電手段と、同発電手段において発電した電力を蓄えるコンデンサ等の蓄電手段を設けることが検討されている。一次電池が消耗したとき、電子キーは、蓄電手段の電力を消費して無線信号を生成し、車両との無線通信を行う。このような電子キーは、蓄電手段の電力の浪費を抑制するために、車両とのスマート通信を停止し、ワイヤレス通信を行うときのみ蓄電手段の電力を消費して無線信号を生成する。
【0006】
一方、車載装置は、車両に設けられたバッテリの電力を消費して駆動する。このため、バッテリの電力の浪費を抑制するために、車載装置は、図3に示すように、間欠的に待機状態となる。待機状態とは、ワイヤレス通信における無線信号(ワイヤレス信号)の受信が可能となる状態である。そのため、電子キーは、1回のスイッチ操作で自身のワイヤレス信号を車載装置に受信させるために、数個、ここでは4つのフレームを1つのワイヤレス信号として送信する。ワイヤレス信号を構成する4つのフレームのうち、1つのフレームが車載装置に受信されれば、当該車載装置は、電子キーの識別情報等を認識することができる。このため、1つのワイヤレス信号(4つのフレーム)の送信時間は、車載装置における待機状態の間欠時間よりも長く設定されている。これにより、車載装置は、ワイヤレス信号を受信する、正確には、4つのフレームのいずれか1つを先頭から受信することができる。
【0007】
このように、ワイヤレス信号は、数個のフレームを連続して送信するため、電力消費量が多い。このため、蓄電手段に蓄えられている電力量が低下すると、図3に示すように、電子キーは、4つのフレームを連続して生成することができないおそれがある。同図に示すように、電子キーがワイヤレス信号を生成するタイミングが、車載装置におけるワイヤレス信号の待機状態でない場合には、車載装置は、ワイヤレス信号を受信できない。この場合、車両は、ドア錠の施解錠を許可又は実行することができないので、ユーザにとって不便である。
【0008】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子キーの電源が消耗した場合であれ、無線信号の授受を通じて電子機器を円滑に作動させることができる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ユーザにより所持される電子キーは、通信マスタから送信される要求信号を受信すると、内蔵された電源の電力を消費してこの前記要求信号に対する応答信号を送信し、前記通信マスタは受信した前記応答信号の照合を行い、この照合が成立した状態で、自身に設けられる第1のスイッチが操作された場合に、同じく自身に搭載された電気機器を作動させる第1の通信機能と、前記電子キーは、自身が操作されたことをトリガとしてワイヤレス信号を送信し、前記通信マスタは、間欠的に受信待機状態となる受信機を介して受信される前記ワイヤレス信号の照合を行い、この照合が成立する場合には、前記電気機器を作動させる第2の通信機能と、を備えた電子キーシステムにおいて、前記通信マスタは、前記第1の通信機能により前記電気機器の作動が試みられたとき、前記電源が消耗しているとして、前記第1の通信機能を停止させるかどうかを判定する基準となる閾値回数だけ前記第1のスイッチが操作されても前記電気機器が作動しない場合に、ユーザが前記電子キーを操作するのに十分な時間だけ作動するタイマを備え、そのタイマが作動している間は、前記受信機を連続的に受信待機状態とすることを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、通信マスタは、ユーザが第1のスイッチを閾値回数だけ操作しても、電気機器が作動しない場合、タイマを作動させる。このタイマの作動中、電子キーが操作されて、同電子キーからワイヤレス信号が送信された場合、通信マスタは、受信機が受信待機状態であるので、電子キーからのワイヤレス信号を受信することができる。これにより、ユーザは、電子キーの操作を通じて、通信マスタの電子機器を作動させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記電子キーは、前記電源の電力量が前記第1の通信機能を停止させるかどうかを判定する基準となる電力閾値を下回る状態で操作された場合は、前記通信マスタにおいて照合に必要な最小単位の情報で前記ワイヤレス信号を構成することを要旨とする。
【0012】
前記第1のスイッチが前記第1の通信機能を停止させるかどうかを判定する基準となる閾値回数だけ操作された場合、通信マスタはタイマを作動させる。そのタイマの作動中、受信機はワイヤレス信号を受信できる受信待機状態である。この状態であれば、通信マスタは、電子キーが送信するワイヤレス信号が照合に必要な最小単位の情報で構成されていても好適に受信することができる。このため、電子キーは、必要以上の情報でワイヤレス信号を構成する必要がない。これにより、電子キーにおける電源電力の消費スピードを抑制することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、前記電源は、交換可能とされた一次電池と、充電可能とされた蓄電手段とを備え、前記電子キーは、発電手段を備え、同発電手段によって発電される電気を前記蓄電手段へ充電することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、電子キーは、例えば電池電力がゼロの場合であっても、発電手段によって発電された電力を蓄電手段へ充電することができる。そして、蓄電手段の電力を消費してワイヤレス信号を送信することができる。このため、一次電池をすぐに交換できない状況であっても、ユーザは、第2の通信機能を利用することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電子キーシステムにおいて、前記電力閾値は、前記一次電池の電力を消費して前記第1の通信機能が利用できない量とすることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、ユーザは、交換可能とされた電池の電力を消費して第1の通信機能を利用できなくなるまで、当該第1の通信機能を利用して、電気機器を作動させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の電子キーシステムにおいて、前記蓄電手段は、前記通信マスタにおいて照合に必要な最小単位の情報で構成される前記ワイヤレス信号を送信するのに必要な分だけ充電可能とされることを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、蓄電手段に蓄電できる電力量が少ないので、充電が完了するまでにかかる時間も少ない。従って、ユーザは、例えば電子キーの電池電力がゼロの場合であっても、短時間で第2の通信機能を利用することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記電子キーは、前記電源の電力量が前記第1の通信機能を停止させるかどうかを判定する基準となる電力閾値を下回る場合には、前記要求信号の受信を停止することを要旨とする。
【0020】
同構成によれば、電子キーは、通信マスタからの要求信号を受信しない。従って、当該受信に必要な分だけ、電源の電力消費を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、電子キーの電源が消耗した場合であれ、無線信号の授受を通じて電子機器を円滑に作動させることができる電子キーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態における電子キーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態における車両と電子キーとのワイヤレス通信態様を示すシーケンスチャート。
【図3】従来形態における車両と電子キーとのワイヤレス通信態様を示すシーケンスチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した一実施形態について図1及び図2に従って説明する。
図1に示すように、車両10には、電子キー20との間で交信される無線信号によりID照合を実行する電子キーシステム1が搭載されている。電子キーシステム1は、車両10からの無線信号をトリガとしてID照合を実行するスマート通信機能(第1の通信機能)と、電子キー20からの無線信号をトリガとしてID照合を実行するワイヤレス通信機能(第2の通信機能)とを有している。
【0024】
<車両の構成>
車両10は、各種の車載機器を制御する車載制御部11と、その車載制御部11に電気的に接続されてLF(Low Frequency)帯の要求信号を送信するLF送信部12、並びにUHF(Ultra High Frequency)帯の応答信号及びワイヤレス信号を受信するUHF受信部13とを備えている。また、車両10は、UHF受信部13を、無線信号の受信が可能とされた待機状態と、受信が不能とされた非待機状態との間で切り替える切替部18を備えている。切替部18は、所定時間毎、ここでは3秒毎にUHF受信部13の状態を待機状態と非待機状態との間で切り替える。この切替部18は、車載制御部11と電気的に接続されている。さらに、車両10は、同じく車載制御部11に電気的に接続されたドアロック装置14及びドアハンドルセンサ15を備えている。ドアロック装置14は、ドア錠の施解錠を切り替える。ドアハンドルセンサ15は、ユーザの図示しないドアハンドルへの接触を検出する。なお、車両10は、バッテリ16を備える。バッテリ16は、電力を車載制御部11等の車両10の各部に供給する。車載制御部11は、バッテリ16から供給される電力を消費して作動する。
【0025】
車載制御部11には、不揮発性のメモリ11aが設けられている。このメモリ11aには車両10に固有のIDコードが記憶されている。車載制御部11は、LF送信部12及びUHF受信部13を通じて電子キー20と無線通信を行う。車載制御部11は、電子キー20との間で行われる無線通信の授受を通じて、交信している電子キー20が自身に対応するものか否かを判断する。当該判断は、電子キー20からの無線通信に含まれるIDコードと、メモリ11aに記憶されたIDコードとの照合により行う。そして、自身に対応するものと判断される場合には、ドアロック装置14の作動を許可又は実行する。詳しくは、車載制御部11は、電子キー20からの応答信号の受信を通じて、当該電子キー20が自身に対応するものと判断した場合には、ドアロック装置14の作動を許可する。この状態で、ドアハンドルセンサ15を通じてドアハンドルへの接触を検出した場合、車載制御部11は、ドアロック装置14の作動を実行する。一方、車載制御部11は、電子キー20からのワイヤレス信号の受信を通じて、当該電子キー20が自身に対応するものと判断した場合には、ドアロック装置14の作動を実行する。
【0026】
また、車載制御部11には、タイマ11bが設けられている。車載制御部11は、ドアハンドルセンサ15への所定の閾値回数、ここでは、一定時間に3回の接触を連続して検出する間に、スマート通信による無線信号の授受が成立しない場合にタイマ11bを起動させる。車載制御部11は、タイマ11bの起動に合わせて、切替部18を通じてUHF受信部13を待機状態に切り替える。車載制御部11は、タイマ11bが動作している間は、UHF受信部13を待機状態に維持する。なお、タイマ11bの起動時間は、ユーザが電子キー20の操作を通じてワイヤレス通信による解錠を行うために必要とされる時間を考慮して設定される。本例では、30秒とされている。
【0027】
<電子キーの構成>
電子キー20は、CPU等からなるコンピュータユニットによって構成された電子キー制御部21を備える。この電子キー制御部21には、LF帯の無線信号を受信するLF受信部22と、UHF帯の無線信号を送信するUHF送信部23とが電気的に接続されている。
【0028】
LF受信部22は、車両10から送信されるLF帯の無線信号である要求信号を受信すると、この要求信号をパルス信号に復調し、この復調された信号を電子キー制御部21へ出力する。
【0029】
電子キー制御部21は、不揮発性のメモリ21aを備え、同メモリ11aには電子キー20に固有のIDコードが記憶されている。電子キー制御部21は、LF受信部22により復調された要求信号を認識すると、メモリ21aに記憶されたIDコードを含む応答信号をUHF送信部23へ出力する。UHF送信部23は、応答信号を変調し、この変調した応答信号をUHF帯の無線信号として送信する。
【0030】
また、電子キー20は、ロックスイッチ24とアンロックスイッチ25とを備える。これらスイッチ24,25は、電子キー制御部21に電気的に接続されている。電子キー制御部21は、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25が操作されて、その旨示す電気信号が入力されると、メモリ21aに記憶されたIDコードと、車両ドアの施錠又は解錠する旨示す動作内容とを含むワイヤレス信号を生成し、この信号をUHF送信部23へ出力する。UHF送信部23は、ワイヤレス信号を変調するとともに、この変調したワイヤレス信号をUHF帯の無線信号として送信する。ワイヤレス信号は、4つのフレームにより構成されている。各フレームは、IDコードと、車両ドアの施錠又は解錠する旨示す動作内容とを含んでいる。
【0031】
さらに、電子キー20は、電源ユニット26、及びソーラーパネル27を備える。電源ユニット26は、交換可能とされた電池(一次電池)26aと、充放電が可能とされたコンデンサ26bとを備えている。電源ユニット26は、電池26a又はコンデンサ26bの電力を電子キー制御部21等の電子キー20の各部に供給する。電子キー制御部21は、電源ユニット26から供給される電力を消費して作動する。なお、電子キー制御部21は、電池26aの電圧を監視する。当該監視を通じて、電子キー制御部21は、電池26aの消耗を判断する。電池26aが消耗していないと判断される場合、電子キー制御部21は、自身への電力供給を電池26aから行う。電池26aが消耗していると判断される場合、電子キー制御部21は、自身への電力供給をコンデンサ26bから行う。ここでは、電池26aが消耗しているかどうかの判断基準である電力閾値は、電池26aの電圧が、車両10への応答信号を送信できなくなる電圧とされている。
【0032】
コンデンサ26bには、ソーラーパネル27が接続されている。ソーラーパネル27は、電子キー20のケースの外面に設けられている。ソーラーパネル27は、太陽光などの光が照射されると、その光エネルギーを利用して発電する。発電された電力は、コンデンサ26bに蓄えられる。なお、コンデンサ26bに蓄えられる電力量は、後述するワイヤレス信号のフレームが1つだけ生成できる電力量とされている。このため、ソーラーパネル27に太陽光を照射すれば、数秒でコンデンサ26bへの充電が完了する。
【0033】
電子キー20は、LF受信部22の状態を、無線信号の受信が可能とされた待機状態と、受信が不能とされた非待機状態との間で切り替える切替部28を備えている。この切替部28は、電子キー制御部21と電気的に接続されている。電子キー制御部21は、自身への電力供給が、電池26aから行われている場合には、切替部28を通じてLF受信部22の状態を待機状態に切り替える。一方、自身への電力供給が、コンデンサ26bから行われている場合には、切替部28を通じてLF受信部22の状態を非待機状態に切り替える。
【0034】
また、電子キー制御部21は、自身への電力供給が、電池26aから行われている場合には、4つのフレームが連続するワイヤレス信号を生成する。一方、自身への電力供給が、コンデンサ26bから行われている場合には、1つのフレームからなるワイヤレス信号を生成する。
【0035】
<電子キーシステムの動作>
さて、通常、電子キーシステム1のユーザは、ドアロック装置14を作動させるときに、電子キー20を取り出して操作する必要があるワイヤレス通信機能よりも、電子キー20を操作する必要のないスマート通信機能を利用することが多い。このため、通常、電子キー20は、ユーザが着ている衣服のポケットや、ハンドバックに収容された状態にある。この状態で、ユーザが車両10に近づくことにより、車両10と電子キー20との間でスマート通信が自動的に行われる。そして、ユーザが車両10のドアハンドルに設けられたドアハンドルセンサ15に触れることにより、ドアロック装置14が作動する。通常、ユーザは、このようにして、車両ドアの施解錠を行う。
【0036】
しかし、電子キー20の近傍に金属(例えば、鍵や鏡など)がある場合、スマート通信を行う無線信号が、金属により反射される等して、当該無線信号の授受が好適に行われないことがある。ユーザは、ドアハンドルセンサ15に触れてもドアロック装置14が作動しない場合には、無線信号の授受が好適に行われないことを疑って、自身の立ち位置を変えたり、電子キー20を収容するハンドバックの位置を変えたりして、無線信号の授受の障害を回避しようとする。そして、再度、ドアハンドルセンサ15に触れる。このように行動して、先の障害が回避された場合には、スマート通信が好適に行われ、ドアロック装置14が作動する。スマート通信が好適に行われない、すなわち、ドアロック装置14が作動しない場合には、多くのユーザは、前述した障害を回避するための行動を数回繰り返す。
【0037】
このように行動しても、スマート通信が好適に行われない場合、多くのユーザは、自身の立ち位置やハンドバックの位置を変えることでは、無線信号の授受の障害を回避できないと考え、スマート通信によるドアロック装置14の作動をあきらめ、ワイヤレス通信によるドアロック装置14の作動を試みる。すなわち、電子キー20を取り出して、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25を操作する。
【0038】
次に、電子キー20の電池切れの場合について説明する。電子キー制御部21は、電池26aの電圧の監視を通じて当該電池26aが消耗したと判断した場合、切替部28を通じてLF受信部22の状態を非待機状態に切り替える。こうして、電子キー制御部21は、車両10からの要求信号の受信を行わない。このため、無線信号の受信に係る電力の分だけ、コンデンサ26bの電力の消費を抑制することができる。
【0039】
通常、無線信号の授受の障害は、先に説明した金属等に起因する場合の方が、電池26aの電池切れに起因する場合よりも多い。そのため、多くのユーザは、スマート通信によるドアロック装置14の作動を試みる場合、無線信号の授受の障害が電池26aの電池切れによるものであっても、金属等に起因する場合と同様の行動をとる。すなわち、ユーザは、自身の立ち位置やハンドバックの位置を変えてドアハンドルセンサ15に数回触れてから、電子キー20を取り出しワイヤレス通信によるドアロック装置14の作動を試みることになる。
【0040】
そこで、車載制御部11は、図2に示すように、ドアハンドルセンサ15を介してユーザのドアハンドルへの接触を3回連続で検出した場合には、タイマ11bを作動させる。タイマ11bの作動時間は30秒である。この時間は、ユーザが電子キー20を自身のポケットやハンドバック等から取り出して、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25を操作するのに十分な時間である。そして、このタイマ11bが作動している間は、切替部18を通じてUHF受信部13の状態を待機状態に維持する。これにより、車載制御部11は、UHF受信部13を通じて電子キー20からのワイヤレス信号を常時受け付ける。
【0041】
電子キー制御部21は、電池26aが電池切れした状態において、ロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25の操作を検出した場合、コンデンサ26bの電力を消費してワイヤレス信号を生成する。コンデンサ26bに蓄えることのできる電力量は、ワイヤレス信号の1つのフレーム分であるので、このとき生成されるワイヤレス信号は、1つのフレームにて構成される。
【0042】
1つのフレームで構成されたワイヤレス信号は、UHF送信部23を介して車両10に送信される。このとき、車載制御部11のタイマ11bは作動中である。すなわち、車載制御部11は、UHF受信部13を通じて電子キー20からのワイヤレス信号を常時受け付ける。このため、車載制御部11は、ワイヤレス信号を構成するフレームが1つであっても好適に受信することができる。そして、ワイヤレス信号が自身と対応する電子キー20からのものである場合には、ドアロック装置14を作動させて、車両ドアの施解錠を切り替える。
【0043】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)電子キー20に駆動電力を供給する電源ユニット26を、交換可能とされた電池26aと充電可能とされたコンデンサ26bとにより構成した。そして、電子キー20は、電池26aが切れたときに、車両10からの要求信号の受信を停止するようにした。これにより、スマート通信の利用が抑制されるので、これ以降、電子キー20の電源電力(コンデンサ26bに蓄電されている電力)の消費スピードを抑制することができる。一方で、ユーザがドアハンドルセンサ15を3回以上操作すると、車載制御部11のタイマ11bが起動する。このタイマ11bの起動中、車載制御部11は電子キー20からのワイヤレス信号を常時受信することができる。このため、ユーザは、電子キー20のロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25を操作すれば、ワイヤレス信号を利用して車両10のドアロック装置14を作動させることができる。
【0044】
(2)電子キー制御部21は、電池26aが切れた状態でロックスイッチ24又はアンロックスイッチ25が操作された場合、コンデンサ26bに蓄電された電力を消費してワイヤレス信号を生成する。この場合、そのワイヤレス信号は、IDコード及び車両ドアの施錠又は解錠する旨示す動作内容を含む1つのフレームで構成する。このようにすれば、2つ以上のフレームでワイヤレス信号を構成する場合に比べてコンデンサ26bの電力消費を抑制することができる。
【0045】
(3)コンデンサ26bの蓄電容量は、1つのフレームを送信するのに必要とされる量とした。このため、コンデンサ26bの蓄電容量を2つ、又はそれ以上のフレームの送信に要する量とする場合に比べて、充電が完了するまでにかかる時間が短い。従って、電源ユニット26の電力がゼロに近似する場合であっても、短時間でワイヤレス通信を利用することが可能となる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、コンデンサ26b以外の蓄電手段を採用してもよい。例えば、2次電池等がある。これらを採用した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
・上記実施形態において、ソーラーパネル以外の発電手段を採用してもよい。例えば、圧電素子を利用するもの、あるいは磁石とコイルとを利用した電磁誘導等がある。これらを採用した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
・上記実施形態において、電源ユニット26は、一次電池26aのみ、又はコンデンサ26bのみ、あるいは二次電池等の蓄電手段のみで構成されてもよい。コンデンサ26b、蓄電手段の蓄電容量は、4つのフレームからなるワイヤレス信号を生成することができる量以上の量とする。この場合、一次電池26a等に残る電力量が4つのフレームからなるワイヤレス信号を生成できる量を下回るとき、電子キー制御部21は、車両10からの要求信号の受信を停止する。すればよい。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
・上記実施形態において、電子キー制御部21は、電池26aが切れたときに生成するワイヤレス信号を、2つ以上のフレームで構成するようにしてもよい。この場合、コンデンサ26bの蓄電容量は、少なくとも2つ以上のフレームで構成されるワイヤレス信号を1回以上生成できる量とする。このように構成しても、上記実施形態の(1)に示す効果を得ることができる。
【0050】
・上記実施形態において、車載制御部11は、ドアハンドルセンサ15が3回連続してタッチされた場合に、タイマ11bを起動させたが、この回数は、任意に変更可能である。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この回数は、多くのユーザがドアロック装置の解錠又は施錠時にドアハンドルセンサ15に接触する回数、すなわち、数回程度に設定することが望ましい。
【0051】
・上記実施形態において、タイマ11bの作動時間は、30秒とされたが、この時間は、任意に変更可能である。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この時間は、多くのユーザがスマート通信を試みた後に、電子キー20を取り出し、ワイヤレス通信を試みるのに要する時間に設定することが望ましい。一方で、タイマ11bを長時間、例えば、数10分以上に設定することは、バッテリの電力消費を増加させるため好ましくない。従って、この時間は、数10秒から数分程度に設定することが望ましい。
【0052】
・上記実施形態において、電子キー20は、車両10と通信するものに限らない。例えば、住宅等と通信するものであってもよい。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…電子キーシステム、10…車両、11…車載制御部、11a…メモリ、11b…タイマ、12…LF送信部、13…UHF受信部、14…電気機器としてのドアロック装置、15…ドアハンドルセンサ、16…バッテリ、18…切替部、20…電子キー、21…電子キー制御部、21a…メモリ、22…LF受信部、23…UHF送信部、24…スイッチ、24…ロックスイッチ、25…スイッチ、25…アンロックスイッチ、26…電源ユニット、26a…電池(一次電池)、26b…コンデンサ、27…ソーラーパネル、28…切替部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより所持される電子キーは、通信マスタから送信される要求信号を受信すると、内蔵された電源の電力を消費してこの前記要求信号に対する応答信号を送信し、前記通信マスタは受信した前記応答信号の照合を行い、この照合が成立した状態で、自身に設けられる第1のスイッチが操作された場合に、同じく自身に搭載された電気機器を作動させる第1の通信機能と、前記電子キーは、自身が操作されたことをトリガとしてワイヤレス信号を送信し、前記通信マスタは、間欠的に受信待機状態となる受信機を介して受信される前記ワイヤレス信号の照合を行い、この照合が成立する場合には、前記電気機器を作動させる第2の通信機能と、を備えた電子キーシステムにおいて、
前記通信マスタは、前記第1の通信機能により前記電気機器の作動が試みられたとき、前記電源が消耗しているとして、前記第1の通信機能を停止させるかどうかを判定する基準となる閾値回数だけ前記第1のスイッチが操作されても前記電気機器が作動しない場合に、ユーザが前記電子キーを操作するのに十分な時間だけ作動するタイマを備え、そのタイマが作動している間は、前記受信機を連続的に受信待機状態とする電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電子キーは、前記電源の電力量が前記第1の通信機能を停止させるかどうかを判定する基準となる電力閾値を下回る状態で操作された場合は、前記通信マスタにおいて照合に必要な最小単位の情報で前記ワイヤレス信号を構成する電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電源は、交換可能とされた一次電池と、充電可能とされた蓄電手段とを備え、
前記電子キーは、発電手段を備え、同発電手段によって発電される電気を前記蓄電手段へ充電する電子キーシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電力閾値は、前記一次電池の電力を消費して前記第1の通信機能が利用できない量とすることを特徴とする電子キーシステム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電子キーシステムにおいて、
前記蓄電手段は、前記通信マスタにおいて照合に必要な最小単位の情報で構成される前記ワイヤレス信号を送信するのに必要な分だけ充電可能とされる電子キーシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電子キーは、前記電源の電力量が前記第1の通信機能を停止させるかどうかを判定する基準となる電力閾値を下回る場合には、前記要求信号の受信を停止する電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−36283(P2013−36283A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175199(P2011−175199)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】