説明

電池システム

【課題】効率的に長時間駆動することが可能な電池システムを提供する。
【解決手段】電力配線と、電池セルと、電池セルから直流電力を受けて交流電力に変換し且つ交流電力を電力配線に出力するインバータとを備えた複数の実質的に同一のインバータユニットと、複数のインバータユニットを制御する制御装置とを有し、制御装置は、各々の電池セルの劣化情報をそれぞれ演算し、電力配線へ供給する電力量及び劣化情報に応じて駆動対象外とするインバータユニットを複数のインバータユニットの中から決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力を出力する複数のインバータを備えた電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源(太陽電池、電池セル等)からの電力を交流に変換して交流電力負荷(電力系統を含む)へ供給するには、直流を交流に変換するインバータが使用される。そして、交流電力負荷へ供給する電力量に幅がある場合や直流電源が不安定な場合には、1つのインバータのみで交流電力負荷へ電力を供給するのではなく、複数のインバータが接続された同一の電力配線を介してシステム全体として効率良く交流電力負荷へ電力を供給する構成が用いられる(特許文献1及至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−173388号公報
【特許文献2】特開平5−313767号公報
【特許文献3】特開2001−190026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成のように複数のインバータの各々に直流電源としての電池セルがそれぞれ別個に接続された電池システムの場合、単に各インバータの直流電力から交流電力へ変換する変換効率を電池システム全体として総合的に良くする観点のみでインバータの台数等の制御がなされると、交流電力負荷への交流電力の供給が長時間継続できず、このため電池システムの動作に支障をきたす恐れがある。この理由は、電池セルの劣化が進むと内部抵抗が上昇して蓄えられる電荷の量に差が生じることが知られており、駆動されるインバータに接続された電池セルの劣化が大きい場合にはその電池セルに蓄えられている電荷の量が少ないため短時間で当該電池セルから電流の供給ができなくなるからである。
そして、この課題は、各インバータに接続される電池セルを新品のみではなく中古品も混在させて利用する場合に顕著となる。
そこで、本発明は、電池セルの劣化の観点をも考慮して電池システムの制御を行うこととし、各電池セルの劣化の度合いにばらつきがある場合であっても、できるだけ長時間継続して複数のインバータが交流電力負荷へ交流電力を供給することができる電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するために、本発明の電池システムは、電力配線と、電池セルと、前記電池セルから直流電力を受けて交流電力に変換し且つ前記交流電力を前記電力配線に出力するインバータとを備えた複数の実質的に同一のインバータユニットと、前記複数のインバータユニットを制御する制御装置とを有し、前記制御装置は、各々の前記電池セルの劣化情報をそれぞれ演算し、前記電力配線へ供給する電力量及び前記劣化情報に応じて駆動対象外とするインバータユニットを前記複数のインバータユニットの中から決定することを特徴とする。
【0006】
上記構成により、電力配線へ供給する電力量のみならず、複数のインバータユニットのそれぞれに接続された電池セルの劣化情報にも基づいて、制御装置が駆動対象外として電力配線へ出力させないインバータユニットを決定することができる。
従って、劣化した電池セルからの直流電力の供給をできるだけ回避することができるので、電池システムを長時間駆動することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池システムによれば、電池システムの長時間の駆動を可能とする電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態としての電池システム概要図である。
【図2】図1の1つのインバータユニットにおける電池モジュール内の構成を示す概要図である。
【図3】図1の電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】一般的なインバータの出力と変換効率との関係を示す関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る電池システムは複数の実質的に同一構成のインバータユニットを備えており、電池システムに組み込まれる直流電源としての複数の電池セルの劣化の度合いを考慮し、交流電力負荷へ供給する電力量が小さい場合には、劣化の大きい電池セルに接続したインバータユニットは駆動せずに他のインバータユニットを駆動し、交流電力負荷へ供給する電力量が大きく、劣化の大きい電池セルに接続したインバータユニットも駆動する必要がある場合には、できるだけ変換効率が最も高い出力で当該インバータユニットを駆動することを特徴の1つとしている。以下、図面を参照しながら、詳述する。
【0010】
まず、本発明の実施形態の電池システムの構成につき図面を参照して説明する。その動作については後述する。
図1は電池システム1の構成の概要を示す図である。電池システム1は、交流電力の供給を受ける交流電力負荷2、当該交流電力を供給する複数のインバータユニット3(ここでは、3−1及至3−4)、インバータユニット3を制御する制御装置4、およびインバータユニット3に関する情報を表示する表示装置5を備えている。なお、いずれのインバータユニット3も、互いに共通の同一の電力配線に上記交流電力の供給を行う。また、ここでは、電力負荷として交流電力負荷2を用いて説明するが、インバータユニット3が供給する交流電力をさらにコンバータで直流電力に変換した後に当該直流電力で電力負荷としての直流電力負荷を駆動する電池システム1としてもよい。
インバータユニット3は、直流電源としての電池モジュールBMと、電池モジュールBMから直流電力の入力を受けて交流電力へ変換するインバータInvと、電池モジュールBMとインバータInvとの間の電力経路に配置され、電池モジュールBMからインバータInvへの交流電力の入力を遮断することができるスイッチSWとを備えている。なお、図中、各インバータユニット3に対応する電池モジュール等の構成には、それぞれのインバータユニットに対応して、末尾に1〜4の数字を記載し、いずれのインバータユニット3に含まれる構成であるか判別容易としている。例えば、インバータユニット3−1では、電池モジュールBM1、インバータInv1、スイッチSW1と記載している。他のインバータユニット3−2及至3−4でも同様である。
各インバータユニット3のインバータInv、電池モジュールBM、及びスイッチSWはバスまたは信号線を介して制御装置4に接続されている。従って、制御装置4は、当該バスまたは信号線を介して、電池モジュールBMから電池セルに関する後述の計測情報を受け、また、インバータInv及びスイッチSWの動作を制御する。
【0011】
電池モジュールBMは、複数の電池セルからなる組電池と、各電池セルに対応して配置された各種センサーを備えている。複数のインバータユニット3の構成はいずれも同様の構成であるので、説明容易のためインバータユニット3の1つに着目して図にすると、電池モジュールBMは、例えば図2に示すような構成である。
図2において、組電池は、直列接続された電池セルCa〜Cdからなる第1アームと直列接続された電池セルCe〜Chからなる第2アームとが並列に接続された構成である。当該並列に接続された端部のうち、電位の低い方の端部は所定電位に接地されている。
また、これら複数の電池セルCa〜Chには、電池容器の温度(以下、「セル温度」という)を計測するための温度センサーTa〜Th、および電池セルの正極端子と負極端子との間の電圧(以下、「セル電圧」という)を計測するための電圧センサーVa〜Vhが、各々の電池セルにそれぞれ1つずつ対応して配置されている。
さらに、各アームには対応する電流センサーが1つ、ここでは第1アームに対して電流センサーIaが、また、第2アームに対して電流センサーIbが配置されており、各アームを流れる電流をそれぞれ計測することができる。
上述したセル温度、セル電圧、各アームを流れる電流を計測する各種のセンサーにより計測され且つ出力された計測情報は、各電池セルの劣化の度合い示す劣化情報を算出するため制御装置4に入力される。
なお、電池モジュールBMに、公知のCMU(Cell Monitor
Unit)を配置し、制御装置4に公知のBMU(Battery Management Unit)を配置してもよい。
【0012】
制御装置4は、ユーザーの指示(例えば、電池システム1が電気自動車の場合には、ユーザーによるアクセルペダルの踏み込み量)に応じて交流電力負荷2を駆動すべく、後述のように各インバータユニット3を適切に制御する。制御装置4は、複数のインバータInvを同時に駆動する場合があるので、全てのインバータInv1〜Inv4の出力の同期をとるための同期信号をこれら全てのインバータInv1〜Inv4に送信する。なお、交流電力負荷2が電力系統の場合には、電力系統に接続された各インバータが自身で電力系統と同期を取ることができるため、当該同期信号は不要である。
また、制御装置4は、表示装置5を制御して、電池システムの起動後に各インバータユニット3から常時入力される各電池セルの上記計測情報に対応した関連情報(後述の劣化情報、充電率SOC等を含む)を、適宜、表示装置5に表示させる。このとき、制御装置4は、当該計測情報または当該関連情報が異常値であると判断した場合には、表示装置5に内蔵された異常ランプを点灯させる等するとともに、表示装置5に内蔵されたブザー等の音響装置を作動させて警報を鳴らし、光と音により視覚および聴覚を刺激してユーザーの注意を促す。また、異常値と判断した電池セルを含むインバータユニット3への直流電力の供給を断つべく、制御装置4は、当該インバータユニット3に対応するスイッチSWを「開」(OFF)として当該インバータユニット3に対応するインバータInvと当該インバータユニット3に対応する電池モジュールBMとの電気的接続を遮断する。
表示装置5は、例えば上記音響装置を備えた液晶パネル等のモニターである。
【0013】
ここで、電池システム1は、例えば、交流電力負荷2としての電気モータに車輪を接続したフォークリフトなどの産業車両、電車、または電気自動車などの移動体、並びに交流電力負荷3としての電気モータにプロペラまたはスクリューを接続した飛行機または船などの移動体であってもよい。さらに、電池システム1は、交流電力負荷2として電気モータを備えた家電製品に、風車や太陽光発電のような自然エネルギー発電でなされた電力を直流電源としての二次電池に蓄えて利用する家庭用の電力貯蔵システムや、当該蓄えた電力を交流電力負荷としての電力系統へ売電する電力売電システムなどの定置用のシステムであってもよい。すなわち、電池システム1は、複数のインバータユニット3に備えられた電池セルによる電力の少なくとも放電を利用するシステムであり、また、充放電を利用するシステムであってもよい。
従って、電池システム1の電池モジュールBMで用いる電池セルは、電池システム1の用途に応じて一次電池または二次電池等のいずれの電池セルでも、また、積層型または捲回型のいずれの電池セルでも用いることが可能である。ここでは一例として、電池セルは、充放電可能な電池セル、例えば蓄電池であるリチウムイオン二次電池の電池セルであるとして説明を続ける。
また、図2では、電池モジュールBMにおいて、4つの電池セルが直列接続されて1つのアームを形成し、計2つのアームが並列に接続されている構成としている。しかしながら、各アームに接続される電池セルの個数、さらにはアームの個数は、各々1つであっても各々複数であってもいかようにも設計可能である。
さらに、インバータユニット3の数も、図1では4つとしているが、複数であればいかようにも設計可能である。交流電力負荷2が許容する電力である最大許容電力を少なくとも出力できるよう、電池セルの数やインバータユニット3の数が適宜設計されるのが望ましい。
【0014】
では、電池システム1の動作、具体的には、制御装置4が行う複数のインバータユニット3の制御動作につき、図3のフローチャートを用いて詳述する。なお、説明にあたり、次の事項を前提とする。
まず、インバータInvの最大出力を固定値であるPm、ここでは最大出力Pm=500kWとする。すなわち、出力100%とした場合にはPmが出力されることになる。また、インバータInvの最大の変換効率を示す際の出力(以下、「最大効率時出力」という)を固定値であるPe、ここでは最大効率時出力Pe=200kW(出力40%とした場合に相当)とする。最大出力Pmや最大効率時出力Peの値はインバータの製造メーカ毎に異なるが、図4に示すように、一般的にインバータは、最大効率時出力より小さい出力になるほど急激に変換効率が悪化し、最大効率時出力から最大出力になるまでの間は、比較的なだらかに変換効率が低下する傾向にある。従って、一般化した値であるPmやPeを用いることで、いかようなインバータも電池システム1に適用することができる。なお、いずれのインバータユニット3も、実質的に同一特性のインバータInvを用いている。
また、インバータユニット3の個数を固定値であるN、ここでは図1に示すようにインバータInv1〜Inv4の4つを用いるので、N=4とする。従って、図1では、交流電力負荷2の最大許容電力がN×Pm、すなわち2000kWであるとする。
さらに、交流電力負荷2に供給する電力(以下、「供給電力」という)を変数であるPとする。上述のように交流電力負荷2の最大許容電力が2000kWであるので0≦P≦2000kWである。供給電力Pのうち、特に、電池システム1が起動した当初の供給電力を固定値であるPIとし、後に変更される供給電力を変数のPcとして示す。
そして、図3で用いる演算では、床関数floor(x)を適宜用いる。床関数とは、固有値x以下の最大の整数を解とする演算式であり、例えば、x=1.5の場合、floor (1.5)=1となる。また、x=1の場合、floor(1)=1となる。さらに、x=0.5の場合、floor(0.5)=0となる。
なお、以上のように最大出力Pmや交流電力負荷2の最大許容電力等を仮定して説明する都合上、電池モジュールBMの備える電池セルの数等は適宜これらに対応するものとする必要があるため、以下に説明する電池システム1の構成は、図2の電池モジュールに示す構成と同数の電池セルを備えているとは限らない。
【0015】
そして、さらなる前提として、ここでは各電池セルの劣化情報として、各電池セルの充電率SOC(State Of
Charge)を用いる。充電率SOCは、満充電時における電池の容量に対して充電残量がどのくらいかを比率(パーセント)で表すものであり、セル電圧と各アームを流れる電流により、公知の演算方法を用いて所定時間毎(例えば、2分間毎)に制御装置4にて算出される。
劣化情報として充電率SOCを用いることができる理由は、次のとおりである。
すなわち、複数の電池セルとして新品から中古のものまで混在させて電池システム1に使用する場合において、電池セルが二次電池の場合には交流電力負荷2へ電力供給を開始する前に全ての電池セルに一律に充電を行うのが一般的であるが、かように一律に充電しても、一部の電池セルに劣化がある場合には他の電池セルの充電率SOCより低い充電率までしか当該一部の電池セルに充電することができない。例えば、全ての電池セルを一律に同時に充電しても、他の電池セルの充電率SOCが70%であるにも関わらず、ある電池セルの充電率SOCは30%にしかならない場合もあり得るのである。これは劣化した電池セルでは内部抵抗が上昇しているためである。
なお、かような現象は、当初、全ての電池セルを新品の状態から電池システム1で使用していた場合にも、長期間使用することで、電池セルごとに充電率SOCのばらつきが生じ得るので、新品と中古のものを混在させた場合に限らず発生する。
このため、各電池セルの充電率SOCを、ここでは各電池セルの劣化情報として用いることとするものである。
【0016】
もちろん、交流電力負荷2に要求される交流電力をできるだけ長時間継続して出力するように電池システム1を動作させるための指標となるのが各電池セルの劣化情報であるので、劣化情報となりうるのは充電率SOCに限るものではなく、セル電圧と各アームを流れる電流のみならずセル温度等も用いて電池セルの寿命や劣化の度合いを算出し、これを劣化情報としてもよい。
さらに、例えば、電池システム1の配置場所の都合から、複数のインバータユニット3の一部が日当たりの良い場所に配置され、他の一部が日陰に配置される場合などは、仮に全ての電池セルが新品であっても、電池セルの特性にばらつきが生じる。従って、劣化情報は、実際に電池セルに劣化が生じている場合の情報を意味するのみならず、電池セルに劣化が生じているように見える場合の情報をも含むものとする。
【0017】
では、以上を前提として、電池システム1の動作を説明する。
まず、ユーザーにより駆動スイッチがONされることで、インバータユニット3以外の図示しない小電源によって制御装置4が起動し、制御装置4内の不揮発性メモリー(図示なし)に記録されたN、Pm、Peの値を制御装置4が読み出すとともに、電池システム1内の全てのインバータユニット3を駆動対象として制御装置4が認識する。さらに、制御装置4は、各電池セルの計測情報を用いて各電池セルの劣化情報の演算も開始する(ステップS1)。ここでは、劣化情報として、各電池セルの充電率SOCの演算を開始する。
次に、制御装置4は、制御装置4内の不揮発性メモリー(図示なし)に記録された初期値PIを読み出し、P=PIとする(ステップS2)。PIは上述のように固定値であり、PI=0でもよいが、ここでは、説明の簡便のため、2つのインバータユニット3を少なくとも駆動する必要がある値とすることとし、PI=950kWとする。
【0018】
ステップS2の後、制御装置4は、変数Mを用いて、まずはM=Nとする(ステップS3)。図1では、N=4であるので、M=4となる。
そして、制御装置4は、i=floor(P÷Pm)を演算する(ステップS4)。iの値は、i個または(i+1)個のインバータユニット3が後述の場合分けに従って駆動されることを意味する。ステップS2により供給電力P=950kWであり、最大電力Pmは固定値であって且つここではPm=500kWであるので、i=1となる。
【0019】
ステップS4の後、制御装置4は、i=Nかi≠Nかを判断する(ステップS5)。ここでは、N=4且つi=1であるので、制御装置4はi=Nではないと判断し、「no」の場合のステップS7に進む。
なお、ステップS5で制御装置4がi=Nと判断する場合とは、全てのインバータユニット3を最大出力Pmで駆動する必要がある場合である。すなわち、電池セルの劣化を考慮している余裕はなく、短時間であろうとも全インバータInvに最大出力を供給させることが求められる場合である。従って、制御装置4がi=Nであると判断して「yes」の場合であるステップS6へ進む場合には、制御装置4は全てのインバータユニット3のインバータInvの出力を最大電力Pmとする制御を行うべく、全てのインバータユニット3のインバータInvに出力を最大電力Pmとするよう制御信号を送信する。そして、これを受信した各インバータInvでは、出力を最大電力Pmとする(ステップS6)。そして、次のステップS20へ進む。
【0020】
ステップS5からステップS7に進んだ場合、駆動対象のインバータInvに接続された電池モジュールBMの電池セルの中から一番劣化している可能性が高いという劣化情報が得られた電池セルを含むインバータユニット3を、制御装置4は駆動対象外とする(ステップ7)。ここでは、劣化情報として充電率SOCの値を用いるので、一番低い充電率SOCの値が算出された電池セルを含むインバータユニット3が駆動対象外となる。仮に、インバータユニット3−4が駆動対象外となったとして話を進める。
なお、制御装置4は、駆動対象外のインバータユニット3のインバータInvを駆動する制御を行わないので、当該インバータInvは交流電力の出力を行わない。
また、以上のように駆動対象外のインバータユニット3を選別するので、仮にインバータユニット3が最も劣化の少ないという劣化情報を示す電池セルを含んでいたとしても、当該インバータユニット3が一番劣化している可能性が高いという劣化情報(以下、「劣った劣化情報」ともいう)が得られた電池セルをも含んでいる場合には、駆動対象外として選別されることになるので注意を要する。
【0021】
ステップS7の後、制御装置4は、M−1の値をMに置換する。すなわち、M=M−1とする(ステップS8)。ここでは、当初M=4であったので、今、M=3と設定されたことになる。
そして、制御装置4は、M=i+1かM≠i+1かを判断する(ステップS9)。ここでは、M=3且つi=1であるので、制御装置4はM=i+1ではないと判断し、「no」の場合のステップS7に進む。ステップS7では、上述の動作がなされるので、具体的には現時点で駆動対象となっているインバータユニット3−1〜3−3の中の電池セルのうち一番劣化している可能性が高いという劣化情報が得られた電池セルを含むインバータユニット3を、制御装置4は駆動対象外とする。ここでは、仮に、インバータユニット3−3も駆動対象外となったとして話を進める。
そして、ステップS7及びS8をM=i+1となるまで繰り返し、ステップS9で制御装置4がM=i+1であると判断した場合には、「yes」の場合のステップS10に進む。
なお、ステップS10に進む際には、制御装置4は、i+1個のインバータユニット3のみを駆動対象として認識していることになる。すなわち、各電池セルの劣化情報に基づいて、電池劣化の観点から複数のインバータユニット3の中から出力を継続することができる可能性が高いものから順にi+1個のインバータユニット3を選別し、これを駆動対象としている。ここでは、例えば、インバータユニット3−1及び3−2のみが駆動対象として制御装置4に認識されている。
【0022】
ステップS9の後、ステップS10では、制御装置4は、M=1かM≠1かを判断する(ステップS10)。ここでは、ステップS9によりM=2であるので、制御装置4はM=1ではないと判断し、「no」の場合のステップS11に進む。
なお、制御装置4がM=1であると判断する場合は、i=0の場合であって基本的にただ1つのインバータユニット3のみの駆動で供給電力を賄える場合である。この場合には、ステップS10から「yes」の場合のステップS17に進む。ステップS17については、後述する。
【0023】
ステップS11では、駆動対象のi+1個のインバータユニット3の中から、一番劣化している可能性が高いという劣化情報が得られた電池セルを含むインバータユニット3を、制御装置4が選別する(ステップS11)。理解容易のため、その選別されたインバータユニット3のインバータInvをインバータIaとする。ここでは、例えばインバータユニット3−2のインバータがインバータIaであるとして話を進める。
【0024】
そして、ステップS12に進み、制御装置4は、関係式P−Pm×i≧2×Peの関係にあるか否かを演算し、制御装置4がこの関係にあると判断した場合には、「yes」の場合のステップS13に進み、当該関係にないと判断した場合には、「no」の場合のステップS14に進む(ステップS12)。
そして、ステップS14では、制御装置4は、関係式2×Pe>P−Pm×i≧Peの関係にあるか否かを演算し、制御装置4がこの関係にあると判断した場合には、「yes」の場合のステップS15に進み、当該関係にないと判断した場合には、「no」の場合のステップS16に進む(ステップS14)。
【0025】
ここで、ステップ12とステップ14にて、以上の場合分けを行う理由は次のとおりである。
まず、現在、駆動対象となっているi+1個のインバータユニット3のうち、インバータIaを含まないインバータユニット3は、インバータIaを含むインバータユニット3に比べて電池セルの劣化の程度が悪くないことから、インバータIaを含まないインバータユニット3のインバータInvの出力を全て最大出力Pmとしてもよいと考える。もちろん、インバータInvの出力を最大出力Pmとすることにより、出力を最大効率時出力Peとした場合に比べて変換効率は悪化するが、近年のインバータ技術の向上により、出力を最大出力Pmとした場合であっても、その変換効率は90%以上であるので、供給電力をできるだけ長く維持する観点を優先して制御してもさほど電池システム1の全体としての変換効率は悪化しないという判断である。
そして、次に、駆動対象のインバータユニット3のインバータInvを全て最大出力Pmで駆動した場合における供給電力Pに対するインバータIaの負担分の出力(すなわち、P−Pm×i)が、できるだけ最大効率時出力Peに近づくように処理するものである。最大効率時出力Pe付近の出力でインバータInvを駆動することで、駆動対象となったインバータユニット3の電池セルが仮に劣化している場合においても無駄なく当該電池セルから出力を得られることができ、結果として供給電力をできるだけ長く維持且つ電池システム1を効率的に運転することができるからである。
【0026】
このため、ステップS12では、上述のように、制御装置4が関係式P−Pm×i≧2×Peの関係にあるか否かを演算して判断している。そして、この関係式を満たす場合には、上記負担分を最大効率時出力Pe付近の出力で2つのインバータInvにて負担できることから、駆動対象外となったインバータユニット3のうち、一番最後に駆動対象外と判断されたインバータユニット3をやはり駆動対象とすることとし、当該インバータユニット3のインバータInvを最大効率時出力Peで出力するよう制御装置4が制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した当該インバータInvは、最大効率時出力Peで出力をする。当該インバータユニット3が、現時点で駆動対象であるインバータユニット3の中で一番劣化している電池セルを含んでいるため、最適な変換効率で駆動するものである。
また、インバータIaに対してはP−Pm×i−Peの出力をするよう、制御装置4が制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した当該インバータIaは、当該出力をする。
さらに、この時点で駆動対象であるインバータユニット3のうち、上述の2つのインバータユニットの他のインバータユニット3のインバータInvを最大出力Pmで出力するよう制御装置4が制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した当該インバータInvは、当該出力をする(ステップS13)。
そして、ステップS20へ進むことになる。
ここで、P=950kW、Pe=200kW、Pm=500kW、i=1であるので、当該インバータIaの出力は250kWとなる。すなわち、ステップS12の時点で駆動対象となっていたインバータユニット3の中で、一番劣化が進んだ電池セルを備えたインバータユニット3のインバータInvは、最大効率時電力Peに近接した出力を行うので、結果として供給電力をできるだけ長く維持且つ電池システム1を効率的に運転することができる
【0027】
一方、ステップS15に進む場合は、上記負担分を最大効率時出力Pe付近の出力で2つのインバータInvにて負担することはできないことから、インバータIaに対してはP−Pm×iの出力をするよう、制御装置4が制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した当該インバータIaは、当該出力をする。また、駆動対象の他のインバータユニット3のインバータInvを最大出力Pmで出力するよう制御装置4が制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した当該インバータInvは、当該出力をする(ステップS15)。
そして、ステップS20へ進むことになる。
【0028】
さらに、ステップS16に進む場合は、上記負担分が最大効率時出力Peより小さい場合であり、上述のように当該負担分が最大効率時出力Peより小さければ小さいほど急激に変換効率が悪化する。従って、インバータIaに対しては上記負担分より大きい値である最大効率時出力Peの出力をするよう、制御装置4が制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した当該インバータIaは、当該出力をする。
また、駆動対象の他のインバータユニット3のインバータInvに対しては、上記負担分よりも余分に大きな値を出力しているインバータIaを鑑みて、この余分を調整すべく、最大出力Pmよりも小さい値であるPm−{Pe−(P−Pm×i)}÷iで出力するよう、制御装置4が制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した当該インバータInvは、当該出力をする(ステップS16)。こうすることで、駆動対象の他のインバータユニット3の変換効率も向上することができる。
そして、ステップS20へ進むことになる。
【0029】
ここで、ステップS20の説明に進む前に、ステップS10から進んだステップS17以降の説明を先に行う。
ステップS17に進む場合は、上述のように、1つのインバータユニット3のみで供給電力を賄うことができる場合である。しかし、ステップS12の関連記載で述べたように、2×Pe≦Pの場合には、2つのインバータInvで最大効率時出力Pe付近の出力をさせた方がシステム全体の変換効率が向上する。このため、制御装置4は、関係式2×Pe≦Pであるか否かを演算して判断している。そして、この関係式を満たさないと判断した場合には、「no」の場合のステップS18に進み、この関係式を満たすと判断した場合には、「yes」の場合のステップS19に進む(ステップS17)。
そして、ステップS18では、駆動対象のインバータユニット3のインバータInvを供給電力Pで出力するよう、制御装置4が制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した当該インバータInvは、当該出力をする(ステップS18)。そして、ステップS20に進む。
また、ステップS19では、最大効率時出力Pe付近の出力で2つのインバータInvにて供給電力を負担できることから、駆動対象外となったインバータユニット3のうち、一番最後に駆動対象外と判断されたインバータユニット3をやはり駆動対象とすることとして当該インバータユニット3のインバータInvの出力を最大効率時出力Pe、また、ステップS10の時点で駆動対象となっていたインバータユニット3のインバータInvの出力をP−Peとするよう、制御装置4が制御信号をそれぞれのインバータInvへ送信する。そして、当該制御信号を受信した当該各インバータInvは、対応した出力をする(ステップS19)。そして、ステップS20に進む。
【0030】
では、ステップS20の説明に進む。ステップS20では、供給電力Pの値をユーザーが制御装置4の操作盤(図示なし)を操作して変更したか否かを、制御装置4が判断する。そして、当該変更があったと判断した場合には、「yes」の場合のステップS21に進む。そして、当該変更がないと判断した場合には、「no」の場合のステップS22に進む(ステップS20)。
ステップS21に進む場合は、供給電力Pの値が変更値Pcへ変更された場合であるので、制御装置4はP=Pcとして、ステップS3に進む(ステップS21)。
また、ステップS22に進む場合は、供給電力Pの現時点の値が変更されない場合である。この場合には、ユーザーにより駆動スイッチがOFFされたか否かを制御装置4がさらに判断する。そして、駆動スイッチがOFFされていないと制御装置4が判断した場合には、「no」の場合のステップS20に進む。また、駆動スイッチがOFFされたと駆動装置4が判断した場合には、「yes」の場合のステップS23に進む。
そして、ステップS23に進むと、制御装置4は駆動しているインバータユニット3の全ての駆動を停止し、駆動スイッチがOFFされてから所定時間経過後に制御装置4と上記小電源が電気的に遮断されて制御装置4の動作が停止する。従って、制御装置4が各インバータユニット3へ制御信号を送信することができなくなるので、結果的に電池システム1の動作が停止する。
【0031】
以上のとおり、電池システム1では、交流電力負荷に共通且つ同一の電力配線で交流電力の供給をすることができる複数のインバータユニットを、交流電力負荷に求められる供給電力の量と各々のインバータユニットが備える電池セルの劣化の度合いに応じて、いずれのインバータユニットを駆動させるか、また、駆動させる場合にはインバータユニットからどれだけの出力をさせるかを適宜選択するので、できるだけ長時間継続して複数のインバータが交流電力負荷へ交流電力を供給できるとともに、電池システム全体の変換効率をも向上させることができる。
【0032】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りで種々の変形が可能である。例えば、インバータInvは、直流電源の電力を直流電力から交流電力へ変換して交流電力として交流電力負荷2へ電力供給する機能を備えた装置として説明したが、当該機能を備えたものであればよく、交流電力負荷2からの回生電力を交流電力から直流電力へ変換して直流電源へ供給することができるコンバータと一体になった装置であってもよい。すなわち、ここでいう「インバータ」は、インバータの機能を備えた装置の意味である。従って、上述した「インバータユニット」も、インバータの機能を備えた装置を含むユニットの意味である。
また、電池システム1の動作も、本発明の趣旨を逸脱しない限りで種々の変形が可能である。例えば、ステップS19では、一方のインバータの出力を最大効率時出力Peとし、他方のインバータの出力をP−Peとしたが、そもそも1つのインバータユニットのみで供給電力を賄える場合には、多数のインバータユニットの中でこれら2つのインバータユニットは劣化の少ない電池セルを備えていることが多いので、いずれもP÷2の出力としてもよい。
さらに、各電池セルの充電率SOCの演算の結果は一定時間毎(例えば、2分間毎)に更新し、ステップS20で供給電力の変更がない場合にも、当該更新がなされたらステップS3へ進むとしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…電池システム、2…交流電力負荷、3…インバータユニット、4…制御装置、
5…表示装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力配線と、
電池セルと、前記電池セルから直流電力を受けて交流電力に変換し且つ前記交流電力を前記電力配線に出力するインバータとを備えた複数の実質的に同一のインバータユニットと、
前記複数のインバータユニットを制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、各々の前記電池セルの劣化情報をそれぞれ演算し、前記電力配線へ供給する電力量及び前記劣化情報に応じて駆動対象外とするインバータユニットを前記複数のインバータユニットの中から決定することを特徴とする電池システム。
【請求項2】
前記複数のインバータユニットは、
第1の組電池を構成する複数の前記電池セルと、前記第1の組電池から直流電力を受けて交流電力に変換し且つ前記交流電力を前記電力配線に出力する第1のインバータとを備えた第1のインバータユニットと、
第2の組電池を構成する複数の前記電池セルと、前記第2の組電池から直流電力を受けて交流電力に変換し且つ前記交流電力を前記電力配線に出力する第2のインバータとを備えた第2のインバータユニットと、
第3の組電池を構成する複数の前記電池セルと、前記第3の組電池から直流電力を受けて交流電力に変換し且つ前記交流電力を前記電力配線に出力する第3のインバータとを備えた第3のインバータユニットと
を備え、
前記制御装置は、前記電力量が前記第1及至第3のインバータユニットのいずれか2つで賄える場合に、前記第1及至第3の組電池を構成する電池セルのうち最も劣化していることを示す前記劣化情報に対応する電池セルを備えた記第1及至第3のインバータユニットの中の1つを駆動対象外として制御することを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記電力量をPとし、前記電力量Pが、前記第1及至第3のインバータの最大出力Pmと最大効率時出力Peを用いて示される2×Pe+Pmの値よりも大きい場合には、前記制御装置は、前記駆動対象外となったインバータユニットの他のインバータユニットの備えた前記電池セルのうち最も劣化していることを示す前記劣化情報に対応する電池セルを備えたインバータユニットの出力を実質的にP−Pm−Peの値とし、前記他のインバータユニットのうち他方のインバータユニットの出力を実質的にPmの値とし、前記駆動対象外となったインバータユニットの出力を実質的にPeとして制御することを特徴とする請求項2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記電力量をPとし、前記電力量Pと前記第1及至第3のインバータの最大出力Pmと最大効率時出力Peを用いて示される関係式P−Pm<Peの値よりも小さい場合には、前記制御装置は、前記駆動対象外となったインバータユニットの他のインバータユニットの備えた前記電池セルのうち最も劣化していることを示す前記劣化情報に対応する電池セルを備えたインバータユニットの出力を実質的にPeの値とし、前記他のインバータユニットのうち他方のインバータユニットの出力を実質的に2×Pm−P−Peの値として制御することを特徴とする請求項2に記載の電池システム。
【請求項5】
前記劣化情報は、充電率であることを特徴とする請求項1及至請求項4のいずれか一項に記載の電池システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−200098(P2012−200098A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63460(P2011−63460)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】