説明

電子内視鏡システム

【課題】 映像の解像感を良好に向上させつつも、飽和部分において輪郭強調により副次的に発生し得るノイズを低減させる。
【解決手段】 管腔を撮像可能な撮像素子を有した電子内視鏡と、撮像素子の各画素の出力信号に所定の処理を施す信号処理手段と、該所定の処理が施された処理後信号が飽和しているか否かを判定する飽和判定手段と、判定結果に基づいて該処理後信号に対する輪郭強調の度合いを設定する輪郭強調設定手段と、設定された度合いで該処理後信号に輪郭強調処理を施す輪郭強調処理手段とを備えた電子内視鏡システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、その先端部に低画素CCDを搭載した電子内視鏡を備えた電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
その先端部に撮像素子を備えた電子内視鏡と、該撮像素子から出力される信号を処理してモニタに出力するプロセッサとを備えた電子内視鏡システムが広く知られ実用に供されている。
【0003】
電子内視鏡は例えば患者の管腔内に挿入されて用いられる。電子内視鏡による管腔の圧迫を軽減させて患者に対する負担を軽減させるため、電子内視鏡をできる限り細径化させることが恒常的に要求されている。電子内視鏡を細径化させるための方法の一つとして、例えば先端に設置されるべき撮像素子に低画素CCD(Charge Coupled Devices)を採用することが挙げられる。低画素CCD(例えば30万画素以下のCCDとする)は高画素CCDと比較してそのサイズ(受光面の面積)が小さい。このため、電子内視鏡を細径化させる要因となり得る。例えば下記特許文献1には低画素CCDを搭載した電子内視鏡が記載されている。
【0004】
電子内視鏡システムには、観察対象である管腔を照明するための光源が備えられている。ここで、光源からの照明光が強く当てられている部分は非常に明るい。従ってその部分からの反射光量は非常に多く、これを受光した画素(CCDの受光面上に配列された受光素子)の出力電圧は飽和し得る。このため、光源からの照明光が強く当てられている部分はモニタ上で白く表示され得る。
【特許文献1】特開2002−112958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に体腔内の生体組織は単調でのっぺりとした色合いである。電子内視鏡システムを用いて例えば胃を撮影した場合、ピンクや赤み掛かった胃液が平面的で変化に乏しい映像としてモニタ上に表示される。特に低画素CCDは解像度が低いため、これにより撮影された映像は低コントラストになりがちである。従って観察対象がモニタ上でぼけて表示され得る。
【0006】
観察対象が低コントラストとなることを改善するため、撮像で得られた信号に対して輪郭強調処理を施すことが一般に行われている。これにより、例えば輝度差の大きな境界部分(輪郭)のコントラストが強調されて、見掛け上ぼけが軽減される。すなわち解像感が向上する。
【0007】
しかし、輪郭強調を映像に過度に掛けると解像感向上のトレードオフとしてノイズも強調されてしまう。また、例えば飽和部分(モニタ上で白く表示されている部分)において僅かな濃淡やランダムノイズ或いは色味のある部分との境界が強調されて、不自然な模様や縁(すなわちノイズ)としてモニタ上に表示されてしまうことがある。このような模様や縁は、観察対象に対する視認性や観察対象の再現性を低下させる要因となり得る。このような観点からすると、輪郭強調による補正度合いを好適に抑えることが望ましい。なお、上記濃淡は、単一のCCDにおける各画素の感度特性のばらつきに起因して現れるものである。
【0008】
しかしながら一方では、輪郭強調による補正度合いを抑えてしまうと例えば胃液等の低コントラストの被写体の解像感があまり向上せず、輪郭強調処理を施すメリットが薄れると言える。
【0009】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みて、映像の解像感を良好に向上させつつも、飽和部分において輪郭強調により副次的に発生し得るノイズを低減させることができる電子内視鏡システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係る電子内視鏡システムは、管腔を撮像可能な撮像素子を有した電子内視鏡と、撮像素子の各画素の出力信号に所定の処理を施す信号処理手段と、該所定の処理が施された処理後信号が飽和しているか否かを判定する飽和判定手段と、判定結果に基づいて該処理後信号に対する輪郭強調の度合いを設定する輪郭強調設定手段と、設定された度合いで該処理後信号に輪郭強調処理を施す輪郭強調処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
上記電子内視鏡システムにおいて輪郭強調設定手段が、飽和判定手段により飽和したと判定された処理後信号に対する輪郭強調の度合いを、飽和していないと判定された処理後信号よりも低く設定するようにしても良い。
【0012】
上記電子内視鏡システムにおいて輪郭強調設定手段が、飽和判定手段により飽和したと判定された処理後信号に対して輪郭強調を施さないよう設定するようにしても良い。
【0013】
上記電子内視鏡システムは、隣接画素間における処理後信号の出力値の差を検出する差分検出手段と、検出された差が所定の範囲内か否かを判定する輝度差判定手段とを更に備えたものであっても良い。この場合において輝度差判定手段により所定の範囲内と判定されたとき、輪郭強調設定手段が、隣接画素に対する輪郭強調の度合いを、該差が該所定の範囲に収まらないと判定された画素よりも高く設定するようにしても良い。
【0014】
上記電子内視鏡システムにおいて輪郭強調設定手段は、飽和判定手段の判定結果が処理後信号の飽和を表すものであるとき、その判定結果を輝度差判定手段の判定結果よりも優先させて輪郭強調の度合いを設定するようにしても良い。
【0015】
上記電子内視鏡システムにおいて飽和判定手段は、検出された輝度信号の値が白レベルを示す値以上であるとき、その画素が飽和していると判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子内視鏡システムを採用すると、映像の解像感を良好に向上させつつも、飽和部分において輪郭強調により副次的に発生し得るノイズを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本実施形態の電子内視鏡システムの構成及び作用について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の電子内視鏡システム10の外観を概略的に示した図である。また、図2は、本発明の実施の形態の電子内視鏡システム10の構成を示したブロック図である。本実施形態の電子内視鏡システム10は、患者の管腔を観察・診断するためのシステムであり、電子内視鏡100、プロセッサ200、及び、モニタ300を有している。
【0019】
本実施形態の電子内視鏡100の末端部にはコネクタユニット110が設けられている。コネクタユニット110は二本のピンプラグを有している。また、プロセッサ200のフロント面にはプロセッサ側コネクタ部210が設けられている。プロセッサ側コネクタ部210は二つのジャックを有している。各対のピンプラグ−ジャックはそれぞれ光学的接続と電気的接続を果たすためのものである。従ってコネクタユニット110とプロセッサ側コネクタ部210とが接続されることにより、電子内視鏡100とプロセッサ200とが光学的且つ電気的に接続される。
【0020】
コネクタユニット110にはユニバーサルコード120の一端が結合している。ユニバーサルコード120は可撓性を有しており、もう一端が操作部130に結合している。
【0021】
操作部130は電子内視鏡100を術者に操作させるための入力インターフェースである。操作部130を操作することにより、例えば観察領域を変更させたり管腔内に洗浄液を噴射させたりすることができる。操作部130には挿入部可撓管140の一端が結合している。
【0022】
挿入部可撓管140は患者の管腔に挿入される管であり、可撓性を有している。その先端には先端部150が設けられている。操作部130の操作によって先端部150根元付近の挿入部可撓管140が屈曲されると先端部150のアングルが変化し、それに伴って観察領域も変更される。
【0023】
先端部150は硬質性の素材(例えば樹脂)で形成されており、撮像処理に必要とされる各要素が設けられている。本実施形態における上記要素は、配光レンズ152、対物レンズ154、及び、CCD156である。配光レンズ152、及び、対物レンズ154は先端部150の前面に設置されたレンズである。CCD156は例えばベイヤー方式の低画素(例えば画素数が30万以下)のカラーCCDである。受光面には多数の画素(受光素子)がマトリクス状に配列されている。受光面前面にはオンチップカラーフィルタが搭載されている。カラーフィルタは、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の何れかのカラーチップが各画素に対応してマトリクス状に配列されたものである。なお、ここで用いられるCCD156は原色フィルタを搭載したものに限定されず、例えば補色フィルタを搭載したものであっても良い。
【0024】
なお、電子内視鏡100内部にはその長手方向に沿ってライトガイド160が設置されている。ライトガイド160は光ファイバであり、その一端は光学的接続を果たすためのピンプラグ近傍(コネクタユニット110内部)に配置され、もう一端は配光レンズ152近傍に配置されている。また、コネクタユニット110内部には、CCD156を駆動制御するためのCCD駆動制御回路170、及び、CCD信号(後述)を所定の増幅率で増幅するアンプ172が実装されている。
【0025】
プロセッサ200は、装置全体の制御を統括的に行うシステムコントロールユニット220を有している。システムコントロールユニット220の制御下で、各構成要素での処理が実行される。また、光源装置として、ランプ230、ランプ制御回路232、及び、集光レンズ234を有している。
【0026】
ランプ230は管腔内を照射するための白色光の光源である。ランプ230には例えばメタルハライドランプや、キセノンランプ、ハロゲンランプ等が想定される。ランプ230はランプ制御回路232の制御により白色光を放射する。ランプ230からの放射光は、ランプ230の前方に設置された集光レンズ234によって集光される。集光された光は、プロセッサ側コネクタ部210を介して電子内視鏡100内部(より正確にはライトガイド160のコア)に入射する。
【0027】
ライトガイド160に入射した光はその内部を伝送されて、先端部150側の端部から出射する。出射後、配光レンズ152を介して外部に放射されて管腔を照明する。これにより、外部から光の届かない管腔内が明るく照らされる。
【0028】
配光レンズ152から放射された照明光は、管腔において反射されて対物レンズ154に入射する。ここで、CCD156は、その受光面が対物レンズ154の結像面と実質的に同位置となるように配置されている。従って対物レンズ154に入射した光は、対物レンズ154のパワーによりCCD156の受光面上で管腔の光学像として結像される。CCD156はCCD駆動制御回路170の制御により駆動して、各画素において結像された光学像をその光量に応じた電荷として蓄積してCCD信号に変換する。変換されたCCD信号は、CCD駆動制御回路170の制御により、CCD156から所定のタイミングで出力される。出力後、アンプ172により所定の増幅率で増幅されてプロセッサ200に出力される。なお、プロセッサ200には各画素のCCD信号が所定の順序で出力される。
【0029】
アンプ172の増幅率について説明する。アンプ172の増幅率は、再現性の高い映像が得られるレベルにCCD信号を増幅させるよう設定される。ここで、画素における入射光量と出力電圧値との関係には、リニアな状態となる線形領域と飽和状態となる飽和領域とが存在する。高い再現性で映像を表示させるためには、入射光量と出力電圧値とが線形領域内のCCD信号を用いることが望ましい(換言すると、飽和領域内のCCD信号を用いないことが望ましい)。なお、上記線形領域と上記飽和領域との境界に対応した電圧値を、「出力飽和電圧値」と記す。
【0030】
各画素における出力飽和電圧値は、画素毎の感度特性のばらつきに起因してそれぞれ異なる。ここでいう感度特性とは、入射光量に対する出力電圧値の比で表される。出力飽和電圧値が最も低い画素に合わせてアンプ172の増幅率を設定すると、全ての画素において、CCD信号の出力電圧値が線形領域内に収まる。アンプ172の増幅率は、最も低い出力飽和電圧値を所定範囲の上限値(白レベル)にさせる値に設定される。なお、出力電圧値が所定範囲の上限値であるとき、その部分はモニタ300上で白く表示される。また、出力電圧値が所定範囲の下限値(黒レベル)であるとき、その部分はモニタ300上で黒く表示される。
【0031】
次に、プロセッサ200で実行される信号処理について説明する。プロセッサ200は、CCD信号の処理に関わる手段として、絶縁回路240、CCD信号処理回路242、飽和レベル検出回路244、比較回路246、輪郭強調制御回路248、輪郭強調回路250、ラインメモリ252、ビデオ信号処理回路254、及び、出力回路256を有している。
【0032】
電子内視鏡100から出力された各画素のCCD信号は、プロセッサ側コネクタ部210及び絶縁回路240を介してCCD信号処理回路242に入力する。なお、絶縁回路240は、電子内視鏡100とプロセッサ200との間を伝送する信号を、例えばフォトカップラ等で別の媒体(ここでは光)に一時的に変換することにより、電子内視鏡100とプロセッサ200とを電気的に絶縁させている。
【0033】
CCD信号処理回路242は周知の信号処理を実行し、入力される各画素のCCD信号を一つ一つ順次演算して、色成分(R成分、G成分、B成分の何れか)に関する信号(以下、「色成分信号」と記す)、及び、輝度信号を生成する。なお、CCD信号処理回路242で生成された色成分信号、及び、それに対応した輝度信号のセットを「画像信号」と記す。CCD信号処理回路242は、一画素に対応した画像信号を生成する毎に、当該画像信号をラインメモリ252に出力すると共に、それに対応した輝度信号の電圧値を示す情報(以下、「輝度値情報」と記す)を算出して飽和レベル検出回路244、及び、比較回路246に出力する。従って飽和レベル検出回路244及び比較回路246には、各画素に対応した輝度値情報がシリアルで入力される。
【0034】
飽和レベル検出回路244は、シリアルで入力される輝度値情報を、順次、所定の閾値と比較してその結果を輪郭強調制御回路248に出力する。なお、所定の閾値とは上記所定範囲の上限値すなわち白レベルに対応した値である。
【0035】
輪郭強調制御回路248は、飽和レベル検出回路244からの比較結果に基づいて画素(より正確には輝度信号)の飽和判定処理を実行する。具体的には、比較結果において輝度値情報が所定の閾値以上を表す場合、それに対応した輝度信号が飽和していると判定する。これに対して、比較結果において輝度値情報が所定の閾値よりも低いことを表す場合、それに対応した輝度信号が飽和していないと判定する。前者の判定結果を下した場合、輪郭強調回路250に第一の制御信号を出力する。後者の判定結果を下した場合、後述の第二又は第三の制御信号の何れか一方を出力する。
【0036】
比較回路246は、例えば一ライン分の画素に対応した輝度値情報を格納可能なメモリ領域を有している。メモリ領域は例えば複数のセクタから成る。各セクタは一つの輝度値情報を格納できるよう構成されている。比較回路246は、シリアルで入力される輝度値情報を各セクタに一時的に格納する。次いで、シリアルな二つの輝度値情報(一の画素に対応する輝度値情報と、それに隣接した画素に対応する輝度値情報)の差分(すなわちこれら二画素間における輝度信号の出力値の差)を、順次、差分に関わる所定の範囲(以下、「所定の差分範囲」と記す)と比較してその結果を輪郭強調制御回路248に出力する。
【0037】
輪郭強調制御回路248は比較回路246からの比較結果に基づいて、隣接画素間において輝度信号の出力値の差が所定の差分範囲内であるか否かを判定する。上記差が所定の差分範囲に収まらない場合、それらの画素間のコントラストが比較的高いことを示す。これに対して上記差が所定の差分範囲内である場合、それらの画素間のコントラストが低いことを示す。前者の場合、輪郭強調制御回路248は輪郭強調回路250に第二の制御信号を出力する。これに対して後者の場合には第三の制御信号を出力する。
【0038】
なお、輪郭強調制御回路248は、飽和レベル検出回路244からの比較結果に基づいて画素が飽和していると判定したとき、当該画素に関してはその判定結果を最優先させる。すなわち輪郭強調制御回路248は、上記判定結果を得た場合には比較回路246からの比較結果に拘わらず第一の制御信号を輪郭強調回路250に出力する。
【0039】
ラインメモリ252は、例えば一ライン分の画素に対応する画像信号を格納することができる。CCD信号処理回路242からの各画像信号を一ライン分格納したとき、それらの画像信号を、格納した順に一つ一つビデオ信号処理回路254に出力する。また、画像信号を一つ一つ出力する度に、ラインメモリ252にはCCD信号処理回路242からの新たな画像信号が入力される。上記新たな画像信号は、出力された画像信号を格納していたメモリ領域に上書きで保存される。
【0040】
ここで、上述したように輪郭強調回路250には、例えば一ライン分の画素の画像信号の各々に対応して、第一の制御信号、第二の制御信号、又は、第三の制御信号の何れかが入力される。各制御信号は、輪郭強調回路250が各画像信号に対して施すべき輪郭強調の度合いを設定するための信号である。輪郭強調回路250は各制御信号に基づいて、ラインメモリ252からビデオ信号処理回路254に入力された各画像信号に対して輪郭強調を施す。
【0041】
なお、プロセッサ200は、ビデオ信号処理回路254において、ラインメモリ252からの画像信号の入力タイミングと、当該画像信号に対応した、輪郭強調回路250からの制御信号の入力タイミングとが同期するよう設計されている。
【0042】
第一の制御信号は、輪郭強調の度合いを基準の設定値よりも低くするための信号である。輪郭強調回路250は第一の制御信号に応答して、飽和したと判定された画素の画像信号に対して基準よりも弱めの輪郭強調を施す。
【0043】
第二の制御信号は、輪郭強調の度合いを基準の設定値にするための信号である。輪郭強調回路250は第二の制御信号に応答して、隣接画素とのコントラストが比較的高い画素の画像信号に対して基準の強度の輪郭強調を施す。
【0044】
第三の制御信号は、輪郭強調の度合いを基準の設定値よりも高くするための信号である。輪郭強調回路250は第三の制御信号に応答して、隣接画素とのコントラストが比較的低い画素の画像信号に対して基準よりも強めの輪郭強調を施す。
【0045】
ビデオ信号処理回路254は、上記何れかの制御信号に応じて画像信号に輪郭強調処理を施した後、モニタ300で表示可能な形態(カラー信号と輝度信号)に変換する。変換後、カラー信号及び輝度信号を出力回路254に出力する。
【0046】
出力回路256は、カラー信号及び輝度信号を各形式のビデオ信号(例えばコンポジットビデオ信号やSビデオ信号或いはRGBビデオ信号等)に変換してモニタ300に出力する。これにより、モニタ300に管腔の映像が表示される。
【0047】
本実施形態では、上述したように、飽和したと判定された画素の画像信号に対して基準よりも弱めの輪郭強調を施している。このため、例えば飽和部分において僅かな濃淡やランダムノイズ或いは色味のある部分との境界が無駄に強調されて顕著なノイズ(不自然な模様や縁)となることが防止される。従って輪郭強調のトレードオフとして懸念されていた、観察対象に対する視認性や再現性の低下が好適に抑えられる。飽和部分は一般に所望の観察部位でないため、輪郭強調の必要性が低い。従って本実施形態の如く、飽和部分の輪郭強調を弱めてノイズを抑えることは極めて有益であると言える。
【0048】
また、本実施形態では、上述したように、隣接画素とのコントラストが比較的低い画素の画像信号に対して基準よりも強めの輪郭強調を施している。例えば観察対象が胃である場合、低コントラストであり得る胃液が良好に輪郭強調されて、解像感の向上した映像としてモニタ上に表示される。上述したように体腔内の観察対象は一般に単調でのっぺりとした色合いであるため、そのような部分に対して強めの輪郭強調を施すことは極めて有益であると言える。
【0049】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。例えば別の実施形態では、第一の制御信号が輪郭強調処理を禁止させるための信号であっても良い。この場合、輪郭強調回路250は第一の制御信号に応答して、飽和したと判定された画素の画像信号に対して輪郭強調を施さない。
【0050】
また、本実施形態では画素の一つ一つに対して輪郭強調の度合いを設定しているが、別の実施形態では複数の画素に対して上記処理が一括して実行されるようにしても良い。この場合、所定の差分範囲を判定用のパラメータとした判定処理が各画素に対してシリアルで実行されて、その結果が比較回路246のメモリ領域に記憶される。システムコントロールユニット220はそのメモリ領域を参照して、上記判定結果で所定の差分範囲内と判定された画素が所定数以上連続した場合、基準よりも強めの輪郭強調処理をそれらの画素に対して一括して施す。別の観点では、所定の差分範囲内と判定された画素が所定数以上連続しない場合、基準の強度の輪郭強調処理をそれらの画素(所定の差分範囲外と判定された、連続した画素)に対して一括して施す。すなわち別の実施形態では、モニタ300上における低コントラスト部分がある程度の大きさを有していない限り、輪郭強調を強めに施さない。これにより、本発明における輪郭強調の設定変更の頻度が好適に抑えられて、その制御系の処理負担が軽減される。なお、ここでいうある程度の大きさとは、モニタ300上において例えば術者が観察対象の性状を認識できる程度の大きさである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態の電子内視鏡システムの外観を概略的に示した図である。
【図2】本発明の実施の形態の電子内視鏡システムの構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
10 電子内視鏡システム
100 電子内視鏡
154 CCD
200 プロセッサ
220 システムコントロールユニット
244 飽和レベル検出回路
246 比較回路
248 輪郭強調制御回路
250 輪郭強調回路
252 ラインメモリ
254 ビデオ信号処理回路
300 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔を撮像可能な撮像素子を有した電子内視鏡と、
前記撮像素子の各画素の出力信号に所定の処理を施す信号処理手段と、
該所定の処理が施された処理後信号が飽和しているか否かを判定する飽和判定手段と、
判定結果に基づいて該処理後信号に対する輪郭強調の度合いを設定する輪郭強調設定手段と、
設定された度合いで該処理後信号に輪郭強調処理を施す輪郭強調処理手段と、を備えたこと、を特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記輪郭強調設定手段は、前記飽和判定手段により飽和したと判定された処理後信号に対する輪郭強調の度合いを、飽和していないと判定された処理後信号よりも低く設定すること、を特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記輪郭強調設定手段は、前記飽和判定手段により飽和したと判定された処理後信号に対して輪郭強調を施さないよう設定すること、を特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
隣接画素間における処理後信号の出力値の差を検出する差分検出手段と、
検出された差が所定の範囲内か否かを判定する輝度差判定手段と、を更に備え、
前記輝度差判定手段により所定の範囲内と判定されたとき、前記輪郭強調設定手段は、前記隣接画素に対する輪郭強調の度合いを、該差が該所定の範囲に収まらないと判定された画素よりも高く設定すること、を特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記輪郭強調設定手段は、前記飽和判定手段の判定結果が処理後信号の飽和を表すものであるとき、その判定結果を前記輝度差判定手段の判定結果よりも優先させて輪郭強調の度合いを設定すること、を特徴とする請求項4に記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記飽和判定手段は、検出された輝度信号の値が白レベルを示す値以上であるとき、その画素が飽和していると判定すること、を特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−117154(P2007−117154A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309473(P2005−309473)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】