電源装置
【課題】車両等に搭載される電源装置の接地状態を正確に監視する。
【解決手段】電源装置1は、高圧バッテリー11から入力された直流電力を所定電圧の直流電力に変換して補機バッテリー9および電装品10へ供給するものであり、電圧変換回路2、電圧測定回路3、電流測定回路4およびマイコン5を備える。電圧変換回路2は、高圧バッテリー11から入力される直流電力の電圧変換を行う。電圧測定回路3は、電源装置1内のグランド電位と、電源装置1内のグランド電位と接地用ケーブル6を介して接続されているシャーシ8の接地点との間の電位差を示す電圧値を測定する。電流測定回路4は、負荷電流の電流値を測定する。マイコン5は、電圧測定回路3により測定された電圧値と、電流測定回路4により測定された電流値とに基づいて、電源装置1の接地状態に応じた抵抗値を算出する。
【解決手段】電源装置1は、高圧バッテリー11から入力された直流電力を所定電圧の直流電力に変換して補機バッテリー9および電装品10へ供給するものであり、電圧変換回路2、電圧測定回路3、電流測定回路4およびマイコン5を備える。電圧変換回路2は、高圧バッテリー11から入力される直流電力の電圧変換を行う。電圧測定回路3は、電源装置1内のグランド電位と、電源装置1内のグランド電位と接地用ケーブル6を介して接続されているシャーシ8の接地点との間の電位差を示す電圧値を測定する。電流測定回路4は、負荷電流の電流値を測定する。マイコン5は、電圧測定回路3により測定された電圧値と、電流測定回路4により測定された電流値とに基づいて、電源装置1の接地状態に応じた抵抗値を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータで駆動される電気自動車やハイブリッド自動車などの車両には、高電圧の電池が搭載されている。この高電圧電池から出力される直流電力は、電気モータへ供給される以外にも、電源装置(DC/DCコンバータ)によって電圧変換された後、車両の各種電装品や補機バッテリー等の負荷に供給される。こうした電源装置は一般的に、金属などの導電性を有する材料を用いて形成されたケース内に収納されている。このケースが車両のシャーシ(フレーム)に金属製のネジ等で固定されることで、電源装置はケースおよびシャーシを介して他の車載電気機器と共通の車両アースに接地される。また、電源装置とシャーシの間には、負荷への電力供給の際に負荷電流を流すための接地用ケーブルが接続される。
【0003】
上記のような電源装置において、シャーシに対するケースの固定が不十分であったり、接地用ケーブルの接続が不十分であったりすると、接地が不完全となる場合がある。その場合、負荷への電力供給の際に電源装置と高電圧電池の間を接続している電線に想定外の大電流が流れることで、発熱や破損などの不具合を生じるおそれがある。そこで、こうした不具合を防止して安定した電源を安全に供給するために、電源装置の接地状態を監視することが求められている。
【0004】
車両に搭載された電気機器の接地状態の監視に関して、たとえば特許文献1には、電源からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池を充電する充電装置において、蓄電池と接続されているチャージ出力用の電線と車体接続用の電線との間の電位差を検出し、これに基づいて蓄電池と車体との間のリークの有無を確認する技術が開示されている。また、特許文献2には、DC/DCコンバータの動作中に、装置の外部に接続されている信号グランド線と装置内部のパワーグランドとの接続をスイッチにより切り離し、このときの信号グランドに対するパワーグランドの電位差を測定することで、パワーグランドと装置ケースとの間の接続状態を確認して接地状態を監視する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−276674号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0121807A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術は、蓄電池と車体間のリークの有無を確認するものであるため、電源装置が確実に接地されているかどうかを監視することはできない。一方、特許文献2に開示される技術では、信号グランド線に流れる電流が少ない場合などにおいて、信号グランド線に対するパワーグランドの電位差を正しく測定することができずに、接地状態を正確に監視できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電源装置は、入力された直流電力を所定電圧の直流電力に変換して外部へ供給するものであって、入力された直流電力の電圧変換を行う電圧変換回路と、電源装置内のグランド電位と電源装置外に設けられグランド電位と接地用ケーブルを介して接続されている接地点との間の電位差を示す電圧値を測定する電圧測定回路と、電源装置から直流電力が供給される際に流れる負荷電流の電流値を測定する電流測定回路と、電圧測定回路により測定された電圧値と電流測定回路により測定された電流値とに基づいて電源装置の接地状態に応じた抵抗値を算出する演算回路とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両等に搭載される電源装置の接地状態を正確に監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による電源装置を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図2】電圧測定回路の一例を示す図である。
【図3】正常時の接続抵抗を示すブロック図である。
【図4】正常時の接続抵抗の合成抵抗値を求める等価回路を示す図である。
【図5】異常発生時の接続抵抗を示すブロック図である。
【図6】異常発生時の接続抵抗の合成抵抗値を求める等価回路を示す図である。
【図7】接続抵抗の抵抗値の設定例を示す表である。
【図8】電位差と負荷電流との間の特性の一例を示すグラフである。
【図9】接地状態を表す抵抗値と負荷電流との間の特性の一例を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態による電源装置の一変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態による電源装置の他の変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の一実施形態による電源装置の別の変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の一実施形態による電源装置のさらなる変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図14】本発明による電源装置内部の電圧変換回路の一例を示す回路図である。
【図15】本発明による電源装置内部の電圧変換回路の部品配置例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の一実施形態による電源装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態による電源装置1を含む電源システムの構成を示すブロック図である。この電源装置システムは、たとえば電気自動車やハイブリッド自動車など、電気モータで駆動される車両に搭載されて使用される。
【0011】
図1に示す電源システムは、電源装置1、補機バッテリー9、電装品10および高圧バッテリー11を有する。電源装置1および高圧バッテリー11は、導電性を有する金属製のケース111、121でそれぞれ覆われており、シールド線12a、12bを介して互いに接続されている。電源装置1のケース111は、金属製のボルト13a、13bにより車両のシャーシ8に固定されている。高圧バッテリー11のケース121も同様に、金属製のボルト13c、13dによりシャーシ8に固定されている。これにより、電源装置1および高圧バッテリー11がシャーシ8と電気的に接続され、共通の車両アースに接地される。
【0012】
電源装置1は、電圧変換回路2、電圧測定回路3、電流測定回路4およびマイコン5を備えている。これらはケース111内に収納されており、ケース111の電位を共通のグランド(GND)電位として接地されている。ケース111には、接地用ケーブル6の一端に接続されている金属製のボルト13eが取り付けられている。接地用ケーブル6の他端は、シャーシ8に取り付けられた金属製のボルト13fと接続されている。このようにしてケース111とシャーシ8が接地用ケーブル6を介して電気的に接続されることで、前述のボルト13a、13bによる接地に加えて、ボルト13fが取り付けられているシャーシ8の部分を接地点として、さらに電源装置1の接地が行われている。
【0013】
電圧変換回路2は、シールド線12a、12bを介して高圧バッテリー11から入力される高電圧の直流電力を低電圧の直流電力に変換し、その電圧変換後の直流電力を補機バッテリー9および電装品10へと出力する。電圧変換回路2の(+)側出力は、電流測定回路4とケース111に設けられたプラグ6aとを介して、補機バッテリー9および電装品10の(+)端子と接続されている。一方、電圧変換回路2の(−)側出力は、ボルト13e、接地用ケーブル6およびボルト13fを介して、補機バッテリー9の(−)端子と接続されている。また、ボルト13e、接地用ケーブル6、ボルト13fおよびシャーシ8を介して、電装品10の(−)端子と接続されている。これにより、電源装置1を介して、高圧バッテリー11から補機バッテリー9および電装品10へ直流電力が供給される。
【0014】
なお、補機バッテリー9および電装品10へ直流電力を供給する際には、これらで消費される電流のリターン経路として接地用ケーブル6が作用する。そのため、接地用ケーブル6には、補機バッテリー9および電装品10において消費される最大電流量に応じた耐電流性能を有するものを使用することが好ましい。
【0015】
電圧測定回路3は、その一端がケース111に設けられたプラグ6bおよび検出用ケーブル7を介して、シャーシ8に取り付けられたボルト13fに接続されており、他端がケース111に取り付けられたボルト13eに接続されている。この2つの接続点間の電位差を示す電圧値を測定することで、ケース111の電位すなわち電源装置1内のGND電位と、シャーシ8との間の電位差を測定する。
【0016】
電流測定回路4は、補機バッテリー9および電装品10へ直流電力を供給する際に、電圧変換回路2から出力される直流電流(負荷電流)の電流値を測定する。
【0017】
マイコン5は、電圧測定回路3により測定された電圧値と、電流測定回路4により測定された電流値とを取り込み、これらに基づいて電源装置1の接地状態に応じた抵抗値を計算する。より具体的には、電圧測定回路3により測定された電圧値を電流測定回路4により測定された電流値で除算することで、シャーシ8とケース111との間の接続抵抗値を算出する。そして、計算された抵抗値に基づいて、電源装置1の接地状態が正常であるか否かを判断し、電圧変換回路2に対する動作制御を必要に応じて行う。
【0018】
図2は、電圧測定回路3の一例を示す図である。プラグ6bおよび検出用ケーブル7を介したボルト13fの電位(シャーシ8の電位)と、ボルト13eの電位(ケース111の電位)、すなわち電源装置1のGND電位とは、電圧測定回路3において差動増幅回路301にそれぞれ入力される。差動増幅回路301は、これらの間の電位差を増幅し、マイコン5へ出力する。このとき、接地用ケーブル6に流れる電流の向きの変化に応じて電位差の正負が反転する。そのため、差動増幅回路301の入力側には、電流の向きに関わらず電位差を測定できるようにするためのオフセット回路302が設けられている。
【0019】
なお、電圧測定回路3が有する差動増幅回路301への2つの入力線のうち、シャーシ8の接地点とボルト13fにより接続されている側の入力線は、抵抗304を介して電圧測定回路3の電源VCCに接続されている。これにより、プラグ6bと検出用ケーブル7とが接続されているときにはプラグ6bに電流が流れるようにして、プラグ6bの端子接触面が酸化皮膜等で覆われるのを予防する。すなわち、酸化皮膜のような端子接触面の電気的接続を妨げる皮膜による導通不良がプラグ6bにおいて生じると、シャーシ8と電源装置1のGND電位との間の電位差を電圧測定回路3が正しく測定できなくなるため、これを防いで電位差を正しく測定できるようにする。
【0020】
次に、電源装置1における接地状態の判断について、以下詳細に説明する。
【0021】
正常な状態において、電源装置1のケース111と高圧バッテリー11のケース121とは、ボルト13a〜13dによってシャーシ8にそれぞれ緩みなく固定されている。また、接地用ケーブル6は、ボルト13e、13fによってケース111とシャーシ8との間に緩みなく接続されている。この状態で電圧変換回路2から出力された電流は、電流測定回路4を通って補機バッテリー9や電装品10を経由した後、接地用ケーブル6、またはシャーシ8およびケース111を介して電圧変換回路2へ戻ってくる。このとき、接地用ケーブル6の抵抗値はほぼ0Ωであり、接地用ケーブル6での電圧降下はほとんど発生しない。そのため、シャーシ8と電源装置1のGND電位とはほぼ同電位となり、電圧測定回路3で測定される電位差はほぼ0Vとなる。したがって、マイコン5により計算される抵抗値は0Ωに近い値となる。
【0022】
上述した正常時の接地状態を表す抵抗値の算出方法について、さらに詳しく説明する。図3は、正常時の接地用ケーブル6、ボルト13a〜13dおよびシールド線12a、12bによる接続抵抗を示すブロック図である。図4は、図3に示した接続抵抗の合成抵抗値を求める等価回路を示す図である。
【0023】
図3において符号17、18にそれぞれ示すように、電源装置1のケース111とシャーシ8との間における接地用ケーブル6の接続抵抗値をRgと表し、ボルト13a、13bの接続抵抗値をRc1と表す。また、符号19に示すように、高圧バッテリー11のケース121とシャーシ8との間におけるボルト13c、13dの接続抵抗値をRc2と表す。符号20に示すように、高圧バッテリー11のケース121と電源装置1のケース111との間におけるシールド線12a、12bの接続抵抗値をRsと表す。これらの接続抵抗値を合成した合成抵抗値をRtotalと表すと、図4に示す等価回路からRtotalは以下の式(1)により表される。
Rtotal=1/{1/Rg+1/Rc1+1/(Rc2+Rs)} ・・・(1)
【0024】
ここで、前述のように接地用ケーブル6が補機バッテリー9および電装品10において消費される最大電流量に応じた耐電流性能を有するものである場合、その接続抵抗値Rgはほぼ0Ωであるため、式(1)で表される合成抵抗値Rtotalも0Ωに近い値となる。したがって、マイコン5では0Ωに近い抵抗値が計算される。
【0025】
続いて異常発生時の例について説明する。電源装置1のケース111をシャーシ8に固定するボルト13a、13bは、緩み等の理由により、その接続抵抗値が正常時に比べて著しく増大する場合がある。また、接地用ケーブル6も、未接続、断線、劣化等の理由により、その接続抵抗値が正常時に比べて著しく増大する場合がある。これらの異常発生時における接続抵抗値が、高圧バッテリー11のケース121をシャーシ8に固定するボルト13c、13dの接続抵抗値や、シールド線12a、12bの接続抵抗値よりも十分に大きいと、補機バッテリー9および電装品10で消費される電流のリターン経路は、接地用ケーブル6ではなく、ボルト13c、13dおよびシールド線12a、12bとなる。
【0026】
シールド線12a、12bは、大電流を流すことを目的とするものではないため、通常は接地用ケーブル6よりも大きな抵抗値を有している。そのため、消費電流に応じた電圧降下がシールド線12a、12bにおいて発生し、その電圧降下による電位差が電圧測定回路3により測定される。その結果、マイコン5により計算される抵抗値は、正常時のように0Ωに近い値とはならない。これにより、電源装置1の接地状態において何らかの異常が発生していると推測できる。
【0027】
上述した異常発生時の接地状態を表す抵抗値の算出方法について、さらに詳しく説明する。図5は、異常発生時のボルト13a〜13dおよびシールド線12a、12bによる接続抵抗を示すブロック図である。図6は、図5に示した接続抵抗の合成抵抗値を求める等価回路を示す図である。なお、図5、6では、接地用ケーブル6が未接続や断線等の理由により機能せず、そのため回路構成上は存在していないときの例を示している。
【0028】
図5、6に示した異常発生時の合成抵抗値Rtotalは、前述の式(1)において1/Rg=0とすることで以下の式(2)のように表すことができる。
Rtotal=1/{1/Rc1+1/(Rc2+Rs)} ・・・(2)
【0029】
ここで、シールド線12a、12bの接続抵抗値Rsは、前述のように0Ωに近い値ではなく、ある程度の抵抗値をもっている。したがって、ボルト13a、13bの接続抵抗値Rc1が緩み等の理由で増大した場合、式(2)で表される合成抵抗値Rtotalは、正常時のように0Ωに近い値とはならない。そのため、マイコン5において計算される抵抗値も0Ωではなく、ある程度の抵抗値となる。
【0030】
次に、試作品を使用して行ったGND電位とシャーシ8間の電位差の実測結果と、その実測結果から求めた電源装置1の接地状態を表す抵抗値とを説明する。図7は、試作品における各接続抵抗の抵抗値の設定例を示した表である。図7の設定例に示すように、接地用ケーブル6の接続抵抗値Rgは、未接続や断線等による異常発生時には無限大、すなわち1/Rg=0とし、正常時には0.7mΩに設定する。また、他の各接続抵抗値Rc1、Rc2、Rsは、異常発生時、正常時のいずれにおいても、4.5mΩ、0.2mΩ、6.3mΩにそれぞれ設定する。
【0031】
図8は、図7に示した接続抵抗の設定値による試作品を用いて実測したGND電位とシャーシ8間の電位差と負荷電流との間の特性の一例を示すグラフである。図8において、図中の上側に示すグラフは異常発生時の特性を示しており、下側に示すグラフは正常時の特性を示している。これらのグラフでは、縦軸の値は電圧測定回路3により測定された電位差の大きさ(V)を表しており、横軸の値は電流測定回路4により測定された負荷電流の大きさ(A)を表している。
【0032】
図9は、図8のグラフに示した実測結果から求めた電源装置1の接地状態を表す抵抗値と負荷電流との間の特性の一例を示すグラフである。図9においても図8と同様に、図中の上側に示すグラフは異常発生時の特性を示しており、下側に示すグラフは正常時の特性を示している。これらのグラフでは、縦軸の値はマイコン5により算出された抵抗値の大きさ(mΩ)を表しており、横軸の値は電流測定回路4により測定された負荷電流の大きさ(A)を表している。
【0033】
なお、図7のRc1、Rs、Rc2の各接続抵抗値は、実際にとり得る値の範囲内でなるべく小さな値とした。一方、接地用ケーブル6の接続抵抗値Rgは、電装品10および補機バッテリー9で消費される電流量に応じた範囲内でなるべく大きな値とした。このようにすることで、図8および9に示した各特性における異常時と正常時との差を想定される範囲内でなるべく低く抑えることができる。すなわち、図7に示した接続抵抗の設定値のときに異常発生の有無を確実に判断できれば、どのような状況下においても異常発生の有無を判断できることが分かる。
【0034】
図8から、異常発生時のグラフは正常時のグラフに比べて電位差が大きく、両グラフは負過電流の増加に比例して電位差も増加していることが分かる。そのため、電圧測定回路3により測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを判別することで異常の有無を判断する場合、電位差に対して設定すべき閾値の大きさは、負荷電流の大きさに応じて変化することになる。
【0035】
たとえば図8中に示すように、閾値として2.6Vを設定した場合を考える。この場合、負荷電流が30A〜120A程度の範囲では、測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを正しく判別できる。しかし、これ以外の範囲、たとえば200Aのときには、両グラフとも電位差が閾値の2.6Vを超えているので、測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを判別できない。そのため、正常な接地状態であるにも関わらず、異常であると判断してしまう可能性がある。
【0036】
また、たとえば図8中に示すように、閾値として2.8Vを設定した場合を考える。この場合、負荷電流が上記のように200Aのときであっても、測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを正しく判別できる。しかし、付加電流が比較的小さいとき、たとえば60Aのときには、両グラフとも電位差が閾値の2.8Vを下回っているので、測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを判別できない。そのため、接地状態において異常が発生しているにも関わらず、正常であると判断してしまう可能性がある。
【0037】
一方、図9からは、異常発生時のグラフは正常時のグラフに比べて抵抗値が大きく、両グラフは負過電流が小さい範囲を除いて、負過電流の大きさに関わらずほぼ一定の抵抗値を示していることが分かる。そのため、マイコン5により算出された抵抗値が図9のグラフのいずれに対応するものであるかを判別することで異常の有無を判断する場合、抵抗値に対して設定すべき閾値の大きさは、負荷電流の大きさに関わらず一定とすればよいことになる。
【0038】
たとえば図9中に示すように、閾値として2mΩを設定した場合を考える。この場合、負荷電流が60Aまたは200Aいずれの場合であっても、算出された抵抗値が図9のグラフのいずれに対応するものであるかを正しく判別できる。そのため、図8で説明したような誤判断を生じることがなくなり、接地状態が正常であるか否かを確実に判断することができる。
【0039】
電源装置1では、以上説明したようにして、GND電位とシャーシ8間の電位差の測定結果ではなく、電源装置1の接地状態を表す抵抗値の算出結果を用いて、接地状態の判断を行う。これにより、負荷電流が比較的小さい場合であっても、接地状態における異常の有無を確実に判断することができる。
【0040】
なお、マイコン5により計算した抵抗値があらかじめ決められた閾値以上になることで電源装置1の接続状態に異常が発生したと判断される場合、マイコン5により電圧変換回路2の動作を制御し、電源装置1から供給する直流電力を制限することが好ましい。このようにすれば、接地用ケーブル6が正しく接続されていないときに、電装品10および補機バッテリー9で消費される負荷電流がシールド線12a、12bなど他の経路に流れることを未然に防止することができる。その結果、シールド線12a、12b等に想定外の大電流が流れることで生じる発熱や破損などを回避することできる。
【0041】
以上説明した実施の形態によれば、電源装置1は、高圧バッテリー11から入力された直流電力を所定電圧の直流電力に変換して外部の補機バッテリー9および電装品10へ供給するものであり、電圧変換回路2、電圧測定回路3、電流測定回路4およびマイコン5を備える。電圧変換回路2は、高圧バッテリー11から入力される直流電力の電圧変換を行う。電圧測定回路3は、電源装置1内のグランド電位と、電源装置1外に設けられ電源装置1内のグランド電位と接地用ケーブル6を介して接続されているシャーシ8の接地点との間の電位差を示す電圧値を測定する。電流測定回路4は、電源装置1から直流電力が供給される際に流れる負荷電流の電流値を測定する。マイコン5は、電圧測定回路3により測定された電圧値と、電流測定回路4により測定された電流値とに基づいて、電源装置1の接地状態に応じた抵抗値を算出する。このようにしたので、算出された抵抗値に基づいて、車両に搭載される電源装置1の接地状態を正確に監視できる。
【0042】
次に、電源装置1の変形例について説明する。図10は、本発明の一実施形態による電源装置1の一変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。図10に示す電源装置1は、図1に示した電源装置1の各構成に加えて、外部に接続される各種装置に対して信号を出力するための信号出力回路14aをさらに備えている。この信号出力回路14aを用いることで、マイコン5により計算した抵抗値が前述のように電源装置1の接続状態に異常が発生したことを示す閾値以上となったときに、所定の信号を電源装置1から外部に接続された不図示の車両制御装置やパソコン等へ出力することができる。そのため、車両の運転中や保守点検時に電源装置1の接地状態に異常が発生した場合、そのことを運転者や作業者に通知することが可能となる。
【0043】
図11は、本発明の一実施形態による電源装置1の他の変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。図11に示す電源装置1は、図10に示した電源装置1の各構成に加えて、たとえばLEDランプや液晶ディスプレイによる表示回路15をさらに備えている。この表示回路15は、車両の運転席付近等に設置され、マイコン5により計算した抵抗値が閾値以上となることで信号出力回路14aから前述のような信号が出力されると、その信号出力に応じて所定の表示を行う。これにより、車両の運転中に電源装置1の接地状態において異常が発生した場合、そのことを運転者に通知することができる。そのため、運転者は事故が起きる前に修理等の必要な措置を講じることができる。
【0044】
図12は、本発明の一実施形態による電源装置1の別の変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。図12に示す電源装置1は、図1に示した電源装置1の各構成に加えて、マイコン5による抵抗値の算出結果を記憶するためのメモリ16をさらに備えている。マイコン5が一定間隔ごとに算出する抵抗値の履歴をメモリ16に所定回数分だけ記憶させておくことで、たとえば経年劣化等の原因によって抵抗値が次第に増加するような場合に、メモリ16に記憶された履歴から以後の抵抗値の変化を推測することができる。そのため、電源装置1の接地状態に異常が発生する可能性を事前に察知し、必要に応じて適切な措置を講じることができる。
【0045】
図13は、本発明の一実施形態による電源装置1のさらなる変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。図13に示す電源装置1は、図1に示した電源装置1の各構成に加えて、情報入出力回路14bと、図12のメモリ16とをさらに備えている。メモリ16に記憶された抵抗値の履歴は、情報入出力回路14bを介して外部に接続された不図示の車両制御装置やパソコン等へ出力することで、事故発生時の原因究明等に役立てることができる。また、車両制御装置やパソコン等から情報入出力回路14bを介して、マイコン5の処理に用いるための様々な情報をメモリ16に書き込めるようにしてもよい。たとえば、前述のように電源装置1の接地状態が異常であるか否かを判断するための比較に用いられる閾値の情報を、外部から情報入出力回路14bを介してメモリ16に書き込む。マイコン5は、この閾値の情報に基づいて、算出された抵抗値と閾値とを比較し、電源装置1の接地状態における異常の有無を判断する。このようにすれば、閾値の変更などのデータ更新を容易に行うことができる。
【0046】
ここで、電圧変換回路2について詳細に説明する。図14は、本発明による電源装置1内部の電圧変換回路2の一例を示す回路図である。電圧変換回路2は、双方向に電圧変換可能なDC/DCコンバータであり、降圧回路(HV回路)および昇圧回路(LV回路)を有している。これらの回路では、ダイオード整流ではなく同期整流を行う構成としている。また、HV/LV変換で高出力とするために、スイッチング素子への大電流部品の採用や、平滑コイルの大型化を図っている。
【0047】
具体的には、HV/LV側共に、リカバリーダイオードを持つMOSFETを利用したHブリッジ型・同期整流スイッチング回路構成(H1〜H4)とした。これらのスイッチング回路のスイッチング制御にあっては、LC直列共振回路(Cr,Lr)を用いて高スイッチング周波数(100kHz)でゼロクロススイッチングさせ、変換効率を向上させて熱損失を低減するようにした。加えて、アクティブクランプ回路を設けて、降圧動作時の循環電流による損失を低減させると共に、スイッチング時のサージ電圧発生を抑制してスイッチング素子の耐圧を低減させることで、回路部品の低耐圧化を図っている。これらにより装置の小型化を実現している。
【0048】
さらに、LV側の高出力を確保するために、全波整流型の倍電流(カレントダブラー)方式とした。なお、高出力化にあたり、複数のスイッチング素子を並列同時作動させることで高出力を確保している。図14の例では、SWA1〜SWA4、SWB1〜SWB4のように4素子並列とした。また、スイッチング回路および平滑リアクトルの小型リアクトル(L1,L2)を、対称性を持たせるように2回路並列配置とすることで高出力化している。このように、小型リアクトルを2回路配置とすることで、大型リアクトル1台を配置させる場合に比べて、DC/DCコンバータ装置全体の小型化を可能としている。
【0049】
図15は、本発明による電源装置1内部の電圧変換回路2の部品配置例を示す分解斜視図である。図15に示すように、電圧変換回路2の各構成部品は、金属製(例えば、アルミダイカスト製)のケース111内に収納されている。ケース111の開口部にはケースカバー112がボルト固定される。ケース111内の底面部分には、主トランス33、インダクタ素子34、スイッチング素子H1〜H4が搭載されたパワー半導体モジュール35、スイッチング素子36が搭載されている昇圧回路基板32、およびコンデンサ38等が載置されている。これらの各構成部品のうち主な発熱部品は、主トランス33、インダクタ素子34、パワー半導体モジュール35およびスイッチング素子36である。
【0050】
なお、図15に示した各構成部品と図14の回路図との対応を記載すると、図15の主トランス33は図14のトランスTrに、インダクタ素子34はカレントダブラーのリアクトルL1,L2に、スイッチング素子36はスイッチング素子SWA1〜SWA4,SAWB1〜SWB4にそれぞれ対応している。昇圧回路基板32には、図14のスイッチング素子S1,S2等も搭載されている。
【0051】
スイッチング素子H1〜H4の端子39はケース111の上方へと延在しており、パワー半導体モジュール35の上方に配置された降圧回路基板31と接続されている。降圧回路基板31は、ケース111の底面から上方に突出した複数の支持部材上に固定される。パワー半導体モジュール35においては、スイッチング素子H1〜H4は、パターンが形成された金属基板上に実装されており、金属基板の裏面側はケース111の底面に密着するように固定されている。スイッチング素子36が実装される昇圧回路基板32も同様の金属基板で構成されている。なお図15では、昇圧回路基板32はコンデンサ38等の陰に隠れて見えないので、その位置を破線で示している。
【0052】
制御回路基板30には、昇圧回路や降圧回路に設けられたスイッチング素子を制御する制御回路が実装されている。制御回路基板30は金属製のベース板37上に固定されている。ベース板37はケース111の底面部から上方に突出した複数の支持部111aに固定されている。これにより、制御回路基板30は、ケース底面部に配置された発熱部品(主トランス33、インダクタ素子34やパワー半導体モジュール35など)の上方に、ベース板37を介して配置されることになる。
【0053】
以上のとおり、上記実施形態によれば、大電流が流れていない時でも電源装置1の接地状態の異常を検出できるようになる。また、異常発生時に電圧変換回路2の出力を制限することで発熱や破損を回避することできる。さらに、異常発生をユーザーが知ることで事故が起こる前に必要な措置を講じることができるようになる。加えて、万が一事故が起きた際には、原因究明に役立てることが可能となる。また、異常が発生する可能性を事前に察知することもできるようになる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態を詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では電源装置1を電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載される電源装置として説明したが、これ以外の用途に用いる電源装置であってもよい。たとえば、通常の自動車や電車などの他の種類の車両に搭載される電源装置としてもよいし、車両以外のものに搭載される電源装置としてもよい。
【0055】
以上説明した実施形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
1 電源装置
2 電圧変換回路
3 電圧測定回路
4 電流測定回路
5 マイコン
6 接地用ケーブル
6a、6b プラグ
7 検出用ケーブル
8 シャーシ
9 補機バッテリー
10 電装品
11 高圧バッテリー
12a、12b シールド線
13a、13b、13c、13d、13e、13f ボルト
14a 信号出力回路
14b 情報入出力回路
15 表示回路
16 メモリ
111 ケース
121 ケース
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータで駆動される電気自動車やハイブリッド自動車などの車両には、高電圧の電池が搭載されている。この高電圧電池から出力される直流電力は、電気モータへ供給される以外にも、電源装置(DC/DCコンバータ)によって電圧変換された後、車両の各種電装品や補機バッテリー等の負荷に供給される。こうした電源装置は一般的に、金属などの導電性を有する材料を用いて形成されたケース内に収納されている。このケースが車両のシャーシ(フレーム)に金属製のネジ等で固定されることで、電源装置はケースおよびシャーシを介して他の車載電気機器と共通の車両アースに接地される。また、電源装置とシャーシの間には、負荷への電力供給の際に負荷電流を流すための接地用ケーブルが接続される。
【0003】
上記のような電源装置において、シャーシに対するケースの固定が不十分であったり、接地用ケーブルの接続が不十分であったりすると、接地が不完全となる場合がある。その場合、負荷への電力供給の際に電源装置と高電圧電池の間を接続している電線に想定外の大電流が流れることで、発熱や破損などの不具合を生じるおそれがある。そこで、こうした不具合を防止して安定した電源を安全に供給するために、電源装置の接地状態を監視することが求められている。
【0004】
車両に搭載された電気機器の接地状態の監視に関して、たとえば特許文献1には、電源からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池を充電する充電装置において、蓄電池と接続されているチャージ出力用の電線と車体接続用の電線との間の電位差を検出し、これに基づいて蓄電池と車体との間のリークの有無を確認する技術が開示されている。また、特許文献2には、DC/DCコンバータの動作中に、装置の外部に接続されている信号グランド線と装置内部のパワーグランドとの接続をスイッチにより切り離し、このときの信号グランドに対するパワーグランドの電位差を測定することで、パワーグランドと装置ケースとの間の接続状態を確認して接地状態を監視する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−276674号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0121807A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術は、蓄電池と車体間のリークの有無を確認するものであるため、電源装置が確実に接地されているかどうかを監視することはできない。一方、特許文献2に開示される技術では、信号グランド線に流れる電流が少ない場合などにおいて、信号グランド線に対するパワーグランドの電位差を正しく測定することができずに、接地状態を正確に監視できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電源装置は、入力された直流電力を所定電圧の直流電力に変換して外部へ供給するものであって、入力された直流電力の電圧変換を行う電圧変換回路と、電源装置内のグランド電位と電源装置外に設けられグランド電位と接地用ケーブルを介して接続されている接地点との間の電位差を示す電圧値を測定する電圧測定回路と、電源装置から直流電力が供給される際に流れる負荷電流の電流値を測定する電流測定回路と、電圧測定回路により測定された電圧値と電流測定回路により測定された電流値とに基づいて電源装置の接地状態に応じた抵抗値を算出する演算回路とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両等に搭載される電源装置の接地状態を正確に監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による電源装置を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図2】電圧測定回路の一例を示す図である。
【図3】正常時の接続抵抗を示すブロック図である。
【図4】正常時の接続抵抗の合成抵抗値を求める等価回路を示す図である。
【図5】異常発生時の接続抵抗を示すブロック図である。
【図6】異常発生時の接続抵抗の合成抵抗値を求める等価回路を示す図である。
【図7】接続抵抗の抵抗値の設定例を示す表である。
【図8】電位差と負荷電流との間の特性の一例を示すグラフである。
【図9】接地状態を表す抵抗値と負荷電流との間の特性の一例を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態による電源装置の一変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態による電源装置の他の変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の一実施形態による電源装置の別の変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の一実施形態による電源装置のさらなる変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。
【図14】本発明による電源装置内部の電圧変換回路の一例を示す回路図である。
【図15】本発明による電源装置内部の電圧変換回路の部品配置例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の一実施形態による電源装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態による電源装置1を含む電源システムの構成を示すブロック図である。この電源装置システムは、たとえば電気自動車やハイブリッド自動車など、電気モータで駆動される車両に搭載されて使用される。
【0011】
図1に示す電源システムは、電源装置1、補機バッテリー9、電装品10および高圧バッテリー11を有する。電源装置1および高圧バッテリー11は、導電性を有する金属製のケース111、121でそれぞれ覆われており、シールド線12a、12bを介して互いに接続されている。電源装置1のケース111は、金属製のボルト13a、13bにより車両のシャーシ8に固定されている。高圧バッテリー11のケース121も同様に、金属製のボルト13c、13dによりシャーシ8に固定されている。これにより、電源装置1および高圧バッテリー11がシャーシ8と電気的に接続され、共通の車両アースに接地される。
【0012】
電源装置1は、電圧変換回路2、電圧測定回路3、電流測定回路4およびマイコン5を備えている。これらはケース111内に収納されており、ケース111の電位を共通のグランド(GND)電位として接地されている。ケース111には、接地用ケーブル6の一端に接続されている金属製のボルト13eが取り付けられている。接地用ケーブル6の他端は、シャーシ8に取り付けられた金属製のボルト13fと接続されている。このようにしてケース111とシャーシ8が接地用ケーブル6を介して電気的に接続されることで、前述のボルト13a、13bによる接地に加えて、ボルト13fが取り付けられているシャーシ8の部分を接地点として、さらに電源装置1の接地が行われている。
【0013】
電圧変換回路2は、シールド線12a、12bを介して高圧バッテリー11から入力される高電圧の直流電力を低電圧の直流電力に変換し、その電圧変換後の直流電力を補機バッテリー9および電装品10へと出力する。電圧変換回路2の(+)側出力は、電流測定回路4とケース111に設けられたプラグ6aとを介して、補機バッテリー9および電装品10の(+)端子と接続されている。一方、電圧変換回路2の(−)側出力は、ボルト13e、接地用ケーブル6およびボルト13fを介して、補機バッテリー9の(−)端子と接続されている。また、ボルト13e、接地用ケーブル6、ボルト13fおよびシャーシ8を介して、電装品10の(−)端子と接続されている。これにより、電源装置1を介して、高圧バッテリー11から補機バッテリー9および電装品10へ直流電力が供給される。
【0014】
なお、補機バッテリー9および電装品10へ直流電力を供給する際には、これらで消費される電流のリターン経路として接地用ケーブル6が作用する。そのため、接地用ケーブル6には、補機バッテリー9および電装品10において消費される最大電流量に応じた耐電流性能を有するものを使用することが好ましい。
【0015】
電圧測定回路3は、その一端がケース111に設けられたプラグ6bおよび検出用ケーブル7を介して、シャーシ8に取り付けられたボルト13fに接続されており、他端がケース111に取り付けられたボルト13eに接続されている。この2つの接続点間の電位差を示す電圧値を測定することで、ケース111の電位すなわち電源装置1内のGND電位と、シャーシ8との間の電位差を測定する。
【0016】
電流測定回路4は、補機バッテリー9および電装品10へ直流電力を供給する際に、電圧変換回路2から出力される直流電流(負荷電流)の電流値を測定する。
【0017】
マイコン5は、電圧測定回路3により測定された電圧値と、電流測定回路4により測定された電流値とを取り込み、これらに基づいて電源装置1の接地状態に応じた抵抗値を計算する。より具体的には、電圧測定回路3により測定された電圧値を電流測定回路4により測定された電流値で除算することで、シャーシ8とケース111との間の接続抵抗値を算出する。そして、計算された抵抗値に基づいて、電源装置1の接地状態が正常であるか否かを判断し、電圧変換回路2に対する動作制御を必要に応じて行う。
【0018】
図2は、電圧測定回路3の一例を示す図である。プラグ6bおよび検出用ケーブル7を介したボルト13fの電位(シャーシ8の電位)と、ボルト13eの電位(ケース111の電位)、すなわち電源装置1のGND電位とは、電圧測定回路3において差動増幅回路301にそれぞれ入力される。差動増幅回路301は、これらの間の電位差を増幅し、マイコン5へ出力する。このとき、接地用ケーブル6に流れる電流の向きの変化に応じて電位差の正負が反転する。そのため、差動増幅回路301の入力側には、電流の向きに関わらず電位差を測定できるようにするためのオフセット回路302が設けられている。
【0019】
なお、電圧測定回路3が有する差動増幅回路301への2つの入力線のうち、シャーシ8の接地点とボルト13fにより接続されている側の入力線は、抵抗304を介して電圧測定回路3の電源VCCに接続されている。これにより、プラグ6bと検出用ケーブル7とが接続されているときにはプラグ6bに電流が流れるようにして、プラグ6bの端子接触面が酸化皮膜等で覆われるのを予防する。すなわち、酸化皮膜のような端子接触面の電気的接続を妨げる皮膜による導通不良がプラグ6bにおいて生じると、シャーシ8と電源装置1のGND電位との間の電位差を電圧測定回路3が正しく測定できなくなるため、これを防いで電位差を正しく測定できるようにする。
【0020】
次に、電源装置1における接地状態の判断について、以下詳細に説明する。
【0021】
正常な状態において、電源装置1のケース111と高圧バッテリー11のケース121とは、ボルト13a〜13dによってシャーシ8にそれぞれ緩みなく固定されている。また、接地用ケーブル6は、ボルト13e、13fによってケース111とシャーシ8との間に緩みなく接続されている。この状態で電圧変換回路2から出力された電流は、電流測定回路4を通って補機バッテリー9や電装品10を経由した後、接地用ケーブル6、またはシャーシ8およびケース111を介して電圧変換回路2へ戻ってくる。このとき、接地用ケーブル6の抵抗値はほぼ0Ωであり、接地用ケーブル6での電圧降下はほとんど発生しない。そのため、シャーシ8と電源装置1のGND電位とはほぼ同電位となり、電圧測定回路3で測定される電位差はほぼ0Vとなる。したがって、マイコン5により計算される抵抗値は0Ωに近い値となる。
【0022】
上述した正常時の接地状態を表す抵抗値の算出方法について、さらに詳しく説明する。図3は、正常時の接地用ケーブル6、ボルト13a〜13dおよびシールド線12a、12bによる接続抵抗を示すブロック図である。図4は、図3に示した接続抵抗の合成抵抗値を求める等価回路を示す図である。
【0023】
図3において符号17、18にそれぞれ示すように、電源装置1のケース111とシャーシ8との間における接地用ケーブル6の接続抵抗値をRgと表し、ボルト13a、13bの接続抵抗値をRc1と表す。また、符号19に示すように、高圧バッテリー11のケース121とシャーシ8との間におけるボルト13c、13dの接続抵抗値をRc2と表す。符号20に示すように、高圧バッテリー11のケース121と電源装置1のケース111との間におけるシールド線12a、12bの接続抵抗値をRsと表す。これらの接続抵抗値を合成した合成抵抗値をRtotalと表すと、図4に示す等価回路からRtotalは以下の式(1)により表される。
Rtotal=1/{1/Rg+1/Rc1+1/(Rc2+Rs)} ・・・(1)
【0024】
ここで、前述のように接地用ケーブル6が補機バッテリー9および電装品10において消費される最大電流量に応じた耐電流性能を有するものである場合、その接続抵抗値Rgはほぼ0Ωであるため、式(1)で表される合成抵抗値Rtotalも0Ωに近い値となる。したがって、マイコン5では0Ωに近い抵抗値が計算される。
【0025】
続いて異常発生時の例について説明する。電源装置1のケース111をシャーシ8に固定するボルト13a、13bは、緩み等の理由により、その接続抵抗値が正常時に比べて著しく増大する場合がある。また、接地用ケーブル6も、未接続、断線、劣化等の理由により、その接続抵抗値が正常時に比べて著しく増大する場合がある。これらの異常発生時における接続抵抗値が、高圧バッテリー11のケース121をシャーシ8に固定するボルト13c、13dの接続抵抗値や、シールド線12a、12bの接続抵抗値よりも十分に大きいと、補機バッテリー9および電装品10で消費される電流のリターン経路は、接地用ケーブル6ではなく、ボルト13c、13dおよびシールド線12a、12bとなる。
【0026】
シールド線12a、12bは、大電流を流すことを目的とするものではないため、通常は接地用ケーブル6よりも大きな抵抗値を有している。そのため、消費電流に応じた電圧降下がシールド線12a、12bにおいて発生し、その電圧降下による電位差が電圧測定回路3により測定される。その結果、マイコン5により計算される抵抗値は、正常時のように0Ωに近い値とはならない。これにより、電源装置1の接地状態において何らかの異常が発生していると推測できる。
【0027】
上述した異常発生時の接地状態を表す抵抗値の算出方法について、さらに詳しく説明する。図5は、異常発生時のボルト13a〜13dおよびシールド線12a、12bによる接続抵抗を示すブロック図である。図6は、図5に示した接続抵抗の合成抵抗値を求める等価回路を示す図である。なお、図5、6では、接地用ケーブル6が未接続や断線等の理由により機能せず、そのため回路構成上は存在していないときの例を示している。
【0028】
図5、6に示した異常発生時の合成抵抗値Rtotalは、前述の式(1)において1/Rg=0とすることで以下の式(2)のように表すことができる。
Rtotal=1/{1/Rc1+1/(Rc2+Rs)} ・・・(2)
【0029】
ここで、シールド線12a、12bの接続抵抗値Rsは、前述のように0Ωに近い値ではなく、ある程度の抵抗値をもっている。したがって、ボルト13a、13bの接続抵抗値Rc1が緩み等の理由で増大した場合、式(2)で表される合成抵抗値Rtotalは、正常時のように0Ωに近い値とはならない。そのため、マイコン5において計算される抵抗値も0Ωではなく、ある程度の抵抗値となる。
【0030】
次に、試作品を使用して行ったGND電位とシャーシ8間の電位差の実測結果と、その実測結果から求めた電源装置1の接地状態を表す抵抗値とを説明する。図7は、試作品における各接続抵抗の抵抗値の設定例を示した表である。図7の設定例に示すように、接地用ケーブル6の接続抵抗値Rgは、未接続や断線等による異常発生時には無限大、すなわち1/Rg=0とし、正常時には0.7mΩに設定する。また、他の各接続抵抗値Rc1、Rc2、Rsは、異常発生時、正常時のいずれにおいても、4.5mΩ、0.2mΩ、6.3mΩにそれぞれ設定する。
【0031】
図8は、図7に示した接続抵抗の設定値による試作品を用いて実測したGND電位とシャーシ8間の電位差と負荷電流との間の特性の一例を示すグラフである。図8において、図中の上側に示すグラフは異常発生時の特性を示しており、下側に示すグラフは正常時の特性を示している。これらのグラフでは、縦軸の値は電圧測定回路3により測定された電位差の大きさ(V)を表しており、横軸の値は電流測定回路4により測定された負荷電流の大きさ(A)を表している。
【0032】
図9は、図8のグラフに示した実測結果から求めた電源装置1の接地状態を表す抵抗値と負荷電流との間の特性の一例を示すグラフである。図9においても図8と同様に、図中の上側に示すグラフは異常発生時の特性を示しており、下側に示すグラフは正常時の特性を示している。これらのグラフでは、縦軸の値はマイコン5により算出された抵抗値の大きさ(mΩ)を表しており、横軸の値は電流測定回路4により測定された負荷電流の大きさ(A)を表している。
【0033】
なお、図7のRc1、Rs、Rc2の各接続抵抗値は、実際にとり得る値の範囲内でなるべく小さな値とした。一方、接地用ケーブル6の接続抵抗値Rgは、電装品10および補機バッテリー9で消費される電流量に応じた範囲内でなるべく大きな値とした。このようにすることで、図8および9に示した各特性における異常時と正常時との差を想定される範囲内でなるべく低く抑えることができる。すなわち、図7に示した接続抵抗の設定値のときに異常発生の有無を確実に判断できれば、どのような状況下においても異常発生の有無を判断できることが分かる。
【0034】
図8から、異常発生時のグラフは正常時のグラフに比べて電位差が大きく、両グラフは負過電流の増加に比例して電位差も増加していることが分かる。そのため、電圧測定回路3により測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを判別することで異常の有無を判断する場合、電位差に対して設定すべき閾値の大きさは、負荷電流の大きさに応じて変化することになる。
【0035】
たとえば図8中に示すように、閾値として2.6Vを設定した場合を考える。この場合、負荷電流が30A〜120A程度の範囲では、測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを正しく判別できる。しかし、これ以外の範囲、たとえば200Aのときには、両グラフとも電位差が閾値の2.6Vを超えているので、測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを判別できない。そのため、正常な接地状態であるにも関わらず、異常であると判断してしまう可能性がある。
【0036】
また、たとえば図8中に示すように、閾値として2.8Vを設定した場合を考える。この場合、負荷電流が上記のように200Aのときであっても、測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを正しく判別できる。しかし、付加電流が比較的小さいとき、たとえば60Aのときには、両グラフとも電位差が閾値の2.8Vを下回っているので、測定された電位差が図8のグラフのいずれに対応するものであるかを判別できない。そのため、接地状態において異常が発生しているにも関わらず、正常であると判断してしまう可能性がある。
【0037】
一方、図9からは、異常発生時のグラフは正常時のグラフに比べて抵抗値が大きく、両グラフは負過電流が小さい範囲を除いて、負過電流の大きさに関わらずほぼ一定の抵抗値を示していることが分かる。そのため、マイコン5により算出された抵抗値が図9のグラフのいずれに対応するものであるかを判別することで異常の有無を判断する場合、抵抗値に対して設定すべき閾値の大きさは、負荷電流の大きさに関わらず一定とすればよいことになる。
【0038】
たとえば図9中に示すように、閾値として2mΩを設定した場合を考える。この場合、負荷電流が60Aまたは200Aいずれの場合であっても、算出された抵抗値が図9のグラフのいずれに対応するものであるかを正しく判別できる。そのため、図8で説明したような誤判断を生じることがなくなり、接地状態が正常であるか否かを確実に判断することができる。
【0039】
電源装置1では、以上説明したようにして、GND電位とシャーシ8間の電位差の測定結果ではなく、電源装置1の接地状態を表す抵抗値の算出結果を用いて、接地状態の判断を行う。これにより、負荷電流が比較的小さい場合であっても、接地状態における異常の有無を確実に判断することができる。
【0040】
なお、マイコン5により計算した抵抗値があらかじめ決められた閾値以上になることで電源装置1の接続状態に異常が発生したと判断される場合、マイコン5により電圧変換回路2の動作を制御し、電源装置1から供給する直流電力を制限することが好ましい。このようにすれば、接地用ケーブル6が正しく接続されていないときに、電装品10および補機バッテリー9で消費される負荷電流がシールド線12a、12bなど他の経路に流れることを未然に防止することができる。その結果、シールド線12a、12b等に想定外の大電流が流れることで生じる発熱や破損などを回避することできる。
【0041】
以上説明した実施の形態によれば、電源装置1は、高圧バッテリー11から入力された直流電力を所定電圧の直流電力に変換して外部の補機バッテリー9および電装品10へ供給するものであり、電圧変換回路2、電圧測定回路3、電流測定回路4およびマイコン5を備える。電圧変換回路2は、高圧バッテリー11から入力される直流電力の電圧変換を行う。電圧測定回路3は、電源装置1内のグランド電位と、電源装置1外に設けられ電源装置1内のグランド電位と接地用ケーブル6を介して接続されているシャーシ8の接地点との間の電位差を示す電圧値を測定する。電流測定回路4は、電源装置1から直流電力が供給される際に流れる負荷電流の電流値を測定する。マイコン5は、電圧測定回路3により測定された電圧値と、電流測定回路4により測定された電流値とに基づいて、電源装置1の接地状態に応じた抵抗値を算出する。このようにしたので、算出された抵抗値に基づいて、車両に搭載される電源装置1の接地状態を正確に監視できる。
【0042】
次に、電源装置1の変形例について説明する。図10は、本発明の一実施形態による電源装置1の一変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。図10に示す電源装置1は、図1に示した電源装置1の各構成に加えて、外部に接続される各種装置に対して信号を出力するための信号出力回路14aをさらに備えている。この信号出力回路14aを用いることで、マイコン5により計算した抵抗値が前述のように電源装置1の接続状態に異常が発生したことを示す閾値以上となったときに、所定の信号を電源装置1から外部に接続された不図示の車両制御装置やパソコン等へ出力することができる。そのため、車両の運転中や保守点検時に電源装置1の接地状態に異常が発生した場合、そのことを運転者や作業者に通知することが可能となる。
【0043】
図11は、本発明の一実施形態による電源装置1の他の変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。図11に示す電源装置1は、図10に示した電源装置1の各構成に加えて、たとえばLEDランプや液晶ディスプレイによる表示回路15をさらに備えている。この表示回路15は、車両の運転席付近等に設置され、マイコン5により計算した抵抗値が閾値以上となることで信号出力回路14aから前述のような信号が出力されると、その信号出力に応じて所定の表示を行う。これにより、車両の運転中に電源装置1の接地状態において異常が発生した場合、そのことを運転者に通知することができる。そのため、運転者は事故が起きる前に修理等の必要な措置を講じることができる。
【0044】
図12は、本発明の一実施形態による電源装置1の別の変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。図12に示す電源装置1は、図1に示した電源装置1の各構成に加えて、マイコン5による抵抗値の算出結果を記憶するためのメモリ16をさらに備えている。マイコン5が一定間隔ごとに算出する抵抗値の履歴をメモリ16に所定回数分だけ記憶させておくことで、たとえば経年劣化等の原因によって抵抗値が次第に増加するような場合に、メモリ16に記憶された履歴から以後の抵抗値の変化を推測することができる。そのため、電源装置1の接地状態に異常が発生する可能性を事前に察知し、必要に応じて適切な措置を講じることができる。
【0045】
図13は、本発明の一実施形態による電源装置1のさらなる変形例を含む電源システムの構成を示すブロック図である。図13に示す電源装置1は、図1に示した電源装置1の各構成に加えて、情報入出力回路14bと、図12のメモリ16とをさらに備えている。メモリ16に記憶された抵抗値の履歴は、情報入出力回路14bを介して外部に接続された不図示の車両制御装置やパソコン等へ出力することで、事故発生時の原因究明等に役立てることができる。また、車両制御装置やパソコン等から情報入出力回路14bを介して、マイコン5の処理に用いるための様々な情報をメモリ16に書き込めるようにしてもよい。たとえば、前述のように電源装置1の接地状態が異常であるか否かを判断するための比較に用いられる閾値の情報を、外部から情報入出力回路14bを介してメモリ16に書き込む。マイコン5は、この閾値の情報に基づいて、算出された抵抗値と閾値とを比較し、電源装置1の接地状態における異常の有無を判断する。このようにすれば、閾値の変更などのデータ更新を容易に行うことができる。
【0046】
ここで、電圧変換回路2について詳細に説明する。図14は、本発明による電源装置1内部の電圧変換回路2の一例を示す回路図である。電圧変換回路2は、双方向に電圧変換可能なDC/DCコンバータであり、降圧回路(HV回路)および昇圧回路(LV回路)を有している。これらの回路では、ダイオード整流ではなく同期整流を行う構成としている。また、HV/LV変換で高出力とするために、スイッチング素子への大電流部品の採用や、平滑コイルの大型化を図っている。
【0047】
具体的には、HV/LV側共に、リカバリーダイオードを持つMOSFETを利用したHブリッジ型・同期整流スイッチング回路構成(H1〜H4)とした。これらのスイッチング回路のスイッチング制御にあっては、LC直列共振回路(Cr,Lr)を用いて高スイッチング周波数(100kHz)でゼロクロススイッチングさせ、変換効率を向上させて熱損失を低減するようにした。加えて、アクティブクランプ回路を設けて、降圧動作時の循環電流による損失を低減させると共に、スイッチング時のサージ電圧発生を抑制してスイッチング素子の耐圧を低減させることで、回路部品の低耐圧化を図っている。これらにより装置の小型化を実現している。
【0048】
さらに、LV側の高出力を確保するために、全波整流型の倍電流(カレントダブラー)方式とした。なお、高出力化にあたり、複数のスイッチング素子を並列同時作動させることで高出力を確保している。図14の例では、SWA1〜SWA4、SWB1〜SWB4のように4素子並列とした。また、スイッチング回路および平滑リアクトルの小型リアクトル(L1,L2)を、対称性を持たせるように2回路並列配置とすることで高出力化している。このように、小型リアクトルを2回路配置とすることで、大型リアクトル1台を配置させる場合に比べて、DC/DCコンバータ装置全体の小型化を可能としている。
【0049】
図15は、本発明による電源装置1内部の電圧変換回路2の部品配置例を示す分解斜視図である。図15に示すように、電圧変換回路2の各構成部品は、金属製(例えば、アルミダイカスト製)のケース111内に収納されている。ケース111の開口部にはケースカバー112がボルト固定される。ケース111内の底面部分には、主トランス33、インダクタ素子34、スイッチング素子H1〜H4が搭載されたパワー半導体モジュール35、スイッチング素子36が搭載されている昇圧回路基板32、およびコンデンサ38等が載置されている。これらの各構成部品のうち主な発熱部品は、主トランス33、インダクタ素子34、パワー半導体モジュール35およびスイッチング素子36である。
【0050】
なお、図15に示した各構成部品と図14の回路図との対応を記載すると、図15の主トランス33は図14のトランスTrに、インダクタ素子34はカレントダブラーのリアクトルL1,L2に、スイッチング素子36はスイッチング素子SWA1〜SWA4,SAWB1〜SWB4にそれぞれ対応している。昇圧回路基板32には、図14のスイッチング素子S1,S2等も搭載されている。
【0051】
スイッチング素子H1〜H4の端子39はケース111の上方へと延在しており、パワー半導体モジュール35の上方に配置された降圧回路基板31と接続されている。降圧回路基板31は、ケース111の底面から上方に突出した複数の支持部材上に固定される。パワー半導体モジュール35においては、スイッチング素子H1〜H4は、パターンが形成された金属基板上に実装されており、金属基板の裏面側はケース111の底面に密着するように固定されている。スイッチング素子36が実装される昇圧回路基板32も同様の金属基板で構成されている。なお図15では、昇圧回路基板32はコンデンサ38等の陰に隠れて見えないので、その位置を破線で示している。
【0052】
制御回路基板30には、昇圧回路や降圧回路に設けられたスイッチング素子を制御する制御回路が実装されている。制御回路基板30は金属製のベース板37上に固定されている。ベース板37はケース111の底面部から上方に突出した複数の支持部111aに固定されている。これにより、制御回路基板30は、ケース底面部に配置された発熱部品(主トランス33、インダクタ素子34やパワー半導体モジュール35など)の上方に、ベース板37を介して配置されることになる。
【0053】
以上のとおり、上記実施形態によれば、大電流が流れていない時でも電源装置1の接地状態の異常を検出できるようになる。また、異常発生時に電圧変換回路2の出力を制限することで発熱や破損を回避することできる。さらに、異常発生をユーザーが知ることで事故が起こる前に必要な措置を講じることができるようになる。加えて、万が一事故が起きた際には、原因究明に役立てることが可能となる。また、異常が発生する可能性を事前に察知することもできるようになる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態を詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では電源装置1を電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載される電源装置として説明したが、これ以外の用途に用いる電源装置であってもよい。たとえば、通常の自動車や電車などの他の種類の車両に搭載される電源装置としてもよいし、車両以外のものに搭載される電源装置としてもよい。
【0055】
以上説明した実施形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
1 電源装置
2 電圧変換回路
3 電圧測定回路
4 電流測定回路
5 マイコン
6 接地用ケーブル
6a、6b プラグ
7 検出用ケーブル
8 シャーシ
9 補機バッテリー
10 電装品
11 高圧バッテリー
12a、12b シールド線
13a、13b、13c、13d、13e、13f ボルト
14a 信号出力回路
14b 情報入出力回路
15 表示回路
16 メモリ
111 ケース
121 ケース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された直流電力を所定電圧の直流電力に変換して外部へ供給する電源装置であって、
前記入力された直流電力の電圧変換を行う電圧変換回路と、
前記電源装置内のグランド電位と、前記電源装置外に設けられ前記グランド電位と接地用ケーブルを介して接続されている接地点との間の電位差を示す電圧値を測定する電圧測定回路と、
前記電源装置から前記直流電力が供給される際に流れる負荷電流の電流値を測定する電流測定回路と、
前記電圧測定回路により測定された電圧値と、前記電流測定回路により測定された電流値とに基づいて、前記電源装置の接地状態に応じた抵抗値を算出する演算回路とを備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値が所定の閾値以上である場合、外部へ供給する直流電力を制限することを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値が所定の閾値以上である場合、所定の信号を外部へ出力する信号出力回路をさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載された電源装置において、
前記信号出力回路により出力された前記信号に応じて所定の表示を行う表示回路をさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値を記憶するメモリをさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源装置において、
前記メモリに記憶された抵抗値の情報を外部へ出力する情報出力回路をさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値と比較するための閾値の情報を外部から入力する情報入力回路と、
前記情報入力回路により入力された閾値の情報を記憶するメモリとをさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値と、前記メモリに記憶された閾値とを比較することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記電圧測定回路は、前記接地点と接続されている入力線が抵抗を介して所定の電源電圧に接続されていることを特徴とする電源装置。
【請求項1】
入力された直流電力を所定電圧の直流電力に変換して外部へ供給する電源装置であって、
前記入力された直流電力の電圧変換を行う電圧変換回路と、
前記電源装置内のグランド電位と、前記電源装置外に設けられ前記グランド電位と接地用ケーブルを介して接続されている接地点との間の電位差を示す電圧値を測定する電圧測定回路と、
前記電源装置から前記直流電力が供給される際に流れる負荷電流の電流値を測定する電流測定回路と、
前記電圧測定回路により測定された電圧値と、前記電流測定回路により測定された電流値とに基づいて、前記電源装置の接地状態に応じた抵抗値を算出する演算回路とを備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値が所定の閾値以上である場合、外部へ供給する直流電力を制限することを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値が所定の閾値以上である場合、所定の信号を外部へ出力する信号出力回路をさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載された電源装置において、
前記信号出力回路により出力された前記信号に応じて所定の表示を行う表示回路をさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値を記憶するメモリをさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源装置において、
前記メモリに記憶された抵抗値の情報を外部へ出力する情報出力回路をさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値と比較するための閾値の情報を外部から入力する情報入力回路と、
前記情報入力回路により入力された閾値の情報を記憶するメモリとをさらに備えることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電源装置において、
前記演算回路により算出された抵抗値と、前記メモリに記憶された閾値とを比較することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記電圧測定回路は、前記接地点と接続されている入力線が抵抗を介して所定の電源電圧に接続されていることを特徴とする電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−99087(P2013−99087A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239190(P2011−239190)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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