説明

電源装置及び画像形成装置

【課題】異常状態の推測や故障解析の所要時間短縮に寄与できる電源装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】制御回路30において、高圧電源供給部34から負荷50に供給される電力の電流レベルを検出する電流検出回路42による検出結果に基づいて、高圧電源供給部34による電力の供給を定電流制御し、電流検出回路42による電流レベルの検出結果と、負荷50に供給される電力の電圧レベルを検出する電圧検出回路44による電圧レベルの検出結果と、の履歴をメモリ32に記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体表面を所定の電位に帯電させ、画像データに応じて光ビームを照射して感光体上に静電潜像を形成し、当該静電潜像にトナーを付着させて現像して得られたトナー像を記録媒体に転写して画像を形成する複写機等の画像形成装置では、帯電、現像及び転写等を駆動するために、高圧電源が用いられている。高圧電源は、感光体周辺の部品に対して所定の電位又は電流値の駆動電力を供給する。
【0003】
ここで、感光体周辺の部品の多くは、感光体の回転にあわせるように回転動作を行なったり、感光体と接触して感光体との間に電流が流れたりする。このような部品が故障した場合、故障した部品だけでなく、感光体や高圧電源自体の故障を誘発することがある。
【0004】
このため、多くの高圧電源では、異常を検知した場合は出力の印加を停止したり、垂下させたりすることで、ダメージや損傷を防止する保護機能が備えられている。この高圧電源の保護機能としては、回路に流れる電流や発生する電圧を検出回路にて検出し、その値が異常であれば回路保護制御に移行するものがあげられる。
【0005】
従来、この種の技術としては、例えば、特許文献1では、出力電圧を検出し、検出値が所定の範囲外の場合は負荷異常と判断して出力を停止することが提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、出力電流を検出し、検出値が所定の範囲外の場合は負荷異常と判断して定電圧制御から過電流制御へ移行することが提案されている。
【0007】
さらに、特許文献3では、出力電圧及び出力電流を検出し、両検出値に基づいて定電圧制御又は定電流制御の何れかを選択して出力を制御することが提案されている。
【特許文献1】特開2001−008446公報
【特許文献2】特開2003−134810公報
【特許文献3】特開2004−242372公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記各特許文献に記載の技術では、高圧電源回路における過電流、過電圧の発生を防止することで異常を回避することは可能であるが、異常部品、異常動作の特定まではできない、という問題点があった。
【0009】
本発明は、異常状態の推測や故障解析の所要時間短縮に寄与できる電源装置及び画像形成装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、負荷に対して電力を供給する電力供給手段と、前記負荷に供給される電力の電流レベルを検出する電流検出手段と、前記負荷に供給される電力の電圧レベルを検出する電圧検出手段と、前記電流検出手段及び前記電圧検出手段の少なくとも一方の検出結果に基づいて前記電力供給手段による電力の供給を制御する制御手段と、前記電流検出手段及び前記電圧検出手段による前記電流レベル及び前記電圧レベルの検出結果の履歴を記憶する記憶手段と、を備えている。
【0011】
請求項1記載の発明では、負荷に供給する電力の電流レベル及び電圧レベルを検出して定電流制御や定電圧制御を実行して負荷に対して電力を供給するに際し、電流レベル及び電圧レベルの検出結果の履歴を記憶するようにしているので、異常状態の推測や故障解析の所要時間短縮に寄与することができる。
【0012】
すなわち、請求項1記載の発明によれば、負荷に供給される電力の電流レベル及び電圧レベルの検出結果の履歴が記憶されるので、一時的に異常が発生した場合でも、当該履歴を参照することにより、異常状態を再現したりすることなく異常状態の推測や故障解析を行なうことができる。
【0013】
請求項2の発明は、前記電流検出手段及び前記電圧検出手段により検出された前記電流レベル及び前記電圧レベルが異常か否かを判定する判定手段を更に備え、前記記憶手段は、前記判定手段により異常なレベルであると判定された場合の前記電流検出手段及び前記電圧検出手段による前記電流レベル及び前記電圧レベルの検出結果の履歴を記憶することを特徴としている。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、検出された電流レベル及び電圧レベルが異常か否かを判定して、異常である場合の電流レベル及び電圧レベルの検出結果の履歴を記憶するようにしているので、異常の状態の推測や故障解析に必要な履歴を記憶することができる。
【0015】
請求項3の発明は、前記判定手段は、所定時間毎に前記電流レベル及び前記電圧レベルの異常を判定することを特徴としている。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、電流レベル及び電圧レベルの異常の判定を、所定時間毎に実行するようにしているので、当該判定を行う判定手段を、制御手段等、他の処理を実行する手段と兼用することができる。
【0017】
請求項4の発明は、前記判定手段は、前記負荷が正常に動作している場合の前記電流レベル及び前記電圧レベルの正常範囲がそれぞれ予め設定され、実際に検出された前記電流レベル及び前記電圧レベルと各正常範囲とをそれぞれ比較することにより前記電流レベル及び前記電圧レベルが異常か否かを判定することを特徴としている。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、検出結果を正常範囲と比較することにより異常を判定するので、処理や構成の極端な複雑化を招くことなく判定を行なうことができる。
【0019】
請求項5の発明は、前記判定手段は、前記負荷の使用環境に応じて予め設定された正常範囲を用いて異常か否かを判定することを特徴としている。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、判定処理において用いる正常範囲を、負荷の使用環境に応じて設定するようにしているので、温度や湿度等の使用環境に応じて正常範囲が変化する負荷に対して電力を供給する電源装置においても、異常の状態の推測や故障解析に必要な履歴を記憶することができる。
【0021】
なお、正常範囲は、負荷の使用環境に応じて、予め複数の使用環境を設定しておき、使用環境を示す情報を検出する環境情報検出手段を別途設け、環境情報検出手段による検出結果に応じて正常範囲を選択するように構成してもよい。また、負荷が一定の範囲内の使用環境で使用される場合は、当該使用環境に応じた正常範囲を予め設定しておくように構成してもよい。
【0022】
上記課題を解決するために、請求項6の発明は、感光体表面を所定の電位に帯電させた状態で、当該感光体上に光ビームを走査して得られた静電潜像をトナーにより現像し、記録媒体にトナー像を転写することにより画像を形成する画像形成装置であって、所定の部位に対して駆動電力を供給する電力供給手段と、前記電力供給手段から供給される駆動電力の電流レベルを検出する電流検出手段と、前記電力供給手段から供給される駆動電力の電圧レベルを検出する電圧検出手段と、前記電流検出手段及び前記電圧検出手段の少なくとも一方の検出結果に基づいて前記電力供給手段による駆動電力の供給を制御する制御手段と、前記電流検出手段及び前記電圧検出手段による前記電流レベル及び前記電圧レベルの検出結果の履歴を記憶する記憶手段と、を備えている。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、感光体表面を所定の電位に帯電させた状態で、当該感光体上に光ビームを走査して得られた静電潜像をトナーにより現像し、記録媒体にトナー像を転写することにより画像を形成する画像形成装置の所定の部位に対して駆動電力を供給するに際し、供給する電力の電流レベル及び電圧レベルを検出して定電流制御や定電圧制御を実行して電力を供給し、電流レベル及び電圧レベルの検出結果の履歴を記憶するようにしているので、異常状態の推測や故障解析の所要時間短縮に寄与することができる。
【0024】
すなわち、請求項6記載の発明によれば、所定の部位に供給される駆動電力の電流レベル及び電圧レベルの検出結果の履歴が記憶されるので、一時的に異常が発生した場合でも、当該履歴を参照することにより、異常状態を再現したりすることなく異常状態の推測や故障解析を行なうことができる。
【0025】
請求項7の発明は、前記所定の部位が正常に動作している場合の前記電流レベル及び前記電圧レベルの正常範囲がそれぞれ予め設定され、実際に検出された前記電流レベル及び前記電圧レベルと各正常範囲とをそれぞれ比較することにより前記電流レベル及び前記電圧レベルが異常か否かを判定する判定手段を更に備え、前記記憶手段は、前記判定手段により異常なレベルであると判定された場合の前記電流検出手段及び前記電圧検出手段による前記電流レベル及び前記電圧レベルの検出結果の履歴を記憶することを特徴としている。
【0026】
請求項7記載の発明によれば、処理や構成の極端な複雑化を招くことなく検出された電流レベル及び電圧レベルが異常か否かを判定して、異常である場合の電流レベル及び電圧レベルの検出結果の履歴を記憶するようにしているので、異常の状態の推測や故障解析に必要な履歴を記憶することができる。
【0027】
請求項8の発明は、前記電力供給手段は、前記記録媒体を前記感光体表面に接触させて前記トナー像を転写させる転写部材に駆動電力を供給し、前記判定手段は、前記正常範囲として前記記録媒体の種類に応じて予め設定された範囲を用いることを特徴としている。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、転写部材に供給する駆動電力の電圧レベルが、転写処理の対象となる記録媒体の種類に応じて異なることに着目し、判定手段で用いる正常範囲を記録媒体の種類に応じて予め設定するようにしているので、転写部材に駆動電力を供給する場合でも、記録媒体の種類に拘らず異常の状態の推測や故障解析に必要な履歴を記憶することができる。
【0029】
なお、正常範囲は、予め複数の記録媒体に応じた正常範囲を設定しておき、画像形成時に用いる記録媒体に応じた正常範囲を選択するように構成してもよい。また、単一の種類の記録媒体だけが使用される場合は、当該種類の記録媒体に応じた正常範囲を予め設定しておくように構成してもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、負荷に供給する電力の電流レベル及び電圧レベルを検出して定電流制御や定電圧制御を実行して負荷に対して電力を供給するに際し、電流レベル及び電圧レベルの検出結果の履歴を記憶するようにしているので、異常状態の推測や故障解析の所要時間短縮に寄与することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施の形態について説明する。
【0032】
図1には、本実施の形態に係る画像形成装置10の主要部の構成が概略的に示されている。同図に示されるように、画像形成装置10には、矢印E方向に搬送される用紙28の搬送経路に沿って、画像形成ユニットが配設されている。
【0033】
画像形成ユニットは、用紙28の搬送経路Eに接するように配設され、矢印F方向に所定速度で回転する感光体ドラム16を備えている。
【0034】
感光体ドラム16の周面には、矢印F方向に、帯電ローラ18、露光ユニット20、現像器22及び転写ローラ25が順に設けられている。感光体ドラム16は、矢印F方向に回転することにより順次帯電器18、露光ユニット20、現像器22によって各種処理が施され、周面にトナー像が形成される。
【0035】
帯電ローラ18は、感光体ドラム16の周面に接触しながら回転可能に設けられている。帯電ローラ18は、所定電位の帯電電圧が印加されると共に回転駆動され、感光体ドラム16の周面を帯電させる。
【0036】
また、露光ユニット20は、不図示の光源を含んで構成されており、感光体ドラム16上に画像データに応じて光ビームを走査露光することにより静電潜像を形成する。
【0037】
現像器22は、トナーを所定の電位に帯電させて感光体ドラム16に付着させて静電潜像を現像する。
【0038】
転写ローラ25は、記録媒体としての用紙28を感光体ドラム16と挟持搬送可能に設けられており、転写時には、所定電位の転写電圧が印加される。各感光体ドラム16上のトナーは、転写ローラ25と対向する転写位置において、転写ローラ25側に引き寄せられて用紙28に転写される。
【0039】
この感光体ドラム16上に形成された最終トナー像は、感光体ドラム16と転写ローラ25の間に送り込まれた用紙28に転写される。
【0040】
なお、トナー像が転写された用紙28は、トナーを用紙28に溶融圧着させる定着処理が施された後、画像形成装置10外へ排出される。
【0041】
図2には、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の各部位への電源供給に関する制御系の構成が示されている。同図に示されるように、画像形成装置10は、全体の動作を制御する制御回路30と、高圧電源供給部34と、負荷50と、を含んで構成されており、高圧電源供給部34は制御回路30及び負荷50と接続されている。
【0042】
高圧電源供給部34は、スイッチ回路36、昇圧トランス38、2次側回路40、電流検出回路42及び電圧検出回路44を含んで構成されている。
【0043】
トランス38は、制御回路30、スイッチ回路36及び2次側回路40に接続されており、2次側回路40は、負荷50に接続されている。
【0044】
トランス38には、不図示の電源から入力される電源電圧が入力される。スイッチ回路36のスイッチング動作に応じてトランス38を動作させる。
【0045】
スイッチ回路36は、制御回路30から入力される出力レベル信号に基づいてスイッチング動作を行なう。なお、本実施の形態では、一例として、出力レベル信号としてパルス信号が入力される形態について説明する。
【0046】
スイッチング回路36のスイッチング動作によりトランス38が動作すると、2次側回路40に、トランス38の仕様に応じた出力電圧レベルの電力が供給される。なお、本実施の形態では、トランス38において、入力電圧を昇圧するものとして説明する。
【0047】
これにより、トランス38により昇圧された電力が2次側回路40から負荷50へと供給される。
【0048】
また、2次側回路40には電流検出回路42及び電圧検出回路44が接続されており、出力端がそれぞれ制御回路30に接続されている。電流検出回路42及び電圧検出回路44では、負荷50に供給される電力の電流レベル及び電圧レベルがそれぞれ検出される。検出した電流レベルを示す電流検出信号SI及び検出した電圧レベルを示す電圧検出信号SVは、それぞれ制御回路30に入力される。
【0049】
制御回路30では、入力される電流検出信号SIを用いて、出力レベル信号のデューティ比を調整することにより、一定の電流レベルの電力を負荷50に供給するようにフィードバック制御により定電流制御が行われる。なお、出力レベル信号のデューティ比が大きいほど電流レベルは大きくなり、デューティ比が小さいほど電流レベルは小さくなる。
【0050】
ここで、電流検出信号SI及び電圧検出信号SVによって、各部位が正常な状態で動作しているか否かを判定することができる。
【0051】
図3には、高圧電源供給部34から、負荷50として、転写ローラ25に駆動電力を供給した場合の供給電力の時間変化に伴う推移が示されている。図3(A)は、電流検出信号SIの推移の一例が、図3(B)は、電圧検出信号SVの推移の一例が、それぞれ示されている。
【0052】
同図(A)に示されるように、負荷50に供給される電力の電流検出信号SIは、徐々に大きくなって定電流制御により一定となる。したがって、電流検出信号SIが所定レベルAよりも大きい場合は、各部位が正常であるとみなすことができる。
【0053】
また、同図(B)に示されるように、負荷50に供給される電力の電圧検出信号SVは、電流検出信号SIが大きくなるのに伴って大きくなり、所定の電圧レベルで一旦は安定する。その後、例えば同図にBで示すタイミングで転写位置に用紙28が到達すると、用紙28が抵抗となって電圧レベルが大きくなる。
【0054】
すなわち、図4に示されるような等価回路55によって表すことができる。なお、転写ローラ25は、外周面が樹脂等に覆われて構成されているので、所定の抵抗値R1の抵抗として表現できる。また、用紙28も、用紙の種類、転写位置における用紙の有無によって抵抗値が変化する抵抗として表現できる。感光体ドラム16は半導体等により構成されており、接地されている。
【0055】
同図に示されるように、高圧電源供給部34は負荷としての転写ローラ25に接続され、転写ローラ25は、用紙28を介して感光体ドラム16に接続されている。すなわち、用紙28が転写位置に存在する場合は、抵抗値R2は用紙28の種類等に応じた値となり、用紙28が転写位置に存在しない場合は、抵抗値R2=0となる。
【0056】
したがって、電流検出信号SIが基準レベルAよりも大きい場合、用紙28の転写位置到達前は電圧検出信号SVが基準レベルC以下のとき、用紙28の転写位置到達後は電圧検出信号SVが基準レベルD以下のとき、各部位が正常であるとみなすことができる。また、電流検出信号SIが基準レベルAよりも大きく、かつ、電圧検出信号SVが基準レベルE以下のときは、何らかの異常とみなすことができる。
【0057】
そこで、制御回路30では、高圧電源供給部34による負荷50への電力供給が開始されると、電流検出信号SI及び電圧検出信号SVを、負荷50の特性に応じて予め設定された基準レベルと比較することにより、供給する電力の異常を判別する。
【0058】
また、制御回路30では、異常が発生していると判別した場合には、基準レベルの比較結果をメモリ32に記録する。なお、このとき、制御回路30は、異常発生時の動作状態や制御パラメータを示す情報を検出信号との比較結果と関連付けて異常履歴データとしてメモリ32に記録する。
【0059】
例えば、転写ローラ25に高圧電源を供給する場合は、上述した検出信号SIを基準レベルAと、検出信号SVを基準レベルC〜Eと、それぞれ比較し、比較結果に応じてフラグをセットして、各フラグの状態に応じて異常発生の有無を判別するようにしている。
【0060】
すなわち、以下の表1に示されるように、電流検出信号SIが基準レベルAよりも小さい場合には基準レベルAフラグに、電圧検出信号SVが基準レベルCよりも大きい場合には基準レベルCフラグに、電圧検出信号SVが基準レベルDよりも大きい場合には基準レベルDフラグに、電圧検出信号SVが基準レベルEよりも小さい場合には基準レベルフラグEに、それぞれ「1」をセットする。
【0061】
なお、以下の表1では、各フラグの状態に対応する異常発生の有無及びその主な原因をそれぞれ状態1から状態5として示した。
【0062】
【表1】

表1における状態1の場合、電流検出信号SIは正常であり、電圧検出信号SVが基準レベルEよりも小さい。このため、転写ローラ25と感光体ドラム16の間が短絡してしまっていることが考えられる。短絡の原因としては、接触位置付近にホチキスの針や紙くず等の異物が存在したり、転写ローラ25自体が破損していることがあげられる。
【0063】
また、状態2の場合は、電流検出信号SIは正常であるが、電圧検出信号SVが基準レベルCよりも大きくなっている。これは転写ローラ25の経時劣化により、転写ローラ25自体の抵抗値R1が上昇したことが原因と考えられる。
【0064】
状態3は、電流検出信号SIは正常であるが、電圧検出信号SVが基準レベルDよりも大きいことから、転写ローラ25の回転不良と考えられる。すなわち、転写ローラ25は、自己の回転により所定の抵抗値R1を示すことが知られており、回転しないと抵抗値R1は上昇する。
【0065】
状態4は、電流検出信号SI及び電圧検出信号SVが共に最小の基準レベルA,よりも小さくなっており、電源が供給されていない可能性もあり、高圧電源供給部34自体の故障の可能性が高い。
【0066】
状態5は、電流検出信号SIが基準レベルAよりも小さいにも拘らず、電圧検出信号SVは最大の基準レベルDよりも大きいので、転写ローラ25が感光体ドラム16に接触していないことが原因と考えられる。すなわち、図4に示される等価回路55が同図に点Pで示す位置で切断されたことと等価となる。このように転写ローラ25が感光体ドラム16に接触していない場合、電流が流れないため、電流検出信号SIは基準レベルAよりも小さくなる。また、無負荷状態における電圧は、オームの法則により無限大に上昇することになる。但し、このような無負荷状態においては、通常は過電圧保護機能が働くので、高圧電源供給部34の回路には一定の電圧レベル以上の電圧はかからない。
【0067】
なお、転写ローラ25は、汚れ防止のため、転写を行なうときのみ感光体ドラム16に接触し、他の場合には感光体ドラム16から離間するようなリトラクト機構が設けられている場合がある。このリトラクト機構を有する場合はリトラクト機構の故障も考えられる。
【0068】
以下に、本実施の形態の作用を説明する。
【0069】
図5には、画像形成装置10に外部から入力された印刷ジョブに基づいて実行される印刷処理の流れが示されている。以下、同図を参照して、本実施の形態に係る印刷処理について説明する。
【0070】
まず、ステップ200では、電流検出信号SI及び電圧検出信号SVを取得し、次のステップ202では、電流検出信号SIが基準レベルAよりも小さいか否かを判定する。
【0071】
ステップ202で肯定判定となった場合は、電流レベルが異常であるものと判断して、ステップ204に移行して、電流検出信号SIが基準レベルAよりも小さいことを示す基準レベルAフラグをセットする。
【0072】
次のステップ206では、電圧検出信号SVが基準レベルCよりも大きいか否かを判定し、当該判定が肯定判定となった場合はステップ208に移行する。
【0073】
ステップ208では、電圧検出信号SVが基準レベルCよりも大きいことを示す基準レベルCフラグをセットし、その後にステップ210に移行する。
【0074】
ステップ210では、電圧検出信号SVが基準レベルDよりも大きいか否かを判定し、当該判定が肯定判定となった場合は、ステップ212に移行する。ステップ212では、電圧検出信号SVが基準レベルDよりも大きいことを示す基準レベルDフラグをセットし、その後にステップ226に移行する。
【0075】
また、ステップ210で否定判定となった場合は、基準レベルDフラグをセットすることなくステップ226に移行する。
【0076】
ステップ206で否定判定となった場合はステップ214に移行して、電圧検出信号SVが基準レベルEよりも小さいか否かを判定する。当該ステップ214で肯定判定となった場合はステップ216に移行して、電圧検出信号SVが基準レベルEよりも小さいことを示す基準レベルフラグEをセットし、その後にステップ226に移行する。
【0077】
また、ステップ214で否定判定となった場合は、基準レベルEフラグをセットすることなくステップ226に移行する。
【0078】
一方、上記ステップ202で否定判定となった場合は、電流レベルだけでは特に異常と判定されないものと判断してステップ218に移行する。ステップ218では、電圧検出信号SVが基準レベルCよりも大きいか否かを判定し、当該判定が肯定判定となった場合は上述したステップ208に移行する。
【0079】
また、ステップ218で否定判定となった場合は、ステップ220に移行して、電圧検出信号SVが基準レベルEよりも小さいか否かを判定する。当該ステップ220で肯定判定となった場合はステップ222に移行して、基準レベルEフラグをセットし、その後にステップ226に移行する。
【0080】
ステップ226では、異常履歴データに、この時点での各基準レベルフラグの状態を追加するように更新記録し、ステップ228に移行する。
【0081】
ステップ228では各基準レベルフラグの状態をリセットし、その後にステップ230に移行する。
【0082】
また、上記ステップ220で否定判定となった場合はステップ230に移行する。
【0083】
ステップ230では出力レベル信号を演算し、その後にステップ232に移行する。ステップ232では、PWM信号のデューティ比を決定し、その後にステップ234に移行する。ステップ234では、決定したデューティ比が上限値よりも小さいか否かを判定し、当該判定が否定判定となった場合はステップ236に移行してデューティ比として上限値を適用し、その後にステップ238に移行する。
【0084】
また、ステップ234で肯定判定となった場合は、ステップ234の処理を行うことなくステップ238に移行して、ステップ232で決定したデューティ比を用いて以下の処理を実行する。
【0085】
ステップ238では、ステップ230における演算結果及びステップ232又はステップ236において決定したPWM信号のデューティ比に応じて出力レベル信号を適宜変更し、その後にステップ240に移行する。
【0086】
ステップ240では、定電流制御を終了するか否かを判定し、当該判定が否定判定となった場合は再びステップ200に戻る。
【0087】
一方、印刷ジョブが終了した場合や、印刷ジョブを中断する場合等にはステップ240が肯定判定となり、本定電流制御処理を終了する。
【0088】
このようにして適時更新記録された異常履歴データは、適宜デジタルデータや画像等、種々の形態で出力され、メンテナンス時や修理時等に利用される。
【0089】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、制御回路30において、高圧電源供給部34から負荷50に供給される電力の電流レベルを検出する電流検出回路42による検出結果に基づいて、高圧電源供給部34による電力の供給を定電流制御し、電流検出回路42による電流レベルの検出結果と、負荷50に供給される電力の電圧レベルを検出する電圧検出回路44による電圧レベルの検出結果と、の履歴をメモリ32に記憶するようにしているので、異常状態の推測や故障解析の所要時間短縮に寄与することができる。
【0090】
すなわち、負荷50に供給される電力の電流レベル及び電圧レベルの検出結果の履歴が記憶されるので、一時的に異常が発生した場合でも、当該履歴を参照することにより、異常状態を再現したりすることなく異常状態の推測や故障解析を行なうことができる。
【0091】
また、本実施の形態では、制御回路30において、電流検出回路42及び電圧検出回路44により検出された電流レベル及び電圧レベルが異常か否かを判定し、異常なレベルであると判定された場合の電流レベル及び電圧レベルの検出結果の履歴をメモリ32に記憶するようにしているので、異常の状態の推測や故障解析に必要な履歴を記憶することができる。
【0092】
さらに、本実施の形態では、所定時間毎に前記電流レベル及び前記電圧レベルの異常を判定するようにしているので、高圧電源供給部34から負荷50に供給される駆動電力を定電流制御する制御回路30に、異常か否かの判定についても実行させることができる。
【0093】
また、本実施の形態では、制御回路30において、負荷50が正常に動作している場合の電流レベル及び電圧レベルについてそれぞれ予め設定された各基準レベルを用いて定義される正常範囲と、実際に検出された電流レベル及び電圧レベルとを比較することにより電流レベル及び電圧レベルが異常か否かを判定するので、処理や構成の極端な複雑化を招くことなく判定を行なうことができる。
【0094】
なお、本実施の形態では、高圧電源供給部34から、用紙28を感光体ドラム16表面に接触させて、感光体ドラム16上に形成されたトナー像を転写させる転写ローラ25に駆動電力を供給する形態について具体例をあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0095】
また、本実施の形態では、基準レベルが一定である形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
例えば、転写ローラ25に供給する駆動電力の電圧レベルは、転写処理の対象となる用紙28(記録媒体)の種類に応じて異なることに着目し、正常範囲を定義する基準レベルを記録媒体の種類に応じて予め設定するようにしてもよい。
【0097】
ここで、図6(A)には、転写ローラ25に供給する電力の電流レベルと電圧レベルの関係の一例が3種類の記録媒体について示されている。同図に示される関係から、薄紙は普通紙よりも抵抗が小さく、OHPは普通紙よりも抵抗が大きいことがわかる。すなわち、同じ基準レベルを用いるよりも、記録媒体の種類に応じた基準レベルを用いた方が、より高精度に異常の判定を行なうことができる。
【0098】
これにより、種々の記録媒体に対して画像形成が可能な画像形成装置の転写ローラ25に駆動電力を供給する場合でも、記録媒体の種類に拘らず異常の状態の推測や故障解析に必要な履歴を記憶することができる。
【0099】
また、転写ローラ25に供給する駆動電力の電圧レベル、すなわち、転写ローラ25の抵抗が、転写ローラ25の使用環境に応じて異なることに着目し、正常範囲を定義する基準レベルを使用環境に応じて予め設定するようにしてもよい。
【0100】
図6(B)には、温度及び湿度が互いに異なる2種類の使用環境下における転写ローラ25に供給する電力の電流レベルと電圧レベルの関係が、一例として示されている。同図に示される関係から、高温高湿になるほど、転写ローラ25の抵抗は小さくなることが分かる。
【0101】
これにより、温度や湿度等の使用環境に応じて正常範囲が変化する負荷に対して電力を供給する場合でも、異常の状態の推測や故障解析に必要な履歴を記憶することができる。
【0102】
なお、上記実施の形態に係る画像形成装置10の構成(図1及び図2参照)は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0103】
また、上記実施の形態に係る処理の流れ(図5参照)も一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0104】
例えば、基準レベルと検出した電流レベルや電圧レベルの比較において、基準レベル以上か否かを判定するか、基準レベルよりも大きいか否かを判断するか等は、基準レベルの設定の仕方や、設計の仕方によって異なるものであり、本発明の主旨を逸脱しないので、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態に係る高圧電源の供給に関するブロック図である。
【図3】実施の形態に係る転写ローラへの駆動電力を示すグラフであり、(A)は電流レベルの変化を、(B)は電圧レベルの変化をそれぞれ示す。
【図4】実施の形態に係る画像形成装置の一部と等価の回路図である。
【図5】実施の形態に係る定電流制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】(A)は、記録媒体の種類に応じた電流レベルと電圧レベルの関係を、(B)は、使用環境に応じた電流レベルと電圧レベルの関係を、それぞれ示すグラフである。
【符号の説明】
【0106】
10 画像形成装置
16 感光体ドラム
18 帯電ローラ
20 露光ユニット
22 現像器
25 転写ローラ(転写部材)
28 用紙(記録媒体)
30 制御回路(制御手段、判定手段、記憶手段)
32 メモリ
34 高圧電源供給部(電力供給手段)
36 スイッチ回路
38 トランス
40 2次側回路
42 電流検出回路(電流検出手段)
44 電圧検出回路(電圧検出手段)
50 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対して電力を供給する電力供給手段と、
前記負荷に供給される電力の電流レベルを検出する電流検出手段と、
前記負荷に供給される電力の電圧レベルを検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段及び前記電圧検出手段の少なくとも一方の検出結果に基づいて前記電力供給手段による電力の供給を制御する制御手段と、
前記電流検出手段及び前記電圧検出手段による前記電流レベル及び前記電圧レベルの検出結果の履歴を記憶する記憶手段と、
を備えた電源装置。
【請求項2】
前記電流検出手段及び前記電圧検出手段により検出された前記電流レベル及び前記電圧レベルが異常か否かを判定する判定手段を更に備え、
前記記憶手段は、前記判定手段により異常なレベルであると判定された場合の前記電流検出手段及び前記電圧検出手段による前記電流レベル及び前記電圧レベルの検出結果の履歴を記憶することを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記判定手段は、所定時間毎に前記電流レベル及び前記電圧レベルの異常を判定することを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記負荷が正常に動作している場合の前記電流レベル及び前記電圧レベルの正常範囲がそれぞれ予め設定され、実際に検出された前記電流レベル及び前記電圧レベルと各正常範囲とをそれぞれ比較することにより前記電流レベル及び前記電圧レベルが異常か否かを判定することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記負荷の使用環境に応じて予め設定された正常範囲を用いて異常か否かを判定することを特徴とする請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
感光体表面を所定の電位に帯電させた状態で、当該感光体上に光ビームを走査して得られた静電潜像をトナーにより現像し、記録媒体にトナー像を転写することにより画像を形成する画像形成装置であって、
所定の部位に対して駆動電力を供給する電力供給手段と、
前記電力供給手段から供給される駆動電力の電流レベルを検出する電流検出手段と、
前記電力供給手段から供給される駆動電力の電圧レベルを検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段及び前記電圧検出手段の少なくとも一方の検出結果に基づいて前記電力供給手段による駆動電力の供給を制御する制御手段と、
前記電流検出手段及び前記電圧検出手段による前記電流レベル及び前記電圧レベルの検出結果の履歴を記憶する記憶手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項7】
前記所定の部位が正常に動作している場合の前記電流レベル及び前記電圧レベルの正常範囲がそれぞれ予め設定され、実際に検出された前記電流レベル及び前記電圧レベルと各正常範囲とをそれぞれ比較することにより前記電流レベル及び前記電圧レベルが異常か否かを判定する判定手段を更に備え、
前記記憶手段は、前記判定手段により異常なレベルであると判定された場合の前記電流検出手段及び前記電圧検出手段による前記電流レベル及び前記電圧レベルの検出結果の履歴を記憶することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電力供給手段は、前記記録媒体を前記感光体表面に接触させて前記トナー像を転写させる転写部材に駆動電力を供給し、
前記判定手段は、前記正常範囲として前記記録媒体の種類に応じて予め設定された範囲を用いることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−15328(P2008−15328A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187991(P2006−187991)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】