説明

電源装置

【課題】電池セルが増加しても部品点数や作業工数の増加を極力抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる電源装置を提供する。
【解決手段】積層された複数の電池セル2,3を有し、隣り合う電池セル2,3の互いの電極2b,3b同士が対向して配置された電池集合体1と、電池集合体1の電極2b,3bが突出された側に配置され、突出された電極2b,3bを被う電池連結ブロック体10とを備え、電池連結ブロック体10は、電圧検出用の回路パターン部17が設けられた基板12を有し、回路パターン部17と対向配置された電極2b、3bが直接接続された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数の電池セルを有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車には、電動モータの駆動源として電源装置が搭載される。この種の従来の電源装置として、特許文献1に開示されたものがある。この電源装置50は、図8及び図9に示すように、積層された複数の電池セル52が2列配列された電池集合体51を備えている。各電池セル52の上面には、一対の電極(プラス電極とマイナス電極)52a,52bが突設されている。隣接する電池セル52の一対の電極52a,52b間は、連結端子53と2つの挟持端子54,55によって接続されている。連結端子53は、バスバーより形成され、連結する電極52a,52bの向きに応じた一対の接触片部53a,53bを有する。2つの挟持端子54,55は、バスバーよりそれぞれ形成され、いずれか一方の電極52a,52bと連結端子53のいずれか一方の接触片部53a,53bをそれぞれ挟持する。一方の挟持端子54には、音叉端子54aが一体に設けられている。音叉端子54aには、電圧検出用電線Wが圧入によって接続される。連結端子53と2つの挟持端子54,55は、合成樹脂製の取付部材56によって一体に固定されている。
【0003】
上記従来例では、電池集合体51の各電池セル52は、連結端子53及び2つの挟持端子54,55を介して直列に接続される。そして、各電池セル52の電極位置における電圧情報が音叉端子54aに接続された電圧検出用電線Wを介して出力される。これにより、各電池セル52の出力状態を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−55885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来例では、隣接する電池セル52の電極間接続とその電極位置の電圧情報を得るのに、電圧検出用電線Wと連結端子53と2つの挟持端子54,55と共に取付部材56が使用されている。電圧検出用電線Wと連結端子53と2つの挟持端子54,55と取付部材56は、各電極接続箇所毎に必要であるため、電池セル52の増加に従って部品点数、作業工数等が増加する。又、電極間の接続箇所毎に連結端子53と2つの挟持端子54,55の設置スペースが必要であるため、電源装置50の大型化、重量化になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、電池セルが増加しても部品点数や作業工数の増加を極力抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、積層された複数の電池セルを有し、隣り合う前記電池セルの互いの電極同士が対向して配置された電池集合体と、前記電池集合体の前記電極が突出された側に配置され、突出された前記電極を被う電池連結ブロック体とを備え、前記電池連結ブロック体は、電圧検出用の回路パターン部が設けられた基板を有し、前記回路パターン部と対向配置された前記電極が直接接続されたことを特徴とする電源装置である。
【0008】
前記基板には、対向配置された前記電極に対応する位置に電極挿入孔が設けられ、前記電極挿入孔に前記電極が挿入され、前記電極挿入孔より突出された前記電極の箇所が前記回路パターン部上に重なるよう折り曲げられ、前記回路パターン部に直接接続されることが好ましい。
【0009】
前記回路パターン部は、前記電極入孔の近くに電極用ランド部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電極間の接続とその電極位置の電圧情報を得るのに、部品としては基板のみで良いため、従来例に較べて少ない部品点数で良い。そして、各電極接続箇所毎に必要な部品がなく、小さい設置スペースで配置できるため、電池セルが増加しても部品点数、作業工数の増加を極力抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示し、電源装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、(a)は一部の絶縁カバーを外した電源装置の要部斜視図、(b)は一対の電極と基板の回路パターン部の接続状態を示す要部断面図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、電池集合体の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、(a)は第1電池セルの斜視図、(b)は第2電池セルの斜視図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、一部の絶縁カバーを外した一方の電池連結ブロック体の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、全ての絶縁カバーを外した一方の電池連結ブロック体の内面図である。
【図7】本発明の実施形態を示し、一方の電池連結ブロック体を電池集合体の一方側に配置し、基板の電極挿入孔に各電極を挿入された状態を示す斜視図である。
【図8】従来例の電源装置の分解斜視図である。
【図9】従来例の電源装置の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図7は本発明の実施形態を示す。図1及び図2(a)に示すように、電源装置Aは、積層された複数(12個)の電池セル2,3から成る電池集合体1と、この電池集合体1の両側に配置された一対の電池連結ブロック体10,20とを備えている。
【0014】
電池集合体1は、図3に詳しく示すように、12個の電池セル2,3より構成されている。電池セル2,3としては、その電極2b,3bの配置が異なる2種類のもの、つまり、第1電池セル2と第2電池セル3が使用されている。
【0015】
第1電池セル2は、図4(a)に示すように、扁平長方形のセル本体2aと、その左右の側面より突出された一対の電極(プラス電極とマイナス電極)2bを有する。一対の電極2bは、一方がセル本体2aの表面側に、他方がセル本体2aの裏面側にそれぞれ突出し、且つ、中心線に対して同じ側で偏った位置に配置されている。表裏逆転配置すると、一対の電極2bは、平面視で共に同じ左右逆位置に位置する。各電極2bは、薄膜形状(板状)である。
【0016】
第2電池セル3は、図4(b)に示すように、扁平長方形のセル本体3aと、その左右の側面より突出された一対の電極(プラス電極とマイナス電極)3bを有する。一対の電極3bは、一方がセル本体3aの表面側に、他方がセル本体3aの裏面側にそれぞれ突出し、且つ、中心線に対して異なる側で偏った位置に配置されている。表裏逆転配置すると、一対の電極3bは、平面視でそれぞれが左右逆転した位置にそれぞれ位置する。各電極3bは、薄膜形状(板状)である。
【0017】
このように構成された第1電池セル2と第2電池セル3は、図3に示すように、交互で、且つ、隣り合う第1電池セル2と第2電池セル3の互いに異なる極の電極2b,3b同士が密着状態で対向配置されて積層されている。これにより、電池集合体1は、12個の電池セル2,3が全て直列接続されている。
【0018】
一方の電池連結ブロック体10は、図2(a)、図2(b)、図5、図6に詳しく示すように、絶縁ケース本体11と、絶縁ケース本体11の枠内スペースに配置された基板12と、絶縁ケース本体11の枠内スペースを外面側より被う絶縁カバー13とを有する。
【0019】
絶縁ケース本体11には、電池集合体1の一方側より突出された電極2b、3b位置に対応する6つの位置に電極挿入孔11aが開口されている。
【0020】
基板12には、電池集合体1の一方側より突出された一対の電極2b、3b位置に対応する各位置(つまり、絶縁ケース本体11の各電極挿入孔11aと同じ位置)に電極挿入孔14が開口されている。
【0021】
基板12には、電圧検出用の回路パターン部17(図2(b)に示す)が設けられている。回路パターン部17は、各電極挿入孔14の近くに電極用ランド部17aをそれぞれ有する。
【0022】
電池集合体1の一方側より突出された一対の電極2b、3bは、図2(a)、(b)に詳しく示すように、絶縁ケース本体11と基板12の各電極挿入孔11a,14に挿入されている。電極挿入孔14より突出された一対の電極2b、3bの箇所は、回路パターン部17a上に重なるよう折り曲げられ、電極用ランド部17aに超音波接続、レーザー接続等によって接続されている。つまり、基板12は、電極2b、3bの空きスペースに搭載され、且つ、電極2b、3bが基板12に端子などを介することなく直接接続されている。これにより、電池連結ブロック体10の小型化が図られていると共に、基板12の実装面積の拡大が図られている。
【0023】
基板12には、下記で説明するように他方の電池連結ブロック体20側も含めて、各電極2b,3b位置における電圧情報が導かれる。基板12には、電池セル2、3の異常電圧検出回路が構成されており、これら情報に基づいて各電池セル2,3の出力電圧に関する異常の有無を判断する。
【0024】
絶縁カバー13は、4つの分割カバー部13a〜13dより構成されている。両端の分割カバー部13a,13dは、絶縁ケース本体11に装着されている。中央の2つの分割カバー部13b,13cは、両端の分割カバー部13a,13dにそれぞれ回転自在に支持されている。中央の2つの分割カバー部13b,13cを開位置にすると、図2(a)及び図5に示すように、6箇所の電極用端子16が露出される。中央の2つの分割カバー部13b,13cを閉位置とすると、基板12や電極用端子16の収容スペースを塞ぐ。閉位置では、中央の2つの分割カバー部13b,13cは、絶縁ケース本体11に装着される。これにより、一方の電池連結ブロック体10は、電池集合体1の一方側に突出する電極2b,3bの絶縁を行っている。
【0025】
他方の電池連結ブロック体20は、一方の電池連結ブロック体10とほぼ同様の構成であり、絶縁ケース本体21(図1に示す)と絶縁カバー22(図1に示す)と基板(図示せず)を有する。他方の電池連結ブロック体20は、電池集合体1の他方側に突出する電極2b,3bの絶縁を行っている。他方の電池連結ブロック体20側より得られた各電極の電圧は、電圧検出用の電線(図示せず)を介して一方の電池連結ブロック体10の基板12に導かれる。
【0026】
又、絶縁ケース本体21には、一対の出力用端子(図示せず)が設けられている。一対の出力用端子より電源装置Aの出力が得られるようになっている。
【0027】
次に、電源装置Aの組み付け作業の概略を説明する。一方の電池連結ブロック体10を電池集合体1の一方側に正対する方向から近づけ、各一対の電極2b,3bを絶縁ケース本体11及び基板14の各電極挿入孔11a,14より挿入する。すると、図7に示すように、各一対の電極2b,3bの先端側が基板12の外側に突出する。次に、電極挿入孔14より突出した一対の電極2b、3bの箇所を、回路パターン部17a上に重ねるよう折り曲げる。そして、折り曲げた一対の電極2b、3bの箇所と電極用ランド部17aを超音波接続、レーザー接続等によって接続する。中央の分割カバー部13b、13cを閉位置とし、絶縁ケース本体11に装着する。
【0028】
他方の電池連結ブロック体20の組み付けも、一方の電池連結ブロック体10の組み付けと略同様の作業で行うことができ、これで完了する。
【0029】
以上説明したように、電池集合体1と、電池連結ブロック体10、20とを備え、一方の電池連結ブロック体10は、電極挿入孔14と電圧検出用の回路パターン部17が設けられた基板12を有し、対向配置された一対の電極2b、3bが回路パターン部17に共に直接接続されている。従って、複数箇所の一対の電極2b,3b間の接続とその電極位置の電圧情報を得るのに、部品としては基板12のみで良いため、従来例に較べて少ない部品点数で良い。そして、各電極接続箇所毎に必要な部品がなく、小さい設置スペースで配置できるため、電池セル2,3が増加しても部品点数、作業工数の増加を極力抑えることができ、しかも、装置の小型化、軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0030】
基板12は、各電池セル2,3の異常電圧検出回路を構成するものが使用されている。従って、更なる部品点数の削減、装置の小型化、軽量化、低コスト化等を図ることができる。
【0031】
基板12には電極挿入孔14が設けられ、この電極挿入孔14に一対の電極2b、3bが挿入され、電極挿入孔14より突出された一対の電極2b、3bの箇所が回路パターン部17上に重なるよう折り曲げられ、回路パターン部17に直接接続されている。従って、一方の電池連結ブロック体10を電池集合体1に組み付けた状態では、一対の電極2b、3bの接続位置が一方の電池連結ブロック体10の外側位置となるため、一対の電極2b、3bと回路パターン部17a間の接続作業性が良い。
【0032】
回路パターン部17は、各電極用端子16の近くに電極用ランド部17aを有する。従って、電極2b、3bの寸法が短くて良い。
【符号の説明】
【0033】
A 電源装置
1 電池集合体
2 第1電池セル(電池セル)
3 第2電池セル(電池セル)
2b,3b 電極
10 電池連結ブロック体
12 基板
14 電極挿入孔
17 回路パターン部
17a 電極用ランド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電池セルを有し、隣り合う前記電池セルの互いの電極同士が対向して配置された電池集合体と、
前記電池集合体の前記電極が突出された側に配置され、突出された前記電極を被う電池連結ブロック体とを備え、
前記電池連結ブロック体は、電圧検出用の回路パターン部が設けられた基板を有し、前記回路パターン部と対向配置された前記電極が直接接続されたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置であって、
前記基板には、対向配置された前記電極に対応する位置に電極挿入孔が設けられ、前記電極挿入孔に前記電極が挿入され、前記電極挿入孔より突出された前記電極の箇所が前記回路パターン部上に重なるよう折り曲げられ、前記回路パターン部に直接接続されたことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2記載の電源装置であって、
前記回路パターン部は、前記電極入孔の近くに電極用ランド部を有することを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電源装置であって、
前記基板は、前記電池セルの異常電圧検出回路を構成するものであることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−105699(P2013−105699A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250504(P2011−250504)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】