説明

駆動装置

【課題】変形可能な変形機械要素を介して動力が伝達される装置における、変形機械要素の変形量を高精度に取得する。
【解決手段】回転子20と結合された第1アーム1と、固定子10と結合された第2アーム2と、固定子10と第2アーム2の間に設けられた弾性部材30と、回転子20に設けられたエンコーダ板Eと、固定子10に設けられ、エンコーダ板Eの符号を検出する第1フォトセンサS1と、第2アーム2に設けられたエンコーダ板Eの符号を検出する第2フォトセンサS2とを備えて、駆動装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源により駆動可能な駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットの関節機構として、モータや油圧アクチュエータなどの回転駆動源からの出力を、ばねなどの弾性部材を介して関節により接続されるリンクに伝達する構成が提案されている。このような関節機構は、SEA(Serial Elastic Actuator)と呼ばれ、リンクが障害物などに衝突したときに、弾性部材が変形することで障害物や駆動源を保護したり、弾性部材の変形量に基づいてリンクに掛かる負荷を検出することで、ロボットの適切な制御を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−055541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、弾性部材の変形量を取得するには、関節により接続される2つのリンクの回転角を検出するが、一方のリンクに回転符号板を設け、他方のリンクでこの回転符号板の回転検出を行う場合、回転符号板に設けたスリットなどによる符号のピッチにより検出角度の分解能の上限が決まり、検出精度を余り高くすることができない。
【0005】
そして、今後、弾性部材のような変形可能な部材を介して駆動力を伝達する装置において、その変形量を検出する手段は、上述したロボットの駆動関節以外の装置においても求められることが予想される。
【0006】
そこで、本発明は、変形可能な変形機械要素を介して動力が伝達される装置における、変形機械要素の変形量を高精度に取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するため、本発明の駆動装置は、第1駆動部材、および、当該第1駆動部材と作用することで第1駆動部材との間に駆動力を発生し、第1駆動部材に対し相対的に運動する第2駆動部材を有する駆動源と、前記第1駆動部材と結合された第1部材と、前記第2駆動部材と結合された第2部材と、前記第1駆動部材と前記第1部材の間、または、前記第2駆動部材と前記第2部材の間に設けられて、前記第1部材と前記第2部材の間に掛かる力により変形可能な変形機械要素と、前記第1駆動部材に設けられ、当該第1駆動部材の前記第2駆動部材に対する相対的運動方向に所定ピッチで並んだ符号からなる第1符号群と、前記第1駆動部材に設けられ、当該第1駆動部材の前記第2駆動部材に対する相対的運動方向に所定ピッチで並んだ符号からなる第2符号群と、前記第2駆動部材に設けられ、前記第1符号群の符号を検出する第1検出器と、前記第1部材および前記第2部材のうち、前記変形機械要素を介して前記第1駆動部材または前記第2駆動部材と結合された一方に設けられた、前記第2符号群の符号を検出する第2検出器とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このような駆動装置によれば、第1駆動部材に対し第2駆動部材が相対的に運動すると、第1検出器が第1符号群の符号を読み取り、第2検出器が第2符号群の符号を読み取る。この運動の最中に、外力または慣性力により第1駆動部材と第2駆動部材の間に力が掛かると、変形機械要素が変形する。すると、この変形の結果、第1検出器と第2検出器の、第1駆動部材と第2駆動部材の相対的運動方向についての距離(回転運動の場合には位相)が変わることで、第1検出器が読み取った符号によるパルスと、第2検出器が読み取った符号によるパルスには、変形量に応じた時間的なずれが生じる。したがって、このずれ(差)を利用して、変形機械要素の変形量を演算することが可能である。仮に、第1部材と第2部材の一方に符号群を設け、他方にこの符号を読み取る検出器を設けた場合には、符号のピッチ分の変形が生じて初めてそのピッチ分の変形量を取得できるため、符号のピッチが、検出精度の限界となるが、本発明によれば、第1駆動部材と第2駆動部材の相対的な運動により、第1検出部材と第2検出部材は、第1符号群または第2符号群を読み取ってパルスを出力し続け、変形機械要素に、符号群の符号のピッチより小さい変形が生じたときでも、このパルスのタイミングの差から変形量を演算できるため、高精度に変形機械要素の変形量を取得することができる。
【0009】
なお、本発明においていう符号とは、検出装置を用いて位置情報を量子的に検出するために設けられたマークであり、このマークは、光、磁気、音など、如何なる物理的手段を利用した検出装置(第1検出器または第2検出器)により検出されるかは問わない。例えば、符号は、光の反射率の変調によるパターンであったり、形状のパターン(凹凸、穴など)であったり、磁気パターンであったりすることができる。
【0010】
前記した駆動装置においては、前記駆動源は、回転駆動源であり、前記第1駆動部材は、回転子であり、前記第2駆動部材は、固定子であり、前記第1符号群は、前記回転子と一体に回転する第1回転板に設けられ、前記第2符号群は、前記回転子と一体に回転する第2回転板に設けられた構成とすることが可能である。
【0011】
このような具体的な構成では、駆動装置を回転駆動装置、例えば、ロボットの駆動関節として利用することができる。
【0012】
前記した各駆動装置においては、前記第1符号群と前記第2符号群は、所定ピッチで連続して並んだ共通の符号群である構成とすることができる。
【0013】
このような構成によれば、符号群の数を減らして、装置の簡素化を図ることができる。
【0014】
前記した回転駆動装置型の駆動装置においては、前記第1回転板と前記第2回転板は、共通の1つの回転符号板であり、前記第1符号群および前記第2符号群は、前記回転符号板上の回転方向に所定ピッチで並ぶ符号からなる構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、回転符号板を一つにすることができるので、駆動装置の小型化を図ることができる。
【0016】
前記した回転駆動装置型の駆動装置においては、前記回転子と第1部材の間に、前記回転子の回転を減速する減速機が設けられた構成とすることができる。
【0017】
回転子と第1部材の間に減速機が設けられると、第1部材と第2部材の相対回転角に対して、回転子の固定子に対する回転角が大きくなる。このため、第1部材と第2部材を互いに所定角度回転させる間に第1検出器が回転符号板の符号を検出する回数が多くなる。そして、第1部材と第2部材が所定角度回転する間に回転子が回転する回数が、減速機が無い場合に比較して多くなることにより、第1部材と第2部材が所定角度回転する間に第2検出器が回転符号板の符号を検出する回数も多くなる。このように、減速機で減速した分、第1部材と第2部材が所定角度回転する間に、第1検出器と第2検出器で回転符号板の符号を検出する回数が増えるので、第1検出器で検出した回転符号板の回転と第2検出器で検出した回転符号板の回転との比較による変形機械要素の変形量の検出分解能(回転子が回転している最中に検出できる分解能)が高くなる。
【0018】
前記した回転駆動装置型の駆動装置においては、前記減速機は、第1回転伝達体、第2回転伝達体および第3回転伝達体が互いに係合することで構成され、前記第1回転伝達体は、前記回転子に結合され、前記第2回転伝達体は、前記第1部材に結合され、前記第3回転伝達体は、前記固定子に結合された構成とすることができる。
または、回転駆動装置型の駆動装置において、前記減速機は、第1回転伝達体、第2回転伝達体が互いに係合することで構成され、前記第1回転伝達体は、前記回転子に結合され、前記第2回転伝達体は、前記第1部材に結合されるとともに前記固定子に回転が支持された構成とすることができる。
【0019】
前記した回転駆動装置型の駆動装置においては、前記第1検出器および前記第2検出器は、共に、前記回転符号板に対し、一方側に配置されることが望ましい。
【0020】
このように、第1検出器と第2検出器を回転符号板に対し一方側に配置することで、回転符号板の両側に第1検出器と第2検出器を振り分けて配置する場合に比較して、駆動装置の大きさを回転子の軸方向に関してコンパクトにすることができる。
【0021】
前記した回転駆動装置型の駆動装置においては、前記変形機械要素の変形をする部分が、前記回転子の軸方向において、当該回転子の動力発生源の一端から他端まで延びていることが望ましい。
【0022】
このように、回転子の動力発生源の一端から他端に渡るように変形機械要素の変形する部分を配置することで、変形機械要素の変形をする部分の長さを長くすることができ、変形機械要素の強度を保ちつつ、大きな変形量を得ることができる。
【0023】
前記した回転駆動装置型の駆動装置においては、前記回転子と前記変形機械要素の一方は筒状に形成され、他方が一方の内側を通っている構成とするのが望ましい。
【0024】
このように構成することで、変形機械要素の変形可能な部分を十分な大きさで構成しつつ、全体としてコンパクトな駆動装置とすることができる。
【0025】
前記した回転駆動装置型の駆動装置においては、前記第1部材および前記第2部材のうち、前記第2検出器が設けられた部材には、カップリングで係合されることで当該部材と一体に回動するセンサ取付板が設けられ、前記第2検出器は、前記センサ取付板に固定された構成とすることが望ましい。
【0026】
このように、センサ取付板を、回転を結合するカップリングにより第2検出器が設けられた第1または第2部材と係合することで、センサ取付板には、第1または第2部材に掛かるモーメントがほとんど伝わらないため、第2検出器に外力が掛からず、第2検出器が取り付けられる部材の歪による検出の誤差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の駆動装置によれば、第1検出器が読み取った第1符号群の符号によるパルスと、第2検出器が読み取った第2符号群の符号によるパルスとを利用することで、変形機械要素の変形量を高精度に取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態に係るロボットの駆動関節が設けられる、ロボットのアームの全体斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るロボットの駆動関節の、図1におけるII−II線断面図である。
【図3】第1実施形態に係るロボットの駆動関節の模式図である。
【図4】エンコーダ板と光検出器の位置関係を示す図であり、(a)アームに負荷が掛かる前と、(b)アームに負荷が掛かった後を示す。
【図5】(a)各光検出器による符号のカウントと各検出器のカウントの差を示す図と、(b)一つの光検出器で変形量を検出しようとした場合の光検出器のカウントを示す図である。
【図6】ロボットアームを回動させながら負荷を掛けた場合の時間と弾性部材の回転角度(変形量)の関係を示すグラフである。
【図7】第1実施形態に係るロボットの駆動関節の変形例を示す断面図である。
【図8】第2実施形態に係るロボットの駆動関節の、図1におけるII−II線断面図である。
【図9】第2実施形態に係るロボットの駆動関節の模式図である。
【図10】第3実施形態に係るロボットの駆動関節の模式図である。
【図11】第4実施形態に係るロボットの駆動関節の模式図である。
【図12】第5実施形態に係るロボットの駆動関節の模式図である。
【図13】第6実施形態に係るロボットの駆動関節の模式図である。
【図14】第7実施形態に係るロボットの駆動関節の模式図である。
【図15】第8実施形態に係るリニアモーターカーの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、第1から第7実施形態においては、駆動装置として、回転駆動装置型の駆動装置の例であるロボットの駆動関節を例示し、第8実施形態においては、リニア型の駆動装置の例であるリニアモーターカーを例示する。なお、第8実施形態は、本発明を最もシンプルに実現した形態であるので、本発明の理解に好適と思われる。
【0030】
図1に示すように、ロボットの駆動関節Aは、ロボットの第1アーム1と第2アーム2とを、関節部4において互いに回動可能に係合しているとともに、モータにより互いを回動駆動するように構成されている。なお、第1アーム1は第1部材の一例であり、第2アーム2は第2部材の一例である。
【0031】
[第1実施形態]
図2および図3に示すように、第1実施形態に係る駆動関節Aは、主に、回転駆動源の一例としてのモータM、減速機の一例としてのハーモニックドライブ減速機R、変形機械要素の一例としての弾性部材30を備えている。ここでは、駆動関節Aの理解を容易にするため、まず、図3を参照して構造および動作原理の概略を説明する。なお、以下の説明において、左右は、参照する図面を基準とする。
【0032】
図3に示すように、モータMは、公知のモータと同様に第2駆動部材の一例としての固定子10および第1駆動部材の一例としての回転子20を有し、固定子10に対して回転子20が回転駆動するように構成されている。回転子20は、回転軸21にコイル22、回転符号板の一例としてのエンコーダ板E、ウェーブジェネレータ23が設けられている。
【0033】
コイル22は、モータMにおける動力発生源の一例であり、電流が適宜なタイミングで供給されることで、固定子10に設けられた磁石との相互作用により回転駆動力を発生する。エンコーダ板Eは、図4に示すように、周方向に一定のピッチで符号の一例としてのスリットSLが設けられた円板である。このエンコーダ板Eは、第1符号群および第2符号群が所定ピッチで周方向に連続して並んだ共通の符号群の一例であり、また、第1回転板と第2回転板を共通の1つの回転符号板としたものである。
【0034】
ハーモニックドライブ減速機Rは、大きな減速比を実現する公知の減速機構であり、第1回転伝達体の一例としてのウェーブジェネレータ23と、第3回転伝達体の一例としてのフレクスプライン35と、第2回転伝達体の一例としてのサーキュラスプライン41とを備えて構成されている。フレクスプライン35は、固定子10に結合され、サーキュラスプライン41は、モータMの回転出力を受ける第1アーム1の根本部分である関節接続部40に結合されている。すなわち、ハーモニックドライブ減速機Rは、回転子20と第1アーム1(第1部材)の間に配置されている。
【0035】
第2アーム2は、弾性部材30を介して固定子10の左端付近に結合されている。弾性部材30は、第2アーム2と第1アーム1の間に掛かるモーメントによりモータMの回転軸21と同軸周りで捩れ変形可能な部材である。
【0036】
エンコーダ板Eの左側には、エンコーダ板Eに対面してスリットSLを検出する第1検出器の一例としての第1フォトセンサS1が配置され、エンコーダ板Eの右側には、エンコーダ板Eに対面してスリットSLを検出する第2検出器の一例としての第2フォトセンサS2が配置されている。第1フォトセンサS1は固定子10に設けられ、第2フォトセンサS2は、第2アーム2に設けられている。すなわち、第2フォトセンサS2は、第2アーム2と第1アーム1のうち、弾性部材30を介して固定子10に結合された一方である第2アーム2に設けられている。
【0037】
このような構成により、駆動関節Aは、モータMの回転子20が回転すると、ハーモニックドライブ減速機Rによりこの回転が大きく減速されて固定子10に伝わり、第1アーム1に対し固定子10が少しずつ回転する。固定子10が回転すると、弾性部材30を介して結合されている第2アーム2が固定子10と一体に回転する。第2アーム2または第1アーム1が、何か他の物に当たった場合や、加速した場合など、何らかの負荷が掛かった場合には、この負荷に応じて弾性部材30が捩れ変形し、駆動関節Aに適度な柔軟性を持たせることができるようになっている。
【0038】
図2に戻り、駆動関節Aの具体的な構造について説明する。
第2アーム2は、右側においてベアリング81により第1アーム1に回動可能に支持されている。また、第2アーム2は、左側においてベアリングローラ82を介して支持リング89に回動可能に支持され、支持リング89は、ベアリングローラ83を介してリング状のサーキュラスプライン41に回動可能に支持されている。そして、サーキュラスプライン41は、ボルト91により第1アーム1の関節接続部40に固定されている。このように、第2アーム2の左端は、ベアリングローラ82,83を介して第1アーム1に回動可能に支持されている。
【0039】
弾性部材30は、左支持部31と右支持部32を有し、左支持部31と右支持部32が、弾性変形可能なバネ部33により結合されている。バネ部33は、詳細は図示しないが変形可能な金属製のワイヤまたは棒状の部材が筒状に並んで構成されている。前記した回転子20を含むモータMは、この筒状に形成されたバネ部33の内側に配置されていることで、駆動関節Aが全体としてコンパクトに構成されている。
【0040】
フレクスプライン35は外側にスプライン(ギヤ歯)を有する薄肉のギヤであり、弾性部材30の左支持部31から左方に延びるように左支持部31と一体に構成されている。フレクスプライン35の外歯の数はサーキュラスプライン41の内歯の数よりも僅かに少ない。左支持部31は、ボルト92により支持リング89に固定され、右支持部32は、ボルト93により第2アーム2に固定されている。また、左支持部31は、固定子10の外側に、圧入、接着または係合により結合され、固定子10が第1アーム1に対し回動するのに伴い固定子10と一体に回動するようになっている。
【0041】
ウェーブジェネレータ23は、薄肉のベアリング23aを外周に有しており、外周形状が楕円となっている(図示せず)。ウェーブジェネレータ23の楕円の長軸方向の部分は、サーキュラスプライン41との間でフレクスプライン35を挟持している。そのため、ウェーブジェネレータ23が回転すると、ウェーブジェネレータ23とサーキュラスプライン41によるフレクスプライン35の挟持位置、つまり、サーキュラスプライン41とフレクスプライン35の歯合箇所が周方向に移動し、これにより、ウェーブジェネレータ23が一回転するとサーキュラスプライン41の内歯とフレクスプライン35の外歯の歯数の差に対応する角度だけサーキュラスプライン41に対してフレクスプライン35が回転するようになっている。
【0042】
モータMは、中空の固定子10内に回転子20が回転可能に支持されている。回転子20の回転軸21の右端にはエンコーダ板Eが固定されている。エンコーダ板EのスリットSLを検出する第1フォトセンサS1は、固定子10の内壁に固定されている。第1フォトセンサS1は、図示しない発光部および受光部を有し、発光部と受光部がエンコーダ板Eを挟んで両側に配置されている。これにより、エンコーダ板Eの回転に伴い、発光部と受光部の間をスリットSLが通過する度に発光部が発した光を受光部が受光することで、第1フォトセンサS1に対するスリットSLの通過を検出することができる。
【0043】
一方、エンコーダ板EのスリットSLを検出する第2フォトセンサS2は、カバー51およびカップリング部材52を介して第2アーム2に結合されたセンサ取付板53に固定されている。カバー51は、ボルト93により第2アーム2に固定され、関節部4の右側を覆っている。カバー51の中心には、回転子20の回転軸21と同軸位置に突起51aが内側に突出するように設けられている。センサ取付板53は円板形状を有し、外周部分でベアリング84により固定子10に回転可能に支持されている。センサ取付板53の中心には、回転子20の回転軸21と同軸位置に突起53aが外側に突出するように設けられ、突起53aと突起51aが、筒状のカップリング部材52によりカバー51とセンサ取付板53の回転を伝えるように繋いでいる。カップリング部材52は、例えば、キーやセレーションなどにより突起51aおよび突起53aと係合しており、センサ取付板53は、カバー51と一体に回転するようになっている。
【0044】
ここで、仮に、第2フォトセンサS2がカバー51に直接取り付けられていた場合には、第2アーム2に掛かる負荷によりカバー51が歪んで第2フォトセンサS2による検出に誤差が生じるおそれがある。しかし、本実施形態では、センサ取付板53は、回転を伝えるカップリング部材52で第2アーム2(カバー51)と係合していることにより、第2アーム2に掛かる負荷により歪むことなく第2アーム2と一体に回転することができる。そして、第2フォトセンサS2は、第2アーム2に掛かる負荷により歪むことがないセンサ取付板53に固定されることで、エンコーダ板Eの回転の検出誤差が小さくなっている。なお、本実施形態では、製作を容易にするため、筒状のカップリング部材52を用いて第2アーム2(カバー51)とセンサ取付板53の回転を結合していたが、突起51aをセレーション軸とし、センサ取付板53にセレーション穴を設け、このセレーション軸とセレーション穴のカップリングによりカバー51とセンサ取付板53の回転を結合してもよい。
【0045】
第1フォトセンサS1の検出結果と第2フォトセンサS2の検出結果は、図示しないモータ制御装置に出力されている。モータ制御装置は、第1フォトセンサS1の検出結果により、固定子10に対する回転子20の回転角を演算し、これによりモータMの動作および停止を制御することで、ロボットの制御装置が所望する回転角だけ第1アーム1に対し第2アーム2を回動させる。また、モータ制御装置は、第1フォトセンサS1の検出結果から求まる固定子10に対する回転子20の回転量と、第2フォトセンサS2の検出結果から求まる第2アーム2に対する回転子20の回転量の比較に基づき弾性部材30の捩れ変形量を求める。この具体的な方法の一例は後述する。
【0046】
以上のように構成されたロボットの駆動関節Aは、モータMが回転すると、固定子10に対して回転子20が回転し、回転子20の高速回転がハーモニックドライブ減速機Rにより大きく減速されて第1アーム1に対する固定子10のゆっくりとした回転へと伝えられる。固定子10は、弾性部材30を介して第2アーム2に結合されているので、固定子10の回転とともに第2アーム2がゆっくりと回転する。
【0047】
このようにして第2アーム2が第1アーム1に対し回転すると、第2アーム2が何かの物体に当たることがある。第2アーム2に外力や慣性力が加わっていないとき、図4(a)に示すように、第1フォトセンサS1は回転軸21を挟んで第2フォトセンサS2と反対側に位置するが、第2アーム2に外力や慣性力が加わると、弾性部材30が捩れ変形することで、例えば図4(b)に示すように、第2フォトセンサS2は第1フォトセンサS1に対し図4の時計回りに変位する。この第1フォトセンサS1に対する第2フォトセンサS2の回転変位は弾性部材30の捩れ変形量に相当するので、第1フォトセンサS1で検出したエンコーダ板Eの回転量と第2フォトセンサS2で検出したエンコーダ板Eの回転量の差が弾性部材30の捩れ変形量に相当する。
【0048】
この捩れ変形量を高精度に算出する場合、図5(a)に示すように、第1フォトセンサS1で検出したスリットSLのカウントCと第2フォトセンサS2で検出したスリットSLのカウントCの差ΔCを適宜な短い時間間隔で求め、過去の複数個のΔCの平均を算出するとよい。すなわち、ΔCの所定時間中の平均を求めるとよい。このようにΔCの時間的平均を求めると、ΔCが徐々に増加していくことを算出できるので、弾性部材30の変形量を高い分解能で取得することができる。
【0049】
この効果は、第1フォトセンサS1の検出結果と第2フォトセンサS2の検出結果を比較することにより顕著に得られるもので、例えば、比較例として、固定子10に設けられたエンコーダ板を第2アーム2に固定されたフォトセンサで検出し、この一つのフォトセンサの検出結果から弾性部材30の変形量を求めようとする場合には、エンコーダ板に設けられた符号(スリットなど)の分解能(角度方向の細かさ)とほぼ同じ分解能しか得られない。この1つのフォトセンサにより検出される符号のカウントCを図5(a)と同じ時間スケールで図示すると図5(b)のようになる。
【0050】
この図5(a),(b)の2つの例において、過去8回分のΔCの平均またはCの平均から弾性部材30の変形量を算出した結果が図6である。図6に示すように、2つのフォトセンサのカウントの差ΔCから弾性部材30の変形量(捩れによる回転角度で縦軸に示す)を求めた場合には、変形量の計算値(回転角)は、弾性部材30の実際の変形量(横軸の時間)に応じておよそ線形に変化し、高い分解能で計算結果を得られることが分かる。一方、1つのフォトセンサの検出結果の時間的平均を取っても、およそ段階的にしか変形量(回転角度)を求められないことが分かる。
【0051】
以上のように、本実施形態のロボットの駆動関節Aによれば、主としてモータMの回転角の検出のために第1フォトセンサS1と、弾性部材30の変形量の検出のための第2フォトセンサS2とを、回転子20に設けた1つのエンコーダ板Eに対面させ、スリットSLを検出させることで、モータMの回転角の検出と弾性部材30の変形量の検出のために2つのエンコーダ板Eを設ける場合に比較して、エンコーダ板Eが1つで済む分、スペース効率が良くなり、駆動関節Aの回動軸方向の大きさを小さくすることができる。
【0052】
そして、本実施形態の駆動関節Aでは、回転子20の回転は、ハーモニックドライブ減速機Rを介して第1アーム1に対する第2アーム2の回転へと伝えられるため、第2アーム2と第1アーム1が所定角度回動する間に、回転子20はその所定角度より大きな角度だけ回転する。そのため、第2アーム2と第1アーム1が所定角度回動する間に、第1フォトセンサS1と第2フォトセンサS2で多くのスリットSLを検出することができるので、高い分解能で弾性部材30の変形量を算出することが可能である。
【0053】
また、弾性部材30の捩れ変形をする部分であるバネ部33が、回転軸21の軸方向において、回転子20の動力発生源であるコイル22の左端から右端へ渡るように延びているので、バネ部33を左右に長くとることができ、バネ部33の強度を保ちながら、変形量、すなわち、ロボットの関節の柔軟性を高くすることができる。
【0054】
そして、弾性部材30は、筒状に形成され、この筒状の弾性部材30の内側にモータMが入っていることで、弾性部材30の捩れ変形可能な部分であるバネ部33を十分な大きさで構成しつつ、駆動関節Aをコンパクトにすることができる。
【0055】
以上に本発明の第1実施形態について説明したが、第1実施形態に第1フォトセンサS1と第2フォトセンサS2による符号の読み取りを、エンコーダ板Eの透過によるのではなく、エンコーダ板Eでの反射により検出するようにすれば、駆動関節Aをよりコンパクトにすることができる。反射型のフォトセンサを用いる場合には、例えば、図7に示す駆動関節A′のように、第1フォトセンサS1′および第2フォトセンサS2′を共にエンコーダ板Eの右側(左右の一方側のみ)に配置する。このようにすると、エンコーダ板Eの左側にフォトセンサの一部ないし全部を配置する必要がないので、その分、駆動関節A′を駆動軸(回転軸21)の軸方向に短くすることができる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、第1実施形態と同じ機能を有する部材については、配置や形状が異なる場合にもできるだけ第1実施形態と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態においても、まず、図9の模式図を参照して全体構造を説明した後、図8を参照して詳細な構造を説明する。
【0057】
図9に示すように、第2実施形態に係るロボットの駆動関節100は、回転子120を中空に形成し、弾性部材130を回転子120の内側を通して左端から右端へ延ばした形態である。駆動関節100において、固定子10は、第2アーム2に固定され、また、固定子10に第3回転伝達体の一例としてのサーキュラスプライン41が結合されている。
【0058】
回転子120は、回転軸121が貫通した中空部分を有する円筒状に形成され、左端に第1回転伝達体の一例としてのウェーブジェネレータ123が結合されている。
【0059】
弾性部材130は、左端部131と、第1アーム1と接続する部分である右端部132と、左端部131および右端部132を接続し、弾性変形可能な細軸状のバネ部133とを有している。左端部131には、第2回転伝達体の一例としてのフレクスプライン35が結合されている。
【0060】
このような構成により、駆動関節100は、モータMの回転子120が回転すると、ハーモニックドライブ減速機Rによりこの回転が大きく減速されてフレクスプライン35に伝わり、固定子10に対し第1アーム1が少しずつ回転する。そして、第1アーム1が何か他の物に当たった場合など、何らかの負荷が掛かった場合には、この負荷に応じて弾性部材130が捩れ変形し、駆動関節100に適度な柔軟性を持たせることができるようになっている。
【0061】
図8に戻り、駆動関節100の具体的な構造について説明する。
第1アーム1は、右端においてベアリング181により第2アーム2に回動可能に支持されている。また、第1アーム1は、左端においてベアリング182を介して第2アーム2に回動可能に支持されている。
【0062】
弾性部材30の右端部132は、バネ部133よりも太軸状に形成され、第1アーム1に形成された嵌合孔3a内に圧入されて第1アーム1と一体に回動するようになっている。弾性部材30のバネ部133は、回転子120の中空の回転軸121内を通って回転子120の左端から右端へと貫通しているので、駆動関節100の全体をコンパクトに構成しながら、バネ部133は左右に長く構成されることで変形量を大きくとることができる。
【0063】
弾性部材30の左端部131には、ボルト192によりフレクスプライン35が固定されている。また、左端部131は、その外周において、ベアリング183により第2アーム2に回転可能に支持されている。
【0064】
回転子120の回転軸121の左端には、外周にベアリング23aを有するウェーブジェネレータ123が設けられている。さらに、第2アーム2には、ボルト191によりサーキュラスプライン41が固定されている。サーキュラスプライン41はまた、固定子10とも接着や嵌合などにより結合されて、これにより、固定子10、サーキュラスプライン41および第2アーム2は一体となっている。サーキュラスプライン41とウェーブジェネレータ123は、フレクスプライン35を挟持して、これら3つの部材でハーモニックドライブ減速機Rを構成している。
なお、回転子120は、ベアリング184,185により固定子10の内側において回転可能に支持されている。
【0065】
第1実施形態と同様に、第1フォトセンサS1は固定子10に固定され、第2フォトセンサS2はセンサ取付板53に固定されている。また、センサ取付板53がカップリング部材52を介して第1アーム1に結合されている点も第1実施形態と同様である。
【0066】
以上のように構成された本実施形態の駆動関節100によっても、第1実施形態の駆動関節Aと同様に、モータMの回転子120が回転すると、この回転がハーモニックドライブ減速機Rで減速されて固定子10および第2アーム2に対し第1アーム1がゆっくりと回転する。そして、第1アーム1は、弾性部材130を介してフレクスプライン35の回転が伝えられるため、第1アーム1に物が当たるなどの負荷が掛かると、弾性部材130のバネ部133が捩れ変形して駆動関節100の柔軟性が発揮される。そして、回転子120の回転は、ハーモニックドライブ減速機Rを介して第2アーム2に対する第1アーム1の回転へと伝えられるため、第2アーム2に対して第1アーム1が所定角度回動する間に、第1フォトセンサS1と第2フォトセンサS2で多くのスリットSLを検出することができるので、高い分解能で弾性部材30の変形量を算出することが可能である。
【0067】
また、弾性部材130の捩れ変形をする部分であるバネ部133が、回転軸121の軸方向において、回転子120の動力発生源であるコイル22の左端から右端へ渡るように延びているので、バネ部33を左右に長くとることができ、バネ部133の強度を保ちながら、ロボットの関節の柔軟性を高くすることができる。
【0068】
そして、バネ部133が細軸に形成され、回転子120の回転軸121が筒状に形成され、回転子120の内側にバネ部133が入っていることで、駆動関節100をコンパクトにすることができる。
【0069】
以上には、減速機としてハーモニックドライブ減速機Rを用いる場合を例示したが、本発明のロボットの駆動関節は、以下の第3から第5実施形態のように、減速機を用いずに構成することもできるし、他の減速機を用いて構成することもできる。
【0070】
[第3実施形態]
図10に示すロボットの駆動関節200は、減速機を用いずに構成した例である。駆動関節200は、回転子20の右端にエンコーダ板Eを有し、エンコーダ板Eのさらに右側に回転軸21と同軸で弾性部材30が延び、弾性部材30の右端に第1アーム1が固定されている。これにより、回転子20の回転は、弾性部材30を介して第1アーム1に伝えられるようになっている。そして、第1フォトセンサS1はエンコーダ板Eの左側に位置するように固定子10の内周に固定され、第2フォトセンサS2はエンコーダ板Eの右側に位置するように第1アーム1に固定されている。このような駆動関節200においても、モータMの回転を第1フォトセンサS1で検出できるとともに、弾性部材30の変形量を第1フォトセンサS1の検出結果と第2フォトセンサS2の検出結果を比較することで取得することができる。そして、第1フォトセンサS1と第2フォトセンサS2が共通のエンコーダ板Eの回転を検出するように配置されることで、駆動関節200のコンパクト化が図られている。
【0071】
[第4実施形態]
図11に示すロボットの駆動関節300は、減速機として遊星ギヤ機構R1を用いたものである。駆動関節300は、回転子20の回転軸21の左端に第1回転伝達体の一例としてのサンギヤ341が結合され、固定子10に第3回転伝達体の一例としてのリングギヤ343が結合され、キャリア340に第2回転伝達体の一例としてのプラネタリギヤ342が回転可能に設けられている。そして、キャリア340が、駆動関節300の左端から右端まで延びる弾性部材30を介して第1アーム1に結合されている。そして、第3実施形態と同様に、第1フォトセンサS1はエンコーダ板Eの左側に位置するように固定子10の内周に固定され、第2フォトセンサS2はエンコーダ板Eの右側に位置するように第1アーム1に固定されている。
【0072】
このような駆動関節300においても、モータMの回転を第1フォトセンサS1で検出できるとともに、弾性部材30の変形量を第1フォトセンサS1の検出結果と第2フォトセンサS2の検出結果を比較することで取得することができる。そして、第1フォトセンサS1と第2フォトセンサS2が共通のエンコーダ板Eの回転を検出するように配置されることで、駆動関節300のコンパクト化が図られている。
【0073】
[第5実施形態]
図12に示すロボットの駆動関節400は、回転子20の回転軸21の左端に第1回転伝達体の一例としての第1平歯車441が結合され、第1アーム1の関節接続部40に、第2平歯車443が設けられている。第2平歯車443は、固定子10に回転可能に支持されている。第1平歯車441は第2平歯車443と係合していることで、第1平歯車441の回転が第2平歯車443を介して第1アーム1に伝わるようになっている。
【0074】
そして、第1実施形態と同様に、筒状で、モータMの回転軸21と同軸で捩れ変形可能な弾性部材30が用いられ、固定子10の左端部付近には弾性部材30の左端が結合され、弾性部材30の右端は第2アーム2に結合されている。また、第1実施形態と同様に、第1フォトセンサS1はエンコーダ板Eの左側に位置するように固定子10の内周に固定され、第2フォトセンサS2はエンコーダ板Eの右側に位置するように第2アーム2に固定されている。
【0075】
このような駆動関節400においても、モータMの回転を第1フォトセンサS1で検出できるとともに、弾性部材30の変形量を第1フォトセンサS1の検出結果と第2フォトセンサS2の検出結果を比較することで取得することができる。そして、第1フォトセンサS1と第2フォトセンサS2が共通のエンコーダ板Eの回転を検出するように配置されることで、駆動関節400のコンパクト化が図られている。
【0076】
[第6実施形態]
以上においては、符号群が1つの場合について説明したが、本発明は、第6および第7実施形態のように、第1符号群と第2符号群を設け、第1符号群の符号を第1フォトセンサS1で検出し、第2符号群の符号を第2フォトセンサS2で検出するように構成することもできる。
【0077】
図13に示すロボットの駆動関節500は、回転子20の回転軸21の右端に第1回転伝達体の一例としてのウェーブジェネレータ23が結合されている。第1アーム1には、フレクスプライン35が結合され、フレクスプライン35は薄肉に形成されることで、バネ部33としても機能している。固定子10には、サーキュラスプライン41が結合されている。
【0078】
回転子20の回転軸21には、左端に第1符号群を有する第1エンコーダ板E1が設けられ、右端に第2符号群を有する第2エンコーダ板E2が設けられている。そして、第1フォトセンサS1は固定子10において第1エンコーダ板E1の右側に位置するように設けられ、第2フォトセンサS2は第1アーム1において第2エンコーダ板E2の右側に位置するように設けられている。
【0079】
このような駆動関節500においても、モータMの回転を第1フォトセンサS1で検出できるとともに、第1フォトセンサS1の検出結果と第2フォトセンサS2の検出結果を比較することで、弾性部材30の変形量を高精度に取得することができる。
【0080】
[第7実施形態]
図14に示すロボットの駆動関節600は、回転子20の回転軸21の右端にウェーブジェネレータ23が設けられている。ウェーブジェネレータ23の左面には、第1符号群を有する第1エンコーダ板E1が貼り付けられ、右面には、第2符号群を有する第2エンコーダ板E2が貼り付けられている。そして、第1アーム1には、カップ状のフレクスプライン35が結合され、フレクスプライン35は薄肉に形成されることで、バネ部33としても機能している。固定子10には、サーキュラスプライン41が結合されている。
【0081】
第1フォトセンサS1は固定子10において第1エンコーダ板E1の左側に位置するように設けられ、第2フォトセンサS2は、第1アーム1において第2エンコーダ板E2の右側に位置するように設けられている。また、第2フォトセンサS2は、カップ状のフレクスプライン35の中に収まるように配置されている。
【0082】
このような駆動関節600においても、モータMの回転を第1フォトセンサS1で検出できるとともに、第1フォトセンサS1の検出結果と第2フォトセンサS2の検出結果を比較することで、弾性部材30の変形量を高精度に取得することができる。また、カップ状のフレクスプライン35の中に第2フォトセンサS2を配置することで、スペース効率が向上されている。
【0083】
[第8実施形態]
第8実施形態で説明する駆動装置の一例としてのリニアモーターカーは、本発明を最もシンプルに実現した形態である。
図15に示すように、リニアモーターカー700は、第1部材の一例としての軌道701上を、2両編成の車両LMが走行するように構成されている。軌道701には、第1駆動部材の一例としての複数の電磁石720が軌道701の延びる方向に沿って所定ピッチで設けられている。また、軌道701の、車両LMに対向する面には、連続的に、所定ピッチの符号を表示した符号ラインE′が表示されている。この符号ラインE′は、第1符号群および第2符号群が所定ピッチで軌道701の長手方向に連続して並んだ共通の符号群の一例である。車両LMは、第2駆動部材の一例としての牽引車両710と、第2部材の一例としての客車車両702とを備えている。客車車両702は変形機械要素の一例としての連結器733を介して牽引車両710に連結されている。連結器733は、牽引車両710の加速、減速を、緩やかに客車車両702に伝達するため、金属バネや、エアシリンダなどのクッション性を備えた機械要素を含んでいる。
【0084】
牽引車両710は、公知のリニアモーターカーの車両と同様に、電磁石720と作用する永久磁石711を備えている。また、牽引車両710の右側壁には、第1検出器の一例として、符号ラインE′の符号を読み取る反射型の第1フォトセンサS1′が設けられ、客車車両702の右側壁には、第2検出器の一例として、符号ラインE′の符号を読み取る第2フォトセンサS2′が設けられている。
【0085】
このようなリニアモーターカー700によれば、電磁石720と永久磁石711との作用により、車両LMが走行すると、第1フォトセンサS1′と第2フォトセンサS2′が、次々と符号ラインE′の符号を読み取って、パルスを出力する。そして、牽引車両710の加速または減速により、牽引車両710と客車車両702の間に力が掛かると連結器733が変形する。この変形により、第1フォトセンサS1′からのパルスと第2フォトセンサS2′からのパルスには時間的なずれが生じるので、このずれに基づき、高精度に連結器733の変形量を演算することができる。この変形量の精度につき補足すると、仮に、連結器733の牽引車両710側の部分に符号ラインを設け、連結器733の客車車両702側でこの符号ラインを読み取る検出器を設けたとすると、符号ラインの符号ピッチ以上の変形が生じなければ変形量を求めることができない。すなわち、符号ピッチの細かさ以上の精度で変形量を求めることができない。しかし、本実施形態では、車両LMが高速で走行し、第1フォトセンサS1′と第2フォトセンサS2′が次々と軌道701の符号ラインE′の符号を読み取るので、図5を参照して第1実施形態において説明したように、僅かな変形でもその変形量を取得することが可能である。
【0086】
なお、第1フォトセンサS1′から得られるパルスは、牽引車両710の速度を求めるのにも利用することができ、第2フォトセンサS2′から得られるパルスは、客車車両702の速度を求めるのにも利用することができる。
【0087】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した各実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
例えば、第1部材、第2部材として、ロボットの部分としてアームを例示したが、第1部材および第2部材は、必ずしもアーム形状でなくてもよい。例えば、本発明は、ロボットの首関節に用いることも可能である。この場合には、第1部材または第2部材はロボットの頭部分となる。
【0088】
また、変形機械要素として、弾性部材を例示したが、変形機械要素は、変形可能であれば、弾性とともに粘性の性質を有する粘弾性体であってもよいし、エアシリンダやオイルシリンダなどの機械部品であってもよい。
【0089】
さらに、回転符号板として、スリットSLを有するエンコーダ板Eを例示したが、回転符号板は、スリットSLに相当する位置に、符号として黒色の線やミラーを配置したものであってもよい。
【0090】
また、回転駆動源の一例として、電動のモータを例示したが、流体によりタービンを回転させるような駆動源であってもよい。この場合、回転子の動力発生源はタービンとなる。
【符号の説明】
【0091】
1 駆動関節
2 第1アーム
3 第2アーム
4 関節部
10 固定子
20 回転子
21 回転軸
22 コイル
23 ウェーブジェネレータ
30 弾性部材
31 左支持部
32 右支持部
33 バネ部
35 フレクスプライン
40 関節接続部
41 サーキュラスプライン
51 カバー
52 カップリング部材
53 センサ取付板
E エンコーダ板
SL スリット
M モータ
R ハーモニックドライブ減速機
S1 第1フォトセンサ
S2 第2フォトセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置であって、
第1駆動部材、および、当該第1駆動部材と作用することで第1駆動部材との間に駆動力を発生し、第1駆動部材に対し相対的に運動する第2駆動部材を有する駆動源と、
前記第1駆動部材と結合された第1部材と、
前記第2駆動部材と結合された第2部材と、
前記第1駆動部材と前記第1部材の間、または、前記第2駆動部材と前記第2部材の間に設けられて、前記第1部材と前記第2部材の間に掛かる力により変形可能な変形機械要素と、
前記第1駆動部材に設けられ、当該第1駆動部材の前記第2駆動部材に対する相対的運動方向に所定ピッチで並んだ符号からなる第1符号群と、
前記第1駆動部材に設けられ、当該第1駆動部材の前記第2駆動部材に対する相対的運動方向に所定ピッチで並んだ符号からなる第2符号群と、
前記第2駆動部材に設けられ、前記第1符号群の符号を検出する第1検出器と、
前記第1部材および前記第2部材のうち、前記変形機械要素を介して前記第1駆動部材または前記第2駆動部材と結合された一方に設けられた、前記第2符号群の符号を検出する第2検出器とを備えたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記駆動源は、回転駆動源であり、
前記第1駆動部材は、回転子であり、
前記第2駆動部材は、固定子であり、
前記第1符号群は、前記回転子と一体に回転する第1回転板に設けられ、
前記第2符号群は、前記回転子と一体に回転する第2回転板に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1符号群と前記第2符号群は、所定ピッチで連続して並んだ共通の符号群であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駆動装置
【請求項4】
前記第1回転板と前記第2回転板は、共通の1つの回転符号板であり、前記第1符号群および前記第2符号群は、前記回転符号板上の回転方向に所定ピッチで並ぶ符号からなることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記回転子と第1部材の間に、前記回転子の回転を減速する減速機が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記減速機は、第1回転伝達体、第2回転伝達体および第3回転伝達体が互いに係合することで構成され、
前記第1回転伝達体は、前記回転子に結合され、
前記第2回転伝達体は、前記第1部材に結合され、
前記第3回転伝達体は、前記固定子に結合されたことを特徴とする請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記減速機は、第1回転伝達体、第2回転伝達体が互いに係合することで構成され、
前記第1回転伝達体は、前記回転子に結合され、
前記第2回転伝達体は、前記第1部材に結合されるとともに前記固定子に回転が支持されていることを特徴とする請求項5に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第1検出器および前記第2検出器は、共に、前記回転符号板に対し、一方側に配置されたことを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記変形機械要素の変形をする部分が、前記回転子の軸方向において、当該回転子の動力発生源の一端から他端まで延びていることを特徴とする請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記回転子と前記変形機械要素の一方は筒状に形成され、他方が一方の内側を通っていることを特徴とする請求項4から請求項9のいずれか一方に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記第1部材および前記第2部材のうち、前記第2検出器が設けられた部材には、カップリングで係合されることで当該部材と一体に回動するセンサ取付板が設けられ、前記第2検出器は、前記センサ取付板に固定されたことを特徴とする請求項4から請求項10のいずれか1項に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−16799(P2012−16799A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156930(P2010−156930)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハーモニックドライブ
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】